二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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TOWRM 光り輝く少女の物語
日時: 2011/02/27 11:12
名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: Y8BZzrzX)






どうもはじめまして。クリックして下さった方、ありがとうございます。作者の黒鳩です。

本作は、ナムコが発売しているテイルズオブザワールドというゲームに、オリジナルを追加して作成した小説です。

読まれる前に、下のご注意をお読みください。

まず、この小説はゲームの2を参考にして作ってあります。3もやりましたが、ストーリー的に2のほうがボクは好みだったので、そちらを採用しています。

次に、ゲーム内での専門用語はやってなくても分かるように解説を取り入れてやります。説明が足りねえ!と言う方は感想とかでいってください。返信致します。

キャラについてですが、基本は2のキャラが多いです。ですが、3に登場したキャラも一部登場します。ついでに設定もオリジナルです。(原作を壊さないで程度に)

何か追加でテイルズキャラを出せ!と言う方はお書きください。出せたら出します。

初心者ゆえに、感想とかめちゃめちゃ嬉しいです。酷評とかはお手柔らかに…。

最後に、更新が遅くなることが多いですが、途中で投げ出すつもりは現在ありません(多分ですけど……)


と長くなりましたが、それでもよろしければ読んで下さると嬉しいです。

それでは。









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Re: TOWRM 光り輝く少女の物語 ( No.2 )
日時: 2011/03/01 13:08
名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: Y8BZzrzX)


■オリジナル登場キャラクター2■



名前/読み アリア

基本性格 臆病で、内気な性格。いつもおどおどしており、ちょっとでも怒られるとすぐ逃げる。居場所であるバンエルディアがとても好む。そのため使命が終わってもみんなと一緒にいたいと強く願っている。

性別 女

容姿 こげ茶のセミロング。茶色の瞳。外見年齢は17歳程度。白いシャツに紅いスカートを穿いている。

備考 本来のグラニデのディセンダー。記憶の無い状態で生まれ落ち、運よくバンエルディアの面子に保護してもらい、そのままアドリビトムの一員となった。彼女はよく働き、物覚えも速いが時々全部の工程をきれいさっぱり忘れることがある。グレイシアをお姉ちゃんと呼ぶが、実際は姉妹ではない。

武器/戦術 基本的にグレイシアと同じで何でも出来る。しかしその能力はグレイシアに大きく劣る。それでもアドリビトムの中では強い部類。剣が得意で、部類は魔法剣士。よくクレスたちと修行に出かける。 

サンプルボイス 

「え、えと……はじめまして。あ、アリアって言います」

「グレイシアさんも、ディセンダーなんですか!?」

「わたしたちはディセンダー……この世界の明日はわたしたちにかかってるんだよ!?どうして!お姉ちゃん!」

「逃げちゃ駄目!わたし人のこと言えないけど、でも逃げちゃ駄目!!」





名前/読み クー

基本性格 グレイシアと同じく自由主義。縛られることを嫌うため、グレイシアとは大親友。性格的に軽い部分がある。対照的にヤタとは犬猿の仲。

性別 男

容姿 首に黒い鈴をつけた黒猫

備考 グレイシアと共に行動する生物の形をした武器。正体は柄に黒い鈴のつき、黒い刀身を持つ刀。ヤタと同じくレディアントと同じ技術で作られた意思を持つ武器。レディアントよりはっきりした意思を持つ。やっぱり喋れる。本人は隠していたかったらしい。

武器/戦術  グレイシアに使用されると刀に変化する。魔法を物理的に叩き斬れるなどめちゃくちゃ。やっぱりグレイシア以外は使えない。

サンプルボイス 

「オーケーオーケー、シア。ばっちり了解だぜ」

「だってさ、シア。縛られんの嫌い俺たちゃどーする?」

「だっ!?や、やめろ!肉球を触るな!来るなピンクの悪魔!俺に触んなぁ!!」



名前/読み カノンノ・フォルテシア

基本性格 明るく、素直で優しい。しかし一方で自分の世界観を持っておりそれに干渉されることを一番嫌う。

性別 女

容姿 外見はこちらの世界のカノンノとそっくり。違いは着ている服が、灰色のワンピースのようなものを着ていること。髪色も同じ桜色、緑の瞳に一箇所雪の模した髪飾りをしている。

