二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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オリバト1
日時: 2010/06/24 18:05
名前: sasa (ID: cLFhTSrh)

これからオリバトを書きます。
内容はとても残酷なので注意してください。

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Re: オリバト1 ( No.1 )
日時: 2010/06/24 18:06
名前: sasa (ID: cLFhTSrh)

日吉中学校 2年A組 生徒名簿
男子
01番安藤学
02番井山健太
03番内田洋介
04番遠藤俊夫
05番沖田俊介
06番香山猛
07番木本俊太
08番久住幸助
09番近藤大輔
10番佐藤幹雄
11番清水大吾
12番鈴木悠斗
13番園崎葵
14番立花浩二
15番津田高貴
女子
01番愛野由唯
02番藍原聡音
03番相田愛
04番青井千沙
05番青木里香
06番赤井雅子
07番明石加奈
08番阿久津雪奈
09番浅井幸子
10番朝倉さくら
11番朝露霞
12番麻生真理子
13番足立梢
14番穴山琴音
15番姉崎美穂

Re: オリバト1 ( No.2 )
日時: 2010/06/24 18:16
名前: sasa (ID: cLFhTSrh)

「遠藤俊夫、らいおんハート行かせて貰います!」
あるバスの中が随分と活気的だ。
時計は、午前8時を差している。
外は、快晴。
福岡県から山口県に向かう。
この日吉中の中学2年生は修学旅行に行くことになる。
中学3年は受験の為行けない。
まあ、大体の生徒はその日吉中を嫌っているらしい。
評判が悪いからだ。不良がいるし、他校生と喧嘩で
兎に角色々と問題になっている。
「えー、それでは次はブラブラさせて!を歌うぜー!
誰か一緒に…お、そーだ、園崎、来いっ!」
「はあ?」

遠藤俊夫(男子4番)が園崎葵(男子13番)の名を呼んだ。
呼ばれた葵は呆れてものも言えなかった。

「馬路で俺歌うの?つかその歌知らねー。誰の?」
「えー有名なあのグループだよ、あおvv」

葵の疑問に答えたのが久住幸助(男子8番)だ。
彼はクラス一のお調子者で意外に女子に人気者扱いされている。
それを言ったら俊夫もそうだが、俊夫以上の人気者だ。
葵は真面目で面白くて多くの友達を持っている。
女子から話し掛けられたり「好き」と言われたりしても
適当に対応してしまうのだ。流石鈍感。


「あのグループつったら梢が好きなアーティストやろー」

そう言ったのは浅井幸子(女子9番)だ。
彼女は良く自分より弱いものは直ぐ苛めるのだ。
だが、最近、いじめをする所を見かけない。
やめたのかどうかは不明だ。
 その隣に藍原聡音(女子2番)がちょこんと座っていた。
聡音はネットをやっていると葵は聞いたことがある。

「言うけど、んなこと言ったら私も好きなんよー良いじゃんvvね、梢」

いじめっ子の幸子に言いかかって来たのは青木里香(女子5番)だ。
クラスで「優しい天使」と呼ばれる程、大人しくて優しい少女だ。
そして、「梢」とは1番右の端の窓側に座っている足立梢(女子13番)のこと。
葵は、頭から梢の資料を引っ張り出す。
確か、彼女は、創作活動をするのが好き、音楽が好き。よく本も読んでいた。
中1の4月までは友達と笑っていたのを葵は覚えている。
しかし、しばらくすると、梢の表情から笑みが消えていた。
そしてどんどん経つにつれて、いじめられるようになった。
葵は同じクラスになって梢に話し掛けたことがあるが、
その出来事はもう薄れていった。
梢に対しては、一緒に勉強する仲間としかこのときは思えなかった。
そして立花浩二(男子14番)が津田高貴(男子15番)に漫画を見せている。
だが、高貴は面白く無さそうに「つまんねー」などと言っている。
沖田俊介(男子5番)は明石加奈(女子7番)と喋っていた。
無口の俊介が加奈と喋っているのはもう日常茶飯事だと思う。
そして何やら大騒ぎしているのは香山猛(男子6番)と鈴木悠斗(男子12番)。
どうやら探し物をしているらしい。それを聞いた安藤学(男子1番)と内田洋介(男子3番)が
「探し物」を詳しく聞くために猛達のところへ近づいた。
井山健太(男子2番)は近藤大輔(男子9番)と雑談をしている。
健太の言うことが可笑しかったのか、大輔は爆笑していた。

