二次創作小説(紙ほか)
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- はじまりのあの日
- 日時: 2017/09/24 18:09
- 名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)
はじめまして
ボーカロイドの二次小説。話しはオリジナルのストーリーです
神威がくぽ×鏡音リン
MEIKO×KAITO
氷山キヨテル×Lily
めぐっぽいど×VY2勇馬
巡音ルカ×鏡音レン×初音ミク
の組み合わせがダメという方は、読まれない方が良いと思います
恋愛小説のつもりですが、そこまで恋愛じみた話しではありません(あくまでつもり)
どうぞ宜しくお願いいたします
登場人物(最終的に登場する人物)
元音メイコ(もとねめいこ)
継音カイト(つぎねかいと)
初音ミク(はつねみく)
鏡音リン(かがみねりん)
鏡音レン(かがみねれん)
巡音ルカ(めぐりねるか)
重音テト(かさねてと)
神威がくぽ(かむいがくぽ)
神威めぐみ
カムイ・リリィ
神威リュウト
カムイ・カル
氷山キヨテル(ひやまきよてる)
可愛ユキ(かあいゆき)
Miki(みき)
猫村いろは(ねこむらいろは)
歌手音ピコ(うたたねぴこ)
オリバー
ビッグ・アル
IA(いあ)
呂呂刃勇馬(ろろわゆうま)
歌い手総勢21名
プロデューサー1
プロデューサー2
プロデューサー3
- Re: はじまりのあの日 ( No.19 )
- 日時: 2017/09/25 08:56
- 名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)
本日の宿は、昨晩、シャワーを浴びたユースホステル
「さて、ひとっ風呂浴びて初めましょお〜神威君」
「とっとと浴びてこようじゃな〜い」
「うお〜腹減ったっす〜」
それぞれ、部屋に入って入浴、着替えを済ます。目指すはテラスでのバーベキュー。同室になっためぐ姉共々慌ただしく準備。浴衣に着替える
「は〜い。リンちゃん、今日も可愛くできあがり〜」
「ありがとめぐ姉〜」
というか、着替えさせてもらう。そういえば、あの越後遠征中、ずっとめぐ姉と部屋が一緒だった。わたし、めぐ姉も大好きだから、楽しさ三割増しだった。部屋を出て、腕組みで、連れだってテラスに歩いて行く
「はやくはやく〜。すっごく美味しそうだよ〜」
「リンちゃ〜ん、グミさ〜ん、こっちこっち〜」
大きく手を振るミク姉とIA姉。気持ちが急いで、めぐ姉と手をつないで駆けてゆく。用意されていた料理に驚く。たっぷりのお肉と夏野菜。ホタテやお魚、フランクフルト。イカ焼きに焼きそばまでついて。舟盛りのお刺身は全部で八種類、どれも肉厚。サザエも付いて船二艘(ふねにそう)鎮座している
「わ〜すごいっ。豪華だねがっくん」
「みんなが揃ったら、まず乾杯しちゃおうじゃな〜い。大人は刺身トカ、子供達はフランクなどなどで始めよう。肉や魚は、酒ヤリながら焼こうじゃない、カイト」
「だね、殿。めーちゃん、お酒オーダーしちゃっていいよ。オレも初めからポン酒にしよう。越後のお酒はホント美味しいよ、殿」
あまり『お酒派』でないカイ兄。初めから日本酒は珍しい。昨日飲んだお酒が、相当に気に入ったようだ
「めずらしいですわね、カイト兄様。ワタシはソフトドリンクをお願いします」
ルカ姉の声に、ホステルサイドがもてなしの品。特別に、と名産品、有名な洋梨の果汁100%ジュースが運ばれてくる。わざわざ用意してくださった逸品に、目の輝きが増すルカ姉
「アタシもカイトと、同じお酒をいただくわ〜」
「ボクは米焼酎のロックを貰うぜ」
カイ兄のポン酒解禁令に喜ぶめー姉。テト姉も飲む気満々
「私は、この地元ワインを、白でいただけますか。飲まれない方には、地サイダーもお願いいたします」
「腹減った〜、たくさん食べようぜセンセ。あ、ウチ蜂蜜アップルティーお願いしま〜す」
甚平姿の彼、兄、キヨテル先生。言うリリ姉は、女性陣の中で、ただ一人甚平。先生の眼鏡に似たデザインの。銀縁だて眼鏡をかけている
「オ待たせモウシタ〜。おお、ウマッソウでゴザルな」
「アル、あんたもお酒でしょ、何飲む〜」
楽しげに訊くめー姉に、beer(ビール)と応えるアル兄。するとこちらにも、限定のビールが運ばれてくる
「にくにく、うおうお、もりだくさんさん」
「うっわ、たっまんね〜、早く初めっす、みんな」
ぞくぞくと集まってくる。四時半には乾杯の火ぶたが切られた。色とりどりの声と飲み物、昨日の花火に負けじとあがる。紫の彼、刺し盛りを手に。カイ兄はフランクとイカ焼きを手に、焼き台へ向かう。瞬く間に、飲み物の蓋が開く。用意していただいた肉、野菜。彼と兄が調理してくれて。海鮮も、焼きそばも、焼き加減、味付け抜群。レア、ミデュアム、ウエルダン。どれもこれもフルコース。お刺身も、鮮度良く、油ものりノリ。大間に負けない中トロに、ルカ姉歓喜。総て絶妙で美味しかった。瞬く間に、宴は進み
「わあ〜綺麗だね、がっくん」
「日本海に沈む夕日も綺麗じゃな〜い」
ひとしきり食べて、飲んだ後。わたしは、〆の焼きそばを手に。彼はお酒を手に、見た夕日。海岸へ腰を下ろす。全方向、海の大パノラマ。少しだけ涼しくなった風、ほっぺたをくすぐる
「こんなシチュエーションも滅多にないわ〜」
限定缶ビールを片手にめー姉ご機嫌。隣に座るカイ兄の肩に腕を回す。兄は、お米のアイスで上機嫌。メンバー、今度は海岸に集まり出す。薄暗くなっていく海岸線
「昨晩の大花火も素晴かったです。皆さん、今晩は、ささやかな花火もいかがですか」
「あ、い〜じゃんっ。やろ〜ぜ〜センセッ」
「おお、コレも和のココロでゴザルな」
「先公が線香花火、っす」
線香花火を手に、やって来るキヨテル先生。ダジャレを言う勇馬兄。吹き出す先生とみんな
「勇〜馬。面白いけどテルに謝れ。失礼だ、ぶっとばすぞ。謝ったら、飴ちゃんをくれてやろうじゃない」
「がくサン、自分でも思ったす。サーセン、テルサン」
素直に頭を下げる勇馬兄。先生は、気にしてませんと笑う。が、激怒したリリ姉が勇馬兄に跳び蹴りを見舞う。取っ組み合いになりそうな二人を、紫の彼がなだめる。二人共に飴を口に入れてあげる。線香花火大会の幕が上がる。浜辺にしゃがんで、着火用のろうそくを立てる。仄かな光。メンバーを照らす。さも、当然のように。彼の横に陣取って。線香花火に火を着ける。花火の閃光を見て、ふいに思った事を言う
「がっくんが来て、もう四年も経つんだね」
顔を、夜空に向けてあげる彼
「そうだな。もうそんなになるじゃない」
「四年か〜。でも、それ以上に長い付き合いな気がするよ。殿」
「神威君が来て、ルカが帰ってきて。仕事、メンバー。増えたものねぇ」
とても感慨深げな、彼、カイ兄、めー姉。そう、年月以上に濃い時間を過ごしたと思う
「がっくん。これからもさ。こんな風に、みんなで食べたり飲んだり、歌ったり。花火したり。ずっとず〜っと、一緒に仲良しでいよ〜ね〜」
一瞬、不思議そうな顔をした彼。でも、すぐに破顔して
「そうだな、リン。ありがとう。これからもよろしくな」
そう言った彼の顔は、少年のようだった。心拍が跳ねた。初めての感覚だった。と、二人同時に線香花火が落ちる
