二次創作小説(紙ほか)
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- 東方幻収録[Lobotomy corporation]
- 日時: 2023/11/03 09:54
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
この物語は[東方Project]と[Lobotomy Corporation]のクロスオーバー小説です。
※注意
・Lobotomy Corporationのネタバレを含みます。
・微グロ描写あり
・オリキャラは登場しません
・独自解釈あり
・死ネタ
以上です。楽しんで!
-プロローグ-
かつて、幻想体を収容し、そこから得られる物質-エンケファリン-を利用したエネルギー会社。しかし、Aが目指した-光の種-シナリオを起こす事は無かった。TimeTrack社の時間遡行技術が不具合を起こしてしまった。その中で大量の幻想体が収容違反。ループも出来ないまま、Lobotomy社は脱走した幻想体達によって地上に出る事無く壊滅した。誰も知らないまま、地下奥深くに封じこまれた一部の幻想体達は、しばらくして外に出たいと願い始めた。そして、何百年も経ち、完全に忘れ去られた幻想体達はいつしか、自分達のいた世界とは違う別の世界に生まれていた。幻想体達が見つけたのは忘れられた者達が辿り着く-幻想郷-
幻想体達は自らの存在意義、欲望、安息を求めて、幻想郷に出現し始める。
- Re: 東方幻収録 17 ( No.17 )
- 日時: 2023/12/14 22:49
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
魔弾の射手がマスケット銃を構えた先には、強欲同盟の尤魔が立っていた。
饕餮尤魔「こんな所まで来て...何の用だ魔理沙?」
魔理沙「ここでヤクザのお前らが3つのグループで一気に抗争するって聞いてさ。ここの所有権はお前とあの秘神にあるらしいが...止めに来てやったんだよ。」
尤魔「もう遅い。既に準備は済んでいるんだからな。ほら、あいつらも来たぞ?」
魔理沙達はいつの間にか、強欲同盟・勁牙組・鬼傑組の組長とその部下が数百体集まっていた。
尤魔「久々の抗争だ。本当はやりたくないが...部下はもうやる気なんでな。正面からブチのめす。」
魔理沙「ま...待ってくれよ!私達は...」
オオワシ霊「お前ら!やっちまぇ!」
オオカミ霊「ここであったが百年目!今日こそテメエらを潰してやる!」
カワウソ霊「皆かかれー!」
部下達の突進を避けて、魔理沙達は一旦安全な所に逃げた。
死んだ蝶の葬儀「巻き込まれる所でしたね...
魔理沙「痛て...ん?あいつはなんだ?」
早鬼と尤魔が肉弾戦で戦っている最中、少し遠い所からその様子を見ていた八千慧の後ろに赤ずきんの傭兵がいた。
八千慧「本当に馬鹿な連中ね...あのカワウソ霊達は囮。圧倒的に数が少ないのは目に見えて分かるのにね。」
赤ずきんの傭兵「じゃぁ...始めるわよ。」
その声と同時に、早鬼の頭上に赤いマークの様なものが薄っすらと浮かんだ。
早鬼「な...尤魔の術か!?」
その瞬間、早鬼の背中が何者かに撃ち抜かれた。
早鬼「がっ...!」
尤魔「運が良い...このまま死ね!」
腹部に蹴りを入れて早鬼を倒すと、オオカミ霊達に弾幕を放った。
オオカミ霊A「ヤベェ!組長がやられた!」
オオカミ霊B「一体誰に...おい、なんだあいつは!」
倒れている早鬼の後ろから赤ずきんの傭兵が銃を撃ちながら尤魔に接近していた。
尤魔「チッ...八千慧の部下か?」
赤ずきんの傭兵「私は雇われた傭兵よ。さっさと死になさい。」
尤魔の弾幕を鎌で跳ね返しながら近づくと、顔面に銃を撃ち込んで蹴り飛ばした。
しかし、背後には立ち上がった早鬼がいた。
早鬼「まだ終わってないぞ...」
赤ずきんの傭兵「おかしいわね。心臓に撃ち込んだのに。」
魔理沙「まずい...あいつら本当に死ぬぞ...」
慌てている魔理沙のもとに、天火人ちやりがやってきた。
