二次創作小説(紙ほか)

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Re:Re:ポケットモンスター REALIZE
日時: 2024/03/05 19:54
名前: ガオケレナ ◆DsVre1ex/o (ID: xPOeXMj5)

はじめまして。これまで二次創作板(総合)にて同名の作品を書いておりましたガオケレナです。
この度、より書きやすい場を求めて移設することとなりました。移設作業が終わり次第こちらで続きを書く予定です。宜しくお願いします。

現在のあらすじ
一番の仲間を失った深部ディープ集団サイド最強と言われている青年ジェノサイドであったが、世界を一変しかねない騒動を収めて以降平穏な日々を送っていた。
そんなある時、これまで確認されることの無かった"メガシンカ"が発現したという噂を聞き、調査へと乗り出す。
それと同時に、深部ディープ集団サイドの世界では奇妙な都市伝説が流布していた。結社の人間を名乗る男の手紙を受け取った組織は例外なく消滅してしまうという、悪戯にしては程度の低い噂。
メガシンカを追っていたジェノサイドの元に、正にその手紙"解散令状"を受け取ってしまった組織の人間が現れて……。
結社。それは、深部ディープ集団サイドそのものを含めた裏社会全般を作り上げた、大いなる存在。それが今、ジェノサイドと相見える。

第一部『深部ディープ世界ワールド

第一章『写し鏡争奪篇』
>>1-7

第二章『シン世界篇』
>>8-24
 >>8-10 堕天狗といかずちの包囲網
 >>11-13 包囲網第二幕・妖精の王
 >>14-16 激闘 ライブハウス
 >>17-19 暴かれた真実、膨らむ疑惑
 >>20-24 霊峰の戦い

第三章『深部消滅篇』
>>25-
 >>25-28 メガシンカ発現
 >>29-31 解散令状
 >>32-34 メガシンカの恐怖
 >>35-40 平穏なる港町、横濱よこはま
 >>41-43 夢の国での悲劇
 >>44-47 同士諸君よ、戦いの時だ
 >>48-   叛乱
 >>    後片付け

第四章『世界終末戦争アルマゲドン篇』
 >>    不協和音

第二部『世界プロジェクト真相リアライズ

第一章『真夏の祭典篇』
>>

第二章『真偽ボーダー境界ライン篇』
>>

第三章『偉大グレート旅路ジャーニー篇』
>>

第四章『タイトル未定』
>>

第五章『タイトル未定(最終章)』
>>

〜あらすじ〜

 平成二十二年(二〇一〇年)九月。ポケットモンスターブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiはゲームにおいてもグローバルな交流を果たす便利なツールと化していった。
 時を同じくして、ゲームにしか存在しないはずのポケットモンスター、縮めてポケモンが現世において出現する"実体化"の現象を確認。ヒトは突如としてポケモンという名の得体の知れない生物との共生を強いられることとなる。

 それから四年後の二〇一四年。一人の青年"ジェノサイド"は悲観を募らせていた。

 世界は四年の間に様変わりしてしまった。ポケモンが世界に与えた影響は利便性だけではなく、その力を悪用して犯罪や秩序を乱す者を生み出してしまっていた。
 世はそのような悪なる集団で溢れ、半ば無法な混乱状態が形成される。そんな環境に降り立った一人の戦士は数多の争いと陰謀に巻き込まれ、時には生み出してゆく。

 これは、ポケモンにより翻弄された世界と、平和を望んだ人々により紡がれた一つの物語である。



【追記】

※※感想、コメントはお控えください。どうしてもコメントや意見等が言いたい、という場合は誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にて作成予定の解説・裏設定スレにて御願いいたします。※※

Re: Re:Re:ポケットモンスター REALIZE ( No.41 )
日時: 2023/12/25 20:40
名前: ガオケレナ ◆DsVre1ex/o (ID: h7vJo80q)


 八王子から舞浜は遠い。必ず何処かで乗り換えなければならないので、二時間は掛かった。
今日は約束通り、ジェノサイドとミナミ、レイジの三人でディズニーリゾートに行く日だった。平日の金曜なのでジェノサイドは大学の講義を遊びの為に休んだ事になる。尤も、彼からすると組織の戦力増強とも言えるメガストーン探索のためなのでサボったという意識は無い。

 朝の八時に電車に乗り始めたせいで途中かなりの満員電車に巻き込まれはしたものの、特に問題も無く三人は無事に到着する事が出来た。

「おーし、着いたぞー。千葉県なのに東京のディズニーに」

「あまり言うと千葉県に喧嘩売ることになりますよ?」

 遠出であるにも関わらずいつもの白装束に身を包んだレイジが早くも疲れを見せ始めた顔から苦笑いを浮かべる。ちなみに今回の遅れの原因はミナミではなく、彼だった。寝坊である。

「しっかし、東京の西からの移動だと遠いな。やっぱり主要都市に支部だ何だって名前付けて小さい基地作ろうかな……」

「なんの意味があるんですか、それ」

「お前はいちいちうるせーなー。ただの妄想だから良いじゃんかよ」

 レイジとジェノサイドの二人のやり取りを眺めていたミナミがうんうんと頷く。彼はこの時気付きもしなかったが、この瞬間ジェノサイドとミナミは「レイジがウザい」と内心意見を一致させていた。

「どっちから行こうか、ランドとシー……。まず此処から歩かなきゃだが」

「徒歩だとどれ程掛かるのでしょうか?」

「んー、十分程度かな。まさか歩けないなんて言うんじゃねぇだろうな?」

「流石に馬鹿にし過ぎです」

 ジェノサイドとレイジで軽く笑いあっている中、冷静な面持ちでミナミが二人に声をかける。

「……ねぇ待って。メガストーンってその二箇所に、それぞれあるんだよね?」

「アプリを見た感じ……そうだな。それがなにか?」

「二箇所だよね? それってつまり入場料取られるって事だよね?」

「うん?」

 それだけ言うとジェノサイドは気が付いてしまったのか突如として黙ってしまう。

「サイトを見た感じ、年間パスポートでもない限り一日に両方のパークを行き来する事が出来ないって……つまりそういう事だよね?」

「うっわマジかー、そうなるかー。ヤバい」

 彼のお財布事情を知っている者ならば何がヤバいんだ、この金持ちがと怒りたくもなるかもしれないジェノサイドの言動だったが、一番の問題はそこではなかった。
彼の手には片方のワンデーパスポート、つまりどちらか一箇所の入場料分しか持っていなかったのだ。

「い、いちいちディズニーの入場料って高ぇんだよ……。仕方ねぇ。ここはゾロアークのイリュージョン使ってあたかも入場したように見せかけるしか……」

「ポケモンをガチの犯罪に使うな」

 ミナミの声色に殺意が篭もる。
もしも今この場に悪逆の限りを尽くした深部ディープ集団サイドの人間が居たならば失笑していたかもしれないが、ジェノサイドもそうではあるが、他の二人も犯罪行為に加担した事は無いらしく、それはつまり"きれいな深部ディープ集団サイド"の人間たちだけが今この場に居るのである。
深部ディープ集団サイドとは、何も犯罪行為が全てではない。クリーンに生きる事も不可能ではないのだ。

「分かった分かったって。ったく、冗談だよ……」

 そのようなやり取りをして、三人は歩く。途中で広く、大きく、そして煌びやかな建物が前方に現れた。

「ジェノサイド様、あちらは?」

 これらの情報に疎いレイジが尋ねてくる。

「あれはディズニーのホテルだな。ディズニーランドホテルとかって名前だったかな? 俺はディズニーに興味無いから詳しくは知らないけど、好きな奴はあそこで一泊してからランドに行ったりするんだぜ。高校時代好きな奴とか居てさ〜」

「あー、なんか分かる。あんたってそういう女の子の横ですました顔してその子たちの会話盗み聞きしてそうだよね」

「俺をなんだと思ってやがる」

 軽く舌打ちしたジェノサイドは二人を置いていくようにずんずんと歩く。彼の歩行ペースは普通の人々と比べるとやや早い。
そんな彼の足は入場ゲート手前で突然止まった。
既に人の塊が形成されていたからだ。

「うっ……わぁー。やっぱり混んでるね」

「入場すらもままならぬとは……相当ですね。流石世界のディズニーです」

 入場ゲート、つまりランドに入るためだけに既に大行列が出来ている。ジェノサイドとしてはアトラクションに乗る事が最大の目的ではないため、複雑な心境だった。そんなジェノサイドは列に並びつつ二人を眺め、恐る恐る質問した。

「あのさ……一応聞くけど、折角来た訳だしさ、なにか乗りたいアトラクションとかあるか?」

「アトラクション……ですか」

 返事に困ったレイジがミナミに視線を移す。そんなミナミも特に悩む素振りも見せずに、

「んー、別にどっちでもいいよ」

 と答えた。

「うわ出たよ女のどっちでもいい……。その答えが一番悩むんだが。俺は単純にメガストーン探しに来ただけだし、その間お前らは何か乗っててもいいじゃん? 滅多に来ないだろディズニーなんて」

「それウチも困るんだけどなぁ。ウチ別にディズニーに興味ある訳でもないし」

「私としては……若と一緒であれば別に……」

「今なんか言った? すごく気持ち悪いのが聞こえた気がしたんだけど」

「……気のせいですよ」

 ジェノサイドは頭を抱える思いだった。二人に任せても話が進展しない。

「おいおい、俺が決めてもいいのか? 言っとくけど、俺はメガストーンゲットが最優先だから激混みなランドは石取り次第スルーするぞ? 何か乗りたいとか、時間に余裕が、とかだったらこっちと比べて若干空いてるシーになるぞ? それでもいいのか? ってか今日平日の癖に何でこんな混んでんだよお前ら全員何やってんだ……」

