二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 東方書古録
- 日時: 2011/01/18 22:17
- 名前: 変態と狼と猫と騎士 (ID: DTrz5f5c)
どうも皆様、クリックありがとうございます。
この小説は【東方Project】の二次創作作品【幻想入り】です。
その為以下の要素が含まれます。
・キャラ崩壊
・オリキャラ要素
・原作独自解釈
・ネタ成分
これらに耐性が無かったり、抵抗がある場合は【気をつけて】この作品をお読みください。
尚この作品はリレー小説の為、作者・主人公が複数人います。
以下が作者一覧となります
・トレモロ
・agu
・Nekopanchi
・とある騎士
それでは以上を以て作品紹介を終わりにさせて頂きます。
できれば楽しんで読んで頂けると幸いです。
- Re: 東方書古録 ( No.17 )
- 日時: 2011/03/03 23:33
- 名前: Nekopanchi (ID: 21getbfq)
二話のあらすじ
①結局のところ、俺はエキセントリックおっさんボーイでした。
②俺の良心はろくでもない
③バオバブ
東方髭青年 第三話 『叫んどいて何なんだけどバオバブってなんだっけ』
暫くしてからようやく感覚が戻ってきた。一体どれほどの時間気を失ってたんだろうか。
「あ、あの……大丈夫ですか……?」
と、不意に少女の声が聴こえ、身体が揺すられる。
「うぅ……ん」
ゆっくりと目を開けると、そこに先程の青い奴の姿はなく、先程ずっと心配そうな顔をしていた緑髪の少女が今度は俺に心配そうな顔を向けていた。
「あ……目が覚めましたか……よかった……」
緑髪の少女は俺が気が付いたのを確認すると、心底安堵したように優しく微笑み、ほっと胸を撫で下ろした。
「……え?」
……情況が呑み込めない。
ふと今の自分を、寝たまま首だけ動かして確認してみると、湖のほとりから少し離れた木陰に仰向けで寝かされていた。意識が途絶えた時、俺はうつ伏せに倒れたハズだし、何より俺は木陰にはいなかった。という事は……
「ええと……君が俺をここまで運んでくれたのか?」
頭の中にクエスチョンマークを無数に浮かべたまま、少しだけ勢いをつけて上体を起こすと、今現在、俺の中にある疑問をただ漠然と訊いた。すると少女は俺に視線を向けたまま、申し訳なさそうにおずおずと言葉を紡ぐ。
「え、あ、はい……。なかなか目を覚まさないので心配になって……あの、迷惑……でした?」
全然迷惑ではなかったし、むしろ俺を気遣ってくれたんだから逆にありがたいくらいだ。だからそんなに恐がらないでほしい、俺の方が申し訳無く感じる。
それに、この少女からなら色々話が聞けそうだ。
「あ、いやいやいや、むしろありがたいからさ」
俺は目の前の少女を怖がらせない様に出来るだけ柔らかい言葉を言った後、今現在俺の中にある疑問を全て吐き出してみる事にした。
「ええと、ちょっと質問に答えて欲しいんだけど……ここは……『幻想郷』……なのか?」
……正直言うと、少女の口から直接答えを聞かなくても薄々感付いてる。けど認めたくない。そんな変な所に俺が居るなんて信じたくないんだ。
……それこそ少女の口から
『幻想郷? なんですかそれ。ここは西麻布ですよ?』
みたいな言葉が出る事を望んでる。
そして、よしんばここが『幻想郷』とやらだとしても
『ええ、ここはパブ『幻想郷』ですよ』
みたいな言葉を望んでる。
……いやわかってるよ!? ここは西麻布なんかじゃないって! だって西麻布にこんな森と湖あるわけねぇしパブだって野外でしかも少女がやってるわけねぇってな! だが逃避ぐらいさせろやウッヒョッーーーーイそれそれ!!
