二次創作小説(紙ほか)
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- 泉君のカノジョ
- 日時: 2017/10/21 14:11
- 名前: 奈狐 (ID: w4lZuq26)
初投稿です!奈狐と言います。ご存知でしょうか「おおきく振りかぶって」。野球が大好きで、この漫画がお気に入りです。推しキャラは泉孝介なのですが、彼に可愛いカノジョがいたらどうなるんだろうと思い、二次創作ということで書くことにしました。拙い文章ですが、もし宜しければ見ていって下さい。
因みに、これは西浦高校が一年の夏の県予選で負けた後のお話です。夏休み中なので、毎日練習が有ります。
物語は泉視点で展開するので、言葉が所々悪いです。すみません。
紹介だけになってしまいましたが、近いうちに本編をアップしたいと思います。宜しくお願いします。
- Re: 泉君のカノジョ ( No.27 )
- 日時: 2018/09/04 17:05
- 名前: 奈狐 (ID: SypwfE3m)
「はい、西浦高校到着だよ〜!」
モモカンの無駄に元気な声がバス内に響く。なんであの人あんなに元気なんだよ?!やっと合宿から帰ってこれた。地獄だった。地獄。柚梨なんて疲れはてて寝てたぞ。さっきまで。
「んん……。着いたの…?」
モモカンの声で起きた柚梨が俺のTシャツの袖を引っ張る。
「おお、着いたぞ。さ、もう遅いし帰ろうぜ。」
時間は午後11時。嘘だろ、高校生がこんな時間にチャリこいでたら、完全に補導される。
「ごめんねみんなぁ。思ったより道が混んでて遅くなっちゃった。時間ヤバイし、速く帰ろう!ミーティングは明後日にしようね!疲れたと思うから、明日はおやすみ!きちんと休息を取ること!いいね!!親御さんには連絡を入れておいたから、素早く帰路について!さようなら!!」
威勢のいいモモカンの掛け声(?)で、皆ぞろぞろと帰っていく。勿論チャリで。俺も柚梨を連れて駐輪場に向かう。
「お疲れ、柚梨。大変だったろ?ありがとな。」
「ううん、私が来たくて来ただけ……部活に行きたくなかったし。」
「そうか。」
俺は自分が充実した部活動をしているせいか、急に申し訳ない気持ちになった。柚梨をチャリの後ろに乗せてこぎだしてから、俺は柚梨に言った。
「無理して部活行かなくていいんじゃねぇの?顧問に話つけてこいよ。」
柚梨は一瞬躊躇ったあと、
「私、転部しようと思ってるの。」
と言った。柚梨が話したがっているのがわかったから、俺は相槌を打って促した。
「うん。それで?」
「えっとね、美術部に行こうと思うの。美術の成績はいつも完璧だし、絵を描くのは好きだし。それに、活動日が週一回しかなくて、たくさん孝介の方に来られるから。いいでしょ?だから、転部する。」
「………。」
柚梨の絵が上手いのは知っている。漫画のような綺麗な絵を描く。だけど、こいつは野球が好きなのに、それでいいのだろうか。
「野球部は?」
「結城君がね。心配ではあるんだけど。私がいなくなったせいで部員の標的が結城君に移りそうな気がして。って言うか、絶対そうなる。」
「そっか。まぁ、それはその子がどうするか決めればいいんだし、その子にはその子の考えがあるんじゃない?同じように、柚梨には柚梨の考えがあるんだったら、それに素直に従ってもいいんじゃねぇの?」
いきなり、柚梨が後ろからぎゅっと抱きしめてきた。
「おわっ!!」
色んな意味でアブナイからやめてほしい。が、少し後ろに目をやると、柚梨が嬉しそうに笑っていた。
「ありがとう、孝介。」
「………………おう。」
小っ恥ずかしくて思わず目をそらす。ちょっといい気分だ。
「そこの君たち〜、こんな時間に何してるのカナ〜?」
いきなり、制服のおじさんに呼び止められた。
「あっ………。」
警察だ。巡査だ。
「あと、二人乗りは駄目だよ〜?」
「……すみません。」
訂正。割と嫌な気分だ。
- Re: 泉君のカノジョ ( No.28 )
- 日時: 2018/07/31 12:11
- 名前: 奈狐 (ID: QxkFlg5H)
「……………夏だな。」
合宿後の8月のある日、花井が言った。
「ああ、ホントだよ。」
水谷も、汗をダラダラ流しながら同意している。
「まぁ、夏だからな。それ以外に何かあんのか。日本には四季があるんだよ。温帯なんだから。」
俺がすかさずツッコミを入れる。
「だーかーらー、あっちぃなって言いてぇんだよ!!」
花井が俺に向かって怒鳴ってくる。
「なな、何だよ。逆ギレすんなよ花井〜………。」
「あぁ〜、すまん!!昨日からオレ、情緒不安定なんだ……。」
言うなり、花井はガックリと首を落とした。とことことやって来た西広が、ニッコリといい笑顔で
「だって花井、武蔵野引いちゃったもんな。」
と言った。
「お、おい、西広!落ち込んじゃうだろ?ダメだよ!」
「そ、そうか、配慮が足りなかったよね……!」
「そうだよ!花井のくじ運を責めちゃダメだって!!」
「お前ら、フォローしてんの?!けなしてんの?!」
あーぁ、付き合ってらんない。西広は真面目に水谷の話捉えすぎだって。だいたい、ノック待ちの時間なんだから、もう少し静かにしてほしい。
「……ん?」
ふとベンチの方を見ると、ジャグに氷を入れたところらしい柚梨と目が合った。
「………〜♪」
何を言っているかはわからないけど、とりあえずこちらに向かって手を振っているのはわかった。
「ったく、可愛いなぁ♪」
小さい頃からずっと知っているはずの柚梨なのに、可愛いがおさまらない俺は結構ヤバイ奴だなと思う。自分でも。つーか、あいつ、夏休みだからって西浦来すぎじゃねぇ?大丈夫なのか?
