二次創作小説(紙ほか)
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- はじまりのあの日
- 日時: 2017/09/24 18:09
- 名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)
はじめまして
ボーカロイドの二次小説。話しはオリジナルのストーリーです
神威がくぽ×鏡音リン
MEIKO×KAITO
氷山キヨテル×Lily
めぐっぽいど×VY2勇馬
巡音ルカ×鏡音レン×初音ミク
の組み合わせがダメという方は、読まれない方が良いと思います
恋愛小説のつもりですが、そこまで恋愛じみた話しではありません(あくまでつもり)
どうぞ宜しくお願いいたします
登場人物(最終的に登場する人物)
元音メイコ(もとねめいこ)
継音カイト(つぎねかいと)
初音ミク(はつねみく)
鏡音リン(かがみねりん)
鏡音レン(かがみねれん)
巡音ルカ(めぐりねるか)
重音テト(かさねてと)
神威がくぽ(かむいがくぽ)
神威めぐみ
カムイ・リリィ
神威リュウト
カムイ・カル
氷山キヨテル(ひやまきよてる)
可愛ユキ(かあいゆき)
Miki(みき)
猫村いろは(ねこむらいろは)
歌手音ピコ(うたたねぴこ)
オリバー
ビッグ・アル
IA(いあ)
呂呂刃勇馬(ろろわゆうま)
歌い手総勢21名
プロデューサー1
プロデューサー2
プロデューサー3
- Re: はじまりのあの日 ( No.24 )
- 日時: 2017/09/26 06:32
- 名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)
テンション高いよね、わたしも含めて
「デザート、厳選して買って参りました。アイスクリームとジェラードです。私は、天使の皆さんとお菓子分けておきますね」
「ハウスで作業しよ〜ぜセンセ。和好きに、かぼちゃ饅頭と葛ようかんも買っといた。みんなでやろ〜ぜ」
「「「「みんなでしま〜す」」」」
それぞれエプロンを着ける
「では調理音痴の拙者ハ、BBQの準備ヲイタソウ。外のLayout(レイアウト)整えておくでゴザル」
アルさん、卸し市場の人が着るようなエプロンをつける
「アタシも外、手伝うわ。ビールサーバー、用意しなきゃね」
「ボクも外作業してやるぜ」
外、マンション、神威家。一度別れる。テト姉も外作業『隊』時代に付けていたという、野外エプロン姿。ミク姉、ルカ姉、レン、カル姉はカイ兄のお手伝い。神威家のメンツは、午前中にプラスMikiピコちゃん。シェアハウスでは、先生、リリ姉、天使様。お菓子の盛り付け。まず始めに、お寿司用のご飯を炊きあげる。蒸らして、桶にあけた段階で、調理が本格化
「イカと里芋煮、かぼちゃの煮物、リンとIA担当。イカは俺が捌くし、かぼちゃは切るから。茄子の仕込みは勇馬。味付けは、俺がやる。挟み焼きはめぐ、とりあえず、納豆挟んでほしいじゃない」
「オッケ〜がっくん」
「は〜い神威のに〜さん」
手を上げるIA姉。ひよこアップリケ、フリフリエプロンがカワイイ
「了解っす、切っときます」
「焼くのは後で良いよね、ぽ兄ちゃん」
ここのメンツは、料理が得意。というか、台所要員はある程度料理上手
「ご飯、扇いで冷ましますね〜、Mikiちゃん」
「ありがとピコきゅん。じゃ寿司酢つくっちゃお〜」
ピコ君、うちわを取り出す。Mikiちゃん、フリフリエプロンなのに、額にねじり鉢巻き。大層シュール。紫様まずは、かぼちゃを洗ってレンジに入れる。レンジで温めると、かぼちゃが切りやすくなる。ヘタを取って、真っ二つ、種とワタを取り除く。糸かぼちゃも似たようなもの
「いつ見ても、手際いいよね〜ぽ兄ちゃん」
「長くやってるからな。この種も炒って、ツマミにするか」
めぐ姉と会話しながら、食べやすい大きさに切ってくれる。鍋に入れて
「あとはお願いな〜」
「「は〜い」」
わたしたちに渡してくる。今度は手を合わせ、お魚さんに感謝を捧げる。イカを捌き出す、紫の彼
「わ〜、ちょっとぐろぐろ〜。でも、に〜さん上手〜」
「ぼく、お魚さんは捌けません〜」
それを観ていたIA姉、改めて感想。ピコ君、野菜は切り分けられる
「ふふふ、しっかり見ろよ〜IA。目を離すんじゃない。ピコ俺達は、この命を頂いて生きてる」
「さっすがアニキ、お寿司屋さんの大将にも、同じ事言われたよ。うちも捌くのは習いそびれたなぁ」
彼の口癖。手を赤く染めながら調理。丁寧に、水で流して、切り分ける。Mikiちゃんも感心
「よしっと、イカのワタは、塩辛にでもしとくか。またメイコが喜びそうじゃない。はい、置いとくよ〜」
調理バットに入れ、わたしとIA姉に告げてくる。わたし達は、お酒を飛ばし、煮物にかかる。ふたたび魚に向かう、紫の彼。今度は鯛。鱗を落とす綺麗に三枚おろし。丁寧に水であらう。バーナーで、鯛の皮を炙る
「お刺身焼くの〜、神威のに〜さん」
「あ、食べたことなかったかなIA姉。皮を炙ってね、お造りにするんだよ。鯛の松皮造り。塩で食べるのが美味しいよね、がっくん」
さといもの皮を剥き、切り分けながら言うわたし。得意気に
「本当に分かってるじゃない、リン。お利口さ〜ん。カイトも言ってたけど、料理の腕も上がってるじゃない。ご飯のお供にも最適だ、IA。小ネギ散らしても、美味しいぞ〜」
切り分けながら、微笑みかけてくれる彼
「リンちゃん『ぽ兄ちゃんのお料理教室』でお料理修行〜って感じカナ〜。あ、じゃあぽ兄ちゃん、アラ汁も作ろうよ。もったいないもん、捨てちゃうの」
「格闘、居合、料理に歌。がくサン多彩、そこがカッケエ所っすね。自分も精進するっす。なら、グミサン。オレ、骨せんべい作るっす。良っすか、がくサン」
それぞれの支度に取りかかる二人。調理のアイディアが素晴らしい
「い〜じゃない、二人とも。良案、感心感心〜。ネギ、三つ葉、油揚げ。材料も揃ってるし、任せた、めぐ。勇馬、油はね注意しろよ。お前も、可愛い顔なんだから。味付けは、甘くしてあげようじゃない、天使様のために」
言っている間に、出来ていく刺し盛り。メンバー、楽しく調理。完成したお造りの舟盛り、冷蔵庫へしまう
「こっちはMiki、使っておくれ」
「ありがとうアニキ。よっしゃ、握るぞ〜」
腕をまくり、気合いを入れるMikiちゃん。酢飯を右手で掴み、そのまま回転させて、器用に握る。適当な大きさになったところで、ネタを載せ、大皿へ
「わわ、Mikiちゃんすっご〜い。本物のお寿司屋さんみたい」
「オイオイMiki、たいしたモンじゃない。めぐ言うように、それ出来ない寿司屋だって多いぞ。しかもシャリ、捨てないのが良いな」
「ありがと〜アニキ、グミね〜さん。でも、シャリの大きさ揃えられなくってさ。いっつも大将にダメ出しされてたの〜」
Mikiちゃん褒められて嬉しい。けれど、技術が高くないと、謙遜の照れ笑い
「がっくん『それ』ってなあに〜」
「ああ、寿司に握るの、見たことなかったか。寿司のシャリ、ご飯をさ、Mikiみたいに、片手で握る。それ、結構凄いことなの」
「へぇぇ〜そうなんだぁ〜。Mikiちゃんすっご〜い。本当にお寿司屋さんに見えちゃうなぁ」
照れ苦笑いする、Mikiちゃんのお寿司は確かに不揃い。でも、にぎり寿司さえ『自家製』ができる素晴らしさ。わさびを塗らないのは、天使様の事を考えて。お刺身用にわさびはおろすので、各々盛れば良い
「はいっ、鯛の松皮握り。みんなで味見して〜。不味くなきゃいいけどな」
Mikiちゃん、にぎりたてのお寿司。味見を促され、みんなで頂きに行く。載っているネタの鮮度の良さ、皮の香ばしさ、そこに、塩梅絶妙の酢飯。シャリがホロリと崩れ、口の中でハーモニー。僅かの間、声が出ない一同
