二次創作小説(紙ほか)
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- 東方幻収録[Lobotomy corporation]
- 日時: 2023/11/03 09:54
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
この物語は[東方Project]と[Lobotomy Corporation]のクロスオーバー小説です。
※注意
・Lobotomy Corporationのネタバレを含みます。
・微グロ描写あり
・オリキャラは登場しません
・独自解釈あり
・死ネタ
以上です。楽しんで!
-プロローグ-
かつて、幻想体を収容し、そこから得られる物質-エンケファリン-を利用したエネルギー会社。しかし、Aが目指した-光の種-シナリオを起こす事は無かった。TimeTrack社の時間遡行技術が不具合を起こしてしまった。その中で大量の幻想体が収容違反。ループも出来ないまま、Lobotomy社は脱走した幻想体達によって地上に出る事無く壊滅した。誰も知らないまま、地下奥深くに封じこまれた一部の幻想体達は、しばらくして外に出たいと願い始めた。そして、何百年も経ち、完全に忘れ去られた幻想体達はいつしか、自分達のいた世界とは違う別の世界に生まれていた。幻想体達が見つけたのは忘れられた者達が辿り着く-幻想郷-
幻想体達は自らの存在意義、欲望、安息を求めて、幻想郷に出現し始める。
- Re: 東方幻収録 2 ( No.2 )
- 日時: 2023/11/03 23:10
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
魔理沙は夢を見ていた。
いつの間にか、魔理沙は森の中で立っていたのだ。しかし、魔法の森にいるわけではない。太陽や月は見当たらず、ただ全体が黒ずんだ森にいた。その時、魔理沙は後ろから気配を感じた。振り向いた方には、小さな白い鳥、背丈が高く、天秤を片手に持つ鳥、そして大鳥がいた。魔理沙は大鳥のその体を撫でようとした。
その時、大鳥の目が紅く染まり。鋭い嘴を開け、魔理沙の頭を喰い千切る
寸前で魔理沙は目を覚ました。
魔理沙「夢...か......」
荒くなった息を沈め、ベッドからゆっくりと立ち上がる。
眠りから覚めた魔理沙は朝食を済ませると、箒と八卦炉を持って森の中を歩き始めた。あの夢と昨日見た大鳥が気になったのだ。
大鳥はすぐに見つかった。
魔理沙「...」
手に持っているランタンを片手に、大鳥は魔理沙をじっと見つめる。距離は5メートル程離れていた。
魔理沙「さとりだったら...アイツの考えてる事も分かんだろうな...」
大鳥がこれまで魔法の森にいた存在ではないと何となく分かっていた。外の世界...別の世界から来たのだろう。魔理沙は夢の中の森を思い出す。あの夢の黒い森が本当にあったという根拠は無いが、それでも魔理沙は黒い森の存在が気にかかる。大鳥の故郷なのだろうか。
魔理沙「あの森で何かあったのか?」
尋ねてみるが、当然ながら相手は鳥。大鳥は首を傾げるだけだった。
魔理沙「ん?なんだあれ?」
よく見ると、大鳥の頭部に小鳥がちょこんと座っていた。白い羽根を持ち、胸には赤い模様を持った小鳥だった。大鳥は嫌がっている素振りを見せていない。それは、夢で見た小鳥に似ていた。
不意に白い小鳥が魔理沙の頭に飛んできた。頭に座ったかと思うと、帽子の上から頭を嘴でつつき始めた。
魔理沙「痛てて!」
魔理沙は慌てて小鳥から離れる。小鳥はその場を飛び回っていた。
魔理沙「あまり近づかない方が良いな...」
二匹の鳥から後退りし始める。
その時だった。
?「汚染度レベル80%...クリーニングプロセスを始めます!」
小鳥の横から何かが茂みから出てきた。
魔理沙「何だアイツ!?」
しかし、それは生物では無かった。真っ白い装甲に、小さな赤い目を持つその機械-オールアラウンドヘルパー-が突如、体から四つのアームを小鳥に向けて繰り出す。アームには血のついた刃物が装着されていた。
オールアラウンドヘルパーは小鳥に突進すると、三つのアームで小鳥をうつ伏せに拘束して、刃物を小鳥に振りかぶった。
魔理沙「やめろ!」
数発の光弾を放つが、傷一つ付かなかった。
魔理沙「これならどうだ!《恋符・マスタースパーク》!」
八卦炉から巨大なレーザーが発射された。レーザーは、オールアラウンドヘルパーが掲げていた一本のアームを消し飛ばした。オールアラウンドヘルパーは魔理沙に顔を向けた。
魔理沙「次の標的は私か...」
強く握った八卦炉をもう一度オールアラウンドヘルパーに向ける。
