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僕と奇妙な住人たち。
日時: 2010/02/22 16:20
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

ストーリー上ぐろい部分もありますが、お気をつけ下さい。

<登場人物>

『僕』──12歳の時、とある事件で1年間精神科に通っていた。 2年間引きこもり生活を終え、『鳥籠荘』に。

染井芳野──淡々とした性格で誰に対しても敬語。とある事件の関係者。 いくつかトラウマがる。

イタチさん──『鳥籠荘』のオーナー。年齢不詳。住人たちの事情をある程度熟知している。

伏谷そよか──20歳にしては少々子供じみた言動を取る。ある事情からか、『人間はタヒなない』と思っている。

相沢キョウ──切れ目で美形な無口な住人。18歳。『鳥籠荘』の設けている喫茶店でバイトしている。

宮津春日──お茶目な性格で冗談ばかり言っている。少々変質的で周りから引かれる事も多い。20歳。

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Re: 僕と奇妙な住人たち。 ( No.15 )
日時: 2010/02/26 17:11
名前: 朝倉疾風 (ID: 0N93rCdO)




                       .






「あたし、×っていうんだー。 へんな名前じゃね?」

「え・・・・ぼくは格好いいっておもうけど」

「男の子みてーじゃん。 やっだー」

本当にいやなのか、足をじたばた。

「キレイだよ。 ・・・ぼくはそう思う」

「ぬぬっ。 今この名前がきにいったぜ」

普段とかわらない、かわるはずのない日。 会話。

×が学校を休む前のはなし。

Re: 僕と奇妙な住人たち。 ( No.16 )
日時: 2010/02/26 17:29
名前: 朝倉疾風 (ID: 0N93rCdO)

         第二章
     だから、とってもそうだけど




6月だから、多分学校ではもうすぐで夏だぜ、休みだぜとか騒いでるころあいなんじゃないかなーって思う。
一昔、僕の周りではそうだったから。
夏休みっていうと、なんだか部活だとか勉強だとか、そういうイメージがある。

そう考えれば、なんか嫌だなーって感じで。

でも、『鳥籠荘』の人らはそんな事、まったくと言っていいほど考えていない。
外の世界がどうであれ、こちらはしったこっちゃないって感じ。

「あっちー。 こりゃかなり温度あんじゃん」
イタチさんが黒のシャツにジーパン姿でリビングのクーラーをガンガンかけている。
その冷房のすぐ下で涼んでいるのは、そよかさん。

夏だというのに、薄い長袖の白いワンピースを着て、背後からくる人工の風にあたっている。
この前、そよかさんが無邪気に汚したテレビはキレイになっていて、昼ドラを映し出していた。

「ぬー、あれれ。 キョウは?」
「喫茶店のバイト」
「あー、そかー」

そよかさんはキョウさんがお気に入りなのか、口を開けばキョウ、キョウと言っている。
なんか、親離れできない子供みたい。

「なになに、しょーねん。 こっちをそんなに見てさー。 そんなに私が好きなのかぃ?」
「いえ。 物珍しかっただけです」
「ひでーなー」

口ではそう言ってるけど、全然気にしていない風だ。
「俺も・・・仕事行こうかねー」
「イタチって仕事してんの?」
「どっかのニートじゃねぇんだからさ。 アンタも内職ぐらいしろ」
「やだ。 メンドくさい」

