二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 曇天 子供の頃の腐れ縁と女の縁は切っても切れない。up
- 日時: 2009/09/13 00:01
- 名前: 護空 (ID: bG4Eh4U7)
こんにちは。あらためまして護空です。
pcのバグか何かで、俺の書いた小説が消えてしましました。(多分)
かなりの大ダメージです。
そして、途中から書くと初めて見た人が訳わかんなくなると思うので、初めから新たに銀魂ワールドを作り上げていきたいと思います。
目次
>>16 1.結局、春一番てどれですか。
>>20 2.たまの怪我だもの、チヤホヤされたい。
>>24 3.知らない人についていったら駄目。
>>30 4.そう、それはまるで大空の様な。
>>34 5.いい女ってのは見た目じゃねェ。ココだ、ココ。
>>43 6.死んだ人も出てきます。ご了承下さい。
>>49 7.同じネタは、忘れた頃にやってくる。
>>56 8.警察だって、マナーを通せ。マナーを。
>>63 9.味見は三回まで、味わかんなくなるから。
>>71 10.学校じゃ給食の時間はスターウォーズ
>>76 11.寝る子は育つ。育つッたら育つ。
>>85 12.風見鶏はまわる。
>>87 13.風見鶏の向く方。
>>90 14.風見鶏が鳴いた。
>>92 15.幼馴染みって突然気になっちゃう時が来る。
>>104 16.昔は良かったって、昔は昔。
>>106 17.二度寝は命取り。
>>110 18.覚えてろとは言わない、忘れるな。
>>115 19.空白。
>>120 20.男も女も、背中で語れ。
>>128 21.誕生日は酒を呑む為の口実である。
>>132 22.笑顔の裏には何かある。
>>138 23.最近自分の記憶力が信じられない。
>>141 24.冷やし中華始めました。みたいなノリはやばい。
>>143 25.綺麗な女も、良い男も、絶対訳アリ。
>>148 26.誤解が誤解を生んで、結局最初の話ってなんだっけ。
>>152 27.子供の頃の腐れ縁と女の縁は切っても切れない。
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- Re: 曇天 寝る子は育つ。育つッたら育つ。up ( No.85 )
- 日時: 2008/10/31 20:34
- 名前: 護空 (ID: bG4Eh4U7)
朝。
開け放された窓から差し込む、青い光に気が付いた奴が一人。うっすらと瞼を開けた。なにかが乗っているかの様に重たい頭を動かして、開ききらないでいる瞼をこすった。
丹波だった。
丹波は昨日の夜の記憶が定かでないことに気が付き、また酒を飲んでしまったのだと確信した。それと同時に、目が覚めた。
鼻をかすめる様に、かすかな煙草の匂いを感じた。視線を上に上げると、黒い前髪が風に揺らいでいる。
「土方」
頭の中で名前だけが浮かんだ。丹波は起こさない様にそっと膝の上から降りると、三歩ほど後ろに下がって、自分の犠牲者の様子を眺めた。
胡座をかいて、その身体の全体重を背中の壁に預けて眠りこけている。右手には、火をつけ忘れた煙草が転がっていて、その傍らにはとっくりと猪口と、煙草の吸い殻が盛られた灰皿が無造作においてある。
”鬼の副長”などと、良く言った者ものだ。と、丹波は思わず小さく吹き出した。
「どこが鬼だか。」
丹波は視線を土方から、部屋全体にゆっくりと流した。
どの顔も、幸せそうに眠っている。
丹波はその中の、白銀の髪をフワフワと遊ばせ、よだれの筋を頬に描いた銀時を見つける。側により、片膝をついて右手を伸ばす。その白い髪をくしゃくしゃとなでると、赤い顔でかすかに微笑んで、奴は寝返りを打った。
