二次創作小説(紙ほか)
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- 東方幻収録[Lobotomy corporation]
- 日時: 2023/11/03 09:54
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
この物語は[東方Project]と[Lobotomy Corporation]のクロスオーバー小説です。
※注意
・Lobotomy Corporationのネタバレを含みます。
・微グロ描写あり
・オリキャラは登場しません
・独自解釈あり
・死ネタ
以上です。楽しんで!
-プロローグ-
かつて、幻想体を収容し、そこから得られる物質-エンケファリン-を利用したエネルギー会社。しかし、Aが目指した-光の種-シナリオを起こす事は無かった。TimeTrack社の時間遡行技術が不具合を起こしてしまった。その中で大量の幻想体が収容違反。ループも出来ないまま、Lobotomy社は脱走した幻想体達によって地上に出る事無く壊滅した。誰も知らないまま、地下奥深くに封じこまれた一部の幻想体達は、しばらくして外に出たいと願い始めた。そして、何百年も経ち、完全に忘れ去られた幻想体達はいつしか、自分達のいた世界とは違う別の世界に生まれていた。幻想体達が見つけたのは忘れられた者達が辿り着く-幻想郷-
幻想体達は自らの存在意義、欲望、安息を求めて、幻想郷に出現し始める。
- Re: 東方幻収録 22 ( No.22 )
- 日時: 2023/12/23 23:29
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-ライブ一日前・アリス邸-
魔理沙が向かったのは、アリス邸。その近くに刻まれたアリスの墓石だった。アリスが幻想体に殺されてから何ヶ月も経過していたが、毎月通い続けていた。墓石の上には、アリスに返せなかった本...そして、数本の花を置いた。墓石の横には主人を失った上海人形が1人、しゃがみ込んでいた。自我は無い筈だが、人形は魔理沙を見ると、泣きながら抱きついた。
魔理沙「...こっちが泣きたいくらいだよ。」
アリスが死んだ時、魔理沙は泣いていなかった。アリスを殺した張本人が目の前にいて、激情に駆られていたからだろうが、その後に行われた葬式でも何故か涙は出なかった。心にはぽっかりと穴が空いているのに、今日まで普段の様に振る舞ってきた。
魔理沙「......何の用だ。」
後ろにはいつの間にか紫が立っていた。
紫「あの幻想体はどうだった?」
魔理沙「あいつか?...敵意は感じなかったけど...見てたのかよ。」
紫「貴方も気づいているんでしょう?あの幻想体に-侵食-されてるってね。」
魔理沙はふと、自分の手のひらを見た。人差し指の先がピンク色の粘液で滲んでいた。
紫「今は大丈夫そうだけど...過度な接触は辞めた方が良いわよ?魔力の力で増殖を抑えてるんでしょうけど。」
魔理沙「私だって気は使ってるぜ...あいつの恐ろしさも知っている。」
実は、魔理沙が-溶ける愛-を見つけたのは、あの時が初めてでは無かった。その数日前、魔理沙は見ていたのだ。魅了されて、溶ける愛の一部となってしまった里の人間を。
魔理沙「あいつを見ると...何だか愛着が湧いてくるんだよ。異常性かもしれないな。」
紫「懸念しているのはそっちじゃないわ。」
魔理沙「何?」
紫「見なさい。」
紫が目線を向ける方向には罰鳥達が草むらに隠れて魔理沙を見ている姿があった。
紫「貴方が幻想体に遭遇する時もあの鳥達はいるのよ?まるで貴方をいつでも守れる様に。」
魔理沙「そりゃぁ...私は恩人だし、あいつらが恩返しするのもおかしくは無いだろ?」
紫「あの鳥達は幻想体よ?しかも...まるで自分達が-力を合わせれば助けられる-と思っている様に感じたわ。」
魔理沙「あの鳥達が合体するとでも言うのか?」
紫「忠告よ。後始末は貴方に任せるけど。」
魔理沙「...なんなんだよ。」
魔理沙はその場から逃げる様に去っていった。
-ライブ当日・旧都-
魔理沙は霊夢と妖夢を連れて、旧都の真ん中へ集まった。