 あんたこそ学校サボって何やってんだとミナミがボソリと呟く。
ジェノサイドがあまりにも悩むのでその姿を見兼ねたレイジがやや声を上げて二人の意識を自分に向けさせた。

「では、こうしましょう。ジェノサイド様、貴方はメガストーンの探索に集中なさってください。その間私と若で此処を楽しんでまいります!」

「なんであんたと二人でアトラクション乗るのよ」

「では、誰と乗りたいのですか?」

 薄々思ってはいたがそれが妥当だとジェノサイドも感じていた。度々ウザい面はあるものの、彼らよりも一回りほど年長者であるレイジが頼もしく見える。
チケット売り場までの距離が徐々にだが狭まってゆく。動く列に気を取られていたせいでその後のミナミの、レイジからの問い掛けに対する返事である、皆と一緒がいいなと思っただけという声があまりよく聞こえなかった。



 改めて人数分のチケットを購入し、ランドに入った三人。
レイジはマップを見ながら言った。

「さて、と。何から行きますか? 若!」

「結局乗るの!? 待って、待ち時間どの位?」

 レイジはよほど嬉しいのだろうか、普段よりもテンションが高めだった。まるで非日常の世界を目の当たりにしてはしゃぐ子供のそれだ。
ジェノサイドはミナミの反応を見て結局楽しみたかったんじゃねぇか、と心の中で呆れた。
彼にとって、どれほどの時間を費やしても女の扱いに慣れる事は無さそうである。

「乗りたいやつがあったらファストパス発行しとけよ。それでも並ぶ事に変わりは無いが、普通に待つよりはかなりマシだ」

 この中で唯一経験のあるジェノサイドが初心者に向けるような口振りでアドバイスをした。
そんな三人は、美しい佇まいのシンデレラ城を抜けると二手に別れてゆく。
瞬間、ジェノサイドの中でスイッチが切り替わる。遊びに来たような感覚から、作業をする気持ちへと変化する。そうでもしないと周りの雰囲気に圧されてやる気が削がれ、何も出来なくなるからだ。

「とりあえず……目標時間は二時間。その間に俺はその敷地内でメガストーンを探し、手に入れる!」

 強い決意を持って自ら人の流れに飛び込んだ。
メガストーンを探すためには足元を常に見ていなければならないが、とにかく人が多い。
その分足が多いために見えにくい上に誰かと接触する危険性もある。特に子供が多いため余計に気を付けなければならない。

「予定よりも少し時間が掛かってもいい。まずはチラ見する感じで行くか……」

 ジェノサイドが予定時間を二時間にしたのには理由があった。
ほとんどのアトラクションの待ち時間と一致するのだ。理想としては、二人が楽しんでいる間に見つけ出す。ファストパスを発行してからすぐにそのアトラクションには乗れない。なので、三人の間に時間のズレは生じない。そして早々に切り上げてシーへと移動する。そうでもしないととても一日では終わらなそうな、そんな気配がしたのだ。

 しかし。

「だーめだ……。全っ然見つからねぇ」

 計画というものは常に想定外が付き纏うものであり、全て上手く行く場合は段取りがしっかりと整っている場合である。
現場での一発勝負においてはイレギュラーが常だ。
ジェノサイドは適当なベンチに座って項垂れていた。もうとっくに予定の二時間は過ぎている。と言うかは途中で精神的に疲弊して諦めてしまった。今はその休憩中だ。

「本来だったら休日に行こうと思ってたけど絶対混むしそれに今日がポケモン新作の発売日だし可能な限りやれる事やって次に進みたいと思っていたからわざわざ大学休んでまで来たのに……これじゃ俺だけ大損した気分だ……」

 心の中でそう呟いたジェノサイドは、ふと自分の前を通り過ぎてゆく他の来場客たちの顔が目に留まった。
小さい子供を連れた母親、エネルギーが有り余っているからか、無駄にはしゃいでいる男子高校生の集団、カチューシャを頭に着けて手を繋いで歩いている制服姿のカップル。
その誰もが皆、笑顔だった。
ジェノサイドはその光景を見て平和を感じる。
そして、願うならば自分も"そっち側"に回りたいと心のどこかでは望むものの、それが叶う事は決して無い。

「俺は……決めたんだもんな。こういう世界を保つために……ジェノサイドで在り続けるんだってな」

 自身が深部ディープ集団サイドという裏の世界にあり続ける事で、彼らの世界を乱そうとする人間を駆逐する。自分が居続ける事で、世界は保たれる。それでいい。そうやってジェノサイドは納得するしかなかった。させるしかなかった。

「そうとなれば……いつまでもこうしちゃいられねぇな」

 改めて決意したジェノサイドはベンチから立ち上がる。もう十分に休んだお陰で体力は回復しているはずだ。

「たとえ今が苦しくても、明日の夜になれば笑い話のひとつにでもなる……! 苦しみが続くのは今だけ。今頑張ればそれでいいんだ」

 バチカン市国並の広さを持つディズニーランドだが、それらのことをを思うと、組織のことを思うといつまでも腐ってはいられない。
ブーツを履いたその足からは、普段のスニーカーとは違う足音があたりにこだました。

Re: Re:Re:ポケットモンスター REALIZE ( No.42 )
日時: 2023/12/30 05:43
名前: ガオケレナ ◆DsVre1ex/o (ID: h7vJo80q)


「なーんでこういう時はいっつもこうなんだろうな」

 あれからジェノサイドは一時間掛けてランド内をほぼ一周してみせた。
そして、そのゴール地点にメガストーンを発見した。

「三時間掛けました。念願のメガストーン見つけました。場所はシンデレラ城の真裏! いや、ふっざけんなよ……労力返せマジで……」

 本来であればわざわざ三kmほどの距離を歩く必要すらも無かったはずなのだが、それに気付けなかったジェノサイドは律儀に走破した。あれほど欲しかったはずのメガストーンなのに、何故か心から喜べない。
灯台もと暗しとはこの事か、と二度とこのような真似はしないと強く心に誓ったジェノサイドは、その時自分の名を叫びつつ近付く人間を認めた。ミナミだった。

「おーい、レンー。こっちこっち」

 その後ろをレイジがやや遅れてやって来る。

「どう? 見つかった?」

「メガストーンだろ? ま、まぁな……」

「いやぁお待たせしてしまって申し訳ありませんジェノサイド様。私と若はこの通り遊んでまいりましたっ! とても楽しかったですよ〜。もう満足であります」

「そうか、それなら良かった」

 レイジはよほど楽しかったのか、普段よりもテンションが高めである。内心で自分の成果と比較したのも相まって若干引き気味のジェノサイドは適当にあしらう。
彼はその時、手に入れたメガストーンを二人に見せようかと思ったが、そこまで会話が踏み込まれなさそうなのを察してポケットから手を出す。

「では……どうされます? 若も二つほど楽しまれたので私としても次に向かっても良いかと思いますが」

「次ってことはシーって事か? 俺は全然構わないが……ミナミ、どうする?」

「えっ、そこウチに聞く!?」

「此処にあるメガストーン欲しくないのであればこのまま行くぞって意味な」

「そっちね。うーん……。石による。此処にあるの? 何だった?」

「色見た感じだとライボルトナイトだな」

「……一応貰っておこうかなぁ。場所は?」

「すぐそこ。シンデレラ城の近く」

 そう言ってジェノサイドは石が置かれていた大まかな位置を指で示す。自分はもう手にしてしまったので見えないが、ミナミにはメガストーン特有の光が見えているはずだ。尤も、今は人が多くて中々見えたものではないが。

「ジェノサイド様、もしかしてかなりの時間待ちました?」

「まぁな。でも大したことはねーよ、ベンチに座ってたり適当に軽いモン食べて休憩してたからな」

 真っ赤な嘘だった。ジェノサイドは退屈などしていない。この敷地内を長い間歩き回っていたのが正解である。
レイジが聞いた理由は、メガストーンの位置を確認したうえでジェノサイドの単独行動がすぐに終わってしまったものだと解したためだ。

 ミナミがやや嬉しそうな顔をして戻って来る。最初は何だかんだ言っていたが、結局楽しいものは楽しいのだ。
彼女はある程度満足したと言っていい。

「では、参りましょうか。お次は……」

「ディズニーシーだな。ちょっと勿体無い気がするが、ここでランドは退場して、同じようにシーに入ろう。俺は引き続きメガストーン探索。お前たちは……どうする?」

「若にお任せします」

「えー、ウチもどっちでもいい」

 このやり取りさっきも見たぞと思いつつモノレールの乗り場方向へと歩く。ランドからシーの行き方は色々あるらしいが、一番楽なのはリゾート内を回るモノレールだとジェノサイドは判断した。

 ミッキーマウス一色のモノレールに乗り込んだ三人は、シーに着くまでのおよそ十分の間、揺られていた。
ランドに居た際も思ったことだが、この乗り物もファンシーな雰囲気があり、当然だが日常とは一線を画すデザインとなっている。これもまたディズニーが人気であり続ける理由の一つなのだろうとジェノサイドは思った。
それと比べると深部ディープ集団サイドにはそういった工夫が見られない。そもそも、そんな物は必要ない世界であるのだが。