”白夜叉”ねぇ。
「夜叉なんて似合わねぇツラしやがって」
瓜二つじゃねぇか。
小声で吐き捨てる様に言うと、悲しそうに笑った。
畳に転がっていた木刀を掴み、丹波は立ち上がる。
子供達の寝顔を覗く母親の様に部屋を見渡した後、着物の襟と帯をなおして、青い髪の侍はその部屋から姿を消した。
12
風見鶏はまわる。
am6:57
こんな早い時間に起きることは確実にない、銀時が目を覚ます。頬には畳の跡が赤く付き、頬にはよだれの通った道が白く残っていた。白銀の髪に見事な寝癖を蓄えたまま、ゆっくりと体を起こし、奴は頭を掻いた。
頭が重い。
二日酔いだとすぐわかった。それのせいでなかなか頭が正常に働こうとしない。ちゃぶ台の上のペットボトルに気が付いた銀時は、重たい腰を持ち上げてそれを手に取った。
何も考えずにキャップをはずし、中身を口に運ぶ。ただの水の様だ。
それを一気に飲み終えると、はぁと息を付いた。
ようやく働きだした脳みそを使って、銀時は辺りを見渡してみる。どうやら、どんちゃん騒ぎした挙げ句、そのまま眠ってしまったらしい。酒臭くはあったが、悪くない光景だった。
ふと、丹波のことが頭をよぎり、視線を昨夜土方が座っていた辺りへ移動させる。
「桜…?」
たしかに土方の上で寝ていたはずの丹波が、忽然と姿を消していた。そこにいるのは、ただ一人。煙草を吸いハグって寝ている様にしか見えないマヨラー、ただ一人だけであった。
銀時は四つん這いになって、赤ん坊の様にハイハイをして土方へ近寄ると、声をかけた。
「おいコラ、多串くーん」
応答がない。
それを確認すると、次は身体を揺らしてみた。首が人形の様に傾くだけで、やはり応答がない。銀時は少し、苛立ってきた。
「おいッ、土方起きろコノヤロー」
声をかけるという動作と、大きく体を揺らすという動作の同時進行を経て、土方はようやくうっすらと目を開けた。
「あ?今日は日曜だろーが。ったく、母ちゃんはおっちょこちょいだなァ」
「おっちょこちょいはテメーだァァァァァ!!おまッ、そんなキャラじゃねーだろォォォォォォォ」
つい、土方の胸ぐらを掴んで大声を出してしまった。
周りの隊士達もその声に気が付いて、寝ぼけ眼で起き出してきた。
「旦那ァ、どうしたんです」
「銀さんがこんな時間に起きるなんて、槍降りますよ」
新八は眼鏡をかけながらヒドいことをさらりと言ってのけた。神楽はまだ鼻提灯を膨らませたり、ひっこませたりしている。
「桜がいねーんだよ。マヨラーの上で寝てた桜がいねーの」
丹波の名前が出てきた途端だった。土方の手がぴくりと脈を打ち、目を見開いた鬼の副長が跳ね起きた。
「うぎゃぁ!何だよ、脅かすなコノヤロー!!」
銀時は息なりのことに反射的に後ろへ飛び退いた。近藤達も目を丸くしている。
土方はしばらく自分の手のひらを見つめた後、銀時に聞いた。
「丹波は」
「今その話をしてたんだよ。馬鹿かテメー」
「いや、テメーが馬鹿だろ」
「いや、お前の方が…」
「いい加減にしろォォォォ!大人かお前らァァァァ」
「で、丹波さんはどこ行ったんでィ」
声を荒げる新八に対し、冷静に沖田は聞いた。聞かれた二人は、顔を見合わせて黙りこくった。
「好きな女の居場所もわかんないようじゃ、男として失格アル」
「いつから起きてたの、神楽ちゃん」
お前まだ十四だろ。という意見が全員の頭の中でこだました。
だが、確かに神楽の言うとおりだ。
すると、話を聞いているだけだった近藤が、口を開いた。
「でもまぁ、丹波も子供じゃない。コンビニにでも行ったんだろ」
それを聞いて、全員は少しびっくりした。
