コメディ・ライト小説(新)
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- ナニイロセカイ(半実話)
- 日時: 2017/11/14 15:01
- 名前: 雪姫 (ID: yZSu8Yxd)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel4/index.cgi?mode=view&no=16943
あれはいつのことだったかな_?
夏が終わり
秋が来た
少し肌寒い日のこと_
トントン。
誰かが階段を上がっている
トントン。
女の子が静かに一歩一歩ゆっくりと階段を上がって行きます
トント
到着。目の前に続く道は立入禁止と書かれた黄色いテープで塞がれていました
彼女はテープを引きちぎり
キィ
ドアを開けて中へ入いります
ビュゥゥゥウウ
冷たい風が彼女の頬を撫で 彼女は
世界を区切る壊れたフェンスの方へ
上を見上げれば 雲一つない青色の世界
下を見下げれば 部活動中なのでしょう
運動部員たちがグラウンドで走り回っている 茶色い世界
ポタ… ポタ…
晴天の空
でも 彼女の心はどんより曇り空
ポタ… ポタ…
大粒の雨が彼女の頬を濡らします
フェンスを乗り越えて世界の外側へ
世界の内側からは楽しそうな笑い声
ぽんっと誰かが背中を押します
ふわりと浮き上がった体は そのまま__
地面のアスファルトに飛び散った赤い液体
救急車のサイレンの音
彼女は死んだのかな、とただ純粋にそう思った
肌寒い秋の日の出来事_。
****
ナニイロセカイ[>>107]
[>>106]
- 青龍院 幽真ちゃん ( No.89 )
- 日時: 2017/10/24 15:01
- 名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro (ID: dpACesQW)
二十三話に登場したモデルさん並みの美少女転校生【青龍院 幽真】ちゃんは流沢藍蓮様から頂いたオリキャラ様です♪三人目でーす、キャホーイ(≧▽≦)
この世界では珍しいタイプの女の子、アホの子達変な英才教育されないか心配でござる……。
<オリキャラ募集用紙>
名前:青龍院 幽真
読み:せいりゅういん ゆうま
性別:女
学年:高2
性格:
人嫌いで一匹狼。馬鹿を何よりも嫌っている。群れ騒ぐことを厭い、クラスではいつも孤立しがち。頭がいいが、それは文系に対してのみで理系はからっきし。読書家で、図書室はもはや彼女の根城。将来小説家になるために日々、物語を執筆中。(←見られると怒る)
初対面の人にも物怖じせずに話す。
世間知らずでアニメなんかには疎く、それがさらに孤立を深める一因になっている。
あまり感情を表さない。少し傲慢なところがある。
容姿:膝まである長い黒髪を、青のリボンで下の方で括って一つにしている。全体的に、黒と青の服装。鞄や靴は一流品ばかりだが、本人はもっと地味でもいいと思っている。
登場人物との関係性:生徒会(役割は任せます)
一人称/二人称/三人称:私/君、貴様/男女問わず名字呼び捨て
詳細:
水仙寺と名を並べる、青龍院財閥の長女。身体が弱いためあまり学校には来ず、学校以外ではほとんど外に出ない。夏休み明けにやってきた転校生。本人は生徒会などやりたくなかったがその冷静さや頭脳の明晰さを買われ、生徒会に入ることに。
下には明るい性格の妹(友香(ゆうか))がいる。
明るく元気な妹と比べられて生きてきた。
冷たく切り捨てるような口調で話す。
サンボイ:
「青龍院 幽真という。男みたいな名前? ああ、両親が男の子を期待していてな。……私なんか、要らないのだとよ」
「馬鹿は嫌いだ。奴らの存在意義などない」
「な、何をして……って、それは私の小説だッ! 見るなッ! 返せッ!」
「……水仙寺。貴様の頭の良さは認めよう。だがな、能ある鷹は爪を隠すという言葉を、知っているか?」
