二次創作小説(紙ほか)

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東方幻収録[Lobotomy corporation]
日時: 2023/11/03 09:54
名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)

この物語は[東方Project]と[Lobotomy Corporation]のクロスオーバー小説です。

※注意

・Lobotomy Corporationのネタバレを含みます。
・微グロ描写あり
・オリキャラは登場しません
・独自解釈あり
・死ネタ

以上です。楽しんで!

-プロローグ-

かつて、幻想体を収容し、そこから得られる物質-エンケファリン-を利用したエネルギー会社。しかし、Aが目指した-光の種-シナリオを起こす事は無かった。TimeTrack社の時間遡行技術が不具合を起こしてしまった。その中で大量の幻想体が収容違反。ループも出来ないまま、Lobotomy社は脱走した幻想体達によって地上に出る事無く壊滅した。誰も知らないまま、地下奥深くに封じこまれた一部の幻想体達は、しばらくして外に出たいと願い始めた。そして、何百年も経ち、完全に忘れ去られた幻想体達はいつしか、自分達のいた世界とは違う別の世界に生まれていた。幻想体達が見つけたのは忘れられた者達が辿り着く-幻想郷-

幻想体達は自らの存在意義、欲望、安息を求めて、幻想郷に出現し始める。

Re: 東方幻収録 7 ( No.7 )
日時: 2023/11/12 23:34
名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)

-魔法の森・アリス邸-

ここ一週間で様々な幻想体達と遭遇し、しばらく顔を出してなかったので、魔理沙は久しぶりにアリスの家を訪れた。
もちろん、大鳥と罰鳥を連れている。罰鳥の傷は治ったのだが、どうも魔理沙に懐いたらしく、今は二匹とも飼っている。しかし、飼っていると言っても魔理沙に懐いただけであって、大鳥は家の近くを彷徨いたり、罰鳥は家に一番近い木の枝に止まっていたり、半ば放し飼いの状態になっていた。
大鳥は飛べないので、アリス邸には歩いて行った。

魔理沙「おーいアリス!いるか?」

玄関で声を出してノックすると、しばらくしてアリスが扉を開けて出てきた。

アリス「あら、久しぶりね。家で研究でもしてたの?」
魔理沙「アリスに見せたい奴らがいるんだ。」

魔理沙の肩から罰鳥が飛び出した。罰鳥はしばらくアリスの頭上を飛ぶと、肩に降りた。それに続いて大鳥がアリスの目の前に歩いてきた。頭を撫でると、大鳥は目を瞑った。

アリス「可愛い鳥達ね。どこで見つけたの?」
魔理沙「家の近くで見つけたんだ。」
アリス「そうなの...まぁ良いわ。早く家に入りなさい。」
魔理沙「そうだな。ごめんよお前ら、ちょっと待っててくれ。」

そう罰鳥と大鳥に言うと、魔理沙はアリスと一緒に家の中に入っていった。大鳥達はその場で昼寝を始めていた。





しばらくすると、起きた二匹の元にもう一匹の鳥がやってきた。背丈が高く、天秤を片手に持つその鳥の名は-審判鳥-だ。

魔理沙「またな!アリス!」

ちょうどそのタイミングで魔理沙が家から出てきた。

魔理沙「あれ...もう一匹増えてる!?」

審判鳥が魔理沙の方を向いた。すると、天秤を魔理沙の目の前に向けて、審判を始めた。魔理沙は審判鳥の動きを静かに-洞察-した。だが、天秤は片方が異様に傾いた不平等な物であった。天秤は悪い方向へと傾き続ける。

しかし、その天秤が完全に傾く直前で審判鳥が審判を辞めた。よく見ると、罰鳥が審判鳥の頭を執拗に突いていた。審判鳥が罰鳥に顔を向けた。何かを理解したのか、審判鳥は少しの間、動きを止めると、魔理沙を見つめた。しかし、顔はボロボロの布で覆われているため、こちらの姿が見えると魔理沙は思わなかった。そして、魔理沙は理解した。審判鳥はその名の通り、罪を見ているのだろう。

