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僕と奇妙な住人たち。
日時: 2010/02/22 16:20
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

ストーリー上ぐろい部分もありますが、お気をつけ下さい。

<登場人物>

『僕』──12歳の時、とある事件で1年間精神科に通っていた。 2年間引きこもり生活を終え、『鳥籠荘』に。

染井芳野──淡々とした性格で誰に対しても敬語。とある事件の関係者。 いくつかトラウマがる。

イタチさん──『鳥籠荘』のオーナー。年齢不詳。住人たちの事情をある程度熟知している。

伏谷そよか──20歳にしては少々子供じみた言動を取る。ある事情からか、『人間はタヒなない』と思っている。

相沢キョウ──切れ目で美形な無口な住人。18歳。『鳥籠荘』の設けている喫茶店でバイトしている。

宮津春日──お茶目な性格で冗談ばかり言っている。少々変質的で周りから引かれる事も多い。20歳。

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Re: 僕と奇妙な住人たち。 ( No.20 )
日時: 2010/02/27 10:47
名前: 朝倉疾風 (ID: 0N93rCdO)

「・・・・・・・・何食うの」
「しょっぱくないオムレツ」

喫茶店に行ったら、キョウさんが少し驚いた顔で出迎えてくれた。
まあ、僕のオマケで芳野がくっついてたらそりゃ驚くわな。

開店時間がまだだから、多分住人たちの注文を聞いて作ってたんだろう。
奥に春日さんがコーヒーを飲みながらこちらをガン見している。

「少年・・・・お前の、ソレ・・・なに?」
「僕の恋人です」
簡単に答えておいた。 「ああそ」 春日さんもそれ以上は関わりたくないのか、視線を下に下げる。

人前では僕と一緒でも本性を隠し通すのか、無表情を貫いている芳野さん。
「開いてる席・・・・・どこでもいいから・・・・・」
キョウさん、視線が芳野に釘付けです。

「どこに座りたい?」 「どこでも」
素っ気無い返事だけど、腕にこもる力が本心を物語っております。 折れそうです。
春日さんとは反対側の奥に座る。

「・・・・・・・・・・どうぞ」
最後まで芳野見てたよな、キョウさん。 狙ってんのか? でもそっちにはそよかさんがいるだろー。
てか意外と表情変わるんだな。

しょっぱくないと思われるオムレツを口へ運ぶ。
うん、かなりしょっぱい。
「芳野、おいしい?」 
こくりと頷く。 芳野とキョウさんの味覚がおかしいのか僕のがズレてるのか・・・。

オムレツを食べ終えて、外に出ると、芳野が久しぶりに笑った。
「にひひ、デートっぽい」
「そうですかー」
笑えない事がもどかしい。

「見て、あの花。 私がお世話してた、冴の大好きな花でしょ? 私がちゃーんとお世話してたんだよ」
鳥籠荘の庭を指差して、子供のように報告してくる芳野。
何の疑いもなく、現実を見ずに、ハリボテの世界へ突入中。

「えらいね、芳野は」
「でしょでしょー」
水のやりすぎて枯れている一部発見。 お可哀相にそうに、やがてコレらは過剰水分摂取で枯れていくだろう。

「ぬーなんか眠くなったぁ」
「寝てもいいよ」
「傍に居てくれる?」
「モチ」

よろこんで。

Re: 僕と奇妙な住人たち。 ( No.21 )
日時: 2010/02/27 11:23
名前: 朝倉疾風 (ID: 0N93rCdO)



                       .





「なーんでキミと芳野が一緒にいるのかねぇ」
「告白したら、オッケーもらえたんで」

僕の返答に、イタチさんが面白く無さそうに笑う。
リビングのソファで、僕は今芳野の枕にされている。
使われているのは、膝だけだけど。

「頭の傷・・・・昨日はなかったから・・・・へえ」
何を察したのかうんうんと頷いて僕を見据える。
「自分の事、話したんだ?」
「・・・・・・・・・・・・全部、知っちゃってる系ですか?」
「ある程度は」

納得。 だから芳野がいる事も黙ってたんだ。
イタチさん、性格が奈落の底並に悪そうだし。

「んー、でもかなりヤバイ状況だね」
「なにが?」
「・・・・・・・・・・・・・・・生きてるんでしょ? 彼女」

ああああ ああああああ? ああ、 あああ
いぎぎぃぃぅっ、うぐすずさつつ

あ。 あああ、


「・・・・・・・・・全部、知ってるんですね」
確信した。 この人は全て知っている。
芳野の正体も、僕のことも。

「俺はただ、キミらを 『監視』 してるだけなんだよ。 個人的にね」
「精神科医の弟さんのクセによくそれだけ言えますね」

図星。 少し驚いた顔をしている。
「ありゃりゃ、バレてた?」
「顔がよく似てるし、性格は・・・もそうですね」
「へぇ、姉貴に似るとは俺も散々だね」

本当に嫌そうな顔してるよこの人。
どんだけ先生が嫌いなんだよ。 シスコンのクセに。

「これから、芳野ちんをどうするワケ?」
「どうもこうも、何もしませんよ」
ただ、傍にいるだけ。

「再会は、望んでいないんだよな」
「当たり前です。 僕だって、会いたくなかった」
本心からだった。 再会なんて、誰も望んでいなかったのに。

どうして、また会っちゃったんだろう。
会わなくてもよかった。

Re: 僕と奇妙な住人たち。 ( No.22 )
日時: 2010/02/27 11:33
名前: 朝倉疾風 (ID: 0N93rCdO)

                     .



