コメディ・ライト小説(新)
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- ようこそ、YTM解決団へ!
- 日時: 2018/05/31 21:32
- 名前: 井桝美紗 (ID: vnwOaJ75)
これは、ある三人の少年少女の物語。
不思議な力に選ばれて、人生を奪われた哀れな少年少女の……
「ねえ、ネタがない。ネタ探してこい」
「はい!? えっ、いや、何で俺が!?」
「そこにお前がいるからだよ。三十秒で探してこい」
「無茶な! い、行くけどさ……」
「やっぱ命令されんの好きなんだろ」
「そ、そんなこと……!」
「二人共、仲いいなぁ。ユミ~ミヤビ~クッキー作ったんだけど食べない?」
「「食べる」」
哀れ? そんなわけがない。確かに能力持ちではあるけれど、そこそこ充実した生活を送っている彼ら。親とも離れ離れだし、学校にも通えていないけど、楽しい毎日を今日もどこかで過ごしている。
そんな彼らの日常、覗いてみる?
*登場人物*
渋沢 結美 シブサワ ユミ(15) 女 長女(間っ子) 166cm
冬真・雅の幼馴染兼親友 三人の中で唯一女子 中間管理職ポジション
辛口 クール 小説家 S 雅をいじるのが楽しくてしょうがない 冬真が尊い
髪は黒色で肩くらいまでの長さ 前髪にヘアピンを二つ付けている 基本黒パーカー着用
一人称 僕 二人称 君/お前/あんた
安井 冬真 ヤスイ トウマ(16) 男 長男(一番っ子) 163cm
結美・雅の幼馴染兼親友 三人の中で唯一癒しキャラ 長男だが二人に甘やかされている
料理担当 かわいい 動画投稿者 無意識に人々を虜にする 純粋&天然 二人が大好き
髪は雅以上結美以下の長さ 手首にはいつもヘアゴム 8割は白パーカー着用
一人称 僕 二人称 君/あなた
錦野 雅 ニシキノ ミヤビ(16) 男 次男(末っ子) 176cm
結美・冬真の幼馴染兼親友 三人の中で唯一年相応の仕事をしている いじられ大黒柱
超頭脳派 面白い フリーター 若干天然 ドM この中で一番変態 主にツッコミ担当
髪は標準くらいの長さ クリップでよく前髪を上げている 5割は灰色パーカー着用
一人称 俺/僕 二人称 君/あなた/お前
以上、主な登場人物の設定です。ちなみに、全員顔面偏差値高いです。高すぎです。
*アテンション*
・作者、投稿は初めてです。ですので駄作です。ご了承ください。
・亀更新になる可能性大です。気長に待っていてください。
・コメント下さると嬉しいです。作者、舞い上がります。
以上のことがOKの方はこのままどうぞ!
- Re: ようこそ、YTM解決団へ! ( No.13 )
- 日時: 2018/06/04 16:59
- 名前: 井桝美紗 (ID: vnwOaJ75)
第十一話 約束
う~王妃を騙すとこまではできたけど……こっからだよな……毒リンゴ何てどこで調達すれば……まあ買ってきたリンゴはあるし、王妃の家に多分毒もあるだろうし、それをなんとかすれば……
あっ、どもども~錦野雅です~こんちは~。
いやね、今白雪姫の物語の世界で猟師を演じてるんですけども。なぜかストーリーの修正役もしなくてはならなくなりまして。俺が一番近い位置にいるから、当たり前っちゃ当たり前なんだろうけど……なんだかなぁ。
毒リンゴの調達ってどうすりゃいいの!?
