二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW *道標の灯火*
日時: 2020/09/15 16:16
名前: 霧火# (ID: HEG2uMET)

初めまして、霧火と申します。

昔からポケモンが好きで、今回小説を書こうと思いました。
舞台はポケットモンスターブラック・ホワイトの世界です…と言っても舞台はゲーム通り
イッシュ地方ですが、時間軸はゲームの【数年前】でオリジナル・捏造の要素が強いです。
そして、別地方のポケモンも登場します。Nとゲーチスは出ないかもしれません(予定)。


!注意事項!
   ↓
1.本作のメインキャラは【最強】ではありません。負ける事も多く悩んだりもします。
2.書く人間がお馬鹿なので、天才キャラは作れません。なんちゃって天才キャラは居ます。
3.バトル描写や台詞が長いので、とんとん拍子にバトルは進みません。バトルの流れは
 ゲーム<アニメ寄りで、地形を利用したり攻撃を「躱せ」で避けたりします。
4.文才がない上にアイデアが浮かぶのも書くペースも遅いため、亀先輩に土下座するくらい
 超鈍足更新です。
 3〜4ヵ月に1話更新出来たら良い方で、その時の状態により6ヵ月〜1年掛かる事があります。
 申し訳ありません。


新しいタイトルが発表されてポケモン世界が広がる中、BWの小説は需要無いかもしれませんが
1人でも多くの人に「面白い」「続きが気になる」と思ってもらえるよう精進致しますので、
読んでいただけたら有り難いです。

**コメントをくれたお客様**

白黒さん パーセンターさん プツ男さん シエルさん
もろっちさん 火矢 八重さん かのさん さーちゃんさん

有り難うございます。小説を書く励みになります++


登場人物(※ネタバレが多いのでご注意下さい)
>>77

出会い・旅立ち編
>>1 >>4 >>6 >>7 >>8 >>12 >>15
サンヨウシティ
>>20 >>21 >>22 >>23
vsプラズマ団
>>26 >>29 >>30 >>31
シッポウシティ
>>34 >>35 >>39 >>40 >>43 >>46 >>47 >>48 >>49 >>50 >>51 >>52 >>55 >>56
ヒウンシティ
>>65 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>71 >>72 >>75 >>76 >>78 >>79
ライモンシティ
>>80 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>94 >>95 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103 >>106 >>116 >>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>130 >>131 >>134 >>137 >>138 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>148
>>149 >>150 >>151
修行編
>>152 >>153 >>155 >>156 >>157 >>160 >>163 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>171 >>173 >>174 >>175 >>176 >>177 >>178 >>180 >>182 >>183
>>185 >>187


番外編(敵side)
>>188

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Re: 8章 サンヨウシティ 三つ子のジムリーダー登場! ( No.20 )
日時: 2020/06/23 21:40
名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)

サンヨウシティ。

雪除けの階段は住み着いた人が故郷を思い、付けたとされている。
ちなみにサンヨウとは3つ並ぶ星の事を言うらしい。
……だからと言って3つ星レストランは無さそうだが。

リオとアキラは、そんなサンヨウシティのポケモンセンターの中に居た。

「うっ……まだ、世界が、回ってやがる…………」
「だから言ったじゃない、キツかったらすぐに言えって」
『イッブイ!』

ソファーに仰向けの状態で横になっているアキラに、少し怒りながらもせっせと介抱するリオと
情けない姿を見せる自身のトレーナーの額を不機嫌な顔でぺしぺし叩くイーブイ。
因みに2人を送り届けたエアームドは、サンヨウシティに着いた途端に真っ青な顔で背中から
転げ落ちたアキラに申し訳無さそうな顔をしていたが、リオに「私が看るから大丈夫よ」と言われ、
リオとアキラを交互に見た後にお辞儀をして帰って行った。

「リオ、お前よくあのスピードの中で平然としてられたよな……途中欠伸とかしてたろ」
「私は慣れてるから。それにエアームドも叫びっぱなしのアキラを気遣って、何時もより大分
 スピード落としてくれてたからね」
「あれでか!?」

(あ、復活した)

「落ち着きなよアキラ」

ガバリと勢いよく上体を起こしたアキラの肩を軽く叩いて落ち着かせる。
未だ本調子では無いアキラは力無くソファーの肘掛けに肘を乗せると、そのままずるずると
全身を伸ばしながら再び仰向けになった。
リオはそんなアキラを暫し見つめた後、旅立つ前日に買った美味しい水をアキラの前にある
テーブルの上に置いて立ち上がった。

「暫くじっとしてて。ジョーイさんから冷却タオル貰って来るから。他に欲しい物はある?」
「……俺の事は良いから、先にジム挑戦しに行って良いぞ。俺は新しい仲間をゲットして
 レベルを上げてから挑戦すっから」

ヒラヒラと手を振るアキラの声は、エアームドに乗る前と比べて元気が無い。
イーブイはアキラの隣に移動するとその場でくるくる回り、くぁ……と欠伸をした後に
身体を丸めて寝始めた。

「ジョーイさんとイーブイが居るから心配無用だろうけど、ホントに大丈夫なの?」
「リオがどうしても俺の傍に居たいってんなら居てm「そうやって軽口叩けるなら大丈夫ね。
 あ、すみませんジョーイさん!冷却タオルってありますか?はい、1つで大丈夫です。
 忙しいのにありがとうございます。ほら、良かったわねアキラ。冷却タオル貸して貰えたわよ。
 それじゃあ私は先に行ってるわね」……つれねぇヤツ」

ジョーイさんから受け取った冷却タオルを唇を尖らせるアキラに渡し、ポケモンセンターを出る。
そしていざジムへ向かおうとしたら、自分と大して歳が変わらなそうな
(しかし落ち着いた佇まいから恐らく年上だ)緑色の髪にウェイターの格好をした少年が
入口の前に立っていた。

(何してるのかしら?)

