二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

オリバト1
日時: 2010/06/24 18:05
名前: sasa (ID: cLFhTSrh)

これからオリバトを書きます。
内容はとても残酷なので注意してください。

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10



Re: オリバト1 ( No.6 )
日時: 2010/06/24 18:29
名前: sasa (ID: cLFhTSrh)


もうそろそろ来るはずだ。
あそこに人がいるはずだ。
じっと待っていよう。
もしかしたら、このゲームに乗っていないかもしれないから。


近藤大輔(男子9番)は溜息をついて座り込んだ。
ちょっと前に廃校から出て少し歩いて家を見かけた。人が住んでいた家だった。
そこでしばらく座り込んで、人が来るのを待ってようということだ。



「……祐輔…」



聞こえないように呟いた。
プログラムで死んだ、弟の名前を。



もっと話したかった。
いっぱい遊びたかった。
俺が家出をしなければ、祐輔は素直になれたんだろうか?



小学校の頃に大輔は旅行で福岡から神奈川へ遊びに行ったことがあった。
暇つぶしに実家に戻って祐輔の存在を確かめてみたかったが
いなかった。あったはずの祐輔の部屋もなかった。

祖母の話によると、大輔が家を出て少し経ったあと、父が母と祐輔に暴力をし続け、母は子供を守るため、青空学園というところに行って祐輔を送り出した。その時の祐輔の表情はもう何処か生気がなく、人間不信になってしまったらしい。

話を聞いて計介は早速青空学園という所に行った。
そこは広くて大きくて。幼稚園から高等部まである有名な学園だった。
そこに通っている生徒達はみな知識が豊富だという噂もあったとか。
けどそんなことより、大輔は祐輔に会うのが先だった。
少し時間が経ってやっと祐輔に会えた。
しかし、自分が弟の名前を呼ぶより先に、祐輔が怒りを込めた表情で言った。



『兄貴…二度と俺の前に姿を見せるな。』



あれは確かに祐輔の声で。
悪く言われるのは覚悟していたが、そこまでだったとは思わず
ショックを受けたまま、福岡に戻った。
けれど、数年後、確か去年。祐輔が5年生になった時の日。
大輔は都合があってまた神奈川に行った。
その時、祐輔と友達らしいのが、買い物してたのを見かけた。



笑っていた。

自分に向けられることのない笑顔。
見て何故か安心して通り過ぎた。
それから数日後だった。



祐輔が、プログラムで亡くなった、と伝えられたのは。



焦って神奈川に行って学園に入った。
廊下で、すれ違う度、誰かの親とか兄弟とかが泣いていて。
祐輔の遺体があるという5−Aの教室に入った。
漂う異臭。もぎ取れた死体。
あの中に祐輔もいた。

全身が銃弾を受けて。即死じゃなかったと思うと胸が痛くて。



ごめん、と謝るしかなかった。



あれから一年。
今度は自分が参加させられた。



「……可笑しいし…」



本当可笑しい。
何があっても俺はくじけないと決めたのに。
祐輔に謝っても俺の声は聞こえないし、聞いてもくれない。
嫌われた。最低な兄貴だから。
自分でも分かってる。
怖かったから遠くに行きたかった。
でもそれは兄という存在を知っていた弟にとって迷惑な行為だった。



気付いてやれなかった。



色々考えていることに気付き、立ち上がって冷蔵庫などを調べた。
本当に普通の家だ。賞味期限の心配もないし、食べれる。
政府からもらったパンとかなどは、全然美味しくないし味気がない。
ジュース等をディパッグに詰め込んだ。
これで何とか持つだろう。…いつまでとは言いたくないけど。



もしも、と考えてしまう。

プログラムで弟と同じように殺されたら、会えるのかと。

…いや、そんなことは全くない。
俺は天国を信じない。



だと、したら、祐輔は何処に行ったんだろうか。



「……誰かいるのか?」



何回聞いても聞き慣れなかった声が、家中に響いた。
驚いて周りを見回した。
そこで、目に焼きついたのは。
暗闇の背景。ぼうっと浮かぶ月。突っ立っていたのは、



津田高貴(男子15番)。



確か、内田洋介(男子3番)のグループの一人。
無口で無愛想で話し掛けたかと思えばきつい言葉を浴びて。
どちらかと言えば、暗かったし、あまり洋介達の会話にも入らなかった。

勿論津田とは親しくしてないけれど。
…やばくないですか、これ?