「暇だなー」

清水大吾(男子11番)がぽつり呟くと佐藤幹雄(男子10番)が
「じゃぁ。眠っとく?」と返した。
皆、楽しそうに笑っていた。
それを木本俊太(男子7番)が静かに見守っていた。


「着いたらさーゲームやろーよ?」

相田愛(女子3番)が姉崎美穂(女子15番)に話し掛けた。 その中で穴山琴音(女子14番)が麻生真理子(女子12番)に
「馬鹿な事は止めてね」と注意をした。
愛野由唯(女子1番)が「このパン食べよう」と赤井雅子(女子6番)に
笑顔を浮かべた。
ただ、一人、阿久津雪奈(女子8番)がじっと梢を見ていた。
皆、修学旅行を楽しみにしていた。
梢や雪奈を除いては皆笑顔で一杯だった。

「それじゃ女子に歌わせます!」

俊夫が行き成りそう言うので「んな要らんわーやめてよ」と
幸子の苦痛な声を中心にわーわーとバス中に響かせた。

「あ、梢いいの書いてるーそれあたし歌っちゃうよv」

愛が梢が今まで描いていた詩入りのノートを奪い取って歌った。
梢は、無表情で愛を睨みつけるがそれでも愛は歌い続けた。


争うのは止めて 皆で歌おう
喧嘩は止めて 皆で歌おう
迷いながら 私たちは歩く
ゴールというモノを目指している
Peaceの日常 どうか壊さないで
私たちは 笑顔を絶やさない
Peaceの歌を歌おう
迷わないで 苦しまないで
喧嘩したって 何も得られないよ
何も変わりはしないよ


これは梢が去年書いていた詩だ。
だが、その詩の存在を梢は忘れていたのだ。


「どーでしたー?梢の詩良いでしょ?」と大声で
愛は気に入ったような顔を見せた。
「意外だねーv」とかけるが拍手をした。
暫くすると皆、はしゃぎ疲れたせいか、寝ていた。
梢と雪奈だけ起きて居た。
だが、二人共、そろそろ限界がきている。
薄れゆく意識の中、雪奈は聞いたのだ。

梢の声を。

「ひとりはいや」だと。


【残り:30人】

Re: オリバト1 ( No.3 )
日時: 2010/06/24 18:19
名前: sasa (ID: cLFhTSrh)

園崎葵(男子13番)は雑音や人々の声で目を覚ました。
前に未だに寝ている鈴木悠斗(男子12番)の姿がある。
後ろも見て見ると立花浩二(男子14番)の姿が見えた。

「あ、あお〜起きた?おはよー」

浩二の声を聞いて、葵は、曖昧に頷いてみせた。
そして周りを見渡すと、自分の左となりには寝ている足立梢(女子13番)の姿があり
右となりには阿久津雪奈(女子8番)の姿があった。
取り敢えず今気付いているのは
古い教室と自分達は出席番号順に座らされてるということだ。
時計を見ると夜の11時になっている。
葵はえ?というような顔をした。
——ちょっと待て、修学旅行はどうしたんだよ。
青木里香(女子5番)が起き、虚ろな目で時計を見る。
「ちょっと、もう夜の11時だよ?!皆起きてよ!!」
里香の声のおかげで、全員が起きた。
里香の隣に居る沖田俊介(男子5番)が暫くして

「…修学旅行ってどうなったんだ?」と言った。

その後、急に皆が騒ぎ始めた。


「此処、何処?」

明石加奈(女子7番)が悩み始め、加奈の後ろに居る雪奈が周りを見渡す。
加奈の前に居る赤井雅子(女子6番)は古びた黒板をぼーっと見眺めていた。
里香の声により起きた梢は皆の慌てた様子を静かに見ていた。
梢の前に居る麻生真理子(女子12番)は「何だよこれ、どーなんだよ!」と声を荒げた。