確かに、小さい子供がいなくなったのなら大騒ぎになるのもわかる。だが、丹波はいい大人だ。大人が朝ふと起きてコンビニに行くなんて事は当たり前だろう。なんでこう大騒ぎしてしまったのだ。なんでこんな簡単なことに気が付かなかったのだろう。疑問を抱くほどだ。
しかし、どうも胸が晴れない。コンビニに行っただけならいいが。そう言い聞かせ続けた。
「あ、そろそろお目覚めテレビでィ」
沖田は時計を見て独り言の様に言うと、テレビの電源を入れた。
結野アナが映った途端、今まで複雑な顔をしていた銀時が沖田と最前列に並ぶ。
『今日のニュースの時間です。なんと今日は、ゲストでお通ちゃんが来ています』
『おはようございますりむいたトコが膿んじゃったァ!みんなァ朝からテンションあげていくヨウ素液ってイソジンに入ってるの知ってたー!?』
「しってたー!!」
「うっせーアル、オタ眼鏡」
テレビの最前列に新八も加わり、もう近藤達の位置から画面が見えない状態になってしまった。
土方は少し呆れた様な素振りを見せて立ち上がると、部屋から気配を消しつつ出た。隊服に着替えるためであった。だがなにより、自分の腕の中で寝ていた丹波が消えてしまったことに、少々不安を抱いていた。
いま、隊士達はどこかへ出かけたのだろうと予測している。万屋はそうは思っていないはずだ。アイツがあんな顔する事はまずない。自分の部屋に行くまで、部屋には行って隊服に着替え終わるまで、ずっと丹波のことから頭が離れなかった。
宴会場に戻る途中、隊服に着替えた伊藤と鉢合わせた。しばらく黙って並んで歩いていたが、伊藤がその沈黙の糸を断ち切った。
「丹波さんは、本当に出かけただけなのだろうか」
「…さぁな」
「君も不安なんだろう。あと、万屋の三人もか」
「沖田と、近藤さんもだ」
土方が言うと、伊藤が聞き返した。
「あの二人が?」
「まーな」
どいつもこいつも、顔が晴れない。不安まみれだったのだ。
『ただいま入ったニュースです』
宴会場の中から結野アナの声が聞こえた。
戸を開けると、先ほどまでの穏やかな光景は無かった。隊士達もテレビに集まり、全神経を耳に使っている状態だった。
結野アナの元へ一枚の紙が手渡された。誰も喋る者はいない。
『緊急です。たった今、ターミナルで攘夷浪士たちの仕業と思われる爆弾テロが起きました。ターミナルの第二倉庫が爆発し、火災が発生しました。早朝だったため、ほとんどの人が避難しましたが、まだ取り残されている人がいるようです。では、現場の花野アナ!』
『はい、こちら花野です!一時間ほど前、爆発、炎上を繰り返すターミナルに一人の侍が入っていきました!髪は青、麻の着物を着た侍で、西の入り口から入っていったと言うことです。救助隊は取り残された人々の救助を試みますが、火災の振興が激しく、作業は極めて困難になっています』
花野アナが現場からの中継を終た時にはもう、宴会場には誰もいなかった。
大量の酒のとっくりと、座布団が乱雑な状態で部屋に取り残された。
ターミナルの前、幼子がその高い鉄の塔をの足下で泣いていた。鼻を垂らし、目から大粒の涙が溢れてコンクリートの地面に水たまりをつくっている。
親がターミナルへ行ったらしい。周りの人々はなだめようとも、抱きしめようともせず、気の毒そうに遠くから見ているだけだった。
そこへ異様な風貌の侍が、幼子に近づく。侍は子の目の高さに合わせて膝を突くと、ただ抱きしめた。
すると、幼子は泣くのを止め、侍の目を見つめた。侍は鳴き声が止むのがわかると、言葉なく立ち上がり、ただ黙って火を吹く鉄の塔へと向かった。
風に青い髪を遊ばせながら。
幼子の目から、侍の背中が離れることがなかった。
耳には侍の言葉が張り付いていた。
まってろ、
ただ、一言。
- Re: 曇天 風見鶏はまわる。up ( No.86 )
- 日時: 2008/11/11 22:25
