二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ポケットモンスターBW *道標の灯火*
- 日時: 2020/09/15 16:16
- 名前: 霧火# (ID: HEG2uMET)
初めまして、霧火と申します。
昔からポケモンが好きで、今回小説を書こうと思いました。
舞台はポケットモンスターブラック・ホワイトの世界です…と言っても舞台はゲーム通り
イッシュ地方ですが、時間軸はゲームの【数年前】でオリジナル・捏造の要素が強いです。
そして、別地方のポケモンも登場します。Nとゲーチスは出ないかもしれません(予定)。
!注意事項!
↓
1.本作のメインキャラは【最強】ではありません。負ける事も多く悩んだりもします。
2.書く人間がお馬鹿なので、天才キャラは作れません。なんちゃって天才キャラは居ます。
3.バトル描写や台詞が長いので、とんとん拍子にバトルは進みません。バトルの流れは
ゲーム<アニメ寄りで、地形を利用したり攻撃を「躱せ」で避けたりします。
4.文才がない上にアイデアが浮かぶのも書くペースも遅いため、亀先輩に土下座するくらい
超鈍足更新です。
3〜4ヵ月に1話更新出来たら良い方で、その時の状態により6ヵ月〜1年掛かる事があります。
申し訳ありません。
新しいタイトルが発表されてポケモン世界が広がる中、BWの小説は需要無いかもしれませんが
1人でも多くの人に「面白い」「続きが気になる」と思ってもらえるよう精進致しますので、
読んでいただけたら有り難いです。
**コメントをくれたお客様**
白黒さん パーセンターさん プツ男さん シエルさん
もろっちさん 火矢 八重さん かのさん さーちゃんさん
有り難うございます。小説を書く励みになります++
登場人物(※ネタバレが多いのでご注意下さい)
>>77
出会い・旅立ち編
>>1 >>4 >>6 >>7 >>8 >>12 >>15
サンヨウシティ
>>20 >>21 >>22 >>23
vsプラズマ団
>>26 >>29 >>30 >>31
シッポウシティ
>>34 >>35 >>39 >>40 >>43 >>46 >>47 >>48 >>49 >>50 >>51 >>52 >>55 >>56
ヒウンシティ
>>65 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>71 >>72 >>75 >>76 >>78 >>79
ライモンシティ
>>80 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>94 >>95 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103 >>106 >>116 >>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>130 >>131 >>134 >>137 >>138 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>148
>>149 >>150 >>151
修行編
>>152 >>153 >>155 >>156 >>157 >>160 >>163 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>171 >>173 >>174 >>175 >>176 >>177 >>178 >>180 >>182 >>183
>>185 >>187
番外編(敵side)
>>188
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- Re: 96章 レイド ( No.177 )
- 日時: 2016/01/28 20:43
- 名前: 霧火 (ID: LQdao1mG)
多少時間は掛かってしまったが、リオ達は何とか全員の縄を切り終え、一息ついた。
各々が体を伸ばしたり汗を拭う中、リオは階段から離れた場所で俯いている大柄の男性に気付いた。
「遅くなってすみません。…どうぞ」
男性の前にしゃがんで水の入ったペットボトルを差し出すが、男性は俯いたままで
ペットボトルを受け取ろうとしない。
緊張の糸が切れて脱力しているのか、将又疲れて寝てしまったのか──何れにしても、このまま遺跡に留まるのは良くないだろう。
「それで?これからどうするの」
「…水分補給も大事だけど、まずは全員を安全な場所に避難させた方が良いかも。私達だけじゃ大変だから、
ジュンサーさんに事情を話して助けてもらいましょう」
今後の事をレイドと話していると、目の前の男性が突然ペットボトルを払い除けた。
すぐ飲める様に蓋を外してあったペットボトルはリオと、その後ろに居たレイドの頭上を越え、空中で中身を
ぶちまけながら流砂に落ちて呑まれていった。
辺りがしん…と静まり返る。
「急にどうしたんですか?」
静寂を破ったのはレイドで、困惑しているリオの前に出て男性を見下ろす。
しかし男性は問い掛けには答えず白衣に付いた砂を落とすと、レイドを押し退けて横を通り過ぎた。
一部始終を見ていた他の大人達は目配せして頷き合うと、白衣をはためかし彼の後を追い始めた。
「ま、待って下さい!」
『モシモシ!?』
リオとヒトモシが声を掛けても誰も立ち止まらない。
駆けて行く大人達を目で追っていると、手を引かれている人物が目に留まった。
口は半開きで目線が定まっておらず、顔を真っ青にしている彼は、1人だけ清掃員の格好をしていた。
擦れ違いざまに目が合い、清掃員が口パクでリオに何かを伝えた。
(……え?)
