二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ポケットモンスターBW *道標の灯火*
- 日時: 2020/09/15 16:16
- 名前: 霧火# (ID: HEG2uMET)
初めまして、霧火と申します。
昔からポケモンが好きで、今回小説を書こうと思いました。
舞台はポケットモンスターブラック・ホワイトの世界です…と言っても舞台はゲーム通り
イッシュ地方ですが、時間軸はゲームの【数年前】でオリジナル・捏造の要素が強いです。
そして、別地方のポケモンも登場します。Nとゲーチスは出ないかもしれません(予定)。
!注意事項!
↓
1.本作のメインキャラは【最強】ではありません。負ける事も多く悩んだりもします。
2.書く人間がお馬鹿なので、天才キャラは作れません。なんちゃって天才キャラは居ます。
3.バトル描写や台詞が長いので、とんとん拍子にバトルは進みません。バトルの流れは
ゲーム<アニメ寄りで、地形を利用したり攻撃を「躱せ」で避けたりします。
4.文才がない上にアイデアが浮かぶのも書くペースも遅いため、亀先輩に土下座するくらい
超鈍足更新です。
3〜4ヵ月に1話更新出来たら良い方で、その時の状態により6ヵ月〜1年掛かる事があります。
申し訳ありません。
新しいタイトルが発表されてポケモン世界が広がる中、BWの小説は需要無いかもしれませんが
1人でも多くの人に「面白い」「続きが気になる」と思ってもらえるよう精進致しますので、
読んでいただけたら有り難いです。
**コメントをくれたお客様**
白黒さん パーセンターさん プツ男さん シエルさん
もろっちさん 火矢 八重さん かのさん さーちゃんさん
有り難うございます。小説を書く励みになります++
登場人物(※ネタバレが多いのでご注意下さい)
>>77
出会い・旅立ち編
>>1 >>4 >>6 >>7 >>8 >>12 >>15
サンヨウシティ
>>20 >>21 >>22 >>23
vsプラズマ団
>>26 >>29 >>30 >>31
シッポウシティ
>>34 >>35 >>39 >>40 >>43 >>46 >>47 >>48 >>49 >>50 >>51 >>52 >>55 >>56
ヒウンシティ
>>65 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>71 >>72 >>75 >>76 >>78 >>79
ライモンシティ
>>80 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>94 >>95 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103 >>106 >>116 >>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>130 >>131 >>134 >>137 >>138 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>148
>>149 >>150 >>151
修行編
>>152 >>153 >>155 >>156 >>157 >>160 >>163 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>171 >>173 >>174 >>175 >>176 >>177 >>178 >>180 >>182 >>183
>>185 >>187
番外編(敵side)
>>188
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- Re: 31章 意外な再会 ( No.66 )
- 日時: 2020/08/24 18:12
- 名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)
ポケモンセンターを飛び出したリオは、再び【スカイアローブリッジ】でヒトモシ達と共に
バルチャイの落とした骸骨を探していた。
しかし結局見付からず、今はヒウンシティの細くて暗い路地に居る。
衆人の冷眼を痛い程浴びているが、リオは特に気にせずヒトモシの灯りとシビシラスの電気を
頼りにゴミ箱の下を覗き込んでいた。
「駄目……ここにも無い」
汗を拭い、溜め息を吐くリオ。
街中を徹底的に隅から隅まで調べ回った為、最後のゴミ箱を調べ終わった頃にはリオの全身は
埃と砂で汚れ、金色の髪はくすんでボサボサ、服には嫌な臭いが染み付いていた。
1箇所調べ終わる度にチラーミィが尻尾で汚れを落としてくれたが、このゴミ箱に封印されていた
汚れと悪臭はチラーミィの全力を以てしても消す事は叶わなかった。
「汚い場所まで付き合ってくれて、何度も綺麗にしてくれてありがとう。それなのに直ぐ汚れて
ごめんね、チラーミィ。1度戻って」
トレーナーの臭体——否、醜態をこれ以上間近で見るのは綺麗好きのチラーミィにとって
辛いだろうと判断し、リオは感謝と謝罪の言葉をチラーミィに贈り、ボールに戻した。
(やっぱりアイツが言うように、誰かが持ってちゃったのかな……)
最悪の考えが頭を過った、その時。
「あ」
視界の端に見覚えのある人物が映り、リオは体を起こしてその人物を追った。
「ふはは!こんな珍しい物を見付けるなんて我はラッキーな男だ!」
腕に抱えた物を見ながら高笑いをする1人の男。
(この街の連中も、我の溢れ出るカリスマ性に道を開けていくしな!)