そんなマッハで現実から逃避している俺を現実に引き戻す少女の言葉。
「え、あ、はい。ここは幻想郷ですよ」
……速ぇな現実……
どんだけマッハで逃げたと思ってんだ。シュー◯ッハも吃驚のロケットスタートだったってのに……。
……い、いや、まだ終わってない……俺はまだ逃げられる!
「え、西麻布?」
「幻想郷です」
「……………………」
……即答だよコンチクショウ!
……ま、まだだ…まだ終わってない…!
まだ『パブ 幻想郷』という可能性の逃げ道がある! いやもうほとんど途切れてる逃げ道だけどなウヒョヒョヒョヒョ!!
「えっと、あれかい? 幻想郷って名前のパブかい?」
ほとんど脳内が発狂状態で必死に言葉を絞り出す。
「……違います」
そして俺の微かな希望の光さえも容赦なく叩き潰す少女の言葉。
ですよね…わかってたよ…。たがもう俺は止まらない! この際取り返しのつかない所まで逃げたらああああああああああ!!
「パブかよ! なあんだパブかよ! 安心したぜハッハッハッハッハ! クヒャーハッハッハッハッハ!」
パトラッシュ、僕はもう駄目みたいだ。最早自分でも何言ってるかもわからないんだ。目の前の緑の子も、どうしたらいいかわからない不安の顔で俺を見て立ち尽くしているんだ。でも笑いが止まらな……
「パボラッシュ!?」
その時、腹に急な鈍い痛みが走った。先程の氷と同じ痛みだ。そのせいでまた変な叫び声を上げちまったよ。なんで俺の上げる叫び声は毎回変なんだよ……。
「キモいよヒゲオッサン! 大ちゃんを怖がらしたらあたいが許さないんだからね!」
そう言いながらさっきの青い奴が地面に降り立ってきた。
……で、腹の痛みでまた俺の意識は途絶えた。
つづく
- Re: 東方書古録 ( No.18 )
- 日時: 2011/03/19 17:33
- 名前: あぐ (ID: gWH3Y7K0)
——マヨヒガ良いとこ一度はおいで♪【お断りします】
俺をこの世界に拉致した八雲 紫と会談してから、一日が経った。
謎のフラッシュバックの後に気絶した俺は、数時間後に意識を取り戻した訳なんだが……
眼を覚ました時の光景は一生忘れられないと思う。
何たって、あの妖艶で胡散臭いオーラを辺りに振りまいていた紫の顔が、ドアップで俺の眼前に映し出されたんだ。
それだけならいいんだが……彼女はみっともなく涙でその面貌をグシャグシャにしていたもんだから。
正直、凄く反応に困った。
しかも紫は俺が起きたことを察知して大きな声で騒ぎ始めて——まぁ、それからは慌てて部屋に入ってきた
ブロンドの髪をショートボブにしている狐少女……八雲 藍さんが上手く宥めてくれたから助かったな。
そんな騒がしい事件の後に、俺は紫、そして藍さんを交えて話をした。
ここ——幻想郷の事。そして妖怪、人間の事。
……俺が息子だなんだのという話は紫が断固事実だとか主張していたが、詳細は教えてくれなかった。
しょうがない。藍さんもそれに関しては曖昧な態度をとり続けているし。
そういう諸問題は脇に置いておいて。
これからの事についても交渉しなくちゃならなかった。
「……あー……この幻想郷で暮らそうと提案してくるからには、何処か寝床はあるんだよな?」
「当たり前じゃない♪ まさか息子を路上で寝かせるもんですか。貴方はここ——マヨヒガに私たちと住むのよ♪」
そう機嫌良く答えた紫。俺は確認を取るべく、常識人である藍さんに視線を巡らす。
「ええ。そういうことになりますね。どうぞ宜しくお願いします」
ニコリと、そう“素敵”な返答を返してくれた藍さん。
……あちらの世界に未練は無いと言えば嘘になるが、だからって素直に返してくれるとも思わない。
俺はしょうがなく決断した。
「はぁ。分かった。分かりましたよ。俺はここに住むんですね」
女性二人の園に。
藍さんも紫も、何処か、母親が息子を見る様な感じで話しかけてくる。
