二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ポケットモンスターBW *道標の灯火*
- 日時: 2020/09/15 16:16
- 名前: 霧火# (ID: HEG2uMET)
初めまして、霧火と申します。
昔からポケモンが好きで、今回小説を書こうと思いました。
舞台はポケットモンスターブラック・ホワイトの世界です…と言っても舞台はゲーム通り
イッシュ地方ですが、時間軸はゲームの【数年前】でオリジナル・捏造の要素が強いです。
そして、別地方のポケモンも登場します。Nとゲーチスは出ないかもしれません(予定)。
!注意事項!
↓
1.本作のメインキャラは【最強】ではありません。負ける事も多く悩んだりもします。
2.書く人間がお馬鹿なので、天才キャラは作れません。なんちゃって天才キャラは居ます。
3.バトル描写や台詞が長いので、とんとん拍子にバトルは進みません。バトルの流れは
ゲーム<アニメ寄りで、地形を利用したり攻撃を「躱せ」で避けたりします。
4.文才がない上にアイデアが浮かぶのも書くペースも遅いため、亀先輩に土下座するくらい
超鈍足更新です。
3〜4ヵ月に1話更新出来たら良い方で、その時の状態により6ヵ月〜1年掛かる事があります。
申し訳ありません。
新しいタイトルが発表されてポケモン世界が広がる中、BWの小説は需要無いかもしれませんが
1人でも多くの人に「面白い」「続きが気になる」と思ってもらえるよう精進致しますので、
読んでいただけたら有り難いです。
**コメントをくれたお客様**
白黒さん パーセンターさん プツ男さん シエルさん
もろっちさん 火矢 八重さん かのさん さーちゃんさん
有り難うございます。小説を書く励みになります++
登場人物(※ネタバレが多いのでご注意下さい)
>>77
出会い・旅立ち編
>>1 >>4 >>6 >>7 >>8 >>12 >>15
サンヨウシティ
>>20 >>21 >>22 >>23
vsプラズマ団
>>26 >>29 >>30 >>31
シッポウシティ
>>34 >>35 >>39 >>40 >>43 >>46 >>47 >>48 >>49 >>50 >>51 >>52 >>55 >>56
ヒウンシティ
>>65 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>71 >>72 >>75 >>76 >>78 >>79
ライモンシティ
>>80 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>94 >>95 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103 >>106 >>116 >>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>130 >>131 >>134 >>137 >>138 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>148
>>149 >>150 >>151
修行編
>>152 >>153 >>155 >>156 >>157 >>160 >>163 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>171 >>173 >>174 >>175 >>176 >>177 >>178 >>180 >>182 >>183
>>185 >>187
番外編(敵side)
>>188
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- Re: 25章 クルマユvsフシデ ( No.50 )
- 日時: 2020/07/28 22:02
- 名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)
拮抗していた2つの音波は徐々に弱まり、やがて消え去った。
「《嫌な音》で《虫のさざめき》を相殺するなんてやるねえ。クルマユ、次は《草笛》!」
クルマユは葉っぱを口に当て心地好い音色を奏でる。
しかし危険を察知したのか、フシデは地中に潜って《草笛》を躱すと、毒素を込めた尻尾を
クルマユ目掛けて振り下ろす。
フシデの《ポイズンテール》だ。
「それなら……《糸を吐く》!」
クルマユは粘着性の糸を吐くが……
「何で糸を自分に?」
クルマユは糸をフシデに吐き出さず、なんと自分自身に巻き付けたのだ。
糸に包まれ、目だけ出ているその姿はホウエン地方に居る某サナギポケモンの様だ。
リオはアーティの意図が分からずに困惑する。
だが、すぐに答えが分かった。
『!』
クルマユに尻尾を振り下ろしたフシデだったが、体に触れた瞬間に尻尾が糸にくっ付き、
身動きが取れなくなってしまった。
攻撃を受けたクルマユはと言うと、何重にも巻いた糸のお蔭かダメージは少なそうだ。
「糸を自分に巻き付けたのは、効果抜群の技の威力を軽減させる為だったんだ!」