「こんな時間に先公は何しよーと?」

浅井幸子(女子9番)が首を傾げた。

「何か嫌な予感がする…」

雪奈がそうぽつりと呟いた。

「答えろよ、梢!お前馬路ありえないし!」

真理子が梢の胸倉を掴んだ。
どうやら梢は返答しなかったらしく真理子が逆上した。
梢が冷たい目で真理子を睨みつけている。
それに不愉快を感じた真理子は梢の腹を蹴った。



「わ、ひどーい」

里香がかけより、「大丈夫?」と梢に話し掛けるが返事は無い。
とりあえず、大丈夫そうなので里香は安心した。
で、其処で 香山猛(男子6番)が大声をあげた。

「拉致されたー!俺達連れ去られたんだ!」
「ありえんし。拉致されてるなら今頃保護されてんとちゃう?」

幸子が反論した。
それを合図に、みんなが騒ぎ始めた。


「でも、俺達、現に此処にいるだろ?」
「あーあー誘拐されたんなら親心配するなー」
「ちょっと、その首輪何ねん?」
「やだ!やだあ!家に帰してえっ」
「落ち着いて、千沙!」
「あーもー落ち着け、お前ら!」
「……うるさい…」
「でも此処何処なん?窓みよ思っても見れないんよー」
「そういう問題じゃないだろ?」
「まあまあみんないるなら先生もいるかも。だからまっとってー」
「は?先生もいると?此処にいるんじゃないん?」
「まーだわからんて。気長に待とうよ、流石に犯人いたらやばいと思うけど」



みんな、混乱している。
兎に角、この状況は何だ?
そう思った矢先、廊下から足音が聞こえてきた。
それは、此処に来て止んだ。

カチャっと扉が開けられ、軍服の人と、銃を抱えている迷彩服の三人が
やってきた。


嫌な予感がする。



この時葵の予感が見事に的中したのは、言うまでもない。


【残り:30人】

Re: オリバト1 ( No.4 )
日時: 2010/06/24 18:22
名前: sasa (ID: cLFhTSrh)

いきなりの登場に、30人は息を呑んだ。
その中…園崎葵(男子13番)は目を顰めた。
何だ?あいつ。田中先生は何処に行ったんだ?



「はーい、みなさん、よく眠れましたかあ?」

軍服の人が、そう言った。
相田愛(女子3番)が手を上げて席から立ち上がる。


「意味が分からん…せんせ…」
「五月蝿いよ、相田」

愛が言い終わる前に内田洋介(男子3番)がうざそうに吐き捨てた。

「何でよ?質問するの当たり前じゃない」
「黙って聞いてろ。まだ何か話あるみたいだし」
「ほらほらほら、二人共、席につきなさーい」

軍服の人が、苦笑しながらそう言った。
でも、目は、笑っていない。
何故か、恐ろしかった。
何が起きるのか、葵にはまだ分からなかったが
きっと恐ろしいことなんだろう。



「申し遅れましたあー。私は羽田と申しまーす。さて、皆さんが
此処にいるのは、……殺し合いをしてもらうためでーす!」

一瞬全員が、写真を撮る前みたいに動かなくなった。
葵は、首を傾げた。未だに信じられなかったのだ。



「皆さんはプログラムに選ばれたのでーす」



殺し合い?はい?殺 し 合 い?はあ?っ、プログラム?!
あれか?一人になるまでクラスメイト同士で殺しあうという…
すっごく嫌なやつか?何で俺達が選ばれるんだ?
俺、家族いるんだけど?すっげー多い大家族なんだぞ?

あーもうみんな大丈夫かな…。



「ちょっと、何それっ!」
「そうだよ、ふざけんなよ!」
「何のためにプログラムを開いてるんだ!」



青木里香(女子5番)。沖田俊介(男子5番)。近藤大輔(男子9番)。

それぞれが、羽田に文句を言い出した。
羽田は苦笑している。

「あのなー青木、沖田、近藤。文句を言いたいのは分かるけど選ばれたもんはしょーがないだろお?諦めろー。自分の家族とかがプログラムで死んでー政府に苛立ってるのも分かるからなー。でも知り合いと同じプログラムに選ばれたのもいいだろー?分かったらさっさと席につきなさーい」