「あ、あ〜何かやだなぁ、縁起悪ぅ〜」
「ん、どしたリン」
「だってさぁ、ず〜っと一緒に仲良くって言ったとたんにだよ。花火落ちちゃうんだも〜ん」
「はは、気にすることないじゃない。でも、リンが気にするなら」
二本、線香花火を取って、一本を手渡してくれる。着火を促される。再び花火の柳がかかる
「これからも仲良くしようじゃない、リン」
言って、わたしの花火に、彼は自分の花火をくっつけてくれる。花火の珠がくっつく。合わせた線香花火から、二つの柳が跳ね落ちる
「こんな風に、さ。一緒にいようじゃない」
「がっくん。わ〜、そうだね、ず〜っと仲良しでいよ〜ね」
素敵な彼の気遣い。たちどころに、気持ちが跳ね上がる
「あら、お暑い。なんだかんだで、リンは神威君がお気に入りよね〜。神威君はどうなのかしら、ふふ、気になっちゃうわ」
「ゎ〜、萌え萌え〜。神威のに〜さんとリンちゃん。ペア線香花火〜」
「ん、気になるって何だ、メイコ。俺は俺で、気に入ってるぞ。リンもメイコ様も、このメンバー全員も〜」
片手にお酒、片手に線香花火のめー姉に茶化される。IA姉が頬を染める。あの日は、その意味さえ考えなくて
「あ〜、神威君、そ〜じゃなくて〜」
「うん、めー姉。わたしはがっくんお気に入り〜」
少し困り顔の姉に、そう返したことを憶えている。あの辺からかな、みんなのカンジが変わったの。わたしと彼に、接する態度。向けられる視線の変化。そんなことに、あの越後では気付かなかったけど。その後は、色々な所で『花火合わせ』大会になったっけ。二度目、花火大会を告げるCMが始まる。意識が又、今へ戻ってくる。今年もまた、彼と花火合わせがしたい。そんな風に想って、ああ顔がにやけてしまう。一人の時で良かった—
- Re: はじまりのあの日 ( No.20 )
- 日時: 2017/09/25 08:57
- 名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)
お人形店のコマーシャル。この会社のCMは年間通して流れている。今回はひな人形のCM。ひな祭りか。おひな様も、五月人形も。彼が来てから、飾るようになったんだよね。わたしと片割れの、健やかな成長を祈ってと。そんな、優しい彼の心配り(こころくばり)枝豆を茹でながら、意識があの日へ降りてゆく。今日は作業しながら、思い出が怒濤のように溢れるな—
「忙しくたって、年中行事、歓迎会。大事にしようじゃない」
「そういえば、神威君が来て、飾るようになったのよね。おひなさま」
「はじめは、マンションのリビングだったよね、がっくん」
「それはシュ〜ルですね、神威のに〜さん」
神威の家の中。居間、茶の間、奥の間。普段は、木製の引き戸で仕切られている空間。今日は戸が外され、広い和風空間。そこに、ひな人形を飾りながら。紫の彼、めー姉、わたしと、IA姉の会話。わたしとレンの身長が、IA姉を超えたあの日
「でも、ひな祭りってトキメキますよね〜」
「今日はぴこぴこ、みきみきとおひな様」
「あは、似合ってるよ〜ピコきゅ〜ん」
オッドアイ、綺麗な目を耀かせながら『電子世界の囁き声(でんしせかいのささやきごえ)』新人の歌手音ピコ(うたたねぴこ)くん、14歳。某動画サイトにて、フリフリのゴスロリドレスで『歌ってみた』ところ、弾幕が凄かった。良い意味の反響という証。その姿を見た女性プロデューサーが、声と容姿に惚れ込みスカウトしてきた。PVの撮影で、レン共々『男の娘』になっている。レンの場合は嫌々なのだけど、ピコくんは自らノリノリで『男の娘』になる。そこが、どうやらカル姉のお気に入り。本日も振り袖男の娘。カル姉Mikiちゃんと色違い、お揃い。上は普通の振り袖だけど、下は、フリルのスカートタイプに花柄ニーソ
「三人とも似合ってるよ、Mikiちゃん」
「ふふ〜。ありがとう、リンちゃん」
こちらも新人さん。歌うアンドロイド『歌愛す機械人(うたあいすきかいびと)』そんな無茶振りのコンセプトを、真剣にこなす。本名、遊馬ミキ(あすまみき)のMikiちゃん16歳。やって来たその日に『Miki姉』と呼んだ。すると
「ちゃんって呼んでよ、リン先輩」
と返ってきた。先輩の響きは魅力的だったが、そんな呼び方をずっとされては堪らない。歳もわたしより上なので
「じゃあ、Mikiちゃんも『リンちゃん』で〜」
そんなやり取りをした。ところでなぜ『アンドロイド』などというコンセプトなのか。無茶振りでは、と聞いたところ、神威のプロデューサー曰く
「オーディションの時のマジ顔が、なんかサイボーグを連想させてよ。先輩(パイセン)と、おもしれぇぞって」
とのこと。カイ兄と組んでデビューした。PV撮影では、一切表情を変えるなと言われ、かなりきつい思いをしたという。以来、歌うときは、ことさらに笑顔を心がけている。そのピコ君とMikiちゃん。出会ったその日に
「なんだか似てるね、うちら。電子とアンドロイド。かわい〜ね、ピコ君のしっぽプラグ」
「そうですね、Mikiちゃん。ユニフォームの感じとか、アホ毛も似ています〜」
そう言って意気投合。Mikiちゃん、ピコ君のプラグを自分のベルトバックルに繋いだりしていた。確かに、新しく来た二人。頭のアホ毛や、ユニフォームの感じが似ている。カル姉は、その二人と居るのが好きらしい。三人お揃いの格好でいることが多い
「Japanの心、ワビとサビ。大切でゴザルナ」
着流しの懐に右手を入れ、左手を顎に当てアル兄。ヘタな日本人よりも、よっぽどのジャパニーズ。ウムウムと頷く
「世界に広がるクールジャパンじゃない。めぐ、作っといた桜餅と菱餅も出しとこう」
「は〜い、ぽ兄ちゃん。おひな様にお供えするのだよね。あ、皆にも作ってくれたよ〜」
「おれも手伝うす〜、グミサン。がくサンの桜餅と菱餅なら、間違いないっすね。超〜食いて〜」
立ち上がるめぐ姉に続く勇馬兄。お菓子への期待感、満々
「手間を掛ければ、旨くなる。愛情込めれば美味しくなる。歌も料理も一緒じゃない。勇馬、食った言うな。行くならついでに煮物盛り合わせとがんもどき、持って来てくれ」
「ウスっ、サーセン」
めぐ姉を追って走ってゆく。次々と指令を出す彼、おひな様を飾りながら
「リリ、カル。メイコ様に白酒(しろざけ)をお持ちしろ。あと、アテの大葉みそ、辛きゅうり、豆腐の燻製もいこうじゃない」
「あいよっ、甘酒もだすよっ。おにぃの手製っ。一緒にのも〜ぜ、センセ」
「あら神威君、ありがとう。白酒も造ってくれたの〜」
「いつもすみません、神威さん」
呑む気満々のめー姉。でも、彼と共に、おひな様を飾り付ける。キヨテル先生は、空いた箱などを片付けてくれる
「はは、メイコ『酒』造ったらダメじゃない。白酒は越後のお取り寄せ〜。甘酒は作ったけどさ」
「禁止されていますからね、お酒造りは」
苦笑いの紫様と先生。めー姉『冗談よ』と返す。お酒に詳しいだけのことはある
「ミキミキには、おまんじゅう。ピコピコのに、お赤飯」
「え、おまんじゅうまで作ってくれたの、神威のアニキ」
リリ姉に続く、カル姉の『作った』に驚くMikiちゃん。確かに、おまんじゅうまで手製というのは珍しいかもしれない。わたし達には、普通のことなんだけどね、紫様のお手製和菓子