しかし、オールアラウンドヘルパーは、背後から紅い目を光らせた大鳥に体を喰い千切られた。大鳥は動かなくなったオールアラウンドヘルパーといくつかのネジを吐き出すと、小鳥に近づいた。
魔理沙「大丈夫か?」
魔理沙が小鳥に近づくが、大鳥は反応しない。
起き上がった-罰鳥-は、しゃがんでいる魔理沙をしばらく見つめると、肩に乗って頬ずりし始めた。
魔理沙「無事そうで良かったぜ...」
しかし、よく見ると背中に先程傷つけられたであろう小さな切り傷が付いていた。
魔理沙「家に持ち帰ってみるか...」
魔理沙が歩き始める。罰鳥は肩に乗っており、大鳥は魔理沙に付いてくる。味方だと信じてくれたのかもしれない。
-人間の里-
大量の人間が妖怪に変貌した事件を聞いた寅丸星と聖白蓮は、死者達を弔おうと里へ歩いていた。
寅丸「あの豪邸の人達は気の毒だった...」
豪邸に住んでいた主も使用人も善良な人達であった。命蓮寺に来る事もあり、顔見知りであったため、聖と寅丸はその事件を聞いて悲しんだ。
聖「残酷な話ですよ...自分達の意思に関係無く妖怪に成り代わり、殺されてしまったのですから。」
その時だった。
村人「助けてくれえぇぇぇ!!」
里に入ってすぐの民家から悲鳴が聞こえた。聖達が向いたその先では、一人の男性が怪物に拘束されて襲われていた。
聖「離れなさい!」
呪文を説いた聖は怪物を殴り飛ばした。
寅丸「怪我は無いか?」
男性「は...はい!」
寅丸「よし...皆!離れるように!」
男性と周りの人達を避難させると、聖と共に寅丸が怪物を睨みつける。
寅丸「ただの妖怪じゃない...餓鬼のようだ。」
首に大きな数珠をつけたその怪物は、まるで餓鬼のような姿をしていた。
怪物は高速で距離を詰め、寅丸に長い爪を伸ばした。寅丸は宝塔で攻撃を防いだ。その隙に聖が横から怪物に魔力を込めた拳を腹部に放った。魔力の大きさに耐えきれず、怪物はその場に倒れ、霧のように消えていった。
寅丸「被害が出る前で良かったな。」
そのまま豪邸に歩き始めようとした所で、後ろから誰かが走ってきた。
村紗水蜜「ここに居たのね!」
やってきたのは村紗だった。
寅丸「村紗?どうしてここに...」
村紗「命蓮寺で怪物が暴れてるのよ!」
聖「怪物が...?」
村紗「良いから来て!」
村紗と共に聖と寅丸は急いで寺へと帰ってしまった。
腐食し、溶け合う死体達が一つの山へと固まり始めた。
続く...
- Re: 東方幻収録 3 ( No.3 )
- 日時: 2023/11/04 23:31
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-命蓮寺-
村紗に連れられて、聖と寅丸が寺に戻る。
寅丸「一体...どうなっているんだ!?」
寺の中では、2体の幻想体が暴れていた。
数人の人間の訪問客が寺内で倒れており、弾幕を放って雲居や響子が怪物と戦っていた。
村紗「戻ってきたぞ!二人とも!」
雲居「聖達も来てくれたか!これなら行ける!」
雲居達が戦っていたのは、手に鍬と鎌を装備した-知恵を欲する案山子-と、所々苔の生えた金属製の体を持ち、巨大な斧を片手に持った-温かい心の木こり-であった。
雲居は強力な拳を案山子に放つが、そのたびに案山子は地面に倒れている死体から血を吸って回復していた。響子の攻撃で木こりの体が傷つくことは無く、聖達が来るまで攻撃を回避することで精一杯だった。
そして、響子の動きが一瞬鈍った所で、木こりの斧が胴体に直撃した。
響子「うぐっ...!」
吐血しながら響子がその場に倒れた。
村紗「響子!《転覆・道連れアンカー》」
村紗が巨大なアンカー弾を木こりに向けて飛ばす。しかし、木こりは思いっきり斧を振り被り、アンカー弾を弾き飛ばした。
村紗「何!?」
木こりは動けなくなった響子に歩み寄る。
響子「た...助けて!」
必死の抵抗も虚しく、響子は木こりに胴体を掴まれる。
聖「待ちなさい!」
聖達が木こりに攻撃しようとした瞬間、案山子が吸っていた死体を投げ飛ばし、攻撃を妨害した。
寅丸「ぐっ...間に合わない!」
響子は木こりに持ち上げられ、胴体部分の穴にその体をねじ込もうとする。
響子「いやぁぁぁぁぁ!!」
響子の救出は失敗してしまった。
その時だった。
?「無意味な行動だ...他人の心を収めたとしても、それは偽りの心に過ぎん。」
突如、木こりの周りに紅い炎が地面から吹き始めた。気を取られた木こりの隙を見つけ、響子は木こりの拘束から逃れた。しばらくして、木こりの中に元々入っていた臓器が燃え始めた。木こりは慌てるように死体を探すが、近くの死体は骨を残して燃えてしまった。-心-を失った木こりはその場に座り込み、動かなくなってしまった。炎は案山子にも燃え移り、真っ黒に焦げた案山子は腰が90度折れて、そのまま動かなくなった。
