コメディ・ライト小説(新)
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- 独りで立ち上がる水蒸気
- 日時: 2023/05/04 21:25
- 名前: 水蒸気 (ID: rKVc2nvw)
何にも囚われず、僕は空に溶けていく。
2章
カンパネルラ
3章
クチナシ
4章
小鳥
5章
水蒸気
- Re: 独りで立ち上がる水蒸気 ( No.32 )
- 日時: 2023/09/02 12:02
- 名前: 水蒸気 (ID: HBSbPqD3)
小鳥の囀りに目を覚ます朝。差し込む陽射しが美しかった。
幸福の王子なんて呼ばれること。小鳥は誰かのために夏の島へ飛ぶことせず、今もそこに停滞している。いつか寒さに死んでしまうとしても、きっとそれすら美徳だと笑うのだろう。
青い燕がちるちると鳴く。愛の歌に歌詞はないけれど、そこに込められた甘い幸福を、僕は、いいや私はこの身を震わせて享受しよう。
申します、申します。優しい蜜を知ったのです。私は大層穏やかな調子で語ります。たおやかな日常です。人は人に愛されることを望むくせ、それを恐れます。私も少し、怖かった。
同じように愛せないかもしれないから。
それでもきっと、許されると思いました。私は私を許してあげられる気がします。
貴方の笑顔が好きです。貴方の考え方が好きです。貴方の価値観が好きです。それだけでもう、十分でしょうから。
今も少し怖いけれど。胸の奥が甘くたおやかに幸せを実感しているのが、よくわかる。
幸せすぎて怖い、と馬鹿な女がのたまうのを昔聞きましたが、今ならわかりそう。
私もいつの間にか馬鹿な女の毒が回っているらしい。
- Re: 独りで立ち上がる水蒸気 ( No.33 )
- 日時: 2023/09/15 20:19
- 名前: 水蒸気 (ID: dXUQaT2.)
人が人の隣を選ぶときの、お決まりの文句がある。
それは、そこにいるときが自分らしくいられた、なんて台詞だ。
人が人の隣を選ぶ理由に、自由な振る舞いがあるとすれば、僕らは驚くほど窮屈だった。
隣いると惨めな思いをする。相手の求める理想的な自分でないことをまざまざと見せつけ合う。化物が互いに鏡を突きつけては己の顔に悲鳴をあげるみたいに。僕らは化物であった。
さて。ならば僕はどうしてその化物の隣を望むのだろう。僕は彼女の隣に立つ自分が美しいとは思わなかった。当然、僕の隣に立つ彼女も美しくはない。でも、醜くもないのだから、理由はそれで十分なのかもしれない。
僕らは互いに隣に立つと、互いの光で打ち消し合うみたいだった。そう。僕は彼女の光が嫌いじゃなかった。好きではない。好きでは、無いのだ。嫌いじゃないだけなのだ。
嗚呼もう、全ての言葉を撤回しよう。僕はただ、好奇心を満たしたいのだ。その光の色を知りたいのだ。ただ、それだけ。それだけなのである。
そもそも、彼女は僕のことが嫌いだ。僕が一方的にその光の色に興味を持っただけなんだ。
だから。今までの言葉には何の意味もない。原稿用紙を破り捨てよう。
彼女はきっと寂しい人だった。その淋しげな光がまた、その、悪くない色をしているのだ。だからもし、その寂しさを埋められるほどの愛を注いだら、とか。
そうだ、僕のしていることは実験だ。そこに愛などない。愛してなど、いない。愛してなどいないのだ。
クリスマスのイルミーネーションのようなもの。ハロウィンのライトアップのようなもの。それを美しいと思うことが自然なように、その光を悪くないと思うこともまた自然なのだ。
- Re: 独りで立ち上がる水蒸気 ( No.34 )
- 日時: 2023/09/15 20:31
- 名前: 水蒸気 (ID: dXUQaT2.)