内容は短くシンプルでリオにも理解出来る物だったが、だからこそリオは首を傾げた。
「…どういう事?」
「そのままの意味でしょ」
リオとレイドは入り口辺りで固まって何かを話し始めた大人達を見つめる。
奥に追いやられたのか、こちらからでは清掃員の姿を確認出来ない。
「でも、こうして全員解放したわよ?」
「解放したけど解放されてないんでしょ。結構アタマ固いよね、君」
回りくどいレイドにリオが物申そうとした時。
レイドはリオをペットボトルが落ちた場所──流砂の方へ突き飛ばした。
刹那、先程まで自分が居た場所が爆発した。
「!?」
その光景を目の当たりにしたリオは、起き上がって砂埃の中に居るであろうレイドの元へ駆け出そうとする。
しかし無情にも流砂は足を呑み込み、起き上がっていたリオの上半身は打ち付ける形で再び地に伏した。
「レイド…!」
倒れたまま、リオは手を伸ばす。レイドの姿は、まだ見えない。
そうしてリオの体は静かに呑まれていった。
┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼
「……まったく。調子が狂う」
砂埃を払いながら出て来た少年に愕然とする。
後ろに居る仲間も皆、同様に目を見開き少年を見据えている。
確かに《種爆弾》は金髪の少女目掛けて飛ばした。
隙をついた寸分の狂いも無い攻撃だったが、こちらを見ていた少年の機転により少女には当てられなかった。
その代わり、邪魔をした少年に全弾命中した。
した、筈なのだ。
なのに──
「無傷だと!?」
少年の体には傷1つ無かった。
モンスターボールの開閉音が聞こえなかった為、攻撃が当たる直前にポケモンを出したとは考え難い。
少年はこちらの場に居る数匹のポケモンと、ナイフやロープを持った仲間を見て目を細めた。
「助けられて改心…とまではいかなくても、少しは懲りたかと思って黙っていたけど恩を仇で返すなんて、
クズばかりだね」
言葉通り人間を見る目とは思えない程の冷たい目が向けられる。
年上に対する物とは思えない生意気な態度に、額に血管が浮かび上がるのを感じた。
それを察したのか仲間の女が大きく咳払いをした。
「…こちらにはか弱い人質様が居るのよ?言葉遣いには気を付けて欲しいわね」
そう言って女は人質である清掃員の頬を撫でた。
恐怖からか、清掃員は自分のポケモンを持っていて戦う事が出来るにも関わらず、頬を撫でられただけで
ガタガタと震えている。
「そうだ!コイツが傷付くのを見たくなけりゃあ、大人しく──「詰めが甘いね」………は?」
「人質、人数差…目に見える優位さに満足している様じゃ、僕には勝てないよ」
「ハッ!ただ現実逃避してるだけだろ!」
「じゃあ証明してあげるよ」
少年が目を細めて人質の頬を撫でている女を指を指した。
瞬間、女は人質から離れてフラフラと壁に向かって行くと…そのまま勢い良く頭を打ち付けた。
パタリ、と糸が切れた人形の様に後ろへ倒れた女を俺と仲間は凝視する。
「まずは1人、だね」
困惑する俺達の耳に少年の冷たい声が静かに響いた。
【謝罪とどうでも良い話】
何度目か分からないけど更新遅れてすみません!
話の大半は出来上がっていましたが ①リオとレイドが共闘する ②レイドが流砂に落ちリオが戦う
③リオが流砂に落ちレイドが戦う(戦闘描写有り) ④リオが流砂に落ちレイドが戦う(戦闘描写カット)
⑤レイドとリオが流砂に落ちる
…と、こんな感じでバトルの展開をどうしようか、それを考えていたら物凄く時間が掛かってしまいました。その割に出来は悪いですが…
- Re: 97章 零度 ( No.178 )
- 日時: 2017/11/06 20:58
- 名前: 霧火 (ID: hYCoik1d)
「リーダー。メグさん石頭だから、出血と内出血は無いよ。骨折もしてなさそうだし、脈も安定してる」
冷静に倒れた仲間の容態を確認し、報告した少女に落ち着きを取り戻した男は背を向けたまま口を開く。
「ご苦労。では直ちに、」
「戦闘に参加せよ、だよね?任せて」
「…ルナみたいな賢い部下を持って俺は幸せ者だな」
リーダーと呼ばれた大男、ロブに褒められ少女──ルナは嬉々として自分とメグのボールを投げた。
ルナのボールからは水色で、女性の様な頭をしたサルの様なポケモン──放水ポケモンのヒヤッキーと、
メグのボールからは炎の形をした頭を持つサル姿のポケモン──火の粉ポケモンのバオッキーが姿を現した。
2匹はロブの傍らに立つ緑色のトゲトゲ頭のポケモン──棘猿ポケモンのヤナッキーに頭を下げた。
相性関係無く上下関係が出来上がっているらしい。
(あの餓鬼が指差した途端、メグは壁に頭を打ち付けた…あの時のメグは間違い無く混乱していた。
攻撃を受けた様子は無い、そして特殊な電波や音波を感知するこの機械が反応しないのを見ると…)