「あ、だ、ダメだったかな」
「〜違いますよぅ、Mikiちゃ〜ん。すご〜く美味しいです〜」
ピコ君、Mikiちゃんの手を取って、目を煌めかせる。味わい終わって、ようやく声をあげるメンバー
「やっべ、超〜うめぇ。これすっげぇわMiki」
「さんきゅ〜勇馬。ほっとした〜」
勇馬兄、頬張った片手で、口を覆って破顔
「美味いじゃないMiki、こりゃ、ヘタな本職にも勝るぞ」
「ぅ〜、Mikiちゃんのお寿司、おいしいよ」
紫様、Mikiちゃんの肩をぽんぽんする。IA姉は両頬を挟んで身もだえ
「本当においしいよ、Mikiちゃん。負けないように、頑張ってお料理しなきゃね、がっくん」
「だな、よ〜し、気合い入れ直そうじゃない」
言って調理に戻るわたし達
「ありがとう、アニキ。リンちゃんも〜。よっし、うちも気合い入れちゃうぞ〜」
「本当に美味しい、Mikiちゃん。わ〜、パーティー楽しみ」
めぐ姉もお料理に戻りつつお礼。一通りの魚を捌いてくれる紫の彼。鱧と穴子の湯引きは彼。骨を丁寧に取る技術は、彼でないと成しえない。捌いてくれたものを、各々調理。白焼きは勇馬兄、蒲焼きはわたしが作成。Mikiちゃんが、穴子とうなぎの握りも作ってくれる
「あら、酢飯余っちゃうか。もったいないなぁ」
「あ、普通の油揚げってありますか、かむさん。Mikiちゃん、ぼくおいなりさん作ります〜」
決してモノを無駄にしない。メンバーの大事な心がけ。まあ、酢飯余っても、何かしらに使うだろうけれど
「あ、ピコきゅんのお料理、うち食〜べた〜い」
「あるぞ〜、ピコ。素晴らしい案じゃない」
ピコ君、油揚げに味を付けて、鶏そぼろ入りの五目いなりを作成。茄子の揚げ浸し、味を付ける彼。めぐ姉とIA姉は味玉子、みそ玉子をお皿へ。鯛のアラ汁、骨せんべいまで制作。三時半には大体の料理が完成。その、良いタイミングで
「おいしそうなにおいがします、いろはちゃん」
「お料理がたくさんだ〜、リュウト君」
「おにぃ、どんなカンジ〜」
天使様が、リリ姉、キヨテル先生と共にやってくる。リリ姉は、長めの髪を一纏め。おでこを出し、髪を高い位置で一纏め。お手伝いがしやすいスタイルだ
「全品完成だ、リリ。煮物は温め直すから、玉子ちゃんズは運んでいいんじゃない。汁物は外のコンロへ載せて〜」
「承りました、神威さん。マンションの皆さんも、準備の最中です」
汁鍋を手にするキヨテル先生、そこに加わる
「ユキもてつだうよ、ぽ父さん」
「ぼくもです、にいさま」
「みんなでおてつだいしよ〜」
「ハコビマフ〜」
作っておいた物を温め直し、天使様、と共に外のテーブルへ。煮物、枝豆や切った生野菜、手に持ったり、キャスターに載せたりして。それぞれメンバーが運んでいく。最後にわたし、残りの土鍋を持つ。紫の彼、刺し盛りを手に外へ出る。と
「あ、殿達も美味しそうなの作ったね〜」
「おれもぅ、お腹空きすぎてつらいよ〜」
寸胴鍋を手に、カイ兄、漂うカレーの香り。グラタンの入ったプレートを、鍋つかみを使って持つレン。美味しそうな物とやってくる
「切り分けたお肉もお持ちしましたわ。ミートスパゲティも」
「鶏肉パスタ、ビーフシチューも美味しそ〜だよ〜」
「そっちも同じじゃない、カイト。すっごく美味しそう。ルカ、ミクもありがとさ〜ん。さすがにお腹すいちゃうじゃな〜い」
キッチンタイマーが鳴り響く。枝豆の塩梅が頃合いの時間。電子音で、意識が今へと帰ってくる。この数分間、作業しながらどれだけの事を思い出していたことか。枝豆、ザルに乗せたらテーブルに置いておくので良いな—
- Re: はじまりのあの日 ( No.25 )
- 日時: 2017/09/26 06:43
- 名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)
枝豆の熱を取るため、テーブルへ。蠅帳をかぶせておく、と、耳にはいる、ビアガーデンという単語。はは、また思い出が込み上げる、天使様の歓迎会。あの日、ご馳走を手に行くと、先に楽しんでいる面々がいたっけ。あの日買ったんだよね、ビールサーバー。行きましょう、記憶書庫—
「でも、ほ〜んとお腹減った〜」
「これからが楽しみですわぁ」
ミク姉とルカ姉の言葉。紛れもない事実。ご馳走と共に、外用のテーブルや椅子が並ぶ場にたどり着く。そこに広がっていた光景は
「お、ウマソ〜なのがやって来るぜ、肉が食えるぞ。美味く焼いてくれよ〜カイト、かむい〜」
「おつまみたくさん、嬉しいわ〜。ありがとカイト。純米用意しておいたわよ、神威君」
料理を並べるため、折りたたみテーブルを何卓か並べてある。その上にテーブルクロスも掛けてくれるのは良いのだけれど。一緒に載っているお総菜、フランクフルトやサラミ、チーズちくわ。金銀の包みに入った、マグロブロックを並べながら、ご機嫌テト姉、めー姉
「重音、おまえ達、もうヤリ始めてるのか。いい気なもんだな、天使様もお手伝いして下さるってのに。Sabotage(サボタージュ)ってヤツじゃな〜い」
「あら、神威君、人聞き悪い。サーバーのテストよ。しっかり動くか、確認しておかなきゃね〜」
めー姉、さらにビールを一息に流し込む。さっそく、おかわりを注ぎ出す始末
「あ〜もう、め〜ちゃんは〜。うわっしかもこれ、業務用の買ってきたのか。まぁ、テストって事にしておいたげる。はは、アルまで始めてるのか」
「Sorryお二人に当てられたでゴザル」
鎮座している、最近買ったビールサーバー。ボトルはお店用。手には、全高(で良いのだろうか)40㎝のメガジョッキ。バツが悪そうなのはアル兄
「にゃはは〜、良いじゃね〜か『ハレ』の日なんだからよぅ。サボってね〜から、炭だって熾して(おこして)おいたぜ」
外用のコンロや焼き台が出され、消火器まで用意してある。ガスボンベを使う鉄板焼き用の物。炭を用いて、網で直火焼き仕様と二種類
「言葉もナイ、な。呆れちゃって。ったく。じゃあ、始めようじゃない。何だかんだ、俺もお腹空いちゃった」
お造り盛り合わせを、テーブルに置く彼。ビーフシチューの鍋は、コンロに鎮座。その隣、土鍋ご飯の第一陣が、すでに火に掛けられる。カレー鍋、アラ汁は〆時に近い品なので、鍋敷きを敷いてテーブルへ置くカイ兄。どの料理にも、蓋やラップがしてあるのは、虫除け対策
「わ〜すご〜い、ぽ父さん」
「ゴチソフデフ〜」
「うあ〜マジ腹減ったっす、がくサ〜ン」
テーブルの上に並ぶ食べ物。それは、五つ星レストランのバイキングを上回る。はしゃぎだす天使様。勇馬兄を始め、わたし達も急激にお腹の虫が騒ぎ出す。さっきのレンではないけれど、お腹が空きすぎてつらい
「よしよしわかった。乾杯と『一言』済ませようじゃない、メイコ。肉や野菜は、それから調理しよう、カイト」
「いいわね、神威君。みんな飲み物注いで〜」
「天使様に、バナナミルクも作ったよ〜。レンも飲むでしょ」
年長三人、声が掛かる。優先的に、天使様のコップが満たされる
「では、皆さんから一言お願いしますね」
「じゃあ、リュ〜からっ」
一言を促す先生とリリ姉。リュウト君、話し出す
「ありがとうございます。あいたかった、にいさまに。あいたかった、ねえさまに。あこがれのみなさんに、やっとあうことができました。さ、さみしかった。い、いまはすごくしあわせです。う、うう〜」
無言で抱きしめる、神威の兄妹。メンバー全員、もらい泣く。神威の両親は忙しい人だ。ここに来るまで、ハウスキーパー生活だったというリュウト君。一人ぼっちの時が長かった。想いと涙が溢れ出る。こんなに泣く歓迎のあいさつは初めて。しばらく涙が止まらない
