コメディ・ライト小説(新)
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- 雪と雫と日向
- 日時: 2023/01/14 07:11
- 名前: once (ID: wsTJH6tA)
タイトル
「雪と雫と日向」
あらすじ
容姿も頭脳も生まれも育ちもごくごく平凡な主人公・相沢雫。近所に住む幼馴染の兄弟、篠宮雪と日向は通称「美形兄弟」と名のつくほど端正な容姿を持ち、さらに兄は成績優秀、弟は運動神経抜群という才能の持ち主。決して交わることのないはずの平凡と非凡。日向が雪を溶かして雫が滴る──あるいは雫があれば雪解けを促せて枯渇も防げる……?
目次
プロローグ
>>1
第1章
>>2-25
第2章
>>26-
- Re: 雪と雫と日向 ( No.14 )
- 日時: 2023/01/13 06:55
- 名前: once (ID: feG/2296)
雪くんのファンクラブの勧誘?
というか加入を迫られ。
伊藤さん自身未だ在籍せず、
私の返事を待ってくれている。
まあ……一応何度か断ってはいるのだけど。
伊藤さんも一歩も譲らない。
うんと言うまで引いてくれないつもりなのか。
いつも雪くん情報を仕入れて
私に横流ししてくれるし。
姿を見つけては、すぐさま
私に報告してくれるし。
そこまでして説得されると
断ろうにも断りづらくなるし、
実際心が揺れ動いている。
雪くんに対するこの感情が。
ファンクラブのメンバーたちと
同じものなのか?
そもそもファンクラブの規模って
詳しく知らないのだけど……。
雪くんの取り巻き含め
確かに大勢の女子の視線は集まる。
その子たち全員がファンクラブ会員?
まさかね……。
気になって伊藤さんに質問してみると。
上級生が大半だけどそれだけで数十人。
1年生もそれなりに集まってきて、
全体で、女子総なめも夢じゃないくらい、
らしい。
どれだけ誇張した発言か知らないけど。
──大規模すぎる。
- Re: 雪と雫と日向 ( No.15 )
- 日時: 2023/01/13 07:08
- 名前: once (ID: FWNZhYRN)
その中に入るのはちょっと
気が引ける。
第一ファンじゃないし。
ひねくれたことを言えば。
ファンクラブに加入したところで。
一体何の利益がある?
「会員特典は特にないけどー」
困ったように伊藤さんは目を泳がせる。
むなしいことを聞いたと
私は少し申し訳ない気持ちになる。
「でも情報とかいっぱい入ってくるし、先輩方なら写真とか結構持ってるんじゃないかな。あとクラブ内で交友関係も広まるよ! 篠宮先輩とも距離縮まるかもだし!」
ワンチャン可能性あるかもよ!
とまるで私が隣を狙ってるとでも言いたげ。
──ていうか、え。
写真ってどういうこと?
隠し撮り?
「体育大会とか文化祭とかイベント事でツーショットお願いしたら割とすんなり受け入れてもらえるらしいよ。でも後輩が頼むと周りに生意気とか失礼だとかささやかれて非難浴びるかもしれないからやめといた方がいいって」
確かに……。
嫉妬の対象にはなりかねない。
でもまあ……私でも。
幼馴染とはいえ2人で撮った写真は
実際あまり持っていない。
- Re: 雪と雫と日向 ( No.16 )
- 日時: 2023/01/13 07:27
- 名前: once (ID: Ve/IoWsn)
でも結局はそれって、
ファンクラブに加入したとて1年生なんぞは
雪くんに近づく術もなければ権利もない。
ファンクラブというのは所詮
遠くから見つめて応援するだけの集団。
集団で互いを励まし合い、協力し合い
主役を引き立てて追っかけるだけの存在。
決して近寄るものではない。
そばに行けるものではない。
大勢で1人を応援するって相当シュール。
仲間がいれば心強いと言えば
そうかもしれないけど、でも。
それって本気の恋じゃなくて
楽しむための恋だよね?
自分が満足する方法だよね?
好きという気持ちが最優先で
結ばれる運命を導くわけでなく。
一種の娯楽として
アイドルの応援みたいに
相手の活動を追ってるだけだよね?
どちらかといえば。
ファンクラブに入るということは。
自分じゃなくて相手が主役になって
自分はもう脇役ですらなくて
観客になってしまうということでは?
はっきり言ってしまえば。
結ばれる運命を諦めたようなもの。
だってファン同士で同盟を結ぶわけだから。
- Re: 雪と雫と日向 ( No.17 )
- 日時: 2023/01/13 07:46
- 名前: once (ID: I4LRt51s)
ファンクラブに入っても
入らなくても変わらない
基本同じことならば。
「──私は入らない、かな」
万が一
本人に自分の気持ちが知られて
幼馴染なのにファンに降格して
遠巻きに恥ずかしい思いをして
そういうリスク背負ってまで
ファンクラブに加入する覚悟も
メリットもない気がする。
もし恋心を本人に伝えるときがきたら
他の会員の方々に申し訳ないなって
抜けがけだなって罪悪感抱く人
いないのだろうか……?
「まあ確かにマジ恋の人は少ないかもね」
伊藤さんの口から放たれた衝撃発言。
え、嘘、今さら?
「鑑賞用とか、芸能人感覚の人多いと思う」
実際私もそういう“好き”だろうなー、
と伊藤さんは自分の髪の毛をいじりながら言う。
「それもっと早く言ってほしかった……」
拍子抜け。
確かにファンクラブっていうくらいで
恋愛同盟とかじゃないからね……。
好きの種類や重みが違う。
私は雪くんのファンじゃない──。
- Re: 雪と雫と日向 ( No.18 )
- 日時: 2023/01/13 08:09
- 名前: once (ID: wsTJH6tA)
***
あれから数か月が経って。
どうやら伊藤さんは自分1人で、
雪くんのファンクラブに加入したらしい。
──という噂を本人から聞いた。
いや、本人から聞いたのだから
噂ではなく事実なのだろうけど。
その打ち明け方があまりに他人事で。
他人行儀で、まるで噂話だったので、
“らしい”という表現になってしまった。
「勇気出して1人で入ったんだね」
「まあ……気乗りしない友人がおりましたので」
そして私にもよそよそしい態度。
言葉遣いがもう完全に友人以下。
「いや、ごめんて。本当に申し訳ないと思ってるよ、せっかく誘ってくれて……長らく待ってくれてたのにいい返事ができなくて」
心からの謝罪。
ファンクラブの全貌を知らないので
どういう仕組みで加入するのかも
分からないけど……。
計り知れない大所帯の会員を前に、
伊藤さんは緊張な面持ちで手続きを済ませた。
──という図が頭に浮かんでしまう。