二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- オリバト1
- 日時: 2010/06/24 18:05
- 名前: sasa (ID: cLFhTSrh)
これからオリバトを書きます。
内容はとても残酷なので注意してください。
- Re: オリバト1 ( No.31 )
- 日時: 2010/07/10 09:36
- 名前: sasa (ID: q6B8cvef)
花は枯れるまで咲き続けるけど
枯れたらもう元に戻らない
いつかはまた咲かせるけど
同じようにはなれない
同じなんだ。全部、全部。
「今の……愛野か?」
園崎葵(男子13番)はゆっくりと問い掛けた。目の前にいる愛野由唯(女子1番)は微笑みを絶やさずにこくんと頷いた。何故か恐怖を覚えた。
「ええ。あと二人も殺したわ。鈴木君と穴山さん」
もういない二人の名前を出されて美織は驚いた。悠斗をあんなふうにしたのは愛野だったのか?穴山も…演奏中に殺したのか?なんで…なんで…あの二人を、愛野は…。
「一つ、聞いていいかな、愛野さん」
今まで聞いていた近藤大輔(男子9番)がゆっくりと口を開いた。津田高貴(男子15番)と井山健太(男子2番)も真剣に由唯を見ていた。由唯は溜息をついてまた微笑む。
「何?」
「お前には、大切な人や、家族が死んでも…悲しまないのか?」
大輔は苦痛そうに顔を歪めた。葵はああ、と少し思い返した。あの出発前に見せた顔と同じだ。
家族を、失ったのか?それとも……。
…求めないでおこう。
此処にいる今、訊く余裕などないのだから。
由唯は首を傾げて戻しにっこりと微笑った。
「ええ。悲しまないわよ」
由唯の言葉に誰もが絶句した。何故だ?どうしてそう思えるんだ。人が死んでも何も思わないというのか?この子は…。
「何でだよ!お前の父さんとか母さんがそれ聞いたら悲しむぞ?!」
大輔が目を見開いて叫んだ次の瞬間、由唯は不愉快そうな表情を見せた。そして言った。
「二度とそういう人達を挙げないことね。ムカツク」
「……え…」
「私を産んだくせに私を愛さない親は、お父さんお母さんじゃないもの。もう二度と呼びたくないわ。そうよ。いつもいっつも邪魔者扱いだったのよ、あの人達は!どうしてあの人達が、私のお父さんお母さんなのよ!いつも言われたわ、お前なんか産まなきゃよかったって!お前なんかいなくなればいいって!煙草を体中に擦りつけられたり首を締められたり…下手すれば、私は今頃此処にはいないの。食べ物も与えてくれなかったの。ある日、言ったわ。どうして私を愛してくれないんだって。でも答えてくれなかったのよ。所詮、私は、この世にいなくていい人間なの!分かるわけないでしょ、親に愛されている貴方達には!!」
壊れたように叫び続ける由唯に大輔は何も言えなかった。何故か弟とたぶって見えたのだ。その言葉は、弟に言われているようなものだった。
まるで、「兄貴は愛されているから、分かるわけない」って今叱られているように。
ゆっくりと鉄棒を持ち上げ、大輔に向かって由唯は叫ぶ。
「もう愛されないなんて嫌よ!私だって人間なの!」
【残り:20人】
- Re: オリバト1 ( No.32 )
- 日時: 2010/07/10 09:51
- 名前: sasa (ID: q6B8cvef)
次の瞬間、大輔の肩に衝撃が走り、転げた。痛みに顔を歪ませた大輔は素早く由唯の方をみた。今のは誰が助けてくれたんだ?目を細めてみると香山猛(男子6番)だった。内田洋介(男子3番)の仲間でもある。高貴は目を見開いた。まさか仲間が出てくるなんて思っても見なかったんだろう。葵と健太は呆然と立ちつくしていた。猛の頭から血が流れ始めた。由唯は呆然として猛を見つめている。
