二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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オリバト1
日時: 2010/06/24 18:05
名前: sasa (ID: cLFhTSrh)

これからオリバトを書きます。
内容はとても残酷なので注意してください。

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Re: オリバト1 ( No.26 )
日時: 2010/07/09 18:53
名前: sasa (ID: q6B8cvef)

僕達は、平和に暮らしていました。
それなのに、どうしてこう…崩れてしまう?
僕だけが、生き残った。
生きる意味なんてないよ。仲間なんて失ってしまったのに



でも、携帯が鳴った。


それが、僕の人生変えるとは知らずに。

--------------------



近藤大輔(男子9番)は小学生とは思えない凛とした声に驚いた。今は小学6年生。でも思えなかった。


『……もしもし?何?無言電話?』


あとから篠塚充という去年の優勝者はだんだんきつい口調になった。慌てて答えようとするが、上手く言葉にならない。ああ、なんとか言わなければ。
言わなければ切られてしまう。それだけは絶対嫌だった。弟について何か聞けるかもしれないのに。


「あ、あの…」
『…………?誰、君。聞かない声だよね。僕のこと知ってるの?』
「あ、はい……近藤大輔…です」
『……………………』
「あの……?」


いくら年下相手とはいえ、やはり緊張してしまう。声が、大人びたなのだ。
でも何処か、幼かった。今時の小学生というのはそういうものなのかと大輔は、思ったが違うらしい。だがよく分からなかった。


『ああ……近藤…ね…』


篠塚は動揺しているのか、声が震えている。それは大輔も同じだった。何せ自分の弟を殺したかもしれない相手とこうして話しているのだから。


「祐輔を、殺した、のか?」
『…殺してない。そっか、君が祐輔のお兄さんだね…』
「……え?」
『祐輔がよく話してたから、君のこと』


聞いた瞬間、手が震えた。意外だった。自分はてっきり弟に嫌われていて存在を忘れ去られたものだと思っていた。津田高貴(男子15番)は、大輔の目を見て頷いた。真実は残酷だけれど反対でもあること、知っている。嬉しかったり、悲しかったりするんだ。知りたくない人がいれば、知りたい人もいる。また、どうでもいいと言い出す人もいる。でも、前に歩き出す人もいる。大輔にはそうなってほしい、と今願った。そして、篠塚充にも。


空がちょっと、輝いた気がした。


【残り:25人】

Re: オリバト1 ( No.27 )
日時: 2010/07/09 19:04
名前: sasa (ID: q6B8cvef)


『祐輔は人間不信だったけど、友達である僕と友達には心を開いてくれたよ。すっごく面白い奴でね、よく落ち着いているんだ。時々、僕と一緒にいる時、君の話をしてた。やっぱよく思ってなかったみたいだけど…こう言ってた。』



次の瞬間、大輔は涙が溢れて止まらなかった。



『どうしたら、兄貴のこと信じられるようになれるかな、とか…友達を信じることできたんなら家族も信じてやらないといけないんじゃないか、とか……。思い悩んでたんだ。最後の最後まで多分信じることに戸惑ったと思う。祐輔は人を信じて恐れることを怖がっているからさ。それでも、許してやってくれないかな?』



篠塚もまた涙を流していた。辛いんだろう。自分の隣にいてくれた仲間はもういないのだから。



「……その、ごめん…嫌なこと思い出させたみたいで」
『もういいよ…。忘れたくてもどうせ忘れられない、大事な…仲間との思い出も消え去ってしまうのは、嫌だから…』
「そっか…」


同じ、大事な物を失ってしまった気持ち。同じ気持ち。それは変わらなかった。仲間を、弟を、失ってしまう悲しみ。


「…ごめん…」
『いいよ。名前は…もう知ってるよね。一応初めまして。去年のプログラムの優勝者…篠塚充です。…でも、優勝者だって言いきれるほど、僕は弱い人間だから』
「…え?」
『僕は守られてばかりだった。亡くなっていく仲間の死を見届けることしかできなくて、友達と友達が殺し合わせる戦場っていうのにも足を踏んだ。ただ、見ているだけだった。……何も、できなかったんだ』
「………」


痛いほど分かる。前に聞いた。優勝者は最後には何かのせいで死んでいくのだ。篠塚もそれになりかけたという噂を聞いた。原因は精神によるショックのもので過去にあった、嫌な思い出が突然甦るのだ。優勝者はこれに悩まされているらしい。


『…君は、今何処にいるの?』
「…プログラムの…」
『ああ…。で、何処?』
「灯台の前」
『そっか…じゃあ、とりあえず入ってみて?誰かいる?』
「あ、隣に一人…でも仲間です。」
『……じゃあ、二人でしばらくそこにいて待ってみたら?誰かが来るかもね…』
「はい。あの……」
『ん?』
「………ありがとう」
『………いらないよ。ありがとうなんて』