魔理沙が家に帰ろうと歩き始めると、大鳥達と一緒に審判鳥までもがついてきた。三匹は仲が良さそうだと魔理沙は感じた。

アリス「なかなかうまく行かないわねぇ...」

魔理沙が帰ってから、アリスは一人で人形を作っていた。

アリスの目標は自分の意志を持ち、自分の意志で動く事の出来る完全な自立人形を作る事だった。

アリス「...何?」

人形を作っていると、玄関からノック音が聞こえた。

アリス「魔理沙?何か忘れたの?」

「わすれた」

アリス「これの事ね...」

アリスが手に取ったのは、一つのメモだった。魔理沙が自分の研究で作った魔法を書き記す物のようだった。

アリス「...随分とかすれた声ね。一体どうしたのよ?」

玄関の扉を開けたその時、アリスの一瞬の気の緩みが仇となった。

アリス「ッ!」

玄関にいたのは魔理沙では無かった。声を真似ていたのだ。-それ-はアリスに一瞬の隙も与えずに飛びかかり、首に噛み付いた。

アリス「がっ...!」

人間と形容し難い-それ-は人間の皮を被った化け物だった。長方形の頭には2つの口があり、口からは巨大な舌がさらけ出している。顔には4つの目を持ち、頭部に鋭い爪を持った腕が一本生えていた。
胴体は誰の物かも分からない人間の臓器や骨で出来ており、体の中央は透けて、中にいくつかの腸のような臓器が浮き出ていた。

アリス「誰か...助け...て...」

首から血が流れ出し、声は誰の耳にも残らない程に小さかった。アリスの耳には、化け物と荒い呼吸音だけが聞こえていた。

化け物の目的は、完全な人間への擬態であった。アリスの死体は化け物に取り込まれていった。

残ったものは、何もない。

-永遠亭-

一人の白狼天狗が入院してから一日が経った。永琳は様々な種類の精神剤などを投与したが、全く効かなかった。

永琳「ありがとう。おかげで助かったわ。」

しかし、白狼天狗はとある人物の来訪によって治療されたのだった。

?「いえいえ、同じ医者です。助け合って一人でも多くの患者を治療したいと私も願っているのですから。」

その人物は頭にペストマスクを被り、腕の代わりに翼を持ち、全体的に黒い服を着た医者であった。
その医者は自らの事を-ペスト医師-と言った。

-魔法の森・アリス邸-

アリスの家に訪れた次の日、魔理沙は家に忘れ物をしたため、一人で箒に乗って、急いでアリス邸へ向かった。

魔理沙「アリス!開けてくれ!」

激しくノックすると、不思議そうにアリスが魔理沙の事を見つめた。

アリス「......」

アリスはただ黙って魔理沙の事を見ていた。

魔理沙「いきなりで悪い...忘れ物をしちゃってさ...」

アリス「Hello?」
魔理沙「ん?どうしたんだ?」
アリス「I love you.」
魔理沙「なんかおかしいぜ...一体...?」

そう言いかけた途端、いきなりアリスが叫び始めた。

アリス「がっ...!離して...!」

その声で魔理沙の動きが止まった。

魔理沙「アリス...?」
アリス「やめて...ぁぁ...からだが...うごかない...」

アリスは魔理沙を見つめたまま、まるであらかじめ記憶した事を流す様にただ喋っていた。

アリス「誰か...助け...て...」














助けて...魔理沙...








そこでアリスが話すのを辞めた。

魔理沙「...」

それと同時に魔理沙が最大出力のマスタースパークを八卦炉から発射した。ビームはアリスを撃ち抜いて、家事貫通させて大爆発を起こした。しかし、アリスは無傷でその場に立っていた。

魔理沙「...お前は誰だ。」

-アリスだったモノ-に八卦炉を構える。

魔理沙「アリスを...返せ!」

そして多くの「皮」は、ただ一つの言葉「魔理沙」と喚いた。

続く...

Re: 東方幻収録 8 ( No.8 )
日時: 2023/11/15 22:18
名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)

-冥界・白玉楼-

死後、人間は閻魔の裁きによって、地獄か冥界、天界のどれかに行く事になる。死者が成仏か転生を待つこの場所は結界が緩んでいるからか、幻想体達も出現していた。

白玉楼の庭を眺めながら縁側に座るのは、白玉楼の主・西行寺幽々子だ。その使用人である魂魄妖夢は、日の届かない奥の部屋で、一つの置き物をじっと見ていた。

幽々子「妖夢、どうしたの?」
妖夢「...幽々子様。この置き物ってどこから出したんですか?」

妖夢の前に鎮座するのは、甲冑であった。全体的に少し錆びており、右の籠手は外れて落ちていた。

幽々子「少し前にいきなり白玉楼の門の前に置かれていたのよ。誰が置いていったのかは分からないけどね。」
妖夢「そうですか...なにか見覚えがあるんですよね...」
幽々子「懐かしいわね〜妖夢が小さい頃に妖忌が外の世界で見つけたのよ。」
妖夢「...思い出した!」