「香山君……?」
「猛…」
「高貴…早く逃げて…!そっちも…葵も、井山も、大輔も逃げろ!俺、抑えてるから…早く!」
「ば、馬鹿野郎…!俺、お前とあまり話さなかったんだぞ?なのに、何で助けようとするんだ、馬鹿野郎!!」
高貴が慌てて止めようとすると、猛はニッと笑い、高貴の頭をぺしっと叩く。
「馬鹿野郎言い過ぎなんだよ、高貴は。それにあんま話さなくても俺達、仲間だぞ?悠斗にもよろしく言っとくからさ。高貴はさ、洋介とか幹雄とか浩二によろしく言っといてよ。俺は多分もう、ダメ」
「なっ、たけ……」
「また、会おうぜ。そしたらまたいっぱい話せるんだからさ。俺のことはいいから走れ!みんなー!」
弾かれたように何もかもが動いた。葵は高貴を引きずり、健太は涙を堪えながらも、大輔を抱えて走った。いつの間にか、ぼうっとしていた由唯は猛の服を掴んだ。何もかも崩れたのだ。あんなに沢山いたのに見逃すなんて、とんでもないことなのだった。獲物を捕らえるはずだった。
「貴方の、せいよ。何で逃すの?」
「あいつらは、大島さんには殺させないよ。いや、愛野さんは多分高貴達を殺せないんじゃないんかな?」
「…何で?」
「愛野さんってさ、ほら。大輔、いただろ?弟も知ってるよね。祐輔君。覚えてるだろ?愛野さん優しいからわざわざ神奈川に行って祐輔君と仲良くして遊んでたもんね。大輔はそのこと知らないだろうけど」
「それに何の関係が…」
由唯の言葉を遮り、猛は言った。
「祐輔君、プログラムで死んだよ」
【残り:20人】
- Re: オリバト1 ( No.33 )
- 日時: 2010/07/10 09:55
- 名前: sasa (ID: q6B8cvef)
「祐輔君、プログラムで死んだよ」
その瞬間、由唯は脱力感に襲われた。ニュースなど、テレビには興味がないから見なかったけど、まさか、あの子がプログラムで?
「……ウソ…だって、まだあの子は小学…」
「中学生三年生対象って愛野さんは思い込んでたみたいだけどね。小学生から高校生までになってたんだ。現に俺達二年生なのに此処にいるしね」
猛の服を掴んだ手を離し、へたり込んだ。まだ認めたくなかった。
「……あの子が…祐輔君が…嘘でしょう?じゃあ、仲がよかった、あの子達みんな…みんな、みんな死んだっていうの?!どうして?!あの子達はまた絶望に襲われたというの?!仲間がいて、遊んでて、幸せそうだったのに…。どうしてあの子達が傷つかなきゃならないの?あの子達は…幼い頃に大きな傷を抱えて…もう充分苦しんだはずなのに…」
「愛野さんは…その子達が大好きなんだね」
涙を流す由唯に猛は微笑んだ。そして微笑んだ顔を曇らせた。
「優勝者はね、篠塚充君。ニュースで見たけど、泣いてたよ」
篠塚充という名前を聞いて由唯は、ハッと猛の顔を見た。泣いてた?どうして?
生き残れたというのに?人間、生を掴んだら幸せなんでしょう?!充君、なんで?
「今、愛野さんが言ってた、その子達の名前をね、言ってて、ごめんなさいって。助けてあげられなくてごめん。僕だけが生きててごめんって。ねえ、大島さん。質問していい?」
生きるためだけに、走り続けるってのはそれは間違いだった。
なら、何かのために、足掻いたっていいじゃないか。
俺の、ようにね。
「何で人を殺した時に泣くの?」
由唯は思い返してみた。鈴木悠斗(男子12番)を殺した後、泣いていた。穴山琴音(女子14番)を殺した後も泣いていた。さっきも…麻生真理子(女子12番)を殺した後も、泣いた。そういえばいつも決まって泣いてた。どうして?私には悲しむ必要など、ないでしょう?