「リュ〜、これからは、おにぃとおねぇ、ウチもカルも。みんなも、ず〜っと一緒だからな」
「カワイイリュウト。俺と、俺達と。一緒に歌って生こうじゃない」
「だいすきです、にいさま、ねえさま、みなさま」
リュウト君と、わたし達。縁を深め合う。キヨテル先生、眼鏡をあげ、涙を拭って
「さあ、次はユキさんですよ」
「はい、先生。えっと、まだみんなみたいに、おうた、じょうずじゃないけど」
「「「「「「「「「「そんなことないよ〜」」」」」」」」」」
メンバーから、自然にあがる声。照れ始めるユキちゃん。もの凄く可愛らしい
「みんなとおうた、うたえるの、ユキすっごくたのしいです。きいてくれる人のために、がんばります」
微笑みの直撃。なんて健気。これまた、しばらく声が出ないメンバー
「〜はあ〜。つ、次はいろはちゃん」
なんとか立て直すカイ兄
「あたしもすっごく楽しいで〜す。みんなで歌えて、みんなでおどって、みんなによろこんでもらって。やさしくしてもらって。お兄ちゃん、お姉ちゃんたちが大好きです」
可愛らしすぎて、もはや辛い。なんだか疲れてさえくる
「トリ、オリバ〜」
紫様も限界に近い声で促す
「ボフ、ニホゴモ、マダジョフズジャナイ。デモ、ミナサンヤサシイ。タノシイ。サビシクナヒ。みんなだいすき、My Family」
最後は全員拍手。微笑むオリバー君。やっぱり笑顔の波動が直撃する
「「「「みんなどしたの〜」」」」
天使様に声をかけられるまで、意識がどこかへ飛んでいたわたし達
「じゃ、乾杯しましょうか。発声は〜リン〜」
選ばれるわたし。さて、何を言おうかなと、少し考える。別に特別意識する必要無いか。そんなに良い頭じゃないもん
「ありがとめー姉。天使様、ありがとう。わたしも嬉しいよ、みんなと歌えるの。これからもたくさん歌っていこうね。カイ兄、がっくん、今日もありがとう。そしてお疲れ様。じゃあ、始めようみんな。せ〜の〜でっ」
「「「「「「「「「「かんぱいで〜す」」」」」」」」」」
歓迎会、開式。腹ぺこメンバー、直ちに料理に群がろうとする。と、手を叩く音
「はいはい、待って下さい皆さん。天使様が優先ですよ」
「大人は後だって〜の。みんな、大人気ね〜なぁ」
やや苦笑のキヨテル先生。リリ姉は腰に手を当て、あきれ顔
「その通りだぞ〜、おまえ達〜。分かってるじゃない、リリ。さすが、我が妹〜」
紫の彼、リリ姉を撫でる。取り箸を手に、メンバーを制止する
「何が食べたいリュウト、取ってやるよ」
「あぶらあげのはさみやきがたべたいです」
微笑むリュウト君、笑顔でお兄さんモードの彼。その顔が少し曇る。その理由
「ああ、ごめんなリュウト。作りたて、食べさせたくってさ。よ〜し、今から炙ってあげようじゃない。ちょっと待ってて。めぐ、リュウトを世話してほしいじゃない」
「は〜いぽ兄ちゃん。リュ〜君、待っててね〜」
屈んで、リュウト君の頭を撫でるめぐ姉。代わりの油揚げ繋がり、五目いなりを食べさせてあげる
「よ〜し、オレも焼き始めるよ、殿。テト姉さんの目が『肉よこせ』になってるからね。オレに食らいつかれちゃタマラナイ」
「へへへ、早くしないと食っちまうぜ〜カイト〜」
わきわきと手を動かし、どす黒い微笑み、テト姉。エプロンを、ふたたび身につけ、立ち上がる『超アニキ様』達。焼き台へ向かう
「あら、アネキ、カイトを食べて良いのは、わたしだけよ〜」
「まあまあ、お熱いことですわ〜」
両頬を挟み、頬を染めるルカ姉
「めいこさんがたべるんですか」
「カイトさん、食べられちゃうの〜」
「ええっ、食べちゃうの、カイトさんをっ」
「オ、オバケミタイデ、コアイデフ」
どういう意味で『食べる』という単語を用いたか、あの日、わたしも天使様も知らない
「ああ、あの歌の事だろ〜、メー姉。おまえら気を付けろよ〜、食べられちまうぜ〜」
感づいたのだろう。リリ姉は、めー姉の持ち歌にすり替え、誤魔化す
「ふふふ、気を付けなきゃだめよ〜天使様。わたしはカイトだけじゃ〜な・く・て。リンやレンも『食べちゃった』ことがあるんだから〜。あなた達みたいに可愛らしい子は、頭から食べちゃうかもしれないわ〜」
言って、天使様を追い回す。きゃあきゃあ言いながら、逃げ回る天使様。めー姉の『持ち歌』の事だったのかと、あの日は勝手に理解
「メイコさん、皆さん、お食事の時に走ってはいけませんよ」
「「「「「は〜いせんせい、ごめんなさ〜い」」」」」
眉を下げ、苦笑の先生。めー姉含め、一同謝る。本格的に、宴を始め出すメンバー。天使様は、甘いポテトサラダ、ナポリタンでご満悦。茄子の揚げ浸しに喜ぶユキちゃん。あの位の歳だったな、レンがまだ、茄子食べられなかったの。よ〜し、わたしも『彼』のお手伝いしよう。でも、彼ら料理を手にしていないよね。ならば
「がっくん、カイ兄、何が食べたい〜。わたし、持って行くよ」
「あにさま、かいさま、りくえすと〜」
調理に向かう『二人』を気にして『彼』を気に掛けて、言うわたし。カル姉も心配り
「ありがとう。でも、大丈夫だよ、リン。皆と食べてて」
「食べてて良いじゃない、カル。焼きたてのも食べてほしい」
でもそれじゃ〜、声を出そうとしたわたし
「それじゃ〜不公平だよ、神威のアニキ〜」
「リンちゃんと一緒に、お酌しま〜す。かむさんっ」
枝豆を取り分け、Mikiちゃん。純米を手に取り、ピコ君。味方してくれる声に遮られる
「そうよ、み〜んなで楽しむものじゃないの。カイト、何が食べたいかしら〜」
「焼きたて食いてぇからな。必然、お前の所に行くぜカイト。ついでに、差し入れてやる」
先に『楽しんでいた』めー姉、テト姉も。彼らが作ってくれた料理を片手に、飲み物を手に。集まり始めるメンバー。ちなみに、テト姉の『食った』に反応しないのは『会ったときからだ、治るはずないじゃない』と紫の彼。出会ったのは小学校の入学式だったそうで。その彼とカイ兄の周り、出来る人の輪。談笑しながら食べる。土鍋ご飯が炊きあがり、蒸らす時間に入る
「この胸肉パスタ、赤ワインと良く合いますわ、氷山さん。香ばしくておいしいですわぁ」
「本当ですか、ルカさん。あ、トマト載せのモッツァレラバッカ、白に合いますよ」
「ふ〜ん、酒は飲めないもんな、ウチはまだ〜。センセ、ワインて美味い、それ、一口飲ませてよ」
成人を迎え、お酒を窘めるようになったルカ姉。甘いロゼワインで上機嫌。辛口、白ワインを楽しむキヨテル先生。ワイン好き二人、意気投合。横のリリ姉、ややつまらなさそうに、口を尖らせる
「いけませんよ。リリィさん、未成年じゃないですか」
「い〜じゃ〜ん。一口、ヒトクチだけ〜」
驚きと、やや咎める声色の先生。いたずらっ娘モードのリリ姉、さらに先生に絡みだす
「な〜、いいじゃ〜んセンセ。ここだけの話しにすれば〜」
「お〜いリリ、テルを困らせんな。大体真似して、他の子供が飲みたい言ったらどうすんだ〜」
獰猛に言い放つ、紫様。やや、ご立腹だ。何故なら、語尾に『じゃない』が付いていない、一切。ぐうの音も出なくなるリリ姉が涙ぐむ
「そうですよ。皆さん、お酒は二十歳に成ってからです。リリィさん、良い子にして下さいね。後で、ハニーティーを煎れて差し上げますから。楽しく、デザートの時間を過ごしましょう」
言って、リリ姉の肩に手を置く先生
「テルだって、そんなに飲む方じゃないんだ、リリ。これから、お前の好きな『越後牛の塩胡椒焼き、パイン添え』焼いてあげようじゃない」
今度は、優しい言葉を掛ける紫のおにぃ。涙を拭い、微笑むリリ姉
「も〜、フッタリ(二人)とも石頭〜。ありがと〜センセッ。おにぃ」
憎まれ口は、リリ姉の照れ隠し。今思えば、意気投合するキヨテル先生、ルカ姉に嫉妬していたのかもしれない
