ダーク・ファンタジー小説

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昨日の消しゴム
日時: 2013/10/19 00:49
名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: hzhul6b3)

 「———— かかる異様の者、人に見ゆべきにあらず。」





 遥か記憶の彼方。
 あの時、はじめて人を好きになった。


 初めて彼女に逢った日は、とても風の優しい日で。
 ただただ、やわらかな陽ざしが澄んだ空からふりそそいでいたと思う。


 そんな記憶も、今となっては他人のもののよう。
 幸せだった遠い日々は、思い出すたびに薄れていくばかり。
 いっそのことなら、はじめから出会わなければ良かったのだろう。


 今はただ、何も感じぬ孤独の中で、
 人外と成り果て、血の匂いを求めて彷徨うだけ。







 ……今は昔、忘却の物語。



◆壱、ソノ者、人ニ非ズ。◆
>>1 >>7 >>8 >>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>22 
>>23 >>24 >>25 >>26


◆弐、蛇愛ヅル姫君◆
>>29 >>32 >>35 >>36 >>37 >>40
>>41-43 >>45-47 >>50-56

 
◆参、鬼ノ記憶◆
>>57-

Re: 昨日の消しゴム ( No.1 )
日時: 2012/06/28 20:55
名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: OHW7LcLj)


「土我、あなた、人じゃないのでしょう?」

そう言ってほほ笑んだ、目の前の綺麗な友人が信じられなかった。
まるで人形のような長い金髪と、青い瞳を持った彼女がクスクスと悪戯めいて僕に笑う。こんな時でも、彼女の鈴の鳴るような声は艶やかに聞こえてしまうのだから不思議だ。

「そんな……ひどいな、ギーゼラったら。僕は人だよ。」ははは、と冗談めかして笑い返すと、ギーゼラは予想外に大まじめな顔になってしまった。
「いいえ、私には分かる。隠さなくてもいいのよ?私だって普通の人間じゃないから。私ね、実を言うと魔女なの。」そう言って、立ち上ったギーゼラが眩しそうに空を眺めた。右手を眉毛の上に添えて、遥か遠くを見ているようだった。「ねぇ、教えてよ。あなたのこと、私にぜーんぶ全部。あなたの生まれた時代、あなたの歩んできた歴史、あなたの見つめてきた世界。わたし、とっても知りたいの。」

「……それ、真面目に言ってる?それともジョーク?」
ギーゼラがひらりとこちらに振り向いた。彼女の白いスカートが、風にふわりと浮く。「もちろん真面目に決まってるわ。」

「そっか、まぁ暇だからいいけど。長くなるけどそれでもいいなら。」

そう言うと、ギーゼラは嬉しそうに無言で笑って、僕の隣に座った。風に流れて、彼女の香りがやんわりと僕を包んだ。小鳥の鳴き声が、どこかでこだましている。

それから長い間、平和な日差しと青い空に囲まれて、僕はつまらない昔話を始めた。どうせ気分屋のギーゼラのことだから、すぐに居眠りでも始めてしまうだろうと思っていたけれど、彼女は案外最後まで聞いていてくれたのだった。






————— 1938年、ドイツ軍ポーランド侵攻まであと一年のことでした。

Re: 昨日の消しゴム ( No.2 )
日時: 2012/06/29 13:34
名前: 風猫(元:風  ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)

ryuka様お久しぶりです。参照数が恐ろしいことになっていますね(苦笑
うらやましいです。
土我さんは……日本人の方でしょうか。ポーランドのどこかなのでしょうけど彼はなぜここにいるのか気になるところです。
色々と考えはつくのですがよくわからない(オイ

ギーゼラさんの雰囲気が不思議な色気を感じます。

Re: 昨日の消しゴム ( No.3 )
日時: 2012/06/29 19:29
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Phf/a9pc)

土我さんの最近の(?)話ですか。
俺にとっては大昔極まりないのですが、あの人にとっては最近のという意味で……。

この前出てきたギーゼラも登場ですね。
最近思うんですけど高橋よりも土我さんの方が良いポジションですね。
元々高橋はそういう人物になっているかもですが。

Re: 昨日の消しゴム ( No.4 )
日時: 2012/07/01 19:18
名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: OHW7LcLj)

>風猫さん

わぁーっ!風猫さんだ!お久しぶりです!!
土我さんは、お察しの通り日本人です。以前旧シリアス板でコメントを頂いた「壁部屋」の主人公の土我さんです。カイコの登場人物でもあります!

一応作者の中では場所はドイツということになっていますが、特に物語に関係はしてこないので読者任せということになっております(笑)


>狒牙さん

そうです、土我さんの最近(?)の話です。ギーゼラに自分の生い立ちを語っていくという構成で話は進んでいく予定っす。
ギーゼラ。カイコの方ではおばあちゃんになった後のギーゼラしか登場させれないので、若い頃のギーゼラが生き生きとしている作品が書きたくなったもので……

高橋は、、、確かに主人公の割にはポジション低い(笑)

Re: 昨日の消しゴム ( No.5 )
日時: 2012/07/02 03:01
名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: YoZ5ZryJ)

レベルたっけぇww

そりゃあシリアスな小説なら凄い人多いとは思ってたが、
まさかここまでとは・・・


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