本当は男の高笑いに気味悪がった通行人が道を開けているだけなのだが、男はそんな彼等の視線にも
一切気付かない。
とうとう鼻歌を歌い始める程まで気分が最高潮に達した男の前に、薄汚れた少女が立ち開かった。
その少女は言わずもがな、リオである。
「ちょっと貴方!」
「うげっ!おっ、お前は、あの時の!」
リオを見た瞬間、男はあからさまに嫌そうな顔をした。
男の正体──それは、以前戦ったプラズマ団のサパスであった。
「こんな所で何してるの?まさか……また何か悪い事でも企んでるの!?」
「ふん!我々は今は謹慎中なのだ、何かしたくとも出来ぬわ!残念だったな!!」
何故か胸を張って得意気に言うサパス。
サパスが言う様に彼はプラズマ団の格好をしておらず、Tシャツにジーンズと私服だった。
その為、リオもこうしてサパスの前に立つまでは彼が本人かどうか自信は無かった。
通行人は迷惑そうにリオ達を避けて歩いて行く。
「謹慎?何で」
「前回お前達との戦いで任務に失敗したからだ。まったく、1匹のポケモンを連れ帰れなかったくらいで
謹慎とは、あの方は堅物だな。いくら解放するためとは言え……」
(あの方って誰?それに、)
「解放って……一体何を解放するのよ」
「しまった!と、とにかく!暫く我々は休みをエンジョイするのだ。お前みたいなお子様なんかに
構っているヒマは一切合切無い。さっさとあっちへ行け、しっしっ!」
リオの問いを無視して、虫ポケモンを追い払う様に手を動かすサパス。
しかしその手は、あっさり掴まれた。
「こっちには用があるのよね」
「は、」
何の事だと怪訝な顔をするサパスに、リオは彼が抱えている物を指差す。
「その大事そうに抱えている物は何処で拾ったの?」
「ふふん。これは【スカイアローブリッジ】と言う橋に落ちていた物だ。微妙に鳥臭いし、
きっと珍しい鳥ポケモンの化石だ!どうだ、驚いたか!」
「化石が橋のど真ん中に転がってるワケないでしょ!それは私がずっと探してた、バルチャイが
穿く骸骨よ!」
「何いぃ!?」
リオの言葉にサパスは数歩後退り、地面に手をつく。
「そ、そんな……では、我はずっと騙されていたのか……!」
「騙されてたんじゃなくて、自分が勝手に勘違いしてただけでしょ」
項垂れるサパスを見下ろしながら、冷静に言葉を訂正するリオ。
しかし何か思い付いたのか、サパスは直ぐに顔を上げて立ち上がった。
「ふははは!化石ではなかったが、この骸骨は一部のマニア共の間で高値で取引されてた……筈だ!
これを売って、休みを満喫するのだ!」
拳を固め、再び高笑いをするサパス──だったが。
「人の話聞いてた?」
リオの妙に明るい声にサパスは固まる。
「今は謹慎中で、悪い事もしないで暫く休みをエンジョイするのよね?それなら、平和的に、素直に
返してくれるわよね?」
『モシ、モッシ?』
首を傾げるリオとヒトモシ。
とても可愛らしい笑顔……の筈なのに、サパスは恐怖を感じて冷や汗を垂らした。
「ぐぬぅっ……し、しかし!ただ素直に返すのは我のプライドが許さん!」
そこまで言って、サパスはモンスターボールを取り出す。
「我とのバトルに勝ったら、この骸骨を返してやろう!しかしお前が負けたら、こいつを売って
休みをエンジョイしてやるんだからな!」
指を突き付けるサパスに、リオ達は溜め息を吐く。
「はぁ……素直に返してくれれば良いのに、結局こうなるのね」
『……モシ』
しかし直ぐにお互いに口許に笑みを浮かべる。
「良いわ。ハジさんの所のチラーミィを盗んだ件……アキラには諭す様に言ったけど、私だって
本当はアキラに負けないくらい怒ってるんだから。今度は逃がさないし、罪を償って貰うわ」
リオは頬に付いた汚れを親指で払い、モンスターボールを手に取った。
- Re: 32章 サパスvsリオ ( No.67 )
- 日時: 2020/08/24 20:03
- 名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)
「勝負はシンプルに1対1でどうだ?」
「ええ!異論は無いわ」