イタチさんの目がかなり細くなった。 笑ってる。
そよかさんはイタチさんの事をあまり好きじゃないっていうのは、ここ数日でよく分かった。
態度に出てるっていうか。

「あれ、芳野ちんじゃない」
フザけたあだ名で僕の芳野を呼ぶのはお前かっ!
まー冗談だけど。
とにもかくにも、絶世の美少女がお出ましなワケでして。

「その名前で呼ばないで下さい」
「あはは。 もーコレでいーじゃん♪」
芳野スルー。 慣れているのか、イタチさんも何も言わずに出て行ってしまったけど。

・・・けどさぁ。

あー、そっか。 前に春日さんが言ってたな。
ミイラみたいになるって。
本当にミイラだ。

「染井さん」 「なに?」
強気な姿勢で言葉を返される。
「どっか、怪我したの?」
「・・・・・してませんけど」
「なんで、包帯巻いてるのかな」

ミイラ、とまではいかないけど。
頭部、両腕、両足首、首、かなり危ないほど巻いちゃってたりする。
肌の面積とほぼ互角なほど。

「べつに、いいじゃないですか」
「・・・包帯、好きなの?」
はい、スルー。
設置されている冷蔵庫(あったんだ)からペットボトルを取り出して、口をつける。

なんだ、人間らしい所あるじゃん。

「包帯、買ってきてもらったんだ」
「・・・・・・・・・・」
「まあ、前から好きだったしね」
強調してみた。 面白いぐらいに、食いついてくる。

「前から思ってたけど、会った事ありませんから」
「あっそ。 了解」
そっちに覚えはなくてもこっちにはあるんだけど。
まあ、芳野が覚えていないっていうのなら覚えていない方がいい。

そんなに、良い思い出じゃないワケだし。

Re: 僕と奇妙な住人たち。 ( No.17 )
日時: 2010/02/26 21:54
名前: 朝倉疾風 (ID: 0N93rCdO)

朝は何も食べずに、昼過ぎ頃に近くのコンビニで弁当を買って食べた。
喫茶店に行っても良かったんだけど、あのしょっぱいオムレツはあまり食べたくないなーと思って。

「そよかさんって食べないんですか?」
「食べる! キョウの手料理!」
「へぇ。 ・・・芳野は何か食べるのかな」
「あの子の事、あんま知らねー」

どうやらシークレットキャラクターらしい。
っていうか、冷房効きすぎじゃないか? 設定温度が最低になっている為、必死であげる。

「芳野っているからここに住んでるんですか」
「4年前。 ・・・なに、しょーねん。 あの子好きなの?」
「別の意味で大切だね」

別に嘘じゃない。 そりゃ、再会はしたくなかったけど。
「あの子、なんか変」 「ふーん」 「なんか、叫んでる」 「叫ぶ?」
なんだ、ソレ。

「叫んで、壁ガリガリって。 バッド振り上げる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・へえ」
それは、見過ごす事はできないねぇ。
要するに、ソレは病気の電波が完全受信で一方的なワン切り状態だと思うけど。

「それ、誰か知ってるんですか?」
「みんな、知ってるのかねぇ。 そよかは偶然トイレで目ぇ覚ましただーけー」
「そうですか」

あの、染井芳野が叫ぶ。
少しだけ脳裏に浮かんだのは、

彼女の悲痛な願いと、愛の告白だった。

Re: 僕と奇妙な住人たち。 ( No.18 )
日時: 2010/02/26 22:14
名前: 朝倉疾風 (ID: 0N93rCdO)



                       .




時計はもう深夜の時刻を記していて。
外は真っ暗。 冷房をタイマーにしてそろそろ切れるかって時。

やけに隣がうるさい。

壁をガンガン蹴っている音がする。 ぬー。
これはもしや芳野じゃないか?
隣、芳野なワケだし。
「・・・・行くか」
別に頼まれたワケじゃないけど、いつだって芳野のヒーローは僕だったワケで。

・・・・笑えない冗談、です。





「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッッ!」

扉を開けて、そこで目にしたものは僕が思っていたより想像を絶する芳野の姿だった。
「芳野ッ」
「う・・・・・・・・っ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ」

急いで扉を閉め、ベッドの上で壁でガンガンと頭を打ち付けている芳野を止める。
爪でガリガリと頭皮を掻き毟り、唸り声や奇声をあげる。

「芳野ッ、落ち着けって!」
「あああああああああああああっ、あああああああああああああ、ううあっ」
背後から両手を押さえ込んで、抱きしめるように動きを封じる。

「うううううううううぅぅぅぅぅぅっ! うああああぁぁぁぁぁぁぁっっ」
「芳野・・・・・・・」
それでも暴れる為、僕の皮膚をその爪が引っかいた。
包帯はされておらず、むき出しの腕や足を更に強く動かし始める。

「あ、ああ  ああ? うがっ あああ・・・あっ」
「大丈夫。 僕だから」
「あ・・・・、あ?」

これでも、思い出せないなら、僕は仮面を被るつもりだったのに。
「ごめん、芳野を一人にしちゃったね」
「・・・・・あ、ぎぃ?」
「僕だよ、芳野」

そうだ、しっかりしろ。
名前ぐらい、言えるだろ!