大輔は篠塚の言葉に疑問を抱いたが、気にせず、次の質問を投げかけようとした。プログラムが終わる度に気になっていた、ことだ。


「…それと…」
『何?まだ何かあるの?』


篠塚の言葉には苦笑が込められていた。思わず大輔も笑顔になる。小学生は本当可愛いものだ。なのにプログラム対象にするなんて馬鹿げてる。政府が許せなかった。


「優勝した人は何処に行く?」
『…人それぞれだよ。僕はこっそり歌を作って町に出て歌ってる。歌は本当に、元気を与えてくれるから。プログラムの時、僕が落ち込んでた時、ある女の子が歌ってくれたんだ。その子は、友達の葬式の時に誰かが歌ってて、それが勇気になったって…。歌は、ね…本当いいよ。』
「へえ…よかったら、その子が歌ってたの、覚えてたら歌ってくれないか?」


『…いいよ』



しばらくすると聞こえた。
優しくて、悲しい歌。





泣かないで 目の前にある
大切なものは微笑んでいるだろう
行かないで そう呟いても
戻ってこないのが現実さ


涙が溢れすぎて 涙で前が見えない
けれど思い切り泣いて笑ってしまえばいい
戻ってはくれないけど 覚えていてやることが
何よりの救いさ


生きて 生きて そう言ってくれるだろう
だから もっと 生きて歩き続ける


泣かないで 目の前にある
大切なものは微笑んでいるだろう
行かないで そう呟いても
戻ってこないのが現実さ


涙を思い切り流して 枯れるまで ずっと
泣き続けることが 何よりの救いだから


歌を、歌って。
貴方の存在を忘れてしまわぬように



「……いい歌だな」
「…うん、俺もそう思う」


二人はいつの間にか聴き入ってしまった。いつか、いつかとは言えないけど、その歌をまだ覚えていたら歌えるのだろうか?そしたら、広めることができるのだろうか。そんなこともう自分達の未来には関係ないかもしれないけれども。


「なあ、いい歌だよな」
『…うん。元気になれるでしょ?』
「おう。だいじょ……」


大輔が言おうとした途端、いきなり耳を塞ぎたくなるような女子の声が響いた。高貴もこれには驚いた。



「みんな、殺し合いなんてやめてー!此処に来てー!!」



「……姉崎だ。姉崎が呼びかけをしてる」
「津田、どうする?俺行きたい」
「ダメだ。俺達も獲物にされるかもしれないんだぞ」
「でも…!」



『……行ったら?』



言い合っている最中、篠塚の凛とした声がよく響いた。



『後悔すること、分かって覚悟しているんなら別に行かなくてもいいと思う。でも、中途半端な覚悟じゃ、後悔していつまでも引きずることになるから。友達をこんな形で失いたくなかったら、行けば。どうでもいいなら行かない。要は、行くか行かないか。でも、それは自分達の生命に関わる厄介な選択だから、どうしようもないけど。僕だったら行く。自分の命を捨ててまでも行く。もう失いたくないために』



前にあったプログラムのことを思ってか、少々冷たい口調だった。
でもだからこそ見えるものがある。


「……津田…」
「…行こう」


二人は立ち上がって、走った。



【残り:25人】

Re: オリバト1 ( No.28 )
日時: 2010/07/09 19:21
名前: sasa (ID: q6B8cvef)

帰る場所なんて何処にもないの
昔はあったけれど
君がいなければ 意味なかったんだ

今 私は一人きり。


「---それでは」


放送が途切れた。足立梢(女子13番)は冷めた目で空をじっと見眺めた。

夜明けが終わったばかりの空。でも何故か色が寂しい。幻想的なことを言わせてもらうと誰かが死んでしまったからだろう。そういえばあの人が死んだ時もこんな色をしていたんだった。あの時の私も絶望を感じていた。泣き叫んだりした。どうしてあの人が死ななければならなかったんだろう。




「…こう、に…」



久しぶりに呼んでみた。やっぱり愛しく感じられる。気付いてはいたんだ。私があの人に対する愛は、家族として、だったのだと。でもあの人は危険な状況にも関わらず電話し言ってくれた。



「俺も、大好きだよ」



あの人は愛という感情を知らないはずなのに私を想ってくれていた。多分何かのきっかけで自分を知ったんだろう。それはそれでありたがった。遺体は両親生死不明、更に親戚もいないので一時的に暮らしていた私の家…足立家に返された。