彼女は一度だけ、同一化の被害者だと宣った。
同一化というのは、己より優れた者の優れた点を真似て、自分も優れた人間であると思いこむこと。または劣等感やコンプレックスから逃れようとするようなことを言う。
さて。まず声を大にして言わせてほしい。
「お前より僕のほうが優れているから、自惚れるのも大概にしろ」
僕が優れているということは戴いた冠を見ればわかることだと思う。応援ありがとう。しかしここは僕の思考のはけ口だ。あまり名誉ある金を戴くに相応しいとは思えないが、それでも感謝する。
自惚れでもなく優れているのだ、僕は。結果が形を成しているからそこは否定できないはずだ。
確かに彼女の光は興味深いが、お前にはそれほどの魅力もカリスマもない。ただのワガママで周りを引っ掻き回して男に媚を売って女を牽制して、人に愛される能力も低く、同性の社会の中で浮いてしまうような、穴モテしてることを自分の能力と勘違いしている痛いお花畑。文字にしてみると君は本当にどうしようもない屑だね。しかしまあ、そんな屑が調子に乗るなと言う話である。
愛される能力も愛する能力もないくせに。
だからこそ、僕は君を愛してあげてもいいと思ったのだけど。可哀想で可愛いからね。これは実験なのだ。同じステージにすらいないのだ。
- Re: 独りで立ち上がる水蒸気 ( No.35 )
- 日時: 2023/09/18 14:24
- 名前: 水蒸気 (ID: QeRJ9Rzx)
読解力と表現力の差について少しだけ思ったし、価値観も違うのだと知った。僕には見えていた映像が人には見えていない。それを弱いと切り捨てることは容易い。でもきっと、そのままではいけないんだ。
僕に見えて、君に見えないものを知ったとき、とても悔しかった。僕は君と同じ景色を見てみたい。
例えば、舞台設定だ。例えばの話。書いてある文字しか見えない君のために、ここには白い壁と白い床があること。窓はついていない。だから部屋の中にいる人物は不安であること。また、人物は女であり、閉じ込められたという感覚を持っていること。設定を明示しない限り、内容が入ってこないらしい。
書いてあることしか見えないなんて不便だし、見下してやることも容易い。きっとそれでは駄目。
とはいえ、読解力が弱くて嫌になるね。面倒くさいね。そのくせ、力が無いことに胡座をかいて人を苛んだことも棚に上げるのだから、やっぱり僕は君のことが嫌いだ。
それを、互いに何もかも違うのだと割り切るのは容易い。諦めるのも容易い。でも、それだけじゃ僕は停滞する。
嫌いだなと本気で思う。僕は素晴らしいのに。僕の物差しだけでは測れない世界もあるらしいから。
- Re: 独りで立ち上がる水蒸気 ( No.36 )
- 日時: 2023/09/19 08:21
- 名前: 水蒸気 (ID: iVrcVWnH)
人を見下すと気分が良い。僕が弱い人間だからそう思うのだろう。自分に誇れる自分で無いから人を蔑んで悦に浸るのだ。
それは誰だって同じことで、きっとあの人もそうなんだろう。人に100%の善意なんて存在しないし、100%果汁も結局不純物が混じっている。100%なんて言葉に信憑性はない。
人は弱いから群れて強くなった気になる。他人を認めることすら自分のプライドだ。人は他人をアクセサリーにしないことができないのだと思う。もちろん僕は平気で人をアクセサリーにするから。
何かを尊敬する自分に価値を見出しているのだ。あれも一つの依存だ。そう思うと二人ともよく似ている。何か一つのものに執着しないと己を保てないのだから、弱くて狡くて汚くて目障りなんだ。
よく考えればあれは、群れで強くなった気になって攻撃していただけだった。事故を正当化できる、否定しない生き物を見つけて、自分が大きくなったつもりなんだ。ブレーメンの音楽隊と同じ。仲間がいると大きく見えるんだ。個々の小ささを忘れて強い気になる。そうしないと何も言えないくらい弱いくせに。虎の威を借る狐だ。
狐の言葉を耳を傾けること。それを無下にしてあげないこと。僕はなんて優しい。これもまた、彼らと同じ行いだけど、僕には自覚があるぶんいくらか優良だ。
決定的に無理だとよくわかったし、弱いやつほどよく吠える。弱いやつが何を言おうと本当は気にする必要なんか無いのに、僕の視野は狭い。
見えなかったものは無かったことにできる。見ようとしなければ見えない。でも、見えてしまったからわだかまる。
人には人の乳酸菌。どうしたって他人の在り方と自分の在り方は交わらない。僕はもう少し僕を信じてみてもいい。
少なくとも、たった一度栄光を手にしただけの人がいつまでもみている光と、何度も輝くこの光には絶対的な差があるのだ。一度の瞬きが口にする弱小サイトって言葉、重みが違う。そうやって自分の価値を自分で認めないと、他人に認められないことを受け入れられないのだ。弱いくせによく吠えて嫌になる。
そもそもあのシングルタスク。いや、もうやめよう。僕も同じだし、認められないのは僕の方。僕は弱い。とても弱いからもう、誰にも見られたくない。なんで見られるんだろうって、いやほら、ひと目のあるとこに投げているからな訳だけど。
人間の弱さに嫌気が差すと同時に、醜くて弱くてどうしようもない人間って、好きだ。人という漢字の話もあながち間違いではない。人は人に寄りかかって、群れて生きているということ。