……俺の精神衛生上は決して宜しくはないんだが、彼女らは問題ない様だ。
「色々あったけど万事解決ね♪」
「素直に承諾して頂いて助かりました」
何だか二人は『これにて一件落着』の様な雰囲気を漂わせているが、騙されないで欲しい。俺にとっては苦難の始まりだ。
……あれこれ考えるのが嫌になってきたので布団を顔まで被った。
——そんなこんなで現在に至るのだが。
只今、膝の上に猫少女を乗せて縁側で寛いでおります。
普通の人には何を言ってるのか分からないと思う。特に猫少女。
「ふにゅー……」
正に極楽と云った感じで顔を無防備に蕩けさせている。
この子は橙、八雲 橙。
栗色の肌触りが良い髪に愛嬌のある容貌。頭部には二つの猫耳が付いている。
どうやらこの子は藍さんの式神。つまりは式神の式神であるらしい。
昔は別々に住んでいたらしく、名前も橙だけであったが、どうやら何時頃からか一緒に住むようになり、八雲姓が与えられたのだという。
そして猫耳少女——橙は俺のことも知っていたようで。
「あー! サト君だぁー!」
と、出会い頭に大きく声をあげられ、抱きつかれた。
いまいち俺には記憶が無いのでどう対応すればいいのか分からなかったが。
とりあえず頭を撫でてやったりしてあやしてやったりする。
いきなり懐かれたのは、まぁ、初めてじゃない。昔から猫には好かれる性質だった。
彼女は人間なのだが……『猫』少女だし、性質的に合ったかも知れない。
ともかく彼女に懐かれた俺は他愛の無い話をしながら、縁側で寛ぎ、何となく橙を膝に乗せてやった訳である。
正直に言おう。和むし、可愛い。
突然、こんなイカれた世界に拉致された俺にとっては一種の清涼剤だ。
あれこれ無茶してきたが、精神的に疲れていることは明白。
なら、ここでSAM値を回復させておかないと後が非常に危なくなるだろう。
というか、こういう冷静な思考をしている時点で脳が吹っ切れてるかも知れないが……
ああ、それと驚いたことが一つ、いや二つ。
何故かは分からないが、マヨヒガには電気が通っていた。
しかも居間にXB○X360とテレビが置いてあったという。
どうやら紫が暇な時にコタツに入ってうーだこーだとプレイするらしい。妖怪のクセに……
風呂も現代的になってるし、これはどういうことなんだと紫に問い詰めてみたら。
「だってー……便利だし〜楽しいし〜ね♪」
てへっ☆なんてやりやがったもんだから世界観という三文字がバラバラと崩れ落ちていった。
後で藍さんに聞いてみると、どうやらこっちの世界に顔を出した際、色々と気に入ったものは拉致って行くらしい。
おい……まさか俺も子供の頃、気に入ったからって拉致られたんじゃないんだろうな?
- Re: 東方書古録 ( No.19 )
- 日時: 2011/04/05 19:38
- 名前: とある騎士。 (ID: qeBMbyuH)
「海」それは彼女の墓。
姉が死んだ頃を思い出しおえた
私はふと考えた
……何故、あの人は…あの人は幻想郷には導かれなかったのだろうか?
今考えると不思議に思え、しょうがない。
あの人は【殺された形跡もなく殺された】のだぞ?
なのに何故私が、何故私だけが導かれてしまったのだ
そうだ、本当はあの人が導かれるはずだったのに。
『……ふふっ…そう、そういうことなのね?お姉ちゃん!』
そうか、そうか、そうか、そうか、そうか、そうか、そうか、そうか、
やっと答えが出たよお姉ちゃん。
(違う………)
『私がっ…………俺が消えれされすればっ!!』
(そんなはずは……無い……)
『お姉ちゃんは蘇りっ!そしてぇ?お姉ちゃんが幻想郷に導かれるッ!』
『うっふふふふふ!………あは、………あっはははははははははははは!!!!!!!!!』
そして私は海に身を捧げた。
ゴボッ………
水と苦しさと笑みと喜びが渦巻きながら私に襲いかかる。
これが貴方の望み?