「それってさ、愛野さんはさ、誰かの代わりに泣いてるんじゃないの?」
「……誰かの、代わり…に…?」
「そう。愛野さんは優しいって俺知ってるからさ。もしかしたらとは思ってたけど。死んだ人は、もう泣けないから、愛野さんが代わりに泣くんじゃないの?優しい死神みたいだよね。っとにまるで俺が読んでる小説の死神みたいだよ」
「……うるさい……!」
我慢できない由唯は鉄棒を持っている腕に力を込めた。やっぱり香山君は危ない。
殺さなきゃ。殺さなければ、次の獲物を狩れない。
「じゃ、これだけ言わせて。俺ね、愛野さんのこと好きなんだ」
嘘ばっかりだ。私は愛されないんだ。愛されないから、私はここにいるんだ。
「だからさ、愛野さん。俺を殺したら、泣いて。俺の気持ち、受け止めて」
ニッと微笑んだ猛はその後、由唯の身体をゆっくりと抱きしめた。小さく悲鳴を上げ、由唯はすぐ猛の頭を何度も鉄棒で殴る。血が大量に流れたので鉄棒を止めた。でもそれでも猛はまだ死ななかった。
「愛野、さ…ん。ごめん、ね…?…好き、だから。愛…してる、か、ら…」
その言葉を合図に猛の身体は崩れ落ちた。頭から血を流して地面を真っ赤に染めた。由唯は呆然としながらも、猛のディパックを開けて探った。すると何か暖かいものに触れ、それを取り出した。クマのぬいぐるみだった。これが武器だなんて相当戦えないんだろうなと由唯は少し笑った。すると放送が流れた。もう12時なんだとぼんやり思って聴いた。猛の名前も読みあげられ、由唯は自分の胸がとても苦しいように感じた。
彼は、自分を好きでいてくれた。
愛してくれた。
その、愛してくれる人を私は、殺してしまったんだ。
愛してるから、と確かに言ってくれた。
何で信じることもせずに殺してしまったんだろう。
やっと、分かった。
痛いほどに。
ようやく猛の気持ちを理解することが出来て、泣いた。小さい子供のように。
「うわああっあああああ…いやあああああ!!」
涙は頬を伝い、ぬいぐるみに落ちた。少し濡れて乾く。そしてまた一滴と落ちて濡れた。雨が降った気がした。まるで追い討ちをかけるように由唯の身体を叩き濡らした。
【残り:19人】
男子06番香山猛 死亡。
- Re: オリバト1 ( No.34 )
- 日時: 2010/07/10 10:06
- 名前: sasa (ID: q6B8cvef)
友達が、友達を殺すなんてどうしようもないことですか?
僕は、いけないと思っています。
神様、もしも、願い事が一つだけ叶うんなら、
友達をどうにかしてください。
ナイフの刃が鋭く光った。
「第二回目の放送でーす。では早速死亡者を挙げます。男子は一人だけです。6番、香山猛君。では女子でーす。2番、藍原聡音さん、7番、明石加奈さん、10番朝倉さくらさん、11番、朝露霞さん、12番、麻生真理子さん、15番、姉崎美穂さん…以上です。この調子だと今日中に終わりそうですねー。嬉しいです。では禁止エリアをお知らせします…」
内田洋介(男子3番)は目を見開いて空を見上げた。鈴木悠斗(男子12番)のこともそうだったけれど、猛が死ぬなんてありえなかった。何故こう立て続けに会えずに死んでしまうんだ?俺、このまま仲間に会えずに死んでしまうのか?そんなのは、絶対嫌だ。せめて誰か、まともな奴がいてくれれば…俺の前にいてくれればいいのに。
ぎゅっと下唇を噛み締めた。もう誰かが死ぬ放送なんて聴きたくなかった。もう殺し合わせるとかそういうのは正直やめてほしい。ありえないことは嫌いなんだよ、俺は。
絶対これは夢だ。夢じゃなかったら何だっていうんだよ!
洋介はこれまでにいくつものの絶望を乗り越えてきた。例えば親が離婚すると言い出した時。
当時洋介はまだ幼い小学生だったので原因はよくわからなくて焦ったが、洋介が「嫌だ、みんな一緒がいい」と泣いたら親は離婚せずに済んだのだった。あの日思った。自分が頑張れば運命は変わるんだって。
とりあえず、洋介は適当に見つけた古い、建物に入った。するとすぐ人が見えた。それは誰かというとすぐ分かった。分かったからこそ、走り出した。何故なら、いつも一緒にいて笑顔を絶やさずふざけあって笑い合った、仲間だったので。床に倒れていた立花浩二(男子14番)の身体を抱えた。背中に大きな傷があった。まさか、誰かにやられたのか?
「浩二…?」
彼の名を呼んだ。が、全く答えてはくれなかった。眠るように硬く目が閉じられていて、あちこちには、擦り傷で。どうやら背中の大きな傷が致命傷だったらしい。もう起き上がることは絶対ないのだろう。
「起きろよ…冗談なんだろう?こう……」
その瞬間、左肩に激痛が入った。慌てて右手で肩を抱える。血が出ていた。誰だ?まだ近くにいたのか?
