ダーク・ファンタジー小説

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【更新停止】
日時: 2017/10/13 22:44
名前: 夢精大好きちんぽ丸 (ID: 3p1tWxjm)

やぁ、またかとか思った?
僕だよ、ちんぽ丸だよ。
夢精が大好きだけど、不能だから勃たないで日々苦悶の日々を送っているよ。
割とマジの真正童貞だよ、誰か名医でも紹介してよ。

これはファジー版に投稿してる短編集と違って、長編だよ。
前ここに書いてたやつの焼き直しだよ、なるべく更新停滞はしたくないよね。夢精に二言は無いよ、頑張るよ。
感想とか評価とか批判とか絶賛歓迎してるよ、だけどPNを変えろっていうお言葉には絶対負けないよ、戦うよ、僕は夢精大好きちんぽ丸として世の中に抗い続けるよ。

それじゃあ少しでも楽しんでいってね。割と胸糞悪いお話を書いていくんだけどね。



最後に一言。
「捻りの無い下ネタは害悪。捻っていても害悪」

Re: 初芝君は気色が悪い ( No.4 )
日時: 2015/10/18 13:29
名前: 夢精大好きちんぽ丸 (ID: 3p1tWxjm)
参照: https://twitter.com/Toremoro1467

『四話・教育擁護ねお疲れ様ね』


 男というのは、女より弱い生物である。圧倒的に弱い。
 結局、男が「男の子なんだから強くありなさい」と教育されるのは、実際は女の方が強いからだ。
 実際、女が「女の子なんだからお淑やかにしなさい」と教育されるのは、結局女の方が強いからだ。
 始めっから僕達は自然な状態で教育されてない。そういう、お約束事が決まっている状態から、型に嵌められた状態からすべて始まっていくんだ。
 言っとくけど、僕は型に嵌められるのが嫌いな型破りな奴ではない。寧ろ型が大好きだ。
 型に嵌って、型に順応するのだ。それが一番幸せである。何も考えず、決められたことだけをこなしていこう。
 柔軟な変化が肝要だ。変化を拒んで、型に嵌められるのを嫌がる奴は。

 型に余分な所を潰し切られるだけなのだから。









 「何かあったの初芝……」
 目の前の不気味で気色悪いジャージ女、美鶴心音(みつる こころね)が、虚ろな目で僕を見ながら言う。
 さっきから、僕は彼女の事を不気味だの、キショイだの、まあ失礼なことを言っているが、実は別に心音の事を人間的に嫌ってるわけでも何でもない。どちらかというと、僕らの関係はいたって良好だ。だから、彼女に含む所は何もない。彼女への先程の評価は、単に客観的な評価、僕以外の誰かからの印象を解説しただけである。
 そう、僕は彼女に対して至ってフレンドリー、仲良しこよしなのだ。
「いや、ごめんね心音。ちょっと、HRの途中に寝ちゃって、遅れちゃったんだ、あはは〜」
「ああ、そう。初芝はバカで鈍臭くて、何の取り柄もない所か、短所さえもない悲しいほどに面白味のない奴だから、仕方ないよね。そうやってアホな理由で遅れることもあるよね。うん私全然気にしてないよ。あと、名前呼び捨てやめてくれる? 気持ち悪いから」
 ……前言を全て撤回。こいつ死ね。

「まあ、遅れたのはいいよ。初芝。早く帰ろ。遅いし」
「……はいはい。それじゃあ行こうか、心音」
「名前呼びやめてって言ってるでしょ」
「い・き・ま・しょ・う・か・美・鶴・さ・ん」
 ギリギリと歯軋りをしてしまう。そう、この女、美鶴心音は、雰囲気だけでなく、性格も悪い。
 そもそも、僕がこいつをこうやって迎えに来たのだって、こいつの性格が悪い事と、僕自身の運が無かったことが原因だ。なんで神様はここまで慎ましやかな生活をしている僕に、運気を分けてさえくれないのだろう。僕が面倒事を被っている現状、これが神の不在証明だ。
「初芝、何ボーっとしてるの? 帰るよ?」
 と、僕が神の不在と己の不運を嘆いている間に、心音は屋上の出入り口のドアの近くに既に立っていた。相も変わらず空虚な光を失った瞳向けながら、こちらを促してくる。
「ああ、行くよ、今行くさ」
 僕はそう返事をしながら、彼女に早歩きで近寄り、一緒に屋上から出た。
 そう、僕が今日迎えに来たのは心音で、僕が今日デートをしなきゃいけないのも心音だから。僕達は一緒に屋上から出て、これからお出かけしなきゃいけないのだ。
 なんでこんな事になったのか、それは話せば長くなるのだが、説明すれば割と短めで済む。