しかし、炎が聖達を燃やすことは無かった。一種の妖術だろう。
突然の助けに呆気に取られていた聖達の後ろにはいつの間にか、一人の僧が立っていた。
聖「もしかして...貴方が助けてくださったのですか?」
?「助けたなんてとんでも無い...助けられたのは私の方です。」
寅丸「どこかで会ったか?」
?「あなた達のおかげで拙僧は、自分の過ちと罪に気づく事ができました。」
寅丸「...その数珠......まさか!」
風雲僧「悪鬼は極楽に行けない...それならば、この世で出来る事をやり遂げる。それを拙僧の生き様とした。」
黒い三度笠を頭に被り、所々がひび割れた数珠を首に掛けた-風雲僧-は、聖にお辞儀した。
風雲僧「先程は見苦しい姿を見せてしまった...拙僧の未熟さ故...申し訳ない。」
聖「まさか...里で暴れていたあの怪物は、貴方だったんですか!?」
風雲僧「恥ずかしながら...」
風雲僧は自らの過去を聖達に懺悔した。
寅丸「やはり、外の世界の者だったか...しかも数千年前の。」
風雲僧「拙僧は自らの欲望に呑まれ、餓鬼として数多くの民を殺してしまった...」
顔は黒い布で隠されて見えないが、自分の過ちに対して怒っていたのは明白だった。
風雲僧「拙僧はもう人間と名乗る資格も無い。拙僧はただの化け物...」
錫杖を強く握りながら、その場に崩れ落ちた。
風雲僧「しかし、いつの間にか拙僧はあの里にいた。欲望を抑えている最中、貴方の噂を聞いたのです。貴方は人間にも妖怪にも平等に接してくれると。」
風雲僧は聖に懇願した。
風雲僧「弟子入りを認めて欲しいのです!昔の過ちと...向き合いたいのです...」
その場に膝をつく風雲僧に聖は歩み寄った。
聖「...分かりました。認めましょう...弟子入りを。」
風雲僧「...ッ!本当ですか!?」
聖「人も妖怪も神も仏も全て同じです。貴方が人食いであったとしても...今の貴方は欲望を抑える事ができました。そして、自ら向き合うと誓ったのですよ?」
聖が風雲僧の手を取った。
聖「例え許されなくとも...罪と向き合い、少しでも...貴方が報われるのならば。」
風雲僧が顔を上げた。風雲僧の数珠は傷一つ無く、淡く光っていた。
風雲僧は自らの欲望を-抑制-するため、聖の弟子として命蓮寺に入門した。
寺の死体は跡形も無く消えていた。炎で燃えてしまった訳では無い。死体は、豪邸の庭の見捨てられた山へ集まっていた。
続く...
- Re: 東方幻収録 4 ( No.4 )
- 日時: 2023/11/08 22:17
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-命蓮寺-
寅丸「留守ばかりですまない...風雲僧」
風雲僧「滅相もない。拙僧に任せてください。」
寅丸「...頼んだぞ。」
聖と共に寅丸は迷いの竹林へと向かった。
風雲僧が命蓮寺に入寺して二日が経った。幻想体達の襲撃で負傷した村紗や響子、一輪は永遠亭に入院しており、聖達は毎日お見舞いに永遠亭へと歩いている。その間、命蓮寺の留守番は風雲僧が引き受けていた。
風雲僧「あの施設から抜け出して...日の光を見るのはいつぶりか...」
風雲僧は太陽の照りつける日の下で、一人瞑想を始めていた。しばらくすると、風雲僧は2つの気配を感じ取った。
風雲僧「何奴...」
振り向いた方に立っていたのは、二人の少女だった。
古明地こいし「あれ?私の事見れるの?珍しい人だねー」
風雲僧「心を無にすれば、相手を見なくとも気配で分かる。」
こいし「へぇ〜そうなんだ。結構古臭い服着てるんだね!ひと昔前の人みたい!」
当然の様に悪口を言うが、風雲僧は無視する。
風雲僧「何か用事でもあるのか?」
こいしの後ろに立っているもう一人の少女-秦こころ-に尋ねた。
こころ「私達はこの寺で修行してるの。」
風雲僧「そうであったか...すまない。聖様達は生憎、寺にはいない。」
こころ「あっそ...」
白けた態度でこころは帰っていった。こいしは「またねー」と言って、寺の敷地から飛んで行った。
風雲僧「本当にこの寺には妖怪がおるのか...」
そんな事を思いながら瞑想を再開した。
-霧の湖-
湖の近くに位置する小さな森で、チルノを始めとした妖精達が集まっていた。大妖精の他にサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアなどが来ていたのだが、何やら様子が変だった。
チルノ「久しぶりだね三妖精!ちょうど大ちゃんと里に行こうとしてたんだけど...」
サニー「チルノ!」
チルノの言葉を遮って、サニーが叫んだ。
チルノ「何よいきなり」
サニー「ルナが熱出してるのよ!」
チルノ「熱ぅ?」
スターに背負われて、ルナはチルノの目の前に連れてこられた。