「それもあるけど、このフシデは思った以上に頭がキレてスピードも早いから、クルマユが少々
不利だったんだ。だから、こうして捕まえさせて貰ったよ」
そこで言葉を止め、アーティは暴れているフシデに視線を戻す。
「《虫のさざめき》!」
クルマユは葉を擦り合わせ(糸に包まれているので見えないが)、音波を起こす。
身動きが取れないフシデは至近距離で強力な音波を喰らい、目を瞑る。
「そろそろ終わりにしよう。《葉っぱカッター》!」
クルマユは鋭い葉っぱを一斉に飛ばし、フシデを切り付ける。
その衝撃でクルマユを包んでいた糸は切れてフシデも解放されるが、至近距離からの攻撃を
2度も受け、フシデの体力は既に限界だった。
アーティはクルマユを戻すと、そんなフシデに近付く。
「キミが繰り出す攻撃の数々……どれもキレがあって美しくて、惚れ惚れしたよ」
決して馬鹿にしている訳では無い。
アーティの口から出たのは、純粋な称賛の言葉だった。
「ボクはキミが気に入った!どうだい、ボクのポケモンになってくれないかい?」
モンスターボールを地面に置き、目を輝かせてフシデと目線を合わせるアーティ。
その姿はまるで初めてポケモンと出会った子供の様で、一通りバトルが終わったリオとチラーミィは、
そんなアーティを見て笑顔になる。
フシデは暫く黙ってアーティの目を見つめていたが、やがてコクリと頷くと、ゆっくりと這って
モンスターボールに近付き、ボタンを触覚で押す。
その瞬間、赤い光に包まれてフシデはモンスターボールの中に入っていった。
アーティはボールを手に取り、嬉しそうに微笑む。
「……フシデ、ゲットだ」
「おめでとうございます、アーティさん!」
『チララ!』
「はは、ありがとう」
笑顔で祝福するリオとチラーミィに、アーティもまた、笑顔で応える。
そして未だ自分達を囲んでいる野生のポケモン達を見る。
「キミ達のボスはボクの仲間になった。それでもまだボク達と戦うかい?」
アーティの言葉に、森のポケモン達は犇めき合う。
やがて1匹のクルミルが背を向けて歩き出すと、つられる様に他のポケモン達も動き出す。
そして、取り囲んでいたポケモン達は森の奥へと姿を消した。
「はぁ……一時はどうなるかと思った」
『ラ〜ミィ……』
「ボクは久々にスリル溢れる体験が出来て、新しい仲間も増えて実に良い日だったよ」
力が抜けて座り込むリオとチラーミィに、アーティは花を飛ばしながら笑う──が、すぐに笑うのを止めて、
チラーミィをボールに戻したリオへと振り返る。
「そうだ。リオちゃん」
「何ですか?」
アーティはリオに顔を近付ける。
思わず顔を逸らしたくなる程近い距離にも関わらず、リオは狼狽える事なくアーティを見つめる。
「ボク達、どこかで会った事あるかな?」
「いえ……私、アーティさんと会うのは今日が初めてです」
そこまで言って、リオは先程から気になっていた事を訊く事にした。
「そういえば、アーティさんは何で私の名前を知ってたんですか?私、教えてないですよね?」
「ああ、それはここに来る前に姐さんから電話でキミの名前と特徴を聞いてたからさ。
もし【ヤグルマの森】で迷子にでもなっていたら助けてやってくれ……ってね」
(ねえさん?私、アーティさんのお姉さんに会ったっけ?)
リオは腕を組んで考え込む。
しかし、結局そんな人物に会ったかどうか思い出せずに終わった。
「ポケモン達も回復させないといけないから、1度シッポウシティのポケモンセンターに行こうか」
「はい!あ、れ……?」
アーティの後を追おうとしたリオだったが、急に体が熱く重くなり尻餅をつく。
それに気付いたアーティは歩を止め、リオに駆け寄る。
「リオちゃん!?」
「い、移動したいのは山々なんですけど……何故か、体が重くて。それに凄く、熱い……」
「……ちょっと良いかな」
アーティは顔を赤くしているリオの前にしゃがみ込むと、リオの右の靴を脱がす。
続けて靴下を脱がすと、右足の甲に2箇所に並んだ赤い点状の噛み痕があり、その点を中心にして
赤く大きく膨れ上がっていた。
「あっ……」
「これはフシデの毒だね。フシデは敵に噛み付いて、体が痺れて動けなくなる程の猛毒を
与えるんだ。人によっては発熱も起こって……良かった、左足に異常は無いみたいだ」
「……そういえば、フシデが靴に乗った時に一瞬チクッとしました」
靴の上から噛まれ、靴や靴下を通り抜けて毒が体内に回った──と言う事だろうか。
(噛まれてから10分は経つ……)
正常な左足に比べて大きく腫れた右足を見て、不安な顔をするリオ。
そんなリオを安心させる様に、アーティは熱で火照ったリオの頬にそっと手を添える。
「大丈夫。フシデの毒は確かに強力だけど、あくまで神経を痺れさせる毒だから
命を脅かすような物じゃないよ。発熱が起こっても早く治る場合もあるしね……だけど!」
そこまで言って、アーティはリオをおんぶする。
突然の事にリオの思考は止まる。
「早めに治療した方が良い事に変わりは無いからね。ポケモンの毒に関してはジョーイさんの方が
ずっと詳しいから、早くポケモンセンターに行くとしよう」
「ア、アーティさ、」
「しっかり掴まっててね!」
爽やかだが、どこか有無を言わさぬ笑みに、リオは言葉を摘むんだ。
(アキラ……アロエさんに、勝てたかな……?)
