コメディ・ライト小説(新)

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独りで立ち上がる水蒸気
日時: 2023/05/04 21:25
名前: 水蒸気 (ID: rKVc2nvw)

何にも囚われず、僕は空に溶けていく。


2章
カンパネルラ
3章
クチナシ
4章
小鳥
5章
水蒸気

Re: ←を擦り潰したいから↑を夢見る→の↓を食べる。 ( No.6 )
日時: 2022/07/28 13:18
名前: 水蒸気 (ID: cGsvjftA)

 苦痛だ。臓腑が捻切られるような錯覚だ。
 母親の愛を全く感じないんだ。あれの話を全く効かなくなった。あの人達今如何してるだろう。僕を愛してくれないあの人達は、お金さえくれればそれでいいよ。
 頭のおかしい人たちだったよ。あれだけ酷いことをしておいて、今更家族ごっこをするんだから。離れてみてわかったよ。あの異常な空間を。
 八月の二十七日。命日と誕生日だ。父が死んで、よく知らない男が家にいるようになった。どうやら僕のことを子供と勘違いしている変な人。




 白昼夢に見る呪いに、嫌気が差す。君は、カムパネルラは今日も僕の理想の→だ。←になることも叶わない僕に、笑いかけてくれる。
 君がいつか、52ヘルツになればいい。

 原稿用紙を握り潰しては、掻き毟るのは痛いから、痛いのは嫌だから、只々泣いた。
 辛くて無理なときは、メンヘラなのでラーメンを食べよう。最近、韓国の辛いラーメンをよくいろんなお店で見かける。

 リストカットをしたことのある人はいるだろうか。僕は無いです。
 腕にカッターの刃を押し当てたけれど、皮膚に切り込みが入る前に恐怖が勝った。カッターの冷たい刃先を少し滑らせても、腕に引っかき傷ができるだけで、可哀想の勲章を得るに至らなかった。
 僕だって可哀想になりたかった。誰が見ても悲劇的でついつい慰めてやりたくなる、ヒロインになりたかった。

 傍からリストカットを見ていると、「痛々しい傷が汚くて、そっか、コイツ自分の腕を切るほどの辛いことを抱えている、関わらないほうがいい奴なんだろうな、よし近寄らんとこ」以上の感想は出てこないのだ。つまり、僕は恐怖に負けた弱虫だが、切ったって慰めてもらえないなら、臆病も英断だ。

 それでも切ってみたい理由がある。エンドルフィンで脳をシャブシャブにしたいのだ。
 知らなかった頃の僕の失礼な感想についてはゴメンねーという気持ちだ。腕切りメンヘラ達は、腕を斬りつけることによって分泌されるエンドルフィンとか言う鯨の仲間では無い脳内物質で幸せになっていたのだ。合法モルヒネでトリップしていたいのだ。

 自分でやるのは怖い。今回ばかりは臆病は負け犬で、英雄には程遠い。
 無理なのでカムパネルラに頼んで腕を差し出したが、代わりに出されたものが辛いラーメンだったというオチである。

 痛みでエンドルフィンとかいう海豚の仲間ではなくモルヒネの仲間な幸せ物質を得たいのなら、舌を痛めつけることで代用できるという説。
 カムパネルラの革命的な行動によって、僕は麺ヘラになった。週4でラーメンだ。ラーメン屋による炎上しないタイプのシャブ漬け計画に加担していたのだ、カムパネルラは。

 プルダックポックンミョン。パッケージに鶏のイラストが描かれたピンク色の袋。正直、辛すぎて食べれなかった過去があるため、これをどうするか迷っている。
 怖かった。辛くて食べれないのに、美味しい。美味しいから食べたいのに痛くて食べれない。それにこんな激物を胃に取り込ませて無事でいられるはずもない。辛いラーメンを食べると胃が荒れるため、正直リストカットよりもリスキーな自傷行為なのだ。
 そもそも、メンヘラの大半は胃が荒れている。自律神経の乱れ、不摂生。それがメンタルを壊す。胃が荒れたのが先か、辛いラーメンを食べ過ぎたのが先か。胃炎事情は鶏と卵だ。

 この辛いラーメンを食べることで、幸せになれるのだ。カムパネルラも半分くらい食べてほしい。

Re: ←を擦り潰したいから↑を夢見る→の↓を食べる。 ( No.7 )
日時: 2022/07/28 13:19
名前: 水蒸気 (ID: cGsvjftA)

 倦怠感に侵食される身体で起きたのは、丑の刻。上手く睡眠を取れたはずなのに、惰眠を貪ったときの酷い頭痛で目が覚める。
 漠然とした形の無い化物が、心臓の内で暴れている。何かが怖いから、何かから逃げるために筆を執る。
 怖い夢を見たわけじゃなかったと思う。なのに、起きると心臓が不定形だ。前頭葉に霧がかかっていて、汗でベタついた肌が気持ち悪い。