 三人はディズニーシーへと到着した。
ランドで使ったパスポートはシーでは使えないため、同じように入場ゲートでワンデーパスを買わなければいけない。ジェノサイドたちは再び列に混ざる。

「ったく、面倒だし高いし……明らかに儲かってんだからもう少し便利になってもいいと思わないか?」

 流石にここまでで相当疲れたのだろうか、ジェノサイドが二人に愚痴をこぼす。

「逆かと。これが精一杯なのですよ。むしろ、これ以上緩和させてしまうと殊更に混んでしまいますよ。一番良い方法はチケットの値上げでは……ないでしょうか」

「うげぇ、更に高くなんのかよ……」

 別の意味で戦慄したジェノサイドはそれ以降黙ったまま素直に三人分のチケット代を支払うとそのまま入場ゲートをくぐる。

「さて、と。どうしようか? 見た感じランド程ではないだろ、混み具合。とは言え、待つものは待つからさっきみたいに俺が探している間に二人でまた遊んできてもいいんだぞ」

「今度はウチも探すよ。その方が早いでしょ?」

「そうですね。三人で探した後に最後に何か乗りましょうよ」

 二人の反応を見て、ジェノサイドとしても悪くない案だと思えた。少なくとも、ランドでの悲劇をもう一度迎えるなどという事は余程のことがない限り無さそうだ。

「じゃあそうしますかね。俺はどちらかと言うとランドよりシーが好きなんだ。高校の時行事で行ったことあってさ、それで……」

「行事でディズニーってどういう事!? まさか修学旅行とか?」

「いや、それとも違って、なんかー……学年上がった直後の新しいクラスを迎える上でのイベント的な。これを機に皆さん仲良くしましょー的なやつ?」

「あんたがよく覚えてないとウチらはもっと分からないから……」

 ジェノサイドが高校の行事でシーを訪れたのは二年前だった。それくらい前だとまだ記憶に新しいものかもしれないが、如何せんジェノサイドは学生生活の裏で血みどろの深部ディープ集団サイドの生活を送り続けて来た。日常の記憶がすっ飛ぶほどの経験を彼は得続けていたのだ。

「ランドでも思ったんだけどさ」

 ジェノサイドは歩きながら二人に声を掛けた。丁度三人は絶叫マシーンとして好評のタワー・オブ・テラーの前を通り過ぎる。

「ディズニーって一々お洒落だよな。なんかよくね? 雰囲気」

「ハイカラと言いますか……ビンテージなイメージですよね。どうやら、そういう時代のアメリカをイメージしているようです。先程調べてみました」

 メガストーンを探す事に集中しすぎてランドでは希薄だったが、敷地内を歩くだけでもどこか楽しめている気がする。レイジの言う通り、クラシカルな雰囲気に触れる事で非日常を楽しめる事が出来、普段の日常では味わえない時間を過ごしているようにジェノサイドは感じた。

「通りで世界中の人から愛されるわけねー。……ん、」

 ミナミが何かに気が付いたようだった。
ジェノサイドとレイジの後ろを歩いていた彼女はふと足を止める。それに気付くのに遅れた二人もやや遅れて動きを止めた。
タワー・オブ・テラーを過ぎた先に見える大型の豪華客船、S.S.コロンビア号。そこの乗船口。そこが多くの来場客の無数の足に隠れつつも、よく見るとぼんやりとした光を放っている。
その場へ向い、何かを手にしたミナミが二人の元へ駆け足で戻って来る。

「メガストーンだよ。あそこにある。ほら」

 そう言って彼女の小さな掌には確かにメガストーンが輝いていた。ライボルトナイトと同じく、ジェノサイドがゲーム内では見た事のない色合いをした石だ。

「俺がプレイしているのはYなんだが……このメガストーンは見たことがないな。それはつまり……カイロスナイトと言うところか」

 メガカイロスと言えば特性が強力という事で評価が高いポケモンだ。そのメガストーンともなれば必ず手に入れておきたい。すぐに手にしなければとでも思ったのだろうか、その場で走り始めたジェノサイドは途中親子連れとぶつかりそうになる。軽く会釈して道を譲ったあと、その地点まで来ると手をかざした。

「これで今回の目的達成だな。二人とも、協力ありが……とう?」

 振り返ったジェノサイドは語尾を弱々しくさせて二人を見る。
ミナミとレイジはその場にはいた。だが、少し違和感があった。

「なんか……人が少ないような……そんな気がしねぇ?」

 そう言われたミナミとレイジは互いに顔を見合せて辺りを見る。確かにそうかもしれないが、そこまで気にする程のようには見えない。それが二人の率直な感想だった。

「パレードか何かやるんじゃない? これから」

「……かもしれねぇが、なんか急に消えた気がしたからちょっと気になって、な」

 三人は少し歩く。

「やっぱり人居ねぇよな?」

「そういう傾向だと先程仰りませんでした? ジェノサイド様」

「いや、そうだけどさ」

 また少し歩いた時、ミナミとレイジもその異変に気付く事が出来た。

「待って……。人が居なくない?」

「私達三人以外……誰もおりません……」

「気のせいじゃなかったようだな」

 文字通り彼らを除いて誰もが居なくなった。
つい先程まで鬱陶しく感じた人々が、誰一人として存在しない。たまに見掛けるとしても業務を行っているキャストだけだった。

 そして、ジェノサイドはその異変の原因を知ってしまった。
その視界に、見慣れた人影が映ったからだ。

Re: Re:Re:ポケットモンスター REALIZE ( No.43 )
日時: 2024/01/16 00:44
名前: ガオケレナ ◆DsVre1ex/o (ID: YgiI/uLg)


 パレードの気配は無かった。辺りは静まり返っているからだ。
現れた人影には、見覚えがあった。それだけではない。ジェノサイドにとって、ミナミにもレイジにもそれは因縁のある存在だった。

「なんで……」

 ジェノサイドは声を震わせる。動揺の印でもあった。あまりの"有り得なさ"の連続で精神が追いつかない。
対象とは直線距離でおよそ五十メートルは離れている。声を上げ、その名を叫ぼうとしたジェノサイドだったが、更なる異変のせいで喉まで出かかったものが引っ込んでゆく。

 その男の周囲に、黒い壁が形成されだした。
その一つひとつが小刻みに蠢いており、異常な光景ではあるものの、異能だとか、特別な力などで生まれたものでは無かった。
黒い壁の正体。それは。

「どういう事……? あれ全部人間……?」

「この前かち合った時にも奴の背後に控えていただろ。あの野郎、その数を大きく増やしてきやがった……」

 無意識に歯軋りをしていた。ジェノサイドは怒りに似た感情を募らせ、そしてそれは咆哮となって表れる。

「どういうつもりだ……五百城いおき、テメェ!!」

 ジェノサイドらが対峙しているその先に。
五百城いおきわたるが、黒スーツに全身を包んだ己の部下を大勢引き連れてこのテーマパークにまでやって来たのであった。

「待って、どういう事!? なんで五百城がココに居るのよ!」

「俺に聞くなそんな事! 分かるわけがねぇだろ! 分かりたくもねェ!」

 ジェノサイドは落ち着きを失っているが、ミナミはそれ以上に動揺していた。呼吸が乱れ、その眼差しは恐怖の対象を見ているかのようだった。
こういう時、彼女のような人間には何を言っても無駄である。どれだけ大きく叫び、その惑いに抗おうとしても全て徒労に終わる。
何故、知らない、の応酬を暫し二人の間で繰り広げたのち、ジェノサイドがいい加減喉が痛み始めてきたと思い始めたのと同時期に、遥か上空から破裂音が響いた。
三人が肩を震わせ、反射的にそちらを見上げる。
それは、五百城の放ったルカリオの"はどうだん"らしかった。断定出来ないのは、既に音の正体が消滅していたからだ。だが、その音の真下、その地上には技を放つために構えていたルカリオが佇んでいる。
呆然とする三人を嘲笑するかのように、五百城が前面へと躍り出た。

「素晴らしいだろぉ!? これが僕の実力でもあり、僕の仲間たちの凄さでもあるのさ。キミたちを探すことくらい、片手を振るだけで成されるのさ」

 五百城は上機嫌であった。ジェノサイドらを見つけられたから、だけに留まらない。自身の人間としての強さを誇示できている事によろこびを感じているためだ。

「だからってよぉ、家族恋人友達で溢れているはずのこの平和な夢の国にわざわざやって来るこたぁねぇんじゃねぇのか!?」

 いつまでも動揺しっ放しではいられない。ジェノサイドは負けじと叫ぶ。

「フン……。相変わらず甘い男だなジェノサイド。キミはここのアトラクションを貸し切ることが出来る制度をご存知であるかな?」

「はぁ? 待つのが嫌だからって何万、何十万と積めば果たせられるアレか? 脈略が無さすぎて気持ち悪ぃんだよてめ……」

 ジェノサイドはてめぇ、と呼ぼうとして言葉を詰まらせた。その代わりに、まさか、と言う疑念を含めた感情が沸き立つ。
現在、見渡す限りにおいてだが、他に人の姿が無い。あれだけ無数に存在していたはずの自分ら以外の来場者が消えている。

「まさかお前……貸し切ったのか!? ディズニーシーごと……この敷地全てを!?」

 そうとしか考えられなかった。強制的に排除したとなればその痕跡も見られるはずだが、そういった類のものは一切見られない。自分たち以外の来場者を対象に、一時的に退場を求めたのかもしれない。
しかし、それは本来有り得ない。
ディズニーにおける貸切とは、閉園後の時間帯が対象となる。平日の真昼間などという、普段の利用時間内にてそれが認められる訳がないのだ。