中に入るワケでも無く、ただじっと門番の様に入口の前に立ちはだかっている。
これではジムの中に入れない。
正直、ジムに挑戦しに来たリオにとってはかなり邪魔だ。

(戻ってアキラの介抱の続きをしようかな?いやでも、今戻ると絶対からかわれる)

考えた末、リオは少年に声を掛ける事にした。

「あの……貴方は?」
「……え?僕はこの街のジムリーダーですけど、君は?」

(まさかのジムリーダー!?)

こう言っては失礼だが格好的にジムにレストランの宣伝をしに来た見習いか、ジムリーダーが
ジムを空けている間に留守を任されてしまった、不運な喫茶店の少年か何かだと思っていた。
つまりリオはこの少年をジム関係者だと全く考えなかったワケだが、まさかガッツリ関係者——
しかもジムリーダーだったとは。

予想外の展開に内心驚きつつ、リオは自己紹介をする。

「私、リオって言います。少し前にこの街に着いて、ジムに挑戦しに来ました」
「そうですか、ジムに挑戦……」

そこで緑色の髪の少年は顎に手を当てて何やら考え込む。

「あの、ジムは今日お休みですか?」
「いえ、そういう訳では無いんです。ところでリオさん。最初に選んだポケモンは何ですか?」
「え?何って……」

突然の少年の質問にリオは答えるのを躊躇う。

優しくて人が好さそうな少年には悪いが、今から戦う相手に手の内を明かす様なマネはしたくない。
そんなリオに気付いたのか、少年は眉を八の字にして苦笑する。

「……すみません。ジムに挑戦しに来た人には必ず訊くように言われてて」

(ジム特有のルールかしら?なら、ちゃんと答えないとダメよね)

「そうなんですか。私の最初のポケモンはヒトモシです」

リオは1人納得すると、躊躇っていたのが嘘の様に素直に答える。
ポケモン絡みのルールは意外にちゃんと守るリオであった。

「ヒトモシか……成る程、水タイプが苦手なんですね」
「確かに苦手だけど、相性だけで決まらないのがポケモンですよ」
「!……フフ、そうですね。ですが、念の為対策をしておいた方が良いと思いますよ。
 例えばこの先にある【夢の跡地】でポケモンを鍛えるとか」
「アドバイスをありがとうございます」
「いえ。それでは中で待っていますね」

笑顔でそう言い残し、少年は綺麗な扉を押し開けてジムの中へと消えて行った。

「対策、か。とりあえず少し鍛えようかな」

(ヒトモシに覚えさせたい技もあるし)


リオはモンスターボールを手に取ると【夢の跡地】と呼ばれる場所へ向け、歩いて行った。


┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼


「……うん、こんなものかしら」

【夢の跡地】で鍛え始めて早1時間。
無事にヒトモシが新しい技を覚えて満足したリオは体力を回復させる為と、ついでにアキラの今の
状態を確認する為に1度ポケモンセンターへ足を運ぶ事にした。
中に入るとグロッキー状態だったアキラの姿は既に無く、ヒトモシの回復を待ちながら
ジョーイさんに尋ねると、ジョーイさん曰く数分前にイーブイと共に外に出て行ったらしい。

アキラが元気になった事に一安心して、リオはジョーイさんにお礼を言って回復を終えた
ヒトモシをボールに戻して、再びポケモンセンターを出た。


「あ、アキラとイーブイ。……と、誰?」

ジムの前でアキラとイーブイ、そして赤い髪の見知らぬ少年が何やら話していた。

(格好はさっきのジムリーダーの人と同じだから、ジム関係の人?でも、格好が同じでも
雰囲気が全然違うわね)

先程の物静かなジムリーダーを静かな草木と例えるなら、アキラとイーブイを見て大きな口を開けて
話している少年は噴火した火山の様だ。
つまり、暑苦しい。

リオが分析していると一通り話し終えたのか、赤い髪の少年はジムの中に入って行き、
こちらに気付いたアキラとイーブイが早歩きで向かって来た。

「聞いてくれよ!今の赤髪、俺のポケモンを訊くまでは機関銃みてぇに喋ってたのに、
 俺の最初のポケモンがイーブイだって答えた途端、急に何も言わずにジムん中に
 入ってったんだぜ!?質問しといて何のリアクションも無ぇとか失礼なヤツだよな!?
 赤い髪のヤツは皆あんな生意気なのか?」
「あんたも赤髪でしょ。……アキラは今から【夢の跡地】に?」

リオが聞くとアキラは険しい表情を一変させて、満面の笑みを浮かべる。

「ああ。ジムに挑戦する前にポケモンセンターの隣にある【トレーナーズスクール】で
 基本的な事を復習出来たし、街の人の話を聞いてゲットするポケモンも決まったしな!
 リオは今からジム戦か?」
「うん。コンディションはバッチリよ!」
「頑張れよ。試合は最初から最後まで見れねぇけど、出来るだけ応援に行ける様に準備を終えたら
 すぐそっち行くからな!絶対負けるんじゃねぇぞ?良いか、絶対だぞ!?」

