二次創作小説(紙ほか)
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- 東方幻収録[Lobotomy corporation]
- 日時: 2023/11/03 09:54
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
この物語は[東方Project]と[Lobotomy Corporation]のクロスオーバー小説です。
※注意
・Lobotomy Corporationのネタバレを含みます。
・微グロ描写あり
・オリキャラは登場しません
・独自解釈あり
・死ネタ
以上です。楽しんで!
-プロローグ-
かつて、幻想体を収容し、そこから得られる物質-エンケファリン-を利用したエネルギー会社。しかし、Aが目指した-光の種-シナリオを起こす事は無かった。TimeTrack社の時間遡行技術が不具合を起こしてしまった。その中で大量の幻想体が収容違反。ループも出来ないまま、Lobotomy社は脱走した幻想体達によって地上に出る事無く壊滅した。誰も知らないまま、地下奥深くに封じこまれた一部の幻想体達は、しばらくして外に出たいと願い始めた。そして、何百年も経ち、完全に忘れ去られた幻想体達はいつしか、自分達のいた世界とは違う別の世界に生まれていた。幻想体達が見つけたのは忘れられた者達が辿り着く-幻想郷-
幻想体達は自らの存在意義、欲望、安息を求めて、幻想郷に出現し始める。
- Re: 東方幻収録 27 ( No.27 )
- 日時: 2024/01/10 20:54
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-縦穴-
魔理沙と早苗が洞窟の中を進んでいると、キスメとヤマメが惚けた顔をして天井を眺めていた。
キスメ「あ~...魔理沙だ。」
キスメは気だるそうに二人に顔を向けて呟いた。
魔理沙「どうしたんだお前。元気無いな。」
ヤマメ「そろそろよ...あの方が...復活するわ!」
魔理沙「復活?」
キスメ「そうよ。あの方が私達...いや、幻想郷を救ってくれるわ!」
早苗「例の宗教ですか...魔理沙さん!急ぎましょう!」
早苗は魔理沙を引っ張って、先を急いだ。橋の上にいるパルスィもヤマメ達のように突っ立っていた。既に地獄の殆どの妖怪達が洗脳されていたようだった。途中で会った数人の鬼達も灰色の包帯を体に巻いて、狂ったように天を仰いでいた。
-旧都-
旧都の中央に到着すると、萃香と勇儀が待っていた。
魔理沙「勇儀達は大丈夫か!?」
勇儀「おお、良く来たな。お前らもあの宗教目当てだろ?」
魔理沙「無事で良かった...」
萃香「あんな胡散臭い宗教に入るわけないだろう?それはさておき...これで六人揃ったな。」
早苗「六人?」
勇儀「これからその宗教の本拠地に行こうと思ってな。」
その時、勇儀達の後ろから聖と風雲僧が歩いてきた。
魔理沙「聖も来てたのか?」
聖「そうよ。寺の信者達が数人消えてしまって...早苗の方も同じ理由なのね。」
早苗「はい...」
聖「良かったわ。風雲僧はその宗教について知ってるみたいなのよ。」
数珠を鳴らし、風雲僧が語り始めた。
風雲僧「拙僧があのlobotomy社と言う名の組織...あの組織でも、その宗教による洗脳が起こっていた...」
懐かしむ様に腕を組み、魔理沙達に告げる。
風雲僧「奴らの信仰対象は...幻想体だ。」
魔理沙「やっぱりか...」
風雲僧「その幻想体もまた、ALEPHクラスに分類されていた筈。名は確か......」
___蒼星。
早苗「青い星...星が信仰対象なんですか?」
風雲僧「星と言っても...像に近い。幻想郷を知った拙僧から見れば、ただの偶像崇拝に過ぎん。」
魔理沙「まぁ、ここは神も妖怪もいて当たり前だからな。」
早苗「幻想郷では常識に捕らわれてはいけませんよ!」
風雲僧「そうだな...(拙僧も怪物だが)」
勇儀「お喋りはそれくらいにしないか?」
魔理沙「あぁ、ごめん。どこへ行けば良いんだ?」
萃香「地霊殿さ。そこの主も既に洗脳されてるだろうね。」
こうして勇儀、萃香、聖、風雲僧、早苗、魔理沙の六人は、洗脳された地獄の妖怪達や人間を救うため、地霊殿へと乗り込むのであった。
続く...