ルナ「げほっげほっ...ごめんねチルノ...」
チルノ「別に良いわ。こんぐらいの熱、すぐ治るわよ。」
自分の手をルナの頭に当てると、ルナの表情が和らいでいった。
スター「数日前に魔法の森に行ってから...ルナの体調が良くなかったのよ。」
チルノ「何か変なものでも食べたの?」
スター「違うけど...妙なのよ。」
チルノ「何が?」
スター「三人でかくれんぼしてたんだけど、ルナが突然ハチを見つけた!って騒ぎ出して森から出たんだけど...首が痒いって言いながら倒れたのよ。熱出しててびっくりしたわ。」
チルノ「そこらのハチに刺されたんでしょ?」
スター「それだけなら良いけ...」
その瞬間、ルナが叫び出した。
ルナ「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
地面に倒れ込むと、自分の首を掻きむしり始める。
サニー「ル...ルナ?」
そう呼びかけた瞬間、ルナの頭が飛び散った。
サニー「え...?」
ルナの体から出てきたのは、巨大なハチであった。長い足に小さな頭と胸を持ち、巨大な腹部を持っており、頭には鋭い牙がついている。
スター「いやぁぁぁぁぁ!」
目の前で死んだ姿を見て、スターが絶叫した。それに反応したのか、-働き蜂-はスターの方に体を向けて、その巨体でスターを押し潰した。
サニー「スター!」
働き蜂に圧死させられたスターの死体から、新たな働き蜂が出てきた。
その時、チルノ達の上から、複数の羽音が聞こえた。上空から数匹の働き蜂が何かを抱えて、チルノ達の前に置いた。別の働き蜂が持ってきたのは、顔面が裂け、飛行手段を失った-女王蜂-であった。
サニー「もしかして...ルナが遭遇した蜂ってあいつの事!?」
女王蜂が咆哮した。それと同時に所々が裂けている胴体の穴から黄色い胞子を周りにばらまき始めた。
大妖精「ごほっ...何か...お腹が痛い...」
胞子を吸った大妖精がその場に倒れた。
チルノ「大ちゃん!」
サニー「近づいちゃ駄目よ!チルノ!」
胞子から逃れていたサニーがチルノを押さえた。大妖精の首は零れ落ち、働き蜂が生まれた。
サニー「多分、あの胞子が原因でルナ達は死んだのよ...」
チルノ「それなら...」
チルノは空中に浮遊すると、女王蜂に向けて弾幕を放った。
チルノ「《凍符・マイナスK》!」
チルノが炸裂する氷弾を放った。氷弾は全ての働き蜂と女王蜂に一つずつ刺さり、刺さった所から蜂達は凍り始めた。しばらくして、完全に凍ってしまった蜂達は、巨大な氷で出来たハンマーによって氷ごと肉体をチルノに粉々にされてしまった。
チルノ「あんな奴らに殺されるなんて...」
死んだ妖精達が生き返る事は無かった。
しばらくして、天狗達の新聞の記事は-妖精達の死-という話題で持ち切りだった。
幻想郷の各地で妖怪達とは違う未知の怪物-幻想体-は別の場所でも次々と発見されているようだった。
数人の人間が魔法の森に入って行き、行方不明になった話。赤ん坊の鳴き声がどこからとも無く聞こえ、聞いた者が行方不明。妖怪の山の小さな洞窟で蜘蛛に似た異形の目撃情報などが上げられた。
豪邸の事件は数日で人々からの記憶から薄れていった。
-紅魔館-
?「この世界でも、人の命は妖怪によって容易く散っていく...次こそ...次こそは皆を救って見せるぞ!」
白黒を基調としたスーツを着込み、棺を担いだその人物...-死んだ蝶の葬儀-は、紅魔館へと向かって歩いていた。
続く...
- Re: 東方幻収録 5 ( No.5 )
- 日時: 2023/11/10 21:23
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
幻想体達が現れてから一週間程が経った。奇妙な鳥達と遭遇した魔理沙、一人の僧が新しく命蓮寺に入った事や妖怪達の死。たくさんの物事が同時に置き始めてから時間が経ち、他の人妖も次々と幻想体達と遭遇していった。
-妖怪の山-
早苗「これが例の洞窟ですか...」
山中の洞窟の中へ早苗が入っていった。数日前から、この洞窟に入っていった白狼天狗達が帰ってこないらしく、同じく白狼天狗の椛に洞窟の調査を依頼されたのだった。薄暗い洞窟内を慎重に歩き進めると、早苗が足元の気配に気づいた。
早苗「うわぁ...こんなにたくさん...」
洞窟内の地面では大量の小さな蜘蛛が走り回っていた。そして、洞窟の奥の真ん中に何かが吊るされているのを発見した。よく見ると、それは人の形をしていた。
早苗「...ッ!」
早苗が見たのは、糸を巻かれ、拘束されていた白狼天狗達だった。幸い、息はしているが、かなり弱っていた。無数の白狼天狗を拘束していたのは、真ん中に吊るされた黒い塊の様なモノだった。無数の目を持ち、子蜘蛛達を見守るその黒い塊は-母なるクモ-の頭であった。早苗が上を見上げると、暗闇の中に長い足を隠している事に気づいた。