時は■■■時代。■■■■年に起きた戦いで■■■■将軍が所持していた甲冑であり、その甲冑は家宝として様々な武士達に受け継がれてきた。その中で一時期、外の世界で旅をしていた妖忌が白玉楼に持って帰ってきたのがその甲冑であった。当時、白玉楼に無数の妖怪達が襲撃するという原因不明の事件が終わった後、消えてしまった。それと同時に妖忌を白玉楼から姿を消したのだが、妖忌が戻る事は無かった。その時は妖夢も幼かったが、甲冑が戻ってきた事で妖夢の記憶も蘇った。

妖夢「私はまだ小さかったから全く覚えてませんでしたよ...」

妖夢は甲冑に古い紙が挟まっているのを見つけた。その紙は巻物の切れ端であった。

妖夢「...この甲冑の事について書かれてる。」

その紙の文を読んで見る。
--------------
甲冑は████年の「戦いた████将軍が所持。甲冑は家り、多くの世代れ
将軍自分自でこの甲冑を身にいた。
しかし、将軍は
その後、甲冑は官であった
指揮官は戦場に挑むたびに常に甲冑を着用していた。
ところがある戦で、から逃げ出す際に落馬し、頭蓋骨を。
甲冑のままだった。
その後、した。
それでも甲冑には傷一つ付かなかった。
数年を経て、甲冑は渡った。
しかし、その武士は甲冑を残し
彼はただ場を駆け抜け、老齢を経て
不思議なことに甲冑の籠手が壊れていたが、。
その後、███の家族が甲冑をこの博物館に寄贈した。
---------------
紙はボロボロで穴が空いており、内容も支離滅裂でとても読めたものでは無かった。

妖夢「おじいちゃんに一回聞いた事がある気がするなぁ...」

読むのを諦めて紙をポケットにしまって、庭の方へと歩いていった。妖夢は甲冑の内側で眼が青く輝いた所を見るが、気のせいだろうと、振り向く事は無かった。

-妖怪の山-

白狼天狗「敵襲!敵襲!総員戦闘態勢に移れ!」

山の中腹で敵の襲撃があったようだ。白狼天狗達が警報の鳴った所に集まっていた。

白狼天狗A「敵はどこだ!」
白狼天狗B「あっちで音が...って椛さん!」
犬走椛「敵は見つかったか?」
白狼天狗B「いえ...今、総出で山の中を調べています!」
椛「そうか...」

椛が千里眼の能力を使おうとしたその時、叫び声がすぐ後ろであがった。

椛「そこか!」

その場にいた白狼天狗達が一斉にそちらへ注意を向けた。











全員が視線を集中させたその先には、一つの箱の様な物が置いてあった。正方形の形をした金属性の箱には2つのレンズと鍵穴がついており、そこから一つの眼がこちらを覗いていた。近くには血だらけで白狼天狗が一人倒れていた。

白狼天狗C「あいつが侵入者か!」

一人の白狼天狗が武器を構えた寸前で、倒れていた天狗が声を上げた。

白狼天狗D「こっちを見るなぁぁぁ!」
椛「何だ...?」
白狼天狗D「こいつは見たらいけな...」

その瞬間、箱から四本の鋼鉄で出来た脚を繰り出して歩き始めた。箱の底と脚には血がこびりついており、その箱は眼の前で倒れている白狼天狗を一人、脚で串刺しにして殺した。

白狼天狗A「かかれぇっ!」

全ての白狼天狗が剣を前に突き出して、一斉に飛びかかった。しかし、剣は箱を貫通する事無く、容易く折れてしまった。

白狼天狗B「何!?」

その瞬間、箱は二本の腕を追加で繰り出した。腕の先には巨大な丸鋸がついており、近づいてきた白狼天狗の数人の胴体を切断して殺害した。

白狼天狗A「こいつ...隠し持っていたか...!」

箱から椛へ執拗な目線が送られる。椛は最初に死んだ天狗の言葉を思い出していた。

椛「......その通りなら勝算はある!皆、あの箱から視線を逸らせ!別の場所へ逃げろ!」
白狼天狗C「椛様...一体何故...」
椛「良いから早くしろ!」
白狼天狗C「...はっ!」