揺りかごの様に揺れる背中の上で、リオの意識は途切れた。
前回はリオがチラーミィを、そして今回はアーティがフシデをゲットしました。
アーティがリオより目立っているのは、今回フシデとのバトルの描写を
書きたかったからです。
長かった特訓・葛藤編は今回で終わり、次回からアロエに再挑戦します。
果たしてリオはアロエに無事、勝てる事は出来るのか!?そして、ヒトモシは……!
それでは、次回もお楽しみに!
- Re: 26章 リベンジ・マッチ!vsアロエ! ( No.51 )
- 日時: 2020/08/12 22:47
- 名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)
ポケモンセンターで治療を受けて無事にフシデの毒が抜けたリオは、ポケモン達を回復させて
アキラの勝敗を知る為に博物館へと向かっていた。
因みに「病み上がりだから心配」と言って、アーティはリオの左側に寄り添う形で歩いている。
何故そこまで密着しているのかと言うと、毒をジョーイさんに抜いて貰ったとは言えど
リオが未だ腫れている右足を庇い左足に重心を置いて歩いているので、何かの拍子に左足を挫いて
バランスを崩し、そのまま転倒して怪我を負う事を危惧したアーティが、バランスが崩れても
すぐに支えて助けられる様にとリオの腰に手を回してバランスを取っているからだ。
下心は一切無く、親切心から来る行動だと理解している。
しかし、事情を知るのはごく僅かの人間だけだ。
故に——
「アーティさん……やっぱり恥ずかしいです。さっきからすれ違う人にジロジロ見られて
時々ヒソヒソ声も聞こえるし」
「でもねーこれしか良い方法が思い浮かばなかったんだ。リオちゃんの状態を知っているのは
ボクとジョーイさんだけで、ジョーイさんは仕事で忙しいからキミを助けられるのは
ボクだけだ。それを知っていながら帰る程、ボクは薄情じゃないよ」
優しい眼差しを向けるアーティの言葉に嘘偽りは無い。
だからこそ、これ以上優しい彼が何も知らない第三者に変な目で見られるのは耐えられない。
アーティのお蔭でバランス感覚も取り戻しつつあるし、遅くなってしまったが1人で歩こうと
リオは身を捩りアーティから離れようとするが、長い腕に阻止されて更に密着する羽目になった。
「このままだとアーティさんに変な噂が」
「平気だよ。あ、そこ石があるから気を付けて」
「……おんぶされた時も思いましたけど、アーティさんって過保護ですよね」
「リオちゃんこそ。往生際が悪いと言うか、結構頑固だよねえ」
「そんな事は無いです。ここまでありがとうございました、アーティさん。アーティさんのお蔭で
何だか足も完全に治ったみたいです。ここからは私1人で……」
「だーめ。嘘だってバレバレだし離さないよ」
「意外にキレ者!」
その後も何度かあの手この手でアーティから離れようとするリオだったが、アーティの方が色々な
意味で何枚も上手で、最後にはリオの方が「参りました」と白旗を上げた。
長きに亘る戦い(大袈裟に言っているが数分の戦いである)に終止符を打ち、リオが羞恥心と
罪悪感と疲労感が入り混じった表情で前方を、アーティが慈愛に満ちた表情でリオを見ながら
ゆっくり歩いていると、博物館前で身長差のある男女が話をしているのが見えた。
男子の足元に居るイーブイが逸早くリオに気付いて、嬉しそうに尻尾をゆらゆらと揺らした。
イーブイの愛らしい反応にリオの頬が緩む。
「見付けた」
「ん?……キミの会いたかった幼馴染って男の子だったんだ」
「はい。アキラは私の幼馴染で親友で、1番のライバルなんです」
緩んだ頬をそのままに、博物館前で女性——アロエと話しているアキラを見つめたまま
答えるリオにアーティは目を細める。
リオの視線に気付いたのか、アキラが走って、アロエが歩いてこちらに向かって来る。
アーティはリオの腰に回していた手をそっと離した。