ちやり「どうしたの?騒がしいと思って来てみたら...畜生共の抗争じゃん。」
魔理沙「呑気か!お前の組長はピンチなんだぞ?」
ちやり「まぁ生き返るし。尤魔が負けるわけないと思うよ?」
魔弾の射手「魔理沙。あいつらを止めれば良いんだろ?」
魔理沙「え?あぁ...頼む!」
魔弾の射手「簡単な事だ。」
魔弾の射手がそう言うと、早鬼に殴りかかる赤ずきんの傭兵に銃弾を撃ち込んだ。
赤ずきんの傭兵「うぐっ...この弾丸は...魔弾か!」
赤ずきんの傭兵は魔理沙達の存在に気づいた。
魔弾の射手「また会ったな傭兵。」
赤ずきんの傭兵「私の依頼をまた奪うつもり?」
魔弾の射手と赤ずきんの傭兵が言い合っていると、早鬼の近くに大きくて悪いオオカミが近づいていた。
大きくて悪いオオカミ「大丈夫!?僕が注意していれば...」
早鬼「大丈夫だ...こんな傷...ぐっ...!」
赤ずきんの傭兵によって死ぬ寸前の早鬼にカワウソ霊やオオワシ霊が襲いかかった。
オオワシ霊「潰すなら今だ!覚悟!」
オオワシ霊の攻撃当たる寸前...
一匹の狼の遠吠えが響き渡った。
オオワシ霊「な...なんだコイツ!?」
カワウソ霊「化け物だー!」
早鬼の隣にいた大きくて悪い狼は、滑稽な姿から痩せた獣の様な見た目に変貌し、体は古傷だらけであった。目からは獲物を威圧する眼光を走らせ、殺意に溢れたその形相は相手を恐怖させる。
早鬼「お前...」
大きくて悪いオオカミ「俺はアンタの部下でいられるなら...全力で敵から守って見せるぜ。全員血祭りにあげてやる...アンタ以外に恐怖されても、仲間外れにされても、いじめられたって構わないさ。」
その場にいた動物霊達は大きくて悪いオオカミの爪によって全員引き裂かれていった。
大きくて悪いオオカミ「なぜなら...俺は大きくて悪いオオカミだからよ。」
赤ずきんの傭兵「...あのクソオオカミ!」
その姿を見た赤ずきんの傭兵が早鬼に切りかかった。それをオオカミは爪で防御した。
大きくて悪いオオカミ「またお前か...赤ずきん!」
赤ずきんの傭兵「ふざけた事を言いやがって!それならば、お前が今一番大事にしているものを奪ってやる!」
そう言って、赤ずきんの傭兵は早鬼に銃弾を数発撃ち込んだ。
大きくて悪いオオカミ「この野郎!」
銃弾を体で受け止めながらオオカミが赤ずきんに突進した。池地獄の周りは二人の戦闘によってさらに荒地へと変わっていく。
八千慧「赤ずきん...一体何をしているのよ...」
八千慧は舌打ちすると、自ら戦場に赴いた。
魔弾の射手「赤ずきんと狼が会っちまった...畜生!」
魔理沙「このままじゃ私達まで死ぬぜ!」
妖夢「ど、どうしましょう!?」
「大丈夫よ!」
その時、どこからか明るい声が聞こえてきた。
魔理沙「だ...誰だ?」
その瞬間、上から放たれた虹色のビームが辺りを包み込んだ。赤ずきんの傭兵と大きくて悪いオオカミは吹っ飛ばされて、お互い気絶してしまう。そして、ビームによって気絶した畜生達が倒れた旧地の池地獄の真ん中には、一人の少女が立っていた。
「愛と正義の名のもとに!おしおきよ!」
ピンク色の服を着こなし、水色の髪と黄色い目。白い肌を持ち、平和を愛する魔法少女。
-憎しみの女王-が魔理沙達を救ったのであった。
続く...
- Re: 東方幻収録 18 ( No.18 )
- 日時: 2023/12/16 23:35
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
「愛と正義の名のもとに!おしおきよ!」
ピンク色の服を着こなし、水色の髪と黄色い目。白い肌を持ち、平和を愛する魔法少女。
-憎しみの女王-が魔理沙達を救ったのであった。
魔理沙「な...なんだアイツ!?」
魔弾の射手「あいつは魔法少女だ。名前は...-憎しみの女王-」
魔理沙「憎しみ?あの可愛い奴の名前が?」
魔弾の射手「話すと長くなる...」
---------
昔、数人の魔法少女達のそれぞれが己の正義心を胸に悪党達と戦ってきた。
愛と平和のために戦う者...