- Re: 東方幻収録 28 ( No.28 )
- 日時: 2024/01/11 22:52
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
勇儀、萃香、聖、風雲僧、早苗、魔理沙の六人は、洗脳された地獄の妖怪達や人間を救うため、地霊殿へと乗り込むのであった。
-地霊殿-
早苗「皆さん...何かいますよ!」
地霊殿に着いたものの、美女と野獣が屋敷に繋がる門の前で通せんぼしていた。
勇儀「ここは私に任せな。」
そう言って勇儀が殴りかかろうとした瞬間、風雲僧が割って入る。
勇儀「おい、攻撃できないだろ?」
怪訝な顔を浮かべるが、風雲僧は構う事無く勇儀を美女と野獣から突き放した。
風雲僧「やめておけ...取り返しのつかない事になるぞ。」
魔理沙「攻撃したら何か起こるのか?」
風雲僧「あやつを殺せば、殺した者があの怪物に変貌するのだ。あの怪物も元人間だろう。」
勇儀「妙な奴だな。」
美女と野獣は幸い、こちらを攻撃する気は無いようだった。横をそっと通り抜けて、門をくぐった。屋敷の扉には鍵がかかっていたが、勇儀が無理矢理こじ開けて侵入した。動物達も大量に住んでいた筈の屋敷内には犬一匹もいなくなってしまった。代わりに残ったのは、蒼星の狂信者と幻想体であった。
蒼い星の信徒A「ようやく、あのお方が救済をもたらしてくれる...!」
蒼い星の信徒B「早く...早く一つになり...おい!侵入者が居るぞ!」
魔理沙「今更遅いぜ!」
魔理沙は小さな星型弾をぶつけて信徒を気絶させた。信徒達は皆、灰色の布を身に纏っていた。魔理沙が倒れた信徒に近づくと、一人が目を覚ました。
蒼い星の信徒B「お前もあのお方と一緒になりたいだろう?」
魔理沙「げっ...近づくな!」
八卦炉で頭を叩いてもう一度気絶させ、奥へ進んだ。長い廊下を走っていると、途中で路空と猫燐に遭遇した。二人も洗脳されているようだった。
猫燐「あ、魔理沙達も信者なの?」
魔理沙「お前らもか...」
猫燐「私の集めた死体をあのお方に捧げようと思っていたのよ。アンタ達も肉塊にしてやるわ...」
路空「私も戦う〜!」
魔理沙「こっちも強行手段を使うまでだな...」
風雲僧「ふむ...皆の者、拙僧に任せて下さい。」
そういって、風雲僧が猫燐に立ちはだかった。
風雲僧「お嬢さん...悪いが全力で行かせてもらう。」
風雲僧は頭部に6つの遊環が付いた、錫杖型をした自らのEGO-阿弥陀-を手に、猫燐に接近する。
猫燐「怨霊達〜!あの僧を殺しなさい!」
猫燐の声と共に、背後から無数の紅い人魂の様なものが出現し、風雲僧へ突進していった。
魔理沙「風雲僧!」
風雲僧「怨霊とは...拙僧も初めて見たな。煩悩で汚れた心の垢を取り除けば、誰でも仏になれる。その考えは間違っていなかった!」
風雲僧は軽々と怨霊を避けて、猫燐の目の前まで接近した。
猫燐「!?」
その瞬間、風雲僧が炎で包まれ、餓鬼へと変貌した。風雲僧は猫燐の片足に喰らいつき、引き千切った。あまりの痛さに猫燐は発狂してしまった。
猫燐「ああぁぁああぁあ痛いぃぃいい!!」
風雲僧「貴様を食えば...どれだけ仏舎利が出るかのう?」
風雲僧はすぐに姿を戻して言い放った。しばらくして猫燐は正気に戻り、聖の回復魔法によって足を治してもらった。
猫燐「まんまとやられたよ...正気に戻してくれてありがとう。」
魔理沙「別に良いさ。お空は戦わないのか?」