レイドを見据え、ロブは持っていた正方形の銀色の端末を胸ポケットに仕舞い、叫んだ。
「てめえ等!このフロアに《怪しい光》を使って餓鬼に加担してる奴が居る!巧みに姿を消しているが、
餓鬼に攻撃すれば何らかの行動を起こす筈だ!俺は攻撃に専念する、残りは辺りを警戒して、
不自然な所を見付け次第…徹底的に叩け!!」
「「「了解!」」」
一斉に返事をして散り散りになった敵にレイドは目を瞬かせる。
「へぇ。只の筋肉担当かと思ったら、意外と頭の回転が速いんだね。チームワークも良さそうだ」
「今更気付いても遅いんだよ!ヤナッキー、ローキック!」
感嘆するレイドの足を狙って、全体重を載せたキックが素早く角度を上げて叩き込まれる──が、黄色い壁に阻まれた。
(《リフレクター》!今張ったのか!?………いや、1カ所ヒビが入ってる。最初の攻撃を喰らっても
無事だったのは、こいつのお蔭か)
「残念、届かないね」
「余裕ぶっこいてる暇は無いぜ!瓦割り!」
ヤナッキーが手刀を勢い良く振り下ろすと《リフレクター》はガラスの様な音を立てて割れた。
想定していたのか、咄嗟に距離を取ったレイドに手刀が当たる事は無かった。
しかしロブは攻撃の手を緩めない。
「種爆弾!!」
ヤナッキーは硬い殻の大きな種を数個レイドに向かって飛ばす。
しかし又してもレイドは黄色い壁に護られた。
「ワンパターンだね」
「それはこっちの台詞だ、腰抜け野郎…!」
ギリッと歯軋りするロブに小さく笑い、レイドはヤナッキーを指差した。
「!全員目ぇ閉じろ!!」
ロブは部下に注意を促し、自らも目を閉じた。
指を指されたのはヤナッキーだが部下と、部下のポケモンが対象の可能性を考えた結果だ。
「ぐっ!」
「きゃあっ!」
しかし後ろから聞こえた仲間の悲鳴に振り返り開眼すると、人質の姿はそこに無かった。
尻餅をついて呆然と上を見つめる仲間につられてロブも上を見ると、人質の体は宙に浮いて移動していて、
そのままゆっくりとレイドの後ろに降ろされた。
目を光らせて忙しなく辺りを警戒していたミルホッグが、尻尾でトレーナーの腕を軽く4回叩いた。
《見破る》で何かを見付けたサインである。
「黒い眼差し!」
ミルホッグの瞳が両端からじわじわと黒に侵食されていき、侵食が黒目に到達すると──
黒目が一瞬で黄色に変わった。黒の中に突然現れた黄色は夜空に浮かぶ満月の様だがそれにしては禍々しい。
実際、異様な光景を目撃した野生のポケモンは皆、恐怖でその場から逃げ出せずに居た。
ミルホッグの視線の先に居るであろうポケモンも、例外ではないだろう。
「今よ!」
「任せて。ヒヤッキー、ハイドロポンプ」
ルナの指示を受けたヒヤッキーはミルホッグの尻尾をバネに高々とジャンプして、
頭の房に溜めてあった水を尻尾から放水した。
一直線に放たれた水は空中で見えない何かにぶつかり、四方八方に水が飛び散った。
そして徐々に姿を現したポケモンの正体を知り、ロブは静かに笑った。
「成る程…道理で姿が見えなかったわけだ。だが、正体さえ分かればこっちのモン!てめぇ等やるぞ!」
「ミルホッグ、怒りの前歯!」
「ヒヤッキー、気合い玉。バオッキー、火炎放射」
「ヤナッキー、ソーラービーム!!」
ミルホッグは鋭い前歯を剥き出しにして襲い掛かり、ヒヤッキーは気合いを高めて渾身の力を球状に圧縮して
放出、バオッキーは口から激しい炎を発射し、ヤナッキーは頭に光をいっぱい集めて光の束を発射した。
「守る」
しかしレイドのポケモンは緑色の光で自身を包み、大技から完全に身を守る。
「…彼女が戻ってくる前に決着をつけたいな。今度はこちらの番だ」
「コソコソ姿を隠さなくて良いのか?」
挑発する様に片眉を上げる相手にレイドは表情を変えずに頭を振る。
「必要無い。実力は把握したしこれ以上長引くとまずいから一撃で終わらせようか」
「まずい?何が…それに一撃だと?どういう、」
ロブが聞き返そうとした時、突然自分と仲間のポケモン全てが転倒した。
不自然な転び方に目を凝らすとポケモン達の腕や脚、尻尾に透明な紐状の物が巻き付き、
それがレイドのポケモンと繋がっているのが見えた。
「いつからっ…!」
「貴方は質問ばかりだね。そんなの…知る必要無いよ」
レイドが冷たく言い放つとポケモンの口から冷気が微かに溢れた。
レイドのポケモンとは距離があるのに、少しの冷気でロブ達の体は寒さで震え、鼻水が止まらなくなる。
そんな彼等に、初めてレイドは笑顔を見せる。
そして──
「絶対零度」
-273℃の冷気がロブ達を襲った。
もう待ってくれている方は居ないかもしれませんが…戻って来ました。
かなり長いスランプに陥って今まで以上に文章が思い付かなくなり、それなら気分転換でポケモンと小説から
少し離れた結果、ここの存在を完全に忘れてパスも思い出せないというお馬鹿な失態を犯したため、
連絡しないまま2年近く放置という形になってしまいました…本当に申し訳ありません!
