二次創作小説(紙ほか)

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はじまりのあの日
日時: 2017/09/24 18:09
名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)

はじめまして


ボーカロイドの二次小説。話しはオリジナルのストーリーです

神威がくぽ×鏡音リン

MEIKO×KAITO

氷山キヨテル×Lily

めぐっぽいど×VY2勇馬

巡音ルカ×鏡音レン×初音ミク

の組み合わせがダメという方は、読まれない方が良いと思います

恋愛小説のつもりですが、そこまで恋愛じみた話しではありません(あくまでつもり)



どうぞ宜しくお願いいたします



登場人物(最終的に登場する人物)


元音メイコ(もとねめいこ)


継音カイト(つぎねかいと)


初音ミク(はつねみく)


鏡音リン(かがみねりん)


鏡音レン(かがみねれん)


巡音ルカ(めぐりねるか)


重音テト(かさねてと)


神威がくぽ(かむいがくぽ)


神威めぐみ


カムイ・リリィ


神威リュウト


カムイ・カル


氷山キヨテル(ひやまきよてる)


可愛ユキ(かあいゆき)


Miki(みき)


猫村いろは(ねこむらいろは)


歌手音ピコ(うたたねぴこ)


オリバー


ビッグ・アル


IA(いあ)


呂呂刃勇馬(ろろわゆうま)


歌い手総勢21名



プロデューサー1

プロデューサー2

プロデューサー3



Re: はじまりのあの日 ( No.14 )
日時: 2017/09/25 07:18
名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)

さて、そろそろ始めようと調理にかかる。彼がくれたエプロンを付ける。味玉子用に、玉子を茹でる。料理酒。酒の気を飛ばし出汁を取る。テレビをBGMに、夕食の準備。手をあわせ、感謝して、魚のアラを取る。きょうの煮付けは鯒(あらかぶ)だ。気象予報士が、天気を告げる。明日の気圧は不安定。突然の雷雨に注意せよとのこと。折りたたみ傘をもつと良いという。折りたたみ傘。いざって時に無いんだよね。それに、雷雨じゃアレでは役不足。前にあったな、ゲリラ雷雨。11歳。五月だったな。わたしの意識、記憶の階段、降りてゆく。今日はもうそんな日だ—

「わ〜」

土砂降りの雨の中を走る。バス停から、家(マンション)まで十分。バスの中では晴天だった。到着したとき、黒い雲が現れた。嫌な予感に、走り始めて数十秒。稲妻と共に土砂降りに。よりによって、こんな日に。いつも同じバスに乗るレンとミク姉、仕事で公欠。私一人貧乏くじ。そんなに、日頃の行いが悪かったのか。せめて十分くらい待っとけと、雨雲に悪態をつく




「ええっ」

マンションに着く。玄関前のテラスに駆け入る。開けようとして、固く閉ざされた玄関の戸。今日、全員が居なくなることはないと言っていたのに。だから、鍵を持っていない。瞬く閃光。轟く轟音。吹きすさぶ強風。ますます雨脚が強まる。込み上げる、絶望感。しゃがみ込む。なんでみんなまで居ないんだろう。なぜ、こんなめに遭うのだろう。寒くなってくる。どんどんと、マイナス思考になり始め、泣きそうになった時

「大丈夫、リン。防犯カメラの映像(え)たまたま観たら、濡れ鼠で来るじゃない。他のヤツ。買い出し行ってたり、緊急の仕事入ったり。俺、仕事午前で退けたから」
「が、っくん」

傘を持ち、かがんでわたしを見下ろす彼。微笑んで

「家(うち)おいで。風邪引くじゃない」

絶望感が、たちどころに幸福感。マイナス思考が吹き飛ぶ。彼の暖かさで結局、涙腺は決壊する

「ありがとう〜がっくん〜」
「泣かなくてもいいじゃな〜い」

さしのべられる手。その手を取る。引っ張って、立たせてくれる。歩き出す。相合い傘で、彼の家へ。玄関にはいる。彼が持ってきてくれた、タオルを使う。水気を切る

「靴下だけ脱いで、そのまま入って。今、風呂焚いてる。まだぬるいかもだけど、シャワーしてる間に、ちょうど良くなるんじゃない。そのままじゃ風邪引く。体、あっためようじゃない」
「う〜ほんとにありがとう〜がっくん」
「服は適当に洗濯しとこうじゃない」
「ありがとう〜」

そうして入った檜風呂。初めて入った隣家の風呂。広い浴槽。高い天井。暖色のLED。温泉に来たかのようだ。暖まる。気持ちよさにぼわ〜っとしていると

「着替え、此処おいとくから。ドライヤーも使って」

外から彼の声。そうだ、着替えがない。彼は、用意してくれたという。ありがたさと同時に、込み上げた思い。有るんだろうか、アンダーウエア。何だか顔が熱くなった。その風呂上がり、脱衣所。バスタオルで体を拭う。タオルからいい香りがする。髪を拭く。用意してくれた、という着替えに目をやる。『一通り』本当に揃っている。彼の妹、私にとっての姉のものだろうか。袖を通す。履き心地、着心地、上等。髪を乾かす。自分の髪の毛から、漂ってくる香り。自分の家の物と違う、シャンプーの香り。なんだか酔ってしまいそうになる。彼もこのシャンプーを使っていると思うと尚更に。だからといって、いつまでもそうしているわけにはいかない。ヘアピンで、簡単に整える。変じゃないかな。なんて、やっぱり彼を意識しながら、脱衣所を出る。向かう。光が零れる場所。彼が居るであろう部屋へ

「ああ、似合ってるじゃない」
「えへへ、ありがとう。ただ、がっくん。キャミソールと—」
「聞かれると思った。キャミソも、もう一つも。撮影用にカルが使ってたヤツ。見せても良いやつなんだとか。洗濯してあるから我慢してな」

彼が待つ茶の間でのやりとり。なんだかほっとする。変な趣味だったら、やっぱりイヤだ

「ま、疑われたくはないじゃない。疑わしいだろうけど」

手にしていた楽譜、書類から目を離す彼。両者共に苦笑い。疑ってました。ごめんなさい。今は、疑ってない。彼は、こういうこと、本当に堅苦しい、そして、優しいひとだから。若干、その優しさが切なく感じたくらいに

「その寝間着もカルの。二年くらい前のヤツか、ちょっと小さくなって着られないって。それら、まとめてあげちゃおうじゃない」

用意してくれた。クリーム色のフリフリパジャマ。七分丈、七分袖。サイズもぴったり。優しい彼の心遣い。冷えた心も暖まる

「ほんと」
「とっといても仕方がないじゃない」
「ありがとうがっくん。あ、お風呂とっても気持ちよかった」
「しっかりあたたまったか〜」
「ぽかぽか〜」
「よかった。ならちょ〜っと待ててほしいじゃない。適当に座ってて」

言って茶の間を出て行く彼。大きな、丸い茶卓に目をやる。PVの資料、楽譜。付けられた付箋と、書き込まれた彼の文字。真剣に仕事をする、彼の几帳面さが滲む。腰を下ろしたとき

「これもいこうじゃない」

水滴浮かぶ、ガラスのコップとコースターを手に戻ってくる

「生クリーム浮かべた、アイスウインナ〜ココア。おやつにしない。じきに誰か帰ってくるだろ」

彼は、手作りのクラッカーまで振る舞ってくれる。さっきまでの不幸はこの前振りだったのか。思うほど、幸福に満たされるわたし。満足して、ココアに口を付ける。クリームは甘い。ココアは苦め。絶妙のバランス。半分ほど、一気に飲んでしまう