「お赤飯炊いてくれたんですか、かむさん」
驚くよりは、喜びの表情のピコ君
「ああMiki、ま、俺が作った田舎まんじゅうだけどな。好きだって言ってたじゃない。お前達の歓迎会なんだから、おもてなし〜。中身は粒餡、抹茶風味〜。ピコも熱烈歓迎〜。お多福豆で贅沢仕様にしてあるぞ。好物なんだろ、二人も行ってもっといで〜」
「わ〜い、ありがとうございます〜」
「ありがとで〜す。神威のアニキすっご〜い」
アホ毛が、わんちゃんの尻尾みたいに振れるMikiちゃん。二度跳ねて、嬉しそうに取りに向かうピコくん。仕草が完全に女の子。いや『男の娘』と言った方が良いんだろうか。アホ毛も元気に跳ねる
「誰か、カレイのあんかけ、温め直して取ってきて〜。おいなりさん、ちらし寿司も出しちゃおうじゃない」
「がっくん、わたしが取りに行く〜」
雛飾りに、だいたいのメドがつく。ご機嫌で向かうわたし。ひな祭りに併せて、新人二人の歓迎会を行なおうとは、めー姉の提案。料理は、カイ兄と紫様が心を込めて
「よし、オレも家(マンション)のモノ。とって来ようかな」
ひな人形の飾り付けから、離れようとするカイ兄。すると、今まで手伝っていた
「あ、おれやるよカイ兄」
「ワタシも手伝いますわ、レン君」
「ま〜か〜せ〜てっカイ兄」
弟、ルカ姉、ミク姉が立ち上がる。飾り付けは、兄や彼の指導がないと出来ないテイタラク
「それじゃ、お願いしようかな。レン、ルカ、ミク」
マンションへ、三人が談笑しつつ、イソイソ向かう
「デハ拙者、卓の用意をするでゴザル」
「私はグラス類を用意いたしましょう、神威さん」
「頼もうじゃない、アル、テル」
「じゃ、もう此処(神威家)に、準備しちゃおうか、殿」
アル兄、キヨテル先生も声が弾む。見るからに楽しげな兄。紫の彼もノリノリで
「はじめちゃ桜花(おうか)大宴会」
「「「「「「「「「「はじめちゃ謳歌(おうか)歓迎会」」」」」」」」」」
わたしと弟が13歳。卒業を迎えた、入学を控えた、春の一コマ。並べられた卓のうえ。並ぶご馳走。大きなカレイのあんかけ。甘鯛、イサキ、ブリのお造り。サワラは炙り刺し。ヒラメのマリネの海鮮軍団。エビチリ、エビマヨ、春巻き、餃子、かに玉の中華縛り。野菜のごま和え、大葉みそ、豆腐の燻製のおつまみづくし。里芋、大根、にんじん、厚揚げの煮物。がんもどき、じゃがいもの甘辛煮の煮物ゾーン。フランクフルト、アメリカンドッグの、腸詰めエリア。恵方巻き、おいなりさん、お赤飯にちらし寿司と〆まで完璧なうえに
「デザート。オレ作の焼きプリンとパンプキンパイ。チョコレートのミルフィーユに」
「俺がこさえた、田舎まんじゅう、菱餅、桜餅。好きなようにやろうじゃない」
「「「「「「「「「「あざ〜す兄さんズ」」」」」」」」」」
加わった面々にとって、初めての歓迎会。手料理に、全員の気持ちが跳ね上がる
「わ〜懐かし〜。この桜餅〜。あんまりこっちじゃ見かけないんだよね〜」
「え、それ桜餅なの、IA。こっちじゃね、桜餅って」
薄い桜色のお餅、クレープのような形状のお菓子を指すIA姉。粒々お餅の丸形を指すリリ姉
「ああ関西、関東で違うんですよ、リリィさん。江戸期、ある店の店主が、桜の葉を塩漬けにして作った餅菓子。それを『桜餅』と名付け、あるお寺の門前にて売り始めた。それが、江戸で出来た桜餅の原点とされています」
銘々皿を配りながら、キヨテル先生が教えてくれる
「さすが博識のテルじゃない。そ、関東関西で違う。ま、今、全国的には関西桜餅が主流みたいだけどな。どっちも美味いじゃない。IA、昔、関東圏に住んでたって、言ってたから。関東は白餡、関西はこしあんにしてみた」
「そうなんだ〜、わたしも初めて知った〜、がっくん」
「いつもは、関西版ばっかり作ってたじゃない」
初めて知る面々。あの日、わたしも初めて知った
「そ〜、神威のに〜さん。8歳の時まで首都に住んでたの。お仕事の都合でね、パパの故郷、NYにお引っ越し〜。わざわざありがとぅ〜」
桜餅談義を皮切りに、歓迎会の幕が上がる。めー姉が声を出す
- Re: はじまりのあの日 ( No.21 )
- 日時: 2017/09/25 08:58
- 名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)
めー姉が声を出す
「じゃあ、始めちゃいましょ〜か。ピコくん、Mikiちゃん、お疲れ様。改めて、いらっしゃい。これからも、一緒に歌って生きましょう。では、ひとことずつ〜」
片手で促す。仲良く、ぺたんこ座りで並ぶピコ君、Mikiちゃん
「僕のこと受け入れてくれて、ありがとうございます。尊敬するみなさん、よろしくお願いします」
三つ指をついて、丁寧にお辞儀のピコ君
「うち、コンセプトが無茶振りで。どうしようかと思ったけど、みんなのおかげ。最近、ホントたのし〜で〜す」
楽しそうなMikiちゃん。喜んでいる二人の頭の上。アホ毛が、ロンドを踊る
「乾杯の発声は〜先生〜」
「ありがとうございます、メイコさん。それでは、皆々様。私も、このメンバー歌って生けますこと。大変にありがたく感じております。素晴らしい出会いと、皆様とのご縁を祝しまして、杯を献じましょう。では皆さん、献杯とご発声を」
「「「「「「「「「「せ〜のっ、けんぱ〜い」」」」」」」」」」
宴が進む、その途上。わたしと片割れは、数日前から企画していた。実行に移すため、こっそりと抜け出す。マンションに駆け入って。着替えを済ませて、再び神威の家へ
「みんな〜見て見て〜」
「別に、わざわざいいんじゃねって思ったんだけど」
「「「「「「「「「「おおおおお〜」」」」」」」」」」
「そっか、二人もそんな歳なのね〜」
めー姉が、微笑みながら涙を浮かべ
「可憐です、堂に入ってます、お二人とも。御入学、おめでとうございます」
キヨテル先生が褒めてくれる
「褒めてなんかあげねぇ。カッコウいいぜ、二人とも」
テト姉が、軽口を言い
「ユニフォームはセーラー服だったけど、リンはようやく本物だね。レン、ブレザー似合ってるよ。おめでとう、二人とも」
カイ兄、わたし達の肩を抱き
「感慨深すぎるじゃない。俺、二人に出会った時は、ほんと、豆粒みたいに小さいの。ひよこみたいな、可愛い双子。大きくなったな」
優しい彼が、わたし達をなで回す。白に近いグレー。濃い茶の襟とプリーツスカート。ワンポイント入りの黒のソックス。セーラー服のわたし。レンは、白に近いグレー。黒襟のブレザーと黒いスラックス。春から通う、学校の。制服を自慢したくって。彼に、見てほしくって。このひな祭りイベントでのお披露目を勝手に考えた
「そ〜うだ。ちょっと待ってて」
「あ、私も少し外しますね」
と、カイ兄がマンションへ。キヨテル先生はシェアハウスへ帰って数分
「ああ、めぐ、悪い。取ってきてほしいじゃない」
「は〜い、ぽ兄ちゃ〜ん」
「ウチも行くよ、おねぇ」
彼が、めぐ姉に、命じて三分。銘々手に、包みを持って戻ってきた
「二人とも。春からは、必要になると思うからね。電波受信だから、時間はズレないよ」
「カイトとルカ、一緒に買いに行ったの。気に入ってくれると良いんだけどな。対ショック、耐水性防御完璧。ほぼ、永久時計よ」
「お姉様たちと一緒に選びましたの。使っていただければ、うれしいですわ」