路空「私、宗教とか良く分かんないんだよね〜。猫燐に従ってただけだし。」
早苗「洗脳されて無かったんですね...」
勇儀「まぁ良い...お前らはここで待ってろ。」
猫燐「そうするよ。あと、元凶は奥の大広間にいるよ。気をつけてね。」
魔理沙「分かった。皆、急ぐぜ!」
猫燐は路空とその場に残って、足を治療するのであった。
-大広間-
大きなステンドグラスが中を照らす巨大な部屋には、地霊殿の主-古明地さとり-が立っていた。その周りには蒼星の信徒と化した大勢の人間達が集まっていた。
さとり「こいしは私がこの宗教に入ってから帰って来ない...あのお方と会えるチャンスを逃すなんて愚かね。」
聖「こいしは私の寺で保護しています。貴方も助けて見せますよ。」
さとり「あのお方はこの幻想郷のどの神よりも偉大なのよ!私も早く一つになりたいわ...」
魔理沙「完全に堕ちてやがる...」
蒼い星の信徒C「さとり様!あのお方が来ますよ!」
さとり「なんですって!?」
そう言った瞬間、狂信者達とさとりは魔理沙達を無視して後ろを向いた。
魔理沙「あれが...蒼星?」
大広間の奥にその姿が見えた。銀色の台座に堂々と鎮座するハートの様なオブジェクトに狂信者達は必死に手を仰いでいた。
蒼い星の信徒D「あああ...早く一つになりたい!」
蒼い星の信徒達は狂った様にその場で震えたり、互いの[CENSORED]を[CENSORED]していた。その光景に魔理沙は吐き気を覚えた。
さとり「読めるわ...あのお方は...私達を本当に救済してくれると言っているわ!」
蒼い星の信徒C「あぁぁあぁあああ!救世主様ぁぁぁ...」
風雲僧「汚らしい邪教が。石像はただの分霊のような物...聖殿、この屋敷を燃やしても宜しいですか?」
聖「それはやりすぎね...」
そう話していた瞬間、ハート型の石像は蒼く光った。次第に点滅は早くなり、台座から石像が浮き始めた。
魔理沙「う...浮き始めたぞ!」
それを見た風雲僧は、何かを悟ったかの様に慌て始めた。
風雲僧「勇儀殿!萃香殿!あの信者達を外に避難させてくれ!」
勇儀「何をいきなり...」
風雲僧「拙僧が未熟だった...あの石像は分霊では無い!正真正銘...蒼星そのものだった!」
その言葉に呼応する様に石像が辺りを覆い尽くす程の眩い光を照らした。
萃香「こりゃまずいね...一旦退却とするか。」
萃香と勇儀が同時に屋敷の壁に拳を繰り出した。破壊した壁から狂信者とさとり達を外に押し出した。
蒼い星の信徒C「フフフ...もう遅い!あのお方が迎えに来て下さった!」
さとり「音が聞こえる...あれほど探し求めてた懐かしいこの響きが感じられるわ!」
蒼い星の信徒D「皆...ありがとう!
蒼い星の信徒E「これで帰れるぞ!」
さとり「...星となって...また会いましょう」
石像が真っ二つに割れて中から出てきたのは、宇宙の様に暗く、吸い込まれる様な穴を持つ星だった。それを見た狂信者やさとり達の目には蒼い星が浮かび、その虚空へ吸い込まれていった。
風雲僧「手遅れだったか...」
殉教者が吸い込まれる度に星は鼓動する。失った物を取り戻すかのように、次々と星の周りに足が出現する。その場にいた狂信者達が全て吸い込まれ、-蒼星-が姿を現した。殉教者達の灰色に変色した無数の足が蒼く光る黒い星に融合し、偉大にも不気味にも見える蒼星が地獄に今、長い年月を経て再臨した。
蒼星____危険度ALEPH。あの星は全ての者が帰るべき...届かねばならぬ場所なのか?
