コメディ・ライト小説(新)
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- ファイティン・ラブ!~彼氏は推しでした~
- 日時: 2023/09/23 06:43
- 名前: このか ◆XqDKo6W48k (ID: v5g8uTVS)
以前書いていた作品を改稿します。
題名はとりあえず同じにします。
さらに読みやすくする予定です。
感想、頂けると嬉しいです!
【登場人物】
・柴田美織⇨主人公。高2。茶道部。私立星川高校特進クラスの生徒でまじめな学級委員長。戦国オタクで宮城出身なため、伊達政宗推し。頭の良さから『神童』と呼ばれて育つ。『雑草のようにひっそり生きる』がモットー。
・柴田沙絵⇨美織の妹。高1。囲碁部。県立湘南科学高校の生徒。美織とは対照的に目立ちたがり屋な節がある。
・熊野陽花⇨美織の親友。高2。吹奏楽部のパーカッション担当。情報通で校内の情報を知り尽くしている。戦国オタクで、直江兼続推し。
・咲坂杏⇨美織の親友。高2。料理部。とにかく優しい。戦国オタクで、上杉謙信推し。
・三浦晴樹⇨学級副委員長。高2。バレー部の高身長イケメンで、とにかく人気者。
・比留木貴史⇨美織が宮城にいた頃の幼馴染。繊細な心の持ち主で、俳句や短歌を作るのが好きなので、美織によく俳句を添えてハガキを送ってくれている。
・伊達政宗⇨美織たちの特進クラスにやってきた転入生。高2。武将と同じく、料理が好きで文化人。とにかく武将とそっくりだが理由は不明。
☆戦国武将そっくりさん達の紹介⇨順次追記します
【目次】
【chapter1 仁にすぐれば弱くなる】
・第1話>>1 ・第11話>>11
・第2話>>2 ・第12話>>12
・第3話>>3 ・第13話>>13
・第4話>>4 ・第14話>>14
・第5話>>5 ・第15話>>15
・第6話>>6
・第7話>>7
・第8話>>8
・第9話>>9
・第10話>>10
⭐第1話から第10話のまとめ読み>>1-10
【あらすじ】
横浜の名門校に通う高2・柴田美織は、その頭の良さから神童と呼ばれ、育っていた。
そして、宮城出身であることから戦国武将の伊達政宗オタクだった。
そんな中、転入してきた転入生の名前は「伊達政宗」で……!?
戦国武将そっくりなエリート男子×戦国オタク神童女子が織りなす、[エリート×エリート]ラブコメディ!
- Re: ファイティン・ラブ!~彼氏は推しでした~ ( No.11 )
- 日時: 2023/08/26 17:03
- 名前: このか ◆XqDKo6W48k (ID: wtNNRlal)
《第11話》
【政宗side】
──どこで生まれた?
どこで育った?
育った場所の景色は、匂いは、人々の様子は?
俺は自問自答しながら、初夏の仙台駅、夕日が差し込む新幹線ホームに、1人で立っていた。
まるで何かを打ち消すように、自問自答を繰り返していた。
俺が物心ついた時からずっといた、宮城県仙台市を離れることになったのはつい2週間前のことだ。
人々が生き生きと暮らすその街を離れることに、なぜか抵抗はなかった。
中学生の頃から憧れ、必死に勉強をして入った高校を離れることも、故郷を離れることも、親と別れることも、何もかも。
見送りに来てくれた友達に別れを告げ、俺は『はやぶさ』の新幹線に乗り込んだ。
それから東京駅まで移動し、東海道本線で横浜まで380.6kmの大移動をした。
横浜駅を出た頃には、外は仙台駅を出た頃に比べて暗くなっていた。
親にLINEで横浜駅に着いたことを報告し、さらにもう1本電車に乗って、2駅先まで行った。
ここが、俺がこれから暮らす街だった。
歩いているうちに、これから同居人となる従兄弟が住んでいる、タワーマンションが見えてきた。
従兄弟が教えてくれた通り、『3』と書かれたエレベーターのボタンを押し、部屋に向かう。
本当は入り口で、チャイムを鳴らそうかと思ったけれど、もらった鍵が使えるかを試してみたくてそのまま上まで上がってきたのだ。
鍵を差し込み、ドアを開けると、中から従兄弟が出てくるのがわかった。
「よく来てくれた。さあ、上がって」
「これからよろしくお願いします」
これから、俺はここで暮らしていくのだ。
そう、改めて決意をし、また1歩を踏み出した。
- Re: ファイティン・ラブ!~彼氏は推しでした~ ( No.12 )
- 日時: 2023/09/10 17:14
- 名前: このか ◆XqDKo6W48k (ID: SgaRp269)
《第12話》
俺が新しく通うことになった学校は、横浜駅の近くにあり、電車通学となった。
以前とは違い、公立ではなく私立だったので、緊張が収まらない。
お嬢様とかいるのかなぁ…、などという想像をしながら電車に乗り込む。
そこで俺は今日1つ目の大発見を目にする。
車掌さんが、人を押し込むだと……!?