「生徒会は静かでいいな……。何? 先輩たちはもっとやかましいと? ……忠告感謝する。なるべく関わらないよう心がけよう」
「つらくても……休んでられるか……。テスト前なんだぞ、もっと粘ってやる……!」
「私の勝ちだ。貴様が私に勝とうなどと、百年早いわ」
- その二十五「たまには泣きたいよ」 ( No.90 )
- 日時: 2017/10/24 15:58
- 名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro (ID: dpACesQW)
昔々と言ってそこまでは昔じゃないかも、いや割と最近3日くらい前のお話。
ホニャララ高校には昔からでもないか、3年くらい前から鬼がこの高校の生徒として、登下校していたのさ。
その鬼の名前は玄武 巌 身長190センチ越えのまさに岩みたいな雄の人間……あっ、鬼であってね。
巌くんは鬼だけどとても優しい心の持ち主なんだよ。
アスファルトに咲くお花を見るとツゥーと涙を流してしまったり、迷子になっている子供がいたら「大丈夫?」と優しく声をかけてあげて「ぎゃあああ」と叫ばれておまわりさんを呼ばれてちょっとした警察沙汰になってツゥーと涙を流してしまうくらいに、心優しい鬼さんなのさ。
巌くんは、人間たちともっと仲良くしたいと考えて、学校でのお家、別名生徒会室に
「心のやさしい鬼のうちです。
どなたでもおいでください。
おいしいお菓子がございます。
お茶も沸かしてございます」
と、書いた看板を立てたんだ。けれどもね、人間たちときたらさ、
「生徒会室に……美味しいお茶とお菓子?」
「もしかして毒でも盛られてるんじゃない」
「口が軽くなる薬とか?」
「「「きゃーーーー」」」
疑って誰一人遊びに来てくれなかったのさ。
巌くんは悲しみ、信用してもらえないことをくやしがり、おしまいには腹を立てて、立て札を粉々に壊してしまったんだ。
怒り悲しむ巌くん。そこへ鬼のリーダー、りっちゃんが訪ねて来たよ。
「どうしたんですか、玄武さん。生徒会室の前で立ち尽くしたりして……通行の邪魔ですよ」
「会長……」
巌くんはこれまであったことをりっちゃんに説明したよ。りっちゃんはうんうんと静かに巌くんの話を聞いてくれてね、こんな提案をしたのさ。
りっちゃんが学校で一番の悪い不良グループに喧嘩を吹っかけ、襲われそうになったとこで巌くんが懲らしめて返り討ちにする。
これで巌くんは可愛い女の子を救ったヒーローさ。悪い不良グループを成敗したみんなの英雄さ。
そうすれば、他の人たちにも玄武さんがやさしい人だということが解ってもらえますよ、とりっちゃんは言うんだ。
でもそれだと、危険な目に合わせるりっちゃんに申し訳ない、としぶる巌くんを、りっちゃんは、無理やり引っ張って、校舎裏の不良グループのたまり場に連れて行ったよ。大丈夫かな?
「あん。なんだ、テメェら」
今日たむろしていた不良グループは頭にフランスパンをのっけた一昔前の不良を意識した男の子だったよ。「あんあん」うるさい子だったよ。
ガチムチ系で大きな岩のようなムキムキの体をしている巌くん。でもそれは見かけ倒しなのさ、だって彼は生まれてこの方、一度だっても、喧嘩なんてしたことないのだからね。
当然、負けるよね。一撃必殺で負けるよね。ボス戦前のザコ戦闘でね。
この計画を立てたりっちゃんも予想外の展開過ぎて唖然さ。逆にどーしようってさ、自分の身を護る方法考えないといけない状況だよ、これ、どーすんのかね。
「なにしてるんですか~会長さん?」
「貴方は!?」
「あ、兄貴!!」
不良グループの兄貴さんのご登場さ、猫みたいな見た目の男の子だったよ。彼は地面に倒れて伸びている巌くんを見てさ、
「帰りますか」
と、鶴の一声。この状況は何とかなったよ。
でもうわさというのはこわいね、だってね、これを何処かから見ていた新聞部の子がさ、
「号外! 号外!
生徒会室に住む、鬼瓦さんが番長を一撃で撃沈させたってさ!!