魔理沙「あいつが神であってたまるか!袿姫も認める筈の無い偶像だぜ!」
魔理沙が八卦炉を蒼星に構えようとした所で突然、早苗が寄りかかって来た。
魔理沙「早苗?」
早苗「あれ...意識が...朦朧と...」
風雲僧「守矢の巫女は現人神でもある...信仰を奪う奴の精神汚染に影響を受けやすいのかもしれん...」
魔理沙「畜生...萃香と勇儀!早苗を連れて逃げてくれ!」
勇儀「私達は戦えるぞ!?」
魔理沙「決めた。あの偶像は私が直々に破壊してやる!」
萃香「変に気合入れて...仕方ない...行くぞ。」
勇儀と萃香は早苗を連れて、その場から去っていった。
風雲僧「白黒の魔法使い...何を考えている!?」
魔理沙「私だって神達と戦ってきたんだ。楽勝だぜ!」
風雲僧「お前の言う神とは違う存在だ!幻想郷全てが奴の攻撃範囲だぞ!」
魔理沙「......もうアリスだっていない。妖怪も人間も死ぬ事に変わりは無いぜ!」
そう言うと、いつの間にか魔理沙は白黒のジャケットを羽織っていた。背中には包帯が巻き付いた大剣とカンテラの形をしたハンマーを背負い、腰には赤と白を基調にした一丁のピストルをかけて、首には小さなペンダントをしていた。
風雲僧「それは...」
魔理沙「私の鳥達から貰ったEGOだぜ。」
魔理沙は大剣-ジャスティティア-を蒼星に向けて叫んだ。
魔理沙「人間様を舐めるなよ!私の誇りにかけて...幻想郷の皆を守る。無関係な人妖を殺してきた罪は重いぜ?蒼星!」
その声に応える様に蒼星が蒼く光り、眩い波動を放った。
聖「人も妖怪も神も同じ...ですが、貴方は見過ごせませんね。幻想郷の為にも...私も戦います。」
魔理沙と風雲僧、自分に身体強化魔法を唱えた。これで蒼星の波動は大幅に軽減されただろう。
魔理沙「喰らえ!」
魔理沙は波動攻撃に怯む事無く突き進み、-ジャスティティア-で蒼星を切りつけた。それと同時に風雲僧が餓鬼に変身し、足を爪で引き裂き、星に噛みついた。
聖「隙あり!《超人・聖白蓮》!」
蒼星が一瞬傾いた所で聖が物凄い速度で接近し、超威力の拳を叩きつけた。すると、足が何本か石の様に砕け散った。確実にダメージが蓄積していた。
魔理沙「まだ攻撃は終わらないぜ!」
数本の足を-くちばし-で撃ち抜き、-ランプ-で本体を叩き込む。蒼星は魔理沙達の追撃によって、次々に足を破壊されていき、遂に蒼星本体のみが残った。足を生やす事が出来ないのか、蒼星は魔理沙達から逃げ出そうとする。
魔理沙「逃さない!《恋符・マスタースパーク》!」
しかし、間髪入れずに繰り出された魔理沙のマスタースパークによって、蒼星がビームに覆われた。ビームの直撃によって、蒼星にヒビが入った。ヒビはやがて大きくなっていき、蒼星は呆気なく砕けてしまった。もう星の音は聞こえない。
魔理沙「はぁ...はぁ...倒した...ぜ」
魔力も体力も尽きかけた魔理沙はその場に倒れてしまった。風雲僧もWHITEダメージを受け続けた影響で気分が悪いようだ。聖も魔力を使い切ってぐったりとしていた。
紫「あら、元凶が地霊殿だったとはね...」
疲弊した魔理沙達の元に突然、スキマから紫が出てきた。
魔理沙「紫か...元凶なら私が倒したぜ。」
紫「捜索に手を焼いたわ。貴方達が戦い始めた頃に地霊殿一帯を結界で包んだから被害はゼロ...感謝するわ。」
魔理沙「良かった...」
その言葉を最後に、魔理沙は眠りについた。
続く...
- Re: 東方幻収録 29 ( No.29 )
- 日時: 2024/01/12 22:00
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
魔理沙「紫か...元凶なら私が倒したぜ。」
紫「捜索に手を焼いたわ。貴方達が戦い始めた頃に地霊殿一帯を結界で包んだから被害はゼロ...感謝するわ。」
魔理沙「良かった...」
その言葉を最後に、魔理沙は眠りについた。
紫「さてと、結界は解除しておかないと...」
そうして地霊殿の門の前に立つと、紫の施した結界が浮かび上がった。狭間を操作して、結界を解除し、ふと後ろを振り返った。魔理沙と聖はもう回復しているようだった。
風雲僧「貴方は一体?」
紫「会った事は無いわよね。私は八雲紫...この幻想郷を創った妖怪よ。」
風雲僧「そうですか...蒼星の被害は...」