魔理沙「さすが地獄だぜ...たくさんいるな...」
霊夢「街の中心だし、これだけ集まるのは当然よね。」
雷鼓「皆お待たせ!」
雷鼓と共にルナサ、メルラン、リリカの三人も集まり、いよいよライブの公演が始まった。四人のリズムの合った曲が住民達を勇気付けていた。
魔理沙「それにしても雷鼓達の演奏は上手いぜ。」
霊夢「そうね......あれ何かしら?」
演奏が流れている間、雷鼓達の横に地面から一つのマネキンが現れた。マネキンは8分音符や様々な音部記号などの楽譜で構成されており、 土台で安定したポールに支えられ、オーケストラの指揮者のような襟装飾のある服を着け、頭には8音符の模様がある。雷鼓は真っ先に気づいて手を止めた。
雷鼓「何だこれ...?」
観客達も突然の出来事に困惑していた。すると、マネキンが喋り始めた。
静かなオーケストラ「素晴らしい!こんなにも音楽を愛する者がいるなんて!」
そのマネキンは自らを-静かなオーケストラ-と名乗ると、ステージはカーテンに包まれ、しばらくして開くと、静かなオーケストラは隠していた手を出して、指揮を始めた。
-第一楽章-
指揮者は黙示録の演奏を始める。
異変に気づいた霊夢達は逃げ出し、都の外へと向かう。
-第二楽章-
その美しい演奏を聞いている内に記憶が段々と薄れていく。雷鼓達はただ立ち止まって、その曲を聞いている。数人の鬼や妖怪達が絶望の騎士や憎しみの女王、貪欲の王に連れられて逃げ始める。しかし、間に合わなかった者達は熱烈にオーケストラを賞賛し始めていた。
-第三楽章-
賞賛はすぐに狂気に変わり、鬼達は目に映るすべてに暴力行為を働いた。雷鼓達は互いを殺し合った。最後に立っている者は居ない。
-第四楽章-
オーケストラの音楽は速まり、被害者達を破滅に導く。
すべての演奏者がそろうと、耳を塞ぎたくなるような音楽が始まった。しかし、誰もがそれを受け入れて、聴いている。
-フィナーレ-
音楽は民衆のすべてに響き渡った。彼の素晴らしい演奏に観客達の拍手喝采が起こった。静かなオーケストラは一礼し、カーテンは閉じた。都に残ったのは、首の無い無数の死体であった。
続く...
- Re: 東方幻収録 23 ( No.23 )
- 日時: 2023/12/25 20:45
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-魔法の森・魔理沙宅-
霊夢「はぁ...はぁ...なんとか逃げ延びたわ...」
妖夢「他の人達は無事でしょうか...?」
魔理沙「魔法少女達が避難させていたぜ...遅れてた奴らは...」
地獄から逃げて、魔理沙に連れられて霊夢と妖夢は魔法の森へと来た。地上では雨が降り始めていた。しかし、先程から魔理沙の様子がおかしかった。
魔理沙「うぅ...」
霊夢「どうしたの?」
魔理沙「いや...なんでもない」
霊夢「あのマネキンに何かされ...」
そこで霊夢は言葉を噤む。
魔理沙の右手の先が徐々にピンク色の液体に変化して溶けていたからだ。
妖夢「魔理沙さん!?」
霊夢「何よこれ...一体何があったのよ!?」
魔理沙「ははは...耐えられると思ったんだけどな...」
魔理沙の右腕は既に溶けさり、地面にピンク色の粘液が零れ落ちていた。
魔理沙「好奇心に負けたんだよ...あいつらを甘く見ていた...」
魔理沙の体は確実に侵食されている。しかし、魔理沙は幸せそうな顔を浮かべていた。
魔理沙「でも、私が選択した事なんだ。悪い...霊夢...」
霊夢「魔理沙...待ってよ!まだ死なないで!」
霊夢は魔理沙の右腕だった粘液を震えながら見つめていた。
霊夢「永琳...永琳なら治せるかもしれない...魔理沙!お願いだからまだ諦めないで!」
魔理沙「......霊夢...お前の勘は鋭い...わかってんだろ?もう助からないんだ。」
霊夢「嫌よ!誰がアンタをこんな目に...答えて!」
魔理沙「もう私は抗おうとなんて思わないさ...あの時見たろ?死体の山に喰われる阿求達を。私達がいくら妖怪と同じくらい強くたって、死ぬ時は死ぬんだ...それに...」
魔理沙の体は殆ど溶けていた。
魔理沙「お前に見届けられて...死ねるんだから...」