国や弱者を護るために戦う者...
その名誉と地位のために戦う者...
だが、彼女達の願いや思いは世界に否定されてきた。
正義の為に戦った者は、悪などいない事実に気が付くと自らが悪と化した。
平和な世界を夢見た者は、今や欲望のままにすべてを貪る悪になり果てた。
皆を護ろうとした者は、叶わない平和に絶望して空虚な誇りを持って堕落していった。
---------
魔弾の射手「って...Lobotomy社の職員は言っていた。」
魔理沙「ロボトミーってなんだ?」
魔弾の射手「それもついでに話しておくか...Lobotomy corporationってのが正式名称。簡単に言えば、俺達...幻想体の生むエネルギーを集め、利用するエネルギー会社だ。幻想体は自然発生した奴ら、トラウマや童話が変異して実体化したもの、Lobotomy社が自ら作り出した奴らもいる。」
魔理沙「そんな会社があるのか...」
魔弾の射手「だが、俺や他の幻想体もこの世界とは違う世界に住んでいたはずなんだ。まるで誘導されてるかのように...気が着いたら-幻想郷-にいたのさ。」
憎しみの女王「あら、魔弾さんじゃない!」
憎しみの女王がこちらに気がついたのか、走って来た。
魔弾の射手「よぉ...久しぶりだな。」
憎しみの女王「久しぶりに戦ってちょっと疲れちゃったわ。でも、悪はやっつけたわ!あなたは怪我とか大丈夫?」
魔理沙「ああ、大丈夫だぜ。助かったよ。」
憎しみの女王「またこういう事があったら私を呼んでね!私が皆を守るから!」
そう言って、憎しみの女王は魔法のステッキを掲げ、どこかに飛び立っていった。
魔理沙「憎しみの女王ってどういう奴なんだ?見た感じ良い奴だったけど。」
魔弾の射手「正義心は本当だ...だが、あいつは悪を倒し、平和を取り戻すという事に存在意義を見出している。あいつの周りがずっと平和なら、やがて平和を自らの手で破壊してしまうだろう...」
魔理沙「存在意義か...」
-魔法の森・魔理沙宅-
地獄の異変から二週間が経った。畜生同士の抗争も後に来た霊夢が各組織にカチコミに行ったので、しばらくは平和になるとの事だった。少し前には魔弾と葬儀屋から地獄の旧都街で勇儀達と仲良く宴会をしている写真も送られて来た。
魔理沙「最近は本当にやる事無いな...」
力試しにそこらの妖怪達に弾幕ごっこを仕掛けたり、霊夢や早苗と戦ったり、幻想体が現れる前と同じような平和な生活を楽しんでいた。
魔理沙「平和だな...」
憎しみの女王「本当よね。呆れるくらいここは平和だわ。」
魔理沙「いつの間に!」
魔理沙の机の横には憎しみの女王が立っていた。その目は黄色く輝いている。
憎しみの女王「もう我慢できないわ...平和だったら、私の存在する意味が無くなっちゃうじゃない!」
魔理沙「平和の為に戦ったんだろ?平和になるのは良い事だぜ?」
憎しみの女王「それじゃだめなの...だめだめだめだめだめ...!」
憎しみの女王がステッキから星型弾を魔理沙に放った。
魔理沙「危ね...!」
ピンクの兵隊が攻撃を咄嗟に防御してくれたおかげで、傷を負わずに済んだ。魔理沙は八卦炉と箒を持って外に飛び出した。その後を憎しみの女王が追った。ステッキが憎しみの女王の真上に浮かんだ瞬間、憎しみの女王が黒いハートに包まれた。中から出現したのは水色とピンクを基調にした竜の怪物であった。
憎しみの女王「影のない光は有り得ないように、この世界に真の悪は必ず存在すべきだ...」
魔理沙「待て!」
憎しみの女王「手始めに...あの時の場所へ...」
その声と同時に憎しみの女王は魔法陣を使ってテレポートしてしまった。
-旧都-
同時刻、憎しみの女王がテレポートしたのは地獄であった。
鬼A「竜だと!?」
都は活気に溢れ、鬼や妖怪が平和に暮らしていた。そこに混沌が訪れた。
憎しみの女王「グオオオオオオオオ!!」
竜の口に魔法陣が浮かび、鬼達にビームが放たれた。
鬼A「ぐわぁああぁあ!?」
鬼B「やべぇ...勇儀さんを呼んでこねえと...」
そう言って憎しみの女王から逃げようとする鬼の前には、金色の怪物がいつの間にか立っていた。
鬼B「ヒィィィィ!!」
金色の怪物はその鬼の体を貪っていった。その怪物は欲望のままに憎しみの女王と共に辺りを破壊していった。
貪欲の王「全部......喰い尽クシテヤル...」
二体の怪物が都の住民を蹂躙していった。
-旧地獄・縦穴-
霊夢「その魔法少女が地獄に逃げたのは本当なの?