「っわ〜、おっいし〜」
「ははッリン、酒飲みじゃないんだから。ツイテルついてる」

言って、口の周りのクリームを拭ってくれる。いつものように、自然体で自分の口へ運ぶ。拭いきれなくて、ティッシュペーパーで拭いてくれる

「むわ〜。がっくんおいし〜い」
「それは良かったじゃない」
「わたしね、さっきまで今日びんぼーくじ引いたって思ってた」
「ん」
「ミク姉も、レンもお休み。みんなも居ない。一人でずぶ濡れ」
「散々だ」

自分用に煎れた、冷たい玄米茶を含む彼

「でも、逆に当たりくじだったのかも。がっくん家(ち)で、お風呂に入れて。おやつまで、出して貰って」
「はは。当たりって程じゃないんじゃない。鞄も、拭いてそこ、乾かしてあるから」
「至れり尽くせりありがとお」

実はこの『くじ』一等前後賞、併せて当たっていたと気付くのはこの後だった

おやつを終え、義務たる課題、予習復習に取り組む。彼も、スケジュールの確認やら、台本の読み込みをする。小一時間ほど、鉛筆や消しゴムも音のみが響いた部屋。突如、振動する、彼のガラケー。廊下に出て行く。何事かと考えていると

「♩♫♪〜」

鳴り響く、わたしのスマホの着信音。メールの発信者はめぐ姉。カイ兄、めー姉と共に買い物から戻る途中、渋滞に巻き込まれて遅くなる。というもの

「バス止まったらしい。リリ達も、ミク達も、帰ってこないのそれじゃない」

部屋に入ってきた、彼寄りの情報。現在午後五時半。わたしも、連絡があった旨(むね)を伝えると

「そっか。なら重音とテルも、別件で車移動してたな。よし、通学組、回収するよう言っこうじゃない」

言って、再び廊下に出て行く彼。と、いうことは、最低一時間。彼とわたし二人きり。顔がにやけないようにするので必死だった。なぜ、それほど嬉しかったかは、考えもせず。幸運が、さらにたたみ掛けてくる。もどってっきた彼は

「さて、時間も時間。リン、課題終わったら手伝って。全員分の晩ご飯。よういしといてやろうじゃない」
「おっけ〜がっくん。いつでもいいよ〜」

幸せの言葉を手向けられる。応えたわたし。課題はすでに終わってた。予習は済んでいなかった

「さて、材料がそんなにないから、簡単なもんで良いか。乾麺、あるな。玉子はあるし。缶詰も—あるな。葉ネギは菜園か」
「がっくん、わたしとってくるよ」
「いや、俺が行く。雨はあがったけど、せっかく風呂入ったのに、汚れるのイヤじゃない。大鍋にお湯用意して貰えるかな、リン。気をつけて」
「りょ〜うか〜い」

本当に思いやりのある、紫の彼家庭菜園へ。わたし、まず、手を洗ってコンロに大鍋を出す。調理ボウルに水を張る。その水を、大鍋に移し替える。繰り返して、大鍋に水を満たしてゆく。幼いわたしに重いからと、彼が教えてくれた。彼の優しさ。点火する。蓋を閉める。沸騰するまで十分というところかな

「よっし、ピーマンも茄子も食べ頃〜。肉味噌炒めとサラダでいこうじゃな〜い」
「がっくん、このお湯は〜」
「うどん茹でて、トッピング〜」
「わ〜それおいしそ〜う」

葉ネギ、玉ねぎ、茄子、ピーマン。大きめのボウルに盛られた新鮮野菜。外の水盤で洗われて、水の玉が浮いている。手を洗い、調理にかかる彼

「ピーマン切るから、種とって貰おうじゃない」
「がっくん、わたしも包丁、使ってみたい」

以前から思っていたこと。優しい、そして少し、過保護な彼。子供組には、包丁作業をさせない。でも、いつまでも、子供とは思われたくない

「—〜ん、わかった。まずは俺かカイト。一緒の時だけな」

考えて、彼は『決断』をした

「やった〜」
「気をつけて、集中してやるんだぞ」

初包丁。握る手に力が入る。今は思う。見るからに危なっかしかっただろうと

「あ〜リン、違う。リンは右利きだよな。なら、左手は猫の手。こう握る」
「こう」
「そう、包丁の握り方も、そんなガシッとじゃなく。包丁の入れ方も」
「そんなに言われてもわかんないよ〜」
「あ〜そうか、なら—」

言って、わたしの後ろに回る。私の手に、手を重ね、まな板へと向かう

「一緒にやろうじゃない。こう、軽く握る。猫の手。ピーマンは縦にに真っ二つ」
「お〜」
「で、どんどん行く。ある程度切ったら種を取る。それは」
「できる〜」
「次」

彼の手が、また重なって

「ピーマンはこう。繊維に対して横に切ると、火が通りやすくなる」
「そうなんだ〜」
「次、茄子はヘタに近いところが一番栄養ある。棘に気をつけてヘタを剥く。できる」
「やる〜」
「よし。で、ぎりぎりのとこで切る。はい、手は」
「ねこ〜」
「おりこ〜う。次—」

手とり、教えてくれた彼。はっと、記憶の中から今にもどる。わたしが今、包丁を握る、手の形あの時教わったそのままだ。彼に教わった調理法。彼がわたしにくれたもの。わたしのなかに、生きづいて。彼と共に、息をして。どちらかの、胸の鼓動が止まるまで。そんな風に思ったら、だめだ、幸せで頬が緩む—

Re: はじまりのあの日 ( No.15 )
日時: 2017/09/25 07:19
名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)

シェアハウスが流行しているらしい。適度な交流でがきる。プライベートは護られる。その上で集団生活できることが良いのだという。ニュースキャスターが読み上げる。記憶図書館。扉を自ら開き、おいでおいでと手招きする。抗うことなく入館しよう。わたし達の家の横。また新しい『家』が出来たのは、11歳の九月後半。夏休みに行なった歓迎会を思う—

「別に、無理に移んなくてもイイじゃん、先生」
「いえ、神威の家に、いつまでもヨソ者がお邪魔するわけにはいきませんから」
「でもさぁ」
「それに、言われたんです、神威さんに。新しく来る『家族達』の家長になってほしいと。それって素敵な事じゃないですか」

NYでの公演後、PROJECTの知名度は飛躍的にあがった。ミク姉など、世界的女優とCMで共演したほどだった。大手のスポンサー等(など)もついたおかげで、わたし達のマンション、左隣にも、巨大なシェアハウスが建てられた。家(マンション)の右隣、神威の家。引っ越しを手伝いながら交わされた。キヨテル先生とリリ姉の会話。紫の彼も先生も。きっと意識した『家』と言う存在。『家族』という存在。だから、彼も、先生も言ったのだろう。自分のことを『よそもの』と。キヨテル先生は出来たシェアハウスへと引っ越した。そして、紫の彼が告げたよう、新たな『家族』の『家長』と成った。シェアハウスが建てられた理由。新たな歌い手達が加わったから

「歌い手として、IA(いあ)を名乗れとプロデューサーさん達に言われました。アリア・イア、15歳で〜す。NYの公演、会場でみてました〜。ゎたし、皆さんを尊敬してます。はやくみなさんみたいに成れるよう、がんばりま〜す」