「よぉリオ。……もう大丈夫みてぇだな」
「うん。ごめんね、アキラの試合、見に行けなくて」
「気にすんな。苦戦したが、何とか勝てたからな」
リオの頭を撫で、アキラは微笑む。
「そっか。おめでとう、アキラ」
「サンキュ。次はお前の番だ、リオ。どんな事が起ころうと、最後まで俺が見届けてやる。
だから、絶対に勝てよ」
「ええ!」
リオは頷くと、アロエへと向き直り頭を下げる。
「アロエさん!もう1度ジムに挑戦させて下さい!」
「勿論良いよ。あたしも、アンタとのバトルを楽しみに待っていたからね!」
豪快に笑って背中を叩くアロエに、リオも笑顔になる。
そんな微笑ましい女性陣を余所に——
「…………ところでアンタ、誰?リオと一緒に来たけど」
「ボクはアーティ。リオちゃんとは……まあ、色々縁があってね。ボクが勝手について来たんだ」
「へーぇ?てっきり変なカッコした、タチ悪ぃ変態かと思った。10歳の女の子の腰に手を回すとか
何考えてんすかね?」
「リオちゃんを思ってした事だよ。彼女も顔や口では恥ずかしがっていたけど、最終的にボクに
体を預けてくれたから何も問題無いさ」
「……リオはジム戦後に怪我か何かで足を悪くして、アーティさんは偶然その場に居合わせた。
治療を終えたばかりなのに、いきなり1人で歩こうと無茶をするリオを心配して付き添いで
ここまで来た。こんな所っすか?」
「驚いた。凄いね、合ってる」
「俺の代わりにリオの面倒を見てくれた事に関しては本当に感謝してます。でも、親切心から
やった事だとしても密着し過ぎっす。ああ見えてリオは必要以上に目立つのを好まないし、
親身になってくれた相手が悪く言われるのを当人以上に嫌う質なんで、道中は相当キツかったと
思いますよ」
「そうか、だからあんなに……うん、分かった。次からは気を付けるよ。同じ失敗をして
リオちゃんに嫌われるのは避けたいし」
「大丈夫っす、次なんて一生来ないんで」
「手厳しいねえ。一生来ないなんて事、それこそ一生来ないんじゃないかな?」
アキラとアーティの間で火花が(一方的に)散っている様子をアロエは楽しそうに見ていたが、
リベンジに燃えるリオは全く気付かなかった。
地下の階段を下りると、広いフィールドがリオ達を出迎えた。
「アーティとアキラは観客席で見学してな」
「分かった、アロエ姐さん」
「はい」
(「ねえさん」は、アロエさんの事だったのね)
謎が解けたリオはフィールドの端へと歩いて行くアロエを見ると、ヒトモシをボールから出して
抱き上げる。
「アキラ、ヒトモシの事お願い」
「別に構わねぇけど本当に良いのか?アロエさんは強敵だぞ?」
「分かってる」
見つめ合う2人の間に沈黙が流れる。
暫くしてアキラが徐に口を開こうとした──その時、今まで話を黙って聞いていたヒトモシが
リオの袖を引っ張った。
『モシ……!』
「大丈夫よ。貴女には……恐いと思うけど、私達のバトルを最後まで見てて欲しいな」
リオは屈んで、安心させる様にヒトモシのもう片方の小さな手を優しく握った。
最後に頭を撫でて、リオはフィールドに向かって歩き出す。
『モッ……』
自然とヒトモシの手が、リオの袖から離れる。
ヒトモシは遠くなっていくリオを、金縛りにあった様に、ただ呆然と見つめていた。
「それでは審判はわたくし、キダチがしましょう」
キダチは表情を引き締め、フィールドに立つ両者を見遣る。
「これよりシッポウジム、ジム戦を始めます。使用ポケモンは2体。先に2体が戦闘不能になった方が
負けとなります。ではママ……じゃない。ジムリーダーとリオちゃ……じゃない。挑戦者は、
ポケモンを出して下さい!」
「出て来な、ハーデリア!」
アロエが最初に繰り出したのは、忠犬ポケモンのハーデリアだ。
「最初に戦った時と同じね。でも、私はこの子で行くわ!チラーミィ!」
ハーデリアに対してリオが繰り出したのはシビシラス──ではなく、新メンバーのチラーミィだ。
