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人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】
日時: 2011/12/28 09:35
名前: No315 (ID: D71pwe7j)

どもども〜、No315です。

とりあえず、小説描くのは初めてではないんですが、久しぶりにも程があるのでおそらく駄文です。
よろしくお願いしま〜す。
あ、荒らしはするなよ〜





ある日の彼は思いました。
  なぜ、自分だけがこんな目に遭うのかと。

ある日の彼は思いました。
  なぜ、他の人はみんな幸せなのだろうかと。

ある日の彼は思いました。
  他の人は人生をどう感じてるのだろうと。。

ある日の彼は考えました。
  どうすればそんなことを知ることができるのだろうと。

ある日の彼は気づきました。
  そんな方法などないと。

ある日の彼は思い出しました。
  自分の今までの最悪な人生を。

ある日の彼は思いつきました。
  人生が変わった時、人はその人生をどう見直すのだろうと。

ある日の彼は始めました。
  狂ったような、人生のデスゲームを。




 第一章「始まりの日 Geme Start」
>>1 >>2 >>7 >>8 >>9

 第二章「世界のルール Game Rule」
>>13 >>14 >>15 >>16

 第三章「真実は裏側に Darkness Truth」
>>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23

 第四章「プレイヤーと日常 Everyday Battle」
>>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38

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Re: 人生ゲームはデスゲーム 【三章目が終了しやした】 ( No.24 )
日時: 2011/11/12 10:23
名前: No315 (ID: vBUPhhME)

第四章「プレイヤーと日常 Everyday Battle」


ハイドタウン。
 隠れ街という名を持つその街は大きく大商業区、民間区、農業区の三つの区に分けられ、大商業区と呼ばれる商人や客で賑う場所を中心に皆、豊かに暮らしていると言う設定で作られているそうだ。
 なぜ、そんな豊かな街に『隠れ』なんて名前が入っているのかは知らないが、この町で暮らしている偽りの魂を持つ人々—NPCは設定通り、毎日豊かに暮らしている。
そんな街の中で、NPCとは違う存在の、四つの影が、NPCが一人として存在しない謎の空間を疾走していた。

「はぁ……はぁ……」

 影の中の一人はショートヘアの少女。荒い息を漏らしながら他の三つの影から逃れようと懸命に走っている。そんな少女の背後からはいくつかの声と銃声。

「ほらほらぁ! おとなしくしたらぁ?」

「こっちはさっさと終わらせたいんだけどなぁ」

「くそ、逃げ足が速い奴だな!」

 そんな声を少女は完全無視して、巧みに向こうの銃の射線上から逃れつつ、逃げる。
 自分が本気を出せば、あの三人を無力化することができる。そのことはずっと前から分かっていることだが、それが何を意味するかも理解しているため、逃げるしか手段がない。
 しかし、そうしている内に、向こうはだんだん距離を詰めてきている。
 そして、向こうの放った弾丸が、ついに少女の左肩の表面を深く抉った。

「ぐっ!?」

 少女はあまりの痛さに絶叫する所だったが、なんとか堪え、そのまま怯むことなく走り続ける。
 銃声は絶え間なく響いてくる。これなら騒ぎを聞きつけたプレイヤーにいつ追われることになるか分からない。
 しかたなく少女は自分の武器を音も無く具現化させ、そのとある能力を最大発揮する。
 ——『幻想舞踏』——
 いままでの少女の逃走スピードが、信じられないほど格段にアップし、数秒で三人との距離を開ける。向こうもそれに気づき、すかさず一人が銃を乱射するが当たらない。
 やがて、三人の影が見えなくなり、しばらくどこかの通路を走ると、突然視界にいくつものNPCの姿が現れた。
 少女はそのことに安堵しながら、たくさんのNPCの邪魔にならないように隅まで移動し、壁にもたれかかりながら息を整える。

「……逃げるしかないのかな……」

 少女—桜木優(さくらぎ ゆう)は誰にも聞こえない声で、寂しげに呟いた。
 その瞬間。いままでたくさんいたNPCの姿が一瞬で消え去り、辺りに銃声が轟いた。

Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.25 )
日時: 2011/11/15 19:49
名前: No315 (ID: vBUPhhME)

