二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re:  404章 熱風 ( No.540 )
日時: 2012/11/30 01:51
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: xy6oYM/9)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「戻れ、バンギラス」
 ギーマはメタゲラスの自由落下からのメガホーンで戦闘不能となったバンギラスをボールに戻し、次なるボールを構えた。
「ギャンブルオン、ドンカラス」
 ギーマの四番手は、大ボスポケモンのドンカラス。全体的に黒い烏のような姿で、頭部はテンガロンハットに酷似しており、胸部から首回りにかけて、白い毛で覆われている。
 ドンカラスはボールから出ると、鋭い眼光で満身創痍のメタゲラスを睨みつけた。
「悪いが、このドンカラスは少々性格が悪くてね。自分より格下と思った相手や、疲弊した相手を見ると、つい好戦的になる」
 そしてギーマも、それを誇張するように挑発する。
「でも、メタゲラスが疲弊しているのは確かだしな……」
 メタゲラスはバンギラスとのバトルで、かなりダメージを受けている。ドンカラスとまともに戦えるだけの体力が残っているとは思えない。
「でも、やるしかない。メタゲラス、ストーンエッジ!」
「ドンカラス、追い風」
 ドンカラスはメタゲラスが尖った岩を連射するのに合わせて、自身の周囲に気流を発生させる。
 追い風はしばらくの間、ポケモンの素早さを上げる技。ドンカラスはその風に乗り、軽々と無数の岩をかわしていく。
「熱風」
 そして大きく翼を羽ばたかせ、灼熱の風を吹き荒ぶ。
「大地の怒りだ!」
 炎タイプの熱風を喰らえば、体力が残りわずかのメタゲラスは確実に倒れる。なので大地を鳴動させ、大量の土砂を噴出し、壁として熱風を防ぐ。
「もう一発ストーンエッジ!」
「当たらんよ。かわして悪の波動」
 ドンカラスは襲い掛かる尖った岩を回避しつつ、悪意に満ちた波動を連続して放つ。波動は岩を砕きながら進んでいき、メタゲラスに直撃する。
「メタゲラス!」
 ついにメタゲラスは陥落する。
 イリスはメタゲラスをボールに戻し、最後のボールを手に取った。
「最後は頼んだ、ディザソル!」
 イリスの最後のポケモンはディザソル。飛行タイプのリーテイルの方がドンカラスとは戦いやすいが、熱風を使用するため、一撃でも喰らうと致命傷になる。まだギーマはポケモンを所持しているので、ここではあまりダメージを受けたくない。そういう観点から、攻撃力と機動力を併せ持つディザソルという選択だ。
「ディザソル、神速!」
 ディザソルは神がかった速度でドンカラスに接近。鋭い一撃を繰り出す。
「続けて辻斬り!」
 そしてそのまま上から下に向けて鎌を振るい、ドンカラスを切り裂く。
「ドンカラス、ドリル嘴だ」
 しかしドンカラスも黙ってはいない。体を高速回転させ、追い風に乗ったスピードでディザソルへと突貫する。
「ディザソル、怒りの炎だ!」
 ディザソルは燃えたぎる火炎を放ち、ドンカラスを止めようとするが、ドンカラスの回転速度が少し落ちた程度で、止まることなくディザソルを掠めていく。
「熱風」
 ドンカラスは方向転換し、熱風で追撃をかける。
「神速で突っ切れ!」
 どうやらギーマは倒すよりもダメージを与えることを重視しているようで、熱風は広範囲に放たれている。なので怒りの炎で相殺するのは難しいと考え、ディザソルは神速で無理やり突っ切ることにした。
 それが功を奏したのか、ディザソルはほぼノーダメージでドンカラスの位置まで接近し、攻撃に成功。ついでに辻斬りで追い打ちをかける。
「くっ……飛べ、ドンカラス」
 ドンカラスは一旦距離を取ろうと、翼を羽ばたかせるが、
「逃がすか! 怒りの炎!」
 ドンカラスを包囲するように放たれた炎により、その退避は失敗に終わる。
「メガホーン!」
 さらに角を突き上げて、ドンカラスの身体を抉るような一撃を見舞う。
「追い風が切れてきたか……ドンカラス、熱風」
 ドンカラスはメガホーンを喰らって出来た距離から、灼熱の風を放ってディザソルを牽制。そこから翼を羽ばたかせ、
「追い風」
 自身の素早さを上昇させる気流を発生させる。
「また素早さが……神速!」
 ディザソルは超高速でドンカラスを攻撃。
 神速は追い風の影響を受けていても必ず先制可能な技。ドンカラスに対してディザソルという選択は正解だったと言えよう。しかし、
「ドンカラス、熱風」
 ドンカラスは翼でディザソルを振り払い、熱風を放つ。
「くっ……」
 ドンカラスの熱風が、思いのほか厄介だった。攻撃力が高く、範囲も広い。攻撃の予備動作も短いので、咄嗟の対応が難しい。
「ドリル嘴」
 ドンカラスは高速回転し、ディザソルへと突っ込む。
「ディザソル、かわして怒りの——」
「悪の波動だ」
 ディザソルが炎を発生させるより早く、途中で回転を中止したドンカラスは黒い波動を連続で放ち、ディザソルの態勢を崩す。
「ドリル嘴」
「くぅ……メガホーン!」
 また回転しての突貫。態勢を崩されたディザソルは対応が遅れたものの、角の間に挟みギリギリ攻撃を受け止めた。
 しかしドンカラスはすぐに角の束縛から脱する。
「ディザソル、メガホーン!」
「残念だったな、熱風」
 ディザソルが動くよりも速く、ドンカラスは灼熱の風を吹き荒ぶ。
 この瞬間、イリスは戦慄する。この近距離で熱風を喰らえば、戦闘不能にはならなくとも、大ダメージになるだろう。今までディザソルの受け身のお陰でダメージはそれほど溜まっていないが、ここで体力を削られると、ギーマの最後のポケモンとのバトルが苦しくなる。
 今からでも神速に切り替えるか、それが可能なのか、イリスは一瞬の間に逡巡するが、結果としてそれは杞憂だった。