- 名前: 護空 (ID: bG4Eh4U7)
あげます、あげます^^
- 風見鶏はまわる。up ( No.87 )
- 日時: 2008/11/11 22:25
- 名前: 護空 (ID: bG4Eh4U7)
7時28分。
ターミナルの前に、サイレンを鳴らした真選組のパトカーが数十台と、急ブレーキをかけて集まった。どのパトカーからも瞳孔を開いて、眉間にしわを寄せた隊士達が勢いよく飛び出し、配置の場所へと駆けていった。
その中の一台から、どの隊士達よりも早く飛び出し、赤い瞳を振るわせた男が一人、ターミナルの入り口へと走って向かう。
しかし、その数十メートル手前で山崎達に腕を捕まれ、阻止された。
「てめッ!離しやがれェェェェェ!!」
「ちょ、旦那ッ!!危ないですってば!やめてください!!」
あのニュースを見た瞬間からだった。
あの時の記憶が頭の中で何度も、何度も巻き戻され、壊れたビデオの様に流れ続けた。
もう嫌だ、アイツをなくすのは、家族をなくすのは。
そこへ、神楽と新八も追いついて銀時の身体を掴んだ。
「銀ちゃん危ないアル!桜なら平気ネ!!」
「そーですよ!!だから止めてください!」
アイツなら平気かもしれない。少し前の記憶がよみがえる。
いつだったか、たまにも言われた気がした言葉。
銀時は気が抜けた様に立ちつくした。
13
風見鶏の向く方。
土方は開け放したパトカーのドアにもたれながら、無線機に耳をあてて、上からの命令を待っていた。
ここに来てから三本目の煙草に手をかける。かなりペースが速い上、貧乏揺すりが止まらない。いくら待てど、一向に連絡が来る気配もない。
挙げ句の果てに、待ちきれなくなった土方は無線機を助手席に投げた。
苛立っていた。
丹波があの火を吹いているターミナルの中にいると思うと、気が気でない。ほんとうは、銀時の様に突っ込んでいきたいところなのだが、山崎達の仕事が増えるのでなんとかこらえているが、これも時間の問題だろう。
こんな非常事態だってのに、なんだこの天気の良さは。
空に罪はないのにも関わらず、禁煙をしていた時のあの嫌な感じは、どうして良いかわからなくなっていた。
深く息をして煙を吸い込むと、少しだけ落ち着いた。ふと、土方は隣に近藤と沖田がいないのに気が付く。辺りを見渡すと、すぐ側の広場で近藤が小さい男の子と話をしていた。
しかし、小さい子供と話している割には、かなり大まじめな顔をしている。変に思いながらも、こんな時になにやってんだ。と呟きながら、歩み寄ると、近藤がうわずった声をあげた。
「それ、本当か?ぼく」
少年は赤く腫れ上がった目で頷く。
「どうした」
土方が目を丸くして聞くと、近藤は「トシ」と言って急いで立ち上がり、目線を下げる。
その顔にはあきらかに不安そうな表情が貼り付いてる。土方が首を傾げていると、近藤は強く噛みしめていた唇を開いた。
「この少年の親が、ターミナルに取り残されているらしい」
「なんだと?」
土方の表情が険しくなった。すると、それに怯えた少年が涙目になって、近藤の足にしがみつく。
「おい」
それを見た近藤に、怖い顔をするな。注意をされ、はっとして土方は顔を少年から背ける。その時たまたま視界に入った鉄の塔は、ただ自分たちを見下す様に黒い煙を吐き出していた。
そこで、土方は気が付いた。
「もしかしたら、このガキの親を助けにいったんじゃねえのか?アイツ」
「丹波か?ああ…確かに、考えてみればそうかもしれ、」
すると、足にしがみついていた少年が、ぐいぐいと近藤の隊服を引っ張った。その目は腫れぼったいながらも、きらきらと光を帯びている。
「青い髪のにーちゃんになら、あった」
「ほんとか!?」