私の両親はあの人を嫌っていたから私だけがもう動かないあの人を確認した。銃で撃たれた所がたくさんあった。でもあの人の顔は驚くほど穏やかだった。箱にはあの人の体と携帯。それで死ぬ前に私の携帯に電話をかけたんだ。仕方ないなんて言葉なんて最初から存在しないと思った。政府の人達を恨んだ。でも、もっと恨みたい人達もいる。


「あれー梢ー。こんなとこにいたのお?」


気配を感じなかったから思わず驚いて(顔には出さないけど)空から視線をそらした。そこには朝倉さくら(女子10番)、藍原聡音(女子2番)、朝露霞(女子11番)が立っていた。彼女達が現れたことに梢は心の中で笑みを浮かべた。ああ、そうだ。こういう時だけプログラムには感謝しないと。此処で何をやっても許されることを梢は今まで忘れていたのだった。





…復讐してあげる。



「何黙り込んでんの?梢。殺しちゃうよ?きゃはははっ」


聡音が笑った。つられてさくらも聡美も笑っている。三人の笑い声によって梢は頭が痛くなった。こいつら、今、置かれている立場を知ってるのかしら。こんな奴等なんかに、殺されたくないし、逆に殺したい。復讐を遂げるんだ。


「梢の武器何?」

霞が訊く。ディパックから適当に選んで小さな石を掴んだ。勿論いつも通りに無言で。それを見て三人は溜息をついた。


「何だ、つまんないのお」
「ねえ、梢ちゃーん?こっちには糸に縄にボーガンがあるんだよ?勝ち目ないね?」
「あははっ、殺しちゃう?何せ、銃もあるしー」
「おーい、聞こえてるう?なんとか答えてちょおだいよお」


縄、というモノに梢は反応した。最も思い出したくない、モノの一つだった。


でも、もう迷わないようにしよう。

何があっても私はこの人達に復讐をするつもりなのだから。


「……何が気に入らないの?」


ぽつりと呟いた言葉は、三人の耳にはっきり聞こえた。


「もう充分でしょう。私の存在はもう此処にない。でもだからと言って私が私でいられなくなるわけじゃない。耳もあるし、目も、口もちゃんとあるわ…。つまり、まだ完全には消えてないの。何でか分かる?----私は、貴方達にちょっと仕返ししようと思うの。私は貴方達の玩具じゃないわ。もうこれ以上傷つけても無駄よ。今度は私が貴方達を傷つけてあげる」


梢の目が見開かれ、ディパックの中からカマを取り出し、とっさに霞の肩に刃をズフズフと食い込ませた。すぐ抜いて今度は首に刃をあてる。


「いやあああ!いた…痛いいいい!」
「あら、痛かった?ごめんなさいね。でもまだ足りないの」


キッと目の前で呆然とTVを見ているかのように立ち尽くしているさくらと聡音に目を向けた。その目は、復讐に燃えている。思わず二人は後ずさりした。



これが、あの梢なのか?



「ふ、ふざけんなよ、てめえ!」
「…ふざけてるのは、どっちよ」


ふっと首にあてられた感触が消えた。と同時に右手に激痛が走る。悲鳴を上げながらもおそるおそると右手を見た。指が一本無くなっていた。空を見上げるような感じで勢いよく梢の顔を見た。恐ろしく冷酷だった。その瞬間、カマが振り下げられる。一本一本無くなっていった。


「ぎゃあああ!!痛い!痛いいい!ああああ!」
「最後の仕上げよ。感謝しなさい。どれだけ痛かったか、教えてあげたんだから」



その瞬間、霞が左手で持っていた、相田愛(女子3番)の支給武器。グロック19 9ミリを梢が奪い取る。弾を確認して霞の顔を見た。頭に銃口を向ける。さくらと聡音は止める暇もなかった。



「死ね」


梢の声と共に、霞の頭は撃ち抜かされた。べちゃっと霞の身体が倒れた嫌な音がした。梢はもう死体となった霞の身体を思い切り蹴飛ばした。怯えている二人に気付き、目を細めた。


「ずっと見てたなんて、所詮形だけの友情ね。友達なんてどうでもいいでしょ」


銃を二人の方に向け、撃った。聡音の右足に、さくらの右胸に。ゆっくりと近づいて聡音の喉元に銃を向けた。


「いや、いやだああ!殺さないで!許して!」
「今更?よく言えるね。私がどんなにやめてと言ってもやめてはくれなかったくせに、自分のことになると都合がいいのね」



また銃声が響く。聡音は喉から血を噴出し、絶命していた。すうっとさくらの方に視線を戻す。銃を静かに地面に置いた。そして、拳でさくらの頬を殴った。右足で腹部を蹴り、左手でさくらの髪を上に上げ、方向を変え、ぐいっと引っ張り地面に押し付けた。さくらの身体はその所為で地面に崩れ、その瞬間梢は頭を踏みつけた。
置いていた銃を掴み、足に数発撃ち込む。そしてとどめに額を一発撃った。