三人は驚きの表情を見せ、お互いを見合わせた。そしてそれぞれ嫌そうに顔を歪ませ、座った。
葵は不思議に思ったがあまり過去には触れないようにしておこう。
そう決めて、足立梢(女子13番)に目を向けた。
怯えてはいないけど、動揺している。当たり前だ。修学旅行に行ったのに殺し合いだなんてふざけてると思ってそうだ。まああの梢が修学旅行に行くだなんて誰も思ってはいなかったが(何しろ浅井の仲間達にいじめられていたので、不登校になるかと誰もが思っていたが梢はそれでも毎日学校に来ていた。)

まさかこんなことになるなんて、思ってもみなかっただろう。



「えーと一応此処はー阿井島の中心にある廃校でーす。皆さんには此処を出発して、殺し合いしてもらいまーす。反則とか特にありませーん。ただちゃんと一人になるまで殺しあってもらいます!一応禁止エリアの説明もしときますねー。放送も流れます。一日4回あります。6時間ごとにお知らせしますよ?いいですかー。この島は、エリア分けしているんですけれどもー時間が経って入れなくなるエリアもありまーす。それを禁止エリアっていうんですねー。で、そこに間違って入るとー、君達の首輪が爆発しまーす、----あ、こらこら、触らない触らないー何やっても外れませんので、無理に外そうとしても爆発しますんで、そこんとこ注意して下さーい。此方で爆弾を起爆させることもできるんで、あまり逆らわないで下さいねー。さて他に質問は?」



もう誰も何も言わなかった。

羽田は、ただ笑っているばかりだった。
畜生、こいつ何も感じないんだ。



「では、そろそろ出発してもらいまーす!」

ふと、迷彩服の二人が大きめのバッグを持っていっていた。
それは順番に、一人一人の机の上にどさり、と置いていく。

「中身も教えておきましょー!皆さんに支給される荷物の中身は水、食料、コンパス、懐中電灯。あとは、支給武器でーす。銃も勿論ありますが、当たりも外れもありますんでー。外れだった人は何とかして人を殺して武器を奪うのもありでーす。ではちゃっちゃっと出発しましょーか。皆さんが出たら此処禁止エリアになりますから気をつけて下さいねー!」

そして羽田は、紙と鉛筆を配った。

「それに「私達は殺し合いをする」と三回書いて下さーい!」

鉛筆の音が聞こえる。葵は書こうと思ったがやめた。
こんなもの、書きたくない。まるでゲームに乗っているみたいだ。

ふっと梢を見た。いつもの無表情で、鉛筆を走らせている。
足立はやる気なのか?やる気じゃないのか?どっちにしたって
まだ分からない…。
じっと見ている間、梢は鉛筆を机の上に置き、視線に気付いたのか葵に目を向けた。
目があった葵は慌てて目を逸らそうとしたがやめた。
梢は溜息ついて、何か口を動かせてそれから目を逸らした。

「馬鹿。ちゃんと前見て」と言ってるような気がする。

慌てて、前の方を見た。
羽田は何か紙を持っていた。



「じゃあ、出発してもらいましょ…男子5番、沖田俊介。」

呼ばれた俊介は溜息をついてディパッグを抱えて出て行こうとするが羽田に呼び止められた。

「一回だけなら何でも言っていいですよ。どうせすぐ死ぬんですからねえ…」

そう言ってくっくっと笑う羽田に俊介は不愉快を感じたんだろう。明らかに羽田を睨んでいる。
葵は、焦りを感じた。俊介とは時々話す関係だったが、友達かどうかはまだ分からない。
けど、葵にとっては、みんな友達だ。
相手はどう思っているかはわからないけれど。


「……別に。」

「そうですかー?去年のプログラムに死んだ弟のこと言わなくていいんですか?沖田俊人君ですよね?」

それを聞いて俊介は驚きを隠せなかった。


何処まで知ってるんだ。
何で、そんなこと言うんだ。
あいつは…俊人は…。



「……遠慮しときます」



それでも俊介は断り、教室を出た。
足音が聞こえてくる。

「ではー次ー、女子5番、青木里香。」

里香は泣きそうな顔でディパッグを抱えて羽田のとこに行った。

「何でこんなのがあるの?あり得ないよ!こんなプログラムさえなければ、皆、死ななくて済んだのに!あんたなんか死ねばいいのよ、死ね!」

そう言って、里香は走って出た。



プログラム。



もう始まっているんだと、葵は実感した。



【残り:30人】

Re: オリバト1 ( No.5 )
日時: 2010/06/24 18:26
名前: sasa (ID: cLFhTSrh)