リオ達が居るのは、ヒウンシティのセントラルエリア。
別名【噴水広場】と呼ばれるこの場所は、中央にある大きな噴水の他に2台の自動販売機と
ベンチがあり、憩いの場として人気がある。
そして、時々ストリートバトルが行われるので広い造りになっている。
正にバトルするのに相応しい場所だ。
「それでは始めるぞ!行くのだ、ドテッコツ!」
サパスが繰り出したのは目付きが鋭い、鉄骨を持ったポケモン。
ドッコラーの進化系──筋骨ポケモンのドテッコツだ。
「ドテッコツ……あの時のドッコラーが進化したのね」
リオ呟きが聞こえたのか、ドテッコツはニヤリと口角を上げた。
(あのドテッコツは、ドッコラーだった時《岩落とし》と《穴を掘る》を覚えていた)
「それなら無難にこの子ね!シビシラス!」
リオはドテッコツに対し、シビシラスを繰り出す。
「先手必勝だ!《目覚ましビンタ》!」
先に動いたのはドテッコツ。
持っていた鉄骨を地面に置き、シビシラスに向かって手を振り上げる。
「シビシラス、上にジャンプ!」
リオは迎え撃とうと身構えていたシビシラスに指示を出す。
シビシラスは頷くと、指示通りに上にジャンプする。
すると攻撃を躱されたドテッコツは躓き、派手に顎を地面に打ち付けた。
「よ、避けられただと……!?」
「《体当たり》!」
狼狽えるサパスに追い打ちをかける様に、シビシラスはドテッコツの背中に一撃を加える。
「《目覚ましビンタ》は相手の頬に強烈なビンタを喰らわせる技。だから、体が小さいシビシラスには
自然とドテッコツの体はしゃがみ気味になったり、前屈みになる。しかも横に振り被る技だから、
上にジャンプすれば大抵避けるのは簡単よ。それこそ、縄跳びする感覚で行けばね♪」
悪戯っぽくウインクするリオにサパスは拳を固める。
「しっかりするのだ、ドテッコツ!《岩落とし》!」
ドテッコツは鉄骨で地面を抉ると、コンクリートの塊を投げ付けた。
「これじゃあ《岩落とし》じゃなくて、コンクリート落としね……《チャージビーム》で壊すのよ!」
シビシラスは落ちて来るコンクリートの塊に、蓄電していた電気を帯状にして発射する。
コンクリートは砕け、破片が空から降り注ぐが、大したダメージではない。
「《怪力》だ!!」
ドテッコツは鉄骨を持ち上げ、渾身の力でシビシラスを殴りつけた。
破片のせいで視界が悪くなっていたシビシラスは反応出来ず、ベンチまで吹き飛ばされる。
そのパワーに、大きなベンチが音を立てて倒れた。
「シビシラス!」
「ふははは!油断大敵、我のドテッコツは攻撃力を重点的に上げてあるからな!」
「……やるわね。でも、私のシビシラスの耐久力はその上を行くわ!《スパーク》!」
リオの言葉に応えてシビシラスは電気を纏ってドテッコツに突進する。
「《穴を掘る》!」
ドテッコツは鉄骨を置き、コンクリートを物ともせず地面に潜った。
「ふはは!どこから攻撃が来るか分かるかな?いくら貴様のシビシラスが頑丈でも、
効果抜群の技には耐えられまい!」
「……」
興奮気味に語るサパスとは対照的に、リオは静かに目を閉じる。
そしてシビシラスの真下のコンクリートが盛り上がり、
「我の勝ちだ!!」
地面から現れたドテッコツが拳を振る──
しかし。
『!?』
ドテッコツの攻撃はあっさりとシビシラスに躱された。
リオは指示を出していない。
「な、何故攻撃が効かない!?シビシラスは電気タイプ、地面タイプの技には弱いはずっ……!」
狼狽えるサパスにリオは目を開け、口を開く。
「確かに電気タイプは地面タイプの技に弱いわ。でも、シビシラスの特性は【浮遊】なの」
「【浮遊】、だと?」
「言葉の通り、浮いてるの。地面に体が触れてないから地面を振動させたり、経由する技は効かないわ」
「な、成る程……って、違う!地面タイプの技は効かないが、こちらが優位なのに変わりは無い!」
リオの説明に感心しかけたサパスだが、直ぐにバトルがまだ続いている事を思い出し、得意そうに胸を張る。
そんなサパスにリオは素直に頷く。
「悔しいけど、否定はしないわ」
(進化前と進化後だと、後者の方が圧倒的に優位。ドテッコツになって体も大きくなったし、
