ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】
- 日時: 2011/12/28 09:35
- 名前: No315 (ID: D71pwe7j)
どもども〜、No315です。
とりあえず、小説描くのは初めてではないんですが、久しぶりにも程があるのでおそらく駄文です。
よろしくお願いしま〜す。
あ、荒らしはするなよ〜
ある日の彼は思いました。
なぜ、自分だけがこんな目に遭うのかと。
ある日の彼は思いました。
なぜ、他の人はみんな幸せなのだろうかと。
ある日の彼は思いました。
他の人は人生をどう感じてるのだろうと。。
ある日の彼は考えました。
どうすればそんなことを知ることができるのだろうと。
ある日の彼は気づきました。
そんな方法などないと。
ある日の彼は思い出しました。
自分の今までの最悪な人生を。
ある日の彼は思いつきました。
人生が変わった時、人はその人生をどう見直すのだろうと。
ある日の彼は始めました。
狂ったような、人生のデスゲームを。
第一章「始まりの日 Geme Start」
>>1 >>2 >>7 >>8 >>9
第二章「世界のルール Game Rule」
>>13 >>14 >>15 >>16
第三章「真実は裏側に Darkness Truth」
>>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23
第四章「プレイヤーと日常 Everyday Battle」
>>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38
- Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.34 )
- 日時: 2011/12/22 08:03
- 名前: No315 (ID: D71pwe7j)
先程の戦いを、一つの影が見ていた。
つい数分前まで、とある少女が隠れていた屋上に、一人の男がじっくりと三人を見下ろしている。
見る限りまだターゲットを狙うつもりらしい。それぞれの体勢を立て直し、ターゲットの少女を追いかけだした。
男は、歩き出した三人を目で追い、三人の姿が見えなくなってもしばらくその方向を見据えながら、銅像のように直立する。
しばらくその銅像状態が続き、誰かが見ていたら、本当に銅像と勘違いする程、時間が過ぎると、やがて人々—NPCの喧騒が聞こえてきた。
その喧騒を認識した瞬間、男は三人が消えていった方向へと、一歩一歩早足に進む。
……四歩、五歩、六歩、七歩、八——
男が八歩目を歩いたか歩いていないかの瀬戸際あたりで、急にNPC達の喧騒が一瞬で消え去った。それと同時に男が立ち止まると、すぐにその喧騒が戻ってくる。
「…………」
男は無言のまま右腕をゆっくりと持ち上げ、その手元に自分の武器を出現させる。
光の粒子が収束して出来上がったそれは、刃がギザギザで、まるでノコギリのように作られた一振りの剣。男は自分の剣を一瞥しながら剣を降ろし、歩き出す。
歩きだした先は屋上の隅なのだが、男は何のためらいもなく、まるで飛び降り自殺でもしにいくように、そのまま柵のない隅へと歩きだす。
——『隔離』——
男が歩きながら剣を握った右腕に少し力を加えると、戻ってきたNPCの喧騒が、また消え失せた。男はそんなことを全く気に留めず、屋上の隅まで移動していく。
——『筋力増強』——
そして、男は少し右足の力を込め、なんのためらいもなく、ステップを踏むような感覚のジャンプで屋上の先へと飛び上がった。
普通なら、ここでたいした距離しか飛べず、かなり下にある地面へと真っ逆さまに落ちていくのだが、男は信じられないほど高く飛び上がり、十メートルぐらい先の建物の屋上へと着地する。
着地したと同時に男は走り出し、先程と同じ様に建物から建物への大ジャンプを繰り返して、三人を追った。
- Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.35 )
- 日時: 2011/12/22 21:46