「おや?そのチラーミィ、新顔だね」
「はい。【ヤグルマの森】で生まれたんです」
「そうかい。でも、生まれたばかりのポケモンで挑んで勝てる程、あたしのポケモンは甘くないよ!」
「確かにこの子は生まれて間もない上にジム戦は初めてです。でも、私はこの子に救われました。
それに森で沢山戦って、いっぱい経験を積んで強くなりました。アロエさんこそ、この子を
甘く見てると痛い目に遭いますよ!」
そう告げて不敵に笑ったリオに、アロエはポカン、とするが、すぐに楽しそうに笑う。
「はははっ!このあたしの言葉を、そのままソックリ返す挑戦者が現れるなんてね!」
アロエはそこで笑うのを止め、目を細める。
「リオ、アンタのポケモンへの愛情……もっともっと見せて貰うよ!」
「……勿論です!」
「試合開始っ!!」
「行くよハーデリア!《噛み付く》!」
開始早々に、ハーデリアは牙を剥き出してチラーミィに襲い掛かる。
「チラーミィ、右に避けて!」
しかし《噛み付く》は今までのジム戦で分かる様に、少し軌道をずらせば割と簡単に避けられる技だ。
現にチラーミィが右にジャンプすると、ハーデリアの攻撃は未遂に終わった。
「《往復ビンタ》!」
チラーミィはハーデリアの目の前まで移動すると、両頬を連続して叩く。
次々と繰り出される強烈なビンタと音に、観客席に座るアキラは息を呑んだ。
ヒトモシは瞳を揺らしてフィールドを見つめ、隣に静かに座るイーブイはヒトモシを横目で見た。
「反撃だ、ハーデリア!《突進》!」
ハーデリアは激しいビンタを振り解くと、頭からチラーミィに突っ込む。
お腹に攻撃を喰らったチラーミィだったが、スピードが出ていなかった為に技の入りが浅く、
それほどダメージを受けずに済んだ。
「《くすぐる》!」
チラーミィはハーデリアの後ろに回り込むと、手と尻尾を動かしてハーデリアをくすぐる。
「チラーミィを引き剥がすんだ!」
ハーデリアは腰が砕けそうになりながらも、尻尾を銜えチラーミィを引き剥がす。
尻尾を咥えられて逆様でぶら下がっていたチラーミィだったが、反動をつけて回転して
ハーデリアの鼻先を踏み付けた。
その痛みでハーデリアは尻尾を口から吐き出してチラーミィを解放する。
「このままじゃ埒が明かないね……ここは大技で逆転するよ!《ギガインパクト》!!」
ハーデリアは持てる全ての力を使い、向かって来る。
その速度、威力は見ただけで《突進》とはケタ違いだとリオは思った。
チラーミィも肌でそれを感じるのか、冷や汗を垂らして不安気にリオを振り返る。
しかし
「大丈夫よ、チラーミィ」
リオに焦っている様子はなかった。
それどころか笑って自分を見つめるリオに、チラーミィも覚悟を決めて猛スピードで迫り来る
ハーデリアに向き直る。
「《アクアテール》!」
チラーミィは尻尾に纏った水を鞭の様に振るうと、ハーデリアに叩き込む。
そのうちの1発…横腹への攻撃に、進撃していたハーデリアの動きが鈍った。
「くっ……!」
「チャンスよ!もう1度《アクアテール》!」
チラーミィは高くジャンプすると、押さえ付ける様に上から水を纏った尻尾を振り下ろした。
砂煙と水飛沫が舞い起こり、視界を悪くする。
そして煙が晴れた先に居たのは、地面にめり込んで目を回しているハーデリアだった。
「ハーデリア、戦闘不能。チラーミィの勝ち!」
「良く頑張ったね、ハーデリア。後は任せて、ゆっくり休みな」
アロエはハーデリアの頭を撫でボールに戻す。
「良く分かったね、ハーデリアの技の〝弱点〟に」
「《噛み付く》に《突進》……そして《ギガインパクト》。確かにどの技も強力ですけど、
相手に軌道をずらされたり、横から攻撃されると対応出来ない。それが弱点、ですね?」
「正解。大抵のトレーナーは技の見た目とか、迫力に怖じ気づいて弱点には気付かないんだけどね……
とことん、アンタはあたしの予想の斜め上を行くね、リオ」
アロエは悔しそうに、しかし口許に笑みを浮かべて小さな挑戦者を見るのだった。