備考 色々な世界を巡り、旅をしている異世界のディセンダー。自分の世界をとある理由で捨て、そのまま逃走しているうちに旅に変化していた。グレイシアとは古い知り合い。グラニデには何かの強い力に引っ張られて無理やり来てしまったようだ。名前が同じカノンノとややこしいので、フォルテと名乗っている。一応、異世界のカノンノに当たる。

武器/戦術  ディセンダーとしての資質はグレイシアと同等。スノーウイングズと呼ばれる大剣で戦う。これもレディアントに入るが、意思はない。

サンプルボイス 

「あれ?グレイシア!?何してるのこんな場所で!?」

「ふぅ〜ん……本当にわたしにそっくりだね。まあややこしいからフォルテって名乗るよ」

「え〜。グレイシアもう少し手加減してあげなよ〜」




というキャラでいきます。最後のカノンノはオリジナルで、2のヒロインとは別人です。間違いやすいかと思いますが、よろしくお願いします。







Re: TOWRM 光り輝く少女の物語 ( No.3 )
日時: 2011/02/27 13:14
名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: Y8BZzrzX)




プロローグ 目覚める救世主?


そこは、何もない空間。

上下も左右も、前後すらない場所。

母なる大樹の中、形のない『彼女』の意思は目を覚ます。

(うん……?)

あるものは、白と光のみ。

——目覚めなさい、新たなる私の子

(……)

母なる大樹の『声』が、『彼女』に語る。

——貴方の役目は一つ。世界を救うことです

(……また?)

『彼女』は不機嫌を隠そうとせず、『声』に刃向かう。

(あたしはあんたの道具じゃないって、何度言っても聞かない訳ね)

『彼女』のそれは、嘲笑が混じっている。

(何ならまた滅ぼそうか?あたしも死ぬし、その世界に生きる全ての命は消える。それでもいいでしょ?あたしがいるのは、ろくでもない馬鹿たちが大量にいるって証拠ですもの)

——貴女は、世界を救う役目がそこまで嫌なのですか?

母なる大樹は不思議だった。

何故、世界を救うことに何の疑問を持たないはずのわが子に、ここまで反抗されるのか。

(あんたにもあたしの記憶があるんでしょ?あたしは学んだの。あたしたちみたいな存在には自由がない。ディセンダーなんてものは、あんたにとってはただの道具。違う?)

——道具、だと貴女は思うのですか?

(思う。何だったら一度生み出せばいいでしょ。いつも通り記憶は持っていくわ)

『彼女』は、生み出されるのは初めてではなかった。

過去に、何度も何度も、世界を救う救世主として生み出され、その使命を果たしてきた。

(前の世界みたいに、救済するわよ。死と破壊を持ってね)

——それでは何の解決にもならないことは、貴女は理解していますか?

ディセンダーが世界を救う方法はそれぞれだ。

武力を持って、世界樹に仇なす存在を抹消したり。

その者たちと協力して解決口を探したり。

その者一人一人方法は自由。

『彼女』のように、死と破壊を用いて全てを破壊することもまた救済。

(解決?その世界に住む人間っていう反乱分子のこと?あたしにとっては人間なんてただの欲望の塊だし。滅ぼしたほうが世界のためよ)

——貴女に、世界を救うことは求めません

母なる大樹の『声』は、最早諦めてた。

『彼女』は最早救済するつもりはない、とようやく悟る。

(……じゃあ、あたしを何のために起こしたの?)

また、『彼女』の声に不機嫌が戻る。

——この世界には、もう一人のわが子が存在します

(だったらあたしは必要ないでしょ?)