「おい…………大丈夫か?」
大会のあとっていうか、合宿の頃からずっと練習の終わりが9時で、チャリの後ろに座っている柚梨がうつらうつらしているのがわかる。
「ん?うん。大丈夫。」
「ほんとか?眠そうだな。」
「え?うん。だって、私は普段は9時には寝てるからね。」
嘘だろ。爆弾発言すぎる。こいつ、健康的すぎねぇ?これが中学二年なのかよ?!
「っつーかよー、柚梨お前、宿題とか大丈夫なのか〜?来年は受験だし、進路希望とかとられてんだろ?」
「え?んーー、平気。夏休みの宿題なんて7月中に終わってるし、今の成績なら西浦ぐらい余裕で受かるよ。」
「あ……そう……。」
そうだ、柚梨は頭が良かったんだった…。謎の敗北感が………。
「孝介……?」
ふいに柚梨が低い声を出した。
「お?どうした?」
「さては夏休みの課題…………終わってないんだね?」
うぐっ!!痛いところを!!
「もう夏休みも終盤だよ?どうせ大丈夫〜とか言って後回しにしてた課題があるんでしょ?英語とか英語とか英語とかね?国語のスピーチとかもやってなかったりするんじゃなーい?きっと孝介の事だから数学と古文だけは終わってるんだろうな〜?そんでもって、日記なんて1日分も書いてないんでしょぉぉぉぉぉ??」
怖い。柚梨が怖い。そのとおりすぎて怖い。さすが俺の幼馴染み、俺の彼女。
「ええっと……今日はもう疲れたし……明日やるよ。」
「何言ってんの?どうせ明日もやらないんだから……今日このあとからやりなさい!!」
「……………………はい。すみませんでした。」
誰か俺を助けてくれ。
「自業自得だよ。バカな孝介。」
- Re: 泉君のカノジョ ( No.29 )
- 日時: 2018/08/23 13:32
- 名前: 奈狐 (ID: T0oUPdRb)
夏休み終盤、8月15日。たまたま部活が休みだった俺の家に、柚梨が押し掛けてきた。
「孝介〜〜〜〜?課題やろうね〜〜〜!!」
うぅ……。鬼だ。
「や、進んでるよ?!進んでる!!……少しずつ。」
インターホンの向こう側で柚梨の目がつり上がった。
「どうせ少しも進んでないんでしょぉ?読んでたァァ!!私の監視のもと、さっさと課題を進めなさーい!!」
怖い。このまま無視したらたぶんドアを蹴破られるから、柚梨を家に入れることにする。
「い、いらっしゃ〜い……。」
おそるおそるドアを開けると、仁王立ちしている柚梨がいた。
「よくぞ開けてくれましたね、こーすけ!!さぁ、課題課題♪」
……………………しんどいぞ。色々な意味で。
「あ、孝介。ここの古文の訳間違ってるんだけど。」
「えっ嘘!!あー、ホントだ。」
「あと、ここの計算違うよ。ここは一次の連立方程式じゃなくて、シンプルに二次方程式で解けるし。それと、ここは因数分解の過程で間違えてる。直してね。」
「………はい。」
なんでこいつ、数Ⅰなんてわかるんだよ…!おかしいだろ!!
