二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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東方書古録
日時: 2011/01/18 22:17
名前: 変態と狼と猫と騎士 (ID: DTrz5f5c)

どうも皆様、クリックありがとうございます。
この小説は【東方Project】の二次創作作品【幻想入り】です。
その為以下の要素が含まれます。

・キャラ崩壊
・オリキャラ要素
・原作独自解釈
・ネタ成分

これらに耐性が無かったり、抵抗がある場合は【気をつけて】この作品をお読みください。
尚この作品はリレー小説の為、作者・主人公が複数人います。
以下が作者一覧となります

・トレモロ
・agu
・Nekopanchi
・とある騎士

それでは以上を以て作品紹介を終わりにさせて頂きます。
できれば楽しんで読んで頂けると幸いです。

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Re: 東方書古録 ( No.7 )
日時: 2011/02/07 23:01
名前: Agu (ID: gWH3Y7K0)
参照: 絶賛スランプ中

——青年の春【女性が二人】

……気まずい。非常に気まずい。
先ほど遭遇した少女とあれから三言、二言会話したが……

「あ、えと白夜さん? これからどうしましょうか?」

「今の所、私には確固たる目的は存在しませんね」

「そ、そうですか。それなら一緒に行動しましょう。危そうですし」

「ええ、いいですよ」

こんな簡素な問答を繰り返して現在に至る。
生憎と俺はこの辺の地理には詳しくない。当たり前だ。今まで幻想郷なんて場所は聞いたこともなかったし、行ったこともない。

どうやら訳を知っている彼女だけが頼りだった。

「森を抜けて南東へ。そうすれば人里に着けます」

「あ、はい」

ただ彼女——白夜さんはそう言い、俺が返事をすると、それっきり会話が無くなってしまう。
もう一度繰り返す。大変に気まずい。


草むらや小枝を踏みつけながら獣道を前進する。制服に枝が引っかかりうっとおしくなることもあった。
白夜さんはスイスイと勝手知ったる道の様に速やかに動いている。鮮やかな足並みだ。

それにしても会話が無い……辛いったらない。しかも相手は女性だ。同姓相手なら何とかなるんだが……

俺はこの沈黙に耐えられなくなり、背後を歩いているはずの白夜さんになけなしの勇気を絞りながら、明るく声を掛けた。

「その色々と聞きたいことがあるんですが……」

まずは情報の収集だ。いつの世も情報こそが鍵を握るのだ。そして彼女との沈黙も和らいでくれ。
一縷の望みを掛けた俺に、彼女は何処か余裕げな、そして一概の冷たさが宿る口調で答えてくれた。

「……貴方が動揺し混乱していることは充分承知の上です。友好的とは言えないながらも、敵対的な態度を取らない唯一の個体、つまりは私に対して情報の開示を求めるだろう事も」

一度溜息を吐く彼女、そして更に続けた。

「ですが私はその役目にふさわしくはありません。最も適当な人材が貴方に対して詳細を説明してくれるでしょう……ただ基本的なことならば、貴方に対して教授することは可能ですよ」

「あ、はぁ……了解です」

——要するに。「私は詳細は答えられない。ただ許可されている範囲内ならば返答が出来る」ということか。
それに適当な人材……人里……この二つのキーワードからに見るに、他にも人間はいるんだな。

さっそく質問。

「ここは何処ですか? 地球ですか? 日本ですか?」

単純明快で実にストレートな質問だ……しかし彼女は別に気分を悪くした様子もなく返答してくれる。
本当は腹の中では煮えくり返っているという可能性も無くは無いが。

「ここは幻想郷。全てを許容し——厳密には『全て』ではありませんが——全てを拒否する場所です。そしてここは太陽系第三惑星「地球」の太平洋上に存在する日本国。異世界ではありません。場所は『人里離れた山奥の辺境の地』」