久々なので文章短いし駄文で「キャラも話も覚えてないよ!」と怒られてもおかしくない出来ですが、
また少しずつ書き進めたいと思います。1ヵ月〜2ヵ月の間に1話更新、更新できなかったら報告、これが今の目標です。
こんなどうしようもない者ですが、どうか応援を宜しくお願いします。
- Re: 98章 善か悪か ( No.180 )
- 日時: 2018/03/29 16:12
- 名前: 霧火 (ID: Nh/fscfw)
「レイド!無事っ!?」
「見て分からない?」
駆け足で階段を上り段差を飛び越えたリオが見たのは、あと数センチで天井に届く程巨大な氷塊と、
それを眺めるレイドだった。
汗だくの自分とは対照的に涼しい顔のレイドに言葉を失うリオだったが、氷の中に人影──数分前まで
人質だった大人達と数匹のポケモンを見付けて、慌てて駆け寄る。
「レイドがやったの?それに…この人達がこうなってるって事は、やっぱりさっきの爆発は…」
「君の想像通り、彼等が攻撃してきたんだよ。無防備な子供にね…それで、反省も降伏もしなかったから
僕が全員倒した」
「全員……」
氷漬けになっているポケモン達は体つきがガッシリしていて、良く鍛えられているのが分かる。
それこそ、リオのポケモンの何倍もの経験を積んできたのだろう。
(そんなポケモン達を1人で倒すなんて、やっぱりレイドは強いんだ…!)
自分はまだ駆け出しのトレーナーだと自覚しているリオだが、それでも思った──レイドとバトルしたい、と。
ヒウンシティで御預けを食らったのもあり、余計そう思った。
そんなリオの熱視線に気付いているのかいないのか、レイドは冷たい目でリオを見る。
「何ボーッとしてるの?まさか僕が戦ってる間、今みたいにボーッとしてたとか、流砂に足を取られて
もたついてたとか言わないよね?」
「!…落ちてすぐにジュンサーさんに連絡しました!砂嵐が酷くて15分くらい掛かるみたいだけどねっ!」
「ふぅん。一応、必要最低限の事はしたんだ」
一々嫌味な物言いをするレイドに、高揚した感情がすっかり冷めたリオは腕を組んで外方を向く。
しかし怒るより先に、レイドに言う事があった。
「…その、助けてくれてありがとう」
腕組みを解き、背筋を伸ばして深々とレイドに頭を下げる。
少し硬くなってしまったけど、感謝の気持ちだけはしっかり込めて。
そして顔を挙げたリオにレイドは目を丸くする。
「…驚いた。君みたいな人でも感謝とか出来るんだね」
「……………」
そして安定の憎まれ口を叩いたレイドに、リオは思った。
(お礼言って損した!!)
その後、いくら悪党でも氷漬けは過剰防衛だし、彼等の命が危ないと判断したリオが氷を溶かそうとしているのがバレて、ジュンサーやリマが到着するまでレイドに罵られて、精神ダメージを喰らっていたのは
誰も知らない。
┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼
「うふふ。リオがお世話になりました」
「いえ、自分はバトルをしただけです」
「あらあら。謙遜しなくて良いのよ〜?貴方が居なければリオは今頃……貴方はリオの恩人だわ〜」
「…お褒めいただき恐縮です」
(アキラといいレイドといい、どうしてこう、お母さんには態度が180度変わるのかしら)
少し前まで人を
「救いようの無い馬鹿」「頭の中お花畑」「初対面の時から聡明さに欠けた顔だと思ってた」
「馬鹿って言葉は君の為にあるんだね」
…等と散々罵っていたのに(反論してもカウンターの如く倍返しされた)、今は深々と母にお辞儀をしている。
(ジト目になるな、睨むなって方が無理な話よ)
最後の大人が連行されたのを横目で確認して、リオは唇を尖らせる。
逮捕された大人達は全員前科がある要注意人物だったらしく、リオが危惧していた過剰防衛扱いには
ならなかったものの、ジュンサーさんに物凄く怒られてしまった。
氷漬けにした張本人だけなら兎も角、氷を溶かそうとしていた自分まで連帯責任で怒られ、リオの気分は
ずっと下降中だ。
しかし命を救われたのは事実なので、不満諸々は心の中に留めておく。
「…それにしてもよくあの人達が悪者だって分かったわね」
リマとの話を終えてこちらへ歩いて来たレイドに、リオは疑問を口にする。
「この遺跡に限った事じゃないけど観光名所って状態を維持する為に頻繁に点検して中を確認するんだ。
マナーの悪い人が捨てたゴミを回収したりね。でも古代遺跡の場合、点検や状態保持以外に定期的に調査を
する。砂が多いから掘り進めば隠し部屋が現れて、そこから大昔の宝が見付かる可能性もあるからね」