仙台でも満員電車は目にしたことはあるが、車掌さんが人を押し込んでいるというのはてっきりニュースの世界の話だと思っていた。
よく考えれば、あまり周りを見ていなかっただけかもしれないが、これは俺に取って、かなりの大発見だった。
驚きの光景を目にし、一気に肩身が狭くなったような気がした。
そこから逃げるように、俺はいとこに向けてLINEを打つ。
「車掌さんが満員電車で、人を押し込むという光景を初めて目撃しました。横浜ではしょっちゅうあるものなんでしょうか?」
返信を待つ時間がとても長く感じる。
1,2分ほどして返信が来た。
『しょっちゅうというか…。よくわからないな』
『政宗が考えるほどは珍しくないと思うけど』
珍しく、ない……。
満員電車をとても恐ろしく感じてしまう俺に、これから何が訪れるのだろう。
転入先の学校は、きれいな6階建てだった。
自己紹介を終え、言われた通りの席に着席する。
というか、すごく視線を感じる気が…。
それが、『伊達政宗』という名前によるものか、右目の眼帯によるものか、単なる転入生というものに対する興味か、分からなくてギブアップしそうだ。
朝のホームルームが終わり、次の授業へ準備を始めたところで、いきなり隣の女子に話しかけられた。
今までオーラを消しているかのように静かだったもので、全然意識が向いてなかったと、反省する。
「あ、あの…。隣の席の柴田美織と申します。一応学級委員長なので、何かあったら頼ってもらえると嬉しいです」
美織、と名乗った女子は髪はセミロングでそれほど目立つタイプではなさそうだった。
そして、ここで俺はまさかの失言をしてしまう。
- Re: ファイティン・ラブ!~彼氏は推しでした~ ( No.13 )
- 日時: 2023/09/10 17:39
- 名前: このか ◆XqDKo6W48k (ID: SgaRp269)
《第13話》
「あ、よろしくね!」
までは良かった。
「そうだ、初っ端から失礼な事言っちゃうけど…」
ここまで言って俺は後悔した。
いや、失礼な事を初対面の、しかも学級委員長に言うな!
しかしここまで来てどうしたらいいのか分からない。
この世界は、分からないことだらけだ!!
「学級委員長にしてはかなりひっそりしてるね」
「あ、委員長は推薦でなったんで、私はそんなに目立つタイプではないです」
と淡々とした答えを返され、俺は安心する。
「そうなんだ。大変だね」
と相槌を打つ。
だが、学級委員長ってこんなにもひっそりしてたっけ…?