機械的ながらもしっかりとした言葉を返してくれた白夜さん。


——本当か嘘かは確かめようが無い。ただ俺はあの時公園にいて、八雲 紫という妖怪と名乗る人物に遭遇した。
そして、そう。【彼女は空に切れ目を入れて見せた】——これは記憶にはっきりと残滓として存在している……


全てを否定して逃避することは簡単だ。そう、簡単だからこそ誰もかもその道へ行き、破滅した。
俺はそうはならない。情報を収集し、まとめ、そこから取捨選択を行い、最も信用度が高い事実だけを行動指針として取り入れる。


——俺は【愚か者】とは違う——

「ここは幻想郷と言いましたね。具体的にはどういう所なんでしょうか?」

「どういう所ですか——端的に言えば、妖怪と人間が共存する場所ですね。忘れ去られたものがここにたどり着きます。外界とは結界で隔絶されていますので、外から侵入することは不可能とは言いませんが、非常に困難です」

「なるほど」

コクリと俺は一つ頷くと、顎に手をやって考え始める。

まったくもって結界だの妖怪だの非現実的だ。
だが人間が全ての事象を把握していると思うほど俺は自信家じゃない。
それに大多数の人が常識として信望しているものほど脆いものもないことも十二分に承知の上——。

今はこの【現実】を受け入れろ。雨城 智。


——そんな思考をしていた矢先のこと。

「雨城 智様とお見受けします」

声が目前の藪の中から響いた——。

「……」

俯いていた顔を静かに上げ、相手を確認する。
今まで聞いたことがない声だ。少なくとも知り合いじゃない。

「私は八雲 藍。貴方様の“自称”母であらせられる八雲 紫の式神です」

……やけに自称の所を強調したが、彼女は会釈した後に丁寧な挨拶を行ってくれた。

——ブロンドのショートボブの髪に透き通った金色の瞳。
まるで何処かの法師が着ているような服装だ。ゆったりとした長袖ロングスカートの服に青い前掛けのような服を被せている。
頭には二本の尖がりを持つ帽子を被っていた。

そして何よりもこちらの眼を惹くのは腰から状に伸びている複数の狐の尾。

コスプレか何かではないだろう……ピクピク動いてるし。


少しの間、彼女を観察していると背中で突かれている様な感触がある。
——白夜さんだ。こちらも黙っていないでアプローチをしろということだろう。
……彼女が俺の敵かもしれないという点はひとまず置いておく。


「ご丁寧にどうも。俺は雨城 智です。彼女は——」

「白夜 十流。どうぞ宜しく」


俺が紹介する前にスカートの裾を持ち上げて優雅に挨拶を返した白夜さん。
その仕草は妙に……手馴れていた。

八雲さんは俺達二人の返答に黙ってお辞儀すると、早速口を開く。

「この度、貴方様を訪問したのは何も世間話をする為ではございません……我が主である八雲 紫が自らの館に貴方様をお招きになられました。私はその案内役として貴方様をエスコートする為に参上した次第……」

……おいおい。ずいぶん突然だな。

八雲 紫というのがこの子の主人らしいが。苗字が同じなのが気になるが……親戚か何かか?
それに俺にそんな名前の友人はいないはずだ。間違いなく初対面だろう。

さて、どうするか。眼前には尻尾を付けた如何にも【妖怪】ですと言っている様な外見の少女。
俺の知っている妖怪とここの妖怪が一致するかは分からないが、抵抗すれば殺されるとまではいかないまでも、大怪我はさせられそうだ——