「流石は議員サマ。と思わないかい? 僕の手に掛かれば、国際エンターテインメントそのものを取り込む事も難無く出来るってワケ。僕をだぁれだと思ってるのかなぁ!? 凄いよねぇ!? ねぇ、凄いって言ってよぉ〜〜」

 あまりに気分が高揚しているのか、五百城は言いながら身体をくねらせている。それを見たジェノサイドは冷や汗を大量にかいた。
頭おかしい、と。

「やっぱりアイツは狂ってる……。俺たちを見つけ出すため"だけに"恐らくだが何千万という額の金を放り投げるなんてどうかしている……」

「ジェノサイド様、確かにそれも恐ろしいばかりですが、だからと言って居場所を突き止められるとは思えません。彼はどのようにして、今日こちらに私たちが居ることをご存知になったのでしょうか……」

 レイジが耳に寄せて呟く。それを聞いてなるほど、とジェノサイドは同調する。そしてその理由を尋ねるためにもう一度叫んだ。

「簡単なコトさ! 僕以外に、君を付け狙っている議員を見つけてね、ソイツを脅迫……じゃなかった。情報の提示を求めた結果、キミがメガストーンを集めている事を知った。あとはメガストーンの在処を調べていけばいい。その調査を続けた結果、舞浜駅にて君の姿を確認した目撃情報を手にしただ、け、さ!」

 メガストーンは一個人につきひとつしか手に入れられない。その特性を五百城が逆手に取ったのだろう。その地点における、ジェノサイドの目撃情報が皆無な場所をピックアップして洗い出していけば、気が遠くなる作業である事には変わりはないものの、答えには行き着くことも不可能ではない。

 つくづく、自分の居る世界は異常だと改めて認識して戦慄した。
彼のような人間が結社、またの名を中央議会という名で深部ディープ集団サイドを束ね、支配しているのに加え、その環境に身を置きながらそんな彼を始末して欲しいと懇願する者も自分の傍には居る。

「分かってはいた……。俺はこれまで数え切れない程の、数えたくもない程の苦しみや悲しみ、理不尽な光景を見てきたから分かるんだが……やっぱりこの世界は、狂っている。狂気じみている」

 ジェノサイドのその本音に、二人の善良な裏の世界の住人が軽く反応した。

 そんな三人の様子を見てぼんやりしている、と解されたのだろう。五百城の数百を超える部下たちが走って来た。それらは、何も持たない人間もいればモンスターボールを手にしている者もいる。
彼らに捕まってしまえば、どうなるかは想像に難くない。

「おい……このままだと死ぬぞ今回は割とマジで! オンバーン!」

 二人に忠告しつつジェノサイドは叫んでボールを投げる。ダークボールからはその色に似合う黒い龍が空を舞う。

「目の前のヤツらを来させるな、"りゅうのはどう"」

 人間の視覚ではそれを認識出来ない。
だが、その技が放たれたあとの残留エネルギーならば辛うじて見える。
オンバーンの全身から放たれた"それ"は地を這うように走っては、迫り来る五百城の部下の集団、その先頭を担っていた全員を吹き飛ばす。

「な、なんか平然とやっつけちゃっているけどさぁ! なんで五百城はここまで追い掛けてくるのよ!? 普通そこまでする?」

「喋ってる暇あったら戦うか逃げるかしろミナミ! そもそもアイツらを普通の人間と思うこと自体が間違いだ、考えを改めろ。……そうだな、奴としては解散したと決めたはずのお前らの財産目当てか、気に入らない俺を抹殺するかのどちらか、若しくはその両方かもなぁ!」

 推測しつつジェノサイドは再びオンバーンに"りゅうのはどう"を指示する。
どれだけ五百城の人間をポケモンの技で飛ばしたとしても、際限なく再びやって来る。単純に火力が足りない。
それを理解しているジェノサイドは悶え、苦悩する。

「このままじゃ押し負ける……おいお前ら、ひとまず距離作りたいから逃げるぞ。入場ゲートの方角を目指すんだ。その間に俺は二体目、三体目のポケモンを……」

 後方の安全を確認しつつポケットを探ったジェノサイドであったが、その案はミナミによって遮られる。

「ちょっと待って、五百城も入場ゲートから来ているんだよね? 待ち伏せされていないっていう確証はあるの!?」

「ミナミお前……」

 普段ロクに意見を言わないはずなのに、と内心少しだけイラッと来たジェノサイドだったが、それには一理あった。推定で百人以上の人員を動かしている五百城だ。単純なまでの真正面からの突撃に拘っているのだとしたら、それは逆におかしい。もっと多方面に動いていると見るべきだ。

「くっそ……どうする……? 今なら誰も並んでいないし、アトラクションに乗りつつシーの全景確認するとかしてみるか……? タワー・オブ・テラーもあるしな。いや、降りた先に待ち伏せされてたらそれこそ終わりだよな、クソが! いい案が思い浮かばねぇ!」

 とにかくまずは逃げなければいけない。
ジェノサイドが五百城らに背を向けようとして走り始めようかと構えたその時。
レイジが二人を庇うようにして前へと突如として躍り出た。

「レイジ……? お前何を……。いや、とにかくお前も走れ! 逃げるぞ!」

「必要ありません」

 レイジは冷たい声でそれを拒否する。
そして、女のような細いその手からひとつのボールを放り投げた。

「頼みます、サーナイト」

 ジェノサイドとミナミを守るようにして立つレイジと、ほうようポケモンの名を体現するかのようなその凛々しいポケモンは彼の前へと姿を現す。

「"サイコキネシス"」

 レイジのサーナイトと、迫る敵との距離はまだ離れている。そのため、技の範囲が狭まった。
走る黒い群れの先頭集団だけが、その動きを封じられているようだった。遠目からだと不自然に人間の体が固まっているように見える。サーナイトの放った技の影響だ。

「おいレイジ、奴らの動きを止めてくれるのは有難いんだが……それからはどうするんだ?」

「こうするんですよ! サーナイト、そのまま飛ばしてください!」

 レイジは叫びつつ右腕を振るった。それを確認したサーナイトは、動きを止めた人間その全てを直線上に弾くように吹き飛ばした。
サイコパワーにより運動エネルギーを書き換え、佇んでいる状態の人一人からでは得られないような力が生まれ、その結果大規模な衝突から生じた将棋倒しが見られた。
五百城の部下の多くが倒れてゆく。

「すげぇ……」

「普段のバトルで扱うやり方を少し応用させてもらいました」

「その手があったか」

 涼しい顔を見せるレイジに、ジェノサイドは感心しつつも引き気味だった。例えば、彼が溺愛するミナミが絡んだ問題を起こしてしまえば笑顔で殺してきそうな勢いと狂気が垣間見えた気がしたのだ。
尤も、ジェノサイドにそんな予定は無い。

「さぁて、このまま全滅でも試みてみましょうか!?」

「待てレイジ、奴らが体勢を立て直す前に逃げてとにかく奴らから離れよう。周囲の状況も確認しつつ、入場ゲートの安全が分かり次第こんな所さっさとおサラバして帰る。それでいいな?」

「ウチも……できればウチもそうしたい!」

「若……」

 愛するミナミの懇願を聞いたレイジは、それを聞きつつ、敵が起き上がったタイミングで再度サーナイトの"サイコキネシス"を打つ事で敵の力を更に削いでゆく。

「そ、それならば仕方がありませんね! 出口目指して行きましょう!」

「俺が何度も言って聞き入れなかった癖に、一度ミナミが言うだけでこの違いか……」

「そ、そんな事ありませんよジェノサイド様! 私は私で色々考えながら戦っていた訳でして……例えばほら、こちら」

 そう言うとレイジはミナミにひとつのモンスターボールを投げ渡す。

「これ……キルリアのボールだよね?」

「左様でございます。そちらのキルリアは移動技"テレポート"が備わっております。馬鹿正直にゲートを目指さなくとも、そのポケモンを使えば一瞬で外に出られますし、場合によっては駅の前まで行けるかもしれません」

「お前、そんな便利なポケモンあったら最初から言えよな!?」

「申し訳ありません、ジェノサイド様。しかし私もこう見えてポケモントレーナーの端くれ。久々のバトルに血湧き肉躍る、というやつでして……」

「もういい、十分だろ。雑魚相手にオラついてないでさっさと行くぞ」

 今回の逃走劇に終わりが見えてきた。その安堵からか、ジェノサイドに余裕が蘇る。すると、いつまでも戦っているレイジの動きが無駄に見えてきた。自然と普段の口調で、軽くあしらう対応へと変わってゆく。まるで自分が戦場にいるかのような感覚が、ほんの刹那に等しいタイミングの間に限り失せたかのようだった。
それは言い換えれば油断でもあった。

 ミナミがキルリアを呼び出し、一息ついたタイミングでレイジが攻撃を一旦止め、サーナイトをボールに戻し、こちらに駆け寄る。同時期にジェノサイドもオンバーンをボールに戻した。
"テレポート"で逃げ切れると思い切ったせいでジェノサイドは周囲の確認を怠っていた。ほんの一瞬の虚を衝くタイミング。自分らが無防備になると気付くまでもなく。

 クロバットの足に掴まり、空を移動していた五百城が自分らの頭上に居る事に、ジェノサイドは遅れて気が付く。
綺麗な海を背景に、五百城は左手でクロバットの短い足を掴み、右手で何かをこちらに向け構えている。それが拳銃であると察知した時には既にもう弾丸は発射されていた。