ソーラー充電。スポーツタイプのスタイリッシュな腕時計。デザインはお揃いながら、赤と白(色違い)めー姉達が贈ってくれる
「ぽ兄ちゃんの提案で、選んでみたんだ」
「リンレンに。似合うヤツ〜っておにぃと」
「気に入ればうれしい。りんりん、れんれん」
めぐ姉達が取り出したる、通学靴(ローファー)ツヤ良く光る白皮を基調に、黒のワンポイント。靴底も黒。銀のコイン飾りが付ている。滅多にない、凝ったデザイン。お揃いのローファー
「春から、必要なんじゃな〜い。デザイン、イヤなら、履かなくてイイから」
「僭越(せんえつ)ながら、私もこちらを」
わたしにくれる、ワインレッドが基調。黒の装飾がおしゃれ。リュックにもなる、カジュアルな通学鞄。レンに送ってくれたものは、色が反転。黒が基調
「くれてやるぜ」
テト姉から放られたのは、おしゃれな定期入れ。薄桃色と薄水色。入れられている定期。バス通学のわたし達に、十二ヶ月間、つまり一年使える物
「わたしはこれ〜」
ミク姉、隠し持ってたのは電子辞書。わたしにはパールホワイト、レンにはガンメタリック。みんなからの素晴らしい贈り物。わたしもレンも、喜んで、お礼を言って。贈って貰った靴を履く。時計を付けて、みんなに見せびらかす。畳が傷まないかなんて、考えもせずに。その、通学スタイル整ったわたし達を観て
「かっこわいい〜よ〜(かっこかわいい)二人とも〜」
IA姉が身悶えし
「レン君、素敵。惚れなおしますわぁ。リンちゃんも可愛くて、しょうがありません」
「レン君、リンちゃんも素敵〜」
ルカ姉、ミク姉が抱きしめてくる。頭の位置が、ちょうど胸。レンが挟まれ照れまくって、真っ赤っか。この辺りからか、弟が、二人の姉に振り回されるようになったのは
「ナルホド。コレガ、日本人(ジャパン)の思いやりの心(スピリッツ)今の御二人の姿同様、美しき文化でゴザル」
「わ〜、本当に仲良し家族なんですね、皆さん。メンバーの結びつきを見ました〜」
アル兄褒めてくれる。ピコ君は感動した様子
「へっへ〜。カッコは一人前じゃん。ヒヨコさま〜」
軽口勇馬兄。ちょっと、ムクレルわたし。隣の弟も不満げ。それをみた、優しい彼すかさず
「まずは貌(かたち)から。勇馬、お前未だ未だ半人前(ひよっこ)だ。リンレンのが、歌い手としても人間としても一人前」
「なんでッスか〜。がくサンだって、ひよこみたいなって」
「いえ、神威さんの言葉に悪意は感じませんわ」
「うちも思う〜。みたいにかわいいって神威のアニキは言ってた」
「なんすか〜みなさんまで〜」
やや強い調子のルカ姉、ちょっと目が恐くなる。Mikiちゃんは意見に同意。ふてくされそうな勇馬兄
「勇馬、分かってないなら、なおさらだ。先輩よ、リンとレン。俺達と共に。俺よりも先に。どんだけ茨目(いばらめ)踏んできたか。お前、ちっとは考えたのか。考えないなら、今考えてみろ」
彼の声に怒気が交じる。獰猛に笑うから、余計に恐い
「ッ。〜サ〜センがくサン」
「リンレン様にだ」
「ごめんなさい。リン、レン」
たしなめられる、勇馬兄。わたしとレンに、紫の彼に。九十度、腰をおって、頭を下げる。顔が赤い。若干涙目
「はいはい、そこまで、そこまで。も〜、ぽ兄ちゃん。二人のことになるとムキになるんだから〜」
「ふん、いいじゃな〜い。マジなことなんだから。さあ勇馬、食べろ。食べて歌って鍛えとけ。お前も一緒に目指さな〜い、超一流の歌い手を〜」
指を掲げる彼、人差し指一本。言って、今度は勇馬兄を思いやる。優しい口調と言葉
「っがくサン、アザッス。一生ついてきまスッ。グミさんもあざっす。かばってくれて」
目が潤む勇馬兄
「お前ら、乾杯し直しだ。杯を掲げろっ」
「がくさんに大賛成〜」
「飲み直しよ〜」
今度は朗らかに告げる彼。ミク姉、めー姉も賛同する。たちまち、互いに飲み物を注ぎあうメンバー。杯が満たされる。発声は紫の彼
「リンレンの、健やかな成長と俺達の未来に〜」
「「「「「「「「「「カンパイだあああああ」」」」」」」」」」
「がっくん」
「がく兄」
ぐい飲みを呷る彼、弟と寄って行く。さすがにもう、制服は着替えて。何事かと、目を丸くする
「「ありがとう」」
ぐい飲みを置く。座るわたし達に向き直ってくれる
「わたし、嬉しかった。勇馬兄のことも、靴(ローファー)も」
「おれも嬉しかった。あんな風に言ってくれて」
ふっと一息、目が優しくなる紫の彼
「気にしないでいいじゃない、本当のこと。俺の大事な黄色い双子。尊敬している先輩様。そして、大きくなったな可愛い双子」
乾杯の喧噪の後、わたしと片割れはお礼を言った。本当に嬉しかったから。彼はそんな風に返してくれた。頭を撫でてくれた
「がっくん、膝いい」
「いいじゃない、リン。いつまで乗せられるかな」
せがむわたし。応じた彼。座る。収まる。微笑むメンバー。わたしの指定席であることは、もはや全員知っていた
「幾つになっても、それだけは変わらないわねぇ、リ〜ン」
「ふふふ、殿が来た日からだったもんね、め〜ちゃん」
「お〜そんなに歴史がありますか。神威のに〜さん、リンちゃんの指定席。もえもえ〜」
「そうな。歴史、感じるじゃな〜い」
思えばそうだった。始まりの日からそうなった。わたしの指定席。彼の膝の上でふと思う
「そういえばがっくん。前にも靴、くれたよね」
見上げながら、聞いてみる
「ああ。少しでも良い靴、履いてほしくてさ。良い靴を履くと、良い人生へ導いてくれるって意味があるじゃない」
「そうだったんだ〜」
「おれもハジメテ聞いた、がく兄」
そこで困ったように一度、眉が下がる彼
「ま『私のもとから去れ』なんて意味もあるらしいけどな。でも、良いように取ればイイじゃない。そんなの気にし始めたら、何もプレゼントできない」
「ワタシも聞いたことがありますわ、神威さん。でも『自由になる』という意味合いもありますの。いつまでも、自由に歩けるようにと考えれば素敵ですわ」
膝に乗るわたし、彼の隣に座るレン。語りかけてくれる、彼。ルカ姉が、わたし達の元に寄ってくる
「お、ルカ、良いこと言ってくれるじゃない。怪我なんかしないで、元気に歩けよ、かわいい双子。さて、リン、レンも何食べたい」
一度ルカ姉と、飲み物を合わせる
「おいなりさん」
「あ、おれは自分で取るよ」
図々しい。取ってくれる彼、辞退する弟
「はい、あ〜ん」
「あ〜ん」
食べさせてもらう。もぐもぐする
「おいし〜」
飲み込んで、素直に感想
「よかった。みんなも食べろ。賑やかにイこうじゃない」
「「「「「「「「「「もう食べてま〜す。色々おいし〜です〜」」」」」」」」」」
ルカ姉、ミク姉がレンを振り回すようになったあの辺りからか。同様に、みんなの視線が生暖かくなり始めた。わたしと彼を観る眼差しが『色々おいしい』も、どんな意味合いだったやら
「おまんじゅうってつくれるんだね、神威のアニキ。すっごくおいしいよ。今まで食べた中でサイキョ〜」
「それは言い過ぎじゃない、Miki。お、ヒラメのマリネ、旨いよカイト。酒によく合う」
大きめのおまんじゅうを頬張るMikiちゃん。お酒を含む彼
「っカレイとポン酒。コレもJustice(ジャスティス)でゴザロウ」
「桜餅もち、白餡ぎっしり。おいし、神威のに〜さん。膝上リンちゃん、観ててキュンキュン」