そう自己紹介したIA姉『女神からの賜り歌という(めがみからのたまわりうた)』コンセプト。言葉通り、後に女神様と讃えられる歌い手。安らぎをもたらせる歌い手になれたならと、PROJECTオーディションの門をくぐり、やってきた。あのNY公演以来、PROJECTのオーディションも、大々的に公募されるようになった。プロデュサーの耳と目は厳しい。通過者がいない時もあるほどに。それでも、合格者はやって来る

「自分、呂呂刃勇馬(ろろわゆうま)、15っす。まさか、憧れの皆さんのPROJECT。スカウトしてもらえるなんて思ってなかったす。趣味で居合道、やってっす。よろしくお願いしまっす」

自分で歌い手を発掘する、スカウト型。女性プロデュサーの行動も相まって。歌い手は増えていった。その彼女が、ストリートパフォーマンスの大会でスカウトした。勇馬兄『雑踏の癒し声(ざっとうのいやしごえ)』コンセプト通り、ストリートダンスが上手な歌い手。たまに、みんなにつっかかるけど、すぐ顔を真っ赤にして謝る

「あれは、か〜な〜りの甘えたんね」

と、めー姉が言ってた。割と良く、めぐ姉のそばにいる。本日より夏休み。集合の拠点は今もわたし達のタワーマンション。カイ兄と彼が作ってくれた朝食を済ませたメンバー。キヨテル先生が煎れてくれた紅茶を飲みながら歓談する。そんな中、昼からみんなで庭へ出て騒ごうとは、めー姉の提案だった

「なら、歓迎会やろうじゃない、三人の。忙しくてできなかったから」
「賛成、殿。新しく来たみんな、ちゃんと迎えてあげたい。そうだ、シェアハウスの落慶式もしよう」
「決まりだな。よし、買い出し、誰か行ってこい。好きなモン買っておいで。それで料理、作ろうじゃない」

慌ただしさが増したPROJECT。以前のように、歌い手さんが来たその日、大集合で歓迎会は出来なくなった。新たな歌い手を、カイ兄と紫の彼が思いやる。食後休憩の後、買い出しを命じる彼

「ワタシが行きますわ、神威さん。食品やお魚選んで来ます」
「デハ拙者、運転を担当するでゴザル」

サムライ言葉は、ビッグ・アル、アル兄。IA姉同様、わたし達のNY公演を見て訪日を決意。紫の彼に、特に共感を持ったという日本好き。22歳、元工業労働者『造船所の掛け声(ぞうせんじょのかけごえ)』侍ニューヨーカー

「ありがと、アル。アタシも行くわ。お酒買う」
「じゃあ、レンも行って。飲み物選んできて〜」
「ラジャ、カイ兄」

楽しげに、めー姉達が出かけた後

「神威さん、私達も出かけてきます」
「センセとデザート買ってくるよ、おにぃ」
「頼もうじゃない。よし、めぐも行って総菜でも選んできてくれるか」
「おっけ〜ぽ兄ちゃ〜ん」
「あ、なら自分も行くス。荷物持ちで」

先生達も出かける。少し静かになる家の中

「よし、ボクはクーラーボックスや常備の菓子を見とくぜ。カルたん、手伝ってくれ」
「てとさま。手伝う」
「お願い、テト姉さん」
「よし、カイト、〆の麺でも茹でとこうじゃない」
「だね。スープも作っちゃおう」
「がっくん、カイ兄、リンも手伝う〜」

わたし、さも当然のように彼の横

「お利口さんじゃないの、リン。じゃあ、麺、茹でて貰おうじゃない」
「わかった〜」
「リンちゃ〜ん、ゎたしも手伝うよ〜」

IA姉とお蕎麦、きしめんを茹でる。紫様、めんつゆを作る。通常のものと、みそだれのもの。あぶらげを煮る、温泉玉子を茹でるカイ兄

「よ〜し、このまま昼食も用意しちゃおうじゃない。何にする、カイト」
「手軽で、軽食感のものがいいよね。サンドイッチでも作ろうか」

そのまま、昼食用のサンドイッチ作りを開始するわたし達。ハム、チーズ、ベーコン。きゅうりに、玉ねぎ、レタス。重ねて、はさんで、繰り返す。大人数になったメンバー全員分の昼ご飯。途中から、テト姉もカル姉、サンドイッチ作成に加わって作業

「タダイマ戻ったでゴザル〜」

していると、買い出しに行っていた、アル兄達が帰ってくる

「食品のついでに、ハナビも買い申した。スイカも買った故、スイカ割りでもシモウソウ」
「魚市場で、上等なお魚も手にいれましたわ」
「お酒も買い込んで来たわよ〜」
「買いすぎ、めー姉。ルカ姉も、魚こだわりすぎ〜、まったく」

めー姉、ルカ姉、レン。キッチンへやって来る。賑やかになってきた。手を洗ってみんなで荷解。和気藹々(わきあいあい)何が出てくるか楽しみ。今度は発泡スチロールの中、ぎっしりの氷。彼が氷をどかすと、姿を現すお魚さん

「魚、サンマにトビウオ、鰹か。さすがルカ。旬を押さえてるじゃない」
「お褒めに預かり、光栄ですわ、神威さん」
「この鮮度だ。造りがいいか、ルカ」
「ゼヒぜひ。楽しみです。あ、これ、生わさびです」

受け取りながら、考える仕草の彼。調理法だと思う

「分かってるじゃない。うん、トビウオは梅肉和えもいいな。鰹はショウガ、玉ねぎもいこうじゃない。サンマは炙り刺にするか」

嬉しそうなルカ姉。調理法が気に入ったのだろう。丸のままの魚。手をあわせ、感謝の念を示す。捌きにかかる彼。隣のカイ兄、買い物袋を開けて

「秋野菜どっさり。肉は、挽肉とロースかな。よし、殿、オレ、ラタトゥイユとコロッケでも作っとくよ」

買ってきてくれた食材達。メンバー専属シェフの彼と兄。どんなものを作ってくれるか楽しみ。そうしていると

「戻ってまいりました」
「だっだいま〜おにぃ〜」
「買ってきたよ〜ぽ兄ちゃん」
「っす〜、総菜、デザート、コンプっす〜」

先生、リリ姉、めぐ姉と勇馬兄。ノリ良さそうに帰ってくる

「バタークリームと苺のレアチーズ。ケーキ、センセと選んだ」
「アイスクリームも。大納言とバナナストロベリーを購入しました」

先生とリリ姉、手にしている箱。有名ブランドのアイスクリーム

「焼き鳥、塩とタレ〜。メイコさんの好きなぼんじり。ぽ兄ちゃんの好きなうずらのたまご串も〜」
「チーズとフランクの盛り合わせもっす〜」

めぐ姉と勇馬兄は、商店街のお総菜を手に。あっという間に賑やかになるマンション。全員で、簡単な昼食を済ませ調理にかかる彼と兄。クーラーボックスやレジャーシートを外に運ぶキヨテル先生。神威家の大きな丸テーブルを運び出すアル兄。お総菜、炙り肉やチーズの盛り合わせを並べる姉達。運びながらも、飲むめー姉。彼と兄、二人の料理もできあがる。始まります、歓迎会

「まぁず、シェアハウス。これからこいつ達をたのむ。しっかり住まわせてほしいじゃな〜い」
「はい、全員お祈り〜」

お酒をかける紫の彼、カイ兄の言葉で頭をさげるメンバー。思い思い、祈る。落慶式を済ませると

「さぁ〜あらためて。IA、アルに勇馬。ようこそ、いらっしゃい。これからもアタシ達と、歌って生きましょうね。では、一言ずつ〜」

声が弾むめー姉。九月後半、涼しくなりつつある風が心地よかった。レジャーの上、車座りのメンバー。わたしは彼の膝の上。最高権力者、始まりの歌姫。めー姉に促される新入りさん