全ての白狼天狗を逃がすと、椛は箱に向けて背中を向けながら喋り始めた。

椛「やはり合っていたな...お前は他人に見られている間のみ動けるんだな?」

その箱-シャーデンフロイデは、恨めしそうに椛を見続けていた。椛は後退しながら剣を取り出し、シャーデンフロイデの鍵穴を力強く刺した。抵抗する事も無く、シャーデンフロイデは眼を刺され、無力化された。椛が振り返ると、既にシャーデンフロイデは消えていた。

椛「侵入者はまだいるようだな...」

シャーデンフロイデを倒したものの、警報は止んでいなかった。そして、しばらく歩くと、気に寄りかかって座り込む白狼天狗を見つけた、。

椛「こんな所でどうしたんだ?」
白狼天狗A「...椛様...この先には行かないでください...」
椛「何?」
白狼天狗A「あなたも[規制済み]に殺されてしまいますよ!」
椛「[規制済み]ってなんだ?」

そう質問した瞬間、椛の前に怪物が現れた。

椛「......何...!?」

椛の目の前には、形容し難い怪物がいた。見るだけで不安や恐怖に心が支配され、頭痛や吐き気、目眩までしており、不快感で思わず吐きそうになる。白狼天狗Aは発狂していた。

白狼天狗「...ああああぁぁぁあぁ!殺される!僕も[規制済み]に[規制済み]される!」

武器を置いて一目散に逃げる天狗をその怪物は軽々と捕らえて貪った。白狼天狗は悲鳴を上げて逃げようとするが、すぐに包み込まれて怪物に[規制済み]される。[規制済み]された天狗は[規制済み]となって椛に接近する。

椛「おえっ...おえぇっ...!」

あまりの不快感と絶望が急激に椛を襲った。椛の手はいつしか震えていた。

椛「なんで...あんな怪物に怯えて...」

同様を隠しきれないでいると、先程眼の前で貪られた天狗の他に、周りにいた白狼天狗も[規制済み]されていた。

椛「いやだ...なりたくない...あんな姿になりたくない!」

椛まで武器を捨てて逃げ出そうとするが、怪物は椛の足を捕まえて拘束した。

椛「やめろ...来るな!」

椛に怪物が迫る寸前で、上空から音が聞こえた。

にとり「おーい!大丈夫か!」

上空にいたのは、ジェットパックをつけた河童のにとりであった。

椛「殺されたくない!殺されたくない!」
にとり「あれ...聞いて無いかぁ...しょうがない!」

そう言うと、にとりは一つのメガネの様な物を取り出して、椛につけた。にとりも同じ様なものをつけていた。

椛「殺され...ってあれ?どうしてあんなに騒いでいたんだ?」
にとり「アイツが原因だよ。」

メガネ越しに椛が見たのは先程、椛が殺されかけた怪物のような物だった。怪物の姿は複数の赤いバーによって隠され、バーには[CENSORED]と描かれていた。



山の中腹では

Re: 東方幻収録 9 ( No.9 )
日時: 2023/11/16 22:08
名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)

-妖怪の山・中腹-

にとり「アイツの名前は...-規制済み-とでも言っておこうか?」
椛「そうだな。それにしても...アイツの姿を思い出しただけでまた吐き気がしてくるよ...」
にとり「私の作った改造眼鏡が無かったら死んでたね。少し前に私は遠くから見た事あるけれど、他の河童がその場にいたから発狂せずに済んだよ。おかげで対抗手段は出来たし。」
椛「私達の力を舐めてくれちゃ困る。」
にとり「よし来た!早速兵器の実践よ...皆!」

にとりがそう言った瞬間、周りの木々から規制済みを取り囲む様にたくさんの天狗や河童達が武器を持って来た。全員、改造された眼鏡をつけている。

妖怪の山は、人間や麓の妖怪とは別の社会を築いており、幻想郷の巨大な勢力の一つである。特に天狗や河童は外の世界の物を模擬した高度な技術力を持っており、天狗は写真に関する技術。河童は金属を使った建築や道具に関する技術を持っており、この山に攻め入る妖怪はそうそういない。
さらに、山に住む妖怪達は仲が良く、強い仲間意識を持つので、山への侵入者は見つけ次第追い出される。特に天狗は一人でも仲間が傷つけられると、全員が敵対し、迅速に侵入者を排除するだろう。