 カムパネルラもいない。前頭葉の靄を疎みながらも、原稿用紙を汚していった。

 物書きになりたかった。物語が織りなす幻想が美しかったから。あの世界に没頭する感覚を愛したから。
 文は絵より雄弁な芸術だ。正しさが無いからこそ、どんなにも化ける。思考が形作る幻想に、明確な正解が存在しない事を美学だと思った。何かに当てはめられて、枠に押さえつけられるのが嫌いだからこそ、好きでいた。

 君がいなければ、楽に筆を折れたのに、僕は今も筆に縋っている。
 君が鯨の骸を食べればいいのに。どうしてか、今52ヘルツで鳴いているのは僕だ。
 君のせい、を重ねた。復讐を夢見た。いつも君がいなくなることを望んだ。

 復讐は何も生み出さないのだから、するべきではない。
 知ってる。だからもう、許してしまいたかった。君がどこまでも穢れているから、頭でわかっていても心が追いつかない。手酷く傷つけられたから。もう、どうしても呪いたいのだ。君を呪わない生など不要だと、本気で思うほどに。

 君への復讐譚が僕の人生になる。なってしまう。それくらいの悍ましさ。君がいなければ。最初から出会わなければ。好きにならなければ。君が僕を見つけなければ。お前のせいで。

 原稿用紙を握り潰して、虚しくて、寂しくて、遣る瀬無くなる。
 三時過ぎ。ラーメンでも食べて苦痛を紛らわせたらよかった。

Re: ←を擦り潰したいから↑を夢見る→の↓を食べる。 ( No.8 )
日時: 2022/07/31 06:29
名前: 水蒸気 (ID: PLhBXrsw)

 自虐ネタが煩い人間をどう殴ってやろうかとばかり考えてしまう。そんなこと無いよを待っているのがどれだけ迷惑か理解していないのだ。自信がないのは自業自得だし、他人に慰めてもらおうだとか肯定してもらおうだなんて浅はかで烏滸がましい思想を持つから、自信がないまま疎ましい怪物になっていくのだ。

 そういうところが面倒くさいと伝えたら気持ちの悪い笑みを浮かべる。ごめんなさいと言うより笑って誤魔化すほうが楽だからだろうね。迷惑をかけたのだから謝れと思う。自虐するほど自信がないなら最初から産まれてくるなと思う。結局あいつらは自身も根拠もないくせに自分に酔っているのだ。

 酔っている人間は軒並みゴミクズだ。酒も自分も溺れれば周りが助けてやらねばならないから、とりあえず死んでおけ。


 原稿用紙が破けて、腹の奥の気持ち悪さに泣きそうな朝。今日は何も集中できなくて、横になっていた。頭痛と吐き気がする。熱があるかもしれない。
 面倒だなと思う。家で寝てサプリがぶ飲みすれば直るってカルトが言うからそれを試してみよう。それで人死にが出ても関係ないっていう奴らだ。楽に死なせてね。

 君の生きていた証拠だけ、そこにいたことだけ。くゆる空気の中に、君がいた残渣があるばかり。霧散して消える。君のために費やした時間を惜しむことも、君のために時間を使ったことも。僕が全部悪いはずがないんだ。

 君の察してと言いたげな行動が本当に気持ち悪い。気付けなかった自分が惨めになる、君をわかっている気になっていたことが、苦痛になる。
 ねえ、君はまたどうせ、何も成し遂げられないんだ。可哀想にね。
 この苦痛が僕を苛むから、僕も何も書けない。でも停滞しているのはお前だけ。

 あれだけ騒ぎ立てておいて、その程度なんだよ君は。本当に塵だ。生まれてこなければよかったのにね。
 熱は下がった気がするけれど、具合の悪さは残る。楽になるために死んでしまいたい鈍痛で、君の夢を見る。

 ごめんね、カムパネルラ。本当は君のための物語が欲しかった。

Re: ←を擦り潰したいから↑を夢見る→の↓を食べる。 ( No.9 )
日時: 2022/07/31 06:32
名前: 水蒸気 (ID: PLhBXrsw)

ゴミだ、ゴミ、そんなゴミにすがりつくのもまたゴミだ、しねばいいのにね、


 プライドの高い人間なんか、皆ミキサーにかけて一つの液体になっちゃえばいいのに。
 カムパネルラのいつもの戯言を、興味深く思い、問うてみる。

 ジュースになったプライドの高い人間たちはどうするんだい。
 ジュースなんて心躍るものじゃないよ、廃水だよ。普通に排水口に捨てるよ。
 環境破壊じゃないか、それ。
 いいよ、環境なんてもう人間のエゴで壊れ尽くしてるもん。勝手に壊れる環境が悪いし、今までに人間のエゴが蹂躙してきたので、私も先人に習って同じことをしているだけ。悪い?
 悪いかどうかを指し図れる程の位置にいないよ、僕は。一般的には悪いって言うのだろうけれどね。