 彼女には親がいない。
 いや、正確には両親はいるが、【家族】が居ない。
 心音の実の親は、両方とも彼女の事を居ないものとして扱っている。言うなれば、教育放棄というか、娘を廃棄というか、まあそんな感じだ。彼女は私立の高校に通っているが、学費を親は出していない。それどころか、食費も着る服も、日々必要な全ての保護を彼女は受けていない。いや、受けていなかったと表現したほうがいいだろう。
 実は彼女はそんな劣悪な環境の中、自分を居ないものとして扱っている親御と同じ家に、つい最近までずっと住んでいた。
彼女がその家とも言えない家から出る切っ掛けを作ったのは、とある【神父】と、恥ずかしながら僕である。
 いや、僕は何時もなら、なんら恥ずべきこともない、お天道様に笑顔で毎日爽快な笑みを浮かべて挨拶できるような、聖人君子なのであるが、心音をあの家から連れ出すのに一役買ったことは、大変後悔している。
 若気の至りとしか思えない。若かったとか言ってるが、ちゃんと遡るとほんの一年とちょっと前くらいだけど……。
 まあ、そんなこんなで、僕は彼女を家から連れ出した。だが、僕はそこまで深く彼女に干渉するつもりはなかった。何故なら、この救出劇のような、一見正義的であり道義的である癖に、一を抜いた九つ程度は偽善的で向う見ずな行いの、もう一人の立役者である【神父】が、大変経済力のあり、頼り甲斐どころか、三百六十度何処を見ても頼りたくなる様な奴だったので、安心しきっていたのだ。
 だが甘かった、彼は確かに、心音に住む家を与えた。高校に通うための学費も彼女の代わりに払ってやっていたし、それをなんとも豪勢に『これは投資だ、しかし投資は失敗することもあるから、返金せずとも良いよ〜』などとのたまった。
 しかも、それだけでは終わらせず。彼は、彼女が高校において、真っ当な生活を送れる様に、他にもサポートが必要だと言った。
 まあ、もう説明が面倒になってきたし、ネタばらしをしようか。
 そう、そのサポート役。美鶴心音を陰から日向からサポートして、安心快適順風満帆な生活を送れるように使わされて遣わされているのが、この僕。

 初芝 那奈詐(はつしば ななさ)である。

Re: 初芝君は気色が悪い ( No.5 )
日時: 2015/10/18 13:58
名前: 穂逆 深去 (ID: rCHW4Zfn)

初めまして、穂逆 深去と申します。
この平凡で異常な平凡な世界観に惚れました!
…まあ、一言でいえば気色悪いですが。
初芝君みたいな男の子と心音ちゃん(美鶴さんかな?)みたいな女の子の組み合わせは、一秒後にはどっちか死にそうでドキドキしますね!
ワクワクです!
穂逆にはこのような世界観が書けないし、長文が書けないのでとても羨ましいです。
PN応援しますよ!一生そのままでいて下さい(o^—^o)ニコ
応援してます。
長コメ失礼しました。

Re: 初芝君は気色が悪い ( No.6 )
日時: 2015/10/18 19:15
名前: 夢精大好きちんぽ丸 (ID: 3p1tWxjm)
参照: https://twitter.com/Toremoro1467

>>5
始めまして、まずは拙作を読んでくださったことに深い感謝を!

心奮い立つような感想、本当にありがとうございます、ありがとうございます!
特に一秒後にはどっちか死にそうに、作者ながら深い共感を覚えましたw

PNを認めて下さって嬉しいデス! ちんぽ丸、ガンバリマス!

気色悪い初芝君をこれからもお願いします!