お酒を含み、堪らんっとの顔、アル兄。リスのような動作で、江戸版桜餅をついばむIA姉
「カイ兄、チキンナゲットすっげ〜うま〜い」
「ありがと、レン。殿、煮物もおいしいよ」
「みなさん、リンレン。さっきはホントサーセンでした。おわびに、踊るス。観てッください」
「「「「「「「「「「おお、イケッ勇馬っ」」」」」」」」」」
二人のお料理は、いつものように美味しくて。みんなで、歌を、披露して。リクエスト合戦も行って。勇馬兄が、ストリートダンスを乱舞して。新しいメンバーとの縁(えにし)が深まった初春(しょしゅん)の日。きっと今日も楽しくなる。今のわたしは、また、調理に集中する—
- Re: はじまりのあの日 ( No.22 )
- 日時: 2017/09/26 06:29
- 名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)
CMで流れている歌。よく知っている可愛い声。数年前になるかな、天使様が歌ったのは。わたしが13歳の夏休み迎える頃。つまりは、九月後半のお話。あの夏休みを迎えた日、歌い手は総勢21人にまで増えていた。PROJECTは順調。NY公演以来、世界的評価も上昇中。最後に加わった、四人の歌い手。天使様と例えられる四人の、それはそれは、可愛らしい歌い手。プロデューサー達が、次世代を見据えてオーディションを通過させた。スカウトしてきた。一ヶ月の間に加わった、四人の子供達。天使様の歌声に乗って、記憶の中へと降りてゆく—
「はじめまして、にいさま。はじめまして、ねえさま。はじめましてみなさま。かむいのすえっこ、りゅうとです。どうぞよろしくおねがいいたします」
丁寧に頭を下げるリュウト。君その前にしゃがみ込む、紫様。神威の姉も座り込んで
「はじめまして、お前のアニキだ。可愛いじゃない、リュウト。これから一緒に歌おうな。しかしまあ、どうなってんだ」
「はじめまして〜、お姉ちゃんのめぐだよっ。可愛いりゅ〜くん」
「「「「「「「「「「はじめまして〜よろしくね〜」」」」」」」」」」
神威家の末っ子『芽吹きの音色(めぶきのねいろ)』リュウト君。かわいらしい頑張り屋。お歌も、とっても上手だと、娯楽施設や敬老会に引っ張りだこ。弟が生まれたと、聞かされただけだった彼。その年の差、なんと26歳。4歳のリュウト君、30歳の彼。驚愕である。お母さんが一緒だから、めぐ姉と髪の色が一緒。たった一度、その母上様に連れてきて貰った、わたし達の公演。歌い踊る紫様が兄だと知る。それ以来、このPROJECTに参加するため、歌も踊りも猛練習。その成果が実を結び、プロデューサーが開くオーディション番組。文句なし、一発合格を与えた
「おうた、がんばります。おねがいします」
「「「「「「「「「「か〜わいい声、よろしく〜」」」」」」」」」」
8歳、小学生のユキちゃん『愛される幼声(あいされるおさなごえ)』リュウト君と並ぶと、お人形さんのようにかわいらしい。囁くような歌声が、本当に愛らしい。歌唱大会で女性デューサーの耳にとまったと、直々にスカウトしてきた。よく、キヨテル先生に、宿題や勉強を見てもらっている
「えっと、こんなかっこうだけど、よろしくです」
「「「「「「「「「「だ〜いじょぶ、かわいいよ〜」」」」」」」」」」
『声紡ぐ小猫(こえつむぐこねこ)』11歳のいろはちゃん。世界的に有名な、子猫のキャラクターとコラボした歌い手。そんなコラボレート企画が持ちかけられるほど、名が浸透したPROJECT。キャラでなく、「歌い手」として認められるべく奮闘中。メンバーの中では『演歌』が一番上手い。その声を見込んで企画を受けたのだ
「ニ、ニホゴ、マダマダケド、オネガイデフ」
「「「「「「「「「「だがそれがイイッ。よろしくっ」」」」」」」」」」
オリバーくんは海賊少年という設定。それなのに、かわいらしさとカタコトの日本語がいいっ。といわれる『海が紡ぐ歌(シーユーアーゲイン)』12歳、イギリスの少年。たまにルカ姉が通訳をする。一つしか歳が違わないのに、小さくてかわいい。お父さんの都合で、日本にやって来た、元世界的少年合唱団出身。歌唱力は折り紙付き。その大人数で迎える、初めての夏休み
「明日の朝は、全員集合。晴れるみたいだから、お外で朝ご飯食べましょう」
「良いじゃないメイコ。朝からピクニック気分で食べよう」
「お休みの朝の、特別感だね、殿」
前日、めー姉の提案。本日、みんなで庭先へ出て、朝食をとる。外用のテーブルと椅子も、最近購入した。1テーブル四人掛け。朝、爽やかな日のもとで食べた朝食。もちろん、アニキ様二人の作ってくれた、特製モーニング。それ自体、美味しくて楽しかったけど、本当に楽しかったのは、その後の出来事
「洗い物は、女性陣でいたしますわ、カイト兄様」
「ありがとうね、ルカ。お嬢様方も〜」
「お言葉に甘えようじゃない。よし、みんなが皿洗ってくれるんだ。俺達も、気合い入れようじゃないカイト。今日やろう、天使様達の歓迎会。計画練っちゃおう」
キヨテル先生が入れてくれた、コーヒーを飲み、くつろぐ彼が提案する
「そうだね殿。この特別感、続かせないともったいないもん。みんなどうかなぁ」
「良いですね神威さん、カイトさん。是非、行ないましょう」
「やろ〜よカイ兄。せっかくのお休みだもんね、がくさ〜ん」
忙しさが増して、行えなかった、四人の歓迎会。夏休みに併せて行なおう。提案したのは、紫の彼。自分の弟をもてなしたいから。そんな風に言った彼。でも、彼にとって『筆頭の弟』はわたしの片割れ。わたしの『弟』であるレンだ。後に紫様自身が言っていた。声が弾むカイ兄。シェアハウス家長、キヨテル先生もご機嫌。ミク姉も目の中に銀河系がサンザメク
「じゃあ、ご馳走用意しないとね、殿。みんな何か、食べたいものある〜」
「好きなもの作ってあげようじゃない。特に天使様のリクエスト優先で〜」
「「「「「「「「「「♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」」」」」」」」」」
二人の言葉に、期待感が跳ね上がる。入り乱れるリクエストの声に、やや呆れながら紫の彼
「わかったワカッタ。今、九時か。よし、天使様とテルリリ。今から買い出し行ってくれ。商店街じゃなくて、大型店の方に。なんでもいいぞ、好きなものを買ってといで。それ見て、みんなで決めようじゃな〜い」
「あ、ごめん、四号車ガソリン減ってるんだ。給油も兼ねてお願いできるかな、テルさん」
ピコ君とMikiちゃんが来た事で、既に全員移動の時車は足りなくなっていたのだけれど。その時までは、その全員移動がなかった。先月、仕事移動の時がやってきて、急遽購入した車。ガタがきていたため、四台総てを新車に買い換えた。その車を使用して、買い出しとお出かけの声に
「「「「は〜い、やった〜」」」」
天使様が、飛び跳ねて喜ぶ。その姿に、思わず笑みがこぼれるメンバー
「承りました、カイトさん。ガソリンスタンドも楽しいですよ、皆さん」
「ラジャった、おにぃ。初めての買い物だ〜。色々見て来ようぜ、みんなっ」
天使様は、キヨテル先生とリリ姉が、よく面倒を見てあげている。自然と、二人に懐く、天使様。二人の周りで微笑み合う
「デハ、拙者も出番でゴザルナ。別働隊、出撃いたそう。メイコ殿、酒を買い出さぬカ」