……——ん? 八雲 紫?
確か俺がここに来る前に会ったあの少女も八雲……紫という名だったな。同一人物か? ありえないことではないが……




——数秒の逡巡の後に、俺は思考の渦から一つの解を導き出す。



『今は従った方が賢明だ』


「……分かりました。お招きに感謝します。どうぞエスコートをお願いしますね」

紳士然とした似合わない微笑と共に了承の返事を返した俺に、藍さんも静かに微笑んだ。
……白夜さんはどうするかだが。

「私はここでお暇させて頂きます。所用がありますので」

冷静な口調でそう告げる彼女……ということは俺一人か? 少々心細いが……
んな俺の心中を見越した様に、白夜さんは言葉を紡ぐ。

「大丈夫。貴方の求める知識は全てその場所にある。心配いりませんよ」

そう、彼女はニコリと笑みを見せると、黒い煙に包まれて、『消えた』

Re: 東方書古録 ( No.8 )
日時: 2011/02/09 18:12
名前: とある騎士。 (ID: 0Jvj0iRK)

???・『赤い紅い満月がよく見える漆黒に包まれた地下牢屋』

『さて………智様は、「真実の意味」がお解りになったのでしょうかねぇ………フフ……』

でも、なかなか【あの方】はそれを教えてはくれないでしょう…ね。

そんなことを考えているのもつかの間、黒いドアが勢い良く開いた、いや【吹き飛んだ】
《十流ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!》

………この方は一体何をしたいのでしょうか。
黒いドアが私に目掛けて飛んで来ましたよ…まぁ、【切り裂いて】避けましたけどねぇ。

《あーらぁ?何々、避けちゃったのぉ?折角の【感動の再会】なのに…ねぇ……?》

『……申し訳ありません、お嬢様。いや我が主人【フランドール・スカーレット】お嬢様……………。』

「それにしても本当に久しぶりねぇ、十流、貴女【ニンゲン界】では何をしてたの?」

何をしていたの……か。『——別に何もしていない』それが真実。…けど本当は「幻想郷に招かれるのに相応しいニンゲンを探していた」……こんな事フランドールお嬢様に言えるわけもなかった。いや、例え言ったとしても私はお嬢様に消されるだけだ——

『別に……いつもと変わらない普通で普通で普通な生活を過ごして下りました。』

また、私は思う。【嘘つきな狂人】だと。
そしてはっきり言ってしまうとお嬢様は私の事が嫌いだ。そして私も心から【お嬢様が嫌いだ】だって、そうじゃないと、それじゃなくちゃ、それでないと………私達は「殺し合ってしまうから」

そんな答えにお嬢様は「?」を浮かべた

「?………そう、あっそうだ!【あれ】持ってきた?」

『はい、勿論です。………ふふっ……お嬢様はお好きなのですね、この白薔薇と黒薔薇が——』

「な、何よぉっ私だってお花ぐらい好きよー!!」

こんなやり取りは後、少しで終わってしまうのですね。と私は小さく呟いた。
すると、お嬢様が心配そうな顔を浮かべて私の顔を覗きこんできた。

「…十流、どうしたの?元気ないよ…」
しょんぼりした顔を見せるお嬢様の顔を見るのは、初めてだ………

『…………フフフフッ、大丈夫ですよ………お嬢様。』

………でも女の格好も………楽では無いのですよ………お嬢様。
大体、お嬢様は【僕】が「男の方」という認識が無いのでしょうか………まったく、困った物で御座います…………。

《十流ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!》

………今度はレミリアお嬢様ですか…………。



























Re: 東方書古録 ( No.9 )
日時: 2011/03/01 23:42
名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)

『弐話・楽園の素敵な妖怪と人間』

【過去】

「なあ、お前ってさ、そんなに人に尽くしてどうしたいんだ?」
ん〜。難しい質問だねェ。なんでそんなこと聞くんだい?
「だってよ、異常だろお前。自分の事省みないでよ、そんな馬鹿みたいに人の為に汗流して、偶に血まで流してんじゃねえか」
まあ、それが俺だからね。しょうがないさ、性分ってやつだよ。
「……。どうだろうな、お前の【ソレ】はそんな感じじゃないと思うけどな、もっと他に理由があるんじゃねえか?」
さあねぇ〜。どうでもいいじゃない、そんな事。
それよりさ、君は、俺に何の用なんだい?
「あ、ああ。そうだったな。何ちょっとした頼みなんだ。お前にしか頼めないような」
ほうほう、それは興味深いね。僕は君の為に何でもすると、ここに誓おう!
ささっ、言ってくれたまえ。君の願いを!!
「煩いな、あんま大声出すなよ」
失敬。テンションが上がってしまってね。許してくれたまえ。
「……。まあいいか。でよ、頼みたいってことはな」
うんうん。