(……また回りくどい)
簡潔に「○○が理由だ」と言ってくれれば良いのに。
しかし珍しく皮肉無しにレイドが語ってくれているので、愚痴は心の中で言っておく。
「そういった調査は人が来ない深夜か数日休みにしてする物だけど、いつやるかなんて関係者か情報通にしか
分からない。それで案内の女性に今日遺跡に入れるか聞いたら、清掃業の人しか来ていないから大丈夫…
そう言われた。でもこの砂漠に居るトレーナー達は、調査員に遺跡に入る事を断られたそうなんだ。
それで、案内した女性が日にちを勘違いしたと結論付けて引き返そうとしたら、君が遺跡を出入りしている
のを目撃してね。他の人は駄目なのに君はOKな理由が気になって覗いてみたんだ。
そうしたらあの大人達が縛られていたから、彼等は調査員の名を語った偽者なんだと思った」
「私が来た時には、もう縛られていたのよね…」
「そう。だから混乱したよ。ワルモノだと思っていた人達の縄を君が解こうとしてるんだから」
「…あの2人、あの人達が悪い人だって気付いたから縛ったのかしら」
(もしそうなら、私がした事って…)
「話を続けるよ。君の言う逃げた2人の目的は知らないけど、彼等の目的は大方【古代の城】が
ドラゴンポケモンを従えて建国した城の跡地と知って、金儲けの為に宝と未発見のポケモンの骨でも
探してたんでしょ。でも探すのに野生のポケモンが邪魔で蹴散らしていたら、立ち入り禁止を無視した
2人が現れた。宝を独占したかった連中は調査員を装い、説得して追い出そうとしたけど
言う事を聞かなくて、痺れを切らして捕まえようとしたら逆に捕まった…ってのが大体の流れでしょ」
肩を竦めたレイドにリオは口を閉ざす。
仮に黒だったとしても、今にも倒れそうな人を見捨てる事は出来ない…だから助ける。
確かに自分はそう言った。
しかし、その結果は…
(私はレイドが居なかったら大怪我を負っていた。レイドは、1人で危険な大人達と戦う羽目になった…
「仮に」と言っといって、心の中では大丈夫だって思っていた……!)
リオは自分の行動が善行か悪行か、分からなくなった。
- Re: 99章 命長し悩めよ乙女 ( No.182 )
- 日時: 2018/05/01 21:14
- 名前: 霧火 (ID: fjWEAApA)
「まさか自分のした事は間違ってたんじゃないか…なんて、馬鹿な事は考えてないよね?」
レイドのアイスブルーの目と目が合う。
深い溜め息の後の言葉だったから嘸、呆れ顔をしているだろうと言う予想は外れ、
レイドの表情は穏やかだった。
「君のした事は正しかった。赤の他人でも見捨てずに2人組と戦って人質を救出した君を批判する筈ない。
結果的に人質の殆どがワルモノだったとしてもね。情報を君と共有しなかった僕にも非があるし……と、
こんな風に言っても頑固な君は自分を責めるだろうから、別の形で伝えるよ。付いて来て」
リオが何かを言うより先にレイドはリオの腕を掴んで歩き出した。
┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼
「ここなら広いし、騒音も無いし野次馬も居ないから丁度良い」
リマとジュンサーさんに断りを入れて2人が訪れたのは【迷いの森】──リオは知らないが、
以前ビッシュが逃げ込んだ森だ。
レイドが言う様に、木橋を渡り草むらを過ぎた先は拓けていて、白い花と大きな切り株があるだけで、
とても静かだった。
「…って。何の目的でこの森に来たのか知らないけど、奥の方にキャンピングカーがあるし、
その前に男の人が居るけど?」
リオが指差した先にはピンク色のキャンピングカーが停まっており、それを眺める青いリュックを背負った
男性が立っていた。
男性はリオ達をちらりと見た後にキャンピングカーを見遣る。
「世界には色々な価値観を持つ人が居るって事さ。自分は楽しくないって事を楽しいって思う人も居る…
世界中に色んな価値観があるから世界は豊かになるってボクは思うんだ」
一方的に話す男性。
しかし男性の話を聞いたリオは反論する。
「豊かに…?そうでしょうか。違う価値観を持つから意見が衝突して争いが起こる。
皆が同じ価値観を持っていたら争いは起こらないし、そっちの方が世界は平和で、
豊かになると思います」
「うん。それも1つの価値観だね」
「なっ…私は本気で、」
「でも、価値観が違うからこそ新しい見方が出来て見える世界が広がっていくとも思うんだ」
「…っ」
ここで自分が反論しても堂々巡りになると悟って押し黙ったリオの横を男性が通り過ぎる。
「世界中を回って色んな人と話をするのがボクは大好きだけど、この家に居る女の人は