Re: 初芝君は気色が悪い ( No.7 )
日時: 2015/10/19 16:58
名前: 夢精大好きちんぽ丸 (ID: 3p1tWxjm)
参照: https://twitter.com/Toremoro1467

『五話・デートに行こう』

 自分が他人より優れていると思ったことは?
 僕はある。
 誰か他人が出来ないことを、自分は出来て。僕にできることを、他人は出来ない。自分が誰よりも優秀であり、もしくは優秀であれる素質がある。そんな風に思っていた時期が、僕にはある。
 もっと言えば、自分が特別な何かであると思っていた時期が、僕にはある。
 そう、何か特別になれると思っていた。何か特別なことを成せると、そう思っていた。
 そんな事は無いのに。あったとしても、僕では無いのに。それでも僕は、何時までたっても。


 自分が特別であると【期待】している。








「それで? 今日は何処に行きたいの?」
 僕は、屋上から校舎の出口に向かうための階段を、心音と隣り合って降りていた。彼女は歩くスペースが、女子だからということも併せて遅いので、歩幅を合わせる事にも注意する。
 昔、彼女を置いて先に歩いていたら、『初芝は自分勝手』『初芝は人への気配りが下手』『初芝はそんなんだから女の子にモテない』『初芝は気持ち悪い』等々に滔々と罵倒されたので、それ以来こういう事には気を遣うようになった。
 それにしても、今思い出しても、大変腹が立つ罵倒の数々である……。
「……特に無い。初芝が行きたい所でいいよ」
「僕に行きたい所なんてないよ」
「じゃあ、行きたくない所でもいいよ」
 心音は不気味な雰囲気を常に纏っているが、発する言葉の声色は透き通っていて綺麗である。寧ろ、雰囲気に反して声質が透明だから、余計きれいに聞こえるのかもしれない。
 まあ、それは置いておいて。僕の行きたくない所に行きたいとか、どういう事だ、それは。
 行きたくない所には、行きたくないに決まっているじゃないか。なんでわざわざ行きたくない所に行かねばならないのだ、そんなの阿呆のする事である。嫌がらせ以外の何物でもない。
 しかして心音はニコリと笑って言うのだ。
「初芝の嫌がる顔が見たい」
 ……中々筋金入りの性悪である、美鶴心音という女は……。




 さて、それでは早速僕が行きたくないところに、彼女を連れて行こう。
 なんで僕は率先して自分を嫌な気分にさせる為に頭を使わねばならんのか……。まあいい。置いておこう。
 さてはて、一体何処に行けばいいのやら……。
「ん? 那奈詐?」
 っと、僕がそんな、自分の得に一切ならないような事を、階段を降り切って、一階下駄箱の近くを歩きながら思っていた所。木製の下駄箱に背を預けて寄りかかる、僕も心音もよく知る人物を見つける事となった。
 セミロングで、顔立ちは整っているのに、仏頂面で近寄りがたい。身長は女子として考えれば平均程度であろう。
 スラっとした立ち姿と、どこか鋭い刃を思わせるそのオーラは、男より女にモテそうな感じである。
 彼女の名前は、萩原 琳奈(はぎわら りな)。僕と、心音にとって数少ない友人である。
 ちなみに、僕は友人は多い、最早一度会話した人間は全員友人にしてしまうほどである。要するに、人受けはいいのだ、僕は。人とのコミニケーション能力が最低ランクである心音とは違うのである。