「……!!」

 一言も発する暇もない。
頭上故に狙いが外れたのか、それとも初めから狙っていたのか、その弾は真っ直ぐとレイジの胸へと突き刺さる。
その時まで、レイジは瞬間として全身に渡った痛みの原因が何だったのか分からなかった。
衝撃と痛みで、レイジは倒れる。

「おい、レイジっ!」

 ジェノサイドがそのように叫んだタイミングで"テレポート"が発動された。
不思議と銃声は遅れて響いた。ような気がした。

 三人はディズニーシーの入口からやや離れた場所に移された。
発動の瞬間にこそレイジは倒れたものの、それも"テレポート"の範囲内だったからか、倒れた状態のままレイジも一緒だった。
ミナミはそれを見て初めて異変に気が付く。

「レイジ……? ねぇ、どうしたのレイジ!」

 レイジは起き上がらない。
自慢の純白の礼服は、胸を貫いた弾創で穴が開き、黒く焦げ、自身の血で赤黒く染まっている。地面に倒れたせいで土と砂利とで薄汚かった。
ミナミが呼びかけ、何度身体を揺さぶっても反応は無い。目は閉じられ、力が抜けたようにその口も半開きになったままだ。

「起きて! ねぇ、起きてよ!! 起きてってば……」

 無惨なまでのその光景を見て、ジェノサイドは茫然としていた。そうするしか自分には出来なかった。
彼の意識に響くのは、ほんの少し前に聞いた銃声と、ミナミの発する啜り泣く声だけだった。



 楽しい思い出として終わるはずだったこの日は、思ってもみなかった最悪の結末を迎えることとなってしまった。ルカリオナイトを除いてメガストーンをコンプリートしたはずのジェノサイドには、喜びという感情が一切湧かない。この後にポケモンの新作である『オメガルビー』、『アルファサファイア』を楽しむ気力などあるわけが無かった。

 ジェノサイドとミナミは基地への帰還を果たした。だがそれは、望んだ結果ではなかった。
レイジはその後病院に運ばれたが、結果は分かりきっていた。彼等は深部ディープ集団サイドという裏の世界の人間であるが、この世に生きている以上、表の世界の人間の一員でもある。こういう時は彼らに限らず表の世界のサービスを利用するのだ。かと言って何があったかは決して表には出さない。ゆえに表の世界のメディアが深部ディープ集団サイドの情報を流すことはまず無い。
だが、知りうる限りの情報は漏れてしまう。
ジェノサイドは確認していないので噂程度の認識ではあるのだが、あの後"速報"という形でディズニーリゾート前で男が倒れている、程度のニュースが流れたようだった。

 ジェノサイドはまず、一人で広間に寄った。
そこには、外で何があったのかも知らずにいる平和な仲間たちが、いつも通りゲームをするなどして各々平和に過ごしている。ほぼ全ての3DSから、懐かしい響きのBGMが流れている。
あまりにもジェノサイドが沈痛な面持ちをしているせいであろうか、一部の仲間たちが察したため徐々に方々から流れてくるBGMが小さくなり、いつしか完全に消えた。

「リーダー……。えっと、その……お疲れ様です」

 なんと言えばいいのか戸惑っているハヤテがまず声を掛ける。
ジェノサイドの様子がおかしい事に最初に気付いたのも彼だった。メガストーン確保の報告も無ければ、新作購入の自慢も無い。何より、一緒に行動していたはずの仲間の姿も見えない。

「リーダー……、お身体の具合の方は……」

「お前ら、今から大事な話がある。この基地に居る、非戦闘員を除く全ての構成員を此処に集めろ。今すぐにだ」

 ジェノサイドはハヤテの言葉を遮る。彼が戸惑っているのは重々承知していた。有難みすらも感じている。だが、今はあらゆる感情を押し殺し、冷徹でいなければならない。そうでなければ、精神が先に音を上げてしまう。
暫くすると、仲間が一箇所に集まった。
ジェノサイドはざっと彼らの顔を見て、それから告げた。

「今日、仲間が死んだ。俺のミスだ。そいつは……保護を求めて此処にやって来た奴だった。だが、俺のせいで死んだ……。理由については、既に分かりきっていると思うが、五百城に関わるものだ」



 次にジェノサイドは別の人物へと連絡を始めた。その相手とは、ほんの数日前に連絡先を交換した結社の人間、神々廻ししばまことだ。

「……もしもし」

 ジェノサイドはスマホを耳に当てると、声を落とす。周りには誰も居ないが相手が相手のせいか変に意識しているせいかもしれない。

『もしもし。なばり……洋平ようへい君かな?』

 アポ無しの連絡だったせいか、相手も少し動揺しているようだった。自分の名を告げた声は自信が無さそうに聞こえる。

「できれば"ジェノサイド"と呼んで欲しいものだが」

『いやいや、済まないねぇ。ところで……私に連絡を寄越すとは、何か良からぬ事でもあったのかな? これは嫌味で言っている訳ではないのだが、私も多忙を極めている身であってね。まずは別の形での連絡を欲しかったところで……』

「それは申し訳ないと思っている。だが、急な用事でな。幾つか聞きたい事があるが、時間は?」

『あまり余裕とは言えないねぇ』

 ジェノサイドは舌打ちしたくなる気分だった。五百城は相対した時に直接名を出さなかったが、別の議員の存在を匂わせた。それについて問い詰めたかった。ジェノサイドの中では、五百城が脅迫した人間というのは神々廻だと思っている。そうなれば、レイジが死んだ一因に彼が関わる事になるが、しかし彼に責任を追わせる訳にもいかなかった。追求したとしてもそれは遠因であり、直接の原因ではない。それはジェノサイドも分かっていた。

「正直俺は……アンタの例のお願いには消極的だった。俺にはどうしても、どんなに悪い奴でも人は殺せない。そう決めている」

『それは分かっていたよ。そして、断られるかもしれないと私は思っていたよ。……それが、何かあったのかな?』

「今日、仲間が死んだ。五百城に殺された」

 電話の向こう側が静まった。神々廻が絶句しているのはその顔を見なくとも容易に想像出来る。

『そ、それは……。とても辛い思いをしたね……。私たちが先生を止められなかったせいだ、申し訳ない』

「いや、俺が油断したせいだ。俺が最後までしっかりしていれば……止められたはずだ」

「……」

 ジェノサイドは今基地の中の談話室に居る。普段この部屋を利用しているレイジとミナミは今は居ない。暖炉も点けていない。部屋は静寂そのものだ。その部屋で、ジェノサイドは普段愛用しているロッキングチェアに腰掛けた。静寂ゆえに木の軋む音が響く。
その音を聞きながら、ジェノサイドは深く呼吸した。そして、それを合図に決意する。

「でも俺は考えを変えたよ。俺も決めた。五百城は……何処に居る? どうすれば奴を殺せる? その方法があれば……奴に関わる情報があれば、教えて欲しい」

 もう決して他人の命を奪う事はしない。ジェノサイドはそう強く決意していた。
その決意が今日、揺らいだ。

 久方ぶりにジェノサイドは、人に対して殺意を芽生えたのであった。

Re: Re:Re:ポケットモンスター REALIZE ( No.44 )
日時: 2024/01/23 20:34
名前: ガオケレナ ◆DsVre1ex/o (ID: RJ0P0aGF)


 いつまでも悲しみに打ちのめされている時間も、過去の自身の行動に後悔している暇は無い。
翌日になりジェノサイドはすぐさま行動に移した。
とは言っても、彼に出来る事など限られている。

 神奈川県伊勢原市。そこに聳える大山。
標高一二五二メートルの高いいただきに、彼はまたやって来ていた。此処に来るのは今回で三度目だ。
彼が来た理由はひとつしかない。

「ご無沙汰しております。また近い内に会えるものと思っておりました」

「そうか? 俺としては二度と来ないつもりだったんだがな」

 深部ディープ集団サイドの人間のための神主、皆神みなかみに会いに来たのだ。そんな彼は、いつか会った時と同じように純白な礼服に身を包み、片手にしゃくを持ち、優しそうな顔をして社務所の前で待っている。
前回と同様社務所の中へとジェノサイドは案内された。

「いかがお過ごしでしたでしょうか?」

「最悪だね」

 ジェノサイドは案内された客間のような部屋に置かれた長椅子に腰掛けた。暫くすると皆神がお茶を持ってこちらへとやって来る。

「メガストーン探しとポケモンの新作。……あと大学生活に集中したかったのに、タチの悪いストーカーに追われるなどで散々だ。昨日は仲間が殺された」

「まぁ……」

 ジェノサイドは湯呑みに口をつけながら皆神の表情を見た。わざとらしい声だが、哀れみを催す表情は本物のように見えた。演技だとしたら巧みだ。

「それはひょっとしてですが……結社に所属する一人の人間によって、でしょうか」

「その言い方からすると分かってるようだな」

 予想よりかなり熱かった湯呑みを木製のテーブルに置く。ジェノサイドは昨日の出来事を、レイジが死ぬ間際の瞬間を、その光景を、フラッシュバックさせつつ一呼吸ついた。

「俺は……。俺"ら"は五百城いおきわたるを倒すことで一致した」

「左様でございますか」

 恐らく皆神としては、何故わざわざこのような事を言うためだけにやって来たのかと困惑したに違いない。少なくともジェノサイドからはそう見えた。
深部ディープ集団サイド最強と言えば聞こえは良いが、その実彼の意見を聞ける人間や、そもそもの賛同者などは自身の組織の中にしか存在しない。
これが例えば他の組織の人間だとすると、"妥当ジェノサイド"を叫ぶ者同士が組織の枠を越えて協力する、というのはよく見られる光景だ。少し前にもジェノサイドは"包囲網"を敷かれて連戦を強いられたことがあった。
要するに、外部にも自分の声や意見を共有出来る環境を可能であれば作るものなのだ。
だが、ジェノサイドにはそのようなものはない。
そんな意味では彼は孤独な存在だった。