早苗はゆっくりと後退りし、子蜘蛛を踏まないようにそっと離れる。母なるクモは早苗の足元を凝視する。早苗は冷や汗を垂らす。ここに来た白狼天狗達は、子蜘蛛を踏んで、あんな姿にされたのだろう。早苗は直感で理解した。
子蜘蛛達は興味津々に早苗の足元に近づく。早苗の心拍音が早まった。
隣で吊るされている白狼天狗が子蜘蛛に齧られている。早苗の耳に「助けて」と聞こえた。
母なるクモはいつでも拘束出来る様に、常に早苗の真上で脚を構えていた。
早苗「...ごめんなさい!」
白狼天狗達は全員生きていた。それでも早苗は逃げた。白狼天狗達は身震いしながら、子蜘蛛達に喰われている。それでも、助けようとすれば早苗自身も同じ目に会うだろう。
後に、誰も洞窟へ調査しに行く事を願い出なかった。
-魔法の森-
魔理沙「全く...可哀想な奴らだぜ。」
八卦炉をポケットに仕舞い込む。目の前には青色に変色した-人間だったモノ-の死骸があった。
大鳥と罰鳥に会ってから数日経ち、久々に買い物にと里で魔理沙が歩いていると、突然一人の少女から話しかけられたのだ。
「両親が森から帰って来ない」
そう少女から聞かされた魔理沙はすぐに森へと向かった。数日前、ちょうど魔理沙が大鳥に遭遇した日、とある貴重な薬草を求めてその少女の両親が森へ行ったらしい。その少女は珍しい病気にかかっており、永遠亭の医者から魔法の森の入り口付近にその病気を治せる薬草があると聞いたからだ。しかし、両親は森に向かってから帰って来ないらしい。妖怪に遭遇したのではと魔理沙は考えたが、魔法の森は並の妖怪が好んで住む場所ではない。そもそも、森の中は強い瘴気が充満しているので、凶暴な妖怪が住み着いているとも考えにくい。いたとしても、アリスや成美に駆除されるだろう。そうして向かって魔理沙が見つけたのは、森の中に聳え立つ巨大な茸であった。
その姿に魅了され、危うく近づいてしまう所だったが、罰鳥と大鳥によって正気に戻った魔理沙は、その茸の周りを彷徨く二体の異形に気が付いた。異形の怪物は魔理沙に突進するが、大鳥と罰鳥によって阻まれ、その隙に二体とも魔理沙の《恋符・マスタースパーク》によって倒された。異形の足元に落ちていた薬草といくつかの服から、その異形が少女の両親である事を魔理沙は理解した。
大きな青色の傘を持ち、赤い指を持つ青い手の様な二本の枝、薄い膜を持った不気味な茸が人間を異形化させる原因であった。目にも見える程の青い胞子を周りに撒き散らすその茸を魔理沙が火で燃やした。そうしないと、自分まであの異形にされてしまうと思ったからだ。茸は跡形も無く炭となり、地面に落ちた。
完全に茸が燃える寸前で、魔理沙はその茸に顔を見た気がした。しかし、そんな事を考えている暇はない。その茸は一人の少女の両親の命を奪い、利用したのだから。孤独になった少女はこれからどうなるのか。魔理沙は少女の両親への追悼として、その大きな茸に-小さな王子-と名付けた。人間を手懐けて、自分の繁殖に利用したのだから。
両親はその呪いを受け入れていたのか?
魔理沙は里へと戻ったが、少女は見つからなかった。
-人間の里-
魔理沙は里の中を全力で走っていた。向かっていたのは、里の外れにある小さな小屋だった。扉を勢い良く開けて、精一杯叫んだ。
魔理沙「霊夢!いるか!」
魔理沙の目の前には霊夢が立っていた。振り向いた霊夢には血飛沫がべったりと付いていた。
魔理沙「何が...一体何があったんだよ!」
霊夢「もう終わったわよ。」
霊夢の後ろには、血だらけで倒れている黃褐色の粘液で濡れた赤ん坊の様な形をした巨大な異形の姿があった。
霊夢「残念だけど手遅れよ。一人死んだわ。」
魔理沙「...そんな」
魔理沙が森に向かっている間、あの少女は何かの鳴き声につられて里の外れへと歩いていた。里の警備をしに来た霊夢にそれを見た村人がそれを伝えていた。急いで霊夢は里の外れにある小屋へと向かうが、霊夢が見たのは、赤ん坊の異形が絶叫する少女を伸びた口で噛み付いて、自分の腹部に開いた穴へ引っ張る所であった。霊夢の弾幕が異形に当たる前に少女は噛みつかれ、粉々になってしまった。激昂した霊夢は異形を完膚無きまでに叩き潰した。同じく村人から聞いて、少女がいなくなってしまったと慌てて魔理沙も向かったが、辿り着いた時には全て終わっていた。
霊夢は小屋を焼き払い、異形が存在したという証拠を消した。他の人間が混乱するのを防ぐためだと言う。ふと、魔理沙が霊夢の方を見る。燃えている小屋を見つめる霊夢の顔は、小さな王子を燃やした時の自分の顔に何となく似ている気がした。
誰も知る事は無く、二つの事件は解決された。これからも、誰も知る事は無いだろう。