「なんだお前ら、何時ものデートか?」
 少しばかり女の声にしては低い声で、萩原はこちらに訪ねてくる。それにしても、この女の口調は男っぽい。何故だろう、男所帯で暮らしてきたとかだろうか? 別に他人の口調なんてどうでもいいけど。
「うん、まあそんな所。萩原は何してんの?」
 適当に彼女の質問を受け流し、反対に質問する。すると、萩原はしかめっ面をすこしばかり緩めて、返答する。
「私も、まあ。友人達とこれから遊びに行く事になってる」
「へぇえ〜。萩原にしては珍しいね、そういうの」
「そうか? まあ、そうかな」
 萩原は余り馴れ合いとかは好きなタイプではない。ああ、でもそういえば、彼女は部活……というか、同好会の仲間には結構心を開いていたな。それ以外の交友関係は、あまり無いと思ったけど。僕と心音はひょんな事で彼女と親密になる機会があっただけだし。
「ねぇねぇ、萩原—」
 と、そこでそれまで口を噤んでおとなしくしていた心音が、唐突に萩原に話しかける。
「なんだ、心音」
「んー、あのねー」
 おいなんだその可愛い感じの声とキャラは、あの心音が小首を傾げてるぞ!? ってか、萩原は下の名前で呼んで良いんですねーそーですよねー、僕は気持ち悪いから駄目ですよねー……。
「萩原にとって、行きたくないところって何処?」
「……え?」
 と、僕がいじけている間に、心音は唐突に意味不明な質問を萩原にぶつける。いや、まあ、萩原にとっては意味不明だろうが、僕には彼女の意図がわかる。萩原の行きたくない所は、大方僕にとっても行きたくない所だと判断したんだろう。
 畜生、適当に『行きたくない所—? 五月蠅い所かなぁ〜』とかいう言いながら、ゲームセンターとか行こうと思ってたのに! ホントは好きだけど、入り浸ってるけどゲーセン!!
「ん〜、そうだな。行きたくない所か……」
 萩原は、心音の質問に特に疑問を挟むこともせず、ふむっ、としながら口に手を当てながら考え込む。
 それを見ながら、心音はなんだか嬉しそうに笑っている。こいつは、萩原が好きでなついているのだ。だから嬉しそうなんだろう。
 きっと、僕に嫌がらせをする事が出来る今の状況を楽しんでるわけではないはずだ、彼女はそんな悪人じゃありません、はい嘘です悪人ですゲスです知ってます。
「ああ、行きたくないところあったな。ってか、私以外でも多分嫌がるところだと思う」
 そんな僕のどんよりした心中を知ってか知らずか、彼女は何か思いついた様で、ポンッ、と手を打ちながら、心音に回答する。

 彼女が回答した、その行きたくない所とは———

Re: 初芝君は気色が悪い ( No.8 )
日時: 2015/10/20 19:05
名前: 夢精大好きちんぽ丸 (ID: 3p1tWxjm)
参照: https://twitter.com/Toremoro1467

『六話・死人は饒舌』


 人を貶し切るというのは意外と難しいことなんだ。
 たとえば、君にとってどうしようもなく恨みがましい存在が居るとしよう。その存在に対して、君が復讐をする機会が得られた。そんな状況。
 千載一遇のチャンスだ。此処を逃したらもう無いかも知れない。
 君が恨む人間を、君の手で汚しきれる。そんな機会。君の手で絶望を味合わせられる、そんな好機。
 だが、恐らく君は彼を貶す事は出来ない。
 多分、少しばかり復讐はするだろう、少しばかり傷つけはするだろう。
 だが、貶し切る事はない。程度はわからないが、底の底までは行けない。思いつく限りの最も非道で、下劣で、悪辣である行為だけは、どうしても出来ない。
 何故か?
 結局、自分が悪人であると認めたくないのだ。
「私はこの人にこれだけ傷つけられた、だがしかし、この程度の仕返しで済ませた。私は良人である」
 そんな風に思いたいだけなんだ。
 ああ、良いんじゃないかな、それで。僕はそれで良いと思うよ。
 というか、もし、思いつく限りの最低の方法を、想像しただけじゃなく実行したんだとしたら、そして、それを復讐だと大きな声で言えてしまうのなら、それはもう、取り返しがつかないほどに。


 頭がおかしい化け物だ。










 放課後と言っても、まだまだ明るい時間である。もう直ぐに夏の長期休暇という季節なので、日が落ちて辺り暗くなるのにはまだ時間がある。
 だが、今僕の周りは心なしか暗い雰囲気に飲まれている気がする。いや、周りっていうか、僕がこの空気に飲まれているんだけども……。
 萩原は全くもって最低の回答をしてくれた。いや、ホント、最低だ。
心音による「行きたくない処は何処か?」という質問への彼女の回答は。