朝 ハイドタウン 民間区 正影の住み着くアパート内

 どっかの誰かさんによってタバコとビール缶のみで荒らされたとあるアパートの一室。俺—篠崎紅架しのざきこうかは愛着している黒のコートを、タバコとビールの回避地点に放り投げ、その部屋の壁にもたれながらただ意味もなく天井を見つめていた。
 本当なら知らぬ間に起きたこの現状に対処すべく、暇があるなら頭をフル回転させて考えを巡らせる状況なのだが、今は十二%信頼でき、四十七%頼れる仲間が一人いるし、朝っぱらから脳を動かすのは学校のテスト前の時ぐらいで充分だ。
 しかし、過去から現在までの現状を理解する必要は三千%中二%くらいあるだろう。
 どうせ暇だし、思い出したりするだけなのでそこまで脳も動かさない。俺は窓に視線を移しながら過去を振り返る。
 俺はとある日。親友と下校している際に、危うく車に衝突しそうだった子供を助け、交通事故に遭った。
 そして俺はどこかの病院へと輸送され、最新鋭型麻酔の『デジタルダイブ』と呼ばれる、患者の五感を別の場所に移すという技術を使い、俺は夢の世界に行くはずだった。
 しかし、そこで待っていたのは、何にも無い密室空間と、上半身だけ生えたカーレルと名乗るピエロだけだった。
 俺はすかさずその場にいたピエロを拷問したり反撃されたりして、なんとか、病院側の作った世界が危険な所だと理解した所で俺はピエロによってその世界に突き落とされた。
 俺が目を覚ますとそこにあったのは、場所は違えどいつもと同じような人々で溢れる、思いっきり平和な世界だった。しかし、その人々が一人もいなくなった瞬間、化物が現れた。本気で入れ替わりみたいだった。そしてそこで逃げ惑っている俺を……

「起きろ」

「起きてる」

 部屋の扉をドゴン! と、蹴り飛ばし、まるで砲弾が打ち込まれた時のような音を響かせながら入室してくる赤髪で三十代前半の男—かつ正影まさかげに助けてもらったのだ。
 はい、正影も来た事だし、回想終了。まだ最後まで回想してないけどいいや、面倒だし。
 俺は、今まで窓に向けていた視線を入り口の前で佇む正影に向ける。正影は俺の顔を見るなりどこか不敵な笑みを浮かべながら、俺にずいずい近づいてくる。

「なんだ起きてんのか。よく眠れたか?」

「だれかさんが撒き散らしたタバコ臭のせいで全く眠れませんでした」

 正影は俺の反応を見てどう判断したのか謎の笑みを浮かべたまま、なら問題ない、と言って、俺に朝食のリンゴ一つを投げ出す。
 朝食がリンゴ一つって……と心の中で呟きながら、俺はリンゴを受け取り、すぐ食べることなく、手の中で弄ぶ。
 別に毒とかを警戒しているわけではなく、ゲームの中で飯は食わないと餓死するのだろうか? と意味のないことをリンゴを見ながら考えていただけである。
 正影は、もう一つのリンゴを齧りながら

「んじゃあ、外出るぞ」

 と、唐突に言い出した。

「どした? ゴミでも捨てに行くのか?」

 俺もリンゴを一齧りし、じわじわと広がる果汁の味をゆっくり味わいながら唐突に何か言い出した赤髪ゴミ溜め魔に対して、平然と言う。

「違う。お前まだあやかしとの戦闘をまともにしたことないだろ。色々教えてやるから外に出ろ」

「なるほど、少し期待」

 俺はもう一度リンゴを齧り、黒のコートを羽織ながら立ち上がる。
 あやかしとは、俺が回想の時に話した怪物のことだ。なんともこのゲームの管理者が作った物らしく、作った奴は相当なファンタジー好きか相当な趣味の持ち主であろう。
 それに対抗できるが俺達プレイヤーのみが扱うことが出来る武器だ。武器以外の名前がないのでおそらく武器だ。
 どうやら、どこかの人気の無い所で売っているらしい。入手方法は、ほぼそれだけなのだが、正影の話によると、怪のボス的存在、またはフラグボスを倒すと三割の確率でレアな武器が手に入るらしい。正影の愛用している銃、『ビスマルク』や正影から貰った俺の『イフリート・フレイム』などもその三割の中から出てきたものだ。
 よくそんな大層なものを俺にほいほい渡してくれたもんだ。本当に銃しか使う気がないのかよ。
 そんなことを考えながら、俺はアパートを後にし、先を行く正影の背を追いかけるのであった。