二人の顔の意味を。
-紅魔館-
一方、霧の湖にある島の畔。そこに位置する巨大な館に珍しい客が訪れた。
美鈴「...誰だ!」
館の正門を守る美鈴の前に客は止まった。
?「初めまして...お嬢さん。別に危害を加えるわけじゃ無いさ。」
美鈴「でも、その姿は妖怪...ですよね?」
客の外見は異質だった。白黒を基調とした喪服を着込み、人間の様な見た目をしているが、五本の腕を持っていた。肩から四本ずつ、首元からも一本生えており、頭部は白黒の蝶に置き換わっていた。肩から伸びる二本の腕をポケットに突っ込み、残りの二本で背中に棺を抱えている。首元から伸びる手は手招きするように動いていた。
?「そうだな...大体同じだ。」
美鈴「用件は何ですか?」
?「この館の主に会いたい。いつの間にか、この世界に迷い込んだみたいなんだ。」
美鈴「外来の妖怪ですか...分かりました。どうぞこちらに」
美鈴に連れられて、客人が紅魔館へと入った。
?「この館は外装も内装も美しいね。」
エントランスホールの真ん中に立って、客人は賛美した。
レミリア「あら、見る目があるわね。」
?「...君がこの館の主かい?」
レミリア「いかにも、私が紅魔館の主、レミリア・スカーレットよ。貴方の名前は?」
?「初めまして。私の名前か...強いて言うなら、-死んだ蝶の葬儀-とでも言いましょうか。」
-死んだ蝶の葬儀-...それがLobotomy社に付けられた彼の名前だった。
レミリア「蝶の葬儀屋ねぇ...何をしに来たのかしら?」
死んだ蝶の葬儀「いつの間にか、この世界に迷い込んでしまったんだ。知っている事があるならば教えてほしい。」
レミリア「いいわよ。教えてあげるわ...この幻想郷の事を。」
葬儀屋は幻想郷の事を聞いて、喋り始めた。
死んだ蝶の葬儀「なるほど...」
葬儀屋は少しの間考えた後、レミリアに尋ねた。
死んだ蝶の葬儀「この館には人間がいるのか?」
レミリア「もちろんいるわよ。咲夜。」
咲夜「どうなされましたか?」
いつの間にか、レミリアの後ろに咲夜が立っていた。
死んだ蝶の葬儀「君は人間なのかい?」
咲夜「初めまして、紅魔館のメイド長を務める十六夜咲夜です。」
死んだ蝶の葬儀「私の名前は死んだ蝶の葬儀だ。まぁ...葬儀屋で良いさ。」
レミリア「で、他に聞きたい事は?」
死んだ蝶の葬儀「君は吸血鬼だろう?質問させて欲しい。」
人は死んだらどこへ行くと思う?
レミリアに向けて葬儀屋は尋ねた。
レミリア「さぁね。業が深ければ地獄、でなければ天国に行くんじゃない?」
死んだ蝶の葬儀「妖怪は人間よりも長生きすると聞いたが、命を持つ事に変わりは無い。この世界の事を知れて良かったよ。」
葬儀屋は新聞をポケットから取り出した。
死んだ蝶の葬儀「先程この館に来る前に拾ったんだが、なにやら最近は死人がたくさん出ている様だな。」
レミリア「当たり前よ。里の人間を襲う事はそんなに無いけれど、結局は人間。私達も生きるために殺すのよ。」
死んだ蝶の葬儀「生きるためか...」
葬儀屋は棺桶を下ろすと、その蓋を開けた。棺桶の隙間から白い蝶が何匹か飛び出てくる。棺桶を閉めて、葬儀屋はその上に座って語り始めた。手には一匹の蝶が止まっていた。
死んだ蝶の葬儀「どの生き物にも等しい筈の命は簡単に散っていく...ここも例外では無かったんだな。」
レミリアの目の前を一匹の蝶が飛んで行く。
死んだ蝶の葬儀「人間が死ねばちいさな翼を持った美しいものになるってずっと信じていた。幻に散り、悲嘆を禁じ得ない可哀相な死者達へ......ただただ、哀悼の意を表そう。だが、ここに来て、私の役目は無駄な物では無くなった。」
死んだ蝶の葬儀「咲夜...君は-死-に恐怖した事はあるかい?」
咲夜「死...ですか。確かに怖いと思いますよ。死んでしまったら、ここにいるお嬢様にも、美鈴にも...友達にも会えなくなりますからね。それでも、私はいずれ来る-死-を受け入れるでしょうね。」
その言葉で葬儀屋の動きが止まる。
咲夜「死人に口無し。それでも良い...生きている間は一緒にいますから。」
死んだ蝶の葬儀「.........そうか。」
葬儀屋は棺桶を持った。そして、咲夜にこう言った。
死んだ蝶の葬儀「話を聞かせてくれてありがとう。その言葉、心に刻んでおこう。それと...」
咲夜の目の前に立つと、葬儀屋は二丁の白黒の拳銃を渡した。
死んだ蝶の葬儀「これは君に渡しておこう。」
咲夜「これは...?」
死んだ蝶の葬儀「私のEGOだ。他人にくれてやっても良いが。」
そう言うと、葬儀屋は満足した様に、館から去っていった。
その瞬間、小悪魔が大図書館の方から走ってきた。
小悪魔「大変ですよ!お嬢様!」
レミリア「一体どうしたの?」