アキラは拳を握り早口で捲くし立てると(なんだかフラグが建つ言葉が聞こえた気がする)、
そのままイーブイと一緒に【夢の跡地】へ走って行った。
後姿を見送り、リオは目の前の建物——ジムを見上げる。

「イッシュ地方には、こういうジムが他に7つあるのよね」

初めてのジムに、らしくも無く緊張する。

トレーナーになる前は、早く大きくなって各地のジムや景色を見てみたいとか、沢山のトレーナーと
戦って良きライバルや友達になりたいとか、ジムリーダーと戦ってバッジをゲットしたいとか、
叶うなら四天王やチャンピオンと最高の舞台で全力でぶつかって、どんな結果になっても
最後にはヒトモシと、これから先出会う仲間達と共に「最高のバトルだった」と、心の底から
笑い合える強いトレーナーになりたいとか……

良く言えば前向きな、悪く言えば強欲な事ばかりをずっと考えてきた。


緑髪の少年をジムリーダーだと知る前は、ジムの入口前に門番の様に立っている彼を
邪魔だと思ってしまったし、ジムリーダーだと知った後も心に余裕があった。

こんな、喉が渇いて体が強張る様な形でジムを見た事なんて無かった。


「……ふぅ。よし、行きますか」

リオは深呼吸をしてジムの階段を上がる。
幼馴染であり最高のライバルであるアキラが応援してくれたんだ、何時までもビビって棒の様に
突っ立っているワケにはいかない。
ジムの綺麗な扉をゆっくりと押し開け、リオはジムの中へ足を踏み入れた。

「ようこそ!こちら、サンヨウシティ・ポケモンジムです」
「!」

照らされたステージの上に立っていたのは赤い髪、青い髪、緑の髪をした3人の少年。
その中にはリオがジムの前で会ったジムリーダーと、アキラと話していた少年も居る。

「オレは炎タイプのポケモンで暴れるポッド!」

赤い髪の少年——ポッドが親指で自分を指す。

「水タイプを使いこなすコーンです。以後お見知り置きを」

青い髪の少年——コーンは深々とお辞儀をする。

「そして僕はですね、草タイプのポケモンが好きなデントと申します」

そして緑色の髪の少年——デントは柔らかく笑う。


「あのですね……僕達はですね、どうして3人居るかと言いますと……長くなるんですが、
 あn「だーッ!じれったい!オレが説明するッ!」

デントのゆっくりした喋りに我慢出来なくなったのか、デントを押し退けてポッドが前に出る。

「オレ達3人は!相手が最初に選んだポケモンのタイプに合わせて、誰が戦うか決めるんだッ!」
「つまりデントさんだけじゃなくて全員ジムリーダー!?」
「そうなんだよね。そして貴女が最初に選んだパートナーはヒトモシ……つまり、炎タイプなんだよね」

以前母であるリマから、数年後に息の合った双子のジムリーダーが現れるかもしれない、と
別地方の話を聞かされて驚いた事があったが、まさか最初に双子以上の……三つ子のジムリーダーが
存在するジムに挑戦する事になるとは。

驚愕するリオにコーンは一息置き、歩み寄る。


「そう!水タイプを愛するこのコーンがお相手します!」

先程のクールな印象はどこへやら、高々と宣言するコーンを見て、

(面倒臭そうな人だなぁ……)

緊張と驚愕で硬くなっていた表情が一変、リオはこれから始まるバトルに色々な意味で不安を感じて
苦笑するのだった。

Re: 9章 リオvsコーン ( No.21 )
日時: 2020/06/24 13:19
名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)

「……うーん。どうしてもダンスのタイミングがずれるんです。嗚呼そうですよね、
 君とポケモン勝負してみたかったです」
「何だよーッ!オレ、暴れたかったのになー!!」

リオとコーンを交互に見て眉尻を下げるデントと地団駄を踏むポッド。
コーンはそんな2人に微笑し、リオには不敵な笑みを向けた。

「良かったね!3人のトップと戦う事が出来て」
「そうですね。最初のジムで1番強い人と戦えるなんてラッキーです」
「中々言いますね。ではバトルを始める前に……ミキヤさん、審判をお願い出来ますか?」
「畏まりました。では審判は私ウエーターのミキヤが務めさせていただきます」

お皿を持ったウェイター姿の男性がコーンとリオに深々とお辞儀をする。
それにコーンは頷き返し、リオはウエーターと同じ様に深々とお辞儀をしてバトルフィールドの
トレーナー専用の立ち位置に移動する。
向かい合う2人を見て、審判を任されたミキヤが口を開いた。

「只今よりサンヨウジム、ジムリーダーのコーンと挑戦者リオ様によるジムバトルを開始致します。
 使用ポケモンは2体、先に2体共戦闘不能になった方の負けです。尚ポケモンの交代は
 挑戦者様のみ認められます。では両者、ポケモンを!」
「出て来て下さい、ヨーテリー!」