「よし、とりあえず怪についてなら昨日話したからな、俺達の使う武器について説明しようか」

 そう正影が口を開いたのは、正影のアパートから少し離れた民間区と大商業区の境界くらいの場所だ。
 あたりをよく見ると、左右に警備班らしきNPCがそれぞれ二人ずつ配備されている。
とくに大きな荷物を背負っていない人達は、それを気にすることなくそのまま素通りして行くのだが、なにやら商人らしき人達は警備班に近づいてなにやら確認を取っている。

「あぁ、あれはな、商人達がこれを売りますから許可くださいって感じのところだ。俺は説明苦手だからこれ以上説明できねぇぞ」

 俺の視線を見て取ったのか、正影がすかさず説明した。説明苦手って、昨日あれだけ分かりやすく教えてくれたじゃんか。

「あれは生き抜くのに必要なことだし、昔俺が教えてもらったことをそのまま復唱しただけだからな」

 正影はそう言いながら、歩みを止めず、そのまま歩く。俺も商人達の商品をちらちら見ながら、正影の後を追う。
 なるほど。なんか売ってみるのもいいかもな。


Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.26 )
日時: 2011/11/17 20:14
名前: No315 (ID: vBUPhhME)

大商業区

「んで、話はずれたが武器について説明するぞ」

 さてさて、舞台は変わって大商業区入り口付近。俺と正影はそこで立ち止まり、なにかを売りさばいている商人達と大勢の客達を眺めながら話す。

「武器ってのは、昨日も言った通り怪に対抗するために作られた物だ。んで、その武器にはある能力が宿ってる」

「能力?」

 俺は今度はどこかの超能力がでてきたな〜とか考えながら正影に問い返す。正影は薄く笑いながら人差し指をピンと立てる。

「じゃここで問題だ。俺達は怪に対抗するために刀を手に入れました。それであの人の身長の何倍もあるあの化物を倒せると思いますか?」

「無理だな」

 俺、即答。
 そりゃあなにかの剣術を極めてたりとかものすごい力持ちとかじゃないと倒せないよな。

「そこで出てきたのが能力だ。正式名称武器ウェポン能力スキル。ま、いろんな奴がいろんな呼び方で呼んでるけどな。たとえば、スペックとか特性とか。いちばん一般的に呼ばれてるのが、やっぱりそのまんまのスキルだな」

「んで、そのスキルってのは具体的にどんなんなんだ?」

 俺の問いに正影はそうだなぁ、と何を言うか考えている。

「……まぁ簡単に区切ると、自分の一部を強くするスキルと、武器になんらかの機能を与えるスキル。技っぽいスキル。あとは……」

 正影は最後になにか言おうとしたが、唐突に口を閉じた。俺は、どうした? と問いかけようとしたが、俺も言いかけたまま口を閉じ、周りに意識を集中する。そしてすぐに周りの異常に気がついた。
 人がいない。
 いままで何かを売りさばいていた商人達。それを買い取ったり覗いたりしていた大勢の客達。それが突如、全員消えていたのだ。
 俺は嫌な予感をひしひしと感じつつ、聴覚に集中力を注ぐ。するとどこかで聞いたことがあるようなないような、ズシーン、ズシーンという足音が聞こえてくる。
 そして、それは現れた。
 今回現れた怪は前回と同じように人型だが、前回の狐顔とは違い、今回はまさしく鬼顔と言っていいだろう。その他で変わった所があるとすれば、爪は前みたいにたいして鋭くなく、人間のような形の手で巨大な棍棒を持っていることぐらいだ。

「お、きたきた。んじゃ紅架。とりあえずあいつ倒せ」

 正影は、怪を発見するなり、心の中で冷や汗を撒き散らしている俺に向かって平然と言った。

「ちょとまて! まだスキルについて少ししか知らないぞ!? ここはお手本として正影がさ……」

「知るか。武器は念じれば自動的に『隔離』が解除される。はやく戦え」

 反論している俺を無視して、正影は俺に蹴りを入れる。その衝撃で俺は前へと移動させられ、怪の視界に入る。
 イコール向こうのイッツ敵対センサーに引っかかったと言うこと。
 俺がそこまで認識した瞬間、怪が天上に轟くといわんばかりの咆哮を上げた。やばい本気で殺される。