「ちょっと死んでくれないか?」





【現在】

朝。
人が目覚め、人の身体が活性化し、人の一日が始まる瞬間。
それが朝だ。
「……」
だがしかし、それが【気持ちの良い朝】かどうか【気持ちの良くない朝】かは、人それぞれだろう。
全ての朝が気持ち良い朝とは言い難いのは、当然であり、必然である。
「……何……コレ……」
そして、青年は【朝】を迎える。
どうしようもなく不幸で。どうしようもなく意味不明で。どうしようもなく【痛い朝】を……。

「なんで俺縛られてんだああああああああああああ!?」

縛られていた。
青年は縛られていた。
縄の種類なんて彼には解らない。だが、とりあえず、自分を縛っている縄は酷く実用的なモノな感じがすると、青年は素人判断を下す。
「つーか、なんだこの縛り方? 亀甲縛りってやつ? 手が背中に行って、痛てぇよ!」
なんとか取れないものかと、下に何もひいてない無い冷たい床を転げまわる青年。
どうやら、ここは縁側の廊下の様だ。なんでこんな所で寝ていたのかは不明だが、今はそんな事はどうでもいい。必死で青年は暴れまわる。。
だが、そんなことでほどけるほど、亀甲縛りは甘くない。
それでも、無駄と知らずに青年は頑張り続ける。
と、そこで、救いの主が現れた。
もっとも、かなり荒っぽい救い主だったが。青年の行動は強制的に止められることになった。

「じゃかあしぃいわぁっああああああああ!!」
「ぶべらっ!!」

ドゴン。
という凄まじい音と共に、青年の腹に強烈な蹴りが入る。
そして、そのまま体が宙を浮きながら、吹っ飛んでいく。
「がはっ、げほげほ。な、なんだお前はっ!!」
青年はようやく着地した地べたに這いつくばって、非難の声を上げながら、目の前の暴力人間に目を向ける。
……いや、人間というのは間違えかもしれない。
正しくは【暴力妖怪少女】だ。
「って、あれ? 君は昨日の?」
「あ、覚えてたんだ」
今さっき暴力をふるってきた人間に、にっこりと笑顔を向けながら、【妖怪少女】は言う。
「って、まだそのコスプレしてたの?」
「コスプレじゃない!」
笑顔で怒りながら、【妖怪少女】は再度叫ぶ。
と、そこでようやく青年は彼女の容姿に目をやる。
地味な服装だ。
茶色を基調とした変わった服で、頭にはこれまた変わった感じの帽子。
そして、背中には作りものには見えない【羽】が付いているのが分かる。
顔や体つきは少女のそれだ。可愛らしいコスプレ少女。
それが、青年の感想だった。
「あら、彼は起きたのミスティア」
「まあね」
と、そこで彼女の後ろからまた少女が現れる。
今度の少女は、羽つきの少女よりは大人のようだが、青年には大差ないように見えた。
「……」
だが、服装がかなり変だった。
まず、脇を大きく露出する服。
だが、どうやら唯の【服】ではなく、【巫女服】の様だ。
赤を基調とした感じで、【巫女】の清楚というイメージがまったくもって感じられない。
だが、顔つきは日本美人といって差し支えないレベルではあった。
「何よその眼」
自分をみる青年の目が気に障ったのか、【巫女服】の少女。博霊霊夢は、青年に問いかける。
「い、いや、ずいぶん個性的な服装だと思ってね。と、そんな事はどうでもいいんだ! 一体ここはどこだい! そして、俺はなんで縛られているんだい!?」
とりあえず、霊夢の服装は思考の片隅に置いておいて、自分にとって最大の疑問を目の前の少女たちに投げ掛ける青年。
それに対し、答えたのは【妖怪少女】ミスティア・ローレライだった。
「ま、詳しくは後でゆっくり話すからさ」
そういいながら、霊夢に視線を送る。
と、霊夢はその視線を受けて、ヤレヤレと呟きながらため息をついた。
そんな霊夢の顔を見ながら、ミスティアは笑顔で【青年】に素敵な提案をした。
「とりあえず、朝ご飯にしない?」