(誰……………?)
貴方も心の中では解っているのでしょう?
(ッ——!?)
こんな事で貴方のお姉さんは喜ばないって事も
(その……声……はッ)
[[●●●●●●?]]
ここで私の息も途絶えてしまったようだ
本当に私は不幸な人間だ
それにあの人は——
そんな事を考えているうちに服が水を吸い込み重くなっていく
ずしっと重くなった服につられて
深海の近くまできた
そんなとき
貴方はまだここに来てはいけない——
その声と同時に誰かから後ろをグイッと押し上げられるような感覚があった
また——あの人?
ふと、後ろに振り向いてみた
そこには【にこりっ】と笑った少女の姿があった
彼女は
もう二度とここには来ちゃ行けませんよ?——
と言い残し海の泡とともに消えていってしまった
それからというもの、その声と触れられた手の感触が頭から消えなかった
- Re: 東方書古録 ( No.20 )
- 日時: 2011/05/08 19:56
- 名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
『肆話・不穏な未来と希望の道筋』
【 】
声が聞こえる。
透き通った声。
鈴の鳴るような音——とでもいうのだろうか。
その心地よい音色が、静かに言の葉を紡ぐ。
「ねえ、妖夢」
鈴の音が誰かを呼ぶ。
その音に対し、また別の音色が答える。
凛とした力と、まだ幼さを残した音が。
「何でしょうか。幽々子様」
「困ったことになったわ」
鈴の音の持ち主——西行事幽々子は全く困った顔をせずに、傍らの少女に言う。
それに対し、少女は緊張した面持ちで幽々子に質問する。
「困った事……とは?」
そんな少女の様子に、幽々子は微笑みながら答える。
「そんな緊張した顔をしないで? こっちの気が張っちゃうわ」
「す、すみません」
幽々子のからかいの言葉に、律儀に謝ってくる少女。
西行事家のお嬢様は、そんな従者の態度に再度優しく微笑みながら、今度は若干真面目な顔をして言う。
「四季様から仕事を頼まれたわ」
「閻魔様から?」
主の言葉に、少女——魂魄妖夢はあからさまに動揺する。
何せ四季映姫ヤマザナドゥ。主の上司的立場の存在からの仕事だ。
これに動揺しないで済むほど、妖夢は呑気な性格はしていなかった。
いや、逆によく出来た従者なら動揺などしないかもしれないが……。
「ええ、それもかなり厄介なね……」
「厄介……ですか? それは一体どういう……」
妖夢のゴクリと唾を飲み込む音を聞きながら、幽々子は従者に悟られぬよう、少し悲しく目を伏せながら応えた。
「幻想郷に迷い込んでしまった。……魂の排除よ」
【博霊神社】
「まあ、こんな装備で大丈夫でしょう」
「大丈夫じゃない、問題だ」
霊夢の呑気な言葉に、青年はあからさまにしかめっ面をする。
「なんだこのお札は。こんなお札で妖怪を殺れるのか?」
青年の言葉に、霊夢はエッヘンと手を腰にやり、得意げな顔をして説明する。
「失礼ね。それは博霊印の強力妖怪撃退鋳型事象個体干渉性札よ。並みの妖怪なら一瞬よ」
「長い。名前が長い! そして、今付けただろうその名前!!」
「さて、護衛の妖怪の準備はまだかしら」
青年の言葉を一切合切無視して、霊夢は準備の遅い【護衛】にイラつく。
「……ホントにアイツで良いのか? 嫌そうだったが?」
霊夢のそんな様子に、青年はこれ以上突っ込むのを諦め、別の事について霊夢に質問する。
「偶には人間様の為に役立ってもらうわ」
そんな事を良いながら、霊夢は二ヤリと笑う。