「待てって! 隔離って何!? まじ助けて!」

「うるさい。早く念じろ」

 いつまでも慌ててたら本気でヤバイので、正影の言う通り俺の武器『イフリート・フレイム』を脳内でイメージし、来い、と念じる。
 すると、俺の両手両足から、光の粒子が現れ、やがてそれは形を持って具現化した。
 両腕の金属製……だと思うナックルに刃。そして、両足に金属製……だと思う靴。まさしく昨日正影に貰った武器『イフリート・フレイム』が俺の四肢に具現化していた。
 それと同時に怪がもう一度咆哮し、棍棒を構えながらこっちに向かって走ってきた。

「……武器を手に入れただけで詳しく知らないんだけどな」

 俺は呟きながら、イフリート・フレイムを構え、正影をチラリと見る。正影の方は、もしもの時に援護できるように、手元に『ビスマルク』を具現化させている。
 俺は、怪に向き直り、こちらに走ってくる化物を凝視する。
 そして、タイミングを合わせて俺は走り出し————通り過ぎた。

「……へ?」

 俺は呆けた声を出しながら取りあえず後ろを振り返る。そこには、俺を見失ってキョロキョロしている怪と、怪への警戒心は解いていないが、笑いを堪え損ねてニヤニヤしてる正影の姿があった。
 あれれ〜? おかしいな〜。俺は、ただ十五メートル先にいる怪に向かって走っただけなのに、どうして走り出してから一秒程度ですれ違ってんだ〜?
 俺が呆然としている隙に怪は俺を発見し、再び咆哮を上げながら迫ってくる。
 俺も仕方なくもう一度イフリート・フレイムを構えながらタイミングを見計らい、走り出した。
 そして通り過ぎた。

「…………」

 俺は無言のまま後ろを振り返る。当然そこには俺を見失ってまたキョロキョロしている怪の姿がある。
 俺はさらに無言のまま正影を見る。正影は体をくの字に曲げ、笑いを懸命に堪えながら、俺に状況説明。

「え〜とな……さっきも言ったけど武器にはそれぞれのスキルが付随してるんだ……んで……そのイフリート・フレイムのスキルの一つは……『身体能力倍化』。自分の身体能力を2.7倍に跳ね上がらせる……ものすご〜く珍しいスキルだぞ。ありがたく使え」

 え〜とつまり? 俺の脚力が通常の2.7倍になった訳だけど、動体視力まで倍化された訳ではないから、自分のスピードを認識できずにあの怪を通りすぎたと。

「なるほど。いきなり実戦で使えるかぁぁぁぁぁぁ!!」

 俺、絶叫。

Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.27 )
日時: 2011/11/18 22:47
名前: No315 (ID: vBUPhhME)

声を聞き付けて怪が振り返る。そして俺を見つけるなり、バカみたいに同じ咆哮をまた上げ始めた。今度は相当怒っているそうで、棍棒をぶんぶん振り回している。
 俺は、取りあえずもう一度イフリート・フレイムを構え、今度は全力疾走はせず、ステップのような感覚で、右足に力を込めて走る。倍化された足の筋肉の力と倍化された脚力のおかげで、ほぼ一秒にも満たない時間で、怪との距離を詰めていた。
 一応、俺は動体視力にも少しの自信があったのだが、ステップ程度のスピードで、ギリギリ見えるくらいだ。少々自分に自信がなくなる。
 俺は怪との距離を詰めたと理解した瞬間、左足に力を込め、イフリート・フレイムを切り上げながら飛ぶ。
 今にも怪の巨大な足にぶつかりそうだった俺の体は、唐突に上へと跳ね上がり、俺の右腕に装着されたイフリート・フレイムの刃が、怪の体を切り裂く。
怪も、俺達と同じで、血という液体は出てこず、切り口から大量の光の粒子が血の代わりのように噴き出している。
 俺は空中で、すばやく息と体勢と頭の整理と心の準備を整え、一回転しながら怪の顔面に強烈な踵落としをお見舞いする。
 怪は、俺の二連撃技をまともにくらい、絶叫を上げるが、まだ怯まない。怪は、まだ空中にいる俺に向かって、巨大な棍棒を右斜め上から振り下ろして来た。