Re: 東方書古録 ( No.10 )
日時: 2011/02/11 19:05
名前: Nekopanchi (ID: 7foclzLM)

一話のあらすじ
気が付いたら湖。
俺はオッサンじゃない。
青いバカと緑の少女が現れた。
俺はオッサンじゃない。
髭のある人はみんな悪者。
俺はオッサンじゃない。


東方髭青年 第二話 『気が付くと俺は見知らぬ湖に居て、そこには緑の少女と青いバカが居ましたとさ。そして余談だが俺は断じてオッサンじゃな(ry』

……ええと……訳がわからん……何で目の前の少女二人は『浮いてる』んだ? しかも、何で俺が『オッサン』なんだ? 俺は16歳のバリバリ高校生だ。オッサンらしい所なんて何一つ無い。
まあオッサンらしい部分を強いて言うなら

『無精髭が生えている』
『今着ている物はジーパンにワーク◯ンの作業着』
『超絶天然パーマ』
『メタボ体型』
『老け顔』

以上五つだけ。オッサンらしい所なんてちっとも……って……

「よく考えてみたら俺見た目が思いっ切りオッサンじゃねえかああああああああ!」

つい全力でセルフツッコミをしてしまった。

「び、びっくりした……」

俺の突然の全力ツッコミに驚いたらしく、緑の少女がビクッと身体を震わせ、おずおずと俺を見てくる。

「い、いきなりなんなのこいつ……」

青い方も流石に驚いたらしく、訝しそうに身構えるが、正直今の俺には周りの事を認識できるほど余裕がない。見た目がオッサンという事をわかってしまって俺のライフはもうゼロよ!


それにしてもショックだ……俺はオッサンだったのか……い、いや、認めてどうする。俺はオッサンじゃないんだ。強弁しろ俺!

『俺はオッサンじゃない』
と! ……そうだ、俺はオッサンなんかじゃない。俺は高校生! ハイスクールスチューデントだ! 高校生なんだよ! 誰が何と言おうと俺は……

「高、校、生、DAー!」

「さっきからうるさいよオッサン!」

「…………………………」

青眼の白竜を嫁の如く愛する勢いで自己暗示をかけている途中に、青い少女の声で無理矢理現実へと引き戻された。

「あー、もうあんたみたいなワケわかんない奴はあたいが成敗してやる!」


そして少女は俺の意味不明行動に怒りを覚えたのか、地上に降り、どこからか札を取り出し、高らかに声を上げて先程の札をこれ見よがしにそれを掲げた。

「だ、駄目!、チルノちゃんそれを使っちゃ——!」

それを見ていた緑の少女が宙に浮いたまま、心配そうな表情の表情をより一層心配そうにし、青い少女に何かを言いかけるが当の青い方はその声に耳を傾ける気は更々無いらしく、札を掲げ、緑の少女が言い終わらない内に、先程に負けない程の声量で声を上げた。

「氷符『アイシクルフォール-Easy-』っ!」

言った瞬間、青い少女のすぐ後ろのあたりに拳大の氷の結晶が数個展開され、それが軽い弧を描いて俺の方へと向かってきた。
しかも、そうしている間にも次々と氷の結晶が少女のすぐ後ろで生成され、矢継ぎ早に俺の方へと向かってきている。


お、おいおい……な、なんだよこれ……!