その顔を見て、青年はなんだか【妖怪】に悪い気がしたが、頼るしかない自分の立場を思い返し、仕方ないと思いなおした。
「お、来た来た。遅いわよー。退治されたいのあんたは!!」
霊夢が大声で、遠くから神社を出てこちらに駆けよってくる【妖怪】に声をかける。
【妖怪】ミスティア・ローレライに。
「なんだって私が人間の護衛しなくちゃなんないのよー!!!!」
霊夢に負けず劣らずの大声で、ミスティアは霊夢に叫び返す。
「さて、外来人A」
「名前で呼べ。あと、鳥の嬢ちゃんを無視するな」
霊夢の態度に、正統な突っ込みを入れる青年。
「あんたも、鳥の嬢ちゃんって呼ぶな!! 私はミスティアだって、言ってんでしょうが!」
走ってきた所為か、多少息を荒げながら、ミスティアは青年に怒鳴る。
青年はそんなミスティアに眼を向け、多少微笑みながら言う。
「それは悪かったミスティア。……すまないな、協力して貰っちゃって」
「わかりゃいいのよ。後、協力については人里前までよ、その後の事は知らないわ。ったく、妖怪が人間の護衛なんて……」
はぁ〜、と深いため息をつきながら、ミスティアは言う。
どうやら彼女は霊夢に【退治されたいのか?】と脅され、渋々青年に協力することになったようだ。
「まあまあ、良いじゃないの」
「あんたが言うなよ霊夢!! くぅ〜、なんでこんな奴に強大な力があるのよ〜」
涙でも流しそうな様子でミスティアが悲痛の声を上げる。
霊夢はそんなミスティア見てニヤニヤと厭らしい笑みを広げていたが、ひとしきり笑った後青年の方を見た。
「まあ、こんな護衛しか用意できなかったけど、ちゃんと生きてここに帰ってきなさいよ?」
「ん。分かった。色々ありがとう。世話になったな」
青年の言葉を聞いた後、霊夢は背中を向けて、神社の方へ歩いていく。
「はいはい、どーいたしまして。——それじゃ、行ってらっしゃい」
振り返りもせず、霊夢は青年たちを送る言葉を投げかけてくる。
その言葉に、青年は微笑しながら、ミスティアは苦笑しながら。
送られる側の常套句で応えた。
『行ってきます!』
- Re: 東方書古録 ( No.21 )
- 日時: 2011/04/07 21:52
- 名前: Nekopanchi (ID: jZi4txmM)
三話のあらすじ
①西麻布に行きたかった。
②パブ 『幻想郷』に行きたかった。
③たぶん人類最高速度を記録(現実逃避的な意味で)。
④俺、発狂!
⑤パボラッシュ・マンマミーア(プロレス技にありそうだよね)
東方髭青年 第四話 『もしも手違いか何かで『東方髭青年』が動画化してニコ動に上げられたとしても『東方餡掛炒飯』というタグが付きませんように』
「うっ……痛……」
半ば腹の痛みに無理矢理引き戻される様にまた意識が鮮明になってきた。やっぱり腹が少し痛い。……考えてみれば当たり前だ。俺は短時間に二度も氷の直撃を受けたんだから……。全く、なんなんだよ今日は……。
そんな事を思いながらぼんやりと瞳を開けると、また俺は仰向けに寝かされていた。そこからさらに首を動かしてみると……
「あ、あの……少しは落ち着きました?」
寝ている俺の横には例の緑の少女が居た。何故か青い奴の姿はなかったが。
……目の前の緑の少女には、やはり先程の俺のパボラッシュ発狂(仮)のせいですっかり怖がられてしまっている様で、先程よりもびくびくしている様に見える。
……まあ当たり前だ。俺だって『いきなり目の前に知らない奴が現れて、質問に答えてやったらそいつが『パブかよ!』って叫んで狂った様に笑い出し』たら怖い。怖すぎる。未知の恐怖を感じる。……俺は自分が怖い。
俺……恐ろしい子…!