1人で静かに暮らす事を大事に思っているんだろうね。…けど、何年かしたらまた来るかもしれない。
ボクはやっぱり、話をするのが大好きだから」
明るく笑って男性は今度こそ去って行った。
「君が初対面…しかも大人相手にムキになるなんてね」
「ごめん。今の人の方が正しいって分かってたんだけど…抑えが利かなかった」
「…思ってた以上に凹んでるね。面倒だ」
「(ムッ)あのさ…本当に何しにこの森に来たの?特に何も無いなら帰ってしたい事が山ほどあるんだけど。
修行とか」
「そう。なら好都合じゃない」
「何が?」
「ずっとお預けにしてたバトル。今、この場所でしてあげるよ」
┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼
一方その頃──
「あー!負けたー!悔しーい!!」
「Aはいつもちゃんと調べてから移動する。だから近くに宝を埋めたのに、今日に限って調べずにリオを
追い掛けちゃうんだもん」
「もしかして負けたのはAの自業自得?」
「今回は勝てる勝負だったよ」
AとCは同じ速度で階段を下りていた。
「でも、楽しかった!」
「うん、面白かった」
笑い合いながら2人は一緒に重い扉を押し開ける。
「「ただいまー」」
「おう、おかえり…って、どうしたんだ?そんな汚して」
汚れて帰ってきた2人を見たビッシュは目を丸くする。
AとC改め、アリスとセシルはそんなビッシュに(汚れを付けてやれという嫌がらせ目的で)抱き着いた。
「広い砂漠にある、大きくて広い遺跡に行ってたの!」
「そこでトレジャーバトルしてたの」
「だからそんな砂と泥まみれなのか…手洗いうがいしたら風呂入って来い」
双子の頭の上にバスタオルを乗せたビッシュにセシルは素直に頷くが、アリスは頬をぷっくりと膨らませて
「不満です」アピールをする。
(2歳年上ってだけでアリスさん達を子供扱いするなんてヘタレのビッくんの癖に生意気!
自分の服に付いた汚れも、抱き着かれた事にも無反応だし、つまんない!!)
男心も複雑だが、乙女心も負けず劣らず複雑なのだ。
なので、アリスはセシルと真逆の反応をしてビッシュを困らせる事にした。
「えー!やだ、面倒くさい!」
「綺麗にしない奴にはおやつナシだからな」
「ちなみに、おやつは何?」
「俺様特製・ズリとブリーの実タルトとキャラメルチーズケーキ」
「アリスさん、綺麗にしてくる!」
「セシルも。だからビッちゃん…」
「「おやつ絶対にとっておいてね!」」
しかしそんな企みもスイーツという強敵には勝てなかった。アリスとセシルは綺麗に声を揃えて
ビッシュに指を突き付けた。
「あー、はいはい。分かったからさっさと行って来い」
しっしっと手を振るビッシュ。
セシルは走って脱衣所に向かったが、何故かアリスはこちらに背を向けて、その場に留まっていた。
「どうした?」
「待って。こっち来ないで、あっち向いて」
近付こうとしたらアリスに制され、疑問符を浮かべつつビッシュは素直に背を向ける。
「ビッくん…ごめん」
「汚れなら日にち経ってないし、今日中に洗濯機を回せば大丈夫だぞ」
「違う、違うの。今日さ、チルットを戦わせたんだ」
「あいつを?あいつは生まれたばかりで室内でのバトルは兎も角、まだ外でバトルさせた事はないぞ。
それに汚れるのも嫌いで…」
「仕方ないじゃん!アリスさんすっごく嬉しくて、仲間以外にも自慢したくなっちゃったんだから!!」
静かな声から一変、突然癇癪を起こして背中をポカポカと叩いてきたアリスにビッシュは目を瞬かせ、
そして吹き出した。
背中を叩いていた手がピタリ、と止まる。
「…何で笑ってるのかな」
「そりゃー俺様も嬉しいからな。そうか、嬉しかったのか」
くっくっく、と笑い声を漏らしているとアリスの手が背中から離れた。
今度はどんな癇癪を起こすのかとビッシュは体を硬くして身構えたが、アリスは何も言わない。
騒然の権化の様なアリスの普段とは違う様子に、流石にビッシュは心配になる。
(俺様が前を向いているのを良い事に悪戯なんかされたら困るからな。もう振り向いても良いだろ。
良いよな、よし)
自己完結したビッシュが振り向くとアリスは俯いていた。
小刻みに震える体にビッシュは息を呑み、屈んで目線を合わせる。
「おいっ!大丈夫か!?砂漠の暑さにやられたか!?」
慌てたビッシュがアリスの額に手を当てた──刹那。
突然白い毛並みをしたポケモンが現れ、ビッシュを跳ね飛ばした。
「いってぇ…!」
床に背中を打ち付け悶絶するビッシュをアリスが見下ろす。