最早『見た目がオッサン』である事にショックを受けている場合じゃない…!
あれ……当たったらやべえよ……!

俺が完全にビビってしまっているのを知ってか知らずか、緑の少女は呆れたような眼差しを青い奴に向け、

「それ、真正面ががら空きでしょチルノちゃん……どうして懲りないかな……」

と、溜め息混じりに呟いた。

その呟きは誰かに言った訳ではなかった様だが、その呟きは確かに俺の耳へと届き、微かな希望の光へと変わった。

ん……!? 『正面ががら空き』!?

青い奴を見てみると、確かに真正面に氷は通っていない。つまり、完全安置だ。
……今、向かってきている氷を掻い潜ってアイツの前に行ければ氷は当たらない…! 避けるのは簡単じゃないだろうけど……幸い向かってきてる氷の速度はあまり速くない……ビビんな……進め俺……!

俺は自らを奮い立たせるため、無理矢理不敵な笑みを浮かべ、一気に突撃した。。

……さて、ここで読者の皆様に質問です。これから俺はどうなるでしょう。

①ミラクルカリスマボーイな俺は見事氷を掻い潜り、少女の目の前にたどり着いて、その幻想をぶ(ry

②グッドルッキングハンサムボーイな俺は、巧みな話術で目の前の青い少女を説得し、そのまま や ら な い k(ry

③エキセントリックおっさんボーイな俺ではどうしようも出来ない。掻い潜ろうと頑張るがすぐにイ゛ェアア(ry

………………………………

……考えるまでもないですか、そうですか。
……いやさ、俺もわかってたんだけど、ほら、あるじゃん? そういうのって。

結論——


「いぃぃくぞおおおおお!この程度の氷、全部避けたらあああああ!」

俺は今自分に出来るだけの啖呵を切り、一歩目を力強く踏み込んだ。そして、すぐ目の前まで迫っていた氷の結晶をギリギリで避け、前進。避け、前進を繰り返す。

……あ、あれ?。慣れりゃ大した事ねえじゃねえか……! これもしかしたら①じゃね!? 俺、ミラクルカリスマボーイなんじゃね!?

俺は歩みすら遅いものの、着実に、そして氷にも当たらずに前へと進んでいる

そして、最初十メートルほどあった少女との距離は今や四メートルほどまで縮んでいた。もうほとんど目と鼻の先だ。……さて、どうしてくれようか……!

そこで俺の頭で悪魔、すなわち悪心が囁いた。

『構うことはねえ! そいつは俺を何度もオッサン呼ばわりしたんだ! 殺っちまえ!』

……そうだよな……おまけにコイツは俺を攻撃してきたんだ。反撃してもバチは当たらないよなぁ……!

俺は、変わらず氷を避けて進みながらも勝利を確信し、拳を握って、いつでも殴れるようにした。

だが、そこで天使、要するに俺の良心が食い下がって反論してくる。

『早まってはいけません!
 落ち着いて殺るのです! それ! 殺れ!』

「いやお前良心じゃねえのかよ!? お前ら二人とも意見同じじゃ葛藤のしようがねえじゃねえか! というか俺の良心ろくでもねえな!」

つい、避けるのも忘れて思いきりツッコんでしまいました。

その結果……

「バオバブ!」

腹にモロ被弾しました。氷は思ってたのよりずっと重くて変な断末魔も上げちまったよ。
そして、意識が一気に遠のき、間もなく途絶えた。

——答え③。

つづく


Re: 東方書古録 ( No.11 )
日時: 2011/02/17 23:09
名前: Agu (ID: gWH3Y7K0)



文字通り、煙となって消え去った白夜さんを少しの驚きと共に見送る。
まさか彼女も『妖怪』だったんじゃないだろうな?