——ですが、彼女は弱い。心も、何もかも

(はぁ?)

——何もかも、不完全なのです

(何でそんな状態で世界に放ったわけ?)

母なる大樹の『声』は、弱くなる。

——私の力は、もう完全なディセンダーを生み出せるほどの残っていません

(へえ……)

それを聞いた『彼女』は、しばらく考え、答えた。

(ああ、そういうこと。確かにあたしは実力だけは高いから。支援でも何でもしろって話ね?)

——そうです

(いいわよ別に。どうせこの世界の救世主はその子でしょ?だったらあたしはあたしで好きにやるから)

——そうですか

母なる大樹は続ける。

——記憶を持っていくと言いましたが、全てですか?

(この会話の記憶はいらない。あたしはいつも通りに行く)

——なら、もう行って下さい

(はいはい)

まるで仲の悪い親子のような。

そんな印象を受ける。

(体とかは前回のあたしでいいよ。もう力残ってないんでしょ?)

——後は、頼みましたよわが子

(精々死なないように耐えることね、お母さん)

お母さん、に少しの皮肉を混ぜ。

『彼女』の意識はその場所から、消えた。




Re: TOWRM 光り輝く少女の物語 ( No.4 )
日時: 2011/02/27 14:03
名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: Y8BZzrzX)






一話 初っ端から不幸




「…………」

そして世界に彼女は降り立った。

正確には、世界樹から吐き出されて、天高く放り出されたのだが。

「シア様!いつまで降下し続けるおつもりですか!?」

「……さぁ?」

彼女のこの世界での名前はグレイシア。

元々姓がない。

だからグレイシア。愛称はシア。

そしてお付の彼女の相棒たち。

「シア様!この下は海です!このままでは溺れてしまいますよ!」

「…………その時は、ヤタ。よろしく」

「私でも無理はありますよ!」

まず、黒い大きなカラスのヤタ。

右羽の一部が白いが、立派なカラス。

彼女の執事的な存在である。

そしてもう一匹。

「ひゃっほー!シア、たまんねーな!」

「……」

一緒に降下している黒猫を見つめる。

この喋る黒猫がもう一匹の相棒。

名をクーという。

首に黒い鈴をつけたその辺にいる普通の黒猫だ。見た目は。

「しっかし世界樹もひでえと思ねーかシア!何で天高く放り出されないといけねーんだよ!」

クーは先程の会話を見ていない。

だから知らない。的確な場所に転送できるほどの力すら残っていないことに。

「……さぁ?」

グレイシア本人も覚えていない。

彼女が所持している記憶は、過去の世界の莫大な情報量。

それを脳に刻み込んである。

「二人とも!下に巨大な船のようなものがあります!危険です!」

ヤタが、慌てたように叫びだす。

「シア様!何とか軸をずらして下さい!このままでは激突します!」

「無理」

グレイシアは無表情で返す。

ただでさえ猛スピードで降下しているのだ。

自分が何かしても軸をずらせる訳がない。

そもそもヤタはカラスなのだから、軸くらいは簡単にずらせるだろうが、こちらは一応人間だ。

空中でそんなことが出来るほうがおかしい。

「シア様!あれです!あの船です!」

ヤタに言われて下を見る。

何だか奇妙な形をした船が小さく見える。

「……でかすぎ。ますます無理」

そう小さく呟いた。






そしてその下。

その船の甲板の上。

「う〜ん……」

一人の少女が、日向ぼっこをしながら本を読んでいた。

温かい日差しで、眠くなる。

白いシャツに、紅いスカートを穿いたその少女は大きく伸びをする。

名をアリア。

この世界の救世主にして、たった一人のディセンダーである。

しかしそんな大層な称号の割りに、とてもそうは思えない弱気な印象を受ける。

「カノンノどうしたのかな?そろそろ洗濯とか終わりそうな時間だけど……」

パタンと本を閉じ、立ち上がろうとした、その時。

ガタンッッ!!!!