持っている物だって──)
そこでリオの頭に、1つの作戦が浮かんだ。
「ドテッコツ!《岩落とし》だ!」
ドテッコツは再びコンクリートの塊をシビシラス目掛けて投げる。
「《チャージビーム》!」
飛んで来た塊をシビシラスの電撃が砕く。
細かい破片が降り注ぎ、シビシラスの視界が悪くなったのをサパスは見逃さなかった。
「先程と同じく隙だらけだ!ドテッコツ、とどめの《怪力》!」
「シビシラス、噴水の中へ!」
シビシラスは身を翻し、噴水の水の中へ入る。
「馬鹿め、それで隠れたつもりか?袋の鼠だ!!」
鉄骨がシビシラスへと振り下ろされる。
「一か八か!最大パワーで《チャージビーム》!!」
シビシラスは直前まで溜めていた電気を一気に放出する。
四方八方に花火の様に放出された帯状の電撃はドテッコツと、そしてドテッコツの持つ鉄骨に命中した。
「ドテッコツ!!」
地面に背中を打ったが、何とか辛うじて起き上がったドテッコツ。
しかし持っていた鉄骨は粉々に砕け散り、その無惨な姿にドテッコツは冷や汗を垂らした。
「水と鉄は電気を良く通す。《怪力》の時に鉄骨を使ったのが貴方の隙よ……《スパーク》!!」
水の中から飛び上がり電気を纏って急降下して来るシビシラスに、先程の余裕は何処へやら、
サパスはあわあわと手を動かす。
「ド、ドテッコツ!防御だ!!」
『テッコ、』
しかし鉄骨を壊され、防御する術の無いドテッコツはシビシラスの攻撃を喰らい、目を回して
静かに倒れたのだった。
「……約束通り、この骸骨は貴様に返してやる」
「ありがとう。本当に返してくれたわね」
破損が無いか確認しながら呟いたリオに、サパスは不快そうに眉を上げる。
「当然だ。我は素直な所と、諦めの良さが取り柄だからな!」
胸を張るサパスに気付かれぬ様に、リオはリュックからロープを取り出す。
「大人しく捕まり──あぁっ!!」
振り返った時には既にサパスの姿は遥か遠く、走っても追い付けない所に居た。
「ふははは!言い忘れていたが、我は危険察知能力と逃げ足の速さも取り柄なのだ!
残念だったなぁー!!」
大声で叫びながら、サパスは颯爽と(?)去って行った。
- Re: 33章 不器用な優しさ ( No.68 )
- 日時: 2020/08/24 20:41
- 名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)
「ハァ、ハァ……今度こそ捕まえようと思ったのに!」
逃げたサパスを追って走ったが、言葉通りサパスは本当に逃げ足が速く、人混みに紛れて
あっという間に姿を消してしまった。
膝に手を付いて息を整えるリオの傍を、人々は不思議そうな(半分邪魔そうな)目で見ながら通り過ぎて行く。
リオは腕に抱えていたおむつ形の骨を置くと、拳を固めて地面を強く殴った。
(ごめん、アキラ。偉そうな事を言っといて、逃げられちゃった……)
リオは暫し俯いて、やがて息を長く吐いて立ち上がった。
「……サパスに逃げられたのは悔しいけど、この骨を渡しに行かなきゃ」
抱え直したおむつ形の骨を見て空を見上げる。
爽やかな水色だった空は、今はオレンジ色に染まっていた。
「お昼、食べ損ねちゃったわね」
物足りないお腹を擦りながら、リオはバルチャイが待つポケモンセンターへ急いだ。
「バルチャイ!貴女の大切な物、見付かったわよ!」
ポケモンセンターに戻ると、リオは真っ先に取り返した骨を椅子の上に置いた。
バルチャイはおむつ形の骸骨を見て、触れて確認すると、空いていた穴に足を入れた。
『チャイ!』
どうやら破損も無く、ピッタリのようだ。
嬉しそうに短い翼をばたつかせて飛び跳ねた後に頭を下げたバルチャイに、リオは顔を綻ばせる。
(良かった……でも、寂しいわね。これでこの子とお別れなんて)
バルチャイの大切な物は見付かった。
しかしそれと同時に、バルチャイがここに留まる理由も無くなったのだ。
『チャイ、チャチャイ!』
『モシシ!?モシ、シモモ!』
しんみりするリオの前で、ヒトモシとバルチャイが何かを話している。
(何を話してるのかしら?)