- 名前: No315 (ID: D71pwe7j)
大商業区 商売通り
「だからさぁ……その……スキル? 特性? そういうのをもっと早く教えて欲しかったなぁ」
「うるせぇ。あんなに早く怪が「隔離」を使って来るとは思わなかったんだよ」
「隔離って何?」
「……説明したっけ?」
「いや」
「…………」
「…………」
「……あ、そう」
「こら」
さてさて〜。舞台は大商業区入り口から数分歩いた先にある商売通り。入り口から近いことや、商売のベテランや新人など、さまざまなタイプの商人が店を出すため、なにかと一番人気の高い商売の場所なのである。
そんな商人や客のNPCがギャーギャーと騒ぐ中で、棍棒を持った化物との戦いで肉体的にも精神的にも疲労し、周りを見て回る気力すら無くなっている奴がいる。もちろん俺。
そして俺の隣で、慣れない口笛を吹きながら空を見上げている奴がいる。もちろん正影。
俺と正影は、あの怪との戦闘の後、休憩も兼ねて、正影が色々な説明を入れながら色々な所を回って行った。
まず向かったのが裏道。なぜそんな所に行ったかと言うと、とりあえず謎の武器商人Aに会いに行くためだった。俺達プレイヤーに武器を提供してくれる商人。一体どんな奴なのだろうと俺も少し気になりながら行き、会ってみるとなんてことのない、物凄い背丈の小さいヨボヨボの爺さんだった。
正影が、『ビスマルク』を取り出し、爺さんに何か注文をしている途中。俺はふと気になったことがあって自分のポケットを探り始めた。そして現れた五千七百円。
絶句だ。いつのまにか知らない内に俺のポケットの中に「うめぇ棒 スーパー★デラックス」が五百七十個買える量の大金(?)が入っていたのだ。そりゃあ絶句しかない。
どうやら、正影から聞いた「怪を倒すと金が手に入る」というのは本当らしく、おそらく怪を倒した瞬間に、俺のポケットの中へと出現したのだろう。これで「うめぇ棒 スーパー★デラックス」が買える。この世界にあるのかは知らないが。
「うめぇ棒 スーパー★デラックス」といえば、子供、大人問わず買い求める超安物非常食という事で大人気なお菓子だ。何十年か前、すなわち俺が生まれる結構前にも「うめぇ棒」という名前で大人気の商品だったそうだ。今ではほとんどの「うめぇ棒」が「うめぇ棒 スーパー★デラックス」になっているので、初代うめぇ棒はとても貴重な食べ物らしい。
一体どんな味なのだろうか? 俺が「うめぇ棒 スーパー★デラックス」で好きな味といえば「甘酸っぱく切ない恋の仮面舞踏会。海のバカヤロー! のコーンポタージュ味」だが、もしかすると初代うめぇ棒はそれにも勝る味を持っているのだろうか?
……さて、話がずれたが、俺はとりあえずその金を使い、武器屋で金を保管する財布と、とある物を買って裏道を出て行った。
そして今に至る。現在の俺達はとりあえず「ここでなんか買ってなんか売って儲けよう」という目的でそこらをうろうろしている。
物を売るには入り口の門番に商品を確認させないといけないのではないか? と俺は気になったが、ここに二ヶ月は住んでるらしい正影は「商人権」という、周りに被害、迷惑がかからない程度の商品は勝手に売ることができる権限を持っているらしく、俺の心配はするほどでもなかったらしい。
「えーと、スキルについてはどこまで話したっけ?」
正影が、そこらのアクセサリー店を見物しながら言う。
「それぞれの武器に付随している事と、まぁ色々なタイプに分かれてることだ」
「あぁ、そうそう」
俺も少々その店の商品を見ながら答える。っていうかその時間帯の過去は怪と戦った事の方がよく記憶に残ったからなぁ、正影の説明もどこか忘れてるかもしれない。
「まぁ、スキルにも色々な種類があるんだが、プレイヤーはそれを応用して使う。単純に使うと、まぁ使えるには使えるが強力な怪相手だとヤバイな。とりあえず全部のスキル説明する訳にもいかないから俺のスキルで説明するぞ」
「へいへ〜い」
俺は、適当に返事をしながら正影の方を見向きもせず、店の商品をゆっくりと観賞している。まぁ、聞くだけだし別にいいだろ。