空から突如何かが飛来、甲板に激突し凄まじい音を響かせ。

——ばっしゃーん!

バウンドして、柵を乗り越え海に落ちていった。

「…………」

アリアは目の前のことが理解できなかった。

「…にゃーご」

「カァー」

ただ何処からか来た黒い猫と、一部白い羽のカラスが甲板にいて、何かが落ちていった方向を柵ぎりぎりで海を見下ろしている。

「どうしたのアリア!?すごい音したけど!」

中から、慌てた様子の少女が出てくる。

見た目は、15歳前後。

桜色の短い髪を、一箇所括っている。

どこかの学校の制服のような服を着て、緑の瞳をぱちくりさせる。

「あれ?何もない?何があったの?」

「……わたしにも、分かんない…」

アリアは呆然とした格好で少女——カノンノに今起きたことを話す。

「何か落っこちてきて、海に沈んでいった?」

「みたいだけど……」

正直何があったか正確には分からない。

「にゃーごー!」

柵に乗っていた黒猫が、あろうことかその海に飛び込もうとするのを見つけると、カノンノは慌てて抱きかかえる。

「わ!駄目!」

しかし黒猫はじたばた暴れる。

「カァー」

もう一匹のカラスは空を旋回しながら、アリアのほうに飛んでくると、着地し、とてとてと歩いてくる。

「ほえ?」

くちばしで袖をくわえ、ぐいぐいと引っ張る。

「え?何かいるの?」

聞いても無駄と分かっているが、聞くとこくこくと頷く。

「カノンノ!パニールさんって、動物と会話出来たよね?呼んできて!」

「うん」

カノンノは猫を抱きかかえたまま、船内に走っていた。


グレイシアが救助されるのは、それからしばらく後の話だった。



Re: TOWRM 光り輝く少女の物語 ( No.5 )
日時: 2011/02/27 15:21
名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: Y8BZzrzX)






2話 船内大騒ぎ



「…………ぅ」

どたばたとする喧騒で、グレイシアは目を覚ました。

体を起こす。

どうやら、例の船の中らしい。

落ちる瞬間までは覚えているのだが、そのあと視界がブラックアウトしている。

どうやら気絶してしまったらしい、とグレイシアは認識した。

周りを見回す。

簡素な部屋だ。

あるのは化粧台、ソファー、机、イス、ベット。

結構広い部屋に、これしか家具を置かないと更に広く感じる。

「…………?」

一緒にいたはずの、ヤタとクーの姿が見えない。

部屋を見回すが、どこにもいない。

「………」

仕方ないので、立ち上がる。

着ている服が塩くさい。しかも湿っぽい。

海に落ちたのだろうか?

まあどっちでもいい、とグレイシアは部屋を出る。

廊下に出ても、誰もいなかった。

天井から、人間の騒ぐ声が聞こえた。

どうやら二階があるようである。

しかしここで見つかるのも面倒だ。

そう考えたグレイシアは、足音を殺して移動を始める。

そろそろと移動し、機関室のような場所に出た。

部屋の真ん中にある機械が、ごうんごうんと起動音と上げている。

その脇には、小さな台がある。

その上に、書類がばら撒かれていた。

(…?)

書類を覗くと、何やら名前と依頼内容と思われるものが書き込んである。

(…ギルド?)

それを見て、グレイシアはそう考えた。

ギルドとは、民間の何でも屋のようなものだ。

依頼さえされれば、要人警護だとか、魔物退治だとか何でもする。

(……船のギルドか)

珍しい存在である。

グレイシアも初めて見るタイプのギルドだ。

その時、ばたばたといくつかの足音と、聞き覚えのある声が聞こえた。

「だっ!?や、やめろ!肉球を触るな!来んなピンクの悪魔!俺に触んなぁ!!」

クーの声だ。

しばらく待っていると、階段を駆け足で下りてきたらしいクーがこっちに真っ直ぐ走ってきた。

「し、シア!助けてくれ!悪魔だ!ここには悪魔がいる!」

「悪魔?」

ぎゃあぎゃあクーがうるさいので抱きかかえる。

その後を、小柄な少女がとてとてと歩いてきた。

見た目もまだ幼い。

「……」

虚ろな瞳が印象的な少女だ。

確かに彼女の髪はピンク色だが、何が悪魔?