「やべっ!」

 俺はとっさに両腕をクロスし、イフリート・フレイムを盾にして振り下ろされた棍棒を受ける。直後に両腕に走る、張り裂けそうな痛み。
結果、俺は、なんとか致命傷は避けたものの、衝撃で地面に叩き落とされる。両腕で受け止めた際に腕が痺れてしまい、ろくな受け身も取れずに背中から地面に衝突する。

「ッ痛!」

 背中を強く打ち付けて、あまりの痛みに叫ぶ事は無かったものの、数秒間、倒れたまま硬直してしまう。それを怪が逃すことなど無く、俺に巨大な棍棒を振り下ろす。

「———ッ!」

 即座に右足を使って棍棒を蹴り飛ばそうと俺は、迫って来る棍棒を凝視する。しかし、棍棒が俺の元に振り下ろされる前に……
——『夢想弾』——
一発の銃声が鳴り響いた。
 怪の棍棒を持っていた右腕の指二本が、どこからか飛来してきた、強力なエネルギーの塊によって引き裂かれ、棍棒を取り落とす。
 正影の攻撃だった。
 俺が正影の方を見ると、正影は平然とビスマルクを構え、ギリギリ聞こえるくらいの声で呟いた。
 ま、一応合格点だな、と。
怪が絶叫を上げるが正影はそれを無視し、ビスマルクを構え、
——『夢想弾』—『切り替え』—『装填』—『徹甲榴弾』——
複数の銃声が鳴り響く。
放たれた合計四発の銃弾は、初撃の弾のように怪の体を引き裂くことなく、所々に銃弾が突き刺さり、それらは全て、数秒後に爆発した。
——『夢想弾』—『切り替え』—『装填』—『通常弾』——
正影の攻撃はそれでは終わらず、徹甲榴弾とは違う弾種の弾を計八発ほど放ち、爆発で出現した煙を引き裂きながら怪の胴体に叩きこむ。さっきから正影の引き金を引く指の速さが尋常じゃない。
——『夢想弾』—『切り替え』—『装填』—『波動弾』——
——『夢想弾』—『切り替え』—『装填』—『貫通弾』——
今度現れたのは初撃に出てきたレーザーのようなエネルギーの塊が四発。それに続いて、怪の両肩、両腕、両足を貫通して虚空に消えていった弾が六発。怪は数々の攻撃に対応しきれず、ただ絶叫を上げるのみである。
なんか、怪が可哀想になる光景だ。

「……あれ?」

俺は正影が怪を圧倒しているところで、一つ大きな疑問を浮かべた。
弾の種類が切り変わっているのは分かる。しかし、使用する銃も弾倉も変えていないのに、弾種が変わっているのだ。それに、やけに正影の発射数が多い。まるで銃に収まっている弾倉からではなく、別の場所から弾を装填しているようだ。
正影はそんな俺の疑問と怪の絶叫を現在進行形で完全無視し、黙々と怪に向かって様々な弾種の弾丸を撃ち込み続ける。
そんな正影にそ〜と〜激怒したのだろう。絶叫にも近い咆哮を上げながら怪は左手で棍棒を拾い、横薙ぎに思いっきり振るう。勢いよく振るわれた棍棒は、正影の六発ものレーザー弾を全て弾き、やがて衝撃で棍棒自体もばらばらになって消えた。
怪は自分の武器を失ったことなどこれっぽっちも気にせず、巨体の歩幅を生かして物凄いスピードで正影に向かって走り、左腕を振り上げる。
正影は特に慌てることなく、迫って来る左腕をよく見てタイミングを合わし、跳躍する。
飛ぶと同時に正影のトレンチコートから何か野球ボールの大きさほどの丸い物体が四つほど落ちる。野球ボールと何が違うかと言われれば、全てが真っ黒な色という事と、何か赤い点の光が点滅していることぐらいであろう。
うむ、爆弾に見えなくもない。
——『夢想弾』—『切り替え』—『装填』—『亜音速弾』——
——『精密射撃』——
正影の目がすっと薄くなり、尋常じゃない速さで引き金が引かれる。ビスマルクの銃口から、四発の弾丸が吐き出され、それらは怪の左腕を遥かに上回るスピードである場所へと着弾する。
爆音。轟音。
正影の放った四つの弾丸は、地面に転がった四つの爆弾達に着弾し、爆発を起こす。小さな一つ一つの爆弾は、信じられないほどの威力を発揮し、周りにあるものを塵に変えていく。
それは、正影に狙いを定めていた怪の左腕も例外ではなく、空ぶった左腕は、四つの爆発に巻き込まれ、跡形もなくなくなる。
怪は、左腕をもぎ取られた痛みでもう正影に気を向けることすらも忘れて、本日何度目か分からない絶叫を上げる。
そして、正影はというと、爆風でかなり上空へ飛んでおり、落下しながら怪に銃口を向ける。
——『夢想弾』—『切り替え』—『装填』—『徹甲榴弾』——
——『精密射撃』——
まず放たれた二発はおなじみの徹甲榴弾。その二発は、なんの容赦もなく怪の鬼顔にある額の中心へと食い込む。
——『夢想弾』—『切り替え』—『装填』—『波動弾』——
そして、正影は、神速のスピードで引き金を何度も引く。ビスマルクから吐き出される何発ものエネルギーの塊は、雨のように怪に降り注ぎ、容赦なく巨大な体を切り裂いていく。そして雨が止むと同時に怪の頭がとどめと言わんばかりに徹甲榴弾によって巨大な爆発を起こす。怪が放っていた五月蝿い咆哮は消え去り、頭と左腕を失くした巨大な体は、ゆっくりと地面に倒れ、光の粒子となってどこかへ消え去った。
正影は、スタッと軽やかに着地し、ビスマルクを消滅させながら光の粒子を見つめ一息。