「つ、津田…?」
「……そんな、怯えなくてもいいけど。」
「は?」
「このゲーム乗る気なんか、ない」
「はあ?今なんて言いました?何か変な音が入って聞こえませんでしたけど?」
「だから、このゲームに、乗る気、なんて、ないっての」



……………。



…そうか。ないのか。ははは。うん。そうなんだ?
って、納得できない!



「ぬわにい?!お前、どちらかと言えば乗る側かと思ってた!何でだよ!」
「それ、はっきり言ってある意味俺に対する中傷だよな?」
「訊き返すなよ!何で乗らないんだ?自分のこと大事じゃないのかよ!」
「…大事に決まってんだろ。けど、自分の手を汚してまで乗りたくなんかない」



妙に間が入った。が、きっと高貴は高貴で悩んでいたんだろう。
大輔は改めて、百聞は一見に如かず、という意味を知った。(どうせすぐ忘れるだろうけど)

とりあえずもう少し話したいと思った。少しの間だけ。



「津田は、これからどうしたい?」
「……これから考えてる。」
「そっか…」
「お前は?お前はどうするんだ?」
「…どうするって」



ついさっきまで、自殺したら…ということを考えていた自分に腹を立てた。
後を追いかけたってきっと本人は迷惑する。
寧ろ、嫌われてるから。



「…とりあえず、生きたいなって。」



思ったことを言ってみた。



「今まで、生きるのが嫌になってたけど…今は、生きたい。」



今日より明日はいい日になるって信じてたあの頃の自分が懐かしい。
祐輔がいなくなってから、だ。多分。
自分は何か明日を待つのが苦手になってきた。
修学旅行のこともそうだったから。



「…なら、お前はまだ生きる必要があるな」



高貴が言った言葉の意味を、大輔は全く理解できなかった。
今、なんて言った?



大輔が首傾げていると、高貴はふっと微笑んだ。





「……ついてこい。話が、ある」


【残り:30人】

Re: オリバト1 ( No.7 )
日時: 2010/06/24 18:32
名前: sasa (ID: cLFhTSrh)

優しい歌を歌ってみよう。



家族のために。
友達のために。
あの子のために。


…愛する人のために。



今夜は月がよく見える。



電気つかない薄暗い家のテーブルの下に隠れている少女がいる。

相田愛(女子3番)だ。

愛は普段気が強いが、こういう状況になるとパニック状態になる。
ましてや、プログラム。----クラスメイト同士が殺し合いなので。


あたしなんか、きっと殺されるんだろうな。
みんな強いしよく色々やるから。


A組は特に色々と問題を起こす。
暴力、度の過ぎた喧嘩、いじめ、不登校、殺人未遂…。
これに頭を悩ませている教師もそう少なくはない。
愛は特に目立つ行動はあまりしない。
するのは言い争いかその程度だけ。



「……いやだなー…。誰か一緒にいて…」



赤井雅子(女子6番)とか、あまり問題を起こさない人がいい。
このクラスにいる生徒のほとんどがよく問題を起こすが…。



信じられるのか。



やめたほうがいいかも。
でも従弟が言ってたな。



「信じる心を失ったらその時点でアンタの負け」だって。



……うん。そうかもね。
もう少し頑張ってみよう。うん。



そう思って、愛は自分のクラスのことを考えた。
今んとこ楽しいけど、たまに怖い雰囲気にもなる。
凄い喧嘩とか、悪い時は窓を割って怪我させるなんてあったし。
あたしは指切っただけだったけど、酷い怪我していた人もいた。



……殺し合い、みんな乗るかもな…。

少なくとも、一部の人は。





突然、ギィとドアが開く。愛は身体を跳ねて驚いた。
すぐ隠れる所がない。



どうしよう、どうしよう…。まだ覚悟も何も決めてないのに!
頼みます、気付かないで!出てけ!