「ふっふっふ。油断大敵!ビッくんがこのアリスさんを笑うなんて、10年早いよ!」
「おま、体調悪いんじゃ…」
「アリスさんは生まれた時から強い子!病気には無縁なのだ!」
「あー、そうかよちくしょー。じゃあさっさと風呂入れ」
得意気に大きく胸を張るアリスからビッシュは目を逸らした。
アリスの太股の丈まであるキャミソールが上に引っ張られて、際どい所まで見えそうだったからだ。
「その前にビッくんにしつもーん」
「何ですか」
「アリスさんとセシル、双子に見えるかな?」
急に沈んだアリスの声にビッシュは立ち上がり、アリスを見下ろす。
理由は分からないが、案の定落ち込んでいたアリスに頭を掻く。
「…仲良いし顔が似てるからお前等をモノクロシスターズって呼んでるが、双子かどうか深く考えた事は
ねーな。実際どうなんだ?」
「双子じゃないし血だって繋がってないよ。あの子はアリスさんの真似をしてるだけ。
……こんな汚い血、あの子に流れてないよ」
光の無い目で自分の心臓に手を当てたアリスの鼻をビッシュが摘む。
「ふぎっ」と変な声を出して目を瞬かせるアリスにビッシュは笑い、手を離した。
「お前が何を深刻に考えてんのか知らねーけど、血なんて大した問題じゃないだろ。
一緒に居て、楽しくて温かい気持ちになるんなら、血が繋がってなくても家族って言えんじゃねーの?
そもそも俺様含めて、ここの奴等はそんな細けー事気にしない」
ビッシュの言葉にアリスの目に光が戻る。
「そう、だよね…アリスさん達、血が繋がってなくても家族だよね?」
「おー、家族家族。因みに長男は俺様な」
「ビッくんは長男より、長男と三男の間に挟まれる苦労人の次男ポジションでしょ?」
「おいこら事実を言うな」
ジト目で突っ込んだビッシュにアリスは小さく吹き出す。
涙は、完全に引っ込んでいた。
「…あのね。アリスさん、ビッくんのそういう考え無しで単純で馬鹿正直な所、嫌いじゃないよっ!」
「おい、それって貶して…もう居ねーし」
ポケモンと一緒に猛ダッシュで脱衣所に入ったアリスにビッシュは苦笑する。
「家族と色々あったんだな……あいつも」
(あいつ等の分だけ、特別に木の実多めにしてやるか)
キッチンに向かったビッシュは袖を捲り、おやつ作りに取りかかった。
┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼
「はぁー」
『…』
脱衣所に入ったアリスはドアを背にその場に座り込んだ。
心配した様子で顔を覗き込んだ白いポケモン──アブソルの毛並みに顔を埋める。
〔災いポケモン、アブソル。白い毛と赤い瞳…貴女とお揃いね〕
(誕生日。嬉しそうに言って、母様はアブソルをくれた。
何で母様が喜んでいるのか分からなくて、嬉しさより複雑な気持ちの方が強かった。
誕生日の次の日…綺麗な満月の夜に災いは起こった。それがアブソルが引き起こした物なのか、
お揃いだと言われたアリスさんが引き起こした物なのか──今でもよく分からない。
母様の真意だって、もう知る事は出来ない。
だから………)
〔お前白いポケモン好きだろ?俺様からの誕生日プレゼントだ〕
〔チルット?〕
〔孵化させたばっかでまだ弱っちいが、そいつ綺麗好きだから汚れて帰って来ても
すぐ綺麗にしてくれるからな。白くてふわふわしてて、お前の髪みたいだろ?お揃いだな〕
〔…白いと言うより青だけど、まぁビッくんにしては珍しく及第点かな〕
〔やっぱ返せ。俺様が育てる〕
(誕生日の時はああ言ったけど、ビッくんがくれたチルットは心から嬉しいと思えた
初めての誕生日プレゼントだったんだよ)
ーそうか、嬉しかったのか。ー
「……その通りだよ。ビッくんのばーか」
ビッシュのしたり顔を思い出して、アリスは真っ赤な顔で舌を出した。
- Re: 100章 意地悪なのか優しいのか ( No.183 )
- 日時: 2018/06/09 12:12
- 名前: 霧火 (ID: RjvLVXA1)
「思いっきり戦ってスッキリしよう、お互いに」
大きな切り株を背に立ったレイドは、懐から出したモンスターボールを掌で転がしながらリオを見る。
「お互いに」という言葉に疑問を抱きつつ、リオはボールを投げようとしたレイドに「待った」をかけた。
指先を伝って零れ落ちそうになったボールをキャッチしたレイドは短く息を吐き、ジト目でリオを見た。
「何。僕が相手じゃ不満?」
「ち、違うわよ。バトルの前に、まず許可を貰わないと」
そう言ってリオはレイドを──正確にはレイドの後方にあるキャンピングカーを指差した。
振り返り数秒キャンピングカーを見つめ、レイドは首を傾げた。