「マズ、トシヨリの拙者から。ミナト歌って生けるコト、この上なき喜ビト感ズ。改めてヨロシュウニッ」
「ゎたし、今もみんなに憧れてます。参加、とっても嬉しいです。たくさん、ゎたしと歌ってほしいです」
「ッス。トリいきます。みなさん、マジでカッケエす。その中に、自分も加えてくださいね。アザッス」

力強く、アル兄。いつも、ほんわかIA姉。空手選手のお辞儀のように、勇馬兄。わたしたちは

「「「「「「「「「「あらためてよろしくッ」」」」」」」」」」

真摯に返す。本当の想いだ

「おっしゃ〜、飲み物注げ〜、お・ま・え・達〜」
「「「「「「「「「「っしゃ〜」」」」」」」」」」

飲み物がカクカクシカジカ、注がれてゆく。銘々にそそぎ合う。

「発声はIA、アル、勇馬。それぞれやんなさ〜い」

めー姉、飲みたい気持ちに、さらに気合いを入れられた様子だ。ハイテンション、満遍笑顔

「デハ杯を、皆のモノ」

アル兄がまず、杯をかかげる

「ゎたし達の未来に〜」
「シアワセ多いといいっす」
「「「「「「「「「「せ〜の、乾杯っす〜」」」」」」」」」」

杯をあわせる。お祭りの幕があがる

「ゎ〜神威のに〜さん」
「改めて見っと、カイサン」
「コレ、ほぼ全て、手作りデゴザルか」
「「そうだよ」」

二人が作った料理。中央に、アスパラの豚肉巻き、ミートコロッケ。空豆の塩ゆで。定番の野菜サラダに、ちりめんじゃことゴマのサラダ。トビウオと戻り鰹のお造りに、サンマの炙り刺し。秋鮭のちゃんちゃん焼き。サツマイモ、シシトウ、カボチャの天ぷら。個々に付けられたラタトゥイユ、松茸入りのお煮染め。〆はおそばときしめん。選べる方式。天かす、あぶらげ、ネギに温玉のトッピングはご自由に。そこに、生搾りのフルーツオレまで

「作ったほうが、安上がりからね。節約は大切だし」
「手間掛ければ、良い物ができあがる。人間も同じじゃない」
「深いですね〜神威のに〜さん。すごいです〜」
「さぁみんな。どんどん食べて」

カイ兄が促してくれる。華やぐメンバー。新たに加わった三人も、すでに溶け込んでいる

「そ〜いえば神威のに〜さん。リンちゃん、いつも乗せてますね〜」
「そ〜がっくんのひざ、リンの指定席〜」

飲み物を飲んで、宣言するあの日のわたし

「最近、レンは乗らないね、殿」
「おれもう、ガキじゃね〜もん」

彼と同じお酒を飲む兄、片割れの事を言う。と

「ワタシの膝には、乗ってくださいますの、レン君」

衝撃の事実を告げるルカ姉。吹き出す者、目を丸くする者。反応様々

「い、イヤだってあれは、ルカ姉が—」
「お嫌ですか、レン君」
「イヤじゃないけど」

レンがトマト並みに真っ赤。小声になる。な〜んとなく、ムクレルミク姉

「レン君、最近わたしの膝には乗ってくれないのに」
「いっ、いやだって」

ますます赤くなって、慌てふためく

「レンたんモテモテじゃね〜か。なんだ〜ルカたん、ミクたん、恋のさや当てか〜」
「え、や、そんなんじゃないよぅテト姉」
「ふふ、どうなんでしょうね」
「ってゆ〜か、乗ってたんだね。オレ達の知らないところで」

あたふたとミク姉。意味深な笑みのルカ姉。ツッコミを入れるカイ兄

「典型的、末っ子気質デゴザルナ。メンバーの弟という感じでゴザル」
「あるさん、弟違う。お姫様。レンレンはお姫様」
「いやっ、どっちも違うってば、カル姉もアル兄も〜」

両手を胸の前で振って否定するレン。囃し(はやし)立てるメンバー

「結局甘えんぼさんじゃな〜い、レン。甘えとけ、甘えられるうちに。ジキに出来なくなる」
「そだよ〜レン君。最近、ぽ兄ちゃん甘えさせてくれないんだから」
「当たり前じゃない。その年で風呂入ろうとか言うんじゃない」
「リンはがっくんに甘える〜」

頭をこすりつける

「いつものことじゃな〜い」

笑いながら、撫でてくれる彼

「へへ〜、モテんな〜レン。将来ジゴロか」
「うっせ勇馬兄っ。なにさジゴロって、意味わかんね」
「あ、ジゴロってのはな〜」
「オイ勇馬。てめぇ、子供に変な入れ知恵すんじゃねえ。ぶっ飛ばされてえか」

彼の、ドスの聞いた、大迫力の低音が響き渡る。真っ青の勇馬兄

「あ、さ、さ、サーセン、がくサン」
「この双子は、俺の大切な双子だ。扱いに気をつけようじゃな〜い」

わたしの頭に手を置き、凄む彼

「そこまで、そこまで〜。勇馬君も反省してるからっ。ぽ兄ちゃんも、大人げないよ〜」

なだめるめぐ姉。さらにたたみ掛ける彼

「なくたっていいじゃな〜い。双子なめんなよ勇馬。さぁてと、俺も飲み食い(ヤリはじめ)るか」
「さ〜神威君、飲も吞も」
「ありがとうメイコ。リン、食べてるか」
「これから〜。がっくんと一緒〜」

口を付けるわたし。お煮染め。あまくて美味しい。ラタトゥイユはピリ辛。飲み物がすすんでしまう味付けだった

「そうだ、殿。スイカで、居合い斬り見せてよ。久々にさ」
「わ〜ミクも観てみたい〜」

カイ兄が発案する。以前、一度だけ見せてくれたことがあった

「おいおい、見せモンじゃない」
「あ、がくサン、おれも見たいす。居合いやるんで」
「拙者モ是々非々ッ。It’s a Samurai」

ノリノリ、興味津々の二人。もちろんわたしも

「がっくん、リンもみ〜た〜い」
「ったく、俺は辻斬りなんたらじゃないじゃな〜い」

そういっても、結局リクエストに応えてくれた彼。台座ごと真っ二つにしていたっけ。お酒のCMの音で、記憶の図書館を出る。そういえば届いていたな、彼の好きな純米が。後で冷やしておこうかな—

Re: はじまりのあの日 ( No.16 )
日時: 2017/09/25 08:52
名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)

あ『ゴロッとしたお肉』用意するの忘れたな。炙り肉や、ステーキ好きが来たらどうしよう。まぁ仕方ない、カンベンして貰おう。TVの肉フェスタCMを観て『肉』忘れを思い出す。台所用のTV。そんなものがあるのは『家が広い故』の珍事だろうか。そのスピーカーが、今度は花火大会の宣伝を告げる。そういえば、花火大会の前座。みんなで勤めたことがあった。それこそ彼のお膝元の地で。さて、行ってきますか記憶の中へ。12歳の、あの夏へ—

