コメディ・ライト小説(新)
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- 独りで立ち上がる水蒸気
- 日時: 2023/05/04 21:25
- 名前: 水蒸気 (ID: rKVc2nvw)
何にも囚われず、僕は空に溶けていく。
2章
カンパネルラ
3章
クチナシ
4章
小鳥
5章
水蒸気
- Re: 泥水啜って、よくできました。 ( No.16 )
- 日時: 2022/09/15 10:19
- 名前: 水蒸気 (ID: LvcspxEV)
人を殺したいと思ったことはありましょうか。僕にはあります。そんな一文が脳裏に浮かんだので書き出して見ましたが、僕には続きなんて浮かび用もないのです。
才能への嫉妬。嫉み。とても醜い感情ですね。醜いことが悪いことだとは思わないから、僕はこのままでいいけれど。
僕には、誰かのような人の惹きつける文章なんて書けないのです。
僕にだって、誰かを感動させて、その人の人生になるほどの力があるはずだと、信じておりました。いいえ、今だって信じているのですが。僕には、誰かを動かすほどの力も魅力も才能も無いらしいです。
脳に靄がかかるような感覚の朝。寝坊した事実ばかりの転がる部屋で、軽い吐き気に気分が落ちる。
不思議と泣きたい気分で、それが理由も無いことなのが日々の苦痛です。
眠気と倦怠感。吐き気。昨日少し動いたせいで筋肉痛まである。
少しでも、人間らしさを取り戻そうとすれば、これほどの仕打ちを受けるのですから、僕は何処へもいけません。
今日も眠気に気分が落ちる。寒い。
- Re: 泥水啜って、よくできました。 ( No.17 )
- 日時: 2022/09/19 19:54
- 名前: 水蒸気 (ID: EcCAeR4E)
腹の中に巣食う蛔虫が、段々とせり上がって来るのを、まざまざと感じました。胃液に混じって、短い脚を蠢かせて、ジリジリと焦らすように上がってくるのです。無数の脚が食道を這う感触が、脚の数だけ伝わってくるのです。
今は鳩尾の辺り。肺を通り過ぎて、心臓を横切り、喉まで差し掛かってきて、そうしてその辺りの皮膚を食い破る。すると、胃酸に溶けかかったねばねばの体を震わせて、奴が姿を現すのです。
僕は、毎日その苦痛に藻掻いて、怖くなって、そんな苦しみに蝕まれるくらいならいっそ、いっそ……と思うくせ、本能が邪魔をします。
今度は脳に住んでる毒虫がキーキー声を上げながら海馬を啜っているのですから。堪らず泣きだしてしまいたい。楽になりたい。楽に、楽に、お願い。助けて。
ヒーローは遅れてやってくると言いますが、僕のヒーローは世界の始まりと共に消滅しましたから。この世に救いなどありませんでした。
せめて楽になりたくて、僕は君を床に押さえつけて、見下ろしました。
外では強い風が窓を乱暴に叩く音が何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も! 五月蝿い! 死ね!
あああああ、夢が見えた、普段は使わないような、意味があるかもわからない薬を使ってやってもいいかななんて思って店に行って。そのための薬なんて架空なのに、なんの夢。
喉を食い破った蛔虫は、腹に卵を産み付けて行ったらしくて、そこで孵化して育ったまるまると太った虫が、虫が、腹を食い破ってる。
眠いから、怖くて、窓が、五月蝿い。
君を殺してやりたくて、でも、そのための暴力はとても疲れるので、僕には何もできません。見ているだけです。何も、できません。
悲しい気持ちで一杯でした。今は心臓の辺りに幼虫がいて、害があって、僕は。何もできなくて、死ねばいいと呪うばかりです。
頑張ったって世間に認められるものではないこと。あれが怖くてたまらない。僕は……僕のことは、恵まれた人になんかわからない。
病み文を作品と呼ぶ行為は滑稽です。慰めてほしいだけの弱い寄生虫です。人の養分を啜って生きるしか力のない、蛆です。
大丈夫。お前を殺せば全て解決する。お前さえいなければなにもかも。
でも今日は殺さないであげましょう。
僕は明日には生き返るので。キリストが三日で蘇ったように、僕は僕の世界の神様だから、誰かが信者だから僕は生き物になるんです。
いっそ、内側の虫が全部僕を食らい尽くしてくれればよかった。体が重たくて堪らない。でもまだ、きっと。
お前を殺してやる。
- Re: 毒虫の王座を焼き払え ( No.18 )
- 日時: 2022/09/25 16:26
- 名前: 水蒸気 (ID: Ms6mLZjj)