Re: ←を擦り潰したいから↑を夢見る→の↓を食べる。 ( No.10 )
日時: 2022/07/31 06:34
名前: 水蒸気 (ID: PLhBXrsw)

みんなしねの延長線


 カムパネルラの内側に、僕の求める君を見ると、どうにも苦痛だ。いなくなれ、いなくなれと怯えてみるも、会いたいよの追慕も、もう君には届かないらしいのだ。クララシカはしんだんだ。
 君はきっと、姿形だけは同じの、そう、スワンプマンなのかもしれない。ホムンクルスなのかもしれない。クローンなのかもしれない。アンドロイドなのかもしれない。レプリカだ。
 君が笑えば彼女が笑った気がする。君が私の名前を呼んでくれないと、彼女が読んでくれなかった気になる。もう彼女とカムパネルラは別の生き物なのに、似てるから間違う。

 違う、人間に対してこんなこと考えなければならない。それ自体が狂気なのに。どうしてこうまでして君の思い出を守らなければならないか。
 君の言葉全てが形見になった。君のくれた今日がどんどん汚れていく。君の思い出が穢れてしまうから、カムパネルラを殺したい。

 君を愛した日々があまりにも美しいのがいけなかった。夏の早朝に漂う透明の空気。秋の夕暮れにある嘘みたいな黄昏。冬も春も美しい思い出は無いから四季の全てではない。君は夏と秋の内にだけあれ。これ以上汚さないで。息をしないで。

 嗚呼。この深い哀しみを、どんな言葉で表したところで、あなたに理解できるものでは無いでしょう。20000マイルの底で、52ヘルツが聞こえるか。あなたも同じ骸を食べればいいのに。
 あなたの骸を食べてしまえればよかったのに。

 カムパネルラが何をしていても殺してやりたくなるの。可愛げのある挙動一つ。昔はただ嬉しかったはずの、君のしてくれること全てが、私の心を蝕もうとしている。わざとやってるの。意識的に、無意識下で、何方でも差異はない。あなた、私のことが嫌いなの。どうして。私、こんなにこんなにこんなに愛していたのに。これもきっと、過去に縋りついて……あなたは人間なのだから、これが正しいはずなのに。
 あなたが嫌い。もう何もわからない。ずっと、独り善がりだ。52ヘルツが誰にも届かないこと、誰も教えてくれないもの。
 食べたら、あなたになれる。食べたら、私にしてあげる。だから、私の骸を飲み下せ。あなたがこの途方もない孤独に落ちていけばよかった!
 私じゃない。私のこと孤高は、あなたのせい。あなたが祀り上げた。あなたが生きているのが悪かった。
 酷いひどいひどいひどいわひどいわどうしてどうして、なんで、わたし、私私、こんなに、あなたに尽くしたのに、あなた、奪わないで、返せ、返して、私のクララシカ、返して。お願い、返して、愛して、もう苦しいの、お願い、死んで。あなたが死ねば私、ようやく生きができるのに、しねばいいのに。あなたを食べたくない。あなたを見たくない。気持ちが悪い、
 あなたの言葉を全部食べていたかった。
 あなたのためなら、この心臓を半分に切り分け、差し出したって構わなかった。なのにあなた、私の血を飲んでくれないの。
 心臓を切ったら血が出る、血が出たら痛いに決まっている、酷い苦痛にのたうち回って、いたい、いたいと血を撒き散らしても、あなたは私を傍観し続けた。あれは一体、どういうつもりだったの。
 聞いたところであなた、何も答えてくれなかった。あなたに何を言ったって、何をしたって、意味を持たない。わかってる。だからこんなに苦しいのに、あなたは……あの美しい夏と秋は。

 こんなことに苦しむ朝だって、不甲斐ないのに。あなたはきっと、私のために悩ませる朝なんて持たないのでしょう。あなたを食べたくないのに。いいや、もう、やめようよ。

 なんでこんなに吐き出さなければならないの。もう、求めることも期待することも信じることも恋い焦がれることも、ぜんぶ、無駄だよ。
 こんなに足掻いたのに、あなたには届かない。聞こえない。だからこんなもの全部、なかったことにされる。
 夏と秋と、冬と春の違いに狂わなければならない。もう、つかれた。
 季節の中にいなきゃならないのももう、……。
 すっかり汚泥に塗れた私のカムパネルラを見て、こんなつもりじゃなかったとか、こんなはずじゃなかったとか。
 頑張ったって人は死ぬ。助けたかった、頑張れた、その先で虚しく死ぬ。死体に縋っても腐臭ばかり。
 私はカムパネルラを殺した。


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