目の前に、細いとも太いとも言えない足が動く。
多分女子だろう。スカートがほんの少しだけ見えた。



「なーんだあ。誰もいないのお?つまんなあい。」


特徴ある声に愛は凍りついた。

浅井幸子(女子9番)のグループの一人。
最も人の弱みを握って痛い攻撃を御見舞する汚い行動をする人。
いじめられた人はそれで泣いたり不登校になった。
あの足立梢(女子13番)を一瞬でも怯えさせる程の悪知恵を持つ。
愛が1番苦手な人物。



朝倉さくら(女子10番)は、悪いことをするのが上手い。

ああ、神様、酷いです。
1番最初に会うのが、あの朝倉だなんて。
どうせなら、やりたいことやって自殺した方がマシだ。
朝倉なんかに殺されるのはいやだ!


「んん?何だ、これえ?」


しまった!ディバッグ、ソファーに置いたままだ!
ああ、もう、何やってるのよ、あたしは!

さくらの足が折れる。しゃがんで、誰かいるのを確認するためだろう。
もう駄目だと諦めようとする。
だが、次の一瞬それはすぐ崩れた。




「あれえ?愛?何やってたの、こんな所でえ?」
「…………っ」
「あらら、安心していいよお?私一人だと寂しくてさあ。」
「……う…ウソだ…」
「…そうだねえ。私悪いことばーっかしてたもんねえ。信じられないのとーぜんかあ…」
「…………?」


フッと哀しそうな顔を見せるさくらに愛は疑問を抱いた。
この人は何を言っているんだろうか?
悪いことばっかりしてた?何それ。


「ま、いいかあ。一緒にいようよ?」
「……ほ、ホントに信じてて、いいの?」
「信じる信じないは、愛の自由だよお?」
「………」


もしかしたら、今までのこと悔やんでいるかもしれない。

けれど、簡単には信じるわけにはいかないんだ。
このまま。このクラスを救えないまま終わるのは嫌だから。

そうだ。あたしはあたしがやるべきことを未だにしてない。
足立の笑顔を取り戻して、みんなに悪いことをするのはやめようって
言って…楽しいクラスにさせるんだ。



あたしが変えるんだ。否、変えたい。



「朝倉ってまた何か企んでいるんでしょ」
「ん?」
「あたしは、この歪んだ世界を変えようと決めたの。どーせあたしを殺そうとしたんでしょ。分かってんのよ!」
「なあに?何か愛じゃないみたいー」
「うるさいっ!本性表せっ!」
「……なんだ、分かってたんだあ。」



愛が主張をし続けると、さくらはニヤリ、と笑ってみせた。



さあ、勝つのはどっちだ。

少なくとも私かもしれないけど。

【残り:30人】

Re: オリバト1 ( No.8 )
日時: 2010/06/24 18:35
名前: sasa (ID: cLFhTSrh)

鈴木悠斗(男子12番)は廃校から出てから1度も歩くのをやめない。
ずっと立ち止まっていては、敵に見つかり闘わなければならないのだ。
そのためだった。なるべく人気のない所に立ち止まって潜めようとした。


なんだよ、なんだよ、なんだよ!
俺、何もしてないじゃないか!
なのに、プログラム?こんなのってないじゃないか!


それからずっと歩きっぱなしだ。
そう気付いた瞬間、右手で抱えているディパックに目をつけた。
思い出した。まだ確認していない。武器は。自分の武器は。

近くに古く建てられた家があったので、とりあえずそこで悠斗は休むことにした。
もう一つ。ディパックに何が入っているのかちゃんと確認するため。


入っていたものは、水が入ったペットホドル2本、食料のパン(どうせ政府がケチって買った美味しくないパンだろうけど)コンパス、懐中電灯。地図。それから…。

何か棒のようなものに触れた。
冷たくて、氷のような…。

---そう、鉄棒だった。


少し軽いなと悠斗は思ったが、自分の武器が鉄棒だと分かり、ホッとした。

当たりもあれば、外れもある。
運のない自分だからどうせ外れかと思ってはいたが、そうでもないようだ。

でも、使い道が分からない。当たり武器と言っていいか…。
悠斗にとっては微妙に思えてきた。自分の顔が引き攣ってくのが分かる。



「使えるかどうかは微妙だな…」


そう呟いた。誰にも聞こえないように。
聞こえない、と思っていたが、外から足音が聞こえた。止まった。
驚いて、窓の方へ振り返る。僅かだが、髪が見えた。
誰かがいる。そして、この家に入ろうとしている。
それだけは、ごめんだ。
誰かなんて、分からないし、その上、このありえない殺し合いに
乗っているか、それとも、否か、なんて全く分からない。