でも目の前の少女は逃げるどころかまた介抱してくれたらしい。この子は相当優しい子みたいだ。これ以上この子を怖がらせない様、発狂しない様に気をつけないと……!
「あ、ああ。大丈夫、大分落ち着いた」
俺はゆっくりと上体を起こすと、ただ平に少女に頭を下げた。今の俺にはこれしかできない。……もっとも、俺が目の前の少女と同じ境遇だったら謝られても信用できない。多分この少女も警戒を解いてはくれないだろう……。
「……さっきはその、ごめん。なんか……訳わかんなくなっちまってさ……」
「いえ、そんな謝らないでください。ちょっと驚いちゃっただけですから」
だが緑の少女は俺が正気に戻って安心したのか深く息を吐いて微かに、そして柔らかく微笑み掛けた。警戒も、先程と比べたら無に等しい程になっている様にすら見える。この子は一体どれだけ純粋な子なんだろう。……いや、でもそれ以前に……
「君は一体なんなんだ?」
最初に少女を見てから浮かんでいた疑問が、つい口を突いて出た。
「『なんなんだ?』ってその……何がですか?」
突然の問いに少々困惑したのか、少女は小首を傾げてきょとんとする。
「あー、だからさ。君はさっき浮いてたし、今現在も背中に羽付いてるし……だからそのうまく言葉に出来ねぇんだけどその、なんつーのかな……」
「あぁ、なるほど。そういう事ですか。大丈夫です。言いたい事はわかりました」
俺が途切れ途切れ必死に伝えると、少女は頭の中のモヤモヤが晴れた時の明るい顔をして、ポンと手を打って、言葉を続ける。
「私は妖精ですよ」
事も無げにさらっと言い放つ少女。
……妖精…?
言われた単語があまりにも突飛だったため瞬間的には何も浮かばず、とりあえず、頭の中をひっくり返して『妖精』に関する知識を片っ端から探していく。すると……
『あぁん? ホイホイチャーハン?』
……何か変なの出てきた。いかん危ない危ない……。妖精っつってもアレとは無関係だろ絶対。
『あぁん…ひどぉい……』
いや出てくんなよ! キモいなもう!
『いやぁスイマセーンw』
だから出てくんなっつってんだろ! 出ていけえ!!
『仕方ないね……』
脳内に出てきた謎のガチムチ男を思考からやっとこさ追い出すと、緑の少女はいつの間にか俺に心配そうな視線を送っていた。
「だ、大丈夫ですか?」
どうやら『また発狂するんじゃないか』と思われてしまった様だ。……ま、まあ確かにあのままあのガチムチ男を思考から追い出せなかったらパボラッシュ発狂(仮)よりヤバイ方向で発狂していたと思うが……。
「だ、大丈夫だ、問題ない、モーマンタイ。それで君、名前は?」
彼女が『妖精』である事が全く信じられないため、妖精について詳しく質問しようとは思ったものの、何より謎のガチムチ男を思考から追い出すのにかなりの力を使ってしまい、何故かこんな質問が口を突いて出てしまった。
「あ、すみません自己紹介もしなくて……。私は大妖精と言います。大妖精でも大ちゃんでもお好きな様に呼んで下さい」
そう俺が訊くと、緑の少女——あ、いや、『大妖精』が申し訳なさそうにぺこりと頭を下げ、間もなく顔を上げると柔らかい、あるいはかわいらしい微笑を浮かべてなんとも丁寧に自己紹介をしてくれた。それに返す様に俺も出来るだけ丁寧に自己紹介。
「あっと、俺は大滝 学。じゃあ俺は遠慮なく大妖精って呼ばせてもらうわ。だから君も好きに呼んでくれて構わな……って、どうした?」
いつ頃からかはわからないが、丁度俺の名前を言った頃からだろうか。気が付いたら大妖精が俺を意外そうに見てきょとんとしていた。……俺、何かおかしな事言ったっけ。
俺に言われて我に還ったのか、大妖精はハッとした後、先程と変わらぬ笑みを浮かべる。
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