と、絶賛悩み中のミヤビです。
でもなぁ……約束しちゃったし……それに、現実世界では女のユミと現時点では女のトーマにやらせるわけにはいかないし……
……やるっきゃ、ないかぁ。
ってことで王妃の秘密の部屋来ました、はい。
この場所何で知ってるかって? よくぞ聞いてくれたね。ほら俺、王妃に白雪姫殺すよう命じられたじゃん? あのとき呼び出されたのがこの部屋なんだよね~。いや~こんな簡単に秘密の部屋さらすなんて、王妃もバカだね~。
ちなみに、あの部屋に寝泊まりできるようなとこはなかったよ。鏡に問いに来るだけの部屋みたい。だから忍び込んでも大丈夫! ……多分。
ギィ……
「……ぉ、邪魔します……」
よかった……誰もいないみたい。
いや~二度目だから耐性ついてるかと思ったけどそんなことなかったね。いつ見ても気味が悪い! 全く、どうしたらこんな魔女の隠れ家みたいなとこができるんだろう。
っと、本来の目的忘れてた……毒、毒、っと。
「……これか?」
俺はいかにもここに毒が入ってるだろうという窯を見つけた。覗き込んでみると案の定、緑色の謎の液体が入っている。
「うわぁ……こんなの入れたやつ、トーマに食べさせないといけないのか……?」
食べさせたくない……でも、しょうがない……
「……よし」
俺は意を決して、窯の近くにあったお玉みたいなものを手に取った。一杯救って、これまた近くにあった瓶にそそぐ。
それを、またまた近くにあった注射器らしきものに入れ、さっき市場で買ってきたリンゴに針を刺して毒を入れこんだ。
あと、窯の近くに注射器とナシが置いてあったから窯の中身の液体Xは毒でほぼ間違いなさそうだった。一応報告。
まあそんなことはさておきまして。リンゴに毒を次々と注射していき、全てを毒入りにしたら、置いてあった毒ナシとさっき作った毒リンゴを入れ替える。毒ナシはリンゴを入れてたかごに入れて、立ち去る準備完了。怪しまれないといいけど……
俺はそんなことを思いながらも、その秘密の部屋を後にした。
「は、ああぁぁぁ」
俺は自然と張っていた緊張が解けると同時に、ため息をこぼしながらその場に崩れ落ちた。幸い、誰にも見られていない。まあ当然か。ここ、結構深い森の中だしな。
この毒ナシの処分の仕方は後々考えるとして。
……とりあえず、第一段階クリア、かな。
「……トーマ、うまくやってるかな……」
変なのに絡まれてたり、しなければいいんだけど。
- Re: ようこそ、YTM解決団へ! ( No.14 )
- 日時: 2018/06/07 16:06
- 名前: 井桝美紗 (ID: 9j9UhkjA)
第十二話 七人
こんにちは~またまた安井です~。
今、森の中の小さな木の家の前にいます。この中に小人がいるのかな?
「ごめんください。どなたかいらっしゃいませんか?」
私は数回扉をノックする。返答は……ない。なんかぼそぼそ聞こえるけど。仕方ありません。中に入りましょう。
「失礼します」
私は静かに、できるだけそっと扉を開けた。
すると、中にいたのは……
「えっ……?」
「ほらぁ! ぼくのいったとおりだったでしょ!」
「……そうだな」
「うわぁ、きれいなおんなのひとだぁ」
「……ひと、こわい……」
「なんだよおまえ。こっちくんなぶがいしゃが!」
「…………」
「せめてなにかしゃべりましょうよ」
なんか、何ていうんだろう……七人七色? の、小人たちが……可愛いな……きゃっきゃしてる。色違いの服着て、わいわいがやがや。可愛い。うん。可愛いって言葉が世界一似合う子たちだね、これ。
「あ、の……」
「あっ! おねーさんこんにちは!」
話しかけてくれたのは、青色の服を着た子。にこにこ笑って、近づいてくる。
「ぼく、しょー! おねーさんは?」
「わ、私は、白雪姫です」
「へ~しらゆきひめっていうんだ! じゃあゆっきーだね!」
え、なんかあだ名付けられた。何この子。フレンドリーの集大成?