 何故なら、ディザソルは荒々しい水流をその身に纏っていたから。

「これは……」
「ディザソル……!?」
 ディザソルはその水流で熱風を完全に無効化し、そのままドンカラスに突撃する。
「スプラッシュ……この局面で新しい技を覚えたか。追い風」
 ドンカラスは素早さが下がってきたところを追い風で補強しようとするが、少し遅かった。
「神速!」
 追い風の発動は間に合ったものの、ディザソルの神がかった速度による追撃で、ついにドンカラスは地へと落ちた。



イリス対ギーマその六です。なんだかギーマ戦だけやたら長くなってしまいましたが、おそらく次で最後になるでしょう。イリスの残る手持ちは手負いのディザソルのみ。対するギーマは切り札が残っています。正直かなり分が悪いですね。まあそこをなんとかするのが主人公クオリティです。次回はイリス対ギーマその七。お楽しみに。

Re: 405章 処刑 ( No.541 )
日時: 2012/12/01 05:35
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: xy6oYM/9)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「ギャンブルオン、キリキザン」
 ドンカラスを戻したギーマの最後のポケモンは、刀刃ポケモン、キリキザン。
 赤と黒を基調とした全身スーツの風貌に、プロテクター状のパーツ。胴体、頭部、両腕には、煌めく銀の刃がその姿を晒している。
「さて、私は信条として、どんな不利な状況であろうと、大敗の可能性があろうと、勝負自体を自分から降りることはしないと誓っているが……英雄とやら、君はどうだ?」
「激しく同意しますよ。ディザソル、神速!」
 ギーマの話をすぐに打ち切り、ディザソルは超高速でキリキザンに突撃する。
「続けてスプラッシュ!」
 神速は鋼タイプのキリキザンには効果いまひとつ。大したダメージにはならない。なのでそのまま、飛沫を上げる水の一撃で追撃。キリキザンを吹っ飛ばした。
「畳み掛けるよ、辻斬り!」
 ディザソルの猛攻は止まらず、鋭い鎌を向け、キリキザンに突っ込んでいく。
 しかしここで、四天王は動き出した。