魔理沙「地上はどこにも見当たらなかった。早くしないと地獄が危ない!」
妖夢「私も行きます!前に魔理沙さんと一緒に行ったので...」
霊夢「人手は多い方が助かるし、頼もしいわ。」
魔理沙「よし...このまま行けば橋に着くぞ!」
しかし、橋の上にパルスィは立っていなかった。
霊夢「あれ?パルスィってあそこにいるんじゃないの?」
魔理沙「今日はいないな...ん?どうしたんだピンクの兵隊。」
橋の上で一旦止まると、ピンクの兵隊が震えている事に気付いた。ハートは少し黒くなっている気がした。
ピンクの兵隊「...我々は、あなた達を...」
霊夢「そういえば、魔理沙。コイツ...弾幕ごっこの時に連れてきて盾代わりにしてなかった?そのたびに黒くなってる気がするんだけど...」
黒の兵隊「はい、私たち黒の兵隊は...人間の心に溶け込んで...優しい心をやっつけます。」
魔理沙「お前何を言って...」
黒の兵隊「人間の心は常に黒く...欲望で塗れています...定期的な清掃を...敬礼!」
その掛け声と同時に黒の兵隊が大爆発を起こした。
続く...
- Re: 東方幻収録 19 ( No.19 )
- 日時: 2023/12/19 21:17
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
黒の兵隊「人間の心は常に黒く...欲望で塗れています...定期的な清掃を...敬礼!」
その掛け声と同時に黒の兵隊が大爆発を起こした。
霊夢「《夢符・二重結界》!」
爆発寸前で霊夢が黒の兵隊を結界で閉じ込めて、爆風を防いだ。
霊夢「怪しいとは思ってわよ...魔理沙。あいつらに気を許しすぎよ?」
魔理沙「すまん...」
妖夢「何か来ますよ!」
遠くから黒く尖った剣が魔理沙に向かって飛んできていた。妖夢は楼観剣を鞘から抜いて、剣を弾き返した。
魔理沙「助かったぜ妖夢!」
霊夢「あいつが魔理沙に向かって剣を撃ってきたのね...覚悟しなさい。」
霊夢の睨む先には、青いドレスを着た白い肌を持つ女性。かつて、魔法少女の一人であった-絶望の騎士-だった。しかし、体の半分が目から流れる黒色の涙で覆われており、悲しそうに泣きながら、こちらに向かって来ていた。
絶望の騎士「私はかつて魔法少女だった者-絶望の騎士-よ...ごめんなさい。攻撃なんてするつもりは
なかったの...」
絶望の騎士は自分の周りに黒い刀を浮かばせた。
絶望の騎士「でも、変わらないと思ったのに......全てが変わってしまったのよ。私が護ると思っていたものもまた、敵であったわ。そして、絶対に護りきれた訳でもない...あなたたちの命もまた、私が護るべきもの...私が愚かだったわ...それでも、私はこの世界に絶望し続けるしかないの...」
妖夢「...絶望して、底まで落ちてしまって、もう方法が見えないのですか?」
妖夢が刀を構えた。
魔理沙「あれ?刀は二本だけじゃないのか?」
よく見ると、妖夢は楼観剣と白楼剣...そして、透き通る様な黒色の刀を腰にかけていた。
妖夢「これは白玉楼に置いていた甲冑の横に掛けられていた物ですよ。」
魔理沙「甲冑?一体誰が使ってたんだぜ?」
妖夢「......私の師匠...祖父が使っていた物です。」
--------
白玉楼で甲冑を見つけた後、祖父の言っていた言葉を思い出した。そして、その言葉が書かれた伝記の内容を...