「この学校の近くにある、例の墓地だな。私はあそこは嫌いだ、眠ってる方々には失礼だがな」

 だった。
 

「わー、初芝。石が一杯あるね」
 心音の綺麗で呑気で陰気な色をした声が耳に入ってくる。もうため息しか出ない、だって今僕たちの居る所墓場だもの。
 先ほどまでいた学校から、数十分ほど歩いた距離にある、人の居ない、そして死者も余り居ない規模の小さい墓地。そんな処に僕たちは来ていた。
 こんな状況なら、誰だってため息の一つも出てくるってものだ。何が悲しくて、デートコースにお墓を入れなきゃいけないんですか?
 あれですか? この後死んでしまったデート相手の親に対して、墓場の前で「あなたの娘さんを僕に下さい!」って言うイベントが始まるの? それだと確かにデートコースに入れてもいいかもですね。
 はいはい、無いですよねそんな展開。分かってますよ、分かってます……。
 そもそも心音の両親はご存命だ。両親と言える様な事は何一つしていない人達だったけどね……。
 あの人たちがした事といえば、心音を壊して朽ちさせて傷つけて狂わせた位で。他には何も。

 本当に本当に、何もしない親達だった……。


「初芝?」
 っと、しまった。心音に返事をしないで考え込んでたから、彼女に無駄に心配をかけてしまった。これではダメだ。僕は【神父】から彼女のサポート役を任されているのだから。
 気分を切り替える、気持ちを変化する。今あの親は関係ない。
「……当たり前だろ? 墓地だよ、墓場だよ、霊園だよ? 墓石が一杯あるに決まってるでしょ」
「いや、初芝。正確には霊園は同じ並びで考えるモノじゃないよ。霊園は墓地の一種であって、綺麗な環境として整えられている墓地の事を、霊園って言うんだよ。要は環境の良い、クリーンな墓地だね。此処はどう考えても、霊園って言えるほど綺麗じゃないよ」
「そうですか、どうでもいいです」
「因みに最近はネット墓地ってのもあるらしいよ、凄いね。罰当たりだよね、初芝並みに」
「ネット墓地は利便性の面じゃ優秀だろう? だから初芝も利便性は優秀です」
「うるさい、キショイ」
 理不尽に罵倒された、泣ける。
 ちなみにネット墓地は、満足に体を動かせない方々にも気軽にお墓参りができるとして、結構質の良いサービスだと思う。まあ、罰当たりだって思う人も居るのは仕様がないとは思うけどね。
 まあ、ネットだろうと実地だろうと、どっちにしろ、祖先の墓参りなんてするような殊勝な考えを抱いていない僕には、全くもって関係のない話だけども。

「それで、初芝、どう?」
 夏の暑さが徐々に滲み出している季節だというのに、長袖長ズボンなジャージを着た心音が、不気味で薄ら寒い、やけに墓というモノと空気が相まっている暗い視線を向けながら、僕に聞いてくる。
「どうって、何が?」
 そこで、彼女はくいっと、僕に顔を近づけてくる。小柄だから、背伸びを精一杯しつつ、僕の顔に自分の顔を近づけてきて。
 らしからぬ笑顔を浮かべながら、言った。
「嫌な気分になった?」
「……」
 まったくこの女は、どうしたって性格が悪い奴である。
「……すげぇ嫌な気分になった。こんな処をチョイスするなんて、萩原も流石だよね。そして其処を何の躊躇いもなくデートの目的地に選ぶ心音に対して、更に嫌な気分になったよ」
 僕はなるだけ笑顔で、精一杯に作った【嫌な顔】で、そうやって心音に返してやる。
 心音はその解答と、何より僕の表情に満足したらしく、にへらっ、と笑いながら、僕との密着状態から離れる。
「良きかな善きかな。さてっ、初芝。墓地にも飽きたから、次は初芝の好きな所に行こう」
「いいの?」
「うん、嫌な処に行った次は、好きな処に行く。そうすれば、好きな処がもっと好きになれるよ」
 成程、それは確かにそうかもしれない。心音としては、僕の嫌がる顔を見た後は、きっと、僕の笑顔が見たいんだろう。
 こいつはそういう奴だ。
「心音」
「なに?」
 僕はきっと、彼女の事をよく分かっている、よく知っている。あの時から、彼女の理解者としての、そういう役目を果たさないといけないと、義務付けられている。
 だから、僕は適当に流すように、軽い気持ちで彼女に言った。
「心音は、俺の事ホント大好きだね」
 何でもないように、一言。
 心音は、その言葉に間髪入れずに。

「名前で呼ばないで、気色悪い」

 やっぱり、らしくない笑顔を、にへらと浮かべて。
 そうやって返してきた。


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