「ぽ兄ちゃん、あの花火大会だよ〜。前座で歌えるって〜」
「懐かしいな、あの町か。十年ぶりくらいじゃない。俺は」
「へぇ、海の大花火大会なんて初めてだよ殿」

パンフレットを観る。海面に映る美しい花火。その光景に、カイ兄同様、心が躍る

「わ〜がっくんのふるさとだ。楽しみ〜」
「まあ、暮らしてたのは違うトコなんだけどな」

七月後半のこと。彼が暮らした町の近く。越後、その町の大規模イベント、海の大花火大会

「前座で歌ってほしいんだって、僕らも楽しみなんだ」
「なかなか観れねぇ種(たぐい)の花火らしいからな」
「あたしのアレンジ手腕の見せ所よ〜」

プロデューサー達の言葉。雪祭りの時同様、お祭りらしい楽しい曲を歌ってほしいと言う依頼。メンバー多数参加型の曲が得意、女性デューサーの腕の見せ所。選択されたのは、ライブの時間も考慮して四曲

「ダンス中心の歌と、ミュージカル×2、物語といくからね〜」
「ジャンル混交だ。トチるんじゃ〜ねぇぞ〜」
「しっかり練習しなきゃね。厳しくいくわよ」

そういえば、と思う。このPROJECTは、いわゆる『芸能人』のような活動とはちょっと違う。わたし達のお仕事は、あくまで歌うこと。それには、色々な『歌』がある。ヒップホップや、ミュージカル。ラップもあれば賛美歌も歌う。時には、日本一有名な歌劇団に匹敵するレベルの歌劇もこなす必要がある。プロデューサー、依頼者要求に応じられる範囲で。その代わり、わたし達は『タレント』のように、TVに出演することは殆どない。公演がお仕事のほとんどを占める。そのほかは、トークショーや、自治体さんの地元アピールに華を添える等。多くのことをこなす必要がある。基本は『生』を訊いて欲しい、観て欲しいというのがプロデューサーの考えだ。その、生の公演のため、アレンジされたダンス。交代のタイミング、曲の歌い込み

「そこ、ズレてるよ〜」
「頭っからもっかい通しで練習すんぞ」
「は〜い、皆もどって、戻って〜」

プロデューサーたちの指導が入る。この練習は本当に大変だった。それだけに、予想以上に、楽しかった。リリ姉の持ち歌、ダンスが格好いい曲も選ばれる。これは二人が中央で、別バージョンを踊る。ストリートダンス系だけに、勇馬兄。歌った本人のリリ姉が選ばれると思っていた

「がくくんとリンに、別パート踊ってもらうよ〜」
「後輩の押しが強えのなんの、うるせえからよ」
「リリちゃんは、最後ソロで踊って貰っちゃうわよ」

わたしと彼が選ばれる。跳ね上がる心

「がっくん、たくさん練習しようね〜」
「気合い入れて、成功させようじゃない」

目覚めれば朝練、学校から戻ればまた踊る。二人で躍り込んだ。給水や、汗の始末に気を回してくれた、優しい彼。ライブの前から、それはもう楽しかった。迎える前日の早朝の出来事

「車割り、どうする神威君」
「運転できんの、俺、カイト、テル、アルだろ、車は三台だから」

はじめは一台だけだった大型ワゴン。メンバーが増えて、移動用のワンボックスも増えた。中古でも、車が購入出来るくらいに成れたのは、ありがたいことだ。機材やスタッフは、すでに前日先行している

「おい、かむい。ボクが抜けてるじゃね〜か」
「移動距離が長いからな。ヤロウに任せとけ、重音」
「お、さんきゅ〜かむい。後で踏んでやるぜ」

軽口を言うテト姉。この日は車で移動する理由の一つは費用の節約。わたし達の暮らす場所から、その街へは、二時間あれば着くらしい。もう二つ、理由があって

「車で行けば、好きに動き回れるからな。何もない町だが、イベント終わったら観光しよう。荷物も積んでおけるじゃない。ま、土産も買ってこよう」
「殿に賛成。混雑回避にもなるだろうし」

という、彼と兄の発案。PROJECTが少しずつ世に広まって、わたし達の周りに、人だかりが出来る。そんなありがたい現象が起きるようになったあの頃。テト姉は、優しい彼らの計らいで運転せずに済んだ

「わたし、がっくんの車が良い〜」

車割り会議を車座で行う大人組に、ズケズケと申し出る

「じゃ、リンは俺の車ケッテ〜イ」
「ゎたしも、に〜さんの車がいいな〜」
「よし、IAも決定〜」
「あにさまさま、かるも」
「良いじゃない、カル姫様。これで一号車ケッテ〜イ。なんだかハーレム状態じゃない」

一号車から三号車まで、各車、割り振りが済む

「先導するからついてこ〜い。お・ま・え達〜」
「「「「「「「「「「いえ〜いアニキ〜」」」」」」」」」」

出発を告げる彼。そういえば以前、IA姉が言ってたな『おまえ』って呼ばれるの嫌だったと。それを聞いた彼

「それは済まなかったIA。これからは使わない。許してくれ」

丁寧に謝った。しかし、当のIA姉

「ん、い〜よ〜、に〜さん。ゎたし、神威のに〜さんの『お・ま・え・達』好きだから〜」

と言うことで、以来問題にならない。わたし達メンバー、彼の『お・ま・え・達』好きなんだよね。なんだろう、気合いが入る。思いやってくれているのが伝わる。ぞんざいな『オマエ』じゃない。本当の『御前(おんまえ)』という響きがするから。その彼、途中、定期的にサービスエリアに寄って休憩時間を取ってくれた。その休憩中、メンバー全員に飲み物を買ってくれた、優しい彼

「これ、限定サイダーみんなに」
「わ、殿ありがとう〜」
「そんなのあんだね〜がく兄、あんがと〜」
「カタジケナイ。拙者モ頂くでゴザル」

メンバーに、サイダーを手渡す彼。蓋を開ける。どういうわけか、レンのものだけ吹き出す炭酸。不意打ちを食らって顔ずぶ濡れ。ルカ姉が拭いてあげる

「このキャラメルも限定〜。笹団子味、お米の味〜。好きなヤツは召し上がれ〜」
「ありがとがっくん。わたしお団子味〜」
「はいリン、あ〜ん」
「あ〜ん」

紙をとって、食べさせてくれる

「私にもいただけますか、神威さん。お米味が気にかかります」
「もちろんだ、テル。運転も体力使うからな」

言って、同じように紙を取る。そして、先生に迫る彼

「お口開けようじゃな〜い」
「いや、神威さん、それは無しで」
「「「「「「「「「「え〜、見たいんだけど」」」」」」」」」」

女性陣に言われ、仕方なく口を開ける先生。Boysなんたら的構図。なんだか可愛らしかった。このシーン、ミク姉によって激撮され、マンションのディスクに永久保存されている

「そうだ、メイコ。終わったら越後の酒、買い込もうじゃない。美味い銘柄たくさんアルぞ〜」
「あら、楽しみ。打ち上げでも吞むわよ〜」
「拙者モ期待が膨らむでゴザルヨ〜」
「さぁ、その越後に向かおうよ、殿。まずはステージ、成功させなきゃね」

ふたたび乗り込んで出発

「がっくん、飲み物のキャップ開けておくね。あと、トマト味スティック、あ〜ん」
「ありがたいじゃな〜い、リン。うん、美味しいな」

ナビシート、運転する彼のお世話をさせて頂く。移動時間も、彼となら楽しい以外の何でも無かった

「わ〜、何だか萌え萌え〜」
「ホントだね、IAちゃん。仲良しこよし〜」

IA姉、めぐ姉が、愉快げに話しかけてくる。そうこうして、目的地にたどり着く。主催者さんと打ち合わせ、会場の下見。当日、手伝ってくれるボランティアスタッフの大学生が紹介される。紫の彼のファンだという学生さん。髪型は彼と同じ。少し短かったけど。優しい彼は、肩を組んで写真撮影に応じてあげた。夕方には移動して、用意された温泉ホテルでくつろぐ。部屋は男女分けの四人一組。合計四部屋