「さて、雨城様。館へ赴く準備は完了しておりますでしょうか?」

静かな微笑でそう質問してくる藍さん。

「準備も何も……身の上以外、何か必要なのですか?」

少しばかりの皮肉を込めた俺にくすりと藍さんは微笑む。

「ええ、ええ。何も、何もいりません。大丈夫ですよ。ただお心の方はどうかと思いまして……」

「……何か、特殊な移動方法なのですかね。そんな、心の準備がいる様な」

彼女は顎に手をやって考え込む仕草を見せると、俺に答えてくれた。

「いえ。ただ慣れない者は少々気分が悪くなる様でして。個人差がありますから何とも申せませんが、大体、下に“落ちていく”ような感触を味わいます」

……下に落ちていくような感触ねぇ。胡散臭いな。
だからと言ってこの状況では拒否も出来ないし、まぁ、物は試しだ。

「そう、ですか……たぶん大丈夫だと思います。昔から酔いには強い方なので」

そう返した俺の何が面白かったのかは分からないが、藍さんはまたくすくすと笑う。

「そうでしたね。貴方様は“そうでした”」

まるで“昔の俺を知っている様な”そんな口調だ。
だがその言葉には、何処か温かみが含まれている様にも聞こえた。

と、唐突に笑いを止める彼女。

「……くす、失礼しました。貴方様の準備は完了ですね……それではご招待します。我が主の館へ……」

そう藍さんが喋り終えると、突然、足元がぐらぐらと揺れる。
俺は嫌な予感を直感的に感じた。下だ。

首を地面に向けるのと同時に、足元の草道はパッカリと左右に割れ、そして。

俺は落ちていった。


*  *


ギューンギューンギューンギューン。わた〜しの彼は〜パイロォット〜。

ひたすら下に落ちていく感覚に某ロボットアニメの曲を思い出す。
この状況でどういう連想をしたのか、自分を小一時間問い詰めたい気分だ。

恐らく、飛行機、宇宙、無重力繋がりか。

自らの頭の単純さを半ば呆れを持って考察していると、不意に、落ちた直後から周囲360度うにょらうにょらしていた目玉が、消え去った。


「Why?」


ポツリとそう漏らしたその言葉が終わるか終わらないかの内に、景色は暗色から一変する。
そして次に感じる重力の拘束。

ダンともドンともしなかった。ただフワッと浮かび上がってフワッとまた足が付いた様な……そんな感触だ。うん。

まず目に入ったのは青々とした芝生——いや、苔だな。そして綺麗に整えられた植物。木もあるが、太くはなく、高くもない。細く、短い。
それに苔が生えた丸石や竹垣などが各所に配置されていて……

そんな周囲の風景に視線を巡らしてみて、一つの感想が脳から飛び出てくる。

日本庭園。

そうだ、ピッタリだ。先ほどの汚名は返上してやってもいいくらいに。
俺は一人うんと頷く。さてそうなると。

「これだな」

眼前にどっしりと、それでいて景色と馴染んでいる物がある。
——日本式の家だ。そう武家屋敷と呼ばれる奴。

もう一つ分かることがある。ここは玄関方向ではない。屋敷の縁側に当たる部分が見えているからだ。

つまりは誰かさんの庭へ侵入してしまった訳だが……
俺は恐らくここが八雲 紫とやらの館だろうと結論付ける。

というかそれ以外無い。

まさか間違えて他人の所へ飛ばしちゃいました、てへっ☆ なんてことはないだろう……

何となく不安な気持ちになりながらそんな事を思考していた矢先。
縁側の奥、障子に閉じられたその内部から、良く通る、しかし決して大きくはない、魅力的とさえ言える声が聞こえた。

「……智。また会ったわね」

閉じられていた障子が静かに開けられて、そこから出てきたのは。

「良かった。無事で」

蠱惑的な微笑みを口元に張り付かせたブロンドの少女、俺が現実世界で遭遇したあの……
————八雲 紫だった。


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