「キリキザン、ハサミギロチン」

 突如、キリキザンの両腕の刃が巨大化し、断頭台のような禍々しい形状となる。
 そしてその刃を交差させるように振り、ディザソルを迎撃する——
「ディザソル、跳べ!」
 が、寸でのところでディザソルは、尻尾をばねのようにして空中へと逃げ、その一撃を回避。キリキザンから距離を取った。
「ハサミギロチン……まさか、一撃必殺の技が出るなんて……」
 ハサミギロチンは、当たれば一撃で戦闘不能となる技。代わりに命中率が低いものの、残り一体しかポケモンがいないイリスにとって、この技の存在は大きなプレッシャーとなる。これも、ギーマの作戦の一つなのだろうか。
「くっ、でも今は、攻めるしかない。ディザソル、スプラッシュ!」
 ディザソルは全身に水流を纏い、水飛沫を上げながらキリキザンに突っ込んでいく。
「鉄壁」
 しかしキリキザンは、全身を鋼鉄のように硬化させ、その一撃を受け切る。一撃目は吹っ飛んだが、今回は身じろき一つしない。
「ハサミギロチンだ」
 そして二回目のハサミギロチン。処刑人の剣の如き刃が、ディザソルの体毛を掠める。
「っ……距離を取って怒りの炎!」
「そう簡単には逃がさないさ。キリキザン、電磁波」
 ディザソルが距離を取ろうとするところに、キリキザンは微弱な電磁波を放ち、麻痺状態にする。そのためディザソルは、そこで動きが止まってしまった。
「ハサミギロチン」
「やばい……避けろディザソル!」
 ディザソルは後方に大きく跳び、キリキザンが振るう巨大な刃を回避した。何度避けても、内心穏やかでない行動だ。
 ギーマは今までのやり取りを見て、小さく頷いた。
「ふむ……成程な。追い風の補助と電磁波があっても、ディザソルの身のこなしを完全に殺すことはできないか。ならば、キリキザン、辻斬り」
 刃を構えてキリキザンは駆け出す。やはりハサミギロチンだけでなく、普通の攻撃技も持っていたようだ。
「受け止めろ、辻斬り!」
 しかし普通の打ち合いなら、ディザソルにも分がある。キリキザンの刃を漆黒の鎌で受け止め、激しく競り合う。
 が、しかし、
「足もとがお留守だぞ。ハサミギロチン」
 キリキザンは空いている方の刃を巨大化させ、ディザソルの足もとを払うように、腕を振る。
 当たれば一撃必殺。跳んで避けたいところだが、キリキザンにより上から辻斬りで押さえつけられている状態では、それも叶わない。どうやらディザソルが受け止めることをも見越しての辻斬りだったようだ。
 絶体絶命の状況で、イリスがとった指示は——
「っ——怒りの炎!」
 刹那、ディザソルの周囲から燃えたぎる炎が出現する。炎は勢いよくキリキザン——そしてディザソルを包み込み、その姿を隠す。
「吹き飛ばせ! スプラッシュ!」
 そして次の瞬間、盛大な水飛沫とともに、消化されつつある炎の中からキリキザンが弾き飛ばされた。キリキザンは地面に強く打ちつけられるものの、受け身を取ってなんとか立ち上がる。
「……なかなか、危険な賭けだったな。まさか怒りの炎で自分もろとも炎で包むとは」
「そうでもしなきゃ、逃げられそうになかったものですからね。勝負に無茶はつきものです」
「だが、少し無茶をしすぎたんじゃないのか?」
 ギーマはディザソルを見ながらそう言う。
 確かに、ディザソルの身体はあちこちが焼け焦げていて、今までの蓄積ダメージも合わせ、かなり疲弊している。対するキリキザンは、こちらも大きなダメージを受けていることには変わりないが、鉄壁のお陰か、体力的にはまだ余裕であるような表情を見せている。
「加えて、そのディザソルは麻痺状態。キリキザンは、追い風の補助が継続中だ。もう既にかなり苦しい状況じゃないのか?」
 それはギーマの言うとおりだ。疲労困憊のディザソルを倒すなら、もうハサミギロチンに頼らずとも、辻斬りだけで勝てる。しかしディザソルは、鉄壁を持つキリキザンに有効打を与えいくい。勝機がほとんど見えない危機だ。しかし、
「勝てる要素がないとか、勝ち目がないとか、そんなことが勝負を投げ出す理由にはなりませんよ。ギーマさん、あなたも最初に言っていたじゃないですか。そんなことを」
「……素晴らしい。その姿勢は称賛に値する。では、それに敬意を表して、一撃で決めるとしよう。キリキザン、ハサミギロチン」
 キリキザンは死刑執行を宣告するかのように両腕を構え、刃を巨大化させる。そして追い風を受け、一瞬にしてディザソルへと接近し、刃を振るった。
 当たれば終わり。避けても、麻痺状態のディザソルだ。二撃目に対応できるかどうか怪しいところ。だからイリスは、回避することを選ばなかった。彼が指示したのは、

