ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 始まりは懺悔の願い
- 日時: 2010/05/02 19:31
- 名前: 暗刻の導き手 ◆MCj.xXQAUE (ID: khxqjExY)
初めまして。
このサイトに書くのは、初めてです。
緊張してます!
更新が遅いかもしれませんが、よろしくお願いします。
コメントや感想があると頑張れるので、ぜひ読んだら感想お願いします。
ちなみにこれはいじめ小説ではありません。(一部にいじめのシーンがありますが、あくまで一部です)
めだかさん
こたつとみかんさん
尚さん
まろにえさん
羽鳥さん
海さん
アキラさん
から感想を頂きました。ありがとうございます。
更新遅れてすみませんでした。
頑張りますので見捨てないでやってくださいませ。
目次
すべての終わり >>1
プロローグ >>3
すべての始まり >>6
第一章 >>6〜
丑三つ時 >>6
始まりの、ひと月前 >>8〜>>9
二年前 >>11・>>13
間章
始まりの、数日後の夜 >>18
第二章 >>22〜
始まりの直前 >>22
始まりの、数週間前 >>23・>>29・>>30・>>31
始まりの、数週間後 >>31
間章〈二〉
終わりは続く >>32
第三章
始まりの、数日前 >>33
始まりの、一週間前 >>34
一年半前 >>37
- Re: 始まりは懺悔の願い ( No.33 )
- 日時: 2010/05/02 19:05
- 名前: 暗刻の導き手 ◆MCj.xXQAUE (ID: khxqjExY)
第三章
始まりの、数日前
控えめな朝日が、きちんと閉められていないカーテンのわずかな隙間から若奈のプライベートルームに差し込む。
「ん……」
目覚まし時計を手探りで手に取り、目をこすりながら、時刻の確認。
現在、六時五十分。
中学校までゆっくり歩いても十分で着いてしまうため、以前は七時半ごろに起きていた。けれどこの頃若奈は早起きをしていた。いつもより三十分以上早く起きるのは、かなり辛いけど。
「起きなきゃ……」
重い体を動かし、ハンガーにきっちりかかっている制服に手を伸ばす。
慣れた手つきで、服を脱ぎ、着替える。いそいそと着替える。
春奈と顔を合わせたくない。そんな理由で。姉失格のそんな理由で。嫌悪感で吐き気がするような気持ちで。
「……」
沈んだ気持ちを消そうとしたけれど、それは全くの徒労だった。
それどころか。
小学校入学時に買ってもらった、きちんと手入れされている勉強机。その上に置かれた電源を切ってしまい、もう何日も触れていない携帯電話が視界に入ってしまって。
気分はさらに重く、沈む。
「……」
沈鬱な、おなかが痛くなりそうな気分の中、いつものようにおみそ汁の心地いい匂いのするリビングに顔を出す。
「お。今日も早いな、若奈」
慣れた手つきでキッチンを動き回っていた少年がこちらを見て、親しげに明るく手を振った。
「うん。……おはよう、お兄ちゃん」
「おはよう」
ずっと前に家庭科の授業で作ったと言っていたエプロンをつけた兄は、母よりも手際がいいのではと考えてしまうほどの要領で、テーブルの上に若奈の食卓を用意する。
「……いただきます」
沈鬱な気分を無理やり押しだして明るめの声を出し、こちらを嬉しそうに眺める兄の横で、若奈の一日は始まった。
- Re: 始まりは懺悔の願い ( No.34 )
- 日時: 2010/05/02 15:17
- 名前: 暗刻の導き手 ◆MCj.xXQAUE (ID: khxqjExY)
始まりの、一週間前
そして、若奈は選択した。
もう、後悔しないように。同じ間違いをしないように。
手元の携帯電話を、震える手で操作する。
今まで生きてきて、一番震えている手で、操作する。
柔らかな、機械音が流れて。
「もしもし?」
途切れた次の瞬間、相手の声が聞こえた。
大切な、それでいて暴君の友達の——親友の、声が、聞こえた。
明音の快活な、いつもより弾んだ声が。
「わたし……」
答えるのにも、かなりの時間がかかった。
体が、心が潰される。圧迫される。そんなイメージが、頭から離れない。
「メール見てくれたでしょ? もちろん若奈もやるよね。……わたし達、親友だもんね?」
そして、過去が織り成し、現在となり、未来が編みあげられる。
- Re: 始まりは懺悔の願い ( No.35 )
- 日時: 2010/05/02 15:51
- 名前: アキラ (ID: BLbMqcR3)
先ほどゎコメありがとうございました(*^^)v
綺麗な話と言って下さって……嬉しかったです(>_<)
いじめのシーンの、人物の心理描写がぐぅっでした!
- Re: 始まりは懺悔の願い ( No.36 )
- 日時: 2010/05/02 18:23
- 名前: 暗刻の導き手 ◆MCj.xXQAUE (ID: khxqjExY)
アキラさん、コメントありがとうございます。
わたしもコメントうれしいですよ。
いじめのシーンですか……。
かなり頑張ったところです。
ありがとうございます。お互い頑張りましょうね。
- Re: 始まりは懺悔の願い ( No.37 )
- 日時: 2010/05/05 11:39
- 名前: 暗刻の導き手 ◆MCj.xXQAUE (ID: yL5wamFf)
一年半前
小学六年生のころ。
自分の罪を、考えないようにしていたころ。今もずるいけれど、自分がそれ以上にずるかった時。
「若奈! 今日暇ー?」
教室にはまだ、かなりの人数のクラスメイト達が残り、友人同士の会話をそれぞれの面持ちでしている。
それは、このクラスの一員である、若奈も例外ではなかった。
真っ赤なランドセルの中に、うんざりするほど大量の教科書とノートを入れながら。若奈は右斜め前の席からかかった声に、ゆったりと顔を上げた。
「うん、暇だけど……」
二日前の席替えで本当に偶然近くの席になった友人、明音。
明音はその答えを聞くと、実にうれしそうな顔をして、机の上に無造作に放置されていたピンクのランドセルを軽やかな仕草で背負う。
「じゃあさ、この後わたしの家で遊ばない? 皆忙しいらしいから、二人だけだけどね」
後半、ほんの少し頬を膨らませながら。
さほど珍しくない誘いを若奈は、明音から受けた。
「……うん」
明音への返事に、しばらく時間がかかった。
最近、というか、あの時からいつもそうだった。
明音に言われるがままにいじめに加担したあの時から、いつもそうだった。
名前の通り明るい自分の友人に、若奈はとてつもない恐怖を感じずにはいられなくなってしまったのだ。
それをいけないと思いながら。友人に対して恥ずかしいと思いながら。けれど、自分や明音が悪いことをしたという確固たる事実は消えなくて。
そんなことを考えるために、苦しくて。
「やった! 今日せっかく家に誰もいないのに、若奈が遊べなかったら一人で退屈してたとこだったよ!」
若奈がそんなことを考えているのに、気づいているのか、いないのか。
明音はいつものように、元気に明るく、快活に笑った。
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