番長は涙目! 返り血で体を真っ赤に染めた鬼瓦さんは次なる獲物を探して今日も校内を彷徨い歩く、もし彼と出会ってしまたら最期――キャアアアアア!!!」
なんて記事を校内中に張り出したもんで、生徒皆に配ったもんで、晴れて巌くんは学校の七不思議のひとつ「血を求め彷徨う赤鬼」になってみんなの仲間入りを果たしたそうだよ。
――泣いてもいいじゃない。赤鬼さんだって。
- その二十六「優秀な後輩と劣等の俺」 ( No.91 )
- 日時: 2017/10/25 19:50
- 名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro (ID: CKHygVZC)
生徒会。平たく言うのなら学校の首領 冒険もので例えると勇者の前に立ちふさがる最大の敵 お父さんか、……いやそれは違うかもしれない。
とにかく生徒会は一般性達からなんやかんや色々な理由を付けられて恐れられている組織だと思ってもらえればそれでいい……本当は良くない。
俺の名前は玄武 巌 高3で生徒会役員だ。生徒会長の補佐的なことをやっているから、副会長と勘違いされやすが俺は一介の生徒会役員だ……本当は3年生になったことだし憧れの生徒会長を支える副会長の座に着きたかった。
俺達生徒会役員は何時だって大忙しだ。休む暇なく働き詰めの毎日だ。
「えっとこの書類は……あら? あの一緒にまとめておこうと思っていた書類は何処に行ったのでしょうか?」
艶やかでサラサラの黒髪、黒縁眼鏡をかけて重要書類を束ねたファイルを腕で抱え持ってきょろきょろ部屋を見まわす姿は大和撫子のようで、峰麗しい生徒会長高浜。
泣く子も黙る鬼の生徒会長と呼ばれていた時期もあった……あれはまだ高浜が生徒会長に就任したばかりの頃、2年の春のこと。
真面目で手を抜くことが出来ない高浜は何時だってどんな時だって全力で頑張るその姿がまるで鬼の形相だと面白おかしく書いた新聞部のせいで付けられた異名……1年の頃から生徒会役員として頑張ってきた姿を隣で見てきた俺としては文句の一つでも言ってやりたかった、でも本人が構わないと言うからしょうがないじゃないか。噂は所詮七十五日だからと、笑う高浜を見たらなにも言えなかった2年の夏――もしかしたら俺はこの時から高浜の事を誰よりも近くで応援したいと思い、
「会長ー探してる書類ってこれっすか!?」
…………。
「ありがとう。足田さん、助かりました」
「いえいえー会長の為だったら晩飯前っす♪」
「なんですかそれ?」
「「あははっ」」
高浜と楽しく笑い合っているのは1つ下の後輩 足田 高浜の足を自称する女子生徒。実際の話どうだ、足田が来てからというもの高浜を陰ながら応援し支える役目に自然と就任していた俺の仕事を瞬く間に奪っていっているじゃないか。
今だってそう。書類を探している姿が絵になる高浜に見とれている間にささっと、お目当ての書類を見つけ手渡しなおかつ謙虚な後輩アピールを忘れない……出来る後輩だ、正式な生徒会役員でもないのに。
そう足田は生徒会役員ではない。生徒会役員は「なりたい」と言えば「はいそうですか」と誰でもなれるものじゃないんだ。毎年春に行われる生徒会役員決め選挙で決められる、何人かなりたい者達が立候補し、なりたい理由、意気込みを体育館舞台腕で全校生徒の前で熱く語り、本当に生徒会役員に相応しいかどうかを他の一般生徒が選び投票で決める、それが我がホニャララ高校が創立された日から続く春の伝統行事なんだ――だが一つだけ例外も存在する、
「おい高浜。ここと、ここ、誤字だ直せ」
「え、本当ですかっすみません」
「それからここ間違っているぞ。あとここに関して言わせてもらえばだな……」
まず一言だけ言わせてもらえるか……先輩を付けろ、もしくはさん、または会長と呼べ、青龍院
夜空のような長い黒髪に狼のような鋭い眼光、そしてスラリと伸びたモデル体型の誰もが二度見し振り返る美貌をもった2年、つまり俺と高浜の後輩にあたる……なのに青龍院ときたら、
「鬼瓦、私に何か用か」
「玄武だ。あと先輩を付けろ、青龍院」
どんなに注意してやっても「ふんっ」と鼻で笑われ、名前を間違われる……なんで最近転校してやつが俺の黒歴史を知っている、この事については触れないで欲しい、もう古傷を抉りたくない。
青龍院は今年の夏が終わり二学期の始まりに転校してきた季節外れの転入生だ……何故こんな変な時期にこんな変な学校にとも思ったが詳しくは聞けていない、本人が話したがらないと言うのが一番の理由だが、もう一つの理由は、
「いつもありがとうございます、青龍院さん。貴方が生徒に入ってくれたおかげでいつも大助かりです。
時期生徒会長は貴方で決まりですね。本当は今からでも副会長になって欲しかったのですけど……」
「私は私の仕事をするだけだ、役職など興味ない」