最後の顔は、何の悔いも無いといった笑顔だった。魔理沙は完全に溶けた。先程まで笑顔で霊夢を見ていた魔理沙の顔は頭蓋骨となり、骨の殆どが粘液に吸収されてしまった。-魔理沙だったもの-は、霊夢に這いずり寄った。
霊夢「いやああぁぁああぁあぁあああぁあ!!」
雨音に混じって、霊夢の叫び声が森に響き渡った。そして、魔理沙を心の底から愛していた-溶ける愛-が、草木を掻き分けて、霊夢の元に現れた。
溶ける愛「ヤット...ワタシノ友達ガ...できたと思ったのに...」
しかし、溶ける愛の姿は少女と似つかない、怪物の様な見た目であった。溶ける愛は-魔理沙だったもの-に溶け込んでいる髪飾りを拾い上げた。
溶ける愛「マタ...トカシチャッタ...魔理」
霊夢「お前が魔理沙を...!」
溶ける愛の言葉を遮って、霊夢が呟いた。いつ手に入れたのか、-熱望する心臓-を握っていた。それを見て、妖夢が霊夢を掴んだ。
妖夢「なんですかその心臓は...離してください!嫌な予感がするんですよ!」
霊夢「やめて、取らないで......辞めろ!」
熱望する心臓を取り上げた瞬間、霊夢が妖夢に怒鳴り散らし、その心臓を取り返した。心臓は霊夢の胸の中へと透過して入っていった。
溶ける愛「マリサの友達ナノ?...ゴメンナサイ...ワタシ」
霊夢「黙れって言ってんだよ怪物。」
熱望する心臓を宿した霊夢は、溶ける愛の周りに結界を張って拘束した。
溶ける愛「ち...違うの...ワタシ...キズツケルツモリハ...」
霊夢「夢想天生。」
霊夢は火力を限界まで注いだ夢想天生を静かに唱え、森中に放った。怒りに満ちた霊夢をもはや止められる者はいなかった。霊夢の弾幕は全方位に散らばっており、妖夢は回避するので精一杯だった。
妖夢「霊夢さん!落ち着いてください!まだ私が...」
霊夢「落ち着ける理由無いでしょ!」
霊夢は妖夢に怒号を浴びせ、溶ける愛へ御札を射出した。
霊夢「目の前で親友が死んで...冷静でいられると思ってんの!?」
溶ける愛「...ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
霊夢の攻撃は溶ける愛へ全く効いていなかった。しかし、霊夢は腰に隠していた-陰-と-陽-を取り出して、無理やり陰陽を作り出した。
溶ける愛「...ナンデ...ココニ...」
陰陽玉から出現した東洋龍が滝を流れる様に、溶ける愛へと突進した。溶ける愛は瞬きする間に消滅し、草木は枯れて、地面は抉れていった。
東洋龍の進んだ後は全てが反転して映っていた。すると、-魔理沙だったもの-が霊夢に近づいていた。それを霊夢は見つめていた。
霊夢「魔理沙。もう大丈夫よ...私が...」
だが、溶ける愛がいなくなってしまったためか、-魔理沙だったもの-は蒸発し始めていた。
霊夢「なんで...元凶を倒せば良いんじゃないの?ねぇ...待って!」
-魔理沙だったもの-は完全に蒸発して、消え去ってしまった。
霊夢「...魔理沙」
妖夢「霊夢さん...」
霊夢「そうよね...魔理沙のためにも、私がしっかりしないと...」
そう言って、霊夢は陰陽玉を割って、踏み潰した。霊夢はパニックを起こしていた。
霊夢「...殺してやる...幻想体がいなければ魔理沙は死ななかった...殺してやる!」
妖夢「霊夢さん待ってください!」
霊夢は再び地獄へと向かっていった。
-旧都-
生き延びた者達の避難は魔法少女だけでなく、魔弾の射手や死んだ蝶の葬儀も協力していた。住民を避難し終えた頃、魔法少女達は静かなオーケストラのいた場所へ来ていた。既に指揮者は消えていた。
魔弾の射手「で、あのクソオーケストラがど真ん中で住民の殆どを殺したのか...」
貪欲の王「あの演奏が始まる前に私達が動くべきなのに...私達は」
魔弾の射手「気にすんな。生存者はいるし...ん?あの紅白、戻ってきたのか?」
霊夢が魔弾の射手達の方へと飛んできていた。しかし、いつもと雰囲気が違った。
魔弾の射手「気をつけろ...アイツ混乱しているぞ。」
死んだ蝶の葬儀「恐らく殺人性のパニック...ッ!」
その瞬間、霊夢が目にも止まらぬ速さで葬儀屋に近づき、その首を跳ね飛ばした。
魔弾の射手「何!?」