「それで、ゆっきーはなんでこんなとこにきたの?」
「あっ、じ、実は、この国の王妃様に命を狙われていて……しばらく、匿っていただけませんか?」
「ええっ!? いのちを! それはたいへん! はやくこのなかはいって!」
お言葉に甘えて、家の中に入った。でも数人がこっちを不審に思っているであろう目つきで見てくる。う~なんか怖い……
「よし、ここならあんぜんだよ~。ではあらためまして。ぼく、しょーです! あおいろぼうしのげんきじるし! しょーちゃんっていわれてます! ほら、みんなも!」
「……すー、いいます。……よろしく」
「やっほー! たーくんだよ! みどりぼうしのえがおばんちょう! たぁくんってよんでね~」
「……はぁ、わたしもやるながれですね。はじめまして。しーともうします。しょーからいただいたキャッチコピーは、むらさきぼうしのしっかりもの、です。いごおみしりおきを」
「…………」
「ひっ……だ、だれ……こっち、みないで……!」
「りゅー……! てめぇ……りゅーなかしてんじゃねぇよ!」
えっ、怖い! 最後の子怖い!
「もう、ゆーくんもりゅーもりょーもちゃんとあいさつしなさい! すーちゃんはぼくがかんがえたきゃっちこぴーいってよ! がんばってみんなぶんかんがえたんだから!」
あっ、さっきのキャッチコピーは青色の子……しょーちゃんが考えたのね。
「もぅ……えっと、あかいろのこが、すーちゃん。あかいろぼうしのくーるきゃら! つぎに、そのきいろのくちがわるいこは、りょー。きいろぼうしのつよきたいしょう! つぎに、そのりょーのうしろにかくれてるおれんじのこは、りゅー。おれんじぼうしのやさしいてんし! さいごに、しーちゃんのそでにぎってるくろいろのこが、ゆーくん。くろいろぼうしのだつりょくぼーい! ぼくたちしちにんで、いっしょにせいかつしてるんだ!」
「そうなんですね」
小さくて可愛い子たち……でも。
「……なに」
「ぃやっ……こ、こっちこないで……っ」
「おい! りゅーにちかづくな!」
「…………」
仲良くなるのに時間かかりそうな子が若干四名……ちゃんと仲良くなれるかな……
- Re: ようこそ、YTM解決団へ! ( No.15 )
- 日時: 2018/06/09 09:49
- 名前: 井桝美紗 (ID: 9j9UhkjA)
第十二話 日常
小人たちにお世話になるようになって、しばらく経った。
あっ、いや別に現実世界では時は流れてないんだけどね、白雪姫の世界で何日か経ってるみたいに感じただけで。ユミとミヤビと話したことはついさっき話したように覚えてるよ。ミヤビ目線とユミ目線で見ると私の過ごした時間はナレーションみたいにすぐに終わっちゃうと思う。ちなみに私の過ごした時間のことは物語の中では具体的に説明されないよ。まあ私の過ごした時間のこと、私は覚えてるんだけどね。う~ん伝わったかな? 実にややこしい。
「ゆーちゃ、せつめーおわったぁ?」
「あっ、たぁくん。うん、終わったよ。ちょっと待っててね。すぐご飯作る」
「そっかぁ。わかったぁ」
今、私は眠そうな顔をしながら私のスカートの裾を掴む小人、たぁくんに一旦待つように伝え、急いで洗濯を終えているところです。
たぁくんは結構私になついてくれてる。七人の中で一番寝坊助で、食いしん坊なところがある。でも好き嫌いは多い。一番子供っぽいんだ。ふにゃんとした笑顔と間延びした話し方がこれまた可愛い。うん、可愛い。
それから急いで洗濯を済ませ、リビングに行った。
みんな揃ってたからちょっと待ってて、と言ってすぐに朝食の準備を始める。今日は……簡単なのでいいかな。私は置いてあった卵でスクランブルエッグを作って、この前作ったパンの上に乗せた。そこにしーくんが人型になって買ってきてくれたハムとレタスを乗せて出来上がり!
