コメディ・ライト小説(新)

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雪と雫と日向
日時: 2023/01/14 07:11
名前: once (ID: wsTJH6tA)

タイトル
「雪と雫と日向」

あらすじ
容姿も頭脳も生まれも育ちもごくごく平凡な主人公・相沢雫あいざわしずく。近所に住む幼馴染の兄弟、篠宮雪しのみやゆき日向ひなたは通称「美形兄弟」と名のつくほど端正な容姿を持ち、さらに兄は成績優秀、弟は運動神経抜群という才能の持ち主。決して交わることのないはずの平凡と非凡。日向が雪を溶かして雫が滴る──あるいは雫があれば雪解けを促せて枯渇も防げる……?

目次
プロローグ
>>1
第1章
>>2-25
第2章
>>26-

Re: 雪と雫と日向 ( No.1 )
日時: 2023/01/13 12:29
名前: once (ID: dpACesQW)

プロローグ

***

雪は冷たくて痛くて触れると手が凍てつく。
雪の日は寒くて震えるし、生活が不便。

そうやって敬遠されがちな雪を、少女は称えた。
「雪景色は息を呑むほど圧巻だ」
「一年にそう多くは降らない、貴重で繊細な雪」

少女は雪が大好きだった。
せっせと作る雪だるま。
手袋が濡れても手が真っ赤になっても
毎年雪遊びを楽しみにしていた。

雪の季節に終わりを告げる頃。
季節の移り変わりを象徴するように
天気は快晴、日向ができた。

日向は徐々に自然に温もりを与えていく。
当然雪や霜は汗をかき始める。
少女は最後まで雪解けを眺めていた。
そこから生まれる雫まで。

雪だるまから滴る雫の、行く先を。

***

生まれ持った容姿も才能も頭脳も
一際目立った取り柄もない。
いわゆる平凡。
平凡では、厳しい世の中を渡れない。

それでもめげずに真実だけを追って
奇跡だけを信じて自分を貫く少女がいた。

あざみの棘が刺さっても
あなたにも笑顔をもたらしてくれるはず。

Re: 雪と雫と日向 ( No.2 )
日時: 2023/01/11 07:57
名前: once (ID: wsTJH6tA)

第1章

***

ジリリリリリ、ジリリリリリ……。

狭い部屋の空間の大半を占領する寝具。
おかげでただでさえ狭い部屋が一層
狭苦しくなってしまっている。

勉強机より寝具が優先?

こんな大きなベッドいらないのに、
立派な勉強机の方が大事なはずなのに、
なぜかそちらは折り畳み机で済まされている。

もちろん机に椅子はついていない。
立派なベッドなものだから移動もできない。
足場もない中やっとできた最大限のスペースで
折り畳み机を広げて地べたに座って勉強する。

クローゼットは一応あるので
開ける際は苦労するけど収納には不便はない。
しまい込んだまま出す機会がなくなることはあるけど。

このベッドのおかげで、寝るのには困らない。
毎日十分な睡眠がとれるし、快眠できる。
広くて厚くて丈夫なベッドなんて理想的じゃないか。

ふかふかで寝心地もいい。
毎晩夢も見ずに、深い眠りにつける。

──それにしても、この音は何だろう?
頭上で鳴り響く甲高い音、
繰り返し、小刻みに震えている。

Re: 雪と雫と日向 ( No.3 )
日時: 2023/01/11 08:12
名前: once (ID: wsTJH6tA)

ジリリリリリ、ジリリリリリ、ジリリリリリ……。

──はっ!
そうだ、そういえばそうだった。

夢心地のまどろみの中で、
大切なことに気づいて目が覚める。

意識が現実に引き戻されて、
私は悲惨な事実を知る。

「──遅刻だ!」

ベッドの隅、頭上に置いた
目覚まし時計を引っ掴んで
針の指し示す時刻を読み取り絶叫する。

「やばいやばいっ、寝過ごした!」

ベッドから飛び起き、
乱れた掛け布団を直す余裕もなく
急いで身支度を整える。

入学早々寝坊、さらには遅刻するなんて
度胸がよすぎるよ。

──自分、そんなんじゃないです!
度胸も据わってないしそんなつもりないし

まさか目覚まし時計セットしといて
寝坊するなんて思いもしないから!

昨夜調子に乗って、
制服のファッションショーやら
ヘアスタイルなどイメチェンを模索したり
新しい学校生活を妄想したりと
遅くまで余計なことを考えたのがいけなかった。


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