三つの死体が横たわっている中、梢は立ち上がり歩いた。



「…幸子…」


浅井幸子(女子9番)の名を呼ぶ。梢は迷いもなくまっすぐ歩く。
姉崎美穂(女子15番)の呼びかけにも全く動かずに。


幸子、何処にいるの?私は貴方を絶対に許さない。今すぐにでも殺してやりたい。


【残り:22人】
女子02番相原聡音
女子10番朝倉さくら
女子11番朝露霞 死亡。

Re: オリバト1 ( No.29 )
日時: 2010/07/10 09:16
名前: sasa (ID: q6B8cvef)

今日より明日は元気になれるように。
いつかの鳥が、また飛び立てるように。
笑っていて。
笑っていて、ほしいから。



姉崎美穂(女子15番)は出発後、すぐに丘の方まで走った。目的は決まっている。みんなを止めることだった。支給武器は拡声器。美穂にとっては当たりだった。自分の声では皆に届かないのだから。だからこそ、拡声器は便利だった。

丘まで距離があるのでかなりの体力が必要だったが、れなかはおかまいなしに走り続けた。


ただ、このふざけた殺し合いを止めたいだけ。
みんな、笑っていて、生きてほしいため。


それだけだった。


丘の方になんとか着いて、拡声器を使って呼びかけを行った。



「みんな、殺し合いなんてふざけてるよー!此処に来てー!!」



みんな、覚えていますか。


中学校に入学できた日のことを。みんなに会えて話せて楽しかったと思える日のことを。覚えている?



私は例えば、入学した時、先生から「その猫耳は?」と言われて質問に困った時、あの子が助けてくれたことが嬉しかった。勿論猫耳をつけているのには理由がある。そうお父さんとお母さんが私にくれた最初で最後のプレゼントだった。何でかわからないけど、でもそれでもいいと思ってた。



「みんなで助かる方法を考えよー!」



もしもこの中で、この30人の中で。例えば貴方がいて私がその中にいるのなら。

私はその中にいるだけでも喜ぶとしよう。



「アンタ、頭悪いね。呼びかけしたら普通死んじゃうでしょ。」


いきなり頭上から声がし、美穂は思い切り空を見上げるように顔を上げた。

銃を構えて立っていたのは、麻生真理子(女子12番)だった。真理子はどちらかと言えば不良だった。生活違反など、周りの人間を困らせることをするある意味有名な人だ。美穂はそういう真理子が苦手だったが、今はそれが倍になり、真理子がやる気になっているという恐怖感に襲われる。


どうしよう。殺される?私、死ぬの?


その後、何があったのか覚えていない。
ただ、私という存在がもういなくなっただけ。



「……間に合わなかった…」


園崎葵(男子13番)と井山健太(男子2番)は呆然と美穂の死体を見ていた。同時に、誰かが此処に来た。言うまでもない、それは近藤大輔(男子9番)、津田高貴(男子15番)だった。二人も驚いた顔で美穂の死体をじっと見眺めていた。


「…遅かったか…」

高貴がぽつりと呟くと健太は首を左右に振る。

「美穂ちゃんを殺した真理子は逃げた。今も一人になった誰かを殺そうとしているのかもしれない。一刻も早く…」

言いかけると、誰かの悲鳴が聞こえた。四人は顔を見合わせ走り出した。丘から海のほうへ向かっていくと、頭が割れた真理子の姿が見えた。

そして鉄棒を持ち、涙を流している愛野由唯(女子1番)の姿も。



「…愛野…?」


葵の声に由唯は涙を拭ったりはせず、にっこりと微笑んだ。



「みんな、こんにちは。」


【残り:20人】
女子12番麻生真理子
女子15番姉崎美穂 死亡。

中盤戦終了。

Re: オリバト1 ( No.30 )
日時: 2010/07/10 09:19
名前: sasa (ID: q6B8cvef)

中盤戦終了時点でのネタばれ名簿
男子
01番安藤学
02番井山健太
03番内田洋介
04番遠藤俊夫
05番 死亡
06番香山猛
07番木本俊太
08番久住幸助
09番近藤大輔
10番佐藤幹雄
11番清水大吾
12番 死亡
13番園崎葵
14番立花浩二
15番津田高貴
女子
01番愛野由唯
02番 死亡
03番 死亡
04番青井千沙
05番青木里香
06番赤井雅子
07番 死亡
08番阿久津雪奈
09番浅井幸子
10番 死亡
11番 死亡
12番 死亡
13番足立梢
14番 死亡
15番 死亡

【残り:20人】


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