あっ、そういえばこの間、しょーちゃん・たぁくん・しーくんの人間バージョンを見せてもらったよ。すごくイケメンだった。イケメンというか、美少年だった。
しっかしまぁ八人分となると結構な量になるなぁ。
そうこうしているうちに、朝食完成。急いでみんなのもとに持って行く。
「みんな~できたよ~遅くなってごめんね」
「ん~ん! ぜんぜんおそくないよ! だいじょーぶ!」
「おなかすいたぁ~ごはん~」
「いそがしかったのですから、しかたがないことなので、しらゆきひめがあやまるひつようはありませんよ。ちょうしょくをつくっていただけるだけでもありがたいことですから」
「…………」
「……こわぃ……」
「チッ、おまえまだいたのかよ」
「……ありがとう」
ん~反応も七人七色。冷たい子もいるし、怖がってる子もいるし、黙ってる子もいるし……可愛いからいいけどね。感謝してくれる人もいるし。しょーちゃん優しいなぁ。あ~でもなんだかんだですーくんのが一番嬉しいかも。
全員で手を合わせて挨拶をする。いただきます、ごちそうさま。これは何も食べなくても言おうって言ったから、これだけは全員共通のルールとなった。
相変わらずりょーくんは食べてくれない。しょーちゃんとかに無理にでも食べさせて、とはお願いしたけど、どんどん痩せていく。
でも進展もあった。最近りゅーちゃんがご飯を少しずつ食べてくれるようになった。これは大きい! 今まで近づこうともしなかったから。他のみんなに聞いたら、りゅーちゃん、前からほとんど食べてなかったんだって。それで倒れたこともあるって。それであんなに痩せてたのかと納得し、食べてくれたことに安心と歓喜した。
これが私たちの日常。仲良くなれてない子たちとも、早く仲良くなれるといいなぁ。
……って! 日常化しちゃダメなんだってば!
- Re: ようこそ、YTM解決団へ! ( No.16 )
- 日時: 2018/06/09 15:07
- 名前: 井桝美紗 (ID: 9j9UhkjA)
第十三話 歌声
今日はいい天気。晴れてる日は気分がいいな。まあ、雨も好きだけどね。
こんな日は外に出るのが一番だね。
「みんな、今日は外に出て遊ぼうか」
「おそと~? ぼく、おそとすき!」
「たぁ、まだねむいぃ~」
「しらゆきひめのおっしゃることなら、おおせのままに」
「…………」
「……だる」
「ぅ……グスッ……行く……」
「チッ、あんたもいっしょかよ。りゅーこれいじょうなかせたら、ただじゃおかないからな」
ん~まだ否定的な子が多いな……いつか、みんなと笑える日が来ますように。
私が神に願っている間に、みんな外に出る準備ができていて、一部の子はもう外に出ていた。
私も急いで外に出た。外は照り付けるような日差しが眩しく、空はいつまでも高くて青い。
「ゆっきー! あそぼ!」
「ゆーちゃ、はやくぅ」
「ん、わかった、今行く!」
さ~て、遊びますか。
「ちょっと休憩するね」
「わかったぁ」
私は小人たちと体内時計で約四十五分遊んで、もうへとへと。確か近くに腰かけられる岩があったよね? 丁度木陰になってたはずだし……そこで休も。
「暑い……ん?」
あれ? 先客がいる?
私はこっそりそちらを伺おうとすると、歌声が聴こえてきた。
綺麗……透き通るような声……
私はこの声の主は誰か確認もせず、しばらく聴き入っていた。
……あれ? この声……もしかして。
私は声の聞こえる方に向かって一歩ずつ足を進める。どんどん大きくなっていく声。力強くて、でもどことなく繊細で……優しい、歌声。
岩の上に座って歌を歌っていたのは……
「……やっぱり」
私は小声でそう呟くと、彼の目の前まで歩み寄った。
彼は目を閉じて歌っているから、私の姿は見えていないはず。ん~でも気配くらい感じ取って欲しかったな~。……まあ、もともと私、影薄いし……
「綺麗な声だね」
「っ!?」
私が声をかけると、彼__すーくんが、もともと大きい目をもっと大きくして、こちらを見た。
「……いつから」
「ん~……ついさっき?」
「…………」
私がそう言うと、すーくんは俯いてしまった。なんかまずいこと言ったかな……
「いつもここで歌ってるの?」
「……まあ」