「はい、頑張ってー。じゃ、私は読書でもしてようかな。英語わかんないなら聞いてね、教えてあげるから。」
「ど、どうも………。」
と、いきなり柚梨が俺の後方に移動してきた。
「なにしてんだよ。」
「えーっとねー、孝介の背中を背もたれにして読書しようとしてる。」
言うなり、柚梨は俺の背中にもたれかかってきた。
「課題頑張ってね。今日の分終わったら遊ぼー。」
「わ、わかった。」
やめてくれ。そういうことをされると集中出来ねぇんだよ。理性が。理性が飛びそう。頑張れ俺。
柚梨はそんなこと露知らず、着々とページを捲っているのだった。
- Re: 泉君のカノジョ ( No.30 )
- 日時: 2018/08/05 17:17
- 名前: 奈狐 (ID: v2BiiJyf)
夜8時半。
「終わったぁぁぁぁぁぁぁ!!」
やっと柚梨に言われた分の課題を終えることができた。
「ふむふむ。」
柚梨が隣で偉そうに今閉じたばかりの問題集を捲っている。
「現国ワーク20ページ、英語グラマーワークを30ページ、オーラルワークを20ページね。いいんじゃない?」
「何でお前、そんなに偉そうなんだよ………。」
「え、だって。中学でやる勉強なんか、二年のはおろか三年のまで終わってるからやることないんだよね。だから最近は高校範囲のやってるし、孝介みたいにギリギリ西浦受かる、とかにはならないと思うし。」
なんだと……。頭がいいにも程がある。やることないって……知らない単語だな。俺、テスト前詰め込み型だからな。
「よし、じゃ、明日も来るからね。課題やること!」
……。
「おい、柚梨。」
「何?」
「そんなに頭いいんだったら、西浦よりも全然高いレベルの学校受ければいいだろ。もったいねぇよ。」
少し卑屈になっている俺は、思わずそう口走った。
「………。」
あれ?柚梨のことだから、俺と同じ学校に行きたいから〜とか言うんだと思ったんだが。
「えっと……柚梨?」
柚梨は、口を一文字に結んで黙り込んでしまった。
「え?」
「そうだね、そういう進路も考えなくちゃ。」
そう言うと、柚梨は部屋を出ていってしまった。
「あ、おい!柚梨…?」
俺はどうやら間違った発言をしたらしい。
- Re: 泉君のカノジョ ( No.31 )
- 日時: 2018/08/09 09:11
- 名前: 奈狐 (ID: 9RGzBqtH)
次の日は、まぁいつも通り練習だ。ノックとシートバッティングの間の休憩時間、俺は栄口に話しかけられた。
「今日柚梨ちゃんいないけど、泉、お前喧嘩でもしたの?」
うっ。栄口は要所要所で鋭い奴だ。さすが一家の母的存在。
「ケンカっつーか、柚梨が怒って出てっちゃっただけだけど……。」
「出てったって……。お前、女の子を部屋に入れたわけ?」
「は?幼馴染みな上に彼女なんだから、別に構わねーだろ。」
栄口の言っていることが理解できなくて、俺は首をかしげた。
「いや、そうじゃなくて。」
と、栄口が続ける。
「よく彼女を部屋に入れて泉の理性が大丈夫だったなって。」
あぁ、そういうこと?
「た、確かに…………。」
うん、確かに俺は努力した。
「って、そうじゃなくて!!何で柚梨ちゃんは部屋を出てっちゃったの?」
「わかんね。なんか、俺が『お前そんなに頭いいんだったら、西浦よりもいい学校に入学できるだろ。』って言ったら急に黙っちゃって。」
せわしない栄口の質問に答えていると、急に栄口が静かになった。
「え?ちょっと栄口?」
「………い。」
「は?なんつった?」
栄口がくわっと俺を睨んできた。
「それは泉が悪い!!」
「はぁ?」
いつにもない栄口の剣幕に押されて、俺は思わずのけぞった。
「何で俺が悪いんだよっ!?」
「何いってんの?泉が悪いに決まってるでしょ?俺が柚梨ちゃんだったら泉を殴ってるレベルだよ!?」
えぇーーーー、そんなに?
「よりによって可愛い可愛い彼女にそんなこと言っちゃダメだよ!!絶対、柚梨ちゃんは傷ついたって!!さっさと謝ってきな!!」
「だから、何で俺柚梨にキレられたんだよ!!」
「決まってるでしょ。そんなの。柚梨ちゃんは………。」
そこまで言ってから、栄口は首を左右に振った。
「いや、それは柚梨ちゃんに直接聞きなよ。俺が言っても意味無いや。」
「何だよ、それ。」
困っていると、田島が割り込んできた。
「なになに?泉、シュラバなの?あのちっこいカノジョと?」
「うるせーな。だぁってろよ。」
「なんだよ〜。心配してやってんのにさ。そんなこと言ってる間に、他の男にとられても知らないからな。」
「は?何それ?」
「お前の方がナニソレだぞ。あの子中学生だろ?クラスメートに仲良い男友達ぐらいいんだろ。なびくかもよー?」
そういって田島はキシシと笑った。
…………そうかなぁ?柚梨が靡くとか想像出来ねーけど。
不穏な風が、グラウンドに吹き抜けた。