雨の日だった。

「・・・・・・・・・家のまえで立ってたら、かぜ引くよ」

「え・・・・・・・・・」

どしゃぶりの中、その子は外にいた。

「×に、コレ渡して欲しいんだけど」

「・・・・・・・・名前は?」

「え?」

キミの、と指をさされる。

そのとき、どうしてキミは笑ってたんだろう。

どうして、ぼくは気づけなかったんだろう。

Re: 僕と奇妙な住人たち。 ( No.23 )
日時: 2010/02/27 11:53
名前: 朝倉疾風 (ID: 0N93rCdO)

         第三章
     同じ顔、同じ顔、違う人



芳野は一度寝たら、なかなか起きない事を初めて知っ
た。
僕がいると知って安心したのか、もう数時間になる。
「ちょっと出かけてきます」
「あれれ、どこ行くの。 実家?」
「いえ、病院に」

うげっと言うような顔で、イタチさんがテレビから目を逸らす。
「姉貴に会いに行くのかよ」 「ま、そうですね」
一応、担当なワケでして。





Re: 僕と奇妙な住人たち。 ( No.24 )
日時: 2010/02/27 18:30
名前: 朝倉疾風 (ID: 0N93rCdO)

鳥籠荘を出て、徒歩で15分の所。 人気の無い田舎にポツンと立っている、鉄格子がされてある建物。
消毒液という匂いは無く、パジャマを着た人がウロウロしたりしている。

名前を呼ばれて、診察室に入って、
「おっひさー。 何ヶ月ぶりだっけかー?」
陽気な口調で先生が声をかけてきた。

ズレる事ない赤フレームの眼鏡をかけ、黒髪を腰まで伸ばしてどこかのアンみたいに三つ編みにしている。
白衣こそ着ているけど、童顔すぎて三十代には見えない。

「二ヶ月ぶりです」 「キミも成長したあ? おやや、まったくしてないじゃないかー」
身長は伸びてません。 体重も変わりなし。

可愛い、というよりはキレイな顔立ちをした、精神科医でイタチさんのお姉さんの、築島 ヤナセ先生。

これだけ見るとイタチさんの苗字は 『つきしま』 なんじゃないかって確信するんだけど、ヤナセ先生の親が離婚してしまったらしい。
イタチさんの苗字が旧姓なのかどうかは興味ないからパスするとして。

「イタチさんの、お姉さんだったようで」
「あー、アイツまあだそんなあだ名で呼ばせてんだねぇ。 驚きだよ」
「自分でもそう呼んでくれって言ってましたから」
「へーへー。 んで、鳥籠荘はどう?」

椅子に座って、クルクル揺れている。 目ぇ回りそう。
「最悪でした」 「やっぱかー」
「芳野がいるって、何で言ってくれなかったんですか?」
「言っても言わなくても、どっちでも良かった。 キミが名乗らなかったら同じこと」

底意地だけは弟と瓜二つだ。
先生がため息をつきながら、僕を見据える。

「キミ・・・アイツから聞いたけど染井に言っちゃったんだって? 自分の事」
「大まかに」
「はぁ・・・。 なんでそーんな事しちゃうかなぁ」

そよかさんとは少し違った子供口調。
しばらく考え込んでいたけど、
「あ、そーいや」  閃いたのか、また落胆する。

「あの子、また捜してたよ」
「・・・・・・そうですか」
「いつになっても、愛というモノの力はすっげーねぇ。 ええ? さーえちゃん」

うわ・・・コイツ意地悪い。
「やっぱ、不機嫌になるね」 「分かっててやってるんだったら止めてください」 「へいほー」
どんな返事の仕方だ。


「芳野と再会して、僕はよかったんでしょうか」


聞きたい事が聞けた。
「キミは、どう思うのかな」
質問を質問で返さないで欲しい。

「僕には分からないから聞いてるんです」
「うーん・・・・私にも分からないかな」
「先生にも、分からない事ってあるんですか」
「そう。 そしてソレが正解」
「???」

先生が足を組み、軽く微笑む。
一番似合う、キレイな仕草だ。

「分からない。 それはキミの質問に一番適応する答えだと思うわけ。 誰にも、キミらの再会を予知していなかった。 再会したのも偶然。 キミが名乗り出た事は気まぐれ。 芳野が芳野なのも、運命。 別に誰が決めたワケでもない、誰も恨む事なんてできない」

先生が、語っているときはいつもより耳の器官が数十倍働いている。
いつもより、先生の声が響く。

「だから、キミが芳野と再会したのも、誰のせいでもない。 そして、ましてやソレが良かったか悪かったかなーんて、誰にも分からないのよ。 でも、本人らが良いと思えばOKで、悪いと思ったらノー。 それでいいじゃない」

こういう大人、嫌いじゃない。
一見なにも考えていないように思うけど、色々考えてるんだなーって思いました。
感想文みたい。

笑いが、こみあげる。

封印していた、感情。

「そんなに面白かった? 私の語り」
「ええ、本当に」
「あらそ。 キミはどうやら笑いのセンスが無いらしい」
「光栄です」

少しだけ気が楽になった気がする。
うおー、すっげー何コレ。 先生神じゃんっ。

「芳野が起きていると思うから、帰ります」
「がんばー」
「頑張りません。 疲れるだけですから」
「結果オーライ万々歳って事で♪」

そのままオーライして衝突しなきゃいいけどさ。


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