「リューイはハードボイルドっすね~」
また「ふんっ」と返事の代わりにツンとそっぽを向いて青龍院は自分の仕事へと戻った。
最近入ったばかりの新米だというのに、高浜の信頼が生徒会メンバーの誰よりも篤い……3年間傍に居た俺よりも、だ。
本来は選挙で選ばれるはずの生徒会役員も能力が優秀あり、生徒会長の推薦貰い、校長先生の許可を頂いた生徒は特別枠として生徒会役員になれる……青龍院はその枠で入った。
流石に入ったばかりの新人に副会長を任せるのは角があり皆いい顔をしないだろうと、今は見習い期間中……となっているが事実上もう既に副会長の座についているようなものだ、働きだけみれば。
優秀な後輩、足田と青龍院がいるため俺の出る幕はなくいつもあっさり解決してしまう……俺だって高浜の役に立ちたいのに。
「どうなさいました玄武さん?」
おっと。いけない、恨めしい目で後輩たちを見つめて、自分の仕事が疎かになってしまっていた。首を傾げ俺を心配そうな顔で見つめる高浜「大丈夫だなんでもない」と返せば安心したように微笑みを返す……決めた、この笑顔を糧に今日も頑張ることを。
「鬼瓦喉が渇いたお茶」
「おーに、自分にもお茶欲しいっす」
この可愛げもない後輩たちは俺の言葉なんて聞き耳を持たないだろう、だけどあえて言わせてくれ
「鬼瓦じゃない玄武だ! あと先輩を付けろ、お前たち!!」
*fan*
- 玄武 巌 ( No.92 )
- 日時: 2017/10/26 09:58
- 名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro (ID: KACJfN4D)
二十五話に登場した泣いた赤鬼さんこと【玄武 巌】くんは流沢藍蓮様から頂いたオリキャラ様です♪四人目でーす、キャボーイ(≧▽≦)
出来る後輩たちにいじられ系な彼。でも今日も負けじと頑張るよっ笑
<オリキャラ募集用紙>
名前:玄武 巌
読み:げんぶ いわお
性別:男
学年:高3
性格:剛毅木訥。無口で素朴で真面目。優しい。
容姿:岩のようにごつい身体。身長190センチの、まさに岩石みたいな男子。髪は一部を刈り上げており、いつも仏頂面なのも相まって、人々に威圧感を与える。
登場人物との関係性:生徒会会員
一人称/二人称/三人称:俺/お前/名字呼び捨て
詳細:生徒会会員。その図体で陸上部員。本人はみんなと仲良くしたいだけなのに、「怖いから」とよくみんなに逃げられる不幸体質。本人いわく、「俺は『泣いた赤鬼』の赤鬼か!?」とのこと。……ドンマイ。学校生活、楽しいこともあるさ!
名前は玄武岩から。
サンボイ:
「俺の名前は玄武 巌。こう見えて生徒会だ。よろしく頼む」
「な、何で逃げるんだッ! 俺はそんなに怖い奴じゃない! 話したいだけなんだぁー!」
「誰が堅物だっ! ……って、な、泣くなよ! 俺が悪いことしたみたいじゃないか!」
- その二十七「エスプレッソは ほろ苦い」 ( No.93 )
- 日時: 2017/10/30 09:12
- 名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro (ID: Tm1lqrhS)
+メッシー優勝おめでとトロフィー代わりの小話第一弾+
10月も後半戦に入って一番のお祭りハロウィンの仮装大会がまじかに迫ったある日のこと。
商店街はカボチャやオバケといったハロウィングッズ一色に染まり、道行く住人達も皆浮足立って、華麗なスキップを披露したり、鼻歌を歌ったりと陽気だというのにそんなのなんて全く、眼中にもない、気にもしないという、変な少年少女のお話である。
「ずいぶんと失礼な紹介のされかたですね~」
と不満げに毒づく少年は飯野大和という。猫みたいな瞳に小柄な体系が可愛いと女子達の間では大人気だ。
……本当は只の腹黒い不良のボスなのだが。それは言わない約束、言ってしまうと我らに明日はないだろう。
「そう? 僕は気にならないかな」
首を傾げる緑色の髪と瞳そして常に被っているフードが印象的な少女は緑屋詩緒という。
……この世界ではメインヒロインではないかと噂されているとか、いないとか、なってほしいなと妄想したりなんて。
「緑さんは優しいですね~」
これは大和だけが呼ぶ、詩緒の独特なあだ名。本人曰く相手をナチュラルにディスるためのものらしい。
腹の中が真っ黒な彼らしい理由だが、別に詩緒が嫌いとかそうゆうことではないらしい。むしろどちらかというと好意はもっている方らしい。
「大和殿程ではないよ」
それはお世辞ですか? と誰かの代わりに聞きたいものだ。
この○○殿という呼び方は詩緒は敬意ある人を呼ぶときに使われるものだ。大和のなにを、どこを、敬意に値すると判断したのか実に興味深い話だ。今度じっくり尋問でもしてみようか?