「——辻斬り」

 だった。
 だが、ただの辻斬りではない。まず、キリキザンの腕の間をすり抜けるようにして跳び、頭上でバク宙をするかのように一回転。その回転力を利用して、尻尾の刃で腕を弾いた。
「っ……!」
 ここで初めて、ギーマは驚愕の表情を浮かべる。
 キリキザンの弾かれた腕は、前方に向けられたもの。刈るような動きの刃は、弾かれ、その切っ先を持ち主へと向けることとなった。

 つまり、弾かれたハサミギロチンは、キリキザンを自身を切り裂いたのだ。

 一撃必殺の刃によって、キリキザンは地に伏した。
「……congratulation」
 最後にギーマは、そう呟いた。



さて、ついにギーマ戦が終了し、残る四天王は一人となりました。最終的にギーマは、自分のハサミギロチンにやられる結果となりましたが、つたわったでしょうか?正直不安です。では次回は最後の四天王、カトレア戦へと移行します。お楽しみに。

Re: 406章 イリスvsカトレア ( No.542 )
日時: 2012/12/05 17:22
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 イリスはいまだかつて味わったことのないような無重力感に身を任せながら、気を落ち着かせていた。
 ギーマとの戦いを終えたイリスが向かったのは、ポケモンリーグ最後の塔、通称『夢現の寝台』。
 宇宙空間のような暗闇と、星のように輝く無数の小さな光に囲まれた、幻想的な場所だ。雰囲気を出すためか、何かしらの力で果てが分からないようにもなっている。
 入って早々、どうやって上に上がったものかと考えていたイリスだが、一歩踏み出せば念動力のような力がイリスを宙に浮かせ、四天王が待つ塔の最上階へと導いてくれる。
 しばし経つこと数分、イリスは塔の最上階へと到着した。そして、そこで待っていたものは——
「……花?」
 だった。
 巨大な白薔薇が、最上階の間に鎮座している。
「……?」
 しばらくその白薔薇を眺めていたイリスだが、その花弁が少しずつ動いていることに気付く。どうやら開くようだ。
 ゆっくりと開花していく白薔薇の中から現れたのは、大人びた、それでいてダウナーな雰囲気を醸し出す一人の少女。金髪のロングヘアーはウェーブがかっており、服装は白と薄いピンクを基調としていて、寝間着のようにも見える。
 少女は眠たげに眼をしょぼしょぼさせながら、こちらへと歩み寄ってくる。
「花開き、現れるのはアタクシ……」
 ゆっくりとした歩調で、一歩ずつこちらに近づいていき、一定の距離になると、止まった。
「……あら、貴方は——」
「……初めまして、カトレアさん」
 恐らくイリスと歳はそう変わらないだろうが、一応敬語を使うイリス。その口調には、警戒するような空気があった。
 実際イリスは、以前カトレアのことをミキから聞いていた。 そしてそれは、カトレアも同じだったようだ。
「初めまして。……そう、貴方があの子の師……どうりで、大きな力を感じるわけ……ふぁ」
 話の途中に、カトレアは大きく欠伸をする。まさか本当に、今の今まで寝ていたのだろうか。
「失礼……あの子の師だというのなら、相当な強者よね。なら、早く始めましょう……言葉を並べていても、何も始まらない」
「それに関しては同感ですが、あんまり期待し過ぎないでくださいよ。僕だって、ミキちゃんとそこまで実力差があるわけじゃないんですから」
 言いながらイリスはボールを手に取り、臨戦態勢に入る。
「それじゃあ始めましょう。優雅で華麗な、夢のようなひと時を——」