Re: はじまりのあの日 ( No.17 )
日時: 2017/09/25 08:52
名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)

日付が変わって公演当日。その日は朝から熱い日だった

「室内なのに、蒸しますわ、神威さん」
「うっわ。高温注意が出てるじゃない、ルカ」

うちわで扇ぐ、ルカ姉。携帯で、情報を確認する彼

「ホントなの、神威君。ならあんたたち、水分しっかりとるのよ〜」
「め〜ちゃんの言うとおり。でも、冷たいのじゃなくて、温め(ぬるめ)くらいのをね」

お味噌汁で、ご飯を流してめー姉。カイ兄、箸を置く

「冷タすぎると、腹を壊す故。塩分もタイセツでゴザルナ、カイト殿」
「では、梅干しを買っておきましょう、アルさん。売店にありました」

言い終わり、豪快に塩鮭でご飯を掻き込むアル兄。梅干し購入を提案、キヨテル先生。朝食を食べながら、大人組の気遣い。あの日、滝のように汗をかいたけど。倒れなかったのはそのおかげ

「おっはよ〜、みんな。衣装できてるよ。まずは、口火を切る服ね」
「この服のオソロ。結構な破壊力だぜぇ〜」
「ま、本当の勝負は『歌』だけどね」

ホテルのバスで、午前中に会場入り。まずは、近くのユースホステルで衣装合わせ。本日、はじめの曲はメンバー全員が同じ衣装。炭酸飲料を連呼した歌の時の、黒のボンテージ。ただでさえ、熱が籠もるレザー地の。歌うの曲のイメージにも合うからと。神威のプロデューサーが推して。全員で着るのは、当日がはじめて

「うっわ〜、ルカ反則〜。大人びたもんだね〜」
「あら、カイト兄様、お言葉そのままお返ししますわ」

着替え終わって、お互いの姿について感想を言い合う。めー姉、ルカ姉、めぐ姉は、文句なし、大人の色気。紫の彼、カイ兄、キヨテル先生も、大人の色香が凄まじかった。リリ姉の小悪魔感も反則的。身長に反して、恵まれた体つきのIA姉。今にして思うと、変な反則感があった。アル兄も、まあ、反則は反則。逆に、わたし、レン、ミク姉は、明らかにミスマッチ

「しかしな、主らよ。悪影響じゃない、子供に着せるなよ。これを」

彼に言われ、ちょっと悲しくなる。そういえば彼や先生は、少なからず、わたしたちがこのボンテージを着ることに反対していた。悪ノリした、神威組のプロデューサーはムチまで持たせようとして、キヨテル先生が個室で『話し合い』をしていた。干からびてプロデューサーが出てきたことを覚えている。その口から『おっかねぇ』と零れていたことも

「何いってんだ、がく。それが狙いだぜぇ〜」
「本気で言ってんのか、我が主よ。正気と思えん」

顔をしかめる、紫の彼。咳払いをする、キヨテル先生。目をそらす、神威のプロデューサー

「がっくん、リン達そんなに変かなぁ」
「や、そういう意味じゃない。似合ってるじゃない。リンレン、ミクもカワイイよ。だ〜か〜らこそ。変な目でみてほしくないじゃない」
「あいかわらず過保護ねぇ神威君。まちょっと言い分もわかるけど」

困り顔の紫様に、苦笑いのめー姉応える

「いまさら変えられないから仕方ないけどな。今日も精一杯やるぞ、可愛い双子もミクも」
「ダンスがんばろ〜ねがっくん」

機嫌を直す単純さ。われながら、あきれたものだ。一度練習着に着替え直し、リハーサルを行なう。熱心なファンは、この時点で見学に来て下さる。野外ステージなので丸わかりだが、昨日のボランティアスタッフ。紫様ファンの学生さん。陣頭指揮の警備によって、近くでは見られない。リハを終えて、シャワーで汗を流し、昼食を済ませる。午後三時、ステージに大声援で迎えて貰う。暮らしていた期間が長い彼。ミク姉のふるさとよろしく、お帰りなさいの声

「ありがとう、たっだいま〜」

大声で応える彼。盛り上がる会場とわたし達大盛況のうちに、ライブが終わる。アンコールの声まで頂いて、もう一曲

「また逢おうな〜お・ま・え・達〜」
「バイバ〜イ」

歌い終わって、ミク姉と紫の彼。観衆の大歓声に応える。このライブも大成功と言って良かった。先程、衣装へ着替えをした、ユースホステルでシャワーを浴びる。今度は、私服へ着替えを済ます。花火鑑賞モードへと移行する

「はい、リンちゃん。一層かわいくなりました〜」
「ありがと〜。でも、めぐ姉の方が、かわいいよ〜」

着付けが出来ない私。着付けてくれるめぐ姉

「さ〜花火見に行こ〜」

高めのテンションで。同室のミク姉が言う。二人と手を繋いで浜辺へ。あつまるメンバー。男性陣は甚平さん。女性陣は色とりどりの浴衣で。ありがたいことに、ここでも記念写真や、サインの声が上がる。ひとしきり応え、リラックスタイムに移行させていただく

「花火始まるね〜ルカ姉」
「たのしみですわ、ミクちゃん」

ミク姉、今度は待っていたルカ姉と手をつなぐ。うちわで扇ぎあう

「レジャーシート、引いておいたでゴザル」
「屋台で、食べ物も買って参りました。甘い物も。どの屋台主様からも、申し訳無いことに—」
「テルサンに付き合って買ってきたす。めっちゃサービスの品、貰っちゃったっす」
「感謝しなきゃ〜なぁ。メイコ、飲みながら観ようじゃない」

特別席、主催者様サイドが用意してくださる。そこに、敷物を敷いてくれるアル兄。美味しそうなモノを両手いっぱいに、先生と勇馬兄。半透明の一升瓶を片手にやって来る彼

「待ちかねたわよ〜神威君」
「ゎたし、花火をおまちかね〜」
「始まる前のむずむず感、わくわくわく」

屋台の発泡酒で、すでに上機嫌のめー姉が言う。シートの上に座るIA姉、さっそく冷やしきゅうりをカジる。カル姉も、お好み焼きのソースで、口の回りを汚ごす。思い思い、腰を下ろす。わたしは当然彼の膝の上。一升瓶の蓋を開け、プラスチックのコップに注ぐ彼。めー姉に手渡してあげる

「少し風出てきたね。涼し〜」
「このくらいの風あっと良いんだぜ、レン。煙が飛んでくから」

屋台の焼きそばを食べながら、レン。その頭を撫でつつ、たこやきを摘まみあげるリリ姉。さきいかや、チータラを肴に、大人組も盛り上がる。まだ、うっすら明るい、宵の口。花火が気になる様子のメンバー、気持ちが高まってゆく。周辺の人たちの高揚感とも相まって。さざ波のような人の声。と、突如、鳴り響くファンファーレ。ナレーション、開始告げる。火ぶたを切る、スターマインの閃光と轟音