人は不幸は蜜の味とはよく言ったもので、調子に乗るなということでしょう。僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を見るな僕を僕を見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな、カムパネルラが笑いながら僕を見ている。
せいしんいじょうしゃ、きちがい、はったつ、とうごうしっちょう、色んな言葉を使って僕を見て馬鹿にしてそれで楽しんでいるんだろうから僕は腕を切り落とした。
カムパネルラは笑いながら僕を見ている。
カッターナイフを皮膚に押し当てたときは怖くてできなかったからだから僕は包丁を使って、皮や肉に亀裂が入って、ぶちゅぶちゅって吹き出してくるのを見て、気分がとてもよくなる。
とても気分が良いからカムパネルラの腹に包丁を刺した。
「君はいつもうるさくて嫌いだった。夢の中に君が出てきて、君の皮膚が爛れて、花びらみたいにじゅくじゅくになって朝起きたら君は夢の中と違ってきれいな顔してるから嫌いだった」
包丁の奥から血がねばねば絡みついてて、君って本当に醜いなって思った。
尊敬する人が死ぬとき、自分の手で殺したいと思うか、どこかで死んでくれと思うか、受け入れて遠くから見守る僕が、
せいしんがおかしいから寝てなさいって言う。眠たくなるのは飲んでもいない薬のせいで、ぼくなんかさいしょからいなかったみたいにねむくて、
君はしょうもない死に方をする。
白いレースのカーテンがひらひらしてる様子は、天使の羽みたいに見える。
遠くて鳩が特徴的な鳴き方をしている。惰眠の夕方は頭が痛くて嫌になる。
どうせ君は死んでくれない。お昼に食べたラーメンのゴミが、窓の外の風で揺れてカタカタ言う。
少し冷たくなった風が怖い。葬列が明日も僕を呼ぶのに、僕は横たわって棺桶で眠るばかりだ。
大丈夫。大丈夫大丈夫大丈夫。大丈夫。誰も僕を認めないし、誰も僕を求めないし、カムパネルラはそこで死んでる。
血に汚れた包丁だけは夢じゃなかった。
ありもしない事実を原稿用紙に書きなぐって、朱色に乾いた汚れが段々と鮮やかさを失うまで。茶色く泥みたいにこびりついて、あとは黒くなるだけ。
僕を救うのはカムパネルラじゃない。
僕が救ってほしかったのはお前じゃない。
僕が誰とどう生きたいかすら知らないくせに、君は僕と生きようとした。僕から奪った4年間。君はどうせのうのうと生きをする。
願わくば、君に最悪と不幸を。
僕はあなたを愛していました。
誰そ彼。沈む陽を惜しんで、線香をあげます。
明確に君が死んで、君の死体を食べたいとすら思えなくなってる僕もきっと、死んだ。
君の愛した僕は死んだし、僕の愛した君も息絶えた。だとしたら、僕もカムパネルラも何者なんだろう。
「ごめんね、カムパネルラ。本当は僕だってわかってたよ。僕は身勝手でわがままで、夢ばっか見てて、本当の事はなんにも知らなくて、責任が怖くて、それでもね。君が僕を救ってくれたんだよ。僕の救世主だったんだよ。なのにどうして、僕を置いていくの? こんなことになるなら、僕は、君に出会わなければよかった」
死体って喋らないから。君は何も教えてくれない。
僕はこうやって、まるで世界一可哀想なヒロインみたいな、可哀想な声を上げて、同情を引くのが上手になっていく。
鈍痛の残る頭を撃ち抜くための拳銃がほしい。日本って銃刀法があるから死ねなくて苦しいね。
取り乱したけどいつも通り原稿用紙を引きちぎって、舞い上がる紙片が雪のよう。
まだまだ冬は遠い。新しい季節を受け入れて、夏にさよならをしよう。
見つけてくれてありがとう。また会えたら、僕を笑ってほしい。
- Re: 毒虫の王座を焼き払え ( No.19 )
- 日時: 2022/09/27 00:45
- 名前: 水蒸気 (ID: lIwxrwIY)
屋上に立って、下を見下ろした。遥か遠くに地面があるらしい。ネット依存者のブルーライトで焼け爛れた目では何も見えないから、兎を追いかけて穴に落ちた少女のように、世界の裏側まで落ちていけるのかもしれないと思った。
僕を馬鹿にした奴らに報いるために、ここにきた。
僕が死んだところで誰が何を気にするか。僕は世界に存在したかっただけなのに。そのために僕は人を愛した。愛されたいから誰よりも人に愛を与えた。僕の愛を拒む奴はみんな殺してやったし、僕を笑うやつも同じように殺した。
僕がいてもいなくても、何も変わらないなら最初からいないほうが良かった。
僕は自分の命を持ってお前を呪ってやる。僕を見捨てたお前を、僕を笑ったお前を、僕を利用したお前を、この毒で蝕んで、死ぬよりずっと苦しい地獄へ。
こんな苦しみを味わうくらいなら心なんてほしくなかった?