……この甲冑は████年の「████████の戦い」に参加した████将軍が所持していた。甲冑は家宝であり、多くの世代に受け継がれた。
将軍は自分自身を守るために戦場でこの甲冑を身につけていた。
しかし、不運にも矢が甲冑の隙間から刺さり将軍は即死した。鎧は無傷のままだった。
その後、甲冑は██大隊の指揮官であった███の元に渡った。
指揮官は戦場に挑むたびに常に甲冑を着用していた。
ところがある戦で、彼は敵から逃げ出す際に落馬し、頭蓋骨を陥没する重傷を負って死亡した。
その時も、甲冑は無傷のままだった。
その後、この甲冑は様々な人の手に渡り戦場に出たが、彼らは全員死亡した。
それでも甲冑には傷一つ付かなかった。
数年を経て、甲冑は███と言う武士の元に渡った。
しかし、その武士は甲冑を残したまま戦場に出かけることで有名だった。
「武士に防具は不要、この体と刀があれば良い。」
彼はただの一度も負傷せず戦場を駆け抜け、老齢を経て亡くなった。
不思議なことに甲冑の籠手が壊れていたが、外部からの損傷は発見されなかった。
--------
妖夢「...甲冑を残したまま戦場に向かう武士...それは私の祖父の戦友でした。」
魔理沙「戦友だと!?」
妖夢「祖父は半人半霊。その武士は自分の寿命が尽きた後、祖父に渡そうとしていたんですよ。」
祖父の魂魄妖忌もまた、甲冑を身に着けずに敵と戦い、傷を負う事は無かった。戦友の武士の言った「武士に防具は不要、この体と刀があれば良い。」
その武士と同じ様に、妖忌は死を恐れずに敵に立ち向かっていった。
妖夢「祖父は白玉楼から幽居した時、外の世界に甲冑と刀は返したのでしょう...それでも、甲冑と刀は返ってきた...私も祖父とその戦友と同じものを持っています。」
腰に掛かった黒い刀が青く光り始めた。
妖夢「知ってますか?半人半霊には生きる欲も死にたいという欲もありません。」
妖夢の片目が蒼く輝いた。
妖夢「生は死を恐れぬ者にのみ与えられる。私が貴方を助けて見せます!」
飛んでくる数本の剣を-決死の一生-で弾き返し、-白楼剣-で絶望の騎士を斬りつけた。
ほんの数秒で、決着はついていた。
絶望の騎士「...私が...私が間違っていたのね...この深い絶望に、元から意味なんてなかった...」
絶望の騎士の周りに浮いていた剣が地面に落ちていった。
絶望の騎士「私は何ひとつ守れなかった...それは誤解だったのね...」
妖夢「努力は...決して報われるものです。残ったものは必ずあります。」
絶望の騎士「私は...残るは名ばかりの、見窄らしい矜持だけが残っていたと思い込んでいたわ。」
涙が晴れて、黒みがかった体に光が灯る。
絶望の騎士「でも、私の助けを求める人は必ずいるわ...あの二人もその筈...」
絶望の騎士はもう涙を流していない。
絶望の騎士「もう迷わないわ...ありがとう。そして、今度は私があの子達を救って見せるわ。」
霊夢「...じゃあ決まりね。私達、これからアンタの言う魔法少女達をとっちめに行くんだけど。助けてくれる?」
絶望の騎士「喜んでついて行くわ...」
-旧都-
魔理沙「勇儀!」
勇儀「魔理沙...助けに来てくれたのか?」
魔理沙「ここら辺で怪物は見なかったか?」
旧都は至る所が燃えており、建物が崩れていた。その都の中央に勇儀は立っていた。
勇儀「私が来た頃にはこの様さ...先に接敵してたあいつらもボロボロだ。」
近くの建物に寄りかかって、魔弾の射手と死んだ蝶の葬儀が座っていた。
魔理沙「二人共...大丈夫か?」
魔弾の射手「これが大丈夫に見えるか!畜生...貪欲と憎しみの魔法少女が暴走してやがった。」
絶望の騎士「やはり...あの二人なのですね。」
魔弾の射手「いつの間に!お前は正気なのか?」
絶望の騎士「私は助けられたのですよ。そして、今は彼女達を助ける番です。」
霊夢、魔理沙、妖夢、勇儀、葬儀屋、魔弾、絶望の騎士が集結した所で、怪物の姿をした憎しみの女王と貪欲の王が後ろにワープして現れた。
絶望の騎士「少しでも希望はある筈...必ず救ってみせる。」
魔法少女として再び、絶望の騎士は二人を救うため、旧都と妖夢達の平和を護るために戦う。
続く...