「……え〜と」

こうして、俺にとって二度目の怪との戦いは、またしても正影の助けによって終結した。
 ……とりあえずスキルについてもっと早く教えて欲しかった。

Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.28 )
日時: 2011/11/20 14:56
名前: No315 (ID: vBUPhhME)

大商業区 中心街付近 裏道

「クソ! どこ行きやがった!」

 NPCが存在しない空間の中で、三人の内の一人が銃を器用に手元で弄びながら苛ついたように言う。残りの、肩に長剣を担いだ男と、両手で二本のナイフを構えている男は、苛ついている男に気長に行こうぜ、と言いながら、周囲に気を配っている。
今、三人がいる道は大商業区の中心街と呼ばれる、一流の商人や区長などが住み着く街の裏道である。
 ここの裏道はとても入り組んでいてよくNPCが迷い込んで来るエリアであり、隠れる場所も豊富で、さらに上手く道を使えば、民間区まで進むことができるらしい。
 三人のターゲットであるとある少女は、三人の追撃を巧みに避けながらこの裏道に隠れこんだのだ。
三人も慌てて後を追ったが少女の姿はなく、この通りだいぶイラつきながら少女を探すことになった。

「あぁ、クソ面倒くせぇ。もういいだろ、あんな女狙わなくっても」

 やがて、銃を持った男がとうとう愚痴をこぼし始めた。それにナイフ使いは苦笑いしながら長剣使いに視線を向け、長剣使いの男は、

「馬鹿言うな。あの女のサブ武器を見ただろ? あれがあればプレイヤーなんていつもよりもっと楽に殺せる。なんとしてでも手に入れるぞ」

 と言いながら再び周囲に気を配る。長剣使いの言葉に銃使いは舌打ちしながら銃をクルクルと回す。どうやら相当暇で苛々しているようだ。

「なぁ、そんなに苛ついてんのならその銃でどっか撃てば? どうせ追撃している時から弾倉の交換してないだろ。ここで残弾全部使って弾倉交換しろ」

 先程から銃使いが銃がクルクル回す様を暇潰しに見ていたナイフ使いが、いきなり銃使いに提案した。その提案に銃使いはおぉ、そっか、と言いながら銃口を空に向ける。

「どうせ俺達の隔離範囲から離れてたらあの女に銃声は聞こえないだろうしいいよな?」

 そして長剣使いに同意を求め、長剣使いは仕方なさそうに構わん、と肩をすくめながら言う。その言葉に銃使いはよっしゃ! と嬉しそうに引き金を引き、銃の中に残っていた銃弾を一気に銃口から吐き出させる。
何発もの銃弾は狭い建物と建物の間を通り抜け時折、壁に穴を穿ちながら空へと向かう。
 しばらく銃使いが銃弾を撃ちまくる光景が続いたのだが、

「———え? きゃあ!」

 突然、どこからか少女の声が響き渡った。その声が聞こえたと同時に長剣使いとナイフ使いの二人はバッ! とそれぞれの武器を構える。銃使いの男は即座に銃撃を止め、素早く弾層を取替えて、他の二人と同じように声がした方向……上空へと目を向ける。
 そこには少し特徴的な両剣を構えながら三人に落下してくる、ターゲットの少女がいた。