「し…んで…死んでよ…」
その声ですぐわかった。同時に酷く絶望感に襲われる。佐藤幹雄(男子10番)が折りたたみナイフを持って自分に向けていたので。
「幹雄…俺だ、よ…。洋介だって…なあ?」
「いやだ…死にたくない…!怖い。殺す。刺す。滅茶苦茶に。殺す。襲う。死ぬ。血。真っ赤…」
ブツブツと呪文のように呟いている幹雄を見て洋介は絶句した。認めたくなかった。けれど、認めなげればならなかった。そうつまり、狂っているのだ。目の前の友達は。
歌わなければならなかった。
絶望という名の歌を。
でも絶対歌いたくない。
変えるんだ。自分が、全て。
「なあ、誰もお前を襲ったりしないって…今度はさ、お前を救う番なんだからさ…それ、下げろよ…な?」
洋介が言いかけた瞬間、幹雄は顔をあげた。そして、幹雄の腹部に何かが刺さった。それは矢だった。
刺されたと同時に、幹雄の身体が地面に当たった。目の前で死んだ仲間に対しての悲しみも絶望も充分味わうこともなく、洋介もまた、心臓を矢で刺され、自分で確認する暇もなく、倒れた。同時にひょっこりとドアから出てきた青井千沙(女子4番)が現れる。もう動かない二人の身体を見た。
「ふふふっ…あは…あははははっ!」
彼女の笑い声が響く。その瞬間、にんまりと口先に三日月の形を作った。
「殺しちゃえ。自分と違う人間なんか殺しちゃえ。殺せ。ナイフで、矢で、銃で、何もかも殺しちゃえ。あはは…殺せ。撃て。刺せ。焼き尽くせ。あははははっ」
放送からほんの10分後の出来事だった。
【残り:16人】
男子03番内田洋介
男子10番佐藤幹雄
男子14番立花浩二 死亡。
- Re: オリバト1 ( No.35 )
- 日時: 2010/07/10 10:22
- 名前: sasa (ID: q6B8cvef)
いつの日にか まぶたを閉じればいつだって
仲間がいて笑ってくれた
それだけでどれほど強くなれたんだろう?
今この状況だからこそ 全てを感じたい
そしてみんなを守りたい。
全てが真っ赤に染まるのなら それらから守ろうと誓うよ
この空に向かって。
「此処までくればもう、大丈夫か……?」
園崎葵(男子13番)はもう追いかけてこないだろう愛野由唯(女子1番)の姿が見えないことに安心し、ひとまずみんなに「休憩しよう」と声かけた。井山健太(男子2番)は、気まずい表情で近藤大輔(男子9番)と津田高貴(男子15番)をじっと見眺めていた。先程の事と、今あった放送のことだろう。三人共、落ち込んでいた。葵もまた、さっきあった出来事が今のように思えた。由唯のあの叫びがどうしても頭の中に残っていて、離れることはできなかった。
分かるわけないでしょ、親に愛されている貴方達には。
「……俺、弟と妹、たくさんいるだろ?」
不意に健太達に話しかけた。誰もが俯いていた顔を上げ、葵の顔をじっと見る。大輔は、ああ、と空を見てまた視線を葵に戻した。そしてちょっと苦笑いを入れて言う。
「いたな、いた。俺前に風邪で寝込んでたお前に連絡ノート渡そうとお前ん家に行ったらすげーいっぱいいたよな。くく…つーかな、ぶっちゃけ本音言うといすぎ。ぱっと見て10人以上はいたよ。あの時目が点になった。で、その兄弟達がどーしたよ」
そんな大勢の兄弟がいることを知らなかった健太と高貴が吃驚して葵を見た。そんなにいそうって感じじゃない、と目が訴えている。葵も思わずつられて笑った。
「アイツらは本当アホで馬鹿で悪戯ばかりしてて、俺を困らせてた。兄貴って面じゃねーなって俺落ち込んでてさ。ふと、思ったんだよ。腹違いの兄弟っていつかは似るもんだなーって…」
その場にいた三人が固まる。----腹違いってどういうことだ?