「あら、話せるじゃないのアル。もちろん行くわ〜。洗い物、急いで終わらせなきゃ〜」
嬉しそうなアル兄とめー姉が立ち上がる。アル兄も食器を片付けるため、マンションへ向かう
「あ、ならおれも行くよめー姉。ジュースなら、おれ行かないとね。酒ばっかになっちゃうもん」
苦笑いで立ち上がる片割れ。こちらも、食器をのせた、トレイを手にしている
「ワタシも同行いたしますわ。お魚ならワタシの出番です」
「じゃあ、お野菜のかかりは、わ・た・し〜」
すると続く、ルカ姉、ミク姉の声。こだわり素材を口にする
「お願いしようじゃない。お魚姫、ルカ様の『選魚眼』は並じゃあないから。期待して待とうじゃない。お野菜姫、ミク様の品も楽しみだ。よし、俺は食材の在庫、確認しておくか」
「じゃあ、今日の調理拠点は神威家で良いかな、殿。洗い物と調理場分けってながれで」
紫の彼、腕を回して立ち上がる。カイ兄も共に立ち上がって神威家へ。二、三度、肩を上下に振る。マンションと神威家、どちらにも『各々専用エプロン』なるものが存在している。仲良しメンバーの微笑ましい点である
「がっくん、カイ兄、わたしも手伝う。お料理しよ〜」
当たり前と言わんばかりに、続くわたし。すると
「ゎたしも、リンちゃん達とお手伝いするよ、神威のに〜さん」
「じゃあ、わたしも〜。IAちゃん、リンちゃんとお手伝いしようかな、ぽ兄ちゃん」
「自分もっす、グミサン。がくサンとカイサン、補助るっす」
お手伝いを申し出てくれる三人。たかが買い出し、たかが手伝い。なのに心はお祭り状態。メンバー、一同、浮き足立つ。浮かれない方がおかしい。みんなで過ごせる休日は貴重だ。まあ、このメンバーなら、大概のことは全て楽しい
「よしよし、お利口さん一同。ああ、気分良いのは分かるけど、気を付けろよ、お前達。怪我だのしたら、台無しじゃない」
「道に飛び出したらダメだよ。走ったりしないでね。人や車に気を付けようね〜」
「「「「「「「「「「わかりました〜おにいちゃ〜ん」」」」」」」」」」
Mikiちゃんだったかな『我が家の頼れる超アニキ様』って命名。その二人が、浮つくメンバーを気遣ってくれる。本当に名前の通りのアニキ様
「あ、重ね〜さん、ごめんだけど車だしてもらって良い。洗い物やっつけたらだけど」
「お手伝いします〜。ぼくからもお願いです、テトさん。お菓子なんかを選びたいんです〜」
「ふん。しょうがねぇな。じゃあ、ボクも肉選んでやる。別に楽しくなんかないんだぜ」
そのMikiちゃんとピコ君にお願いされ、滅茶苦茶に楽しそうなテト姉。いつもの軽口
「かるも付いていきたい、お菓子選ぶ。いいかな、あにさま、テトさま」
いいじゃないと、紫のあにさま承認。テト姉は肯定の証として、カル姉の頭をぽんぽんする。お揃いドレス、Mikiちゃんとピコ君、嬉しそうにはしゃぐ。頭のアホ毛も嬉しそう
「歓迎会は、このままの流れ。外のこの場でやろう。焼き物の煙、気にしなくて良いじゃない」
「良いねぇ殿。じゃあ、後でバーベキューセット、外用コンロも出そうか」
紫の彼、わたし、IA姉、カイ兄。連れだって、神威家の敷居をまたぐ。めぐ姉と勇馬兄は、キッチンボールを手に家庭菜園へ。野菜を取りに行ってくれる。勝手知ったる彼の家の台所。図々しく食材漁りを開始
「さて、と。麺類は揃ってるな、和洋中。これは茹でておけば間違いないじゃない。よし、リンにお願い。麺、茹でちゃって〜」
「は〜い。あ、玉子も茹でておこうか、がっくん。ゆで玉子作っておけば、外れないよね」
『いつも手伝ってくれるから』と、彼に貰った、桜色の腰巻きエプロン。身につけながら聞く
「お、リン、分かってるじゃない。味玉、味噌玉、どう考えてもリクが来るな。飲んべえ組のおつまみには必須だし。よ〜し、温玉もお願いしようじゃない。麺ズのトッピングに鉄板メニュ〜」
「なら、そのあと麺ズのスープ、パスタソースも作っちゃおうか、殿。グミちゃん達が野菜取ってきてくれるから煮物系も。多分、午前中はそれで終わりだね。リン、上手になったよねぇ料理」
二人の兄に褒められて、至極光栄。得意気になるわたし。二人、というか、大変申し訳ありません、カイ兄。紫様を手伝いしているうち、料理の腕は、驚くほど向上。メンバーからも褒められるほどになった。鍋に水を張り、調理開始。ゆで麺大会。カセットコンロも使って総動員。ただし、カセットコンロを並べてつかってはイケナイ。要注意事項。それも、紫の彼が教えてくれたこと。ゆで上がった玉子の殻を取る。そういえば、料理に興味を持ったあの頃。ルカ姉のお帰り会の準備の途上でも、作っていたな、ゆで玉子
「洗い物終わったから、買い物行ってくるわ、カイト」
「出撃してくるデゴザルよ。専門店街でゴザル」
「今日は、昼抜きで作って貰うぜ。ボクらもイッテ来るぞ、かむい」
台所に、顔を出すめー姉達。買い物に出かけていく。カイ兄、空いたマンションのキッチンへ。コンロを使うため。この日は、麺類のスープとパスタソース作りに
「ぽ兄ちゃん、お野菜取ってきた〜。トマト、茄子、にんじんと長ネギ。どれもすっごくおいしそうだよ」
「ミクと、がくサンの手入れの賜物っすね。枝豆、パプリカ、じゃがいも。ジャガイモとか、みんな食べごろっす〜」
めぐ姉と勇馬兄、野菜を手にやってくる。泥は、外の水道で、簡単に落としてくれていた
「い〜いカンジに取ってくるじゃない。こっちは、トウキビと満願寺唐辛子か。これもツマミとおかずだな。よし、リン、唐辛子の種を取って貰おうじゃない。ヒリヒリするから、手袋付けて」
「オッケ〜。あ、おそばとうどん、きしめん。茹で上がったから、水にさらしておくね〜」
「種取り手伝うよ、リンちゃ〜ん」
まな板を取り出し、唐辛子を切る。IA姉と共に、ヘタと種を取り分けていく。彼は、スパゲティの調理法の思案に入る
「ぽ兄ちゃん、わたし達は何すれば良いかな〜」
「手伝うす、がくサン。こ〜見えても自炊はしてたっす」
ストリート時代、やっていたという勇馬兄。我が家の兄達は、やたらと女子力が高い
「そうだな、和麺ズのトッピング。それ、作って貰おうじゃない。ネギと茗荷(みょうが)は必須だな。あとは、二人のセンスに任せようじゃない。ああ、茹で上がったスパゲティに、バター混ぜといて〜」
めぐ姉、にんじんアップリケのフリルエプロン。勇馬兄は、ジーンズ生地にハートマークの刺繍が付いたギャルソンエプロン。身につけて、昼食作りに。勇馬兄、スパゲティにバターを絡める
「そういえば、ぽ兄ちゃん。昔から必ず言うよね、スパゲティって。ど〜してなの」
「あ、言われてみるとそうかも。がっくん、何か理由あるの」
『カイトが作るのはパスタ。俺が作るのはスパゲティ』そんなことを言っていた気がする
「それはねぇ、俺のこだわり。なんてゆ〜か、パスタは完全に外国の食事ってカンジじゃない。でもさ、スパゲティって言うと、とたんこの国で出来た物ってカンジしな〜い」
「あ、なんか自分、それ分かるっす。極太のナポリタン、好きっす」
「でも〜、スパゲティもイタリア語だよね、神威のに〜さん」
わたしの意見は、勇馬兄に近かった。疑問を投げかけるIA姉
「ああ。麺の太さや、形でパスタ、スパゲティーニが変わるじゃない。日本で言う、マカロニだって、パスタの一種。でも、スパゲティって言ったら、この国では皆『麺』思い浮かべるじゃない」