「すっげええええ」
「It’s a beautifuoooo」
「こんなのはじめてだよ。めーちゃん、すごいね」
「お酒もおいしいし、最高のシチュエ〜ションだわ〜」

仰天する片割れとアル兄。姉も兄も見とれる。打ち上げられる、尺玉。その下では、花火によって、光の滝が海面へ向かい形成される。左右へ飛び交う、光の球。視界の全て、180度。星の洪水、轟く爆音。こんな花火ははじめてだ

「すごいねっ、がっくんのふるさと花火」
「こんなの観たことないよ〜神威のに〜さ〜ん」
「まだまだすんごくなるじゃな〜い」

そんな彼の言葉通り。三尺球が連発されたり、クマのキャラクターの花火が上がったり

「がっくん、子供の頃から観てたんだ〜。わ〜羨ましい」
「その頃より、かなり等級上がった感があるけどな。俺も初めて見るようなのが幾つもあるじゃない。さてリン、何か食べたいのある」
「あ、やきそば食べた〜い」

いつものように図々しい。カイ兄に頼んで、焼きそばを取って貰う彼

「じゃ〜あ」
「「いただきますっ」」

二人、手を重ねて手を合わせる。割り箸を割って、当然のように

「はい、リン、あ〜ん」
「あ〜ぅ。ん、ういひい(おいしい)」

口へと運んでくれる。今思えば、よくも公然と甘えていたものだ

「あら、コチラでもスターマインが打ち上がっていますわぁ」
「花火とがくリン。いや〜高画質モ〜ドって素晴らしい」


ルカ姉が、うちわで扇ぎながら、ミク姉、新式のスマホを構える

「なに言ってるんだ、ルカ、そ〜言うのは、カイメイ様に言おうじゃない。ミク、良い構図ならそこかしこに転がってな〜い」

指摘され、今まで寄りかかっていためー姉から離れようとするカイ兄。時既に遅し。構図が強制膝枕へと昇華

「シャッタ〜チャンスっ」

激写をはじめるミク姉に

「え〜、というワケなのでリリィさん、ご移動頂けると幸いなのですが」
「え〜、別に良くね、撮って貰お〜ぜ、逆に」

リリ姉を膝枕する、先生が焦りはじめる

「ぐ、グミさん、この焼き菓子、もちもちで美味いすけど、どっすか」
「ありがと〜勇馬君。お礼にこれ、美味しいよ、冷やしパイン」

ちゃっかりとめぐ姉の隣。勇馬兄が勇気をだす

「う〜む、素晴らしい花火大会」
「ふはっ、ミクとは趣旨が違うけど、良い思い出になるんじゃない。楽しいな、リン。楽しそうだな、おまえ達〜」
「すっごく楽しい〜。あ、またファンファ〜レ、スターマインだ〜」

特大のファンファーレ。ラストの、市民様ご一同の寄付で行なわれる、特大最大のスターマイン。すごかったな。鍋ぶたが、カタカタ音を発てる。その音で、意識が今へと帰る。あの日も、わたしを、わたし達を思ってくれた優しい彼。そういえば、彼は言っていた『そんなに変わった土産はない』と。でも、おまんじゅう、地酒に、地ビール地サイダー。ようかんに、魚の形のおかき。美味しかった魚の干物まで買い込んで。結局はおみやげ盛りだくさんで、越後の国から帰ってきた。彼は今日、どんな手土産を持って帰るだろう。図々しくも考える。いや、まずは『彼が帰って来てくれること』が、最大お土産。わたしにとっては。うふふ、おのろけごめんなさい。誰に聞かれるでも無し。盛大にのろけよう—

Re: はじまりのあの日 ( No.18 )
日時: 2017/09/25 08:55
名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)

バーベキュー禁止のエリアで、行う不逞の輩。TVに写し出され、逆ギレ。ヘリクツをこねている。あの日、わたしたちがした、野外の食事会。不法な場所などではなかった。マナーを守れば楽しいものを。規則を遵守すれば快適なものを。なぜ、この程度のルールを守れないのだろう。ちゃんと守ったわたし達。閻魔様からのご褒美だったのかな。いや、お地蔵様からの贈り物なのかもしれない。楽しかった、浜辺での晩餐会。さて、行ってきましょう、記憶の部屋へ。彼と見た夕日、ほんとに綺麗だった。その後の線香花火。嬉しかった、彼の素敵なお気遣いが—

「おはよ〜う、がっくん、みんな〜」
「おはよ、リン。今日も良い天気じゃない」
「リン、朝からテンション高いな〜」

待ち合わせたホール。みんなに、彼に、挨拶をする。朝が弱い片割れから、そんな返事が返ってくる。花火大会翌朝、朝食会場へと向かうため集合する。館内では、寝間着浴衣の移動が許されているため、みんな浴衣のまま

「今日も楽しみ〜がっくんのふるさと〜」
「まあ、暮らしてたのは別の街だけどな。どっちかって言うと、お膝元って感じじゃな〜い」

わたしの頭に、手を乗せてくれる彼

「でも、でも〜。よく遊びに来たよね、ぽ兄ちゃん」
「あにさまのお弁当もってお花見」
「海水浴にも来たよな〜」

めぐ姉達が、思い出を語ってくれる

「花見や花火大会なんて、地元でもやるのにな。でも、楽しかったじゃない、めぐリリカルとこの街に来てさ。な〜んにもない街だけどな」
「ぽ兄ちゃん、そんなこと言ったら失礼だよ〜。わたし達の街だって、コレと言ってないんだから、特色」

めぐ姉、可笑しそうな顔で

「でも、観光案内してくれるってことは、観るところあるんだよね、がくさん」
「楽しみだよ〜神威のに〜さん。ただ、ぉなか空いてきた〜」
「おれも〜IA姉。メー姉、まだ起きないのかな〜」
「後はメイコ殿と、ルカ殿だけでゴザルナ」

紫様の背中ににのしかかるミク姉。こういう甘え方は珍しい。あの日はまだ『嫉妬』をすることはなかった。何となく気にはなったけど。IA姉も、彼の胸にのし掛かる

「まあ、それなりにな。考えてはいるじゃない。てゆ〜か、熱い」

苦笑いで二人を引きはがそうとする。すると、めぐ姉やカル姉も加わって、紫様にのしかかる。もちろんわたしも。しまいには、カイ兄やレンまでふざけて。最終的には、たまりかねた彼が、レンを抱き上げ、脇の下をくすぐりまくって、レン撃沈。花火の後も、しこたま飲んでいためー姉。ルカ姉に肩を借り、やって来たのは、その五分後のこと

「は〜おは〜」
「案の定だが、メイコ。二日酔いだろう」
「その通りですわ、神威さん。中々起きてくださらなくて」
「ふっふ〜。いいじゃな〜い、オフの時くらい〜」
「まったく、め〜ちゃんは。さて、行こっか殿」

朝食会場へ歩きだす。温浴施設に、漂う美味しそうな香り。用意されていたのは米所、越後の白飯。お味噌汁、アジの干物。卵焼きに青菜のおひたし、小さいながらも納豆。海苔の佃煮に、お漬け物まで付いた朝ご飯。たいそう豪勢。少し以前のわたしなら、文句をつけただろう、純和食。紫の彼が来て、作ってくれた和食のおかげ。いまではすっかり、お米の虜。いただきますの大合唱。手を合わせて感謝を捧ぐ