「お酒飲めなくたって、楽しいよ〜リリちゃん」
「ん、めぐ姉もゴメン。コレ、美味いのセンセッ。一個ちょ〜だい」
年齢はルカ姉と同じなので、飲んでも良いめぐ姉。ただ、お酒が苦手。今度はご機嫌で、モッツァレラバッカをつまみ上げるリリ姉。そのやや前方では
「カイ兄、何食べたい。おれ取ってくるけど。はっふっ」
グラタンを食べながら、レン。熱かったらしい、あわてて、飲み物を流し込む
「ほ〜ひ、はひひい、ほはへ〜(は〜い、カイ兄、お酒〜)」
野菜サラダを頬張るミク姉。手にはお酒
「ありがとう、レン。じゃあ、Mikiちゃんが握ってくれたお寿司を。ミクにも感謝をいたします」
レン、ミク姉が兄を気遣う。越後以来、日本酒にはまっているカイ兄。最近は、度数の低いスパークリング清酒が好み。兄曰く
「度数が低い分、長く飲むことが出来るからさ。それに、甘くって美味しいんだ〜このお酒」
と言うことだ。お酌するミク姉。隣に陣取る、めー姉と杯を合わせるカイ兄
「さあ、出来たぞリュウト。熱っいから、気を付けて食べようじゃない。まとめて五枚焼いたから、皆で食べてほしい。切り分けは、そこのナイフでな。つまみにも最適じゃないの、メイコ様」
「ありがとうございます、にいさま」
「ふ〜ふ〜してあげるね、リュ〜くん」
紫様とリュウト君のやりとり。切り分けてネギ、かつお節、ショウガ醤油をかける。冷まして、食べさせてあげるめぐ姉。口の周りを拭いてあげる
「ありがとうございます、めぐねえさま。にいさま、とってもおいしいです」
微笑ましいやり取り。メンバー全員、心が温まる
「ふふふ、ありがとう神威君。アタシは、ネギ味噌で頂くわ〜」
「Thank youでゴザル、神威殿。拙者ハ、キムチで」
「かるは大根おろしと、刻んだおねぎで〜」
ご機嫌が上機嫌へと高まるめー姉、アル兄。取り皿の上でトッピング。飲める二人は、食べてビールを、ジョッキ半分まで流す。至福の吐息。カル姉の手には野菜ジュース
- Re: はじまりのあの日 ( No.26 )
- 日時: 2017/09/26 06:45
- 名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)
わたしは、松皮造り数切れと塩、ワサビを持って、彼の横。自分用の飲み物はレモンティー
「はい、がっくん好きだったよね、お刺身で日本酒。あ、これからお肉焼くでしょ、手伝うよ〜」
「ありがとう、リン。ああ、その前に、網、換えちゃうから。そしたら横で、野菜焼いて欲しいじゃない。塩胡椒で、お肉食べたいヤツはコッチにお〜い〜で〜」
網を換え、牛肉を焼き始める。わたしは野菜。玉ねぎ、パプリカ、茄子。トウモロコシにタレを塗る。ミク姉が買ってきた空豆、塩水に漬け込んで置いたもの。サヤごと豪快に焼く
「はいっ、かむさんどうぞ。お酌で〜す」
「あにき〜、枝豆もど〜ぞ〜」
「ありがとうお利口さん。二人もたくさん食べてほしいじゃな〜い」
ぐい飲みを手渡し、お酌を始めるピコ君。調理台に枝豆を置くMikiちゃん。すると隣の焼き台から
「Mikiちゃん、こんのお寿司すっごく美味しいよ。うっわ〜、これすごい」
わたし達はもう、試食済みのお寿司。紫様とMikiちゃん、二人の『合作』不味いはずがない。カイ兄の言葉に、一目散。お寿司に群がるのは、レン、アル兄、ミク姉
「はいはい、だ〜か〜ら、みんな。天使様が優先だってば」
「少しは学習しろっつ〜の〜。ったく、天使組の取り分けちまうぞ」
今度はさすがに困り顔、めー姉。リリ姉、呆れながらお寿司を取り分ける
「ああ、リュウト。さっき食べてたおいなりさんは、ピコが作ってくれたじゃない。お礼言っとけよ〜」
「ぴこさん、ありがとうございます。とってもおいしかったです。にいさま、おしえてくれてありがとうです」
深々と頭を下げるリュウト君。天使のみんな、四人全員、お利口さん。お料理に、我先にと群がらない辺りも慎み深い。逆に自分が恥ずかしい
「っと、焼き台の近くに置き場ね〜な」
「デハ、何卓かを移動させるでゴザル」
でもこうやって、何事も率先して動き出すアル兄。やっぱりこのメンバー素敵。焼き台の周りに小型テーブル到着、完全に野外バーベキュー付き立食パーティー会場
「サンキュッ、アル。ほらみんな〜食べようぜ〜」
「色んなモノ、少しづつ持って行くっす」
素直にお礼、リリ姉。勇馬兄、お皿に様々盛って持ってくる。みんなで味わう至高の料理
「神威のに〜さん、お口開けて〜」
松皮造りに塩、わさび、小ネギを盛って差し出すIA姉。自然体で召し上がる紫様。鯛を味わい、お酒を流し込む
「ん〜ん。やっぱコレだな。ありがとうIA、ピコMiki。リンも、お手伝いありがとう」
嬉しそうに微笑む紫様。表情がまぶしい
「は〜い、リンちゃんもあ〜ん」
「ありがとう〜、IA姉」
わたしにも、お刺身を食べさせてくれる。適量のワサビ、塩が、身の締まった鯛を引き立てる。美味しい
「う〜にゅ、おいし〜。鯛の皮って美味しいんだね、に〜さん」
自分でも食べて、美味しい笑顔のIA姉
「初めてか、食べたの。魚の皮、美味しいよなぁ。栄養も豊富じゃない。鮭なんか、皮の方が大事なくらい。ま、好き嫌い分かれるけど」
「そ〜なんだ〜神威のに〜さん。あ、ユキちゃんもど〜ぞ〜、あ〜ん」
紫様と会話し、ユキちゃんにも食べさせてあげるIA姉。ワサビは無しで
「ふぁ〜。ふぉんふぉは〜(本当だ〜)おいしい。ありがとう、IAちゃん。ゆきも、はじめてしりました、ぽ父さん」
楽しく食べながら、調理を続けてくれるアニキ様達。わたしも、野菜を焼いていく
「お野菜、食べたい人はも〜良いよ〜。そのままでも美味しいけど、塩、タレ。どっちも、相性バツグンだよ〜」
「上手に焼くじゃない、リン。唐辛子は、どえらく辛いから気を付けろ。子供達が食べないよう、どかして置こうじゃない」
褒めてくれる、隣の彼。とてもうれしい
「頂くわ、リン。この唐辛子、空豆もお酒にばっちりよね」
「おれも貰うっす。玉ねぎ、パプリカ。ト〜モロコシもウマそ〜」
つまみ上げてゆく、めー姉。その場で、トウモロコシにかぶりつく、勇馬兄。タレで口の周りが汚れる
「ゆ〜ま君、汚れてるよ〜」
「ふ、ググ、グミさん。あ、あざっす」
微笑んで、紙ナプキンで拭ってあげる。赤面する勇馬兄。それこそ唐辛子カラー
「あはは、あっちも姉弟に見えるね、め〜ちゃん」
「勇馬の童顔も相まってね。アタシには、親戚の弟を世話する、姉にに見えるわ〜」
隣の姉弟、めー姉、カイ兄が笑い合う。香ばしく、肉の焼ける音。やがて湯気と共に、立ち昇る良い香り。隣の鉄板からも漂ってくる、堪らなく良いにおい
「ステーキソースで食べたい人は、こっち〜。第一弾、焼けたよ。赤いの滴っちゃう、レア状態で食べたい人、もう良いよ〜」
「うっしゃ〜、待ってたぜカイト〜」
肉を鉄板から奪い取り、食らいつくテト姉。切り分けさえしないで、噛みちぎる。赤ワインで流して、上機嫌
「こっちも良いんじゃな〜い。リリ、焼けたぞ〜パイン添え」
「サンキュ〜おにぃ、野菜も頂くぜ、リ〜ン」
取り皿に取り、こちらは一口サイズに切る。すると
「いろは、良かったら食べねぇ、オリバーも。胡椒、ピリっとすっから気を付けろよ」
「ありがとう、リリちゃん。いただきま〜す」
「リリタン、ボクモタベタヒデフ〜」
子供達を気遣う。二人の前にかがみ、フォークで口に運んであげる
「アラアラ、しっかりお姉ちゃんしてるわね、リリィ。感心だわぁ。まったく、テトのアネキとは正反対」
呆れるめー姉。今度は、カイ兄にお酌をする。同じ発泡清酒を、自分のコップに注ぐ
「ありがとめ〜ちゃん。あ、コンロのカレーと、ビーフシチュー。温め直して貰えるかな。シチューも、おつまみになるよ〜」