紫「結界で地霊殿は覆っていたわ。被害は殉教者以外無いわ。」
風雲僧「それなら安心だ。」
聖「そろそろ私達は帰ります。」
よろよろと立ち上がった聖を風雲僧が支えた。紫はスキマを出して、二人を命蓮寺まで移動させた。魔理沙も体力の回復で動けるようになったようだ。
魔理沙「聖達は帰ったか?」
紫「私が送っといたわよ。」
魔理沙「そうか。じゃあ私も...」
紫「駄目よ。」
その瞬間、魔理沙の手足にスキマが食い込み、拘束されてしまった。
魔理沙「なっ...何して!」
紫「貴方の戦いを見てたのよ。妙な武器を使ってたわよね...」
そう言って、魔理沙の背中にかけられていたジャスティティアを紫が奪い取った。
魔理沙「返せ!あの鳥達が私に託してくれた武器だ!」
紫「幻想体から抽出した...あるいは授かった武器をEGOと言うらしいわね。」
魔理沙「...ッ!どこでそれを...魔弾の射手は私達にしか話していない筈!」
紫「お迎えよ。幻想体達は別次元から来たもの...そこへ帰すわ。」
魔理沙「待て!あの鳥達は何も悪く...」
紫「個人的に悪いとか良いとか、そういうのは関係無いわ。ただ幻想郷の平和の邪魔になるだけなのよ。幻想体は別の幻想体の出現に関わっているわ。私も見てたのよ?赤ずきんとオオカミの会った瞬間をね。」
魔理沙は必死に藻掻いてみせるが、藻掻けば藻掻く程、拘束は強くなっていった。
紫「別に貴方に恨みは無いわ。でも...このままだと、人間達の感じる妖怪達への恐怖心が幻想体への恐怖心へ変わってしまうわ。幻想体は飛び抜けて私達よりも強い能力を持っているの。」
紫はジャスティティアやランプを手元に出現させたスキマへ放り投げた。
紫「幻想体をいるべき場所に戻しているだけよ。あの死体達の事件のような事が二度と起こらないように...」
そう言って、魔理沙から-くちばし-のペンダントを取った瞬間、紫は背後から殺意を感じ取った。
紫「あれは...?」
紫に飛んできたのは罰鳥であった。罰鳥は紫の手からペンダントを取り返し、胸から大きな嘴を広げてペンダントを飲み込んだ。紫の周りにはいつの間にか、審判鳥と大鳥も集まっていた。そして、鳥達は三匹揃って旧都の方へ飛んでいってしまった。
魔理沙「あいつら一体どうしたんだ?」
紫「...何をするつもりかしら。」
紫がスキマを開けて、旧都の方向へ向かった。
-旧都-
鬼A「そういえば、勇儀さん達はどこ行ったんだ?」
鬼B「地上の人間と用事があるみたいだぜ...って、何だありゃ!?」
旧都の中心に突如、巨大な門-黒い森の入口-が現れた。そこへ三匹の鳥達は向かっていた。
鳥達は失いたくなかった。
幻想郷に辿り着いたばかりの頃、自分達を受け入れてくれた魔理沙を強く慕っていた。かつては守れなかった自分達の住処。今は魔理沙を守る時だと確信していた。
罰鳥は魔理沙を助け、紫に相応の罰を下すため。
大鳥は魔理沙を助け、魔法の森を自らの目で守り通すため。
審判鳥は魔理沙を助け、それを傷つける者達に審判を下すため。
「幻想郷と魔理沙さんはぼくたちだけじゃたすけられない...」
「大丈夫だよ!俺たちが力を合わせれば無敵さ!」
「もっと強くなれる筈だ...大丈夫だ...」
鳥達は昔のように、力を合わせた。
だが、彼らは理解していなかった。魔理沙を守る事にとらわれて、忘れていたのかもしれない。力を合わせた鳥達は、自らの力を抑圧しきれなかったのだ。
グオオォォォオォオォオオオオ!!
黒い森の入口に三匹の鳥が入り、その力は融合した。
罰大審判鳥「ぼく達、俺達、我らが...魔理沙を助ける!」
鬼A「うわぁぁあぁあ!助けてくれえええ!」
その言葉で紫が来たのかと、鳥達は辺りを見回した。しかし、紫の姿はまだ見えない。良く見ると、周りの建物が崩壊していた。住民達は悲鳴を上げて走り回っている。目の前の悲惨な光景と一緒に、鳥達の理性は完全に消えてしまった。
--------
むかしむかし、木々のたくさん生えた温かい森に、3羽の鳥がいました。
鳥たちは森の中で幸せに暮らしていました。
三匹のとある鳥達は自分達の能力で守ろうとしました。
しかし、鳥達の善意は見放されていきました。
三匹は力を合わせて融合し、強力な一匹の鳥へと変貌しました。
--------
かつて、黒い森を襲った怪物...