首を傾げるリオ。
すると突然ヒトモシがリオのリュックに飛び乗り、中を漁り始めた。
「ちょっ、ヒトモシ何やって」
ヒトモシはリュックから降りると、バルチャイの前に何かを置いた。
置かれたそれは、空のモンスターボールだった。
「——バルチャイ?」
『……』
バルチャイは無言でリオを見つめている。
目をぱちくりさせるリオの隣に一部始終を見守っていたジョーイさんが立った。
「きっとバルチャイはリオさんの事を好きになったんですね」
「え?」
「だって貴女が居なくなったら、途端に元気を無くしたんですよ」
ジョーイさんは微笑んでリオとバルチャイを見遣る。
「リオさん。貴女さえよければ、この子を連れて行ってあげて下さい」
「バルチャイ……本当に私で良いの?」
『チャイ!』
「〜〜〜っ、ありがとう!私達と一緒に、世界を旅しましょ!」
バルチャイは大きく頷くと、嘴でモンスターボールのボタンを押した。
カタカタと揺れていたボールはやがて止まり、リオはバルチャイが入ったボールを手に取る。
「これからよろしくね、バルチャイ」
『モシ♪』
新たな仲間に出会えた喜びを共有するリオとヒトモシ。
そんな2人に近付く影が1つ。
「ゲットおめでとう。まさか、本当に見付けて来るなんてね」
瑠璃色の髪を揺らして近付いて来た綺麗な少年に、リオは腕を組む。
「私はポケモンと交わした約束は、最後までちゃんと守るわ」
そう言ってモンスターボールを愛おしそうに見るリオに、彼は「あ」と声を漏らし指差した。
「……ほっぺ」
「ほっぺ?」
頭に疑問符を浮かべて復唱する。
「怪我してる」
驚いて頬に手をやると、指先にうっすらと血が付いた。
「あ。ホントだ」
(多分、バトルの時に降って来たコンクリートの破片で切れたのね)
手を見つめて微動だにしないリオに、少年は呆れた眼差しを向ける。
「何?野生のポケモンと引っ掻き合いでもした?君、野蛮そうだしね」
「ジョーイさん、回復お願いします」
後ろから聞こえて来る言葉の数々を無視し、リオはヒトモシ達のボールをジョーイさんに渡す。
「早く絆創膏貼りなよ」
「貴方に言われなくたって貼るわよ」
リオは背負っていたリュックを下ろしてリュックの中に手を突っ込む。
しかし、いくら探してもお目当ての物は見つからない。
リュックを逆様にして中身を全部出そうかと思った所で、手がピタリと止まる。
(……そうだ。確か絆創膏切らしちゃって、この街で買おうとしてたんだった)
固まるリオに少年はクツクツと笑う。
「君ってさ、偉そうな事を言う割にケッコー抜けてるよね」
「ほっといて。……痛っ!」
突然訪れた、痺れる様な痛み。
目を少年の方に向けると、少年はリオの頬に消毒液を付けたハンカチを当てていた。
「ちょ、ちょっと!良いってば!」
リオはハンカチを退けようと手を伸ばす──が、勢い良く押し付けられたハンカチによって
力無く腕を下ろす。
「ヒトの厚意ぐらい、素直に受け取ったら?」
「〜〜〜っ!」
少年の楽しそうな顔に、リオはただ唸るしかなかった。
┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼
「はい、終わり」
(やっと……終わった…………!)
リオは安堵の溜め息を吐いて、頬に貼られた大きめの絆創膏に触れる。
「言っておくけど、1日中ソレ貼りっぱなしは止めなよ。不衛生だから」
「分かってるわよ。その……ありがとう」
薬が染みる度に顔を歪めていた自分を、目を細めて心底面白そうに眺めていた少年は、
完全にリオの中でドSのレッテルが貼られたが、手当てをしてくれた事に変わりはない。
目を逸らしてお礼を言うと、溜め息を吐かれた。
「君、素直じゃないよね」
「む……名前を教えてくれない貴方にだけは言われたくないわ」
「レイド」
「え」
リオはポカン、と少年──レイドを見つめる。
「何?間抜けな顔して」
「レイド、それが貴方の名前?」
「それ以外に何があるの」
「だって、最初に会った時は名前を教えるの嫌がってたじゃない」
「それは君がいかにも弱そうだったから。僕、弱いヒトには名乗らない主義だし」
レイドの言葉にリオは喜んで良いのか迷った。
つまり最初に会った時、自分は彼に弱い人間として見られていたという事で。
(名前を知れたのは嬉しいけど、何かしら、この微妙な気持ちは……)
「絶対見付からないと思っていたバルチャイの骨を取って来たから、ほんの少しだけ見直した。
だから名前を教えた、何か文句ある?」
「文句は無いけど……あ、そうだ!」
そこでリオはパン、と手を叩いた。
「ねぇ、私とバトルしてくれる?」
「………は?」
突然のリオの誘いにレイドはポカン、と口を開けるのだった。
- Re: 34章 立ちはだかる壁 ( No.69 )
- 日時: 2020/08/24 23:48
- 名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)
リオは唖然とするレイドの隣に腰掛ける。