「リンが、ゆで玉子作ってくれたからさ。カレーのアタマ(カレー汁)On the玉子も、つまみに良いんじゃない、メイコ。ご飯食べたいヤツは、もう蒸らしも終わってるんじゃない」
「嬉しいわ〜カイト、温めちゃうわよ。神威君、リンもありがとう」
喜び勇んで、温めに行くめー姉。ひとしきり焼き終わって、テーブルに戻ったのは四時過ぎ。リラックスで談笑。ご飯を食べる面々は、器が小さい。ほぼ、一口サイズ。色々なものを、少しずつ食べられるようにという配慮。Mikiちゃんが握ってくれたお寿司は、大好評。すでに全品、メンバーの胃袋に消えている
「今日は、このあとさ。小一時間したら、一回閉めちゃわない。そのあと片付けして、風呂入った後二次会。スイーツ食べたい人もいるじゃない。飲み足りないヤツは、残りで飲めるし」
紫様の提案。素晴らしい妙案とばかりに
「神威君の案に賛成するわ。建物の中なら、安心して飲めるもの。寝落ちオッケ〜」
「寝落ちはどうかと思うけど、オレも殿に賛同するよ。シャワーも浴びたい」
ひたすら楽しそうなめー姉。困り顔、カイ兄。でも、声は楽しさが混じっている。古参組が賛成をはじめると
「ウチもおにぃにノッタ〜。スイーツ食べようぜ、センセ」
「よろしいですね、リリィさん。片付けは、わたし達でいたします、神威さん」
先生、今はまだ、ワインタイム。リリ姉と、ビーフシチューをアテに。リリ姉の飲み物は、紫の彼が漬け込んだ蜂蜜レモン水
「あ、そっか。和パフェ、無いなって思ってたけどがく兄」
「そ、冷蔵庫で冷やしてる、レン。どうせ、二次会するじゃない。冷たい方が美味しいよ〜」
「キムチラーメンも、ちゃんと作ってあるからね、いろはちゃん」
「やたっ。ありがと〜カイトさ〜ん」
嬉しそうな二人。天使様は四人、一緒に座る。近くでは、キヨテル先生とリリ姉が面倒を見ている。レンは、ミク姉、ルカ姉と同じ席で楽しんでいる。小一時間なんて言ったけど、三十分後には撤収開始。今の今まで宴会していたのに、二次会モードへ移行する面々。夕暮れの中、焼き台の火の始末を、徹底的にする。コンロは、ガスを外す。テーブルは明日片付ければ良い
「拙者と、キヨテル殿で、食器は洗っておくデゴザルヨ。特に拙者ハ、調理で、戦力に成れぬユエ」
「マンションのキッチンお借りしますね。その間に、入浴を済ませてください。残り物の片付けもいたしますので」
申し出てくれる、アル兄と先生。洗い物を引き受けてくれるのも感謝だ
「あ、自分も手伝うす。ダンナ、テルサン」
「ぼくもです〜。あまり、お料理手伝えなかったので〜」
女子力の高い男子、勇馬兄、ピコ君も続く。早速、食器をトレイに載せる。余ったものを運ぼうとする
「ありがとう。それじゃあ、お任せしようかな。手早くシャワーだけ浴びちゃおう。お酒入ってるから、ホントは良くないけど。やっぱり汗は流したいよね」
「おし、別れようじゃない。俺の家、風呂広いから。女性陣一同で入って良いんじゃない。ヤロウはシェアハウス、借りようじゃない。皿終わったら、テル達もシャワーな」
それぞれ立ち上がる。彼の提案に応じる。それぞれの家へ戻って、お風呂セットを用意する。お皿を洗ってくれるメンバーに、やや、後ろめたさを感じつつ、神威家へ
「そういえばアタシ、初めてだわ。神威家のお風呂。見学させて貰ったことはあったけど」
「あ、別の家のお風呂ってなかったね〜、今まで。ヒノキ風呂って言ったよね〜」
マンションのエントランスで、めー姉、ミク姉の会話。実際、それぞれ家があるため、他のお宅に宿泊することはあまりない。どこでも徒歩三十秒『実家』があるから
「うふふ。わたし、入ったことがあるよ〜、めー姉。温泉みたいな気分になっちゃう。すっごく気持ちいいんだよ〜」
「マジかよリン。うわ〜すっげぇ羨ましいんだけど。シェアハウスは、家(マンション)と、あんまり変わんないじゃん」
ふたたび庭へ出る
「あら、ではレンくん、ご一緒しますか」
「入っちゃおうよ〜、久々に〜」
凄まじいスピードで、シェアハウスへ逃げていくレン。さすがに、この歳で姉二人とは恥ずかしいのだろう
「今、レンが脱兎の勢いで逃げたけど、何かあったんじゃな〜い」
笑いながら、近づいてくる紫様。手には、木製の風呂桶
「姉二人に、手玉に取られたトコロ〜。あ、リュウト君も一緒だね、殿。オリバーくんは、ハウスにいるのかな」
「そういえば神威君、リンが神威家のお風呂に入った事あったって言ってたのよ。それって、何時のこと〜」
興味が湧いた様子のめー姉が尋ねる。とたん、顔中に変な笑みを浮かべてテト姉
「そうだっ、かむい。おまえまさか風呂につれこぎいゃあっ」
「あら、ごめんあそばせ。お酒のせいですわ、躓いてしまいました」
ルカ姉、パンプスサンダルのヒールで、テト姉の足を踏みつける。抗議声を上げるも
「下劣なお話は聞きたくありませんの。もう一度躓きましょうか」
凄むルカ姉。本当に下品な冗談を聞きたくなかったのだろうな。完全に、目が据わっていた。反撃不能のテト姉。さすが、めー姉の妹だ。と、言うならわたしやミク姉もなんだけれど
「ふぁっははっ。やるじゃない、ルカ」
「お褒めに預かり光栄ですわ、神威さん」
紫様とハイタッチ。メジャーリーガーのように打ち合わせる
「ま、重音、お前が何思ったて構わない。ありえない、お前が思うようなことは。で、風呂の話しなんだけどさ。前にさ、ゲリラ豪雨降って、バス止まった事があったじゃない」
あの日の出来事を、話し始める彼
「あったね、めーちゃん。オレ達が買い物行ってた帰りだった」
「帰ったら、神威君とリンが、晩ご飯用意してくれてたわね」
そう、わたしが、雨に打たれたあの日。神威家のお風呂に初めて浸かったあの時。みんなでうどんの宴をしたあの夜
「リンが一人、濡れ鼠で帰って来たじゃない。良かったよ、俺、家にいて。風邪引いたら大変だから、お招きして、風呂にも入ってもらった。それが事の真相〜」
「一人だけ、外れクジ引いたって思ってた〜。でもね、お風呂入らせて貰って、おやつまで用意してくれて。逆に当たりくじだったよ。あの日ね、お願いして、初めて包丁握らせて貰ったんだ〜」
彼に『決断』を迫った事を話し始める、得意気に
「初めのうちは、俺かカイトと一緒の時だけってな。今は、本当に上達したじゃない、包丁さばき」
「ああ、それでこの構図ができたんだ〜。リンちゃんが、がくさんと包丁姿〜。これ、いつ見ても萌えるんだよね〜」
「ミクちゃ〜ん、萌えるって何が〜」
スマートフォンの操作を始めるミク姉。丁度やってきたIA姉、会話に参加を始める
「あ、IAさ〜ん、見て〜これ〜」
画面を見せるミク姉。写っているのは、わたしと彼。わたしの後ろに立って、手を重ね、調理している姿。彼に包まれている格好だ
「ゎ〜あ、萌え萌え〜。リンちゃん護ってるかんじで〜」
「神威のアニキとリンちゃん。昔っから仲良しなんだね〜」
「というか、ミク。お前、いつの間に撮った」
IA姉は頬を染めて萌え出す。一緒にやって来たMikiちゃんは感動。呆れ笑いの彼
「困ったクセが付いたわね〜ミク。まぁ、悪い写真ばかりじゃないのが救いだわ」
めー姉も笑い方が複雑だ
「まあ、ちょっと前は休日ごとに、この構図だったもんね。撮るチャンスは幾らでもあったよ、殿。ただ、オレもこれ初見」
「お〜い、風呂整ってるぞ〜。って、みんな何してん」
呼びに来てくれたリリ姉、不思議そう
「ん〜リリね〜さん、アニキとリンちゃんのこと。昔っから仲良しだったんだねって」
「これ覚えてるでしょ〜、リリ姉〜」
「ああ、最近見なくなったなコレ。ウチも結構好きだったな〜。てか、ま〜たミクの仕業かよ」