コーンが繰り出したのは子犬ポケモンのヨーテリーだ。
可愛らしい容姿のポケモンだが、油断は禁物だ。

「じゃあこっちは……お願い、ヒトモシ!」

対するリオはパートナーであるヒトモシを繰り出す。

「それでは、バトル開始!」
「ヒトモシ!《弾ける炎》よ!」

最初に攻撃を仕掛けたのはリオだった。
ヒトモシは一回転すると、火花を帯びた紫色の炎をヨーテリーへと放つ。

「躱して下さい!」

ヨーテリーは飛んで来た炎をジャンプして躱し、そのままヒトモシの真上を取る。

「そのまま《噛み付く》!」
「やばっ……!ヒトモシ、後ろへ飛んで!」

《噛み付く》は、悪タイプの技。ゴーストタイプを持つヒトモシには効果は抜群だ。
落下しながら牙を剥き出したヨーテリーを見て、直感的に「まずい」と感じたリオは
瞬時にヒトモシに指示を出す。

ヒトモシもすぐその指示に応えて後ろに跳躍する——と同時に、さっきまでヒトモシが居た場所に
ヨーテリーの牙が襲い掛かった。


落下の勢いも加わって、地面には亀裂が入っていた。

「……お見事です。ヨーテリーの攻撃を躱すなんて」

ヨーテリーはヒトモシが苦手な悪タイプの技を持っている。
《弾ける炎》を軽々と避けたあの身軽さも手伝って、このバトルはコーンの方が有利だ。
それなのにヒトモシが1度《噛み付く》を躱しただけで、コーンはかなり驚いていた。

(私のヒトモシはそんなに鈍間に見えたのかしら)

もしそうなら心外だと思ったリオは、ムッとして未だに呆けているコーンを見る。
コーンはそんなリオに気が付くと、小さく笑う。

「今までコーンと戦った人達は今の状況になると、皆さん攻撃を指示したんですよ。
 攻撃を必ず当てられる絶好のチャンスですからね。しかしトレーナーの指示に
 ポケモンはすぐに対応出来ず、結局ヨーテリーの《噛み付く》を喰らい、倒れていきました……
 一瞬見えただけの勝利に目が眩み、トレーナーが誤った判断をした結果です」

言い終わり、コーンはリオを、ヨーテリーはヒトモシを見る。

「判断を見誤らずに回避を命じたトレーナーと、ここまで素早くトレーナーに応えたポケモンは
 貴女方が初めてです。今こうして貴女方と戦える事を、光栄に思います」
「そ、そうだったんだ。ありがとうございます」
『モシシ〜……』

穏やかな笑顔で称賛され、リオはヒトモシをべた褒めされた事が嬉しくて頬を緩める。
ヒトモシは褒められて恥ずかしいのか、頭の炎が小さくなったり大きくなったりしている。
そんなリオとヒトモシをニコニコと見つめるコーンとヨーテリー、そしてデント。

なんとも微笑ましい光景だが、そんな穏やかなムードをぶち壊す猛者が居た。

「だーッ!!何やってんだよコーン!今はバトル中だろッ!?」
「……そうだったね。では、バトルを再開しましょうか」
「はい!」

沸騰したヤカンの様に湯気を出して怒るポッドに、コーンは顔を引き締める。
リオとヒトモシも両頬を手で叩いて頷き、バトルに集中する。

「ヒトモシ《スモッグ》!」

ヒトモシは口から黒い煙を出してフィールドを煙で埋め尽くす。

「《奮い立てる》!」

コーンが指示を出すが、煙で視界が悪い為ヨーテリーの姿は見えない。
しかし何も仕掛けて来ない事から変化技と判断したリオは、続けてヒトモシに指示を出す。

「《鬼火》!」

ヒトモシは頭の炎から紫色の火の玉を数個生み出すと、そのまま煙の中に飛ばす。
ヒトモシは生命エネルギーが見えるのでヨーテリーの居場所が分かる。

《鬼火》は当たったはず——そうリオが思った時、


「ヨーテリー!《噛み付く》!」

ヨーテリーが突然煙の中から牙を剥き出して現れ、ヒトモシの体に噛み付いた。

「!?《弾ける炎》で引き剥がして!」

ヒトモシは頭の炎を弾けさせ、ヨーテリーを引き剥がす。

「何でっ……」
「貴女のヒトモシが生命エネルギーで相手の居場所を感知出来る様に、僕のヨーテリーにも
 それが出来るんですよ」

後ろの方でポッドが「全てのヨーテリーが出来る事だろ」と言っているが、コーンは無視して言葉を続ける。

「ヨーテリーの顔を覆う長い毛は優れたレーダーの役割を果たしていて、
 周囲の様子を敏感に察知出来るんです。当然、ヒトモシの居場所だって分かります」

(そう簡単に攻撃を当てさせてくれないって事ね)

【夢の跡地】で修行していた時にリオはヨーテリーを持つトレーナーと戦った。
しかしそのトレーナーはコーンの様な戦い方を一切しなかった。

「流石ジムリーダーのポケモンだわ。それにしても、さっき見た《噛み付く》より随分と
 パワーが上がって、……!」

言い掛けてリオはハッとする。
あの時、コーンが指示した《奮い立てる》という技。
それがもし、変化技…しかも能力を上げる技だったとしたら——?