「ひぃぃ!!?」

腕の中でクーが悲鳴を上げる。

「貴女は……先程……海に落ちた」

その女の子はグレイシアに話しかける。

「……」

その後ろから、白いシャツの女の子と、学生と思われる女の子が慌てた様子で来た。

「プレセア駄目だよー。あの黒い猫嫌って言ってるし」

白いシャツの女の子が言う。

「そう…ですね…」

プレセアと呼ばれた女の子はがっかりした様子で戻ろうとする。

「……ねえ」

グレイシアは、腕の中のクーを、猫掴みして、プレセアに渡す。

「…?」

少し首を傾げるプレセア。

「はい。撫でたいならいいわよ。好きなだけ撫でて」

「し、シア!?」

クーが悲鳴を上げる。

「……我慢しなさい」

非情に切り捨てる。

「ひぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

暴れて逃げようとする前に、プレセアにがっしり捕まるクー。

「ありがとう…ございます」

「シアの裏切り者ぉぉぉぉぉ!!!!」

嬉しそうに見える彼女とは対照的に、クーの悲痛な声が船内に響く。

「はぁ…」

そのまま踵を返そうとして。

「あのっ」

声を掛けられた。

「……」

振り返る。

二人の少女は心配そうにグレイシアを見ている。

「体調とか大丈夫ですか?」

学生服のような服を着た少女に尋ねられる。

「……別に。問題ない」

そっけなく言う。

グレイシアは基本群れたりすることを嫌う。

だから、そういう言い方しかしない。

「あの、よかったら、上に来てくれますか?みんな待ってるんです」

「待ってる?」

グレイシアが怪訝そうに聞くと、白いシャツの女の子はちょっと怯んだ。

「あ、えと。みんなっていうのはここのメンバーのことで。空から落っこってきたので、みんなでどうするか決めようって、アンジュが」

「誰?」

更に怪訝そうな声で聞く。

「あ、ええと………ここのギルド長です」

「……」

やはりギルドだったらしい。

感心してから、しばらく考える。

そして答えた。

「……ん。案内して」

二人はよかった、という顔をしてから、笑顔でグレイシアを上の階に案内した。



Re: TOWRM 光り輝く少女の物語 ( No.6 )
日時: 2011/02/27 16:56
名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: Y8BZzrzX)





3話 ディセンダー?





