ダーク・ファンタジー小説
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- パンクな世界のスチームな僕等
- 日時: 2021/06/24 07:30
- 名前: 夏菊 (ID: SLKx/CAW)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13014
初投稿です。
高校生がスチームパンクっぽい世界で冒険するお話しです。
拙い部分も多くあると思いますがよろしくお願いします。
目次
第1話 >>1-4
第2話 >>5-7
第3話 >>8-16
第4話 >>17-24
第5話 >>25-32
第6話 >>33-39
第7話 >>40
- 第5話 #8 ( No.32 )
- 日時: 2021/04/23 22:18
- 名前: 夏菊 (ID: SLKx/CAW)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13014
「アラタ〜!!」
勇作さんと応接室に戻ると、リュカが勢いよく飛びついてきた。
「大丈夫だった?サポートするって言ったのに、ボク、お菓子もらうだけになっちゃったから…」
「大丈夫だったよ」
リュカを宥めながら、周りを見て、気づいた。
「伊藤さんは?」
「ロッカならトイレ行ったよ〜。お腹痛いのかな?」
「ちょっと、リュカちゃん!言わないでよ」
振り返ると伊藤が、むすりとした顔で立っていた。
「伊藤さん、体調悪いの?」
「平気だよ。それより帰ろ?疲れちゃった」
伊藤は、勇作さんに御礼を言うと、さっさと応接室から出てしまった。
大丈夫とは言っていたが、どこか顔色が悪かった気がする。本当に大丈夫なのだろうか。
その日から、伊藤の様子が変わった。どこか元気がない。落ち込んでいるようだ。
理由を聞いても、彼女は頑なに教えてくれない。
伊藤がそんな状況のなか、数日が経とうとしていた。
- 第6話 #1 ( No.33 )
- 日時: 2021/04/24 16:38
- 名前: 夏菊 (ID: SLKx/CAW)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13014
その日の来客は、珍しい人物だった。
黒い燕尾服の背の高い男。中年と呼ぶには若いし、青年と呼ぶには歳を食っている。リュカの実家の使用人、ジェームズだった。
「いらっしゃいませ、ジェームズさん」
六花がにこやかにジェームズを出迎える。ジェームズの方は相変わらずの無表情だ。
「アラタ様、ロッカ様、いつも坊ちゃんがお世話になっております。本日は、ルーカス坊ちゃんに用事があり、お邪魔させていただきました」
「ちょっと待っててください」
僕は、ジェームズにそう言ってリュカのいる地下室に向かう。
ジェームズは、なんていうか苦手なのだ。無表情で淡々としていて接しづらい。六花は誰とでもすぐ打ち解けるし、たとえ相手がジェームズでも、問題ないだろう。
地下室は、リュカの実験室と寝室を兼ね備えている。おそらく徹夜で何かしていたのだろう。机のの上にのっている、何か難しい数式のようなものを書き殴った紙の上で、リュカは寝ていた。
「起きて、ルーカス坊ちゃん」
「その呼び方、いや。可愛くない」
「そう言うなって。ジェームズさんが来てるよ」
リュカは寝ぼけ眼のようだ。パチクリと瞬きをする。
「ジェームズ?なんで?」
「知らない。なんかおまえに用事があるって言ってた」
リュカは椅子から降りて、軽く伸びをする。大きなあくびをひとつして、リビングへ向かった。
- 第6話 #2 ( No.34 )
- 日時: 2021/04/26 08:50
- 名前: 夏菊 (ID: SLKx/CAW)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13014
リビングに出たリュカは、ジェームズの座っている来客用のソファの正面にある、もうひとつのソファに腰掛ける。