- Re: 27章 踏み出す勇気 ( No.52 )
- 日時: 2020/08/07 22:39
- 名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)
「へぇ……」
観客席に座ってバトルを観戦していたアーティは口角を上げる。
(あんなに楽しそうなアロエ姐さん、久しぶりに見たな。それに、アロエ姐さんにあそこまで
言わせるなんて、本当にリオちゃんは面白いなぁ。虫ポケモンの次に好きかも)
アーティは興味深そうにリオを見つめる。
「やっぱり、リオは凄ぇな」
「?」
しかし席を1つ空けた左隣から聞こえて来た言葉に、アーティはリオから視線を外して声のした方向を見る。
そこにはヒトモシを膝に乗せてフィールドを見下ろしているアキラ。
こちらを見ているアーティに気付いてない辺り、今のは無意識に出た言葉の様だ。
(ポケモンに関する知識は俺の方が上だ、それは断言出来る。でも着眼点や戦術はリオの方が上)
勝てた事が嬉しいのかリオの全身を尻尾で撫でているチラーミィと、興奮気味のチラーミィを
抱き上げて笑顔で撫でているリオに、アキラはフッと笑う。
「俺も良い加減ケジメつけねぇとな……」
ぽつり、と呟かれた言葉の真意が分からず、アーティはただ首を傾げるしかなかった。
「まさか本当に痛い目を見る羽目になるとはね。だけど、次はこうは行かないよ!
出て来な、ミルホッグ!」
アロエが最後に繰り出したのは、彼女のエースポケモン、ミルホッグだ。
「ミルホッグ……遂に出て来たわね」
腕を組んでチラーミィを見下ろす姿は威圧感に包まれていて、チラーミィは勿論、リオも汗を垂らす。
「お、おい。どうしたんだ?」
一方、観客席では急に震えだしたヒトモシの体を、アキラが慌てて揺すっていた。
その視線の先にはアロエが出したミルホッグの姿。
(もしかして、リオがアロエさんに負けたのは……)
アキラは目を瞑っているヒトモシを見た後、フィールドに居るリオを見つめた。
(凄い威圧感。それに、自信に満ち溢れている。でも、押し潰されちゃ駄目!)
リオは汗を腕で拭い、ミルホッグを正面から睨み返す。
「ミルホッグ!《噛み砕く》!」
先に動いたのはミルホッグ。
前歯を剥き出して、チラーミィに突進する。
「チラーミィ、躱して《くすぐる》よ!」
チラーミィは突進して来たミルホッグを上にジャンプして避ける。
攻撃を躱され、顎を地面に打ち付けたミルホッグの頭をクッション代わりにして踏み付けると、
チラーミィは背中に乗って尻尾を動かしミルホッグを2回くすぐる。
「ミルホッグ、振りほどきな!《火炎放射》!」
「やばっ!チラーミィ、離れて!」
ミルホッグは首を動かし、背中に乗っているチラーミィ目掛け炎を噴射する。
それを後ろに跳ぶ事で回避したチラーミィだが──
「尻尾で叩き落とすんだ!」
ミルホッグの長い尻尾が鞭の様に撓り、チラーミィは地面に叩き付けられた。
『ミィ〜……』
「今だよ!《噛み砕く》!」
額を抑えて痛みに悶えるチラーミィの尻尾に、ミルホッグの前歯がミシリ、と食い込む。
「頑張ってチラーミィ!《往復ビンタ》!」
痛みに顔を歪めながらも、チラーミィはミルホッグの頬に手を伸ばす。
しかし、又しても長い尻尾に攻撃を阻まれ上に弾き飛ばされる。
「これなら!《アクアテール》!」
チラーミィは落下のスピードを利用して、尻尾に大量の水を纏いミルホッグへ振り下ろす──
「《敵討ち》だ!」
「チラーミィ!躱して!」
しかしチラーミィが尻尾を振り下ろすより先に、ミルホッグが動いた。
ミルホッグは怒りの形相を浮かべ咆哮し《アクアテール》を後ろへ跳んで避けると、瞬時に間合いを詰めて
チラーミィに拳を振り上げる。
自分の攻撃を躱された事と、ミルホッグの切り替えの早さに反応が遅れたチラーミィは
顎に強烈な1撃を喰らう。