近藤は男の子の目線までしゃがんで聞き返すと、少年は強気の口調で誇らしげに胸を張った。
「そのにーちゃんが絶対、助けてくれるんだって」
二人の脳裏に、自信満々に少年にそう言っている丹波の姿が映った。
ほんの少しだけ、心に余裕ができた気がする。
土方は短くなった煙草を携帯灰皿に突っ込んで、四本目に手をかけた。
「そういえば、取り残されてるのはお父さんか?お母さんか?」
近藤が再度少年に聞くと、少年はうつむいてしまった。
「どっちも。おとーさん花火師なんだ。朝一でここの火薬庫いったんだけど、帰ってこなくて、おかーさんと向かえに来たの」
え。
と、二人の動きが止まる。花火師、と火薬庫、の二つのワードが頭の中で渦巻いた。
丹波がこの少年の親を助けに言ったので有れば。これはまずいのではないか。いや、丹波だけじゃない、色々。いろいろやばい。
そして、男の子が何か続きを話し出す前に、二人はターミナルへ全速力でダッシュしていた。
大人げないほどのマジ走り。周りの隊士達もソレを見て、口をだらしなく開けて呆然としていた。
近藤が息切れさせながら「おいっ!」と土方を呼んだ。
「んだよ!?」
「もしッ、もしだ!万が一ッ、火薬庫に火がついたらッ、どうなる!?」
「はぁ!?」
近藤はテンパっているらしく、土方には彼の言っていることがよくわからなかった。
どうなるって、そんなのは決まり切っている事なのに。
それなのに、土方の顔がみるみる青ざめていく、近藤は走りながらその顔を確認すると、口角を吊り上げていった。
「それでいい」
近藤の顔も青い。二人のスピードは増していく。
その頃、ターミナル玄関付近で、やっと銀時が落ち着いて一件落着の所へ、二人の男が突っ込んできた。もの凄い形相をして突っ込んでくる、局長と副長の姿をみて、山崎は恐怖で顔が青ざめ、腰が引けた。
「うわァァァ!次は局長と副長ですか!?」
「神楽ちゃん!」
「わかってるアル!」
山崎達三人に止められた二人は、さっきの銀時の様に瞳孔が開いていた。
土方ならまだしも、近藤までこんな調子じゃ、ただ事ではなさそうだ。
「どいてくれ!!時間がねぇんだ!」
「落ち着けってコラ!なにがあった」
なにがあった。と銀時も止めにはいると、土方が無我夢中で叫んだ。
「火薬庫に火が回ったらアイツもガキの親も終ェなんだよ!!」
しかし、ターミナルの周りを飛び出した、ヘリコプターのプロペラ音のせいで、声は途切れ途切れに遮られた。
しかし、銀時達にはしっかりと聞こえたらしい。一瞬で万屋達は立場を逆転し、一斉に山崎をにらみつける。
山崎は怯えながらも両手を広げ、道を阻んだ。
「だ、だめですってば!危険です!」
「なんだと!ふざっけんじゃねェェェェェ!!」
「桜が一大事アル!!」
「通してくださいッ!」
声を張り上げてギャーギャーと喚いている集団へ、一人の男が近づいた。
「ったく、少しは落ち着きなせェ。大人げないったらありゃしねェ」
この修羅場に現れたのは、沖田だった。
焦っている風は見せていなかったが、顔はやはり不安げに濁る。
「んだよ。てめェ仕事ほったらかしてどこいってやがった」
土方が問いただすと、沖田は親指でパトカーを指さした。
「あんたが近藤さんとこ行ってる間に、無線に連絡が入ったんでさァ」
「そうかよ。で?なんてきた」
土方が聞き返すと、沖田は少し風の強くなった空を、眩しそうに見上げた。
その風は心地良い物ではなく、ヘリから人工的に作られた耳障りなものであった。
「救助ヘリを送った。お前等はパニクった市民の方を頼む。…とっつぁんからでさァ」
「救助ヘリが出たか、なら安心か」
近藤が不安げに、手で太陽の光を遮りながらヘリを見上げる。ヘリは太陽と重なり、黒い陰を落とした。
「うげッ、ゲホゲホおえっ!煙すげーなオイ」