「私、明日ヒウンシティのジムに挑戦するの。でもその前に、色んな人とバトルしたくて」
「別に僕じゃなくても」
「貴方が良いの。お願い!」
目をキラキラと輝かせ、リオは躊躇い無くレイドの手を握る。
突然の行動にレイドは驚きを隠せない。
「貴方、強いんでしょ?さっきの話を聞いてそう思ったの!」
「確かに僕は強いよ。だけど僕は手加減する程、お人好しじゃない」
「上等。手加減なんていらないわ」
不敵な笑みを浮かべるリオに、レイドは目を細める。
(変な子……さっきまで僕に苦手意識を持ってたのに。僕が、そうなるように振る舞ったのに)
沈黙するレイドに、リオは期待と不安が入り交じった表情で返事を待つ。
会って間も無い男の隣に座り、手を握って距離を詰めて来る無防備な少女にレイドは息を吐く。
「今更やめてって言っても、やめてあげないよ?」
「それじゃあ……!」
「バトルのお誘い、受けてあげる。裏庭にバトルフィールドがある筈だから、其処でやるよ」
「ええ!う〜……楽しみ!」
妖艶に微笑み、レイドはリオに背を向け歩き出す──
ピリリリリ。
歩き出そうとした時、電子音が鳴り響いた。
(電話?私のは鳴ってないから……)
「電話、出ないの?」
リオは首を傾げ、背を向けたまま固まっているレイドに声を掛ける。
レイドはリオの方をチラリ、と見てポケットからライブキャスターに似た機械を取り出す。
そしてディスプレイに映し出された文字を見た瞬間、レイドは眉を顰めた。
「こんな時に……!」
「ど、どうしたの?」
何故かは分からないが一気に不機嫌になったレイドに、リオは遠慮がちに声を掛ける。
「急用が入った。悪いけど、バトルはお預け」
「そっか……」
バトルする気満々だったリオは突然のキャンセルに肩を落とす。
「ごめん」
「き、気にしないで!私も突然のお願いだったし急用なら仕方ないわ!」
しかし頭を深々と下げたレイドに、リオは慌てて手を振る。
「じゃあ、今度会ったらバトルしましょ。約束!」
レイドの前に小指を出す。
暫くその小指を見つめていたレイドだったが、目を瞑るとリオの耳元に唇を寄せ──
「会えたらね。それと、僕に会いたいならもっと綺麗にしてきてよね」
小さくそう囁いてリオの頭をポン、と叩いてポケモンセンターを出て行った。
「……意地悪ね」
絡まる事が無かった小指を、リオは静かに見つめるのだった。
┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼
そんなこんなで、次の日。
「……」
リオは3番目のジム、ヒウンシティジムの中に居た。
朝いつもより早く起きてポケモン達と修行に励み、回復と食事を終え、意気込んでジムに乗り込んだ。
しかし、そんな闘志を燃やすリオの前に大きな壁が立ち開かった。
「何かしら、コレ」
言葉通り、5mくらいある大きな金色の壁がリオの前にドーンと立ち開かっていた。
人差し指で壁を押すと、指先に金色の液体が付いた。
「やっぱり。ハチミツだわ」
指先に付着した金色の液体を舐めると、甘い風味が口の中いっぱいに広がった。
「この壁を突破しないとジムリーダーの所に行けないわね。幸いこの壁自体は脆そうだから、
突っ込めば進めそう」
しかし突っ込めば、確実に全身ハチミツ塗れになるだろう。
普通のトレーナーは勿論リオは(一応)女の子、汚れるのを嫌がって躊躇しそうだが、
「女は度胸!行くわよ!!」
リオは靴紐をきつく締めると、一切躊躇わずハチミツの壁に突っ込んだ。
「到着っ!」
「リ、リオちゃん!?」
「え?」
壁を次々に突破し、ジムリーダーが待つバトルフィールドに辿り着いたリオ。
そしてハチミツで汚れたリオを出迎えたのは、なんとアーティだった。
「ハチミツの壁を躊躇無く突破してる女の子が居るって聞いてたけど……
まさかキミだったなんてね。驚いたよ」
「埃と砂と正体不明の汁塗れになるよりは、衛生面も安全面もずっとマシですから!」
「汁塗れ……?」
リオの言葉に困惑しつつ、挑戦者用に常備しているのか、アーティは人1人を余裕で包めそうな
大きなタオルでリオの体を丁寧に拭く。
「ありがとうございます、アーティさん」
まだ体はヌルヌルしているが、一通りハチミツが取れたリオは笑顔でお礼を言う。
しかし直ぐに目をパチクリさせる。
「……って、あれ?何でアーティさんがジムに居るんですか?あ、私と同じでジムリーダーに
挑戦ですか?」
「ボクは挑戦者じゃないよ。だってボクはヒウンシティジムのジムリーダーだからね」
・
・
・
。
「ええぇぇっ!!そうなんですか!?」
衝撃の告白に、リオは目を見開き数歩後退る。
(面白い反応だなー)
「あれ、言ってなかったっけ?」
「聞いてませんよ!ヒウンシティ出身っていうのも、今知りましたし!」
「あはは、そうだったかな?」
カラカラと笑うアーティに、リオは額に手をやる。
「それにしても……凄いねリオちゃん」
「何がですか?」
「大体ボクに挑戦しようって子達は汚れるのを嫌がって、中々ボクの所まで辿り着けないんだよ?