「それはつまり、本件について私に相談するために参った、と」

「そういう事だな」

「友達はおられないのですか?」

「悪かったな……ぼっちで」

 静かな口調から放たれたひとつの矢が、ジェノサイドの胸に深く突き刺さった。真面目な空気であるにも関わらず、素が出てしまい若干和む。

「すみません、冗談です。ですが……事実貴方様はその立場ゆえに意見を述べる場などというものも中々無いものでしょう。しかし、かと言って貴方様の組織『ジェノサイド』のみで五百城と戦ったところで返り討ちに遭うのは目に見えています。倒すこと自体は可能でしょうが……」

「大正解。俺の思っていること全部当ててきて気持ち悪いぐらいだよ」

 ジェノサイドは再び湯呑みを手に取り、熱い緑茶を飲む。熱すぎるものは苦手なので少ししか飲まない。

「ま、だからってお前に相談しても上手くいく事柄じゃねぇよなそもそも。悪いな、無茶な話題振っちまって」

「いえ、お待ちください。確かに無茶かもしれませんが……」

 皆神は表情にこそ表さないものの、待ってましたとばかりに強い反応を示しつつ笏を幾つか取り出すとそれをテーブルに並べた。よく見ると何やら書かれている。

「お前……まさか笏をメモ帳代わりにしてんのか?」

「平安の世ではこのように使われていたようですよ?」

「だからって時代錯誤にも程があんだろ……」

 絵に書いたような笏が綺麗に並べられるシュールな光景を見てジェノサイドは言葉を詰まらせる。古風な人だとは思っていたがここまで徹底されると逆に反応に困ってしまう。

「さて……不肖ながら意見を述べさせていただきます。解決策ならばございます。まぁ、その策も無茶と言えば無茶になりますが」

 それを聞きながらジェノサイドは並べられた笏のひとつに触れる。
肌触りはあまり良くない。質の低い木から作られているようだ。
そんな木の上から筆で文字が描かれている。

「これは……なんだ? 住所のように見えるんだが」

「要は、貴方様と同じ悲劇を迎えてしまった方々と結託すれば良いのですよ。そちらの方々の連絡先はキーストーンを渡した際に控えております」

「お前……いつか個人情報売りそうだな」

 反射的にジェノサイドは笏から手を離した。
テーブルに置いた時、その情報欄に個人の名前や組織の名前が書かれていない事に気付く。

「おい、待て。この笏……住所しか書かれていないんじゃないか? これだと誰が誰だか分からないんだが、どういうつもりだ?」

「あぁ、そちらでしたら」

 皆神はジェノサイドがお茶を飲み終わったのを確認すると椅子から立ち上がり、自分と彼のものを持って別の部屋へと一旦引っ込んだ。ただの片付けなのですぐに戻って来る。

「そちらは私なりの配慮でございます」

 どのような配慮があるのだと言うのか。個人情報の保護だとしても、一番保護すべき情報がある時点でそれを守る気は無いのは目に見えている。そこを突こうとジェノサイドは反論しようとした。

「貴方様にひとつご注意を、と思いまして」

「あ? どんな」

 ジェノサイドが口を開く前に皆神が言う。反論の機会が奪われることで言うに言えなくなり、もどかしい気分になった。

「ジェノサイド様。貴方様の使命はひとつ。こころざしを共にする者を集め、五百城渡を排除することにあります。そのために為さるべき事が先程も言いました、仲間を集める事です。ですが、これまで無数の戦いを繰り広げてきた貴方様です。その間に、かつては敵であった者と再び出会う事もあるでしょう」

 それだけ聞いてジェノサイドは理解した。
個人の名前や組織の名が無い理由は、以前戦った人間だと知っていれば避けられてしまう。それを防ぐためだと。

「貴方様は悲劇を迎えた者の全てに、分け隔てなくその手を差し伸べる必要があります。余計な先入観や遠慮は必要ありません。そこでご注意がひとつ。それは、冷静になる事です」

「……」

 ジェノサイドは黙って皆神の言葉を聞く。まるで軽い説教をされているような、普段の自分の身の振り方に問題があるから言われているような気持ちになってくるが、それは彼の考えすぎであった。

「彼等も貴方様と同じく、仲間を……誰かをきっと亡くされています。人によっては感情的になったり罵倒されたりもするでしょうが、決して冷静さを失わない事です。それさえ守っていただければ、きっと成されるでしょう」



「冷静を保ち続けて説得する……。その相手が過去に戦った相手かもしれない? 難易度高すぎだろバカヤロー。挑むってレベルじゃねぇぞオイ」

 一人で愚痴を吐きながらジェノサイドは大山を後にした。
皆神の笏に書かれた情報は別の形で控えた。流石にそれを持って出歩く訳にもいかないのと、持ち出していいかどうかを尋ねた際に珍しく皆神が困った顔をしたためだ。

「かつての敵ねぇ……。こうなる事を初めから狙っていたんじゃねぇのか、あの野郎」

 既にジェノサイドは神奈川から離れ、他県へと移動していた。笏に書かれた住所はとある街の住宅地を示している。その目的地も、その中にポツリと立つ公会堂であった。
小さい建物だった。街の、と言うよりはその地域に住む自治会のための公会堂のようにも見える。鍵は無い。木製の引き戸の扉を躊躇なく開いたジェノサイドは、そこに五人ほどの人の姿を確認した。

「……よう。まさかこんな形でもう一度会うことになるとはな」

 その中でジェノサイドが知っている人間は一人しか居なかった。嘗て戦った経験がある。あまりにも前の話だと忘れていたかもしれないが、比較的最近であったこと、その戦い方が特徴的であったために忘れずにいたようだ。

「少し前に俺と戦ったよな? 少なくともお前は俺を忘れてはいないはずだ。あの時戦った人間が俺じゃなかったら、お前は死んでいたかもしれないからな」

 男はジェノサイドを鋭く睨んだ。
元々人相が悪そうなのも相まって、凶悪な表情を見せつけている。周囲の取り巻きはジェノサイドの突然の来訪に戸惑っているようだ。

「"フェアリーテイル"のルーク。お前に用があって来た。少し俺と話をしないか?」

 数ヶ月前の話だ。ジェノサイドがなばり洋平ようへいという名で通っている大学構内にて、ジェノサイド打倒を叫んだ、フェアリータイプのポケモンを好んで使う深部ディープ集団サイドの世界に生きる男と戦った。そんな男は今、少しやつれた様子でそこに居る。

「……ジェノサイドか」

 ルークは彼を暫く睨み、憎悪に似た感情をこれでもかとぶつけると同性の顔をまじまじと見つめることに一種の気持ち悪さを感じたからか目を逸らしそっぽを向く。

「テメェに負け、全てを失った敗北者に何の用だ?」

 どこか投げやりだった。状況が違うとはいえ、あの頃魅せていたSランクという格上の人間相手にも堂々と、そして何処か見下していたような態度はまるで感じない。その顔からはやつれと疲れが見える。従えている仲間も五人だけと考えると、彼も五百城の餌食に遭ったようだった。

「最近どうだったかを知りたかった。その返答次第では……答えも変わってくるかもしれないしな」

「そうか、だったら特にねぇよ。ねぇから死ね」

 この間もルークはこちらを見ようともしなかった。机に肘をついて寄りかかっている。
無関心を装っているのか、本当に無関心なのかジェノサイドには分からない。
だが、五百城と戦うためには絶対に必要な人材だ。

「なぁ、お前……五百城渡という男を知っているか?」

 その瞬間。公会堂の空気が変わった。
自分以外の人間全員が確かに驚愕していた。
ルークも例外ではなかったが、すぐに平静を取り戻して元の表情に戻る。
それを見て、ルークの態度は装っているだけだとジェノサイドはこの時判断出来た。

「最近、深部ディープ集団サイドの界隈でコイツが結構暴れているらしい。……いや、"らしい"って言い方はダメだな。俺も当事者となってしまった」

 誰かが当事者、と考えるように小さく呟いた。少しづつだが彼らの関心を引いているのは確かのようだ。

「五百城渡。コイツは結社の人間というステータスを利用して無茶な要求を俺らにしてくる。組織を無理矢理解散させたり、拒否すれば全員殺されたり……とかな。俺の元にもその影響がやって来た」

「まさかお前……ジェノサイド解散を命じられたのか!?」

「いや、流石にそこまでは無い。この世界において俺はバランサーらしくてな。無くてはならない存在だと言うのはバカな五百城も知っているようだった」

 一瞬だけ素が出たルークはジェノサイドの顔を見たが、すぐにまた目を逸らした。ここまで来るとわざとらしい態度だと言うのが明白である。

「話が見えねぇな。お前は五百城に何をされて、巡り巡ってここまてやって来たのか……。冷やかしならいらねぇよ。死ぬほどイラつくから帰るか死ぬかしろ」

「まぁ聞けって。二週間ぐらい前に、五百城に狙われているから助けて欲しいと保護を求めて来た深部ディープ集団サイドの別組織の人間が俺の元にやって来た。結局俺はそいつらを助ける事にしたんだが、それがきっかけとして俺は五百城と直接衝突する事になっちまってな」