「お客様、ご注文はお決まりでしょうか?」
おっといけない店員が来てしまった。
二人を紹介するのですっかり忘れてしまっていたが、今彼らがゆったりと腰を下ろしているのはファミレスのソファータイプの椅子だ。ふかふかで背もたれも中々心地よい……ではなく、水一杯で居座るのは店側に失礼だ。なにか一つだけでも注文しなくては、と、メニューを広げた二人が頼んだ物は、
「僕は~モンブランで~、緑さんは」
「僕はエスプレッソを」
「モンブランとエスプレッソ、お一つずつですね。かしこまりました。少々お待ちください」
ふりふりのオレンジ色のミニスカートメイド服が可愛い店員さんは三十度くらいに頭を下げて、厨房の奥へと消えて行った。後ろ姿も可愛いな、腰にある大きなリボンがふりふわ揺れて可愛いのだ。
今日は平日だからだろうか、夕暮れ時なのにお客さんはあまりいないようだ。いるのは大和と詩緒そして
”ガサガササ”
席と席を隔てる為に植えられた観賞用植物を先程から定期的に揺らし鳴らす、後から入って来たお客さんくらいか。……とゆうよりこの客はなにがしたいのだろう。数分起きにまるで嫌がらせのように、草がガサガサ鳴らされるのだ。揺れる草を背にしている、詩緒はなんとも思わないのだろうか。そして詩緒と向かい合って座る、大和はなにも見ていないのだろうか。……気になるところだ。
「あれ緑さん食べないんですか~飲み物だけですか」
「うん。甘いものはあまり……ね」
「へぇ~女の人はみなさん無条件に甘い物が好きなんだとばかり~」
「僕のほうも意外かな。男の人って甘い物はあまり好きじゃないと思ってたから」
「それは差別ですよ~僕は甘い物が一番好きなんですから~」
「そうなんだ。てっきり大和殿は辛い物が好きなのかと」
「辛いのは駄目です。カレーは甘口ですよ~」
「へぇー僕は逆に辛口かな」
優等生と不良の会話は驚きの連続だ。
優等生で先生からも後輩からも信頼の厚い詩緒は甘い物が苦手、辛い物や苦い物が好きで一般女子とは味覚が合わないかもと悩んだ時期があったそうだ。
不良なのに要領よく世渡り上手な大和は沢山の舎弟を従え、大好物のジェラートなんかを献上させているらしい。逆に辛い物は大の苦手でピーマンなどは未だに食べられないお子様タイプ。
立場も性格もなにもかも違うように見える二人だが意外なところで共通点などがあったりする。
「そういえばまさか本屋で緑さんと出会うなんて思ってませんでしたよ~」
「そうだね。しかも同じ本を手に取るなんてね、驚きだね」
待ち合わせをしてファミレスに来たわけじゃない二人。
ここに来る前。海賊王の新刊(87巻2017/11/2発売! 宜しくね)を買いに本屋に寄ったところで運命的に出会ったのだ――いや大和は下級生が予約していた海賊王を横取りしようとしただけだが。
「やぁ君も?」「そうなんだ。じゃあお茶でも」「海賊王の話でも」みたいな流れで、ファミレスに入り今に至るというわけだ。話が二転三転してしまうのは我々の悪い癖だな、全く。
「大和殿は毎回買っているの?」
「ええ。そうですよ~」
嘘だ。こいつ今嘘をつきましたよ奥さん。平気の平左衛門だよ。
本当に毎回買っているのは下級生の方、大和はそれを毎回横取り、からの返却しているだけだ。
「凄いね。僕は最近やっと全巻揃えたところだよ。今はアラバスタ王国のところ」
「クロコダイルですね~懐かしい。僕はエネルの方が好きですが~」
「鷹の目もいいな」
「女性人気高いですもんね~。僕は~赤髪派ですけどね~」
好きな敵キャラクターで盛り上がり
「麦わらの一味だと誰ですか~」
「やっぱりマリモかな」
「王道ですね~僕は狸です」
「映画にもなった子だよね。王様にもなったりして」
「古い映画も見ているんですか?」
「うん。最近ア●ゾンで買い集めてるんだ」
これは実話であったりもする。我々ではなくお上だが、集めているのは。
「週刊誌は読んでる? 僕はそっちまではお金が……」
「僕もですよ~。あちらはたまにコンビニで立ち読みするくらいですね~。カタクリさんが気になります」
これも実話だったり……。
「……大和殿」
急に俯き重たく話し出した詩緒。どうしたのだ、この楽しげの会話の中に何があった。何が君をそんなに悲しませ苛立たせたのだ。
「僕はずっと思う事があるんだ」
詳しく言うとマリンフォード編の話の事だ。ここからは完全に我々の個人的な話である。
周りに議論する相手がいないためずっと内に隠しため込んでいた話である。
「なんで尾田先生は火拳を殺したの?」
ずっと考えていた。当時中学生だった我々。
アニメ派だった我々はこの先どうなるのだろうと毎週楽しみにして見ていたのだ。主人公の兄である火拳をそうな簡単に殺すわけない、だって兄だし、我々が海賊王で一番好きな登場人物なのだ、殺られてたまるかって話なのだ――なのに。
「なんで尾田先生は火拳を殺したの?」
週刊誌派だったクラスメイトに火拳死ぬんだよなーと軽く、映画館ですれ違いざまに見たお客さんからネタバレされた並みのショックである。
なにしてくれとんじゃいっと、もうアニメ楽しくないぞ、どんな超展開が起きても、どうせ死ぬんでしょ、と片付けられてしまうぞ、どーしてくれるのだこの気持ち!