どこまでも見通せる目を持ち、どんな罪でも裁く事ができ、どんな物でも飲み込める怪物。
「あそこに怪物がいる!この森には怪物が住んでいるんだ!」
鳥達はいつか聞いた言葉を思い出した。しかし、彼らを止められる存在はもういない。
旧都はその名の通り、地獄へと変貌するだろう。
終末が訪れた。
- Re: 東方幻収録 30 ( No.30 )
- 日時: 2024/01/15 21:17
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
罰鳥、大鳥、審判鳥は魔理沙を襲う紫を悪者と認識した。魔理沙を守るために力を合わせた三匹の鳥達は自ら生み出した強大な力を利用出来ず、暴走状態となってしまった。魔理沙を救うという本来の目的を忘れ、怪物は旧都を破壊していた。しかし、怪物は何も考えずに動いているわけではなかった。魔理沙と初めて会った場所である魔法の森へ向かおうとしていたのだ。
どこまでも見通せる目を持ち、どんな罪でも裁く事ができ、どんな物でも飲み込める怪物。
終末鳥は目の前の鬼や妖怪達を押し退けて進んでいた。
貪欲の王「クソッ...私の必殺技が効かない...」
憎しみの女王「あの怪物はALEPHクラス...ここに職員はいないよ?」
絶望の騎士「とにかく皆さんを守る事だけを考えましょう!」
幸い、死者はまだ出ていなかった。終末鳥の通った後は建物が倒壊し、所々危険な場所もあったが、魔法少女達の尽力によって死傷者はゼロであった。
勇儀「はは...私の攻撃も効かないとはな...」
萃香「こりゃあまずいねぇ。」
勇儀は終末鳥に向かって本気で拳を撃ち込んだが、ダメージを受けている様子は無い。終末鳥は何も無かったかの様に進み続けていた。
萃香「狙いは地上...縦穴の方に行くつもりか!」
紫「想定外の事だったわね...」
萃香「紫?...またお前の仕業か?」
紫「あの怪物は魔理沙に執着している小鳥達の姿。幻想体よ。魔理沙に問い詰めていた所を見られていたようね。」
萃香「全く...肝心な所でボロを出すなんて呆れた賢者だ。」
隠岐奈「まぁまぁ良いじゃないか。」
すると、萃香の後ろから扉を開けて、摩多羅隠岐奈が出てきた。
萃香「賢者揃って何してるんだ?都がめちゃくちゃだよ。」
紫「悪いわね。最近は幻想体の侵入を止めるために結界の管理をしていたものだから。」
萃香「殆ど寝てるくせに良く言えたものだ...」
隠岐奈「ともかく、三匹の鳥が合体した姿があの怪物なのか?」
紫「ええ。三匹とも魔法の森で見た事はあるけど、あの姿は初めてよ。」
勇儀「そりゃあ見た事無いだろうな。あの怪物は三匹の鳥達が旧都の真ん中に現れた不気味な門を通った後から出てきたものだ。」
紫「なるほどね...召喚されれば辺り一体を荒れ地へと変える怪物。まるで終末ね。」
隠岐奈「いっその事、終末鳥とでも呼ぼうか。」
終末鳥が旧都を出て、安全を確認した所で紫が目の前にスキマを開けた。
紫「さてと、異変解決は彼女達に任せましょう。」
魔理沙「痛ってえ!人使いが荒いぜ!」
スキマから放り出される様に魔理沙、霊夢、妖夢、咲夜、早苗の五人が飛び出してきた。
早苗「あれ?地獄?」
霊夢「あら、魔理沙達もいるじゃない。どうしたの?」
咲夜「私が聞きたいわよ。」
紫「貴方達に頼みがあって呼んだのよ。」
霊夢「また何かしたわけ?」
紫「地獄から地上に怪物が向かっているのよ。」
早苗「か...怪物ですか!?」
隠岐奈「私は星の影響で思うように動けん。紫もこう見えてずっと結界の修正をしていたから力は残っていないんだ...」
咲夜「自分勝手ね。私達は人間よ?呼べる奴は他にもいるでしょう?」
紫「残念だけど勇儀の力でも効かなかったわ。」
早苗「それって...本当に倒せるんですか?」
魔理沙「......倒せる。」
その言葉で全員が魔理沙に目を向けた。
魔理沙「私はあの鳥たちと少しの間過ごしてたんだぜ。そこで...森の奥に行った時...」
数ヶ月前、罰鳥達に連れられて森の奥へ歩いていた魔理沙は、とある物を見つけた。それは、三匹の鳥達それぞれに似た色を持つ巨大な卵であった。罰鳥はその卵を見て、何か言いたげに魔理沙を見つめていた。そして、それは魔理沙に伝わっていた。