小悪魔「侵入者です!いつの間にか侵入者が図書館に入ってきたんですよ!」
美鈴「しまった!門は開けっ放しだった!」
咲夜「美鈴...後で部屋に来なさい。」
美鈴「はい...」
レミリア「そんな事は良いから早く向かうわよ!」
-大図書館-
地下に位置する紅魔館の図書館内に咲夜と美鈴、小悪魔を連れて、レミリアが入った。
美鈴「危ないっ!」
咄嗟に美鈴が咲夜を押し倒した。
咲夜「ちょっと...何よいきな...」
そう言いかけた所で、咲夜が元いた場所に弾丸が飛んでいった。美鈴が気づかなければ死んでいただろう。
咲夜「助かったわ...美鈴は怪我してないの?」
美鈴「大丈夫ですよ!」
小悪魔「あー!見つけました!」
小悪魔達の目の前に立つ本棚の上に人影が見えた。
小悪魔「こらーっ!降りてきなさい!」
?「なんだなんだ?さっき追っかけてきた悪魔じゃねぇか。消えたと思ってたら仲間を連れてきたのかよ。」
小悪魔「私は小悪魔だ!同じにするなー!」
?「まぁまぁ...同じ種族なんだし、仲良くしようぜ?」
パチュリー「面倒な奴ね...」
レミリア達と少し離れた所で、パチュリーが魔法陣のバリアを張っていた。
レミリア「苦戦してるようねパチェ!私が来たからには安全よ!」
パチュリー「レミィも来てくれたのね...もう...体力の限界が...」
魔法陣が消えると共に、パチュリーが落下する。咲夜が時を止めてすぐさま助けた。抱き抱えたパチュリーを持って、レミリアの前へ戻ってくる。
咲夜「大丈夫ですか?」
パチュリー「ありがとう咲夜...」
乱れた呼吸を落ち着かせながら、パチュリーはその場に座り込んだ。
パチュリー「侵入者も小悪魔と同じ種族の魔物よ。注意しなさい。」
レミリア「貴様...パチェを傷つけたからには覚悟しなさいよ。」
?「お前...さては吸血鬼だな?」
レミリア「あら、良く気づいたわね。」
?「どんな奴でも俺は撃ってきた。俺は元人間だ。悪魔との契約で俺までも悪魔になっちまった。俺は撃ちたくて撃ちたくて堪らねえんだよ。魂も集めなきゃ行けないしなぁ?」
青と黒を基調にした服を着込み、不定形な体を持つその幻想体は自らの事を-魔弾の射手-と言った。
魔弾の射手はマスケット銃の様な物をレミリアに向けた。
魔弾の射手「この弾丸はあいつの言った通り、どんなものにでも当たるな!後ろの魔法使いには防御されたが...」
レミリアの脳天に照準が合った瞬間、引き金が引かれる。蒼い閃光を放つ魔弾がレミリアを狙った。
続く...
- Re: 東方幻収録 6 ( No.6 )
- 日時: 2023/11/11 22:29
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
レミリアの脳天に照準が合った瞬間、引き金が引かれる。蒼い閃光を放つ魔弾がレミリアを狙った。
レミリア「当たるもんか!」
レミリアは高速で避けて弾丸を躱した。
魔弾の射手「馬鹿なのか?この弾丸は絶対に当たる!」
レミリアを通り過ぎていった弾丸が青い魔法陣へと吸い込まれていった。それと同時にもう一つの青い魔法陣がレミリアの後ろに展開される。魔法陣から出てきた弾丸はレミリアの胴体を貫いた。
レミリア「がはっ...!どうやって弾丸が...」
咲夜「お嬢様!」
魔弾の射手「だから言っただろ?お前の魂は貰うぜ!」
地面に膝をつき、動けなくなったレミリアにもう一度銃を構えた。
咲夜「させるか!」
魔弾の射手が引き金を引く寸前、時が止まった。
魔弾の射手「...ッ!いつの間に...」
魔弾の射手は引き金を引く寸前で止めた。いつの間にか図書館からレミリア達が消えていたからだ。
咲夜「私の能力よ。」
魔弾の射手の背後に咲夜が立っていた。
魔弾の射手「お前...アブノーマリティじゃぁ無いよな?」
咲夜「ただの人間よ。-時を操る能力-を持ってるだけのね。」
魔弾の射手「フン、標的なんて誰でも良い。魂を貰おうか。」
魔弾の射手が咲夜に銃を構えると、咲夜は隠し持っていた2丁拳銃を取り出した。
魔弾の射手「葬儀屋のEGOか...受けて立とうじゃないか!」
咲夜は自らの時を加速し、四人に分身する。魔弾の射手は目の前に魔法陣を展開すると、弾丸を素早く魔法陣に撃ち込んだ。魔弾の射手に接近する分身は、周りに展開された魔法陣から射出される弾丸によって次々と撃ち抜かれていった。
魔弾の射手「お前が本体か!」
正面から接近する咲夜に銃を向けた。咲夜は二丁拳銃-崇高な誓い-を両手に構え、走りながら数発撃った。魔弾の射手は本棚を遮蔽物に回避する。
咲夜「隠れても無駄よ!」
時を止めて後ろに回り込んだ咲夜が魔弾の射手の背中に数発撃ち込んだ。
魔弾の射手「ぐっ...面倒な奴め!」