山の大半の妖怪が椛達の場に今、集まったのだ。天狗達は弾幕の準備をし、白狼天狗達は剣を構える。河童は銃器を向けていた。規制済みは悍ましい咆哮を上げると、近くに倒れている白狼天狗達の死体に覆い被さり、[規制済み]する。死体は規制済みの眷属に変化していき、数十体の眷属が規制済みを取り囲んだ。

椛「かかれ!」

椛の一声と共に規制済みへ妖怪達が飛びかかった。






-魔法の森-

同時刻、魔理沙はアリスの偽物と接敵していた。

魔理沙「それが本当の姿か...?」

魔理沙の目の前でアリスの皮を裂いて中から出てきたのは、人間の皮を被った化け物-何もない-だった。長方形の頭には2つの口があり、口からは巨大な舌がさらけ出している。顔には4つの目を持ち、頭部に鋭い爪を持った腕が一本生えていた。胴体は誰の物かも分からない人間の臓器や骨で出来てお
り、体の中央は透けて、中にいくつかの腸のような臓器が浮き出ていた。

-何もない-は、魔理沙に突進するが、その途中で卵のような形になって止まってしまった。

魔理沙「なんだ...?」

しばらく様子を見ていると、卵が割れた。

魔理沙「...ッ!」

中から出てきたのは、人の形をした-何もない-であった。右手は太い棍棒、左手は鋭い爪が伸びており、胴体からは複数の内蔵が剥き出していた。

何もない「HELLO?」

無数の人間が混ざった様な声と同時に左手から勢い良く棘を射出した。

魔理沙「飛び道具持ちかよ!」

ギリギリで避けると、魔法陣を展開して弾幕を浴びせた。

魔理沙「喰らえ怪物!《恋符・ノンディレクショナルレーザー》」

複数の魔法陣からレーザーや星型の弾が-何もない-に直撃する。しかし、-何もない-の体には傷一つついていなかった。

魔理沙「嘘だろ...!?」
何もない「Oh...Help...HELP!」

魔理沙に高速で近づいた-何もない-は棍棒を魔理沙の頭目掛けて振り下ろした。寸での所で横に避けると、魔理沙は-何もない-の胴体に八卦炉を押し当てた。

魔理沙「粉々にしてやるぜ!《魔砲・ファイナルマスタースパーク》!」

高出力の極太ビームが-何もない-の胴体を撃ち抜いた。

何もない「ギャァァGyあaあぁぁalaあッ!?」

胴体にはぽっかりと穴が空き、ヨロヨロと後退りする-何もない-に魔理沙が追い打ちをかけた。

魔理沙「うぉぉぉぉぉぉ!《星符・ドラゴンメテオ》!」

倒れ込んだ-何もない-を真上から狙い、ビームを放った。ビームは直撃し、爆風によって辺り一面に砂埃が舞った。

魔理沙「...これでどうだ!」

息を切らしながら、撃ち込んだ場所を確認する。
何とその場には、平然とした表情で-何もない-が立っていた。さらに-何もない-に空いていた穴や傷は塞がり、完全に体力を回復していた。

魔理沙「再生だと...」

-何もない-の真価は単騎での戦闘能力にある。凄まじい威力を持つ近接・遠距離攻撃を備えたこの怪物は、大抵の生物なら簡単に殺せてしまう。立て続けに弾幕を放って体力を消耗した魔理沙に-何もない-が接近した。

魔理沙「......殺される!」

-何もない-が目の前まで迫り、死を覚悟した瞬間。






霊夢「《霊符・夢想封印》!」

魔理沙に近づく-何もない-が弾幕で吹き飛ばされた。魔理沙の元に霊夢が駆けつけたのだ。

魔理沙「...霊夢!」
霊夢「全く...死ぬ所だったわよ?」
魔理沙「でも...アリスがアイツに殺されたんだぜ!?」
霊夢「分かってる。」

起き上がった-何もない-の声にはアリスの声も混じっていた。

何もない「助け...助けて魔理...沙」
魔理沙「アリスの言葉を真似るな!」

怒りに任せて魔理沙が八卦炉を構えながら-何もない-に接近した。

霊夢「...魔理沙危ない!」





魔理沙「......え?」

魔理沙がもう一度胴体にファイナルスパークを当てようと近づいたその瞬間、-何もない-の左手が巨大で鋭く尖った斧に変化した。斧は魔理沙の心臓目掛けて振り下ろされ...
