霊夢「見つけた...幻想体...」
霊夢は次に魔弾の射手へ襲いかかった。しかし、それを憎しみの女王が食い止めた。
憎しみの女王「どうしたのよ貴方?葬儀屋に恨みでも...」
霊夢「極刑を下すわ...お前たち全員に!」
霊夢は言葉も聞かず、幻想体達に飛びかかった。
貪欲の王「ぐっ...魔弾!お前は逃げろ!」
魔弾の射手「お前達はどうするんだよ!」
絶望の騎士「私達は彼女にも助けられた恩があります。私達が止めてみせます...」
憎しみの女王「その内に助けを呼んで!」
魔弾の射手「畜生...お前ら死ぬなよ!」
魔弾の射手は霊夢の横を通り抜けて、地上へと向かった。
霊夢「逃さな...」
魔弾の射手へ攻撃しようとする霊夢を絶望の騎士が剣で邪魔する。
霊夢「先に死にたいのはアンタ達ね...?」
貪欲の王「その通りよ。久々にこの感じで戦える...私達が止めて見せるわ!」
-魔法の森・魔理沙宅-
妖夢「あ...あなたは!?」
魔弾の射手「あぁ...魔理沙の友達さ。」
妖夢「その...魔理沙さんが殺されて...」
魔弾の射手「やっぱりそうか...だが、あの鬼巫女はもう止められないだろうな。」
妖夢「やっぱり...あなたも狙われているんですね...」
魔弾の射手「大丈夫だ...それに...使いたくなかったが、-あれ-がある。」
妖夢「-あれ-...ですか?」
魔弾の射手「この森の出口に店があったろ?確か...-香霖堂-って所だ。」
魔弾の射手は草むらの奥に隠していた-何か-へ歩み寄った。-何か-には布が掛けられている。
魔弾の射手「俺が笑う死体の山を鎮圧した後、たまたま見つけて寄ったんだが...これが売っていてな...店主は使い方を知ってた様で、俺に忠告してきたが、いざという時のために無視して買ったんだ。」
魔弾の射手が布を思いっきり広げた。中にあったのは、古いぜんまい仕掛けの機会の様な物だった。
本体の中央には4つの真空管があり、本体の右にねじ巻きが付いている。
4つのライトは既に点灯しており、-2045-と数が浮かび上がっていた。
魔弾の射手「そういえば...名前を教えてくれるか?」
妖夢「魂魄妖夢です...」
魔弾の射手「妖夢か...なぁ、魔理沙に伝えといてくれ。お前にこれは託すってな。」
魔弾の射手は自分のマスケット銃を妖夢に渡した。
妖夢「ま...待ってください!一体何を...」
魔弾の射手「底まで落ちて、もう方法は見えない...コイツを作動させる。」
魔弾の射手はネジ巻きを巻いて目を瞑った。
じゃあな...お前ら。さらばだ...幻想郷。
辺りが金色の光に包まれる。
-逆行時計-が作動した。
続く...
- Re: 東方幻収録 24 ( No.24 )
- 日時: 2023/12/26 14:56
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-ライブ一日前・アリス邸-
魔理沙が向かったのは、アリス邸。その近くに刻まれたアリスの墓石だった。アリスが幻想体に殺されてから何ヶ月も経過していたが、毎月通い続けていた。墓石の上には、アリスに返せなかった本...そして、数本の花を置いた。墓石の横には主人を失った上海人形が1人、しゃがみ込んでいた。自我は無い筈だが、人形は魔理沙を見ると、泣きながら抱きついた。
魔理沙「...お前も辛いよな。」
アリスが死んだ時、魔理沙は泣いていなかった。アリスを殺した張本人が目の前にいて、激情に駆られていたからだろうが、その後に行われた葬式でも何故か涙は出なかった。心にはぽっかりと穴が空いているのに、今日まで普段の様に振る舞ってきた。
魔理沙「......おかしい。」
しかし、魔理沙は異変に気づいていた。魔理沙は自分の体を二度見した。
魔理沙「私は死んだ筈じゃ...ッ!」
魔理沙が後ろを振り向いた。そこにはスキマから出てくる紫の姿があった。
紫「勘が良いわね。まるで私が来るって予想してた様ね。」
魔理沙「ま...まぁな...私は用事があるから帰るぜ!」
魔理沙はその場から逃げる様に去っていった。
紫「まだ来たばかりなのに...」
-魔法の森・魔理沙宅-
魔理沙「嘘だ...時間が一日巻き戻っている!?あり得ない...」