それから、次々と生徒が出て行った。

中にはみんなを信じて出て行く者、泣きながら出て行く者。
それぞれ、何かを感じていた。
多分そうだと思いたい。

園崎葵(男子13番)はそう思った。



「次、男子13番、園崎葵。」



自分の番が来た。
とりあえず立ち上がって、羽田の前で止まった。

「……とりあえず、言っておく。俺は、このゲームには乗らない」

それから、足立梢(女子13番)が不思議そうに首を傾げた。
葵はそれを見て、教室から出た。
羽田はつまらなさそうに溜息をつき、名簿に目をつける。




葵は廊下を出て、夜の森への所で足を止めた。
先ほど見た梢を思い出す。
そうだ。
待っておこう。
女一人ではやってけないだろう。
そこで、足音が聞こえた。
手に何かを持っていて(多分ボーガンだろう)
制服の下はスカート。
それが女子だと分かった。
顔を見ると、朝露霞(女子11番)だった。
確か、浅井幸子(女子9番)のグループの中の一人。
浅井がいじめをやめても、梢をいじめてた一人だ。

「朝露?こんなところでどうしたんだ?」
「決まっているだろう。梢を殺すんだ。」




「次、女子13番、足立梢。」

呼ばれた梢はだるそうに立ち上がり、ディバッグを抱えて羽田
の前で立ち止まった。

「足立さん、何か言うことはありませんか?」
「……何も…」
「本当ですかね?そうそう、去年ジェノサイダー候補がいたん
ですよ。葵輝丹君とか…」

梢は直ぐに羽田を睨んだ。




もうあんな思いしたくない。
思い出したくない。
大嫌いだ。あんな奴。
私を置いて出てったくせに。
ああ。
もう嫌だ。
忘れてしまおう。
私は私で、行く。




「……貴方、五月蝿い」

それだけ言って、梢は去っていく。
残った生徒が呆然としたのは見逃さなかった。




ディバッグを抱えて、梢は歩いていった。
無駄に長い廊下。そうか。
これが、決意を決める道だ。
だったら、どっちに乗るか決めてやろう。

殺すことは、生。

殺さないことは、死。

どっちを選ぼうか。
死んで終わるのは嫌だから…
生を選ぼうか。
廊下を出て、ドアを開けた。
夜なので暗いが、人が二人いた。
何かを言い争っているが、何だろうか。
放っておこうと思って歩こうとしたその時、誰かの声がした。




「足立!危ない!」
「…は?」
「梢、死ねええ!!」




誰かに押されて、梢は立つことができなくなり、そのまま倒れた。
その時ひゅんっと音と同時にドスっと何かが刺さる音がした。
目の前に地面に矢が刺さっているのに気付き、すぐ立ち上がった。




もし、あのまま誰かが自分を押してくれなかったら、今頃。
そう考えると恐ろしくなってきたが、すぐ打ち消した。

自分は強くありたい。そのために何かを怖がっていては駄目だ。

そう考えるようになったのはいつからだろうか。
もうそんなことを考えるのは時間かかりすぎて思い出せなくなってきたけど。

「足立、来い!」

気が付くと、誰かに手を掴まられて、走っていった。

後ろから「覚えてろよ、梢!」と声がする。

ああ、霞か。どおりで聞き覚えがあるなと思った。
明かりがある所に二人は立ち止まった。




園崎葵と、足立梢。




「はあはあ…っ大丈夫だったか?」
「……別に」
「よかった…。もしよかったらさ、俺と一緒に行動しないか?何か心配で…」
「余計なお世話。」
「え?」
「余計なお世話だって言ったのよ。私は一人で行動する。それじゃ。」
「でも危ないよ。女の子一人で…」




葵の言葉に梢は苛つき、キッと睨んだ。

「私一人でもやっていける。邪魔をしないで」

静かに低めにして言い、走った。





邪魔をしないで。
適当なことを言わないで。
もうあいつだけで充分だから。

だからもう…優しくしないで。




【残り:30人】


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