俺が商品を見ていると、正影が隣で「ビスマルク」を出したのが見えた。銃をこんな街中で出して騒ぎにならないのだろうか? もしかしてこの街は銃刀法がないのか? 幸い正影が銃を出してるのはまだ誰も気付いていない。とりあえず俺は正影を無視して商品を再び観賞し、俺がとある品物を指差して「これいくら?」と商人NPCに聞こうと口を開くが、
——『隔離』——
「なぁ、こ……」
俺が口を開くと同時に、目の前の商人さんが音もなく消えた。それだけでなく、周りのNPCも全て消えてしまっている。イッツ絶妙なタイミング。
俺は最初はまた怪が出てきたのかと思って周囲を見渡すが、どこにもあの怪物は見当たらないし、でっかい足音も響かない。どうやらNPCが消えた原因は怪ではないようだ。
俺は、冷めた頭を高速回転させて、ゲーム内で、他にNPCの存在に介入できる存在を速攻で割り当てる。そして、隣にいる正影を冷めた目つきで見る。
「ま、これが全ての武器に付随しているスキル「隔離」って奴だ。発動者を中心に一部のデータを一時的に消去するフィールドを構築するスキルだな。このゲームはNPCも殺せるらしいから怪やプレイヤー同士の戦いにNPCを巻き込まないように作られたんだろ。っても、他にも色々な種類の「隔離」があるわけだが」
当の本人はビスマルクをクルクルと回しながら淡々と他の隔離についても俺に説明している。いや、確かに聞くより見るほうが分かりやすいけど、せめて、こういう初心者にとって衝撃的なことをいきなりするのはやめてほしいな。いちいち混乱するから。
- Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.36 )
- 日時: 2011/12/23 22:24
- 名前: No315 (ID: D71pwe7j)
「よし、とりあえずその「隔離」ってのは分かった。分かったから次からもっと丁寧な説明をしようじゃないか」
「なんだ。面倒くせぇな……んじゃ、どうせ人いねぇしイフリート・フレイム出せ」
俺はとりあえず次の説明が懇切丁寧なのを祈りながらイフリート・フレイムを両手足に出現させる。
「よし、それじゃあイフリート・フレイムに向かってどんなスキルがあるのか念じて聞いてみろ」
「は? いやいや。俺は別に自分の武器に話しかけたくなるほど寂しがりやじゃないぞ」
正影が突然変なことを言い出したので、俺はすかさず反論するが、正影は「早くやれ」と聞く耳を持たない。
しかたなく俺は心の中でイフリート・フレイムに向かって「この武器のスキルは?」とまるで検索するワードを打ち込んでる気分で聞いてみる。
すると頭の中に複数の文字が音も無く展開されていく。突然の事に少々驚くが、とりあえず展開された文字を上から読んでみる。まずは『武器能力』という文字の下に『隔離』『身体能力倍化』『武器強固』とおそらくイフリート・フレイムに付随してるスキルの名称が書かれている。
『武器強固』というのが何なのか分からなかったので、その文字を凝視と言うと違うかもしれないが、とりあえず頭の中でその文字に意識を向ける。すると、『武器強固』以外の文字が全て消え去り、『武器強固』の下に「どれだけ強力な衝撃を受けても『武器破壊』の武器能力が無い限りこの武器が破壊される事は無い」と説明文らしきものが現れる。
他の『隔離』や『身体能力倍化』なども説明文をよく読み、他に何かないか探してみて無い事を確認してから「もういい」と唱えると、頭の中に浮かんできた複数の文字が一斉に消えていった。
「よ〜し、よく分かった」
俺はNPCがいなくなった辺りを見渡しながら満足そうに呟く。
「とりあえずこのスキルを使って怪共をコテンパンにすりゃいいんだな」
「まぁ敵は怪だけじゃなくプレイヤーもいるんだが……とりあえずそんなもんだ」
正影は俺の様子を見て問題ないと取ったのか「隔離」を解除してビスマルクを消す。そして戻ってくるNPC達。俺もイフリート・フレイムを消して(具体的に言うと「隔離」で一時的に武器を消去して)戻ってきたNPC達の喧騒を眺める。
「そういや気になったんだけど、NPCの行動って一定のパターンがあるのか? それともやっぱ自由に動いてんのか?」