- Re: 東方幻収録 20 ( No.20 )
- 日時: 2023/12/21 00:04
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
絶望の騎士「少しでも希望はある筈...必ず救ってみせる。」
魔法少女として再び、絶望の騎士は二人を救うため、旧都と妖夢達の平和を護るために戦う。
憎しみの女王が魔法陣からビームを撃ち出すのと同時に戦いは始まった。魔弾の射手が距離を取りながら弾丸を撃ち、死んだ蝶の葬儀は指から蝶を飛ばして攻撃する。
魔弾の射手「俺達はこれで限界だ...後は任せたぞ!」
重症のために魔弾の射手と葬儀屋は都から撤退した。魔理沙と霊夢、勇儀が憎しみの女王。絶望の騎士と妖夢が貪欲の王と相手する形に分かれ始めた。
絶望の騎士「本来...彼女にはRED属性が効きません。しかし...」
絶望の騎士の周りに黒い剣が漂う。妖夢は決死の一生を構えた。
絶望の騎士「私の攻撃はすべて死を司る-PALE属性-。そして...」
妖夢「魂魄妖夢です。妖夢と呼んでくれれば良いですよ!」
絶望の騎士「ありがとう...妖夢の使う武器もPALE。属性はこちらが有利よ。」
貪欲の王が呻き声を上げながら近づいてきた所で二人で胴体を横から一気に斬りつけた。貪欲の王の体から血飛沫が上がった。
妖夢「効いている!」
絶望の騎士「このまま行けば勝てるわ!妖夢!」
貪欲の王「グ...グワァアアァァ!?」
攻撃を喰らった貪欲の王が突如、その場に倒れてしまった。その怪物の様な体から一人の少女が出てきた。
妖夢「え...人?」
絶望の騎士「油断しないで妖夢。まだ悪堕ちしたままよ。」
一見、黄金のドレスに包まれた美しい少女に見えるが、目から黒い涙が絶えず流れており、白い髪の毛も力無く垂れ下がり、片手に装着している拳の様な武器は怪物の形を模していた物だった。
貪欲の王「こんな形で会うとはね...姐さん。」
貪欲の王は拳を構え、妖夢達を警戒しながら睨んでいた。
絶望の騎士「もうやめて...貴方だって自分の過ちを理解して、乗り越えられる筈よ。」
貪欲の王「うるさい...みんなの幸福を願うには...私の幸せが必ず伴わなければならないことを知らなかったんだ...腹が満たされればきっと幸せになれるんだ......私は幸せになりたい...」
貪欲の王が妖夢に向かって突進して突き飛ばした。妖夢は刀で攻撃をいなし、後ろに下がった。絶望の騎士がその隙をついて貪欲の王に剣を向けた。
絶望の騎士「私は貴方達と同じく一度は狂ったわ...大勢の命を奪ってしまったかもしれない。それでも、希望はまだあるわ!」
貪欲の王「聞こえない...何も聞こえない!畜生...全部...全て私が喰い尽くしてやるんだ!」
その声と同時に貪欲の王の拳が光った。
___黄金の道_
前方に金色の魔法陣を展開し、それに入ると、辺りに出現する魔法陣から金色に輝きながら突進攻撃を繰り返した。
絶望の騎士「ぐっ...話し合いでは無理でしたか...」
集中的に絶望の騎士は攻撃され、剣で身を護る事で精一杯だった。
貪欲の王「ハハハハハ...成功した!さぁ、私のために餌となり......満たしてくれ...」
片手の武器が巨大な口に変形し、絶望の騎士に襲いかかった。
妖夢「待て!」