「結社の人間とやり合ってんのかよ……」

 ルークではない、別の誰かが呻くように発した。自分たちでは考えられない。そう言いたそうであった。

「それはオマケだ。結果だけ言うと、そいつは昨日死んだ。俺のミスとはいえ、五百城によって俺の仲間が殺された……」

「そぉかよ」

「それとは別でここだけの話、別の議員から五百城暗殺の依頼もされた」

「はぁ? 何だそりゃ」

 ジェノサイドがやって来てから世界が一回り二回り違うような話が駆け巡る。そのせいでルークは半ば呆れ始めた。同時に理解した。自分は無謀にもこのような人間に挑んでいたのか、と。

「お前に知っていて欲しいのは、意外にもこの世には五百城が死ぬ事を望んでいる人間、風潮が広がっている反面、個々の力ではどうしようも出来ない現状であるということだ」

「お前、あれか。この俺に……」

「ルーク。俺の調べでは、お前も五百城の被害者の一人だろ。少なくとも今のお前はAランクって言う規模を誇っているようには見えない」

 話そうとしたところを遮られ、しかも好き勝手に言われた気がしてルークはジェノサイドに聞こえるように大きく舌打ちをする。
そんなルークの様子を見て仲間の一人が叫んだ。

「ジェノサイド……てめぇもう黙ってろ。それ以上喋んな」

「分かってるさ。俺は深くは突っ込まない。俺はただ今後の提案と報告に来ただけで……」

「何人だ」

 今度はルークがジェノサイドの言葉を遮る。狭い空間にルークの叫びが響いた。

「何が……だ」

「お前は何人仲間を殺されたよ、ジェノサイド」

「一人。よりにもよって、直接俺にコンタクト取ってきた奴がな。有能だっただけに残念だった」

「それだけかよ。流石は最強だな。……俺のとこは何人死んだと思う? 二十人だ。笑っちまうだろ。俺は仲間を二十人も殺されたんだ。殺させたんだぜ」

 予想以上の数だった。
ルークは決して実力が低い人間では無い。それは直接戦ったジェノサイドが知っている。それだけに、犠牲者の大きさを知ってジェノサイドは絶句した。

「その中には俺にとって大切な奴も居たさ。だがあの野郎、俺が少し外に出ていると知って襲撃に来たんだ。でも、少しは抵抗したんだろうな。ソイツは頭ぶち抜かれて死んだ。そこまでするかって笑っちまいそうになったよ。ホント、この世界ってクソだよな」

「なぁ、ルーク……」

「テメェの言いたい事は分かるぜ。五百城に仲間殺された奴集めて敵討ちしようってんだろ。テメェに似合わず組織の枠取っぱらってよぉ。だが俺はそれには応じねぇ。拒否する」

「……理由は?」

「まずテメェが気に食わねぇ。テメェが一人で五百城殺すってんなら少しは見直すかもしれねぇが、テメェの下について五百城殺せって言われるくらいなら死んだ方がマシだね。テメェに負けたせいで俺の運命が狂わされた訳だしな」

 それはお前が勝手に挑んできたせいだ、と反論したくなった気持ちを必死に抑えながらジェノサイドは黙ってそれを聞いていた。ズボンのポケットの中で強く握られた拳が震えている。

「それともう一つ。俺たちを直接管理している結社に挑むとかアホかよ? テメェどれだけ頭おかしい事言ってるのか……その自覚はあるんだろうな? 荒唐無稽なんてレベルじゃねぇんだぞ」

「それは……分かっている。だが幸運な事に結社内にも五百城アンチはそれなりに居る。俺はソイツを味方にしている」

「ソイツが裏切らないという確証はあんのか? 俺がテメェと同じ立場だったら、結社の人間ってだけで信じるに値しない人間だと見るけどな」

 多くの仲間を失った男の言葉としては間違っていなかった。事実、ジェノサイドも神々廻ししばまことと初めて会った際は終始警戒していた。今となっては少し信用し過ぎていたかもしれない。
だが、そんなルークに対し「神々廻は悪い奴ではない」なんて口が裂けても言えない。
ジェノサイドはまたも黙ってしまう。

「……だとしても、俺は本気だ。本気で五百城を殺すと決めた」

「お前にしては珍しい決意表明だな」

「これ以上世界が混乱してほしくねぇしな。それに、俺は……」

 この時。ジェノサイドはレイジを失ったミナミの顔と、嘗て自分が経験した耐え難い記憶とが思い起こされ、重なった。途端に胸が苦しくなる。

「俺は……これ以上悲劇を生み出したくない。止めたいんだ」

「あっ、そう。それだけか」

「だが俺一人が立ち上がったところで、何も果たせない。敵は権力そのものだ」

「最強の名が泣くな。哀れだ」

「だから俺は俺が出来る事をやるまでだ。俺には金がある。協力してくれたら報酬を出す。なぁ、ルーク。共に協力して、共に戦ってくれないか? 俺たちで権力の暴走は許されないとハッキリと主張するんだ」

 己の非力さとは裏腹に、その声には力が篭っていた。

Re: Re:Re:ポケットモンスター REALIZE ( No.45 )
日時: 2024/02/10 23:19
名前: ガオケレナ ◆DsVre1ex/o (ID: wUAwUAbM)


 ジェノサイドはそう言いながら一枚の紙を取り出した。その紙には文字がズラズラと並べられているが、どうやら五百城いおきわたるを倒すための決意表明などが書かれている。だが、注目すべきは一番下の欄だった。そこには「協力者には金一封を与える」と書かれている。

「マジなのか、お前は」

「じゃなかったら……俺はここには来ない」

 一連のやり取りを見て周囲に居たルークの仲間も寄って来てはその紙を眺める。

「この……金一封てのは何だ? 協力者? お前、まさか一人ひとりに金配るつもりか?」

 誰もが気になる疑問にルークの仲間の内の一人が尋ねる。それにジェノサイドは躊躇う事無くスラスラと、まるでカンニングペーパーを頭の中に叩き込んだかのような、予定されていた文句を一言一句間違える隙間すら無いように綺麗に答える。

「あぁ。一人ひとりに与えよう。気になるのはそこか?」

「いくらだ」

「金額の事だろう? そうだな……。逆に幾ら欲しい? 俺としてはこの戦いの参加者一人ひとりに三十万出すつもりではいるのだが」

「なんっ……、テメェいい加減な事言って俺達を騙すのも大概にしろよ!」

 ルークは怒鳴りながら椅子から立ち上がった。元々ジェノサイドとは敵同士の間柄だ。最初から良いイメージは無い。そんな人間が、まるで適当な調子で、更に金で釣るような言動を放った事に強い怒りを覚えたのだった。

「一人に三十万だぁ? "ひとつの組織に"、ならまだ分かる。流石にこの世界最強のテメェでも……クソふざけた事ぬかすのは辞めろよな。自分の財力ひけらかしてんのか? それとも金で人間釣って使い捨てようってか? いい加減死ねよテメェも……。もうテメェの顔も見たくねぇし声も聞きたくねぇ。とっとと消えろ」

「此処に居るのがお前も含めて五人……。となると百五十万か。問題ないな。いいよ、出すぞ。それくらい」

「テメェ今人の話聞いてたのかよ……」

 怒鳴りながら冷静さを取り戻したのか、苛つきながら再び椅子に座るルークとは裏腹に冷静に、そしてどこか余裕さえも浮かべているジェノサイドはまたも躊躇いを見せずにスラスラと大きな額を提示してみせる。
それでも彼は信用していないようで、見かねたジェノサイドは上着の胸ポケットから小さい紙切れを出すとテーブルに置いた。

「約束手形……なんてカッコつけた真似は出来ねぇが、その代わりとして受け取ってくれ。俺の書名、判子、そして金額。全て事実だけを述べている」

 丁寧に「一人につき三十万円也」と書かれている。それをルークはおそるおそる警戒しながら手に取った。

「実はイリュージョンで書いた偽物でした、なんてオチだろどうせ」

「んな訳ないだろ。何度も言わせんな、俺は本気だ。本気で五百城を殺しに向かう。そのためにお前たちの力が、協力が必要なだけなんだ。あ、あと答えなんだが別に今言わなくていい。その紙の裏に、ある場所の住所を載せておいた。……水曜だ。来週の水曜日。四日後を決行日とする。その時にその指定の場所に来てくれ。待ってるから」

 渡したい物は渡した。言いたいことも言った。もう用はない。ジェノサイドは無防備にも、嘗て戦った人間を前にして背を向ける。

「待てよ、テメェ誰に対してモノ言ってんのか……分かってんだろうな?」

 ルークは最後まで悪態をつく。分かっているに決まっているジェノサイドはあえて無言を貫く。

「テメェを殺しに掛かろうとした……敵だぞ? そんなのを前に金寄越すなんて言ってみろ。この場で殺されないとか思わねぇのかよ?」

 ジェノサイドはその声を聞いてその主に対し情けなさを覚えた。これほどの心の弱い人間が無謀にも自分に挑んできたのか、といつかの勇姿と照らし合わせて強いギャップを感じつつも、すぐにそれを自身の頭の中で否定した。
違う。彼は弱い人間ではない。彼を弱くさせたのは目の前で仲間を惨殺した五百城なのだと。
直後にその感情は哀れみへと変わる。