更にミルホッグは宙へ浮いたチラーミィの体を長い尻尾で弾き飛ばす。
「チラーミィ!!」
「ミルホッグ、追撃だ!」
ミルホッグの猛攻はこれだけに止まらず、弾き飛ばしたチラーミィの尻尾を掴み、
そのまま天井へ放り投げる。
「天井に《アクアテール》!」
『!ミィー!』
咄嗟に《アクアテール》の水を天井に放ちダメージを緩和する。
しかしフィールドに降り立ったチラーミィは酷く疲れていた。
最初の猛攻で、既に体力は限界だ。
「《敵討ち》って技は、事前に味方のポケモンがやられている場合、威力が倍増する技だ。
最初に《くすぐる》でミルホッグの攻撃力を下げてなかったら、間違いなくチラーミィは
戦闘不能になってたね」
そこまで言って、アロエの目は鋭く細められた。
「だけど、ここまでさ!もう1度《敵討ち》!」
「拳を《往復ビンタ》で叩き落として!」
「無駄だよ!」
時に振り上げ、時に振り下ろされるミルホッグの拳をフサフサの尻尾で次々に叩いて防ぎ、
地道にダメージを与えるチラーミィだったが奮闘はそこまでだった。
拳を防いでも頭突きと膝蹴りがチラーミィに襲い掛かり、最後に長い尻尾が鳩尾にヒットして
衝撃でチラーミィの体が宙に浮く。
「チラーミィ!!」
大声でリオがチラーミィを呼ぶ。
しかし、体を強く打ち付けたチラーミィは目を回して伸びていた。
「チラーミィ、戦闘不能。ミルホッグの勝ち!」
『!!』
キダチの声にヒトモシは目を開け、フィールドを見下ろす。
「……本当にありがとう、チラーミィ。ゆっくり休んでて」
連戦で乱れたチラーミィの頭の毛を撫でて整え、お礼を言ってチラーミィをボールに戻すリオと、
それを黙って見つめるアロエとミルホッグの姿が目に映る。
『モ、シ……』
ヒトモシは目を閉じ、去り際にケルディオが耳元で呟いた言葉を思い出す。
—
———
——————
—————————
“君の事情は分かった……けど、ずっと逃げていたら何時まで経っても強くなれないよ。”
ケルディオの言葉に、肩を震わせる。
“リオはどんどん強くなる。それなのに、君は何時までも立ち止まったままで良いの?”
良い訳が無い!でも、踏み出す勇気がない……!
“立ち止まったままじゃ、何時か──リオは遠くに行ってしまうよ?君を、置いて。”
!!
金縛りにあった様に動けなくなる。
何かを言うよりも先に、ケルディオは歩を進める。
“彼女と共に歩みたいのなら、一歩を踏み出すんだ。そうすれば、きっと、”
君は今よりもっと、強くなれるから。
そう告げて、彼は姿を消した。
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ヒトモシは再びフィールドを見る。
ケルディオの言葉と、先程アキラが呟いた言葉が自分の背中を押す。
気付いたら、体が動いていた。
- Re: ポケットモンスターBW 道標の灯火*参照700突破感謝* ( No.53 )
- 日時: 2011/12/17 18:58
- 名前: プッツンプリン (ID: FSosQk4t)
こんばんは。
プッツンプリンというものです。
はじめましてではないですよね。多分...
すごいですね、面白くて。僕も文才がほしいですよ^^
頑張ってください。
- Re: ポケットモンスターBW 道標の灯火*参照700突破感謝* ( No.54 )
- 日時: 2011/12/17 21:00
- 名前: 霧火 (ID: nyNuUunS)
プッツンプリンさん
こんばんは!
このような小説に来ていただき、有り難うございます(^v^)
初めましてではないですよ〜…多分!←(おま
お、面白い…!最高の褒め言葉です!本当に有り難うございます(^//^)
更新は少し日にちが空いて…なんて事が多いですが、頑張っていきたいと思います!
温かいコメント、感謝します。
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