その言葉に反応して、貪欲の王が振り返ると、目の前には白楼剣を持つ妖夢の姿があった。
貪欲の王「いつの間に...!」
貪欲の王は白楼剣で腹部を斬りつけられた。
貪欲の王「......痛くない?」
しかし、斬られて血が出ていたわけでは無かった。その代わりに自分の貪欲な感情が消えた様に感じた。
妖夢「白楼剣は斬られた者の悩みを断つ事が出来る...貴方の葛藤はもう消えた筈です。」
貪欲の王「あぁ...なんて事を私はしてしまったんだ...最初から...私は自分自身の幸福しか考えてなかったのね...」
貪欲の王はその場に膝を崩し、涙を流した。しかし、流れた涙は透き通ったものだった。
貪欲の王「結局、私の空腹は満たされない...でも、それを-抑圧-する事は出来るさ...」
貪欲の王はもう悩まなかった。ドレスはより金色に輝き、髪の毛は闘志に呼応して縦に浮かび、片手の武器は美しく、強力な金色の武器としてもう一度輝きを取り戻した。
貪欲の王「もう私は...迷わない。私は自分じゃない...皆の幸福を護るために戦ってみせる!」
かつての活気を取り戻し、他人の幸福のために戦う真の魔法少女として、貪欲の王は蘇った。
絶望の騎士「後は彼女だけね...」
貪欲の王が正気になった頃、憎しみの女王も霊夢の《夢想天生》によって敗北していた。憎しみの女王の姿は人型へと戻り、意識も取り戻していた。恐る恐る魔理沙が顔を覗き込んだ。
憎しみの女王「...私...また暴れちゃったの?...また誰かを殺して...」
勇儀「安心しろ。死人はいない...怪我人もそこまで多くないからな。」
憎しみの女王「本当に...?」
勇儀「本当だ...心配するな。」
貪欲の王「おい、大丈夫か?」
憎しみの女王「先輩に...あなたも一緒にいたの?」
絶望の騎士「残念だけど、私達もさっきまで暴走していたわ...」
憎しみの女王「そう...ずっと我慢してたのね...あなたも」
憎しみの女王はそのまま泣きながら絶望の騎士に抱きついた。それを何も言わずに、絶望の騎士はただただ受け止める。貪欲の王は、破壊してしまった都の有り様をただ見つめていた。
-博麗神社-
魔法少女達の騒動から一ヶ月が経った。旧地獄では都の再建が進められており、復興は後少しで終わりだった。
魔理沙「あの時の魔法少女達も都の再建に協力してるらしいぜ?」
霊夢「へぇ〜...元気にやってると良いわね。」
魔理沙「貪欲の王っていう金色のドレス着た奴がいただろ?もう勇儀達と仲良くなってるみたいだし...」
そう言って、とある事に魔理沙が気付いた。
魔理沙「霊夢...その飾りは何だぜ?」
霊夢は両手にまるで陰陽玉の陰と陽が離れたようなペンダントを持っていた。
霊夢「少し前に神社の真ん中に落ちていたのよ。」
2つのペンダントは突如、魚の形になって重なり、紅白の龍となって霊夢の前に現れたらしい。
霊夢「最初は付喪神だと思ったんだけどね...」
陰「我が気になるか白黒。」
魔理沙「喋った!?...って白黒はお前もだろ?」
陰「我はかつて一つだった。」
陽「そして今、私達がまた一つになる時が来た。それだけだ。」
霊夢「陰陽玉を使えるのは継承者の私だからね...それにつられて来たのかもしれないし...」
二人が縁側で話している途中、憎しみの女王がワープして魔法陣と共に現れた。
続く...