リオちゃんが言う、衛生面と安全面がマシだとしても汚れる事には変わりないだろう?」
「何となく分かる気がします」
未だ滑りが取れない腕を触りながらリオは苦笑する。
「でも……前に進むのと誰かと関わる事に、汚れとか服装の乱れは二の次だと思うんです。
外見ばかり気にして、本当に大事な物と大切な者を疎かにするのは馬鹿げてます」
握り拳を作って断言したリオにアーティは笑みを漏らす。
「——あははっ!やっぱりキミは普通の子とは違うね」
「それは私が変だって事ですか?確かに女子の思考としては最悪かもしれませんけど」
面と向かって指摘されるのは心外だと言わんばかりに不機嫌な顔になるリオに、
アーティは笑うのを止め首を左右に振る。
「違うよ。面白くて魅力的だという事さ。そんなキミと、ずっと戦える日を楽しみにしていた」
アーティは懐からモンスターボールを取り出す。
「ボクの虫ポケモンがキミと戦いたいって騒いでてさ。早速だけど勝負だよ」
「望む所です。私も早くバトルがしたくて、うずうずしてたんですから!」
逸る気持ちを抑え、リオもまた、ボールを取り出すのだった。
今回、残念ながらレイドとのバトルフラグは、ぽっきりと折れてしまいました。
しかし代わりにアーティが再登場しました。
アーティの台詞がキザっぽいのは、自分の中でアーティは無意識にクサい台詞を言う
イメージがあったからです……アーティファンの皆様すみません!
そんなわけで次回、リオとアーティのバトルが始まります。
それでは次回もお楽しみに!
- Re: 35章 リオvsアーティ ( No.70 )
- 日時: 2020/08/26 19:54
- 名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)
「アーティさん。審判はボクがやりましょうか?」
額の上でモンスターボールを転がしながら名乗りを上げたのはピエロ姿の男。
「うん。頼むよヨウスケ」
「よろしくお願いします!」
「はい!」
ヨウスケが元気良く返事をしたのを見て、リオはホッと胸を撫で下ろす。
リオはアーティの元に辿り着くまでに、ヨウスケの他に同じ格好をしたジャック、ケリー、
リックの3人と戦ったのだが、ジャックは何度も「芸術」について語り、ケリーはテンションが高く、
リックは駄洒落を言う為、この3人の内の誰かが審判を務める事に僅かに不安を感じていた。
ヨウスケはその3人に比べ普通だったので、リオは彼が審判に名乗り出てくれて心底ホッとしていた。
「では……これよりヒウンジム、ジム戦を始めます。使用ポケモンは3体。どちらかのポケモンが
全て戦闘不能になった時点でバトル終了とします。ポケモンの交代はチャレンジャーのみが
認められます。それでは両者、ポケモンを!」
「ボクから手の内を明かそう。1体目は……出ておいで、フシデ!」
アーティの最初のポケモンは、ムカデポケモンのフシデ。
気合いが入っているのか、フシデは触覚をブルルッ、と震わせる。
「それなら私はこの子です。出て来て、チラーミィ!」
そんなアーティに対し、リオはチラーミィを繰り出した。
「試合開始っ!!」
「悪いけど先攻は貰うよ。フシデ、《嫌な音》」
フシデは触覚を震わせて金切り声に似た高い音を出す。
その音はチラーミィと、そしてトレーナーであるリオの身体を少しずつ蝕んでいく。
『ミィ〜……!』
「負けないで、チラーミィ!《スピードスター》!」
チラーミィは高音を聞かない様に耳を折り畳むと、尻尾を振るい星型の光を発射する。
星は円を描きながら音波の中を突き進んでフシデに命中した。
攻撃を受けた事により、フシデの出していた音も止まる。
「ビシィッ!!スイッチ入ったよ!!《毒針》!」
「《アクアテール》!」
フシデは体勢を立て直し、触覚から毒を含んだ紫色の針を無数に飛ばす。
しかしその針も、チラーミィの尻尾から放たれた水圧の前には無力で、全て撃ち落とされる。
「……もう1度《毒針》だ!」
「後ろよ!ジャンプして《アクアテール》!」
フシデは水飛沫に身を隠してチラーミィの背後から紫色の針を飛ばす。
それを逸早く察知したリオがチラーミィに回避を指示し、チラーミィは間一髪で攻撃を躱して
続けて飛んで来た残りの針を水圧で撃ち落とした。
「《嫌な音》!」
「させません!チラーミィ、フシデの触覚を掴んで!」
チラーミィはフシデの懐に飛び込むと、2本の触覚を掴む。
フシデの場合《嫌な音》と《毒針》は触覚から繰り出す技だ。
そしてその大切な触覚はチラーミィがガッシリと掴んでいるので、フシデは《嫌な音》を出せない。