楽しそうなミク姉とMikiちゃん。微笑みが、苦笑に変わるリリ姉。当然のリアクションだ
「ま、立ち話はここまでにして、ひとっ風呂浴びちゃおうじゃない」
「め〜ちゃんもルカも、お酒入ってるからね。浴槽に浸かっちゃだめだよ」
「はいはい、分かってるわよ。みんな、素早くね〜」
そう告げて、シェアハウスへと向かう、男性陣。わたし達も、神威家へと向かう。めー姉の言葉通り。あの日は二次会が楽しみで、ゆっくりとお風呂には浸からなかった。ただ、この期を逃すまいと、結局。カイ兄の言いつけを破って、少しだけヒノキ風呂に浸かった、姉二人。簡単に汗を流し、髪を乾かす。そそくさと薄着に着替え、マンションへと向かう。ハウス組は、一度ハウスへ
- Re: はじまりのあの日 ( No.27 )
- 日時: 2017/09/26 06:47
- 名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)
お風呂道具と洗濯物を置くため
「お待たせ〜。やっぱ、男の子達は早いね〜。ピコきゅん達、もういなかったよ」
「さ〜甘いの食べに行こ〜」
Mikiちゃん、IA姉、ホクホク。待ち合わせて、みんなで向かう
「あ、皆もはえ〜じゃん、やっぱり。おれらもソッコーだったよ。二次会テンションってやつ」
「今、テルさん達、家(マンション)のシャワー使って貰ってるからさ。オレ、道具片付けるよ。洗濯物も入れとくから」
リビングでは、男性陣がすでに準備を開始。弟と兄が出迎えてくれる
「だって、二次会楽しみだもん」
「甘い物食べた〜い。ありがと〜カイ兄」
応えるわたし。ミク姉、甘味渇望。洗濯物やお風呂道具を片付けに向かってくれるカイ兄
「あら、神威君は何処、レン」
「キッチン。余ったの、温め直してくれてる〜。ああ、みんな揃ったら、冷やしてあるのも取りに来てって言ってたな」
「大集合かんりょ〜です〜。これからいきましょ〜」
弟、ピコ君の先導で、団子になって向かうキッチン
「楽しみだな〜。今日はどんなの選んでくれたの、リリちゃん」
「アイス、プリン、シュークリーム。ちょっと高めのヤツ〜。期待値たけ〜よ、I・A〜。他にもあるから、リンも楽しみになっ」
「やった〜。プリン大好きだよ、リリ姉」
右腕をわたしの肩に腕を回し、左手でIA姉の頭を撫でるリリ姉
「アイスは、誰かさんが一番喜びそうね〜。まぁ、アタシも楽しみだわぁ。エビチリで焼酎」
めー姉は飲むことで頭がいっぱいのご様子。続いてゆくテト姉、ルカ姉までも
「ワタシも、もう少し頂きますわ。スモークチーズとワイン」
「エビマヨもあったな。肉も残ってるから、スコッチでいくぜ」
お酒モード全開だった。お酒って、そんなに良いものなのか、未だにわからない。でも、何時の日か、彼とお酒を共にしたい。そんな気持ちがあるのは確か
「デザートたのしみだね〜リュウトくん」
「わがしもよういしてくれたみたいです、ゆきちゃん」
天使様、みんな仲良しだけれど。手を繋ぐユキちゃん、リュウト君
「あたし、シュークリーム好きだな〜。オリバー君は何が好き〜」
「ボク、カボチャマンジュウト、Biscuitガスキ〜」
腕組みのいろはちゃん、オリバー君。特に仲良しのペア
「アニキ〜、お疲れ様〜」
「作業、ありがとうございま〜す」
手を恋人繋ぎで、キッチンに入ってゆく、ピコMikiちゃん。あ『君』って呼ぶの忘れた
「お、みんな揃ったか、レン。カレーとシチュー、今、簡単に温め直した。味が染みて、尚更美味しいんじゃない。食べ飽きない。ついでに塩昆布と野菜のサラダも作っといた。いろは、キムチラーメン出してあげようじゃない」
「ありがと〜がっくん。あ、冷蔵庫のお総菜と、甘いのも持って行っちゃうね」
「ありがとう、がくおにさ〜ん」
わたし、冷蔵庫に向かう。みんなして、二次会準備。リビングに、簡易式の冷蔵庫、お茶類のサーバーも用意。お酒組は追加のお酒。キヨテル先生達が来る頃には、第二弾宴会セット完了。それぞれに、好みの飲み物を用意
「天使様から、乾杯の御発声〜」
めー姉、天使様を促す。キヨテル先生、リリ姉が、四人を整列させ
「キュ、キョオハアリガトウ、ミナサン」
四人の中で最年長、オリバー君が声出し
「こんなに楽しいかんげい会、本当にありがとうございま〜す」
いろはちゃん、四人一の元気良し。勢いよく頭を下げる
「ぽ父さん、カイトさん。おりょうり、ありがとうございます」
「りりねえさま、きよてるせんせい。おかいもの、たのしかったです」
ユキちゃん、リュウト君がトリを飾る。一度見つめあう四人
「「「「ありがとうございま〜す、おつかれさまで〜す」」」」
「「「「「「「「「「おつかれさまで〜す、おりこうさ〜ん」」」」」」」」」」
杯が掲げられ、二次宴会の緞帳(どんちょう)が上がる
「さ〜て、リュー、何が食べたい〜。大人気無いのが群がる前に」
「ユキも。まず食べたいの、取ってあげようじゃない」
メンバーを牽制しつつ、リリ姉と紫様。さっき群がっちゃったわたし達、バツ悪し
「ぼく、かぼちゃまんじゅうがたべたいです。りりねえさま」
「ゆきは、アイスがいいです、ぽ父さん。チョコとまっちゃのトッピングで」
弾けるエンジェルスマイル。萌え上がりながらも、リクエストの品を手渡す、リリ姉、紫の彼
「さあ、オリバーさん、いろはさんも、遠慮しなくて良いんですよ」
キヨテル先生も、傾斜を復元させながら
「あたし、まずラーメンが食べた〜い」
「ボク、Biscuit Pleaseデフ〜」
こちらも輝く、天使の笑顔。IA姉が、先生を手伝って、なんとか手渡す。天使様にお菓子を配り終えて、銘々好みの食べものを取る。いろはちゃんは、小鉢のラーメン。小テーブルへ移動。腰を下ろしてまったりと
「がっくん、はい、米焼酎。二次会は焼酎からだったよね」
「ありがたいじゃない、リン。覚えてくれて感謝〜」
ご機嫌で杯を満たすわたし。注がれる彼も上機嫌。アテは、ホタルイカと揚げ浸し。テーブルに酒瓶を置く。自分用の、プリンとウエハースも置く。お酒を含む彼、わたしはその膝によじ登る。杯を置き、手伝ってくれる彼
「リンちゃん、ぽ父さんのおひざにすわるんだ」
「あ、うんユキちゃん。がっくんの膝、わたしの指定席なの〜」
「ハハッ。これだけ観ると、どっちが年上か分かんね〜なぁ。ケド、ウチも好きなんだけどね、この光景」
膝に乗せる彼、座るわたし。初めて観たユキちゃん。以外にもこの日まで、観たことなかった。イタズラっ子モード、茶化してくるリリ姉。でも、眼差しは暖かなものだ
「シテイセキってなあに〜」
「ここは、わたしだけの場所ってコトだよ〜」
何時だったか、彼に教えてもらった言葉を口にする
「確かに〜。リンちゃんだけの場所だよね、神威のアニキの膝。アニキ好きの、グミね〜さんでも乗せてもらえないもん」
小首を傾け、可愛らしく聞いてくるユキちゃん。答えたわたしと、同意するMikiちゃん。浮かぶ表情は愉快全開
「ホントだよね〜。わたしもぽ兄ちゃんの膝、座りたい。でも、何だか出来ない。リンちゃんの場所なんだよね、ぽ兄ちゃんの膝」
少し寂しげなめぐ姉。でも、わたしの『指定席』を肯定してくれる。心からありがとう
「そうなんだぁ」
ぽつりと言って、リリ姉と話している、キヨテル先生をチラ見のユキちゃん。その視線、先生は気付かない
「そういえば、双子ちゃんは乗ってたけど〜。ミクは座ったこと無かったわね、神威君の膝」
不思議そうに聞く、めー姉。エビチリを摘まみ、焼酎を一口
「う〜ん、なんかねぇ。座ってみたかったけど、双子ちゃんか、リンちゃん。何時も占領されちゃってたから〜」
珍しく、眉を下げながらミク姉『タイミングを逃した』とも口にする