丹波は煙に巻かれながら、最上階辺りの”火薬庫”を探していた。
一階からずっと隅々まで探し回ってきたが、誰も見つからない。取り残されているのは泣いていた少年の両親だけらしかった。
階段を上りきって、辺りを見渡す。だだっ広い空間に巨大な棚が並んでいる様子から、ここはワンフロア全てに火薬を収納しているらしい。天井まで届くほどの高い棚に、所狭しと火薬やら、なにやらが並べられていた。
ここも煙が充満していて、すぐ火が回ってきそうだった。丹波はここだとすぐに確信して、走りながら部屋の隅々に目を通していく。
すると、壁にもたれかかる様にぐったりとした陰が視界に入った。
「光代!しっかりしろ、もうすぐ救助がくる」
黒い無精ひげを生やした旦那の方が、必死に弱ってきている妻を抱きかかえ、声をかけ続けている。丹波はすぐに二人に駆け寄った。
「大丈夫か?」
「た、助かった。妻が、怪我しちまって」
涙を浮かべて訴える旦那の顔を見ると、丹波はすぐに妻の方へと目線を流した。頭から血を流して、苦しそうに息をしている。
「一回目の爆発で、硝子が飛んできてよォ…。なんとかなりますかィ」
おろおろとする旦那をなだめると、丹波は辺りを見渡して、シーツの様な布を取り、歯で縦に裂いて頭に巻いた。
「応急処置で悪いな」
「すまねぇ。ありがてぇです」
旦那は妻を抱きしめると、涙を飲み込む様に息をのんだ。
ふと、さっき入ってきた入り口に目を向けると、溢れんばかりに煙を吹き出している。
もう、ここも終わりか。
火の予感を察知した丹波は、旦那の方に聞いた。
「窓の場所、わかるか?」
「窓…、なんですがね。あそこで、とても登れそうにねェ」
旦那が指を差した方を見ると、棚なんかよりもずっと上の天井付近に、デコトラほどの大きさの四角い大きな窓が見えた。その位置を確認すると、丹波は旦那の抱いていた妻を抱きあげた。
旦那のは目を丸くする。
「なにするつもりです?」
「あの窓まで飛ぶから、アンタは俺の背中におぶされ」
「ええ!?大丈夫なんですか。アンタ…身長妻くらいだし」
「いーから」
丹波はうろたえる旦那を無理やり背中に乗せると、膝の屈伸をしだした,
「大丈夫っすか?」
「もちろん」
二、三度屈伸をした後、丹波は大きく膝を曲げて、床を蹴った。
広い部屋に、大きな衝撃が加わり、爆発音にも似た音が響いた。その拍子に、入ってきた入り口のドアが倒れる。
「うおわァァァァ!!」
旦那の情けない叫び声が耳元で鳴り響いた。
丹波が硝子を脚でぶち破って、枠に着地すると、もの凄い突風が吹き込んできた。
思わずバランスを崩しそうになるが、すぐに持ちこたえる。
救助ヘリだった。
「きゅ、救助隊です!!無事ですか!?」
オレンジの防火服に身を包んだ、まだ若い隊員が焦った様な顔を浮かべて叫んだ。
丹波は思わず笑みを浮かべて言い返す。
「怪我人がひとりいる。もっとヘリを寄せてくれ」
「了解しました!!」
救助隊がヘリを寄せると、突風が強くなった。丹波は旦那と、妻を救助隊に受け渡す。
『すみません。定員オーバーなので、次のヘリを待ってください!』
救助隊員が敬礼をする。丹波は小さく敬礼をしかえし、ヘリコプターが上昇していくのを笑顔で見送った。
しかし、その瞬間。衝撃で倒れたドアから吹き出した火が、床を伝い、火薬の詰まった箱に触れた。
「良かったアル。桜、無事みたいネ」
その一部始終を見上げていた一同は、ほっと胸をなで下ろした。
しかし、銀時は目を凝らして、割られた窓をじっと見つめて言った。
「桜、まだヘリに乗ってねェぞ」
「は?そんなわけあるか」
土方は疑いながら煙草を口から離すと、ターミナルへ目をやった。まだ、丹波はヘリには乗っていない。ソレなのにも関わらず、ヘリはターミナルから遠ざかっていく。