魔弾の射手は咲夜の攻撃に見向きもせず、図書館中央の開けた場所に移動した。真ん中で立ち止まると、魔弾の射手は天井に巨大な魔法陣を展開して、百発もの弾丸を連射した。それと同時に、図書館内のあちこちにいくつもの魔法陣が展開された。魔法陣と魔法陣の間を移動するように、図書館内は無数の弾丸が飛び交う無法地帯となった。
魔弾の射手「俺の弾丸が魔法陣を通れば転送と同時に加速し、獲物を探知して確実に貫く!例え、壁があったとしてもな!」
その瞬間、大量の魔法陣が咲夜を囲う様に展開され、放たれた百発の弾丸が咲夜の心臓を狙った。
咲夜「本当に銃を撃ちたいっていう-本能-に縛られてるのね。終わりにしましょう。《幻世 ザ・ワールド》」
咲夜は時を止めると、魔弾の射手が自身を弾丸で囲ったのと同じ様に、百本のナイフを魔弾の射手に向けて全方向から飛ばした。それを終えると、咲夜は自ら弾丸に囲われた場所へと戻った。時が動き出し、自身の置かれた状況に気がついた魔弾の射手が動揺する。
魔弾の射手「......畜生!」
咲夜を囲っていた弾丸は咲夜に命中する寸前ですぐさま別の魔法陣が展開された事によって回収され、百発の弾丸は咲夜に当たる事無く、魔弾の射手が百本のナイフの攻撃を防ぐための相殺として使われた。二人の間には数メートルの距離がある。周りには無数のナイフと弾が落ちていた。
咲夜「いくら弾丸をコントロールしたって、時を止めれば当たらないわ。」
魔弾の射手「チッ...切りがねぇ...」
魔弾の射手は諦めたのか、近くの椅子に座り込んで不貞腐れた。
咲夜「どうしてそんなに必死なのよ?」
魔弾の射手「必死な訳あるか。俺は楽しんでいるんだ。」
咲夜「楽しんでいる?」
魔弾の射手「少し昔の話だ。Lobotomy corpとか言う会社の地下に長い間閉じ込められていた。一日に撃てるのは数発だけ。退屈で仕方が無かったんだよ。」
魔弾の射手は咲夜の方に顔を向けた。
魔弾の射手「久々に本気を出せて俺は満足だ。ありがとよ。」
その目は一際青く光っていた。その時、魔弾の射手は何かを思いついた様に、服のポケットを探ると、中から一本のパイプを取り出して咲夜に与えた。
魔弾の射手「あの吸血鬼へのお詫びだ。受け取ってくれ。」
咲夜「...貰っとくわ。」
魔弾の射手「後一つ言っておこう...」
立ち上がった魔弾の射手は、一つの青い弾丸を咲夜に渡した。
咲夜「これは?」
魔弾の射手「俺に勝った記念にやるよ。ソイツはお前が本当に危険だと思った時に使え。その弾丸を強く握り締めながら、撃ちたい奴を心の中で思い浮かべろ。そうすれば、俺はソイツの魂を文字通り撃ち抜いてやる。」
そう言い残し、魔弾の射手は自身の体を変形させて、隙間から逃げていった。
咲夜「......危険な時...ね」
しばらくしてレミリア達が図書館へと入ってきた。咲夜は弾丸をポケットに仕舞い込み、レミリア達の方へと歩いて行った。
-永遠亭-
永琳「困ったわね...」
日が沈みかけ、暗闇に包まれた竹林の中に光る一つの建物-永遠亭-。永琳は目の前のベッドに横たわる患者の対処に困っていた。その患者が傷ついていたのは体では無く精神であった。今日の昼頃に妖怪の山で-何か-にあったと言う一人の白狼天狗。仲間に連れられて永遠亭に来たのだが、その白狼天狗はずっと支離滅裂な言葉を叫んでいた。
永琳「鎮静剤も全く効かないし...どうしたら...」
鈴仙「どうしたんですか?師匠。」
永琳の後ろから、鈴仙が駆け寄って来た。
永琳「この白狼天狗が全く正気に戻らないのよ。」
鈴仙「そうですか...」
白狼天狗「あああぁああぁぁあぁあぁぁあぁあ!」
白狼天狗は自分の頭を掻きむしりながら、発狂していた。
鈴仙「あの...一体何があったんですか?」
白狼天狗「あぁああぁあぁ!なかまがぁぁああぁあ!」
鈴仙「仲間?」
白狼天狗「いっしょだったのにいっしょだったのにいっしょだったのにぃっぃぃい!」
ベッドから転げ落ちた白狼天狗はいつしか泣いていた。
白狼天狗「うぐっ...ひぐっ...あいつがあんなすがたにされてぇええぇ......」
その時、白狼天狗が突然鈴仙の首を締めた。
鈴仙「がっ...!」
永琳「優曇華!このっ...離しなさい!」
永琳は白狼天狗を鈴仙から引き剥がし、咄嗟に麻酔を首元に打ち込んだ。
白狼天狗「あぁああぁああぁあ!なかまがあの[規制済み]にされて[規制済み]がおってきてぇえ!」
鈴仙「...え?」
白狼天狗「なんで[規制済み]なんてぇぇええぇ!ああぁあぁ[規制済み]がああああ...ぁぁあ...!」
麻酔が効いてきたのか、白狼天狗の口は止まった。叫び続けて体力が尽きたのか、そのまま眠ってしまった。
永琳「まるで何者かに襲われた様ね...」
鈴仙「それなんですが...師匠。」
永琳「どうしたの?」
鈴仙「この白狼天狗が言っていた[規制済み]って何ですか?」
続く...