もし、僕たちが暴れちゃったら...この卵を壊して欲しいんだ。
彼らの僅かな理性がもたらした突破口。それを破壊すれば、終末鳥を無力化できると考えた。
隠岐奈「卵か...一理あるな。一か八かやるしか無い。」
紫「そうと決まれば...」
そういって、紫はスキマから先程魔理沙が着ていたジャスティティアやランプをその場に出した。それと一緒にいくつかの防具や武器が入っていた。
紫「他の幻想体達から数ヶ月かけて、彼らの自我の狭間を少し弄って抽出したものよ。」
早苗「私はこれにします!」
魔理沙「...しっくり来るぜ」
妖夢「私は一応身につけてきました!」
霊夢「色合いも良いし...これにしようかしら?」
早苗は蒼星のEGO-星の音-を...魔理沙はジャスティティアの防具と武器、ランプのハンマーと嘴のピストルを装備した。霊夢は失楽園の防具を身に着け、妖夢は壊れゆく甲冑から受け継いだ-決死の一生-の鎧と刀をかけている。
咲夜「この服...見覚えがあるわね。」
そして、最後に咲夜が取ったEGOは、青と黒を基調にした服だった。それを身につけると、妖夢が待っていたかのように、持っていた銃を咲夜に預けた。
妖夢「咲夜さん...これを」
咲夜「ありがとう。」
咲夜は何か言いたげに青いマスケット銃-魔法の弾丸-を背中にかけた。遂に全員の準備が整った。
魔理沙「待ってろよ...お前ら」
魔理沙は罰鳥達を救うため、終末へと挑む。
続く...
- Re: 東方幻収録 31 ( No.31 )
- 日時: 2024/01/19 00:53
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
魔理沙「私と咲夜で魔法の森に行ってくる。霊夢達はあいつらの気を引いてくれ。」
霊夢「分かった...気をつけてね。」
終末鳥の鎮圧作戦が始まった。
まずは、紫が限界まで魔力を使い、終末鳥を地獄の奥深くへとスキマで転送する。そして、霊夢、早苗、妖夢の三人が終末鳥の気を引いて時間稼ぎしているうちに、魔理沙と咲夜が卵を破壊するというものだった。紫達は地獄の出口へ向かう終末鳥に追いついた。
隠岐奈「幻想郷の命運は君たちにかかっている。幸運を祈るぞ。」
霊夢「自分で戦えないのに良く言うわ...」
そうして、霊夢達は終末鳥と共に地獄の奥へとスキマによって送られた。
-旧血の池地獄-
終末鳥と霊夢達が移動した先は、少し前に畜生界の組長達による武力抗争が行われた場所だった。
妖夢「どうやって注意を逸らせば良いんだろう...」
霊夢「簡単よ。」
そう言って、霊夢は終末鳥の後頭部に陰陽玉を思いっきりぶつけた。終末鳥は霊夢達を睨んでいた。激昂した終末鳥は霊夢達に巨大な鍵爪を伸ばし、押し潰そうと地面を叩いたり、直接引掻こうと攻撃し始めた。
早苗「知能も所詮は鳥程度...これならいけるかもしれないですね!」
妖夢「いや、何かおかしい!」
突然、終末鳥はその場に止まって、黒い翼を広げ始めたのだった。黒い羽には無数の黄色い目がついており、それを直視した早苗はふらふらと終末鳥の前に歩き始めた。
妖夢「早苗さん!?」
霊夢「魅了されている...!」
終末鳥の翼の目がより一層輝きを増したと同時に早苗の魅了が解けた。しかし、攻撃の準備は既に整っていた。
早苗「あれ...私...」
霊夢「早苗!逃げて!」
霊夢の警告は一足遅かった。終末鳥の翼にくっついた無数の目から放たれた光線が早苗に直撃し、大爆発を起こした。
霊夢「早苗!」
早苗は数十メートル吹っ飛ばされて、気を失ってしまった。
妖夢「私が行きます...」
霊夢「駄目よ!また魅了攻撃を...」
妖夢「いえ、おびき寄せられるわけではありませんよ!」
そう言って、妖夢は逆に終末鳥の方へと走り、顔面に斬りかかった。
妖夢「これだけ近づけば、魅了攻撃も意味が無いでしょう!」