足と腕をくんで触るリュカは、いつもの可愛らしい雰囲気とは少し感じが違う。ジェームズの方も一度立ち上がって、リュカに礼をする。2人の絵面は漫画か何かで読んだ、主従そのものといった感じだった。
「ジェームズ、座って。ボクに用事なんて、一体何があった?」
「坊ちゃんの今後に関わる大事なことでございます」
「何?ついに勘当?」
ジェームズは、静かに首を振った。彼は懐から一枚の封筒を取り出すと、机の上にそっと置く。
「赤い封筒…。これ、リュカちゃん宛の手紙?」
「その通りです、ロッカ様」
リュカは、訝しげに封筒を手に取る。そして、宛名を見て目を丸くした。
「これ…学会から!?」
「学会?」
「確か、この辺の有名な錬金術師が所属してる研究機関だよ」
六花が驚いたように僕の顔を見る。
「新くん、よく知ってるね」
「そうかな?」
リュカは、しばらく封筒を見ていたが、そっと机の上に置いた。
「ジェームズ、考えさせて。研究発表は気になるけど、いきなりすぎて…」
「承知しました。返事の期限まであと一週間ございます。考えると時間は充分かと」
「うん。ありがとう、ジェームズ」
「では、失礼いたします」
ジェームズは、礼をすると去っていった。
- 第6話 #3 ( No.35 )
- 日時: 2021/04/29 11:07
- 名前: 夏菊 (ID: SLKx/CAW)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13014
それから2日が経とうとしている。
リュカは、ずっと考え込んでいて元気がないし、六花も前より深刻そうな顔をしている。僕と目があってもすぐそらすのだ。
そういうわけで、珍しく『歯車のランプ』は、静まりかえっている。
「よお、昼飯の依頼に来たぜ!…って、んだよ?辛気臭ぇ」
だから、ヴィルのこの反応も当たり前だ。
来客の依頼をこなすため、僕はキッチンに向かう。僕等も昼食はこれからだ。ちょうどいいタイミングだ。
「あー、リュカが進路で悩んでるんだよ」
「進路?」
「そう。学会から手紙が来たみたい」
「マジ?やるじゃねぇか、チビのくせに」
ヴィルがバンバンとリュカの背中を叩く。
「ヴィルヘルムさん、リュカちゃん痛そう」
「痛くないだろ?これくらい」
「痛ぇよ、デカブツ馬鹿力。ボク、真剣に悩んでるんだけど?」
リュカが睨みながら呟く。あの口調からして、相当苛立っている。
ヴィルは別段気にしていないようだった。
軽く謝ってから、ソファに勢いよく座る。
「でもよ、そんな悩むか?俺だったら二つ返事で了承するぜ?」
「事情があるんだよ。下手したらボク、勘当されるし」
リュカの父親は、彼のことをあまりよく思っていなかった。だからリュカは悩んでいたのか。
「リュカちゃん…」
「お前の家庭の事情は知らねぇけどさ」
ヴィルは頭をかいたあと、リュカの顔を見つめる。彼の目は真剣そのものだった。
「お前は、本気でやってるんだろ?」
- 第6話 #4 ( No.36 )
- 日時: 2021/05/02 02:16
- 名前: 夏菊 (ID: SLKx/CAW)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13014
「え?」
「自分で言ってただろ?本気だ〜って」
「確かに言ったけど‥」
「なら、おまえに家とか他人の目を気にするん必要はねぇよ」
リュカは、しばらく驚いた顔をしていた。そんな彼の目の前に、昼食のサンドイッチを置きながら、僕は頑張って言葉を探した
「リュカの好きにしていいと思う。もしちょっとでも行きたいと思うなら、行ったほうがいい。あとで後悔するよ?」
リュカはしばらく悩んで、それから赤い封筒を持って自室へ向かった。
それから5分程たった。リビングに戻ってきたリュカの手には、白い封筒が握られている。
「ボク、行くことにしたよ。不安もあるけど、やっぱり気になるもん」
「わかった。リュカなら大丈夫だよ。堂々としてればなんとかなるよ。ね?伊藤さん」
「…え?ああ、うん、私もそう思う」
話しを聞いてなかったな、これは…,,。
こうしてリュカは、学会に参加することになった。