「お察しが良いですね。そう、《奮い立てる》は自分を奮い立てて、攻撃と特攻を上げる技なんですよ。
 強い相手にも勇敢に立ち向かうヨーテリーにピッタリな技だと思いませんか?」

笑顔で言うコーンだが、リオは辛うじて立っているヒトモシの背中を見て、ボールを取り出していた。

(今のヨーテリーは、さっきよりパワーアップしてる……ここは1度、)


『モシ!』

ヒトモシの声に顔を上げると、何時の間にかヒトモシはこちらに向き直っていた。
その顔は珍しく怒っていて、リオは呆気に取られる。

しかしヒトモシが自分の胸を叩いたのを見て、リオの口角が上がった。

(『戻さないで、自分に任せて!』って言ってるのかな。もしそうならその気持ち、
無駄に出来ないわよね!)

「……降参ですか?」
「いいえ!強い相手に立ち向かうのは、私のヒトモシだって同じです!絶対諦めません!」
「ふふ、やっぱり貴女と戦うのは楽しいですね。——ですが、これで終わりにしましょう!
 ヨーテリー、とどめの《噛み付く》!」

ヨーテリーが助走をつけて牙を剥く。


「行くわよヒトモシ!《目覚めるパワー》!!」

ヒトモシは水色の球体を数個浮かび上がらせ、そのまま放つ。

「当たりませ、『キャンッ!』な、ヨーテリー!?」

ヨーテリーの叫びにコーンは閉じた目を開け、フィールドを見る。
コーンの目に飛び込んで来たのは銀世界……ではなく、凍ったフィールドと、転んでいるヨーテリーの姿。
コーンが目を凝らしてヒトモシの周りをふわふわと漂っている1個の水色の球体を観察すると、
冷気を帯びている事が確認出来た。

「……ヒトモシの《目覚めるパワー》の力ですか」
「はい。ヨーテリーの動きを封じるには、この方法しか無いって思いました。覚えたての技で
 まだ精密さに欠けるので、本当に一か八かの賭けでした」

水色の球体がヒトモシの炎の熱でポンッと音を立てて割れ、中の冷気が放出されるのを見て
リオは言葉を止める。


「ヒトモシ!《弾ける炎》!!」

ヒトモシは力を振り絞り、火花を帯びた紫色の炎をヨーテリーへと放つ。
その炎はまるで業火のように巨大で、ヨーテリーとの距離を詰める。

「……っ、ヨーテリー!避けて下さい!!」

しかしヨーテリーは、滑ってその場から動けない。
フィールドの氷が溶け始め、漸く起き上がれたと同時に、紫色の炎がヨーテリーを包み込んだ。


そして炎が消えてそこに居たのは、目を回したヨーテリーだった。

Re: 10章 リオvsコーン② ( No.22 )
日時: 2020/06/24 13:27
名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)

「ご苦労様でした、戻って下さいヨーテリー」

コーンは戦闘不能となったヨーテリーをボールに戻し、新たにボールを取り出す。

「流石ですね、僕のヨーテリーを倒すなんて。では、最後のポケモンにコーンの全てを
 賭けるとしましょう!出て来て下さい、ヒヤップ!」

コーンが最後に繰り出したのは水かけポケモンのヒヤップだ。

「ありがとう、ヒトモシ。戻って休んでて」

戦闘不能ではないが、ヨーテリーとの戦いでかなり体力を消耗したヒトモシをボールに戻す。
そしてベルトに付けてあった、もう1個のモンスターボールを手に取る。

(昔馴染の子で2ヶ月前に快く仲間になってくれて、それからずっと鍛えてたけど何故か新しい技を
全然覚えなかったのよね……お母さんとお爺ちゃんは笑うだけで何も教えてくれないし、
お姉ちゃんには「初心者なのに面倒なポケモン選んだわね」って鼻で笑われたし)

一瞬不安が過ぎるが、リオは頭を振って雑念を振り払う。

「考えても仕方ないわよね。女は度胸!私の2番手はこの子!出て来て、シビシラス!」

コーンのヒヤップに対してリオが繰り出したのは、ふわふわと宙に浮くレプトケファルスに似た
外見をしたポケモン——電気魚ポケモンのシビシラスだ。

「電気タイプですか。確かにヒヤップの方が不利ですが、だからと言って
 簡単に勝てると思わないで下さいね」
「分かってます。私はただ、全力で挑むだけです!」
「バトル、再開!」
「ヒヤップ、《奮い立てる》!」

ヒヤップは体を震わせて息を吐くと、シビシラスを睨み付ける。
その顔は《奮い立てる》の効果なのだろうか、真っ赤に染まっていて怒っている様にも見える。
異常なまでのヒヤップの豹変ぶりにリオの額から汗が垂れる。

「ヒヤップもヨーテリーと同じ技を覚えているのね……様子見しようと思ったけど作戦変更!
 シビシラス!《スパーク》よ!」

シビシラスは全身に電気を纏い、ヒヤップに突進する。

「《水鉄砲》で迎撃です!」

しかしパワーアップしたヒヤップの《水鉄砲》が、いとも容易くシビシラスを吹き飛ばす。

「シビシラス!」

そのままリオの後ろの壁に叩き付けられたシビシラスだったが、効いてないのか無表情なのか、
顔色ひとつ変えずにフィールドに戻って行く。
そんなシビシラスの姿にリオは安堵するが、すぐに表情を引き締めヒヤップに視線を移す。