「何かもう、オレ達『古参組』には日常の光景だよね。殿の膝にリン」
「ゎたしもそ〜だよ、カイトのに〜さん。ゎたしの心の栄養剤〜」
バニラアイスをコーヒーウォッカに浮かべるカイ兄。チーズビスケ、チョコビスケを美味しそうにIA姉。二人とも上機嫌
「そういえばさ、リン」
「なぁに、がっくん」
匙を使って、プリンを食べさせてくれる。さすがスイーツ好きの二人のお眼鏡に叶ったプリン。濃厚、しっとり、本物の『Pudding』である。後からかけたカラメルソースも、とても美味しい
「ちょっと聞かせて。初めて会った日の歓迎会。あの時から、俺の膝に乗ったじゃない。レンも一緒だったけど。でも、先に乗ったのはリンだった。どして。普通さ、家族でもないのが来たら、警戒しそうじゃない。しっかも初対面は、あんな侍姿でさ」
紫の彼が聞いてくる。確かにそうか。普通、警戒するかもしれない。打ち解けるには、時間が掛かるのも当然だろう。プリンを味わいながら考える。でも、侍姿を観たわたし。完全な子供思考だもの『カッコイイお侍さん』と思った『綺麗な人だ』とさえ感じた。それに、わたしには確信があった。何故なら、初めに飛びかかっても、彼は無碍にあしらわなかった。あの日のわたし(チビ)を。考えを、揺るぎないものにした出来事は
「ん〜と、覚えてるかなぁ、がっくん。あの日『待たせるわけにいかない』って言ってたコト。わたしのリボン、結んでくれたこと」
「ん、あ〜あ、あった。早めに降りようって思ってさ。階段降りたら、リンが居たじゃない。ヤッチマッタかって思ったよ。後輩の俺が、先輩待たせちゃって」
そう、そんな細やかな気遣いができる人。あの日のわたし『わかんないや』と返してた。でも、どこかで、分かったのだろう
「優しい人じゃなきゃ、そんなこと考えない。そう思ったんだぁ。会ったばっかりの子供のさ『リボン結べる』なんてお願い。ちゃあんと聞いてくれる人。優しい人だ〜って、すぐ分かった」
「あ、初めての日、そんなことあったんだ。オレが下に降りたら、既に懐いてたもんね。リンが殿に」
「初耳だ〜。しかもおれ、一人だけ遅れちゃったもんね〜がく兄〜」
バツが悪そうなレン。着替えに、時間が掛かっていたのだろう。間違いない。何故なら
「あの辺りだったわね〜。ようやく、レンが一人だけで着替えを始めたの。朝が弱い、夜が早いで、アタシが着替えさせてたものねぇ」
「甘えん坊だったもんね〜レン。お風呂も—」
「めー姉もカイ兄もその話やめてぇぇぇぇぇ」
これが理由。恥ずかしい暴露を、これ以上されないよう、必死な片割れ。メンバーに、笑いのさざ波がおこる
「うふふ。でね、カイ兄より背が高い人観たの、あの日が、初めてだったんだ。今だって、がっくんが一番、背、高いもん。でね、この広くて大きな膝、乗ったら、どんな気分だろうなって。座ってみたら、すっごく気持ちよくって」
そう、凄く気持ちが良かった。いや、気持ちいいと言うのはちょっと違う。安心。安らぎ。ここは、わたしの場所なのだ。何故かそう感じた、彼の膝。でも、あの日のわたしには、それしか語彙がない
「あの日、そのまま船こぎ出しちゃったわね、二人とも。ふふっ、今リン位の歳なら照れも出ると思うのにねぇ。よっぽどお気に入りなのね、リン。神威君のお膝」
おかわりの焼酎をグラスに注ぐめー姉。隣のカイ兄にもたれかかる。兄もウォッカフロートを堪能している様子で
「『船』と言えば、殿。あの日のケンカの原因『船』だったよね。仕事終わって帰ってきたらさ。リンとレンが大げんかしてた日。家に入ったら、ミクが泣きながら走ってきてさ『タスケテ〜』って」
その日のことは覚えている。でも、何故ケンカしたかは、よく覚えていない。身長だったか、おやつの取り分か、それとも、チャンネル争いか。些細なことで始まった大げんか
「あったなぁ。カイトと俺、メイコ、ルカで、仕事済ませて帰ってきた日だったな。ミクが大泣きで走ってきたじゃない『リンちゃんとレンくんが〜』ってさ。帰ってこられたのが、不幸中の幸いだった」
言いながら、わたしの頭に手を置く彼。ぐい飲みの中身を含む
「ええ、覚えてますわ、神威さん。あんな大げんかは、最初で最後でしたもの。その時も大泣きしながら『がっく〜ん』って。避難場所みたいに乗りましたわ。神威さんのお膝に」
ルカ姉、酔いが回り始めているのか、まつげが濡れている。恥ずかしい思い出を語られているのに、心の中は暖かい
「それ程のオオゲンカをされたコトが、あるでゴザッタカ〜」
「ウチらも知らないってことは、ホント最初の頃なんだ。ウチら神威の妹も、割合古参メンバーなのにさ」
唐辛子入りのスモークチーズ、スパークリングワインと楽しむアル兄。チョコトリュフを、先生が煎れてくれたハニーティーと合わせるリリ姉。二人共通で浮かぶ表情は『意外』というもの
「うん、リリ姉達が来る、ほんの一月前くらいのこと〜。兄妹げんか、茶飯事だったもんね〜、リンちゃんとレンくん。でも、あの時は困ったよ〜」
「はは、でもミク。ほとんどは、じゃれてるようなもんだったじゃない。あれは、コミュニケーションの一環だろう。だけど、あの日はヤバかった」
お互いを罵倒し、取っ組み合い寸前までいって、姉兄、紫の彼に止められた。あの日、わたしと片割れの間に割り入った紫の彼が言う。わたしはそのまま、彼の胸にしがみつき、膝の上で泣きわめいた。事の顛末が、めー姉、カイ兄によって語られる
「わ〜壮絶です〜。でも、どうしてそんな大げんかになったんですかぁ。リンちゃん、レンくん。それに『船』と言えばって」
ピコ君がやや竦みながら聞いてくる、ケンカの原因
「ん、あれ、何だったっけ、リン。おれ、覚えてないや」
「あ、レンも忘れてる。実はわたしもなの。何だっけ『船』」
レンまでも、わたしと同じく、ケンカの理由を忘れている。めー姉、少し驚いた顔で
「あらあら、あんな大立ち回り演じたのに覚えてないの〜。レンがね、リンお気に入りのヌイグルミにコーヒー零したって言ってたわよ。ゲームセンターの景品、限定の代物」
ケンカの理由を告げるめー姉。苦笑し、お酒を一口。あの日二人とも、泣きわめきながら告げたのだろう、大人達に
「レンくん、一応謝ったんだけどね〜。でも『わり〜わり〜』って笑いながら。ちょっと軽かったかな〜」
ミク姉の表情は、困り顔。わたし達に巻き込まれた、ある意味当事者
「それで怒ったリンが、レンのプラモデル壊したらしくてね。腹いせに。今さ、マンションのエントランスに飾ってあるよね『伝説の宇宙戦艦』の大型模型。あれ、レンが作った四隻目なんだけど—」
「「ああ〜思い出したぁっ」」
わたしとレン、同時に叫ぶ。宇宙戦艦の単語で、記憶がリバース。思い出宇宙、16万8千光年彼方から、伝説の船と共に還ってくる
- Re: はじまりのあの日 ( No.28 )
- 日時: 2017/09/26 06:48
- 名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)
その船の模型、二隻目を、わたしは、腹いせにぶち壊した
「ひっでぇよなリン。高い上に、難しいんだぞっ、あの『宇宙戦艦』作んのってぇ」
「なにさっ。レンだって『同じの買えば良いじゃ〜ん』なんてっ。あれ、獲るのすっごく大変なんだよっ」
「コラコラ、ケンカの話しでケンカ始めるんじゃない」
あの日のように、わたし達を止めにかかる紫様。レンと顔を見合わせ
「「っ、はははははっ。子供だったね〜、大げんかの理由がおもちゃだもん」」
「今もとってあるよ、あのヌイグルミ。なんか捨てられなくって」
「マジ、おれもだよ『星団決戦後』にアレンジしてさ」
盛大に笑い合う。本当に些細な理由。所詮、子供のケンカなんて—