「-----っ!」



声が漏れそうになり、とっさに手で口を抑えた。
此処で、声を出してみろ。相手に見つかって殺されてしまうだけだ。
悠斗の頭の中で、誰かが囁いた。



---でも、どうしたら?



隠れるところなんて何処にもないし、どっちにしろ見つかる。
畜生、どうしたらいい?どうしたら俺はこの危険を乗り越えることができる?

答えはすぐに出てきた。頭の中で。



「…誰だよ!おい、今からお前に訊く!答えろ!」



大声で相手に聞こえるよう叫んだ。
何も言わないがきっとそこにいるのだろう。
此処を去った足音は聞こえなかった。だからまだいる。
悠斗が思っているだけというのもあるが。



「……、お前は、男か?女か?」
「-----女よ」



その声で悠斗はすぐに愛野由唯(女子1番)だということが分かった。

由唯なら問題はないだろう。



「お前、もしかして愛野か?」
「ええ、そうよ。貴方は鈴木君?」
「そうだ。」
「でもよく分かったわね。私だって」



それはそうだ。由唯の声は他の女子の声より凛としていて綺麗だと男子の間で評判(といえるか分からない)だ。
そういえば阿久津雪奈(女子8番)の声はどうなんだろうか。
あまり喋らない人だからよく分からない。そんなの今ではどうでもいいこと。
とりあえず、悠斗はドアノブを握って開けた。
濃い灰色の長髪にいつもの可愛らしい笑顔。確かに由唯だった。

危険はないと納得したら安心できた。



「はあ…てっきり敵かと思ったよ。」
「ごめんなさい。何も言わずに入ろうとしたからだね。」
「いや、いいよ…。そうだ、愛野の武器はなんだ?」
「武器?…ああ…」



何かを思い出したように(忘れていたのか?)由唯はディパックを置き、開けて手を中に入れ探った。
多少時間はかかったが、ゆっくりと黒く四角いモノを取り出した。

スタンガンだった。



「あら、これ…」
「スタンガンだな。当たってるんじゃない?」
「そうね…鈴木君の武器は何だったの?」
「俺は、鉄棒。ほら、これ。どう使おうか考えてたとこなんだ。」
「よかった。ちょっとだけ私にそれ持たせて」
「え?」
「持ってみたいの。ね、いいでしょ、鈴木君。」



女の子が鉄棒を持ってみたいだなんてどうかしてる。
だが、頭の中で浮かんだ疑問は由唯の笑顔によって消えうせる。
そうだ。もしかしたら好奇心が動いたかもしれない。
すぐ由唯に渡した。



「…あ、でもちょっと重いね。うわ…」



妙なところで子供だな。
色々いじったり、遊んだりしている由唯に悠斗は苦笑いした。



「あ、俺ちょっと外行ってくる」



明るめの口調で由唯を心配させないように笑って歩いた。
ドアノブに手をかけようとした瞬間、ガン、という音と共に
頭に激痛が走った。

「うが、あああ!!」
今のは誰だ?誰が俺を殴った?