「許可って…あの中で生活をしてる女の人に?わざわざ?」
「ええ。さっきの男の人曰く、煩いのが嫌いでこの森で暮らしてるみたいだから、無許可でバトルをするのは
非常識でしょ?」
道中、咲いている花を踏まない様に注意していたが、バトルになったらどんなに注意しても
多少は荒らしてしまうだろう。
それを分かっていながら無許可でバトルをして、暮らしている人が居る事も知りながら、
荒らした環境について何も伝えないのは、流石に人として駄目だと思った。
(…なんて、お母さんのカビゴンと戦った後の惨状を見て怒ったお爺ちゃんを見て、思った事だけど)
あの時は全てを母に任せて家に入ってしまったが、母は自分の修行に付き合ってくれたのだから、
自分も謝るべきだったと後で気付き、反省した。
「同性の方が話しやすいと思うから、私が話をしに行くわ」
胸を叩いたリオに数回瞬いだ後、レイドは目を細めた。
「ムキになってた割に気が利いてるじゃない」
「でしょ?」
珍しく褒められ、ついリオは得意気な顔になる。
しかし「許可貰いにいくんじゃないの?」と言わんばかりにじっと見つめてくるレイドにそっと目を逸らすと、リオは早足でキャンピングカーへと向かった。
「失礼しまーす…」
リオが中を覗くと左側には3人ずつ座れそうな水色のソファーが2つと小さなテーブルがあり、
右側はキッチンスペースなのか冷蔵庫とコンロ、流しがあった。
そして、リオが声を掛けても流しを見つめたまま動かない髪を1つに縛った女性が居た。
「あの、このキャンピングカー前の広い場所でバトルをしたいんですけど、大丈夫ですか?
煩くなるので、無理なら他の場所に移動するんですけど…」
そこまで言って、ようやく女性はリオを一瞥した。
そして空だったのかテーブルの上の2本の缶を捨てると、冷蔵庫から同じ物を取り出してリオに差し出した。
ステイオンタブが付いていて、微かに水音が聞こえたので十中八九飲み物だろうが、
今まで見た事が無い赤色の缶──しかも原料はおろか賞味期限さえ記載されていないそれを、
リオは受け取って良いのか悩む。
しかし女性は缶を差し出したまま微動だにしないので、迷った末リオは缶を受け取った。
「あ、ありがとうございます。バトルしても大丈夫…ですか?」
「 … … … … 」
やはり女性は無言だ。
しかし小さく頷いたのを確認したリオは女性に頭を下げ、切り株に寄り掛かっているレイドに声を掛ける。
「許可は貰えたけど長々とバトルするのはあの人に悪いし、この場所を荒らし過ぎない様にしたいから、
1対1のバトルで良い?」
「ふぅん。前と違って状況が変わったから、暫く僕とはバトル出来ないと思うけど…良いの?」
「状況って?」
「家族が、自分の役割を果たさないで何フラフラしてるんだ!…って煩くてね。少しの間は
真面目にやろうと思って」
レイドが嫌そうな顔でポケットを弄ると、ライブキャスターに似た機械がちらりと見えた。
(前にレイドが言った急用って、家関係の事だったのかしら…)
「大変そうね。じゃあ旅は中断して戻る感じ?」
「そうだね。半日とかじゃなければ息抜きで遠出しても良いらしいけど」
ふぅ、と憂鬱そうに息を吐いたレイドにリオは両手を合わせる。
「…じゃあ息抜きで会えた時は、私が疲れも何もかも吹き飛ぶ、オススメの絶景スポットに
連れてってあげる!」
「は?貴重な息抜きの時間を君に割くワケないでしょ。絶景だって旅の許しが出たら時間を掛けて
自分で探し当てるつもりだし。第一、君が思う絶景と僕が思い描く絶景が同じとは限らないでしょ?」
THE・正論である。
我ながら押し付けがましかったとリオが自身の発言を訂正しようとした所で、
「……まぁ、気が向いたら付き合ってあげても良いけど」
レイドがぽつりと呟いた。
ボールの開閉音にさえ掻き消されてしまう様な小さな声だった。
しかし、この静かな森ではそんな声もリオの耳にしっかり届いた。
リオは自分の顔がどんどん緩んでいくのを感じた。
きっと私、だらしない顔しているんだろうな…と思いながら、リオは笑う。
「じゃあ、その気が向いた時に満足して貰える様に、素敵な場所を沢山見付けておくわね」
「絶景探しよりジム巡りを優先しなよ」
レイドは呆れ顔でぶにっとリオの鼻を摘まんだ。
急に息苦しくなって顔を真っ赤にして息を吐きだしたリオに「ぶさいく」と言って、レイドは大きく笑った。
かなり久しぶりの更新なのに短い上に前回に続いてポケモン要素が薄くてすみません!
次回はポケモン要素入りますので…!
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