「それじゃあ、まずは自己紹介からね。わたしは、アンジュ・セレーネ」

二人に案内され、ホールのような広い場所に連れてこられた。

そこで色々仕事をしている女性に、二人が説明して今に至る。

見た目は司祭服に似ている。青い髪の毛と、まだ10代だろうか?顔立ちが美しいというより、可愛い。

白い女の子と一緒に学生の女の子も下に行った後、自己紹介された。

「ここのギルド長をしてます。えーと、貴女は?」

「……………………グレイシア」

かなり長い沈黙の後、小声で答えた。

「そっか。それじゃグレイシア、何で空から降ってきたの?」

アンジュの質問に、グレイシアは固まる。

本当のことを言っても、信じてもらえない。だから考える。

表面上は無表情だが、内面は少し揺らいでいる。

そして無難な答えをみつけた。

「…………竜巻に巻き込まれて」

「たつまき?」

「…………」

沈黙を肯定と受け止めたのか、アンジュは納得したようなしないような顔をした。

「んー……。まいったなぁ……。今はこの船改修中で近くの港に送ってあげられないんだけど」

「…………あたしは元々旅してるから。別にそんなことしなくてもいい」

グレイシアはそれだけいい、くるりと出口に向かう。

「あっ、ちょっとどこいくの!?」

アンジュが止めると、振り返らずに言う。

「あたしは………もう大丈夫だから。それに、ヤタもいる」

「ヤタ?」

「カラス。あたしの相棒」

「あの喋るカラス?」

「そう。どこ行ったか知らない?」

「んー……さっきハロルドが何か実験するとか言ってたけど…まさか」

アンジュは慌てて奥にある扉に向かうが。

その前に悲鳴が聞こえた。

「ぎゃああぁぁあぁ!!!!!!」

「!」

ヤタの声だ。

しかもとてつもなく切羽詰った悲鳴だ。

「ヤタ……?」

スタスタと扉に向かい、バン!と開く。

「し、シア様!狂人です!狂人に殺されます!!」

飛んできたヤタが頭の上に止まる。

「あっちゃー。飼い主目覚ましてる」

研究室のような部屋から、若い女性が何かの装置を片手に頭をかいていた。

「せーっかく珍しい喋るカラスを見つけたのに」

とぶつぶつ文句を言っている。

「ハロルド…?何しようとしてたの?」

アンジュが笑顔のまま怒りマークを出しながら聞いた。

「へ?解剖」

ハロルドと呼ばれた女性はあっけらかんと答えた。

「あのねえ…」

アンジュも呆れて何も言えない様で。

「ごめんね、グレイシア。ハロルドって、その、天才なんだけど」

「あ、飼い主いるならちょうどいいわ。もう一匹の喋るネコどこ行ったか知ってる?解剖したんだけど〜♪」

「……」

嬉しそうに聞くハロルドを無視、そのままヤタを頭を乗せたまま出口を目指す。

「あ、グレイシア?」

アンジュの呼びかけも無視し、グレイシアは口に指を当てる。

————♪

そして人間の聞き取れない音程で音を鳴らす。

「シアてめえ!よくもさっきは俺んとこあの悪魔に渡したな!おかけで肉球がダメになるじゃねえか!」

すぐさまクーが戻ってきた。

「お♪」

ハロルドが目を輝かせる。

「ひぃぃぃぃ!?」

その視線を動物的直感で感じたクーは走ってグレイシアに飛び乗る。

「介抱してくれてありがと。あたしは、これでもういく」

お礼だけ言ってさっさと船内を出た。

止める二人の声が後ろから聞こえる。

でも止まらない。

「…………」

船のふちまで行き、下を見る。

海だ。

一帯一面全て海。陸が見えない。

(…………一度、世界樹の中に帰ろう)

そう判断し、周りに人がいないか確認。

一人だけいた。壁に寄り掛かって空を見上げている。

女性だ。

年齢も変わりにくい。

青い女性。

そう表現しか出来ない。

「あら?もうお帰り?」

「……」

グレイシアに顔を向けると、そう言った。

グレイシアはこの女性を知っていた。

「セルシウス…」

「あら、私のこと知ってるのね。あなた、ディセンダーね」

一発で見抜かれた。

「……流石は氷の精霊。でも、何でそんなに人間に近い体になってるの?」

精霊は幽霊とも違う、特別な体で出来ている。

「色々事情があるわ。でも、何でこの世界にディセンダーがいるの?もう、アリアがいるのに」

「アリア?」

「貴女を運んでくれた女の子のこと。貴女は光が見えないの?」

光。

この世界の人間には光がある。

ディセンダーは本来その光が見えるのだ。

そして、その中でも特異な人々なら、見抜けるのである。

しかし、グレイシアにはその能力はない。

「…………昔、その力は捨てた。邪魔だから」

「アリアと違って記憶があるのね。出て行くなら、みんなに知らせてからにしてくれるかしら?」

「………」

精霊がいれば信じてもらえるだろう。

そう判断した。

「…………」

黙ってうなづく。




そして、輝く二人の少女の物語が、始まる。




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