小さな足をパタパタと動かして暴れるが、フシデの抵抗を打ち砕く様にリオがチラーミィに指示を出す。
「《往復ビンタ》!」
チラーミィは塞がった両手の代わりに、自慢の長い尻尾でフシデの頬を叩く。
身軽で、自由自在に動かせる尻尾を持つチラーミィだからこそ出来る芸当だ。
「何事も深追いは禁物よね。チラーミィ、離れて」
5発目の攻撃を当て終えると、即座にチラーミィは触覚を離し、フシデとの距離を取る。
至近距離の反撃を予期しての行動だ。
「息つく暇も無い怒濤の攻撃……キミのチラーミィの速さと力強さには、本当に驚かされるよ」
「ありがとうございます」
アーティの口から出た称賛に、リオは微笑む。
自分のポケモン──友達が褒められるのはやはり嬉しい。
暫しアーティの言葉に酔い痴れていたリオだが、急かす様なチラーミィの声に慌てて意識を
バトルに集中させる。
(今の所、特にこっちはダメージを受けてない。フシデは見た目に反して素早さが高いポケモン……
だけど、私のチラーミィの素早さはその上を行く。毒を使った攻撃は確かに脅威だけど、
当たらなければ恐くない)
「ん〜……リオちゃんが考えてる事、当ててあげようか」
リオの様子を見ていたアーティが、ひょんな事を言い出した。
急に自分の名前を出されたリオは一瞬肩を揺らした後にアーティを見る。
「どんな強力な技も当たらなければ恐くない、だろう?」
「!正解です」
(凄い!アーティさんって、実はエスパー?)
自分の考えをピタリと言い当てたアーティに、心の中で拍手を贈る。
「確かにどんな攻撃も当たらなければ意味は無いね。だけどポケモンの技は色々な姿に形を変える。
環境によって姿を変える虫ポケモンの様にね」
そう言ってチラーミィを見た後にバトルフィールドを見下ろすアーティ。
つられてチラーミィとフィールドを見たリオは──絶句した。
(……何で気付かなかったのよ私!!)
リオの視線の先には顔色を悪くしたチラーミィと、姿を変えたフィールドがあった。
フィールドには無数の針が突き刺さっていて、毒の影響で地面は紫色に変色し、今でも針の先端は
毒が滴り、テラテラと怪しく光っている。
「チラーミィ!」
リオの声に反応したチラーミィが振り返る。
額には汗が滲み、笑ってはいるがその表情もどこかぎこちない。
ポケモンの状態異常の1つ──毒状態にチラーミィはなっていた。
(油断した……まさか、撃ち落とした《毒針》がこんな形で活きるなんて!)
リオは下唇を噛む。血の味が口の中一杯に広がる。
フシデとチラーミィからは目を離さなかったが、フィールド全体までは見れていなかった。
そんな慢心していた自分には、チラーミィがいつ毒状態になったのか分からなかった。
「地面に刺さった《毒針》は《撒菱》と《毒菱》……両方の技に似た効果を発揮したのさ。
皮肉にもキミのチラーミィの《アクアテール》でね」
「……最初から、こうなる事を読んでたんですか?」
「ううん。ボクも《毒針》が、まさかこんな形で活躍するとは思ってなかったよ」
そこで2人の会話が途切れる。
聞こえるのはチラーミィの荒い息遣いだけだ。
「さて。悪いけど、ここで決めさせて貰おう。フシデ、《転がる》!」
フシデは体を丸めると、タイヤの様に転がり物凄いスピードで迫って来た。
回転に巻き込まれて、フィールドに刺さっていた数本の針が衝撃で弾け飛び、偶然にもこちらに
飛んで来るというおまけ付きだ。
「——!チラーミィ、避けて!!」
リオはチラーミィに指示を出す。
しかし毒で体力が削られていたのとフィールドが針の山状態で思い通りに動けず、針は避けれても
迫り来るフシデは避け切れず、チラーミィはモロに攻撃を受けてしまった。
「チラーミィ、大丈夫!?」
リオはチラーミィに声を掛ける。
起き上がり親指を立てたチラーミィに安堵するが、直ぐに表情を引き締める。
(ダメージは少ないけど、嫌な予感がする)
止まる事無くフィールドを転がり続けているフシデ。
リオは目を凝らしてフシデを観察する。
「フシデ、《転がる》!」
フシデが再びチラーミィに迫る──先程の、倍のスピードで。
「戻って、チラーミィ!」
異様なフシデのスピードに、リオは咄嗟にボールを取り出しチラーミィを戻す。
「うん。今のは中々良い判断だね。でも、」
言葉を切り、アーティは口許に笑みを浮かべる。
「《転がる》の本当の恐さはこれからだよ」
静かに呟かれたアーティの言葉が、リオを戦慄させた。
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