「へ~そうなんだ。すーくん、歌上手なんだね。聴き入っちゃったよ」
「…………」
また黙り込むすーくん。にしても、すーくんも可愛い顔してるなぁ。
「……った」
「え?」
「もっと、みんなとあそべとか、いわれるかと、おもった」
「え……? フフッ」
「な、なんでわらう……」
「可愛いから」
「か……ッ!?」
すーくんがまたバッと顔を上げて、熟したリンゴみたいに顔を真っ赤のさせてこちらを見る。そーゆーとこ、ホント可愛い。
「言わないよ~無理して欲しくないし。できれば遊んで欲しいけどね、体動かさないと不健康になっちゃうもん。でも、みんなには自分のペースでのびのび育って欲しいから」
私はすーくんの座っている岩の隣にある木に身を預けた。そして、遊んでいる子たちを見ながら言う。
「ヒトってみんな違う。だから、自分のペースでいいからね。ゆっくりでいい。それで、できればいつか……」
私はすーくんの顔を覗き込む。
「みんなと、一緒に遊んで欲しいな」
私は、出来る限り柔らかく優しく微笑んだ。陰になっていて、すーくんの表情は見えない。でも、きっと伝わっている。
「さ~てと! みんな分のジュースでも作ってこようかな」
私は伸びをして、家の方へとのんびり歩く。
「……お、れ……あんたのこと、きらいじゃない」
家に入る間際に聞こえた声。ちょっとぶっきらぼうで、素直じゃない言葉。
でもこの言葉、私も嫌いじゃないよ。
「……そりゃどうも」
私は家のドアに手をかけながらすーくんの方へ振り向いて、悪戯が成功した子供みたいにニヤッと笑ってそう返してやった。
翌日、また外で遊んだ。鬼ごっこをする小人たち。その輪の中には……
「……しょー、つかまえた」
「え~!? すーちゃん、いたのぉ~? きづかなかった! すーちゃんすごい!」
いつも通り無表情で、でもどこか笑っているようにも思えるすーくんの姿があった。
「……ふふっ」
今日も小人たちは平和です。
- Re: ようこそ、YTM解決団へ! ( No.17 )
- 日時: 2018/06/11 13:42
- 名前: 井桝美紗 (ID: 9j9UhkjA)
第十四話 寡黙
今日は生憎の雨。そのせいあってか、小人のみんなはいつもよりテンションが下がり気味。
「はぁ~あめのひってゆううつだな~」
「あめってじめじめするから、たぁきらい~」
「そうですか? わたしはあんがいきらいじゃありませんよ、あめ」
「…………」
「……おそら、みえないなぁ……」
「チッ、なんであめなんかふるんだよ。あいつ、あめおんなだろ」
うっ……りょーくんの言葉が一番グサッときた……確かに、私雨女だしな……ユミと比べたらそうでもないけど。ちなみに、ミヤビの晴れ男っぷりはすごいよ。天気予報も覆しちゃうから。
っと、話が逸れた。いや別にもとから話なんかしてないけど。
「…………」
私は揃いも揃って窓の外を見つめる小人たちを見た。その中にいる、さっきから何も話さない子、ゆーくん。
……そういえば、私、ゆーくんの声まともに聞いたことないかも……
いやこれホンマに! 何で関西弁になったかって? なんとなくだよ。
それは置いといて。ゆーくんが口を開いているところ、あんまり見たことないなぁ。見たとしても食前後の挨拶くらいだし、声はみんなに交じって全然聞こえないし。
……なんか、ゆーくん見てると昔のユミ思い出すなぁ。
ユミ、全然心開いてくれなくて。そりゃ、あの裏切られたショック考えれば、当然っちゃ当然かもしれないけど。心折れそうになったなぁ。今となってはそれも思い出だけど。
私の昔話はいいとして、私、ゆーくんの声が聞きたい! と、切実に思う。
ということでぇ! しばらくゆーくんに話しかけたいと思います!
「ゆーくん、何読んでるの?」
「…………」
ゆーくんは私に本の題名の部分を見せただけだった。
「へぇ~面白い?」
「…………」
今度は静かにうなずいただけ。ん~これは失敗か。
よし、次!
「ゆーくん、洗濯物たたむの手伝ってくれないかな? 七人分となると結構な量になっちゃって」
「…………」
ゆーくんは黙って洗濯物を次々にたたんでいった。
ん~これもダメか……ってたたむの超綺麗! えっ、何こんな家庭的なの?