「どうしたんでィ。一体」
「多分、定員オーバーだったんだろう」
伊藤が最も推測しやすい意見を述べた。
すると、丹波がこちらに気が付き、満面の笑みで大きく手を振った。無事な様だった。不安が一気に掻き消され、近藤の顔に笑みがこぼれた。
「よかった。怪我なしか」
「桜すごいアル!」
「丹波さーん!怪我はないですかァァァァ!!」
丹波は、手のひらを耳にかざして声を拾うと、親指を立てて野球で言うアウトのサインを出そうとした。
次の瞬間、丹波が出てきた部屋が放射線の様な強い光を放ち、この世のものとは思えないほどの大きな爆発音をあげた。
普段起きる様な自身とはケタ違いの揺れと、ターミナルの残骸が雨の様に降り注ぎ、銀時を襲った。
土方はすぐに顔を上げて、丹波がいた窓に目をやる。しかし、その窓からは轟々と炎が拭きだし、丹波の姿は無かった。
「丹ッ…!!」
土方が目を見開いてその周辺に視線をやると、丹波は数十メートル飛ばされ、そこから落下活動に入るところだった。
気絶している。
土方は本能で察知し、駆けだそうとした。しかし、視界に入ったのは大きな布を手に、もう走り出している銀時の背中だった。その後を神楽達が追いかける。近藤達も慌てて駆けだす。
三人はすぐに丹波の落下地点にはいると、布を思いっきり引っ張ってピンと張る。近藤達も布の端を持って、強度を増やした。
丹波が落下してくる。
あと20メートル、10メートル、5メートル。
それぞれの手に強い衝撃が加わった。布の中心が大きくへこむが、歯を食いしばって布を張る。すると、布の反動で大きく浮き上がった。全員が思わずバランスを崩すと、銀時の腕の中に丹波が落ちてきた。
「うぉあ!?」
銀時は丹波を抱えたまま後ろにひっくり返った。痛そうに顔をしかめると、すぐに起きあがった。
近藤達も二人をのぞき込んだ。
銀時が涙目になりながら、震える手で丹波の顔に触れる。動きはしなかったが、暖かく、綺麗な肌の上を滑る様に指が動いた。ほんの少しだけ胸をなで下ろすと、銀時は丹波の体を起こすために後頭部に手をあてがった。
ぬるり
妙に暖かい液体が右の手のひらを濡らした感触、手に赤い水たまりができた。目を剥いて銀時が手のひらを覗いた途端、さっき撫でていた丹波の頬に、紅筋が通った。
響くのは、男の悲鳴と救急車のサイレンだけ。
風は吹かず、空は無情にも穏やかだった。
- Re: 曇天 風見鶏の向く方。up ( No.88 )
- 日時: 2008/11/22 13:40
- 名前: 悠里 (ID: 3Dfdn2Pe)
アク禁からふっかーつ!
お久しぶりです。悠里です。
また来させてもらいましたよ!
いつのまにかこんなにも進んでたんですね!
銀さんが寝てる所で子供時代の銀さん思い出しました。今も変わらずかわいいんでしょうね…(黙れ
てゆーか、桜さん!銀さんの髪をクシャクシャって…
羨ましいうらやましいうらやまs(強制終了)
ちょっと嫉妬してしまいました。スイマセン。
てゆーか、またテロ来た!
そして、桜さんヤバイ!もういろんな所が!
カッコいい!こんな女になりたいです。
火のついた建物に飛び込むなんて…スッゲー!
本当にカッコいい!
次の話も楽しみにしてます!
- Re: 曇天 風見鶏の向く方。up ( No.89 )
- 日時: 2008/12/05 19:52
- 名前: 護空 (ID: bG4Eh4U7)
おひさしぶりです^^
悠里さぁぁぁぁん!!寂しかったァァァァァ!!
うざいっすね;すんません^^;
アク禁おめでとうございます!
もう少しで次のができるんで!!
まっててください^^
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