客が商人に何かを注文し、商人が注文の品を渡して代金を受け取るのを眺めながらふと気になったことがあり、隣の正影に聞いてみる。
「あぁ、朝昼晩、晴れ雨曇り嵐、春夏秋冬によって行なうことは決められているが、あいつらにも人工知能があるからな、気分次第で行動が違ったりするぞ。それに単純だし」
「単純? もしかして嫌な事があれば苛々するし嬉しいことがあれば喜ぶみいたいな?」
「そうだ。まぁ素直とも言うがな」
「なるほどな……」
俺は正影の言葉に頷きながらNPC達が運営する数々の店を見る。う〜ん、とりあえずなんか売るのが目的だからやっぱ屋台とか作った方がいいかな? となると飾りつけが必要になるな。いっそ飾りつけも一緒に売り物にして店を開くかな……。
言っておくが俺は切り替えが早い。先程のNPCの話などもう頭に無いわ! ま、記憶にはあるが。
「んじゃ、俺はちょっと用があるから行くわ。お前はここらへんをうろうろしてろ」
「ん? 用って?」
「休憩」
「うぉい」
正影が何か唐突に言い出したかと思うと休憩って……道もろくに分からない学生を置いていって自分だけゆっくりする気かよ。
「うるせい。こっちはスキル使いまくって疲れてんだ。お前は売るものや飾りつけを探しておけ。あとあまり遠くに行くなよ。迷子になるから」
正影は言いたいことだけ言うと、NPCの人ごみを巧みにかわし、あっという間にどこかへ行ってしまった。
「えぇ〜……」
一方的に取り残された俺は、とりあえず思考を切り替え、先程のアクセサリー店へとで向かっていった。
- Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.37 )
- 日時: 2011/12/27 08:44
- 名前: No315 (ID: D71pwe7j)
大商業区 商売通り 休憩所
紅架と別れた後、正影は実は凄く近い所にあった休憩所のベンチでタバコを吸いながら休んでいた。周りのNPC達が少し嫌そうな顔でタバコを吸ってる正影を見ていたが、それを気にする正影ではない。正影がわざわざ紅架と別れたのは二つ理由がある。
一つは単純に疲れたから。怪との戦いで使った「自分の思い浮かべた弾丸を装填する」スキル『夢想弾』は、何度でも使うことをベースとして作られているので疲労は少ないが、それはレアなスキルの疲労を少し減らした程度で、あそこまで何度も使うとさすがに疲れる。
あのまま紅架と共にいれば休憩する間もなく質問攻めに遭い、逆に疲れる。
もう一つは、別のことを考えていたかったからだ。
初めに紅架を家に迎え入れ、紅架がなぜ『この世界』に来たのかを聞いた事がある。その時紅架は「交通事故に遭って病院に運ばれたことまでは覚えてる」と言い、その時に医者らしき人物が言っていた『デジタルダイブ』というものも聞いた。
昔もいろんなプレイヤーから『ここ』に来た理由を聞いた事があるが、自殺や事故など、どれもこれも全て、死因と呼べる程のものであった。正影も自分が事故に遭った事は覚えているが、ほとんど意識不明だったらしく、まったくその先のことは覚えていない。
いままではこの情報から「プレイヤーは死んでから生き返ってこの世界に来た」とあまりにも信憑性に欠ける結論が出ていたが、紅架が言っていた病院。そして『デジタルダイブ』。
何かがある。そう思って正影は紅架にそこの病院がどこかを聞いたが、紅架はかろうじて意識が戻っただけらしく、すぐに気を失ったそうだ。
とりあえずその病院が何か鍵を握っている筈だ。俺達プレイヤーの悲願「この世界からの脱出」への鍵を。
さて、手始めにあのふざけた『芝居野郎』でも探して問い詰めてみるかと、正影は吸っていたタバコを傍に置かれていた灰皿に押し付け、二本目のタバコを出そうと箱に手をやったその時。
いままで正影に嫌悪の視線を送っていたNPC達が全員音もなく一斉に消え去った。
「ったく。今度はなんだ」
正影は面倒そうに呟きながらタバコの箱を戻し、休憩所から出て行った。
- Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.38 )
- 日時: 2011/12/28 09:34