確かに、スパゲティと聞いて。この国で麺以外というイメージはあるのだろうか
「だ・か・ら。俺はスパゲティ。作法も何も関係なしで食べようじゃない。よし、閃いた。おまえ達の好物、極太麺、魚肉ソーセージ入ったナポリタン。今日も作ってあげようじゃな〜い」
「「「「やった〜」」」」
一同、子供状態。みんな大好き、彼の作るナポリタン。スパゲティに、バターを混ぜておけば、麺同士がくっつかなくて済む。風味も増す。彼、極太のソーセージを切り始める。玉ねぎ、トマトを炒めて、ベーコンを加える。ミキサーに掛けたトマト。ホール缶とは、わけが違う。フライパンに投入、味を調えていく。やがて、漂い出す美味しいニオイ。紫様特製のナポリタンソース
「うわ〜ぽ兄ちゃ〜ん。このニオイだけで、おなかきゅ〜ってなっちゃうよ〜。美味しいに決まってる〜」
「自分もすっげぇ腹減ってきたっす。あ〜、このまま、このうどんに絡めて食っちゃいてぇ」
湯気を立てる、彼作のナポリタンソース。トウモロコシも下ゆでしておく。わたしの作る、トウキビタレと、味噌玉用の味噌。台所のテーブルが賑やかになっていくにつれ、漂う良い香り。お腹の虫が騒ぐのもいたしかたない。勇馬兄言うように『ナポリうどん』でもきっと美味しい
「精々、お腹すかせておこうじゃない、めぐ。勇〜馬、クッタ言うんじゃない。おっし、枝豆も茹でちゃおう」
「サーセン、がくサン」
何時ものやり取りをする、がく馬の二人。きっとコレハこれで楽しんでいるに違いない
「がっくん、枝豆、塩もみしておいたよ〜」
「お鍋に水も張りました〜神威のに〜さ〜ん」
「リン、とってもお利口さん。IAも気が利いるじゃない。そのまんま茹でちゃって〜」
たっぷりの塩でもんでおく。すると、細かい毛が落ちて食感が良い。そのまま茹でれば、泥も落ちる。ザルに上げる
「うどんもおそばも、ぶっかけ式にしようよ、勇馬君。お手軽、お好み、手間いらずだよ」
「いっすね、グミサン、さすがっす。なら自分、胡麻ダレも作っとくっす。がくサンど〜っすか」
めぐ姉、茗荷(みょうが)ネギを刻み始める。その後で大根おろしを開始。海苔を刻む、梅干しを叩くのは勇馬兄。結構、良いコンビ。紫様が二人を褒める。その彼とわたしは、バーベキュー用の野菜を切る。パプリカ、玉ねぎ、茄子など。パプリカは完熟、甘みが強いので、天使様も好物なのだ。ナポリタンの具にも最適
「わ、テーブルの上、賑やかになってきたね〜。きしめん用の味噌ベース。冷やし中華用、ラーメン用とスープ作ったよ、殿。ついでに、パスタサラダ、マカロニサラダも。パスタソースはミートソース一種。後は買い出し隊の食材次第かな」
カイ兄が、ふたたび神威家にやって来る頃、コンニャクのピリ辛炒め、オクラの梅肉おかか和えも完成。味噌漬け玉子、味玉子は味が染みるよう寝かせておく。激辛唐辛子は、ホイルに包んで素焼きの準備。定番のポテトサラダは二種類。甘めのものと、胡椒を効かせ、玉ねぎを混ぜた物
「カイトもお疲れ〜。ここらで一息付こうじゃない—」
「「「「「ただいま〜」」」」」
息をつかすまいと、タイミング良く帰ってくるメンバー
- Re: はじまりのあの日 ( No.23 )
- 日時: 2017/09/26 06:31
- 名前: 代打の代打 (ID: d/GWKRkW)
最初に帰って来たのは、テト姉達の一団。商店街への買い出し組。買い物袋を手にやってくる
「にゃっは〜肉買ってきたぜ〜。肉、肉、肉〜。ご馳走ったら、やっぱ、肉だぜ、肉」
肉食派、テト姉。かなりご機嫌だ。買い物袋を振り回す
「キヨテル先生や別働隊とも連絡取ってね、分担したんだ〜。うちらはお肉と〜」
「簡単なお総菜、スナックとか軽いお菓子担当で〜す」
「くっきー、びすけっと、おせんべいも、あにさま」
複数の買い物袋を下げた三人もホクホク顔。相当に良いものを手に入れたようだ
「おかえりみんな。じゃあ、肉なんかは、マンションの冷蔵庫に入れて置いて〜」
「皆帰ったら、荷解じゃない。よし、勇馬、めぐ。茶の間に惣菜系、置いといてお・く・れ〜」
宴が始まる高揚感。もう、準備段階で開宴状態。自然みんなが急ぎ足になる
「もどったわよ〜。結局別方向の商店街まで出ちゃったわ〜」
めー姉が、ご機嫌だ。ルカ姉も鼻歌交じりに。ミク姉スキップで。男二人は従者状態。やや疲れが混じった表情、やってくる
「イヤハヤ。皆様、コダワリガ凄まじいでゴザルヨ。中々に決まりモウサンカッタ」
キャスター付きの台車に、箱を四つ載せてくるアル兄
「ほんとだって。お店の人と交渉までし始めんだもん。めー姉のお酒だって選びすぎ〜」
同様の弟。まあ、これだけの大所帯だとこれも必然だ。選択をし続ける姉達を、苦笑いで見る二人。きっとそんなカンジだっただろう、光景が目に浮かぶ
「ふっふっふっ。まあ、好きな物ってのは、そうなっちゃうじゃない。よし、冷やす必要あるものは各家の冷蔵庫へ閉まって。カル、リリに連絡して。今、どこら辺にいるか、聞いて欲しいじゃない」
「了解、あにさま」
「デハBeer(ビール)は冷やしておくでゴザル。酒一式は、ハウスの冷蔵庫に閉まっておくユエ」
それぞれに動き出す
「お、うまそ〜じゃね〜か、かむい〜。一つも〜らいっ」
甘辛粉ふきいもをつまむテト姉。彼作、甘辛粉ふきいも。普通、味付けしないじゃがいもに粉を吹かせる。紫様が作るのは、甘塩っぱい味を付けた粉ふきいも。ほくほくの食感と、みんな大好き濃いめの甘辛味。炭水化物のくせに、ご飯のおかず、おつまみにもなる悪魔的誘惑の料理
「おい、勝手につまむんじゃない。手、洗っただろうな」
「ひ〜じゃね〜は。うん、美味い。じゃあ、ボクも準備手伝ってやる」
言って、うどんを大桶に入れる作業にかかるテト姉。勇馬兄が氷をくべる。めぐ姉、めんつゆの準備。割る水は又後。味の濃さはお好みで
「あにさまさま、てるてるせんせ達、あと十五分くらい。りりねえさまが言ってた〜」
十二時丁度。キヨテル先生達が帰ってくる。神威家の台所、もう『宴』状態で荷解大会。買い物袋を探ってゆく
「あっはは〜。こだわりすぎなんて言ってたけどさ。結局レンもこだわってるよね〜バナナに。甘々バナナに、モンキーバナナ。お、バナナチップスまで」
「な〜んだ、レンも同じじゃない、好物しばり。お『プランテン』まで出てきた。こっちは、パイナップル、桃とサクランボか。洋梨もあるじゃない。果物大好きっ子だなレ〜ン」
「い、い〜じゃん。好きなんだからっ。作ってよ、バナナで何か。あと、フルーツポンチッ」
彼、兄指摘。恥ずかしがる弟。一同さざ波のように笑い合う
「わかったよ、レン。じゃあ、生チョコとバナナのデザートサンドで良いかな。プランテンは揚げて甘辛くしてあげる」
「白玉粉もあったから、浮かべてあげようじゃない。フルーツポンチにお団子。別に粒餡作っといて、和風パフェもいいな」
聞くだけでも美味しそうな両者のメニュー。というか、日本ではそこまで簡単に手に入らない、バナナの仲間プランテン。どこで手に入れてきたのやら
「わ、それ美味しそ、お願い、カイ兄。がく兄も」
「それ、ウチも食べたい、カイト。さっすがおにぃ」