「・・・・冴。 冴だよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・サエ?」

僕は、最低だ。

「冴・・・・さえ、サエ? 冴・・・え、え、ええええ?」
言葉の羅列を繰り返し、動きをやめて僕の方へ振り返る。
「冴? 冴? 暗いから・・・暗いから、か、顔・・・見えない。 なんで、なにが、どうして」

「芳野、僕言ったよね。 芳野と前に会ったって」
「ああ、あ、うんうん。 言った、言ってた。 あれ、嘘じゃ、なかった?」
「当たり前だよ。 僕は冴だよ」

芳野が僕に抱きついてくる。
しっかりとそれを受け止める。 心は、無理だけど。
「冴、ずっと、ずっと捜してた。 冴が好きな花、いっつもいつも、私が、ね? 手入れしてたよ見てたでしょ?」
「うん。 芳野は良い子だね」

笑い声があがる。
暗いから顔は見えないけど、笑ってる。

「大好き、冴だーい好き。 冴は本当に大好き」
「芳野、やっと会えたね」
会いたくなかったけど。
「うん、うん。 ここ来て正解。 冴とまた会えて、わたしは、ラッキー」

頭を撫でようとして、ぬめりけがあるのに気づく。
「包帯、ある?」
頷いて、真っ暗でも分かるのかすぐさま包帯を渡してきた。

「巻くから、姿勢正して」
「えへへ。 冴、全然変わってない」
「当たり前デショ。 人は変わりません」
変わるに決まってるだろ。
もどかしい手つきで包帯を巻く。 本人は元気そうだから、病院てほどでもないだろう。

「僕もここで寝るから、芳野も寝ていいよ」
「ん、冴と寝れるの嬉ピー」
前の芳野とは全く想像がつかない言動だけど、忘れよう。
「そんなに僕と会えて嬉しい?」
「のだ♪」

「・・・・・そっか」

芳野が、ギュッと僕を抱きしめる。
抱きしめられたけど、僕ではないから、虚しいだけだった。

Re: 僕と奇妙な住人たち。 ( No.19 )
日時: 2010/02/27 09:42
名前: 朝倉疾風 (ID: 0N93rCdO)

その晩、僕は一睡もできなかった。
腕の中で突然の来訪者に驚き、歓喜し、泣きじゃくりながら熟睡している芳野とは大違い。
まあ、美人だから仕方ないか。 関係ないけど。

「・・・・・・・・・・んー」
あ、起きた。
目をゴシゴシ擦りながらうわっ、こっち見てる。
じとー。
目ぇデカイな。 
「・・・・・・・・・・・冴っ」

うぼぎっっ!!
抱きつかれて飛びつかれて芳野の頭で顎打った。
「・・・・・・・・ってぇ」
「冴、夢じゃなかった! 夢じゃなかったっ」
ぐ、ぐるじぃ・・・。

「花好きでしょ? 花、ずっと面倒みてたんだよえらいでしょいつもいつも待っててねそれで」
「はい、ストップ。 それは昨日の夜聞いた」
身に染みるほど感じたよ。 それこそ、僕の脳裏に傷がつくぐらい。

「いつからここで住んでる?」
「12歳のときっ。 一人暮らしデビュー」
詳しく言ったら住人いるけどね。
「うん、えらいね」
「もー、冴もここで住むんならちゃんと言ってよね」
「ごめんね」

頭を撫でてみる。 そういえば、傷は?
「ちょいごめん」  包帯を取って見ると、額が血で汚れていた。 血は止まっているみたいだけど。
「洗面所行こう。 顔洗わなきゃ」
「オッケー」

へぇ、名前言うだけでこんなに違うんだ。
などと楽観してる場合じゃない。 壁にも芳野の血が少し付着してるし。
相当強く打ち付けてたんだなー。 感心感心。

洗面所で芳野の顔を水タオルで拭いて、傷跡を確かめる。
縫わなきゃいけないかなーとか思ってたけど、大丈夫そうだな。
「芳野、おなか減った?」 「へりへり〜♪」

普段の淡々とした性格はなく、幼い幼稚な芳野になっている。
「喫茶店行こうか」 「行こ行こー」
背後から抱き疲れながら歩く。 歩きづらい。


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