- 名前: No315 (ID: D71pwe7j)
たぶんおそらくきっと約五分くらい前 大商業区 商売通り
「ま、こんなもんだろ」
俺は呟きながら袋を片手に持ち、そこらを見渡しながら歩いている。袋の中に詰められているのはもちろん店の飾りつけのために、俺の手に入れた金を残金ギリギリになるまで買ったものだ。
とりあえず状況はというと、できるだけ買えるものは買い終わり、もう金も無いのでとりあえず他の店の見物をしながら正影を探している状況だ。
まぁ肝心の正影が見つからないので適当にうろうろしているだけなのだが。
「ま、そこらの店でも回って、どんなものが売れるのか探して見るか」
ずっと待ってるのも退屈だしな、と俺は近くのなにやら服を売っているらしい店に近づこうと歩くが、
「——あ、きゃ!」
「——へ? ぶべらぁ!」
いきなり横から女の子がぶつかって来た。これだけだと、どこぞの恋愛ゲームでありがちな出会い方として一部の人間が「恋愛フラグキタ————!」と叫び散らすだろうが、現実はそう甘くはない(ここも現実じゃないけど)。どうやら俺にぶつかってきたピンク色のショートヘアの少女は短距離走オリンピック選手もビックリな俊足の勢いをキッチリ、残さず、全力で俺にぶつけてきたらしく、少女は可愛らしい声を上げながらその場に倒れるが、俺の方はなんともおもしろい悲鳴を上げながら三メートル程度軽くふっとぶ。何の罰ゲームだ。
辺りにいたNPC達もギョッとして俺と少女を一斉に見比べるが、驚く程の白々しさで何もなかったかのように通りすぎていく。
なるほど。NPC達も「触らぬ神に祟りなし」という言葉を知っているようだ。
「え、あ、えっと……大丈夫ですか?」
「あぁ大丈夫さ☆……とでも言うと思ったか?」
三メートル吹っ飛ぶような衝撃を受けて「大丈夫さ」で済むはずないだろ。なんとか袋に入っているアクセサリーをばら撒かずに済んだけどさ。
「ごめんなさい。ちょっと前見てなくて」
「あんだけの速度で走っていながら前を見ていないとは、どれだけの不注意なんだ」
俺は頭を掻きながら呆れ顔で少女を見る。俺より一つか二つは下に見えるその少女は、俺の態度をどう見たのか何かを探るように俺の顔を至近距離でまじまじと見つめる。え〜とこういう時はなんて言うんだっけ? え〜と……
「ど、ドウシタ〜、俺ノ顔ニ何カ付イテルカ〜?」
「もの凄い棒読みのセリフだね。えっと君、プレイヤーだよね? ここで何してるの?」
「なぜ俺がプレイヤーだと分かったのかはあえて聞かん。ただ仲間を探してるだけだ。それよりお前はなにしてんだ? ……え〜と」
「優だよ。桜木優」
「あ、そう。んじゃ、桜木って呼ぶぞ。それで、桜木は何してんだ? 人を三メートル程ぶっ飛ばす速度で走って、もう治ってるらしいが『そんな怪我を負って』何やってんだ?」
「っ!」
あれ? なんかいきなり驚いた顔でこっちを見てきたぞ? 俺はただ左腕がなんか俺が正影にカッターで斬られた時みたいに赤い線が出てたし、左肩なんか傷はないが一部分だけ服が何かで引き裂かれたように破れているし、それが気になって聞いてみただけなんだけど……
「気付いてたの?」
「いや、気付かないほうがおかしくね?」
桜木は珍しい生き物を見たような表情を見せるが、俺はもう呆れ顔を出すことしかしていない。とりあえず桜木がなにか怪我を負いながら必死になってどこかへ走っていたという事は分かった。俺の推測だと、桜木は誰かの待ち合わせ場所に急いで駆けつけていた。又は桜木は誰かに追われていた。のどちらかと思うんだが、もし後者だと面倒な事になる前にさっさと別れたほうがいいだろう。
ま、もう遅いと思うが。
だって周りのNPCが消えてるし。
「見ぃ〜つけたぁ」
突然聞こえた声と同時に桜木が俺の腕を引っ張り地面に倒す。そして銃声が鳴り響き、俺が先程まで突っ立っていた空間を二発の弾丸が通る。
俺が立ち上がって声のした方を見ると、それぞれの武器を構えた三人が俺達に近づいてきていた。
なるほど、俺巻き込まれた。
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