「腹違いだったら、多いのも納得できるだろ?…俺がいる家は、施設みたいなもんだよ。中途半端に育てて、いらなくなったら俺んとこにポイッとな…。まあ、生活とかそういうのは、ほら、俺んとこ金持ちだし…大丈夫なんだけど流石に限界なんだ。でも限界でもそれを乗り越えるのが、兄貴ってもんだろうなーと思って頑張ろうって決めたときに、これだよ。俺が死んだら、間違いなく帷織とか亜織は責任感を負うんだ。兄貴が死んだのはもしかしたら僕達の所為かもしれないって、な…。優しすぎるんだよ。あいつらのために俺は此処で死ぬわけにはいかないなって思った…。お前らはどうする?」
しん…と沈黙が漂った。静かだとその分、緊張も高くなる。と、その数秒後、沈黙を破ったのは大輔だった。
「俺の弟はプログラムで死んだ」
たった一言で葵は何故か気が重くなった。健太も高貴も俯いている。
「弟は、多分今でも俺を恨んでるだろうけど…これ」
ズボンのポケットから携帯を取り出した。画面には見覚えのある名前が記憶されていた。
葵はそれが優勝者達だと気付くまで時間がかかった。
「これさ、優勝者に電話して、作戦とか雑談とか話し合いできるってわけなんだよ。それで俺…篠塚充とやらに、電話した。そいつは弟と同じクラスだったからな。そこで初めて弟を知った気がする。最後の最後まで俺を信じていいかどうか迷ってたらしい。嬉しかった。でもそこで弟を知っても、もう遅い。もう…弟は此処にはいないんだ。だから俺生きていいか、どうか迷うよ…」
「…そっか」
生きることを諦めたら、もう光は見えないのだろうか?葵は改めてそう想った。
昔、何処かで聞いたことがある。闇があってこそ光がある、と。
もう一度、大輔は口を開いた。
「それとな…さっきの愛野の言ったこと…まるで弟に言われてるみたいだった」
続いて高貴もようやく口を開いた。
「この世にいなくていい人間だ、とか、親に愛されている人に分かるわけない、とかそこらへんか?」
「……ああ。俺が家出した後、父さんは母さんと弟に暴力を振るったからな…。母さんは多分弟を守るために学生寮がある学校に入学させたんだろうけど、弟にとっては邪魔者に思われてるって感じたんだろうな…。人を信じるって難しいことなんだよな、うん…」
葵は思った。このくだらないゲームに乗った人には、理由があるんだってことを。現に由唯もそうだった。愛されないから、此処にいなくていい人間だから、人を殺すことを決めたんだろう。健太が顔をあげた。
「なあ、みんなで由唯ちゃんを助けることはできないか?あと、由唯ちゃんだけじゃなくて、梢ちゃんもさ。女の子って繊細なんだよ。男の俺達が何とかしてやるべきなんじゃない?」
それに対して高貴が「それは無理だ」と否定した。
「愛野はもう狂っているんだ。多分説得しても無駄なんだよ。愛されていない。必要ない人間が此処にいていいわけないって自分で決め付けてるからな。それと足立は既にやる気になっている可能性が高い」
「そんな、足立は……!」
「園崎。お前放送聴いたか?足立をいじめていた、朝倉、藍原、朝露が既に死んでいる。足立が復讐のためにあの三人を殺したってことは考えられないか?ほら、考えられるだろう?普段酷い目に散々遭っているからな。だが、足立は悪くない。正当防衛みたいなものだ。朝倉達は足立に殺されて当然だろう」
高貴の言葉に大輔が叫んだ。
「でも!それでも人を殺すのはいけないだろう!みんな、みんな生きているんだぞ?!もう会えないし、話せないんだ!それを、お前は!!」
「まあ、待て」
高貴が制した。まだ何かあるらしい。
「俺は愛野や足立を救うことには賛成する。だが他の人がそのせいで死んでも文句は言えない。つまり、お前らには覚悟が必要だ。クラスメイトが死んでも、二人を助ける、ということを変えないということを」
三人が顔を見合わせた。葵と健太はしばらく考え込んでいたが二人共頷いた。賛成する気らしい。それを見た大輔は溜息をついた。
「……分かったよ…。でも誰も死なせないからな」
幕がもうすぐ閉じる気がした。
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