とりあえずそれはどうでもいいや! 次!
「ゆーくん、みんなの帽子作ってみたんだけど、どうかな?」
「…………」
ゆーくんはどこからか取り出した紙にさらさらとペンを滑らせ、こちらに見せた。
『いいと思う』
まさかの筆談……ッ! そう来たか!
「…………」
「どうされましたしらゆきひめ。おもいふんいきがかんじられますが」
「しーくん……」
近くにいたしーくんが心配して話しかけてくれる。その手にはしっかり本。
あぁ……私にゃあなたが神様に見えますよしーくん……
「実は……」
私はゆーくんが口をきいてくれないことを話した。
「……そうですか」
しーくんはしばらく考えたのち、ぽつり、ぽつりと言葉を紡いでいった。
「ゆーは、いじめられたけいけんがあるんです。それも、うらぎられるかたちで。……ゆーは、こころのそこから、かなしみました。かなしんで、ひととはなすのがこわくなりました。こわくなって、こころをとじました。……それを、わたしがむりやりこじあけました。それで、なんとかわたしたちだけにはこころがゆるせるようになりました。……ですが、いまとなっても、そのトラウマはぬけきれていません。わたしたちいがいにこころをゆるせというほうがこくです。……ですから、ゆっくり、こころをひらかせてあげてください」
しーくんは、苦しそうに、儚く、にこりと笑った。
私は急に自分のしたことに罪悪感が芽生えた。そんな過去があったなんて……
ますます、ユミそっくりだな、なんて。
私はその日から、ゆーくんには無理に話しかけずに、でも気にかけるようにはした。
「ゆーくん、今日も空がきれいだね」
「…………」
「ゆーくん、ご飯できたよ。そろそろ戻ってね」
「…………」
「あっ、ゆーくんそこにいたら危ないよ。ちょっと下がっててね」
「…………」
無視されても、めげずに気にかけた。
「…………」
「ん? ゆーくん? 珍しいね、どうしたの?」
そんなある日、ゆーくんが私のスカートの裾を掴んで紙を見せてきた。私はよく見えるようにゆーくんの目線までかがむ。
『なんで、おれをきにかけるの?』
『あんたには、かんけいないのに』
「…………」
あんたには関係ない、か。
「……よく、言われてたなぁ」
私はゆーくんを机の上に座らせて、自分は椅子に座った。
「私、さ。大切な幼馴染がいるの。実はその子、いじめられて、それで人間不信になっちゃったんだ。私もしばらく気付かなかった。気付かなかった自分を後から憎んだ。何でこんなになるまで気付かなかったんだろうって。それで、その子に話を聞いても、いつも返って来る言葉は『お前には関係ない』でさ。……心、折れそうになったよ」
「でも、根気よく話して、最後には殴っちゃったりもしたんだけど、和解できたんだ。今では一番ともいえる親友。……その子が、今の君にそっくりなんだ。だから、関係があるみたいに思えちゃって。それで、話しかけてるって感じかな」
私ゆーくんの顔……いや、目を見る。比較的大きめの目は、混乱と驚きに揺れているように感じられた。
「……関係ないなんて言わないでよ。私、ゆーくんのこと、関係ないなんて思えない」
私はゆーくんの頭を人差し指で撫でる。
「無理にとは言わない。でもさ、信じてくれると嬉しいな」
私はすーくんに見せたときと同じような笑顔をゆーくんに見せた。瞬間、ふっとゆーくんの目から不信の色が消える。
ゆーくんはそっと私の耳に顔を寄せてきた。そして、ぽつり、と一言呟いた。
「……しんじて、みる……」
その言葉を言った後、タッとテーブルを駆け下りて、足早に去っていった。
「…………」
私は一瞬固まって、それから自分の耳を押さえた。頭の中でゆーくんの声を繰り返し再生する。
「……意外と……男らしい声、してるじゃん」
私はゆーくんが去って行った方を見ながらぽそっと独り言のように呟いた。
「さぁ~て、ココアでも飲みますか!」
今日も、私たちは平和です。