所詮そんなものだ、お前たちが諦めて壊したものが、塵屑が形を成して襲ってくるのだ。
そろそろ眠りにつく、時間がない、だから、せめて、僕を助けて、なんて。
カムパネルラを殺した僕が、何に助けてもらえるのか。助けて助けて助けて。
カムパネルラは、僕を見なくなった。ぼくがカムパネルラだと思っていたのは、誰だったのだろう。
メドゥーサ。一度だけ君は自分をそう呼んだ。学名がそうなのだと。ギリシャ神話に登場する、髪の毛が蛇になっている怪物だ。その姿は美しい女だとも、醜い女だとも言われる。その目を見た者はたちまち石になるという。
それによく似た姿。青の煌めきで揺蕩うのが似てるから、そう呼ばれたのだと。君は海底から見た光だと。だとしたら、クラムボンだ。蟹の子供達の見た光が君だった?
確か君は、カムパネルラの物語が好きだと言っていた。だから皮肉を込めてこの名前で呼んだ。僕はあの話が嫌いだから。文学とは、読者の理解力に依存する。まるで、僕を嘲笑ってるみたいな文字列が嫌いだった。あんなものを好きな君が嫌い。僕を好きじゃない君が嫌い。だから死ね。だから殺した。だけど今でも君が僕を見つけてくれることを、助けてくれることを願ってる。僕の救いはそればかりだ。
屋上の夢も忘れて、今日もベッドで星明りを見る。夏の虫が息を潜めて、鈴の音に似た合唱が耳障りな季節。寒くて、駄目になる。
今も僕の隣に君は居ない。
- Re: 毒虫になっても君は来ない ( No.20 )
- 日時: 2022/10/01 13:10
- 名前: 水蒸気 (ID: u3FN3Kce)
「この世界を壊そうと思います」
朝陽が眩しくて、空が馬鹿みたいに蒼くて、遠くから香る金木犀の甘ったるさがやけに愛おしく感じる日。
僕は書き溜めた原稿用紙に火を付けた。
「もう、僕は僕の欠片に意味を感じないんだ。僕を文字にすることに、価値なんて無かった。価値が欲しかった。価値は……あったのかもしれないけど、でも。僕が僕を見つけてほしかったのは、君なんだよカムパネルラ。僕の苦しみは君にしか救えない。なのに君はもう、あの天気林を超えて、イーハトーヴォの向こうに行ってしまった。僕は、夢から覚めたんだよ」
親にもらえなかったものをくれる人がいたら、それが親に見えてくる。鳥が卵から孵ったらまず最初に見たものを親だと思うみたいに。僕のお母さんは僕を捨てたし、君も僕を捨てた。僕はもう、一生大人になれない。僕にはもう、親と呼べる人も家族と呼べる人も家と呼べる場所も帰るべき場所もない。
だったら、意味も価値も理由も無い。
僕は、もう縋りつくのはやめた。
価値のない物語に虫眼鏡を当てる。そうすると、陽の光が集まっていって、火が付いた。太陽の熱が全てを終わらせる。僕の太陽は僕を殺す。でもきっと、焼死体を知る人なんかいない。
結果論ではなんとでも言える。その時お前が間違えてないと信じたならお前は正しかった。あなたの言葉を宝箱に入れた。でもね。所詮結果が全てだろう?
カムパネルラは僕を捨てた。僕は君のジョバンニにはなれなかったし、君のやまなしにも星にもなれなかったじゃないか。
だから僕はもう、この物語が嫌いだ。意味の伝わらない文章を書いて、「わかってわかってわかって」と喚く君が、君をわからない僕が嫌いだ。大嫌いだ。死んじゃえよ。
悲しみには5段階あって、否認、怒り、取引、抑うつ、受容。更にもう1つ加えたい。
復讐。
でも、それすらも果たされなかったらどうなるか。それは物語を美しく修飾するために存在しなかった。僕が与える7つ目は消却。忘却? 無いものとすれば、それで救われるだろう。救われなきゃいけないだろう?
僕には、僕を救ってくれる神様なんかいなかったんだから。