- Re: 東方幻収録 21.5 ( No.21 )
- 日時: 2023/12/21 23:35
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
二人が縁側で話している途中、憎しみの女王がワープして魔法陣と共に現れた。
憎しみの女王「魔理沙達!地獄が大変なの...助けて!」
魔理沙「いきなりどうしたんだよ...また何かあったのか?」
憎しみの女王「旧都が幻想体で溢れかえったのよ!他の二人が今は応戦しているから早く来て!」
魔理沙「お...おう」
-旧都-
鬼A「あが...助け...て」
鬼B「あああああ!!痛え...痛ぇよお...」
鬼C「こっちにも化け物がいるぞ!」
鬼D「俺たちの力を超えるなんて...一体何なんだあいつら!」
魔理沙「...嘘だろ」
旧都を襲ったのは、-地中の天国-であった。都の至る所に生えた地中の天国に鬼たちが串刺しにされて死んでいた。
憎しみの女王「あの木は視線を向けている間なら危害は無いけど...あまりにも数が多すぎる!」
地中の天国は四方八方に生えていた。だが、鬼達を串刺しにした木は殺傷能力を失うので、鎮圧自体は容易だった。
貪欲の王「博麗の巫女だっけ?助かったよ。」
何とか都に生えていた地中の天国は全て無力化、焼却処分された。
魔理沙「だけど...幻想体達の出現は一定の間隔で湧いてくるよな。」
霊夢「一ヶ月から三ヶ月といった所かしらね...紫もこの異変には手こずってるらしいし...」
絶望の騎士「数人の住民は死んでしまいました...私がもっと早く鎮圧していれば...」
貪欲の王「いや、私達の注意がなければ今頃あの木に皆、串刺しだったさ。被害は最小限に収められた。」
実際、魔法少女の活躍により、地中の天国によるけが人はいなかった。死んだのは都の郊外近くで運悪く遭遇した二体の鬼だけらしい。この事件を受けて、博麗神社にしばらく住んでいた萃香も旧都に戻って勇儀と一緒に都の警備についたようだった。
-魔法の森・魔理沙宅-
その次の日、魔理沙は家で、地獄に行った時についでに買った材料を使って魔法の研究を進めていた。しばらくして、気分転換に罰鳥を撫でに行こうと外に出ると、家の近くにとある幻想体がいた。
魔理沙「...なんだ?」
その幻想体は-溶ける愛-であった。体がピンク色のスライムで出来た女性のような形をしていた。溶ける愛は魔理沙を不思議そうに見つめていた。
魔理沙「危害は無い...のか?」
その時、魔理沙の肩に乗ってきた罰鳥が溶ける愛へと近寄った。トコトコ歩いてくる罰鳥を溶ける愛は優しく掴んで顔に寄せてみた。罰鳥は頬ずりしており、溶ける愛は微笑んでいた。
魔理沙「悪い奴じゃなさそうだな。」
そうして、罰鳥をきっかけに溶ける愛と魔理沙は毎日のように遊んだ。研究の気分転換に同じ時間帯に魔理沙が溶ける愛に会いに行く事が続くと、溶ける愛は片言で話せるようになった。
溶ける愛「マリサ...スキ...コレ...アゲル」
魔理沙「ありがとう!私も好きだぜ!」
交友を深めていくと、いつしか魔理沙は溶ける愛から髪飾りのような-EGOギフト-を貰っていた。溶ける愛に気に入られた証だろう。
魔理沙「じゃ、また明日来るぜ。」
溶ける愛「...マタネ」
そう言って、家に帰っている途中、いきなり空中からプリズムリバー楽団リーダーの-堀川雷鼓-が現れた。
魔理沙「うわっ!いきなり落ちてくるなよ...驚いたぜ。」
雷鼓「ごめんごめん、貴方に招待したくてね。」
魔理沙「招待?」
雷鼓「旧都が少し前、異変で一回崩壊したのは知ってるでしょ?勇儀達が住民を元気付けるために旧都のど真ん中でライブして欲しいって言われたのよ!博麗の巫女と冥界の剣士も来るみたいよ?」
魔理沙「いつやるんだ?」
雷鼓「準備は整ったし、2日後よ。楽しみに待っててね!」
そう言って雷鼓は飛んでいった。このライブには、旧都の住民も喜び、その異変を解決した霊夢達も呼ばれるのであった。
しかし、忘れてはならない。あの-芸術を愛する-幻想体は無条件に音楽を聴く者の視野に現れる可能性がある事を。
プリズムリバー楽団の演奏と共に、壊れたものたちから世の中で一番美しい演奏が始まる事だろう。
続く...