 数分前 三人の通る裏道の建物の上
 風がびゅうびゅう吹いているとある建物の屋上。そこで簡素なシャツの上に水色のワンピースを着、桜色の髪をした少女—桜木優さくらぎゆうは、片手に相棒の両剣を持ちながら、下で自分を探している三人を見下ろしていた。
 一度三人を撒いてから再び見つかったあの後、優はこの裏道に逃げ込み、三人が見えなくなった所で両剣のスキルを使って建物と建物の間を跳躍して屋上まで逃げたのだ。
 そして、そのまま屋上に隠れ、三人が消え去るのを待っている状態である。
 別にこのまま三人の進行方向とは別の方向に逃げればいい話なのだが、ここから移動するとなると屋上から屋上へと飛び移らないといけないので、いちいちスキルを使わなければならない。スキルというものは使う度に疲労が重なってくるものであり、優はその中で強力なスキルを三回、それも全て長時間使っている。これ以上使うと他のプレイヤーに見つかった時にまともな抵抗ができなくなる。
 他には優の後方にある屋上のドアを使って一階まで降りる手段があるのだが、降りればその分三人との遭遇率が高くなる。今はこのまま三人がいなくなるのを待つのが最善策だ。
 三人に追われている途中に負った左肩の傷は、もう跡形もなく消え去っている。この世界の中では、このくらいの傷は五分もあればすぐ直るのだ。
 優は、三人が一度立ち止まったのを確認し、そのまま床に座りながら息を整え、手にしている両剣を見る。
 優の持つ両剣「水陣・斬姫」は、長めに作りだされた柄の両端に少し幅広くできた刃。柄の部分は青く着色され、刃にはそれぞれ何かの紋様が刻まれている。どこかの伝統芸能で二本の剣を振るい、舞を踊る姿から作られた設定らしくて、だいぶ軽めに作られている。
 優がこの武器を手に入れたのは七ヶ月ほど前で、最初はあまり馴染まなかったのだが、何度もサブ武器として振るっている内に扱い方に慣れ、今ではほぼメイン武器と言える程毎回この武器を使っている。
 それに、この両剣に付随しているスキルも中々のもので、今まででも危険な所でだいぶ助けになっている。
 優はその大切な相棒の両剣の感触を今一度確かめ、三人に視線を移す。三人は少し話し合いをしていただけのようで、やがてまた歩きだした。優は、そのまま三人がいなくなるのを必死に願いながら三人の様子を見ていたのだが、

 ギイィィィ……ィィ……ィ……

 なにやら不気味な音が優の背後から流れ、優は瞬時に両剣を構え、振り返る。

「……誰」

 優は、振り向いたと同時に低く呟く。音の正体は屋上の扉が内側から開けられた音らしく、今まで閉まっていた扉は勝手に不気味な音を立てて開いていた。
 優は扉の先に視線を集中させるが、扉の先には誰もいない。不審に思いながらそのまま扉の先を見据えるが、何も見えず、やがて謎の現象で開いた扉は風の勢いに乗せられ、これまた不気味な音を立てて閉じていった。
 パタンと閉じた扉をずっと見ていた優は、足音を殺しながら、右手に「水陣・斬姫」を構え、そっと扉へと近づく。扉は閉じたまま勝手に開くことはなく、ウンともスンとも言わない。
 そして、優が扉の前まで接近し、その左手がドアノブに触れようとしたその時、
 銃声。
 優はバッと扉から瞬時に離れるが、銃声は扉の先からではない。

「下?」

 先程まで三人を見張っていた方向から何発もの銃声が響いてくる。優は、一旦扉のことは後回しにして三人が見える、屋上の隅まで走る。
 そして、優が見下ろすと、三人の男の一人が銃を何発も撃ちだしていた。何発もの弾丸は空気を切り裂きながら高速で移動し……優の足元に着弾してきた。

「———え? きゃあ!」

 優は、急の出来事に驚き、そのまま足を滑らせて三人の下へと落下していく。

 ——気付かれた?

 優は落下しながら、三人の様子を見、全員が自分に武器を向けているのを確認した後、優自身も「水陣・斬姫」を空中で構える。


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