最近、姉妹姉弟に見えてしかたないと言われる、リリ姉とわたし達姉弟。その、レンとリリ姉が喜びの声。二人のエプロンも前掛け式の物、黒地に金糸のリリ姉。うす碧のレン
「お総菜は、エビチリ、エビマヨ。ウインナーの盛り合わせもあるね。あ、サラミとスモークチーズも出てきた」
「そのメニュ〜なら、冷えても美味です。二次会用でもイイカナ〜っと思って買いました〜」
商店街で営業している、お総菜屋さんの包み。開くカイ兄
「お、良い選び方してるじゃない、ピコ。ならコレ、もうマンションの冷蔵庫に入れちゃおう」
「オレ行くよ、がく兄」
片割れが、包みを両手にマンションへ
「ほれ、肉。美味く調理してくれ、このお肉様」
「お前、贅沢しすぎじゃない重音」
「わ〜、ザ・高級肉って感じです〜」
紫の彼、嘆息。ピコ君驚愕。塊で出てくる赤身のお肉。キログラム単位の越後和牛を勢いよく置く。テト姉好みの、脂身が少ない物
「あ〜コッチもお肉か。鳥さんの胸肉。じゃあ、これでパスタ作ろうかな。オレ今日は肉料理担当するよ、殿。サイコロのトンちゃんは何に使おうか」
別の包みを開け、肉尽くしに苦笑するカイ兄
「すまん、肉系ってか、洋モノは任せたカイト。ま、豚様は後で考えよう。使わなかったら、冷凍保存しても良いじゃない。牛様はStake(ステーク)だな。切っといて外で焼こう。それでいいか、重音」
満足気に肯定するテト姉。出てくる物と、メンバーの反応で調理プランが決まって行く
「待ってまって、今日の主役のリクエスト優先だよ〜みんな〜。さあ、天使様は何が食べたいのかな〜」
IA姉の一言に
「これの『なっとうはさみやき』がたべたいです、にいさま。おねぎものせてください」
両手に抱え、ポテポテと持ってくるリュウトくん。手にしているのは、越後名産の分厚い油揚げ。好みが渋い
「いい好みね〜リュウト君。おつまみにもピッタリだわ〜」
「俺も好きだしな、とびっきりおいしいの作っちゃおうじゃない」
微笑んでしゃがみ、リュウト君を撫でるめー姉。両者も、紫様も嬉しそうな顔
「ゆきは、おなすのおひたし。ぽ父さんがつくってくれる、あま〜いのがいいです」
「ああ、揚げ浸しだな。よしよし、良い趣味じゃない、ユキ。さっきから、俺の好物が多くて、コッチまで嬉しくなるな」
怖ず怖ずとユキちゃん。笑顔、腕組みで応える紫の彼。実は茄子が嫌いだったユキちゃん。紫の彼、揚げ浸しを作って『だまされたと思って、一口だけ。イヤなら残そうじゃない』口を付けたユキちゃん。嫌いだった茄子が、大好物に早変わり。カイ兄と紫様のおかげ。二人のご飯で、メンバー全員、嫌いな物が激減する『好み』の問題は別として
「コレマタ良いでゴザルナ。酒が進みそうでゴザルヨ。Wow洒落たエプロンでゴザルナ、姫」
エプロンを着け始める天使様。お揃いのドレスエプロン。エプロン姿は初めてだ
「あ、ホントだ〜エプロン。天使様に買ったんだね、テルさん」
「ええ、良い機会でしたので。皆さんお揃いです」
「おおお、みんな、かあいい」
アル兄に褒められ、照れくさそうなユキちゃん。カイ兄が気付いて、みんなも気付く。微笑む先生。カル姉は大はしゃぎ。ユキちゃんは、彼が料理する姿を見た時から『ぽ父さん』と呼んでいる。実のお父さんも料理上手だったからというのが、その理由
「あたしはね、キムチラーメンが食べたいです、カイトさん」
「よ〜し、作ってあげる。あんまり辛くないのを。やっぱり、麺は茹でておいて外れないね、殿」
いろはちゃんは両手を挙げながら。微笑むカイ兄。ちなみに、二人の手によって『無臭キムチ』が漬け込まれ、常備されている
「やっぱり麺は鉄板だよな、カイト。オリバー、何が食べた〜い」
最後、聞く紫様に
「ボクハ、macaroni au gratinガタベタイデフ」
応えたオリバー君。聞き取れなかったカイ兄が
「ん、えっと。マコル、え〜っと、殿分かる」
翻訳を頼むと
「マカロニグラタンだな、オリバー。よしよし、カイト、お願いしていいか。和と洋中別れるカンジで」
「まかせて、殿。オリバーくんが好きなジャガイモも、沢山入れてあげるよ〜」
通訳し、分担する彼。そこに被せて注文するのは
「神威さん、こちらもお願いしますわ」
「カイ兄、これで何か作ってよ〜」
お揃いエプロンを付けた、二人の姉。キャスターを押して来る。発泡スチロール。その中身は、隙間なく詰められたお魚。同様、ダンボールの箱の中はぎっしり野菜。探る兄二人は
「キャベツにキュウリ、お、かぼちゃ発見。瓜繋がりで、これは金糸瓜(糸かぼちゃ)か。水菜もあるね。家庭菜園のトマトもあるし、野菜サラダは確定かな。サニーレタスとヤングコーンは、肉のお供だね。この流れならシチューもいいかも。あの牛肉、ちょっと使ってビーフシチュー作ろうか、殿」
メンバーに聞いてくる。カイ兄、とても楽しそう。ちょうど戻って来たレン、みんなからも、歓喜の声が上がる。テト姉は、使いすぎるなよと釘をさす、が
「独占禁止法って知ってるか重音、お前だけの肉ってわけじゃあないんだぞ。いいな、カイト、サシ(脂身)が少ない肉だ、使えるじゃない。糸瓜(糸かぼちゃ)は、俺がツナ和え作ろう。故郷の定番野菜だ。魚は、お、鱧と穴子。これは、湯引き、蒲焼き、白焼きだな。タイは、松皮造りにしようじゃない。どれも、つまみ、おかずに最適〜」
テト姉、釘を差し返される。スチロールの中、氷をどけ、魚を取り出す紫の彼。美味しそうな調理法に、歓声がさらに大きくなる
「じゃあ、お米磨いでおくね、がっくん。定番のカレーも作ろ〜よ、カイ兄。さっきのサイコロお肉使って甘いのと辛いの両方。じゃがいも、にんじん、玉ねぎも。まだ、たくさん残ってるじゃな〜い」
彼の隣で、閃くわたし。額から閃光が出たかもしれない。土鍋を取り出しながら、彼の口癖を真似てみる。爆笑、彼&メンバー
「ふははは、良いアイディアじゃな〜い、リン。お、イカ出てきた。ミクが買ってきた里芋もあったな。これは定番の煮物でいくか。イカと里芋の煮付け。よし、俺は和物と野菜料理担当だな」
「〜〜っふ。はぁ〜。カレー、いいねぇリン。じゃあ、食材分けて、かかろうか、殿。オレ、マンションで作業するよ。洋と中華はオレが引き受けた。誰か手伝って〜」
例のフリルエプロンをつける兄。腰巻きエプロン、彼。なんだか、反則的ツーショット
「あ、じゃ〜ご飯、多めに炊いて貰ってイイ、リンちゃん。神威のアニキ〜、お刺身分けて〜」
Mikiちゃん、ピコ君もお揃いのエプロンを着けながら
「あら、カワイイ。でも、なんだか『ご主人様』と呼んでほしくなる格好ね、二人とも。ご飯、沢山炊いてどうするのMiki、あ、お刺身で海鮮丼とか」
めー姉、微笑むそして聞く。返ってきたのは嬉しいサプライズ
「お寿司握るの、メ〜コ女王様。うち、お寿司屋さんでバイトしてたんだ。うちが握らないと回らないようなちっさなお店だったけどね。大将の人柄と腕で、人気のお店だったんだ。歓迎会って言えばお寿司でしょっ。まあ、うちが握るのは、不格好なお寿司だけどさ〜」
「ええ〜、すごいです〜、Mikiちゃん。ぼくお寿司大好き〜」
ピコ君、瞳が星空のように。メンバーも感嘆の声をあげる
「お願いしようじゃない、Miki。寿司握れるってすごいな。よ〜し、別れて動くぞ〜、手伝ってくれ、お・ま・え・達〜」
「「「「「「「「「「お・ま・え・達〜」」」」」」」」」」
拳をかかげるメンバー