「ういひ〜ね、かっくん(おいしいねがっくん)」
「頬張るリス状態じゃない。たくさん食べろ、リン、レンも。勇馬、食べてるか〜」
「食ってすっ。めっちゃ美味ぇっす」

干物で思い切り白飯を口に。頬に付いたご飯粒を取ってくれ、自分の口に入れる。対面はじの勇馬兄、言ってからこちらも盛大に白飯を頬張る

「よしよし、イイコだ。が勇馬『食う』とか言うな。俺達は命を頂いてるんだ」
「ふ、ふぁ〜へん(っす、サ〜セン)」

腕白な弟に言うようなやり取り。笑っている彼、笑い合う面々

「こ〜いうのが嬉しいわ〜。二日酔いにてっきめ〜ん」
「だから、め〜ちゃん、飲み過ぎだってば〜」

味噌汁を含むめー姉。苦笑するカイ兄

「おいしいですわ〜あおさのお味噌汁。磯の香りですわね」
「海苔のツクダニ、逸品でゴザルナ。拙者、おかわり行くでゴザル」
「海がすぐ側、お魚うまうま。神威のに〜さん達が羨ましい」

ルカ姉は、どちらかと言えば洋食派だった。大間産は別として。わたし達の故郷も、食文化は土地に特化したものがある。和洋混交、西洋と大和の食事が入り交じった感じ。だから、洋食好きの人も多いのだ。ところが、彼の作ってくれる、絶品和食。これのおかげで好き嫌いが無くなった。アル兄、IA姉は初めから虜に。海がない土地に暮らすわたし達。魚の鮮度は、やはり叶わない。みんなで、海の恵みに舌鼓

「「「「「「「「「「ごちそうさまでした〜」」」」」」」」」」

楽しくて、賑やかな朝食を済ませ、ホテルを引き払う。午前中にスタッフ、プロデューサーは帰還。わたしたちは、三泊四日。オフが与えられた。朝食を終え、着替えのため、一度部屋に戻る。この辺りからだったよね

「あはっ、リンちゃん今日もか〜わい〜い」
「ありがとぅ〜。めぐ姉だってかわいい〜」

女性、男性、別れてお揃いのコスチューム。よく着るようになったの。わたしとお揃いデザインのワンピースドレス、着ているめぐ姉。スカートの丈だけが違う。わたしはミニ。セミロングのめぐ姉は、なんだか幼く見えてしまう。着替えを済ませ、私物をまとめる。宿を引き払うためだ。海水浴シーズンだけに、宿が混み合っている。日ごとに泊まる宿が違ったことも楽しかった

「よし、忘れ物ないね、リンちゃん」
「うん、洗面所も見てきた〜。大丈夫だよ、めぐ姉」

荷物を手に、玄関ロビーへ。続々集まるメンバー。私物を、車のトランクへ運んでくれる男性陣

「お、そのネックレス付けてくれたんだ。今日のワンピースにも映えてるじゃない」

積み込みを終え、戻って来た紫様が気付いてくれた。嬉しさが込み上げる

「そ〜、がっくんが買ってくれたヤツ〜。普段はできないからさ、ちょっとだけオシャレしてみた」
「わ〜かわいいネックレス〜。あ、ソレなんだね、リンちゃん。神威のに〜さんがNYで選んでくれたの〜」
「うん、IA姉、すっごく気に入ってるんだ」

IA姉が顔を寄せてくる

「ああ、そのネックレス、NYで購入したものですね、リンさん。すると、レンさんのブレスレットも」
「あ、うん、先生。リンと考えがカブったのは偶然だけどさ。おれもたまにはカッコつけたくて」

片割れの腕、輝く碧水晶の数珠ブレス。本日のコスチューム、女性陣は白のフリルワンピ。白の麦わら。腰リボンの色や、スカート丈が違うだけ。男性陣は、白のYシャツ。薄いグレーのパンツに、メッシュのボギーハット。結んでいる、ネクタイの色形や、ハット、靴の色が違うだけ

「あらあら、大人びたわね〜、二人とも。あの日はまだ、精一杯『背伸び』してる感じがあったのにね」
「似合う年頃に成ったってことかな。二人とも」

めー姉、カイ兄、それぞれの言葉。NY、あの場面を見たメンバーは、割合もう『古参組』だ。そろったところで出発。彼の地元の観光を開始する。まずは市内の博物館を見学

「すっげぇ。がく兄、これマンモスでしょ」
「いや、ナウマン象。この、牙だけだけは本物の化石。あとは作り物。だけど、すごいじゃない」
「オウ、ナウマン。Japanにもおり申したでゴザルナ」

ナウマン象の化石や、プラネタリウムを観た。その後は、すぐそばの公園でピクニック。コンビニのサンドイッチやお菓子、飲み物を楽しむ。車で移動して、参拝したのは

「ああ、ルカ、みんなも。お賽銭、五円玉投げるんじゃないぞ〜」

五円玉を投げようとするわたし達を制止する紫の彼

「あら、神威さん。神様との『ご縁』がありますようにって—」
「はは、ルカ、ここがお祭りしているのは『閻魔大王様』神様じゃあない。五円玉投げて『ご縁』があったら、こんな世界に落ちちゃうんじゃな〜い」

閻魔様が祭られるお堂。彼が指し示すその先、観た地獄絵図。メンバー、恐怖におののく

「うわ〜こわいよぅがっくん」
「絶対に行きたくありませんわ、神威さん」

即座に、五円玉を引っ込めるルカ姉

「だから遠縁になるよう『十円(とおえん)』投げようじゃない。語呂あわせだけどな。でも、イイコにしてれば大丈夫。閻魔様はお地蔵様となって、子供達を護ってくださるじゃない」
「閻魔さんとお地蔵さんって、同じ人なんすか」
「ははっ、勇馬、人じゃあない『菩薩様』だ」

笑って、勇馬兄の頭を撫でる。彼に、閻魔様とお地蔵様が同じ菩薩様だと教えて貰う。初めて知った

「う〜ん。少しでも、清らかに生ないといけませんね、重音さん」
「そう思っていても、中々出来ないのが人間だぜ。先生たん」
「清らかたろうとする心がけじゃないの、アネキ」

改まるキヨテル先生。開き直るテト姉に、釘を刺すめー姉。さらに移動して、酒屋さんで、お土産用のお酒を買い込む。彼曰く、有名地酒よりマイナー地酒がおいしい。めー姉が一番喜んでいた。酒選びの間は退屈だろうと、地酒アイスを買ってくれた彼。カイ兄はじめ、みんな嬉しくなる。大漁の銘柄を発注。荷物で届くそうだ。さらに駅前へ移動

「ここの黒ようかんは絶品じゃない。テル、これ、滅多にない逸品。俺が、こよなく愛して止まない、至高の品〜」
「っ—。これは、素晴らしいお仕事ですね、神威さん。この羊羹を知らなかったのは、痛恨の極みです」
「これも、土産けって〜だなセンセっ」

お菓子屋さんへ入店。試食させていただいた黒ようかんの美味しさ。一同絶賛

「魚の形〜。おいし〜し、かわいいね〜グミちゃ〜ん」
「でしょ〜、IAちゃん。このお煎餅も買っちゃお〜」

試食中、わたし達が歌い手と気付くお客さん。プチ撮影会、サイン会に握手会が始まる。お店へのサインと記念写真にも応じる。その後も続く、お土産選び

「この魚おかきも、おつまみにぴったりよね〜神威君」
「あ、時々食べさせてくれるおかきって、これなんだ、殿」
「がっくんのオヒザモト〜。このお店で売ってるのだったんだ〜」

増えるお土産。買い物を済ませ、昨日の海岸へ戻ってくる


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