「……やっぱり《奮い立てる》は厄介ね。これじゃあ無闇に近付けな、」

そこでリオはヒヤップの異変に気付いた。

ダメージを受けていないのにヒヤップの顔が歪んでいて、何かを我慢している様なのだ。
目を凝らしてヒヤップを見つめると、ヒヤップの顔の周りに一瞬電気の様な物が走り、
ヒヤップの体の動きが遅くなった。
ポケモンの状態異常の1つ、麻痺だ。

(麻痺状態になってる?でも何で?攻撃は当ててないのに)

リオは先程のヒヤップとシビシラスの行動を思い出す。

(もしかして、)


リオの中で1つの仮説が出来る——と同時に、コーンが動いた。

「ヒヤップ!最大パワーで《水鉄砲》です!」

ヒヤップは足を開き、息を大きく吸い込む。《水鉄砲》を発射する構えだ。

「シビシラス、そのままヒヤップの攻撃を待って!」

シビシラスは静かに頷き、ヒヤップの攻撃を待つ。
そんなリオとシビシラスにコーンは怪訝な顔をするが、ヒヤップのパワーが溜まった事を確認し、
口を開いた。

「発射っ!」

ヒヤップは口に含んだ大量の水をシビシラスに向けて発射する。

(来た!)


「《水鉄砲》に向かって《チャージビーム》!!」

シビシラスは体に蓄積した電気を束にして、そのまま《水鉄砲》に向けて放つ。
2つの技の威力は互角で、力を抜けば押し負ける、そんな状態だ。

「もっとパワーを溜めないと、ヒヤップに攻撃は当たりませんよ!」
「当たらなくて良いんです。電気が通りさえすれば!」
「?どういう、」

コーンが言葉の真意を問おうとした時、戦況が変化した。
技の威力は未だに互角だ。しかし、シビシラスの電撃がヒヤップの《水鉄砲》を通して、
徐々にヒヤップの口に向かって上り始めたのだ。

「これはっ……!」
「さっきのシビシラスの攻撃、技が当たってないのに何でヒヤップが痺れていたのか
 不思議だったんです。だけど、よく考えたら分かる事でした。水は電気をよく通す……
 攻撃が直接当たらなくても《水鉄砲》を通して、電撃はヒヤップに届いていたんです」

(さっきは水鉄砲ですぐに吹き飛ばされたから痺れる程度だったけど……)

リオはシビシラスを見つめる。
シビシラスは闘志に火が点いたのか(もしそうなら遅い気もするが)火事場の馬鹿力のような力を発揮し、
ヒヤップを押し始めた。

「このまま行けば、間違いなく電撃はヒヤップに到達します。今《水鉄砲》を止めたとしても、
 抑える物がなくなった《チャージビーム》が直接ヒヤップに命中します」

つまり、どちらを選択してもヒヤップは間違いなくダメージを受ける。
究極の選択にコーンは拳を固めるが、やがて


「僕は水タイプを愛し、使いこなすコーンです。最後まで水タイプの技で勝負しますよ」

覚悟を決めたように口元に笑みを浮かべた。
それにリオも楽しそうに微笑む。

「それなら私達も電気タイプの技で迎え撃つだけです。シビシラス!!」
「ヒヤップ!!」

コーンの想いが届いたのか、押され気味だったヒヤップの力が戻り、今度はシビシラスを押し始めた。
そして《水鉄砲》がシビシラスに直撃したと同時に《チャージビーム》がヒヤップに命中、
お互い壁に勢い良く叩き付けられて地面に落ちる。


「ヒヤップ!!/シビシラス!!」

コーンとリオの声が重なり合う。
トレーナーの声に、ゆっくりと起き上がったのは……


「ヒヤップ!」

シビシラスだった。
コーンはヒヤップの名前を呼ぶが、ヒヤップは地面に突っ伏したまま動かない。
審判がヒヤップの顔を覗き込む。そして、


「ヒヤップ戦闘不能!シビシラスの勝ち!よって勝者は……挑戦者リオ様です!」


審判の声がジムに響き渡った。



リオvsコーンは、リオの勝利で幕を閉じました。
昔から攻撃技である水鉄砲に電気技を当てるとこうなるんじゃないかとずっと思っていたので、
今回こういう形で書けて満足です。上手く表現出来てるか不安ですが……

次回、ジムを出て次の街に——は行かず、忘れかけてたあの人が登場します。
それでは次回もお楽しみに!

Re: 11章 アキラvsポッド ( No.23 )
日時: 2020/06/24 15:34
名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)

「勝ったの……?」

リオは実感が沸かないのか、呆然とフィールドを見つめたまま呟く。
しかし嬉しそうにリオの胸に飛び込んで来たシビシラスと、ボールから出てリオの足元で飛び跳ねる
ヒトモシを見て、徐々に顔が綻ぶ。

「勝てたんだ、私達……!ありがとうヒトモシ、シビシラス!」

ヒトモシとシビシラスを抱き締めて喜ぶリオに、コーンは静かに笑う。

「参ったな……このコーンが敗れるとは。負けて悔しい筈なのに、今はそれ以上に清々しい気分です。
 これも全力で戦ったからなのでしょうね」
「コーンさん……」
「おめでとうございます、リオさん。僕に勝った証として、このトライバッジを——」