まさか----…。

おそるおそると振り返る。
そこには血が付いた鉄棒を右手で持ち、相変わらず微笑んで立っている由唯の姿があった。



「てめえ…最初からそのつもりで…」
「ええ。だから言ったのよ。よかった、って。」
「ふざけんじゃねえよ…この野郎…!」
「うん。お喋りはやめてそろそろ行こうかな」



笑みを浮かべられたまま由唯の握っている鉄棒が頭に振り下ろされる時思った。

俺は騙されていたのか。そういや洋介が言ってたな。

人は見かけによらずなんとかかんやら。ああ、お前の言うとおりだった。

…畜生、頭が逃げろと言ってんのに、体が動かない。
なんか、ぼうっとするな。ああ…いやだよ、俺まだ死にたくない。

まだ、死にたくは……--------。



ゴツッと音と同時に悠斗の思考もそこで途切れた。
由唯は気絶かと思い、何回か頭を殴り続ける。
漸く形が変形したのを確認し止めた。
…人って案外大したものじゃないのね…。
すうっと涙を流し、哀しそうな顔で悠斗を見つめた。


「…バイバイ、鈴木君。」


【残り:29人】
男子12番鈴木悠斗 死亡。

Re: オリバト1 ( No.9 )
日時: 2010/06/24 18:49
名前: sasa (ID: cLFhTSrh)

人はみんな臆病者だから怖がっているのかな?
でもきっとやる気なんかじゃないよね
あの子も生きててくれればいいな…。


安藤学(男子1番)は廃校を出て、ある人を探そうと思い、人がいそうな所を探した。

とりあえず此処は阿井島だと羽田は言っていたな。
聞いたことないけど、一応建物と家と…自動販売機(金持ってきてないから使えないだろうけど)あと何だっけな。

よく見える丘に一つ建てられている…灯台みたいなもの。
んー…地図を見るのは得意じゃないから…。ああ、駄目だ。


首輪爆発決定だね、これは。


学は苦笑しながら歩く。そのとき、ある人を思い出した。

そうだ。探さなければ。守らなければ。そのために
死んではいけない。さっきそう思ったのに。
なんで諦めの悪い…。最低だね。



だけどみんな頑張ろうとしている。
生きようとしているんだ。多分。
だったら、殺しちゃいけないんだよ。
人殺しとは言いたくないけど何か哀しいでしょ。

人が人の命を奪うって。

何でそんなことするか分からないな。
普通ちょっと頭を捻れば考えられることなのに。
うちの学校は普通じゃないからな…。


……足立さん。

足立さん、いじめられて、死ななければいいな。
朝露さんとか、殺すって目が死んでたし…(言い過ぎか)

…どうしよう。探さなければ。
でも何処に?何処を探したら足立さんに会える?


「あ、安藤?」


女子の声に学は驚いて後ろを振り返る。

浅井幸子(女子9番)だった。目をきょとんとさせて学をじろじろと見つめている。

それにしても、何で、浅井さんは気配を消すことができたんだろうか?

分からない。あまりよくない噂ばかり聞くし、何とかしないと…。


「なあ、安藤、梢探しとおっちゃろ?」
「……え?」
「もし安藤が良かったらでいいけん…、うちも一緒に探していい?」
「……!な、だ……っ」


それでは梢が何されるか分からない、と学は慌てて否定しようとしたところを幸子が止めて、そして、言った。


「謝り、たい…から…」


思わず学はハッと幸子を見た。涙声になっていて、両手で顔を覆っている。
立っていたが、今になって崩れ落ち、泣いていた。

どうすればいいか分からなかった。此処で立っていることしかできない。

そういえば、浅井さんがイジメや嫌がらせをするところは最近になって見てない。

何で?そう簡単にやめられるはずがない。

そう言う僕も見て見ぬフリしてしまったけれど。

止める方法がなかったから。たったそれだけの理由で、足立さんをもっと傷つけてしまった。
直接顔を合わせ、話すことはなかったけど、何だか罪悪感に襲われた。

僕は、僕は…。

…やるしかない。



「…今更、謝るんだ。誰かが「止めろ」と言っても浅井さんは止めなかったでしょ。「梢を死にたいと思わせるまで続けてやる」とか言って酷かったよね。嫌がらせも酷くなったり、殴る、蹴るも…前より凄かったし。今更謝ったって足立さんは許してくれないと思うよ。そして、僕も許さない。こんなこと言うのもあれだけど、許さないよ。足立さんを、何だと思っていたんだよ。」
「……ごめ…ん…。」
「謝る相手が違う」
「……っ、安藤は、梢が、好き、なんっちゃろ?」


幸子の発言に、学は頬を紅潮させた。
今、浅井さんなんて言った?
何で、分かったんだ?