「思わねぇな。俺もお前も……五百城に仲間を殺された被害者だろ。それに、これから戦う"仲間"を疑う訳にもいかねぇだろ。リーダー失格だそんなの」

 そう言ってジェノサイドはルークらが居た公会堂を去る。無防備を晒したにも関わらず攻撃をして来なかったところを見るに、若干の手応えを感じた。



「疲れたぁー。もう今日は動きたくねぇ……」

 自ら務める組織の基地に戻ったのは日が暮れたあとだった。
あれから彼は何ヶ所か巡り、同じように条件を提示してスカウトした。その中にはルークと同様以前戦った者も居れば、全く面識のない人間も居た。

「リーダー。今日は朝から出掛けていたようですが……どちらまで?」

「ん、まぁ色々とな」

 広間にある大きなソファーに倒れ込んで半分眠くなりつつあったジェノサイドに、仲間のハヤテが心配そうに声を掛ける。ジェノサイドは彼を含め仲間の誰にも今回の予定は告げていない。

「色々って……。あまり派手に動くのは辞めてくださいよ? リーダーはその……結社の人間に目を付けられてしまったのですから。それに、その……レイジさんが亡くなった後でもありますし……」

「分かってるよーだ」

 わざとらしいとはっきりと分かるくらいに頭を搔く仕草をしつつソファーから派手に起き上がっては広間の隅に置かれている小さい冷蔵庫の方まで歩く。それを空けてジュースの入ったペットボトルをひとつ掴んだ。そのペットボトルには律儀に"リーダー専用"と書かれた紙が貼られている。その紙を剥がし、大きい部屋の割には小さいせいですぐに溢れてしまうというクレームをよく聞くゴミ箱に放り投げてはそそくさと広間から出て行った。

「今日だけで多分七箇所くらいは回った……。水曜まで時間はあるし、今日会った奴らが適当に話広めてくれるだろうから明日はそこまで頑張らなくていいかな。あとは無事集まってくれるか、だな。それとも明日はもっと工夫してみようか? 前金渡すみたいな感じで」

 廊下で独り言を呟いていたジェノサイドは通り過ぎようとした部屋の扉が突然開いた事で立ち止まる。そこからミナミが現れたのを見た。
昨日の出来事が余程ショックだったのだろうか既に病人のようにやつれ、完全に元気を無くした姿をしている。
彼女は元々短髪のためそれ程でもないが、整えていないのが丸分かりだった。大きな寝癖が付いているかのように乱れている。

「よう、ミナミ」

「あっ……レンか……」

 か細い声だった。初対面の頃、彼女の声は小さかった記憶があったが、それよりも小さい。その声色に生気が篭っていないようだった。聴くだけで不安になってくる。

「飯ちゃんと食べてるか……? いや、お前の様子が見られただけでも十分だよ」

 それだけ言うと立ち去ろうとする。顔には出さないがこの時ジェノサイドは緊張していた。こんな状況でどんな風に声をかけていいのか、分からないからだ。
これまでに親しい人を失った仲間は数多く居た。そんな場面には何度か出くわした。だが、それらは皆同性の人間であった。それなりに励ましさえすれば良かったのだが、今回はただでさえ慣れない女性が相手である。しかも、常に一緒にいた仲間がその対象だ。迂闊な事は言えない。
非情にも見えたかもしれないが、こうするしかないと思っての行動のつもりだった。

「あっ、そうだ。今日何人かに声を掛けてきたよ。上手く行けば全員誘いに乗ってくれるかもしれない」

「誘……い?」

「ミナミ、俺はやるぞ。何人か集めて俺は……五百城を殺す。レイジの仇をこの手で取ってやる」

 ミナミの前を通り過ぎ、背中を見せつつジェノサイドは言った。彼女の顔を見ようとは思わなかった。いや、見られない。こんな時に見せる彼女の顔がどんなものか、想像したくなかった。その表情によっては自分の決意が揺らぐかもしれないと危機感を覚えたためだ。

「そう……。あんたは、行くんだね。戦うんだね……」

「あぁ。決めた。たとえ誰に止められようとも、俺は進むと決めた。だからお前も止めないでくれ」

 自分の背後の空気が揺らいだ。ミナミが手を挙げ、こちらに近付いているのかもしれないと肌で感じる。
それに応じてジェノサイドも前に進む。今は彼女を突き放すと決めたのだ。大事な仲間を失ったとしても、特別扱いだとか、特別な感情を得ようとか、そういう思いは彼には無かった。
ジェノサイドの体に触れようとしていたミナミの手は宙に漂う。

「もうウチは……これ以上何も失いたくない」

 彼に触れたかったミナミは何かしらを察したのか、そこで諦める。代わりに、声を振り絞る。

「俺もだ」

「死なないでね……?」

「誰も死なせねぇよ」

 その声を聞いてジェノサイドは静かに歩き、自分の部屋へと向かった。彼女の最後の声を聞いて胸が痛くなりそうだった。明らかな涙声だった。意識せずともペットボトルを握っていた手の力が強まる。ミシミシと鳴った音を聞き、ジェノサイドは我に返った。



「今日も居ない!?」

 寡黙で大人しい性格の佐伯さえき慎司しんじは珍しく驚く仕草を見せた。
それを見た、彼の話し相手である樋端といばなかける五郎川ごろがわひろしは若干苦笑いした。樋端に至っては肩を震わせている。

 水曜日の正午。彼らは今大学に居る。揃いも揃って友人が少ないためサークルの部室へとやって来た次第だ。

「レンって先週の金曜も、一昨日の月曜も休んでいなかった?」

「あぁ。火曜には俺と同じ講義が二つあるんだが、その内の午前のやつには来なかったな。午後は一緒に受けたけど」

 樋端となばり洋平ようへいは同じ学部に所属している。大学二年生ともなると前年と比べて自由度は上がるものの、まだまだ講義が一緒になる機会は多い。樋端はそれだけ言うとコンビニで買ってきた菓子パンを貪り食う。

「ってかよぉ、レンの奴って単位大丈夫なのか? あいつ確か今年になっても毎日来てんだろ? それってさ、単位に余裕があんま無いからって事だよな。それなのにこんなに休んでて大丈夫なんか?」

 五郎川の問いに佐伯は深く唸る。

「どう……なんだろうね。正直こっちは分からないな。昨日のサークルで見た感じ元気そうではあったけど……」

「アイツ適当に講義休みつつサークルにはちゃっかり来るのな」

 五郎川はあまりの可笑しさにニヤニヤしながらサラダを頬張る。

 彼等の所属するサークルは毎週月曜、火曜、木曜の放課後の三日間だけ活動している。活動と言っても彼等のサークルは旅行サークルなので連休や特別な用事を前に控えている時意外は適当に過ごしているだけの緩い空間に過ぎない。

「佐伯から見てどんな感じだった?」

「うーん……。特に何とも。いつも通りには見えたけどなぁ。あ、でもメガストーンがあと一個でコンプリートするみたいな事は言ってたかな。だからこれまでみたいに無理して時間作らなくて済むとも言ってたし……」

「それだったらさ、余計に今日休んでる意味が分かんねぇな。俺ちょっとノート見せてもらいたかったのになぁ。しょーがねぇけどさー」

 先週の金曜日という特殊な場所が絡む時以外で隠はサークルや空き時間を投げてメガストーンの探索に走る事はあっても、これまでに講義を投げることまではしなかった。
メガストーン残り一個という状況で彼の取った行動の意味を、彼等は理解出来ずにいた。

「今のレンに、メガストーンを集める事以上に必死になれる事ってあるのかなぁ?」

「ぶっちゃけ佐伯もそう思うよなぁ」

 樋端はそう言って相槌を打つ。
 平和な世界の中で平和な会話を繰り広げる彼等には到底想像出来ない世界がその裏側にはあった。結局のところ、隠と彼等とでは住む世界が違うのだ。

 同時刻。
軽く眠っていたジェノサイドは目を開けた。
早朝に一度目が覚め、そこから意識があったためか浅い眠りを続けていたお陰で気分はとても晴れやかだった。

「そろそろ……時間かな」

 時計を見ずに感覚だけを頼りにジェノサイドは時間を読む。ある程度時刻を予想したのちにスマホを見た。時計のズレはほとんど無かった。二分ほど違っていた程度だ。

ジェノサイドは起き上がって普段の服に着替えると広間へと移動する。そこへハヤテとケンゾウの二人に声を掛けた。

「お前ら、今すぐ俺について来てくれ。ちょっと寄りたい場所がある」

 これから何が起きるのか全く知らされていない二人は呑気にオメガルビーとアルファサファイアで遊んでいる。そこにジェノサイドが横槍を入れる形となった。しかし、リーダーの命令である。彼らは文句のひとつも言わずにそれに従う。

「どうかされましたか?」

「お前ら、今から南平みなみだいらに向かうぞ」

 その地名を聴いた二人はギョッとして目を見合せた。
その名前には馴染みがある。嘗て基地を置いていた街の名前だ。今居る八王子はちおうじから見て隣町に位置する。

「り、リーダー……なんでそんな所へ……?」

 ケンゾウが弱々しく尋ねる。彼にとっても、彼だけでなくとも昔からいるメンバーにとって"そこ"は苦い思い出の地だからだ。

「それは着いてから話す。今は黙ってついて来い。だが、いいか? 絶対にビビるなよ」

 ジェノサイドが放った鋭い視線に、二人は息を呑んだ。


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