コーンがリオにバッジを手渡そうとした時、ジムの扉が勢いよく開いた。


「待たせたなリオ!俺達が応援しに……って、もう勝負ついちまったのか!?
 バッジを持ってるって事はその人はジムリーダーなんだよな?え、つまり勝ったのか!?
 何だよ、折角俺達が全速力で修行を終えてお前の応援に駆け付けたってのに!
 俺達の熱い友情パワーを込めた応援無しで勝つなんて、凄いけど薄情な幼馴染だよお前は!
 なあ、イーブイもそう思うだろ?」
「アキラ……」

登場して早々マシンガンの様に喋りまくる幼馴染に、呆れた眼差しを向けるリオ。
しかしそれに臆するアキラではない。

「まっ、終わっちまったんなら仕方無ぇな。俺もジムに挑戦しに来たんすけど、
 今は無理っすかね?」

アキラの言葉にデントが応待する。

「いいえ、大丈夫ですよ。君は確か最初に選んだポケモンがイーブイの方でしたよね?」
「そうっすけど」
「では、僕達の中から戦いたい相手を選んで下さい。彼女と戦ったばかりの青髪の……コーンと
 戦いたい場合は、申し訳ありませんが回復が終わるまで待っていただく事になります。
 しかし、僕かポッドなら今すぐ挑戦を受けられます」

(そっか、イーブイの弱点は格闘タイプ。デントさん達のポケモンじゃ弱点はつけない。
だから挑戦者が戦う相手を選ぶのね)

一体誰と戦うのかとリオが見守る中、アキラは1歩前に出る。

「いや、俺の戦う相手は決まってます。……アンタだ!」

アキラが指差したのは——ポッドだった。

「俺の返答にノーリアクションだった上に、若干俺とキャラが被ってるのが許せねぇ。
 だからアンタと戦うぜ!」
「どんな理由よ」

リオはアキラの人選理由に呆れる。

「オレか?良いぜ!コーン達のバトル見てて、ずっと暴れたかったんだよなー!イヤッホー!
 兄弟で1番強いオレ様と遊ぼうぜ!!」

ポッドは特に気にせず笑ってボールを手に取るが、リオはポッドの言葉に首を傾げた。
何故なら、コーンもリオと戦う前に自らを「3人のトップ」と語ったからだ。
トップのコーンに対抗してポッドが同じ事を言っているのか、コーンが嘘を吐いたのか。
しかし、そんな事は良くある事だとリオは自己完結して、アキラとポッドを見る。

「男と遊ぶより女の子の方が良いけど仕方無ぇな!リオより強い俺に驚くなよ!」
「……にしても、赤の他人なのに似た者同士ね」

少しだけ失礼なアキラの言葉に苦笑する。
斯くしてアキラvsポッドのバトルが始まるのだった。



「凄いですねぇ」
「彼、今までジムで戦った経験は?」
「このジムが初めてのはず、なんですけどね……」

ポッドを対戦相手に選んだアキラは苦戦を強いられ……という事は全く無く、バトルはアキラの方が
圧倒的に有利だった。

まず最初にポッドが繰り出したのはコーンの時と同じヨーテリーで(デント曰く3人共持ってるとの事)、
アキラはイーブイを繰り出した。
リオは接戦になると予想していたのだが、イーブイはヨーテリーの攻撃を持ち前の身軽さで悉く避け、
疲れた所を《噛み付く》と《電光石火で》で倒してしまった。
しかも、イーブイはノーダメージだ。

コーンとポッドのポケモンが同じレベルなのかは不明だが、ヒトモシが苦戦したヨーテリーに
無傷で勝ったという事は、それだけイーブイのレベルが高いという事だ。
まさか「リオより強い俺」という大袈裟だと思われた台詞が真実だったとは。
リオはアキラの3倍程の時間を修行に費やして漸くコーンに辛勝しただけに、短時間で
ここまでパワーアップしたアキラ達が不思議だった。

「私がジム戦してる20分弱の間に【夢の跡地】で一体どんな鍛え方をしたのかしら?」
「あの場所で修行したなら、大体予想はつくね」
「そうですね。運が良ければ強くなれるからこそ、僕もこの街の人も【夢の跡地】について
 触れるんですよね」

コーンとデントは合点がいった様だが、リオにはさっぱり分からない。
修行中リオはトレーナーの他に野生のポケモン達とも戦った。ポケモン達と言っても出会ったのは
特徴的な黄と赤色の鮮やかな目をしたハムスターの様なポケモン——見張りポケモンのミネズミと、
紫色の体の子猫の様なポケモン——性悪ポケモンのチョロネコだけだったが。

(デントさんが運が良ければ……って言ったし、私の知らない強い子でも居たのかしら)

ポッドが高温ポケモンのバオップを繰り出して、アキラは引き続きイーブイで戦っている。
ヨーテリーと戦っていた時と同様に、素早い動きでバオップを翻弄するイーブイを見て確信する。

(このまま行くと十中八九、アキラが勝つわね)

リオはそこでアキラから視線を外し、テーブルに置いてあったカップを手に取り、紅茶を一口飲む。
アキラとポッドのジムバトルが始まる前「お前は俺達の応援無しで勝ったんだから、俺もお前の
応援無しで勝ってやるからな!あ、応援いらないって言ったからって無関心は無しな!」と、
アキラに釘を刺されたので最初は立って試合を見ていたが、デントとコーンが紅茶とお茶菓子を
用意してくれたので、ご厚意に甘えて今は椅子に座って試合を見ている。