17年間の人生で、出会ったことのないタイプだと思った。
今まで会った学級委員長は大抵、みんなからよく話しかけられる人気なタイプだったから、意外に感じた。
それから柴田さんが先生に呼び出され、1人でいたら、今度はボブヘアの女子に話しかけられた。
「熊野陽花です。よろしくね」
と手渡された名刺サイズの紙には、SNSアカウントと、住所、電話番号が書かれていた。
なるほど、名刺のようなものか。
「どこから来たの?」
「えっと、宮城県の仙台市からです」
「へー、そうなんだ〜。身長高いよね。いくつ?」
「181cmです」
「え、めっちゃ高い!あ、もしかしてだけど几帳面そう」
と机の上に出していた手帳に熊野さんは目を向けた。
「血液型、A型?」
「あ、はい。すごい、人を観察するの好きなんですか?」
「うん。なんか面白いんだよね。こうやって話を聞くのもすきなんだ」
世の中、いろんな人がいるなぁ。
- Re: ファイティン・ラブ!~彼氏は推しでした~ ( No.14 )
- 日時: 2023/09/18 10:37
- 名前: このか ◆XqDKo6W48k (ID: 3p1tWxjm)
《第14話》
調理実習の授業で大好物の伊達巻を作っていると、隣のグループから話しかけられた。
先程話した熊野さんもいる。
「伊達巻、好きなの?」
爽やかタイプの好青年は言った。
「う、うん」
熊野さんが好青年の肘をつついた。
「自己紹介、しなくていいの?」
「あ、そうだね」
と好青年はまた爽やかな笑みを浮かべた。
その姿がまるで漫画のようで、驚きを隠せなかった。
「俺、三浦晴樹。男子バレー部です」
「三浦くんは学級副委員長なんだよ」
なんか三浦さんが委員長みたいだな…。
「ちなみに部活はどこ行くか、考えてる?」
「えっと…まだ決まってなくて」
「そうなんだ。前の高校では部活入ってたの?」
「一応、新聞部に」
「なるほどね~。伊達くんは背が高いからバレー部に来てほしいなぁ」
「うわ、さりげなく勧誘してる……」
と熊野さんが眉をひそめた。
なんだかんだでこのクラスの空気、嫌いじゃないかもしれない。
お昼休憩の時間になり、俺は部活パンフレットを見ながら1人、何にするか迷っていた。
とにかく部活の種類が多く、絞りきれない。
前の学校で入っていた新聞部はないし、余計迷ってしまう。
できれば活動日数が少ない部活がいいな───などと考えていると、柴田さんが三浦さんと話しているところが目に入った。
聞こえてくる限り、放課後の用事について話しているように思える。
柴田さんはしっかりと礼をして廊下に姿を消していく。
彼女、礼儀正しいんだな…。
あの脇の拳1つ分の間隔、ゆっくりとした礼の動作。
おそらく茶道部だろう。
パンフレットの写真を確認するとやはり、柴田さんが写っていた。
そんなことをしながらぼんやり過ごしていると、いきなり声がした。
振り向くと、三浦くんがいた。
「伊達くん、お昼一緒に食べないか?」
俺は笑顔で頷いた。
- Re: ファイティン・ラブ!~彼氏は推しでした~ ( No.15 )
- 日時: 2023/09/23 06:42
- 名前: このか ◆XqDKo6W48k (ID: v5g8uTVS)
《第15話》
「彼女、ほんと礼儀正しいよなぁ」
三浦くんにさっき気づいたことを話すと、共感してくれた。
「真面目で仕事もできるし、いろんな意味で頭が良い。今まで学級委員やってなかったみたいだけど、俺は学校のリーダーにふさわしいのは彼女───美織ちゃんだと思う。僕たち他の学級委員も委員長を見習って、頑張ろうと思わせてくれる存在だよ」
そう言って微笑んだ。
美織ちゃん、って下の名前呼び!?
と俺は少し驚愕したものの、三浦くんに頷く。
「そういえば茶道もうまいらしいよ」
「そうなんだ」
お抹茶というのは、きれいに泡立てたりするだけでも大変なのに、お点前もきれいにできてしまうなんて…。
それに、いろんな意味で頭が良くて、真面目で仕事もできるだと…?
彼女、一体何者なんだ───?
放課後、柴田さんに部活案内をしてもらった。
学校中広いので、歩くだけでも疲れてしまう。
グラウンドの外側のマラソンコースに目を向けると、三浦くんがかなり早いペースで走っていた。
「バレー部は外練もしてるみたいですね…。今日はいつもの15周からスタートかな?」
「15周もするの!?」
「運動部は練習が厳しいんですよ」
「な、なるほど…」
「すごいですよね。頭も良いし、運動もできるし、性格も良くて慕われている。三浦さんは星川生の鏡です。素直に尊敬します」
と柴田さんは頬を緩めた。
三浦くんも、すごい人なんだなぁと感心する。
家に帰ることになり、偶然にも同じ駅で降りることになった。
別の方向かな、と思ったらマンションまでの道のり同じだった。
本当はもっと驚くべきかもしれないが、帰ってから何しようかと考えていてぼーっとしていたのだ。
エレベーターのボタンを押して、3階のボタンを押す。
それから家の鍵を開ける。
隣を見ると、柴田さんの目線が鍵を開けながら僕の手元と顔を行ったり来たりしていた。