「…何で分かったのか気になるやろ?」
「………」
「…安藤…ずっ…と、梢を、見てた…けん…。勘やけど…好きなんかいなって…。…なあ、こんな所じゃ、何やし…どっかの家を探して…それから話すけ………梢が、笑わんようになった理由…」


真実を知っている幸子がそう言いかけた途端、学に嫌な予感が走った。


【残り:29人】

Re: オリバト1 ( No.10 )
日時: 2010/06/24 19:07
名前: sasa (ID: cLFhTSrh)

鋭いなあ、愛は。
でもお…分かってしまったからには殺すしかないでしょ?
ま、そこんとこ、恨まないでねえ。

負けるのは、愛、あんたなんだからさあ。



朝倉さくら(女子10番)はニヤリと笑ってみせ、スカートのポケットから糸を取り出した。
武器はこれだったんだよねえ。最初ぶーぶー言ったけどお…。
ま、いいんじゃなあい?


苦笑いして、目の前にいる相田愛(女子3番)をじっと見つめた。
糸を持っていることに気付いたのか愛は、ディパックを抱え、さくらに投げつけた。

さくらは一瞬、目を丸くしたが、ニヤリと笑った。


無駄あー。私に投げつけて、その隙に逃げようとするんでしょお?
っとにバーレバレ。
獲物を逃がすわけなーいでしょお。


直ぐにドアを開けて足跡を見て追いかける。
追いつくのに簡単だった。愛の運動能力では、中の下だったのだから。
うーん。私は特に走ることとかどうでもいいんだけどお。
何でか、人よりちょっと早いのよねえ。
ま、親の遺伝っつーかよくわかんないけど助かったあ。


笑いがこみ上げてくる。すぐに追いつき、愛の服を掴んだ。
悲鳴を上げられて、ムッとし、糸を首に絡める。
それでも愛は息苦しそうに声をかすめながらもさくらに訊いた。



「朝倉、足立に、何を…したのよ?何であんなに…足立のこといじめるの?可笑しいよ…!可笑しすぎる…!いじめなんか…して、楽しいの?!」
「いじめえ?へえー、関係ないじゃあん、愛にはあ。ね、もう鬼ごっこは終わりにしようよお?どうせ愛は死ぬんだからさあ。」
「いや、よ…。あたしは、ま、だ、此処で死ぬわけには…いかないのよ!朝倉みたいな…奴がいる限り…死ぬわけには…!」
「ふーん……悪いけどねえ。殺しちゃうよ♪あはははっ」


笑って握っている糸に力を込める。
細いので、自分の手に血が出たが構わなかった。
愛が死ぬなら何でもよかったのだ。



「う…ぐ…っさ…い…てえ……っ」


いや。いやだ。

こんな最低な奴に殺されるの?
投げたの…失敗だったか。
そうだ、まだちゃんと武器確認してなかった…け?
でもどうでもいいや。死んじゃう。息ができないよ…。



愛はそのまま目の前が赤くなってくのを感じ、崩れ落ちた。

しゅるっと赤い血を垂らした糸がさくらの手に戻される。


終わった、と安心すると自分を呼ぶ声が聞こえた。


「さくらー!いたいたっ、探してたんだよー!」


藍原聡音(女子2番)だった。隣に朝露霞(女子11番)もいる。
多分、聡音が見つけて、自分や、浅井幸子(女子9番)、麻生真理子(女子12番)を探していたんだろう。まあ、あと二人探さなきゃならないけどねえ。


「ねえねえ、さくら。いいのが入ってたよ。縄。」
「こっちはボーガン。アンタは…糸だね。」
「へえー…。糸に縄にボーガン…最高だねえ。じゃ、真理子と幸子探そうかあっ♪」


三人の少女は妖しく笑った。

死体がそこに転がっているなど気にせずに。


私達は、人を傷つけるために生まれてきたんです。


【残り28人】
女子3番相田愛 死亡。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10



この掲示板は過去ログ化されています。