終末鳥の顔に斬撃が放たれる瞬間、どこからか金属音が聞こえた。その音に妖夢は一瞬気を逸らしてしまった。そして、妖夢が見たのは、終末鳥の首にかけられた傾いた天秤であった。金属音と共に妖夢の魂にPALE攻撃が波動の様に響き、至近距離で天秤攻撃を喰らった妖夢は怯み、その隙を狙って終末鳥の巨大な紅い嘴が妖夢に襲いかかった。
妖夢「...うぐっ!」
嘴が直撃し、妖夢の身につけていた甲冑は砕け散り、痛みに悶絶してしまう。残された霊夢はここから一人で終末鳥の攻撃を耐え凌ぐ事となった。
霊夢「急いで...魔理沙」
-魔法の森-
魔理沙「あったぜ!あれが卵だ!」
早速、魔理沙は卵を見つけた。見た目は罰鳥の色に似ていた。魔理沙は背中にかけていた-ランプ-を振りかぶり、卵を割った。
魔理沙「よし...後2つだ!」
どんな物も飲み込める罰鳥の口は閉じました。
咲夜「魔理沙!見つけたわよ!」
魔理沙「残り一つだぜ!」
少し先を行った所で次は大鳥の目の様な模様を浮かべる卵を見つけ、背中にかけていた-ジャスティティア-で真っ二つに切った。
遠くを見通せた大鳥の目はなくなりました。
魔理沙「後一つは......あった!」
森の奥深く。そこには、切り株にもたれるように置かれた包帯が巻かれた卵であった。恐らく審判鳥のものだろう。魔理沙達と卵の間は十メートル。魔理沙は腰にかけていた-くちばし-を卵に向けた。
魔理沙「これで終わりだぜ!」
「HELLO?」
その瞬間、魔理沙の横から棘が射出され、-くちばし-ピストルが弾かれてしまった。
魔理沙「...どうしてここにお前が...」
そこにいたのは、数ヶ月前、妹紅を殺して生き延びていた-何もない-であった。皮を剥いで、本性を見せた-何もない-が魔理沙に襲いかかる。咲夜はマスケット銃を構えて、-何もない-へ弾丸を撃ち込むが、肉が少し削れた程度で、ダメージは全く与えられなかった。
咲夜「効かない...?」
何もない「GOOD BYE」
咲夜「ッ!?...時よ止ま...」
追撃に対応出来ず、時を止める前に腹部を貫かれてしまった。
咲夜「がはっ...!」
魔理沙「咲夜ぁぁぁ!」
混紡に変形した腕で-何もない-はそのまま咲夜を殴り飛ばして、魔理沙へ目を向けた。
魔理沙「畜生!」
ジャスティティアで応戦するが、-何もない-のパワーは桁違いであった。振り下ろされるジャスティティアを掴み、咲夜の方へ魔理沙を剣と一緒に放り投げた。
魔理沙「ぐっ...痛ぇ...!」
立ち上がろうとする魔理沙に-何もない-は手から棘を射出し、両足に刺した。膝をついて俯く魔理沙の元へ-何もない-が勝ち誇った様に歩み寄る。だが、咲夜は諦めていなかった。
咲夜「これは私が持ってた...」
倒れた咲夜の服から一つの青い弾丸が転がって落ちていたのだ。咲夜は誰かにこれを渡された気がするが、全く思い出せない。しかし、ただひとつ本能的に理解した事があった。それは、必ず誰かが助けに来てくれるだろうと。この魔法の森の奥深くまで来る人間や妖怪はいない。それでも咲夜は祈った。弾丸を強く握り締めて祈る事しか出来なかった。だが、それが正しい気がするのだ。
咲夜「誰か...誰か助けて...」
-何もない-は手を斧に変形させて、魔理沙の首を掴み始めた。
咲夜「魔理沙を...私をあの怪物から.....救って!」
何もない「SHUT UP!?」
祈りも虚しく、-何もない-の斧が魔理沙達の首へ放たれた。
ズドン!
死を覚悟した瞬間、咲夜が見たのは、頭部に穴の開いた-何もない-であった。
何もない「WHa...t!?」
弾丸が何発も撃ち込まれ、後退した所でいつの間にか後ろにいた溶ける愛に-何もない-が取り込まれて行った。その体質故に、物理攻撃を無効化する溶ける愛に-何もない-はどうしようもできなかった。
溶ける愛「ダイジョウブ?」
魔理沙「ありがとう..助かったぜ。あれ...咲夜、どうしたんだ?」
溶ける愛に感謝して咲夜の方向を見ると、そこには遠くを見て涙を流す咲夜の姿があった。
魔理沙「咲夜?」
咲夜「何故...どうして私は忘れていたの?...信じられないわ...」
魔理沙がふと咲夜の向く方向を顔を向けた。木々を越えて、草むらから体を出す。
「よう、久しぶりだな。元気にしてたか?」
そこには、消滅した筈の-魔弾の射手-が立っていた。
続く...