家の方に飛んでいる途中で、溶ける愛を見つけた。
溶ける愛「コンニチワ...来てクレタの?」
魔理沙「悪い!少し用事があってさ...また今度な!」
溶ける愛「ソ...ソウナノ...」
魔理沙の手のひらには粘液がついていた。
家に辿り着いて箒を片付けていると、雷鼓がやってきた。
雷鼓「魔理沙!ちょうど良い所で会ったわね!」
魔理沙「そうか...」
雷鼓「少し音楽を聞いてみて欲しいんだけど...」
魔理沙「また後でな!」
雷鼓「え...?」
魔理沙は箒を手に再び空へ飛んでいった。
雷鼓「何かあったのかしら...」
-博麗神社-
魔理沙「霊夢!」
神社には妖夢と霊夢が一緒にいた。二人で縁側に座っていたようだ。
霊夢「どうしたのいきなり大声で...」
妖夢「それほど明日のライブが楽しみなんですか?」
魔理沙「いや...生きているか確認しに...」
霊夢「生きてるって...死んでるわけないでしょ?」
妖夢「私は半分幽霊ですけどね!」
魔理沙「元気でなによりだが...明日のライブは嫌な予感がするんだぜ...」
霊夢「どういう事?」
魔理沙「だから...ライブで人も集まるし、幻想体が出てきたら大変だなって...」
霊夢「...まぁ、私も警備のために行くつもりだし、魔法少女と葬儀屋にも言っとくわ。」
魔理沙「ありがとう。」
そう言って立ち去ろうとしたが、魔理沙はある違和感に気づき、再び霊夢に質問した。
魔理沙「なぁ霊夢...」
霊夢「何?」
魔理沙「......魔弾の射手は今どこにいる?」
霊夢「魔弾?」
霊夢は少し考えて、魔理沙に答えた。
霊夢「誰の事を言ってるの?」
魔理沙「え?...魔弾の射手だぜ!?」
霊夢「だから...誰って聞いてんの。」
魔理沙「お前も会った事があるだろ?からかわないでくれよ。」
霊夢「知らないって言ってるでしょ?」
魔理沙「...分かったよ。」
魔理沙は霊夢に背を向けて、紅魔館の方へと飛んでいってしまった。
霊夢「あいつどうしたのかしら...」
妖夢「...そうですね」
-紅魔館-
紅魔館の門の前には美鈴と一緒にちょうど咲夜も外に出ていた。魔理沙は咲夜の方へ一直線に飛んで行く。強い風圧を巻き起こしながら咲夜に近づくと、ナイフを持って睨み返してきた。
咲夜「あら、また本でも盗みに来たの?パチュリー様も相当怒ってるし、いい加減返して...」
魔理沙「それは返すから話を聞いてくれ!」
咲夜「話?」
魔理沙「前に魔弾の射手って言う幻想体がここに来なかったか?
咲夜「...射手?葬儀屋なら知ってるけど...」
魔理沙「嘘だろ...」
咲夜「ともかく、今は本を...って、待ちなさい!こっちの話はまだ終わってないわよ!」
魔理沙は再び森の方へと飛んでいった。
-魔法の森・魔理沙宅-
魔理沙「畜生...他の奴に聞いても駄目だった...」
時間が巻き戻る前の紫の言葉を思い出して、ふと周りの茂みを観察する。紫の忠告通り、罰鳥達は魔理沙も見守っていた。その時、妖夢が魔理沙の家までやってきた。背中にはマスケット銃を下げている。
妖夢「魔理沙さん...覚えているんですね?」
魔理沙「は...?」
魔理沙の推測通り、時間は巻き戻ったらしい。妖夢は魔理沙が死んだ後、魔弾の射手が逆行時計を作動させて、マスケット銃を託した事を伝えられた。
魔理沙「ここが...その機械があった場所か。」
魔弾の射手が逆行時計を作動させた場所には、時計の置かれた後だけが残っていた。
妖夢「あの機械に挟まっていたメモを読んだのですが...魔弾さんは魔理沙さんが死んで、霊夢さんが暴走したあの世界に...閉じ込められているようです。」
魔理沙「時計を回した者以外をその日で一番安全だった場所に送る...なんで一日前に戻ったんだ?」
妖夢「予期せぬ使い方で故障すると書いてありますし...幻想体である魔弾さんが回してしまったからだと思いますけど...」
魔理沙「そうか...」
魔理沙はマスケット銃を手に持った。
魔理沙「これからする事は...妖夢も分かってるな?」
妖夢「はい!準備はばっちりです!」
魔理沙「もう逃げたりはしない...あのクソオーケストラを明日...破壊する!」
魔弾の射手が託したマスケット銃を掲げ、日に向かってそう叫んだ。
続く...