「物語的にその方が面白いからじゃないですか~。
次にあった、大長編のドレスローザ編の話で結構盛り上がったじゃないですか?」
「でもね……大和殿」
もう一人のお兄さんの復活したのは良かったかもしれない。生きていることは最初から分かっていたから驚きもなにもないさ。で・も・ね?
悪魔の実はお一人様お一つまでルールがあり、一つ食べたらもうない、でも持ち主が死んだら悪魔の実復活システム、アカン!
「復活説すっごく信じてたのに! ゲームじゃ普通に生きているのに!!」
メラメラの実出て来ちゃったらもうだめじゃん。復活ないじゃん。
意思とか引き継がなくていいからっ、火拳を復活させてくれ、頼むから、参百円あげるから。
「はぁ…はぁ…」と興奮して荒げてしまった息を整える。丁度空気を読んだかのように、あの可愛い店員さんがエスプレッソとモンブランを運んで来てくれた。ぐびっと一杯。
「……苦い」
エスプレッソは一気飲みするものではなかった。口いっぱいに苦い味がする。顔が歪む。
「そんなの一気に飲むからですよ~緑さんはドジっ子さんですね~」
クスクスと笑っている大和だったが、フォークで一口サイズにモンブランをカットして「あ~ん」と詩緒の口元へ運ぶ。「ちょっと」周りの目を気にし恥ずかしがって一度は断る詩緒だったが、そんなのお構いなしに「あ~ん」し続ける大和に根負けしてパクリと一口。
”ガサガササ!!!”
また大きく草が揺れる音が聞こえたが、まあ、そんなのは気にせず、
「……美味しい」
「でしょう? でもこのエスプレッソは苦くて不味いですね」
「え?」
気が付いた時にはもう遅かった。もう既に詩緒のエスプレッソを大和が一口飲んだ後だった。「お口直し~」とフォークでモンブランを一口サイズにカットして口に放り込む、
「大和殿っカンセツ」
「ん~~~おいしい」
大和はカンセツチッスというものを全く気にしないタイプの人間のようだ。年頃の乙女にとっては傍迷惑なタイプ、なのだが別に大和に対してそうゆう感情を抱いているわけじゃない詩緒は「ま、いっか」と納得してエスプレッソを一口ゴクリ。
いいんかいっ!! と、ツッコミを入れたくなるが二人がいいと、言うのならいいのだろう、うん。
詩緒の後ろから凄く黒いオーラが放たれているような気もするが、二人が気にしないのなら我々も気にしないでおくとしよう。
その後も海賊王の話で盛り上がった二人。時間はあっという間に過ぎ去っていって帰る時間だ。お会計を済ませファミレスを出たところで、
「今日は良い一日になったよ。ありがとう大和殿」
「こちらこそ有意義な一日をどうもありがとうございます~」
「「じゃあ」」
二人は笑顔で手を振り別れ、大和は去って行く詩緒の背中が完全に見えなくなるまで見つめ、
「盗み聞きとはいい趣味をお持ちですね~」
”ビクッ!!!”
振り向かずに背後にある電信柱の後ろに隠れている人物に向けて言い放った。その人物とは――?
To be continue……
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