「楽しい時間を頂戴……メタグロス」
 カトレアの一番手は、鉄足ポケモンのメタグロスだった。
「いきなり強力なポケモンが来たな……」
 メタグロスなら7Pのフレイも使っていたが、硬い防御で守り、高い攻撃力で攻める厄介なポケモンだった。
「まずは様子見……出て来い、デスカーン!」
 イリスの一番手はデスカーン。メタゲラスでもよかったが、とりあえず様子を見るということで、防御の高いデスカーンを選択。
「まずはこれだ。シャドーボール!」
 デスカーンは四本の手からそれぞれ一発ずつ、合計四発の影の球を発射する。
 メタグロスは身じろき一つせず、それらの球を全て受け切った。効果は薄いようだ。
「メタグロス、メタルブラスト」
 メタグロスは口腔に鋼のエネルギーを集中させ、狙いを定めて前方へと発射する。デスカーンではまず避けられない速度で、影のような体に直撃した。。
「ぐっ、攻撃型か……だったら鬼火だ!」
「スプラッシュ」
 デスカーンは青白く燃える火の球を放ち、メタグロスを火傷させようとするが、メタグロスは全身に水流を纏って突進してきたため、鬼火は全て消え、デスカーンも攻撃を受けてしまった。
「続けて思念の頭突き」
 さらに思念を集めた強烈な頭突きが叩き込まれる。防御力が高いとはいえ、流石にこの連続攻撃は効く。
「反撃だ、鬼火!」
 頭突きを繰り出して隙が生じたところに、デスカーンの鬼火が入り込む。
 これでメタグロスは火傷状態。高い攻撃力も、多少は抑えられる。
「全く問題ありませんわ。メタグロス、スプラッシュ」
 ポケモンが火傷状態にされたというのに、カトレアは全く動じず次の指示を出す。
 最初は全身に纏っていた水流を、今度は腕だけに集中させて纏わせ、メタグロスはデスカーンを殴りつける。デスカーンも大きく吹っ飛ばされた。
「追撃、メタルブラスト」
「サイコキネシスだ!」
 メタグロスが強力な鋼エネルギーを撃つのに合わせ、デスカーンも念動力で対抗するが、すぐに破られてしまい、威力が多少減衰しただけで直撃を受けてしまう。
「流石にこのままじゃ……デスカーン、一旦戻れ!」
 出て来たばかりだが、イリスはデスカーンを引っ込める。メタグロスは火傷状態でも攻撃が衰えないし、なによりこちらには決定打がない。シャドーボールがほとんど効かず、サイコキネシスも破られてしまったなら、デスカーンにできることはもうほとんどない。
「次はセオリー通り、弱点を攻める。メタゲラス!」
 イリスの二番手はメタゲラス。大地の怒りで、メタグロスの弱点を突けるが、向こうもスプラッシュがあるので油断はできない。それに、
「メタグロス、地震」
 メタグロスは鋼鉄の足で地面を踏み揺らし、強力な衝撃波を放つ。
「やっぱり地震も持ってるか! 大地の怒り!」
 メタゲラスも地面を踏み鳴らし、土砂を巻き上げる勢いで衝撃波を発生させ、地震を相殺する。
「さて、初っ端から随分な強敵だな……行くぞ、メタゲラス!」
 イリスの声と共にメタゲラスは咆哮し、強大な敵へと角を構える。



さて、なんだか締めが微妙ですが、いつものことなので気にしません。今回は四天王第四戦、カトレア戦です。カトレアの一番手は強力なメタグロス、しかも水と地面技持ちですから、メタゲラスも苦戦するでしょう。というわけで次回はカトレア戦その二。たぶんこの戦いは、わりと早く終わります。というか終わらせたい……次回もお楽しみに。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再開します—— ( No.543 )
日時: 2012/12/05 20:06
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: 1ZQMbD0m)

流石はギャンブラーギーマの切り札、とんだギャンブル型ですね。
バトルタワーで角ドリルを連発してくるサイドンを思い出しましたよ。
戦略性の高いバトルは面白いですね、僕は戦略を駆使したバトルやトリッキーなバトルの描写は苦手ですがw
四天王の最後に控えるのはカトレアですね。メタグロスは出てくるとは思っていましたが、先鋒からいきなりとは思いませんでした。
何はともあれ、イリス君には是非四天王、チャンピオンも撃破してもらいたいですね。



ギーマのキリキザン、特性頑丈で高防御力の鋼タイプ(ハガネール等)に詰みません?

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再開します—— ( No.544 )
日時: 2012/12/07 22:27
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

パーセンターさん

 はい、ギーマらしく、エースは運の要素が絡む肩にしてみました。最初は普通の物理アタッカーにしようとしたんですけど、それだと面白くないかと思いまして。
 僕は最近PWTのタイプエキスパートで、カスミの最後のポケモンであるラプラスを、耐久型のミロカロスで追い詰めてたら、もう少しで倒せそうな時に絶対零度で逆転された苦い思い出があります……
 僕も戦略性の高いバトルは苦手、といいますか、ネタがすぐに尽きるので、大体普通のバトルを書いてますね。
 四天王のバトルの順番は、前作の執筆の順番に準じています。カトレアのエースは僕の中ではあいつに固定なので、メタグロスをどこに出そうかと迷い、先鋒になりました。最近、なんだか意外性を狙ってばっかな気がします。

 そうですね、これでハガネールにとおせんぼうとかされた日には、キリキザン涙目です。でもまあ、そこはギーマなんで、状況をよく見て出したりするでしょう。たぶん、読みにおいてギーマの右に出る者はおりません。


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