- Re: 東方幻収録 25 ( No.25 )
- 日時: 2023/12/31 21:45
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-博麗神社-
霊夢「はぁ?ライブで怪物が現れる?」
魔理沙「頼むぜ霊夢!信じてくれよ!」
ライブ前日、魔理沙と妖夢は魔法の森に行った後、博麗神社へ行って、霊夢を説得していた。静かなオーケストラを鎮圧するためにも、霊夢の力を借りておきたかった。
霊夢「そんな証拠がどこにあるのよ?まるで未来を見てきた様に話すじゃない...」
魔理沙「それは...」
しかし、前回の記憶について答える事はできない。いくら霊夢だろうと、一度自分の親友が死んでしまったなんて事実を聞いたら、それこそ自責の念に駆られて精神を傷つけてしまうかもしれない。陰と陽も持ち歩いている。また-東洋龍-が召喚されてしまったら最悪の事態になり得る。逆行時計も消えてしまったので、チャンスは一回だけだった。
妖夢「とにかく...霊夢さん!貴方の力が必要なんです!異変解決のプロなんですよね?」
霊夢「...分かったわよ。取り敢えず信じるわ。」
魔理沙「霊夢...」
霊夢「そこまで言われたら信じるしかないでしょ?」
-ライブ当日・旧都-
魔理沙は霊夢と妖夢を連れて、旧都の真ん中へ集まっていた。
霊夢「結構集まってるわね...」
魔理沙「旧地獄の中心だしな。」
妖夢「あ、雷鼓さんが来ましたよ!」
雷鼓「皆お待たせ!」
ステージに雷鼓と共にルナサ、メルラン、リリカの三人が集まり、いよいよライブの公演が始まった。四人のリズムの合った曲が住民達を勇気付けていた。
魔理沙「よし...始めるぞ。」
妖夢「準備はバッチリです。」
霊夢「えっ...もう来るの?」
魔理沙「あぁ、早めに片付けないといけないからな。」
魔理沙は魔弾の射手から受け継いだマスケット銃-魔法の弾丸-のEGOをステージに向けて構えた。それと同時に雷鼓達の横に地面から一つのマネキンが現れた。静かなオーケストラだ。
魔理沙「今だ!」
魔法の弾丸が放たれ、静かなオーケストラの頭部に直撃した。
雷鼓「え?」
妖夢「《人符・現世斬》!」
妖夢が-決死の一生-を振りかぶり、斬撃をオーケストラに撃ち込んだ。斬撃は直撃し、オーケストラは大きく仰け反る。
静かなオーケストラ「無礼な客ですね...一体誰が...」
憎しみの女王「私達よ!」
間髪入れずに、静かなオーケストラへ追撃が迫っていた。ライブの前に魔理沙が指示し、魔法少女達はステージ近くに待機していた。絶望の騎士が静かなオーケストラの周りに剣を立てて拘束する。
憎しみの女王「あたしの命を賭けてでも、 みんなを守ってみせるわ!」
最初に攻撃を仕掛けたのは貪欲の王だった。
貪欲の王「貪欲に光る琥珀色の扉を開けて……行くぞ!《黄金の道》!」
魔法陣によるワープと同時に静かなオーケストラに高速で接近し、巨大な拳を叩きつけた。
静かなオーケストラ「何っ!?」
それに続いて、憎しみの女王が最大火力の必殺技を発動した。
憎しみの女王「我とそなたの力をもって偉大な愛の力をみせしめん事を...《アルカナスレイブ》!」
魔法陣から射出された極太ビームが静かなオーケストラを覆った。
絶望の騎士「まだ生きている...!」
しかし、静かなオーケストラは倒れていなかった。壊れかけた手を震わせながら、演奏を始めようとする。
魔理沙「まだ死なないのか!?」