因みにジムリーダーにも休憩時間や休日はあり、サンヨウジムの場合は午後3時になると
ジムの扉を閉めて3人で御茶会を楽しむそうだ。響きがとても優雅である。
少し前に御茶会の時刻になった為ジムの扉は閉められ、デントとコーンも今はリオと同じ席に着いて
クッキーを片手に試合を観戦している。

「そういえばリオさん、そのアクセサリー綺麗ですね。どこで買ったんですか?」

デントがリオの首から下がっている透き通った雫の様な形をした飾りを見つめる。

「あ、これですか?これは買った物じゃなくて、ポケモンの尻尾から落ちた物なんです」
「「ポケモンの尻尾から?」」

驚いた顔をするデントとコーンにリオは頷く。
リオは旅に出る前に見た事が無い馬の様な姿をしたポケモンと出会った。
そしてそのポケモンが立ち去る際に、尻尾から落ちた水色の雫の形をした毛。

「綺麗だし神秘的なんで、私とポケモン達のお守りとして肌身離さず持っていたいなって。
 それを母に話したら、丈夫な紐に通してネックレスにして首から下げてくれたんです。
 こうすれば何時までも貴女達と共に居られるし、辛くて苦しい時に勇気をくれると思うから、と」
「優しく、素敵なお母様ですね」
「はい」

柔和な眼差しを向けるデントに、リオは目尻を下げ嬉しそうに笑った。
そんなリオを微笑まし気に見つめるデントとコーンには気付かず、リオは紅茶で喉を潤すと
再びアキラの試合に目を遣った。


「イーブイ《噛み付く》!」

アキラの指示にイーブイはバオップの頭上を飛び越えて背後に回り、小さな口を大きく開けると
バオップの尻尾に噛み付いた。

『〜〜っ!!』

余程痛いのか、バオップは尻尾を激しく振ってイーブイを引き剥がそうと試みるが、
イーブイは中々離れ様としない。
そうしている間にもバオップのダメージは蓄積していき、顔には少しずつ疲労の色が見え始めた。

「くっそーッ!バオップ!《焼き尽くす》ッ!!」
「させねぇよ!そのまま上へ放り投げろ!」

イーブイは噛み付いたまま後ろ足に力を入れると、ハンマー投げのようにバオップを振り回し、
天井へと放り投げた。

為す術も無く天井に叩き付けられたバオップは最早体力の限界だろう。

「《目覚めるパワー》……は、流石にやり過ぎだな。イーブイ!《電光石火》で決めてやれ!」

イーブイは地を蹴ると、光の様な速さで落ちて来たバオップの鳩尾に全身でぶつかった。
バオップとイーブイはそのまま加速しながら落ちて行く。

「バオップ!!」
「——イーブイ」

イーブイはアキラを見て頷くと目を回しているバオップを背に乗せると、地面に直撃する前に
《目覚めるパワー》で数え切れない程の球体を出現させて、地面に向けて一気に放った。
1個の球体だけだと脆いが、沢山の球体を集結させる事でクッション代わりとなり、落下した際に
イーブイは足がずぶ濡れになってしまったが、無事にフィールドに降り立つ事が出来た。
その様子を呆然と見ていたポッドだったが、すぐに我に返りバオップに駆け寄って抱き上げる。


「バオップ戦闘不能、イーブイの勝ち!よって勝者は、挑戦者アキラ様です!」

審判の判定が終わるとアキラは罰が悪そうな顔をしながらポッドに歩み寄る。

「悪ぃ、やり過ぎちまった……バオップは大丈夫か?」
「これぐらい平気だッ!オレもバオップも強いからな!……でも、」

ポッドは言葉を切り手を前に差し出す。

「助けてくれた事には礼を言う。ありがとよ」
「男から感謝されても嬉しく無ぇんだけどな。それに助けたのは俺じゃなくてイーブイだしな」

イーブイを抱き上げて頭を撫でるアキラに、リオは誰にも気付かれない様に微笑んだ。


「それでは改めて……リオさん、アキラさん」
「ポケモンリーグの決まりだ、このバッジを受け取ってくれッ!」

コーンはリオに、ポッドはアキラにそれぞれバッジを手渡した。

「ありがとうございます!」
「これで1つ目だな!」


1つ目のバッジ——トライバッジは、2人の手の中で光り輝いていた。



はい、話からお察しのとおり、前回あとがきで書いた【忘れかけてたあの人】とはアキラの事です。
忘れていた人も居るんではないでしょうか?(自分は忘れてました←

題名の割にアキラとポッドのバトル描写が少ないのは、前回かなり長引いてしまったためです……
ご了承下さい。
因みにアキラのイーブイがここまで強くなったのは、夢の跡地に出てくるピンクの悪m……
否、ピンクの天使のお陰です。

あとがきが長くなりましたが、次回、ジム戦を終えた2人が事件に巻き込まれます。
それでは次回もお楽しみに!

Re: ポケットモンスターBW 道標の灯火 ( No.24 )
日時: 2011/10/26 23:10
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

リオ、初めてのジムに勝利してよかったですね。
それにしても水鉄砲を伝って電気を流すとは、考えましたね。
アキラもまさかイーブイ一匹でポッドのポケモンを二匹とも倒すなんて……あのピンクの悪m——ピンクの天使のお陰なんですね。
次回、どのような展開になるのか。そしてどのような事件がリオ達を待ち構えているのか、楽しみです。


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