「あ〜でもまぁ、気持ちはわかるす。自分も好きだよ、レン『伝説の宇宙戦艦』カッケエよな〜」
「限定のヌイグルミとか弱いよね〜、オンナノコ。同じのとか言われたら、怒っちゃうカモ〜」
同意してくれる、勇馬兄、めぐ姉。二人の手にはババロア。そう『人』がケンカを始める理由なんて、殆どはクダラナイ。大人も子供も総じて
「拙者モ大切にしている模型が有るデゴザルヨ。世界的に有名な日本ロボットアニメの。Newの方でござる」
「でも、ケンカは宜しくないですよ。皆で仲良くしましょうね。怒る前に、まず話し合いです」
「取っ組み合いなんかしたら、ダメだぞ。テト姉とおにぃ、勇馬なんかがやってるのは『稽古』だからな」
アル兄も頷く。先生、リリ姉は、天使様に注意する。ただ、おそらくはメンバー全員へ向けた言葉
「物よりも思い出か、物あっての思い出か。捨てないで取っておくのも大切じゃない、リン」
「ん、ど〜いうこと〜がっく〜ん」
ふたたび、プリンを食べさせてくれる彼。自分も、揚げ浸しを口に運び、焼酎を流す。わたし、膝の上でお酌する
「あにさま、りんりん。今の流れが全部萌え。もえもえ」
「わかる、カルちゃん。殿とリン、一連の動作がナチュラルすぎ」
目を輝かせるカル姉。眉を下げ、微笑むカイ兄。二人の発言で、話の軌道がそちらへ一度逸れる
「甘えに行く妹をアマヤカス兄。年の離れた兄妹という風情でゴザルナ」
「わかるよ〜、アルのダンナ〜。でも、ゎたしは『も〜一歩』踏み込んだ感があるな〜」
アル兄、目尻を下げ、お酒を含みながら。IA姉はソファの上、萌え上がって足をパタパタさせている。そのIA姉の意見に、苦笑しながらキヨテル先生
「IAさん、それは『邪推』というものではありませんか」
「いや〜、それはどうかな〜センセ」
割って入ったリリ姉、小悪魔スマイルで反論する『もう一歩』がどういう意味合いだったか、今も真意はわからない。IA姉の考えだから、悪い意味じゃないとは思うけど
「一歩踏み込むって何、ど〜ゆうこと〜」
「妹、好きすぎ、変○シスコン兄貴ってことじゃな〜い」
聞くわたしに、答えた彼。誰かが何かを言う前に、自分で道化を演じることで、話題をさらに逸らせたのかもしれない
「え〜ひっど〜い。がっくん○態じゃないもんっ」
「いや〜、そいつは分からないぜ、リンたん」
頬を、これ以上無く膨らませていたであろうわたし。生じた不満を爆ぜさせる。テト姉は悪ノリ。すかさず先生が咳払い。押し黙る
「わっわ、違うよ〜ぅ、リンちゃ〜ん。もぅ、神威のに〜さん、何でそんなコト言うの〜。ゎたし、そんな風に思ってないよぅ」
慌てて弁解IA姉。今度は、紫様に向けて不満を言う。わたし同様、頬が膨らんでいる
「ふふふ、IA、発言には気を付けようじゃない。ま、安心して。踏み込んだってのがどんな意味か知らんが、お前はそんなことを考える子じゃない。それは分かってる」
イタズラっぽく笑う彼、IA姉、安堵のため息。そこであがる、無邪気な質問
「変○ってなぁに、氷山先生」
「しすこんて、なんですか、めぐねえさま」
ユキちゃんとリュウト君。もっともな疑問『俺こそ失言だったか』と、片手で顔を覆う彼。しかし
「○態というのは、悪いことをする人の事ですよ。みなさん、気を付けなければいけません。防犯ブザーは忘れずに」
逆に、教訓に置き換える神がかりぶり。キヨテル先生、苦笑い
「シスコンて言うのはね、妹をすっごく可愛がってくれる、良いお兄ちゃんってことだよ。わたしとぽ兄ちゃんみたいに。でもね、変○が付くと、妹をイジメル、悪いお兄ちゃんってことなんだよ」
その見解はいかがなものか、と思うが見事、煙に巻くめぐ姉
「そうなんだ。でもユキ、グミちゃんがうらやましいな。リンちゃんも、ぽ父さんにあまえてるし。ユキにもいるかなぁ、あまえさせてくれる人」
天使様、ユキちゃんの一言で、場の雰囲気が又変わる
「大切だよね、繋がりって。このメンバーとの関係、オレはもう捨てられないな。あ、話し逸れてたけど殿、さっきの話しの続き。捨てるって単語で思い出した」
ウォッカに浮かべたバニラアイス。蕩かしながら堪能カイ兄。話題の軌道を修正する
「ああ、何て言うかさ。今『捨てりゃ楽になる』みたいな風潮あるじゃない。けどさ、ならまず『持ってくるな、集めるな』って、俺は思っちゃうワケ」
「ああ、捨てれば楽になるって、やたら聞くよね、アニキ〜」
「でも、捨てられない物たくさんです〜」
仲良く、スモモ味の水ようかんを食べる、Mikiちゃんとピコ君。彼の言葉に反応する
「だろう、Miki。ピコ、捨てられないってコトは、集めちゃった、持っちゃったってことじゃない。ハナから、集めてるクセにさ『捨てなさい』なんて、なんだそれ」
一息に、焼酎を飲み干す彼。わたしはお酌する、彼の膝の上で。撫でてくれる、優しい彼。その手の感触が心地良い
「今、レンの『宇宙戦艦』で思い出すみたいにさ。物を観て、思い出す事もある。とっておいたから、思い返すこともある。反省できる事だってあるじゃない、物を観てさ」
みんな、彼の話に聞き入る。ただし、飲食はやめない。そこら辺が、メンバーの人間くささ。そりゃそうか『人』だもん
「『こだわらないほうが楽』なんて、仏様じゃないんだ。俺達にはムリ。神様だって執着するじゃない。そりゃ『ゴミなんたら』みたいな、執着癖まで行ったらどうかとは思うけどさ。大体『捨てる側』って気楽かもだけど『捨てられる側』になったらどう思うよ。ちょっと考えてみようじゃない」
捨てられる側。少し想像してみる。何だかとても恐ろしい
「わ、それこわいよ、ぽ父さん。ユキ、すてられるのやだぁ」
「いやです。すてられたくないです、にいさま」
「ウチは捨てね〜よ。ユキも、リューも。センセ〜も〜」
不安げなユキちゃん、リュウト君。挟まれて座っているリリ姉、二人の肩に手を回す。強く抱き寄せる
「Japanニハ、物にも魂が宿るトイウ考えがアッタデゴザルナ。拙者モ、愛用の万年筆は捨てられんデゴザルヨ。例え、壊れても、デゴザル」
「あ〜、お人形の髪がのびのび〜とか」
アル兄、顔つきが神妙になる。IA姉、怪談を思い出したのか、やや青ざめる
「あはは、IA、そ〜じゃない。長く使った道具なんかには、魂が宿るってお話。鍋とか、タンスとかな。八百万の神、全てに神様がいるなんて発想もあるし」
「やおよろず。数がきわめておおいこと。かみさまたくさん、もりだくさん」
面白そうに訂正する彼、揚げ浸しを焼酎で流す。カル姉は『ちゅ〜』と言って、目を閉じる。胸の前で両手を握って、何かに想いを馳せている
「わ〜、そう思ったら、おそまつにできないね〜」
「ヒトモ、ドウグモ、タイセチュデフ」
いろはちゃん、ただでさえ大きめの瞳がまん丸に。オリバー君は二度頷く。カワイイ反応
「な〜んか説教クサクなっちゃったじゃない。ま、要するに大切にしようじゃないってお話。他人(ヒト)も、道具も、お食事も。俺達、メンバー同士も。聞いて下さる方々もさぁ。それが心になきゃ、このPROJECTの歌い手としては、ダメなんじゃない」
お酒の香りを纏う彼。でも、わたしはこの香り嫌いじゃない。彼が纏うなら尚更
「いいえ、神威さん、大変良いお話だったと感じます。皆さん、歌い手として、大切な心がけですよ」
「「「「たいせつにしま〜す」」」」
天使様『歌い手魂』持っている
『怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒』
び、ビックリした。低空飛行していったと思われる、ヘリコプターのプロペラ音。ケタタマシイ音で、わたしの記憶読書は、強制的に打ち切られる。ああ、もう少し浸っていたかったのに。でも、家族のために、調理に専念いたしましょうか—