魔理沙がステージに駆け寄り、八卦炉を静かなオーケストラの前に向けると、静かなオーケストラは両手を上げた。
静かなオーケストラ「チョットタンマ!」
相当なダメージを食らっているのか、よく見ると、マネキンは今にも壊れそうなくらい傷がついていた。
静かなオーケストラ「私は音楽を奏でようとしているだけなんですよ?何故攻撃してくるんですか!?」
魔理沙「その演奏で命を奪うからだろうが!」
静かなオーケストラ「ただ音楽を愛している者に共感と親近感を持っているのに...そんな殺生な!」
ステージ上で繰り広げられる魔理沙とマネキンの口論に、観客は呆然としていた。
雷鼓「まだライブの続きがあるのに...」
咄嗟の出来事に驚きながら、いち早く我に変えった雷鼓が魔理沙に話しかける。
魔理沙「わ...悪い...でも、こいつが現れたからには、ライブを続けるのは...」
静かなオーケストラ「やはり、公演を行っているのですね!」
魔理沙を遮って、静かなオーケストラが雷鼓達に話しかけた。
静かなオーケストラ「私の名は静かなオーケストラ...音楽を愛する指揮者でございます。」
雷鼓「指揮者ぁ?...まぁ良い。私は雷鼓って言うわ。後ろの三人はプリズムリバー三姉妹よ。」
静かなオーケストラ「先程の曲は聞かせて貰いましたよ?是非、私と合奏させて貰いたい!」
静かなオーケストラは指揮棒を取り出した。
魔理沙「待て!お前の演奏は...」
貪欲の王「それなら問題無い。行くぞ魔理沙。」
魔理沙が割って入ろうとするが、貪欲の王はそれを止めて、ステージから降りていった。
魔理沙「なんで止めるんだ?」
貪欲の王「あのオーケストラ野郎が異常な音楽を作り出すのはあくまで、あいつが自発的に出現させる演奏者による副作用の様なものだ。」
静かなオーケストラの指示の元、繰り出される曲は緩やかに、壮大なものであった。
柔らかく、緩やかに...速く、活発的に...雷鼓達の演奏能力に合わせて、静かなオーケストラは的確な指揮を取っていた。
そして、フィナーレ。魔理沙は身構えたが、鳴り響くのはこの世で一番美しいと思える様な演奏の終焉であった。観客は喝采し、音楽は観客の全てに響き渡った。
-ライブ一日後・旧都-
既にライブ会場の撤去が進められている中、魔理沙は再び雷鼓達の元を訪れた。
雷鼓「やぁ、魔理沙!ライブは大成功だったよ!」
魔理沙「そ...それは良かったな。あのマネキンはどこにいるんだ?」
雷鼓「私の後ろにいるわよ?」
雷鼓の後ろからひょっこりと、静かなオーケストラが魔理沙の前に出てきた。
魔理沙「昨日は済まなかったな...てっきり悪影響があるのかと...」
静かなオーケストラ「まぁ、私も以前に閉じ込められていた会社で散々な目に会いましてね...原因は私直々に稽古をつけた演奏者達だったなんて思いませんでしたよ!」
ルナサ「貴方の指揮でより一体感が出たわ。」
リリカ「ありがとうマネキンさん!」
静かなオーケストラ「あの様な演奏を出来たのは...貴方達のおかげです。感激ものですよ!」
雷鼓「そういう事で...このマネキンには、私達の楽団に入れたいと思うんだが、魔理沙はどうだ?」
魔理沙「別に良いと思うぜ...」
静かなオーケストラ「これからも、最高の音楽を観客に届けてみせますよ!」
後日、-文々。新聞-の表紙に、静かなオーケストラと一緒に演奏する雷鼓達の写真が大きく写る事になるのであった。
続く...
- Re: 東方幻収録 26 ( No.26 )
- 日時: 2024/01/05 20:58
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-人間の里-
魔理沙「ここは変わらないな。」
霊夢「これくらい穏やかで良いじゃない。平和なんだから。」
魔理沙「前は『異変ばっか起きて欲しい』なんて言ってたじゃねえか。」
霊夢「異変解決は私の収入の一部なんだもの...最近は幻想体の処理に追われて大変だったけどね。」
地獄でのライブが終わって一週間。
二人は殺伐とした戦いを終えて、平穏に過ごしていた。
魔理沙「よし、着いたぞ。」
霊夢「今日はアンタの奢りね。」
魔理沙「はいはい...分かってるぜ。」
団子屋に着いた二人は席に座って、みたらし団子を二本頼んだ。
魔理沙「そういえば...紫とかは何してるんだ?」
霊夢「最近は結界を見張ってばっかよ。妖怪達は皆、幻想体に敏感になってるわ。」
魔理沙「妖怪の山で[規制済み]とか言う奴が出現してたらしいな。」
霊夢「河童達がなんとかしてくれたみたいだわ。」
魔理沙「そうか...そういえば、葬儀屋はどうしたんだ?」
霊夢「紅魔館に住んでるってさ。魔法少女達はどうしてるかしら?」
魔理沙「あいつらは旧都にいるぜ。勇儀達と気が合ったらしいぞ。」
霊夢「ふーん...地獄はひとまず安心ね。」
魔理沙「地上で何かあったのか?」
霊夢「また最近、里の人間が度々行方不明になっているのよ。何故か妖怪のせいだと皆思ってるらしいし...」
魔理沙「幻想体かもしれないって事か?」
霊夢「おそらくね...」
魔理沙「私も調べてみるか...お、来た来た。」
魔理沙と霊夢は出来上がった団子を受け取ってお茶を飲み始めた。
霊夢「ん...このお茶...何か変ね。」
魔理沙「え?...本当だ。どんな茶葉を使っているんだ?お茶の筈なのに...葡萄の匂いがするし。」
そうして店の奥を見ると、そこには、店員が奇妙な自販機から缶ジュースを取って、茶葉と混ぜている所が見えた。
魔理沙「な...なんだありゃ!?」
店員「どうしました?」
魔理沙の声に気づいて、店員が声をかけてきた。
魔理沙「いや...あの機械ってまさか...」
店員「そうです...最近、妖怪達が危険視する幻想体ですよ!」
魔理沙「なんで店に置いているんだ?」
店員「あの箱の横を見てください。」
よく見ると、自販機の横には二匹のエビの頭部を持った漁師のような人型実体が立っていた。あの幻想体は-蓋の空いたウェルチアース-だ。構わずお茶を飲んでいる霊夢を見て、エビ達はニコニコしていた。
店員「昨日、朝起きたら店の中に置かれてたんですよ。まぁ、妖怪の起こす異変の方がうっとおしいですし。」
魔理沙「死体の事件を覚えてないのかよ...」
里に住む人達の呑気さにため息をつき、魔理沙と霊夢は店を出た。
霊夢「もう暗いわね...魔理沙。今日は神社に泊まっていく?」
魔理沙「ありがたいが辞めとくぜ。家で魔法の研究する予定だしな。」
霊夢「そう...またね。」
霊夢は足早に神社の方へと飛び立った。魔理沙も箒に跨って、森の方へ飛んで行く。
-魔法の森-
魔理沙「あれ?なんであんな所に...」
魔理沙の家の前に早苗が立っていた。どうやら魔理沙を待っていたようだ。
早苗「あ、魔理沙さん!待ってましたよ?」
魔理沙「久しぶりだな。何か約束してたっけ?」
早苗「いえ...少し話たい事が。」
魔理沙「話したい事?」
早苗「これを見てください。」
早苗はそう言うと、ポケットからボロボロになった灰色の包帯を取り出した。
魔理沙「なんだこれ?」
早苗「最近...地獄の方で怪しい宗教が出来ているんです。」
魔理沙「地獄だと...?」
早苗「はい。うちの神社の参拝客が勧誘されてしまって...間欠泉センターを介して縦穴から旧地獄に里の人達が皆連れ去られてしまったんです!」
魔理沙「神奈子達はどうしたんだよ!」
早苗「いきなり信仰が減った影響で動けなくなって...」
魔理沙「分かった...地獄に行ってその宗教を潰すぞ!」
早苗「ありがとうございます!でも...神奈子様達は、人間で立ち向かうのは危険だと...」
魔理沙「それじゃあ私を呼んだ意味は無いだろ?」
早苗「でも、諏訪子様が言ったんです。その宗教にも神の気配を感じると。」
魔理沙「相手は神か...そんなの何度も戦って来ただろ?幻想体よりマシだぜ。」
そう言って、魔理沙は早苗を連れて、夜空を横目に縦穴へ入り、地獄へ向かうのだった。
夜空は輝いていた。里の人間も、山の妖怪達も、館の吸血鬼達も、紅白の巫女も...美しいと見惚れている。
この宗教の問題が解決した後、魔理沙も早苗もまた地上に戻ってくる。
魔理沙達はやがて彼女らと...星となって再会するだろう。
続く...