何もない「GOOD BYE.」




直前で霊夢が魔理沙を押し倒した。魔理沙の代わりに霊夢の腹部に斧が貫通した。

霊夢「がはっ...!」

辺りに血飛沫が飛び散る。霊夢の口と腹部からは絶え間なく血が流れていた。

魔理沙「......霊夢ッ!!」

-何もない-が霊夢の腹部から斧を抜いた。魔理沙は-何もない-に近づき、落ちてくる霊夢を抱きしめた。

魔理沙「霊夢...霊夢!返事してくれよ!」

霊夢の巫女服は真っ赤に染まっている。魔理沙に返事は帰ってこなかった。

魔理沙「嫌だ...死なないでくれよ霊夢!」

しかし、目の前には-何もない-が魔理沙達を見下ろしていた。-何もない-は再度、右手を斧に変形させ始めた。

何もない「FRIENDLY DEATH!」

魔理沙の首に斧が迫った。

続く...

Re: 東方幻収録 10 ( No.10 )
日時: 2023/11/19 20:29
名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)

-魔法の森-

何もない「FRIENDLY DEATH!」

魔理沙の首に斧が迫った。
その瞬間、辺りに鈴の様な音が鳴った。

魔理沙「...なんだあれ!?」

音と同時に-何もない-が縄で首を締められた。-何もない-の後ろには黒い羽が集合して出来た絞首台があった。

魔理沙の後ろにはいつの間にか罰鳥達がいた。

魔理沙「助けに来てくれたのか...!」

審判鳥が-何もない-に天秤を突き出して攻撃していた。-何もない-は、縄を解こうとその場で暴れていた。大鳥が意識を失った霊夢を頭の上に乗せて永遠亭の方向へと向かっていった。罰鳥は-何もない-の頭に近づいた。すると、罰鳥の胸の赤い模様から巨大な嘴が出現し、-何もない-の頭に喰らいついた。

魔理沙「あんな事出来るのかよ!?」

しかし、罰鳥の攻撃は効いていなかった。

何もない「Oh...OMG!...HELP!」

-何もない-が雄叫びを上げながら縄を引きちぎった。

何もない「GOOD BYE.」

拘束を抜け出した-何もない-は審判鳥に接近し、斧を振りかぶった。審判鳥の右腕が大きく裂けてしまう。罰鳥が再度-何もない-に嘴攻撃をしようと飛びながら突進する。

何もない「HELLO?」

しかし、左手から射出された棘に直撃してしまい、罰鳥はその場に落ちてしまった。

魔理沙「やめろ!」

罰鳥に向かって右手の混紡を振り下ろそうとする-何もない-に弾幕を放って注意を引いた。

魔理沙「霊夢が助かるなら...私は...」

既に大鳥は魔理沙達のいる所から離れていた。魔理沙は八卦炉片手に捨て身の攻撃を仕掛けようとしていた。
魔理沙は八卦炉からマスタースパークを放った。-何もない-はビームに直撃するも、突進を辞めなかった。魔理沙に再度、斧が振り下ろされた。

紫「そこまでよ怪物。」

突如現れた-八雲紫-の攻撃によって、-何もない-の攻撃が邪魔された。

魔理沙「紫...!」
紫「悪かったわね...別の用事もあってね」

紫は結界を魔理沙の周りに張って、-何もない-の攻撃を無力化しながら喋った。

紫「霊夢は永遠亭に送ってあるわ。あの鳥のおかげね。」
魔理沙「良かった...」

何もない「Oh...HELPHELPHELP!」

だが、-何もない-は持ち前の火力で結界を強引に破壊した。

紫「あら、もうちょっと持つと思ったんだけど。」

紫が周りにスキマを開けると、スキマの中から無数の細いビームが飛び出した。ビームは-何もない-の体を軽々と貫通していく。

何もない「魔理沙!魔理沙!」

-何もない-は自身の体を再生しながら突進してくる。

紫「回復はさせないわよ?」

-何もない-の右側からスキマが開いた。スキマの中からは式神の八雲藍が出現し、藍は目の前にいる-何もない-の顔を軽々と殴り飛ばした。

何もない「HELLO?」

すかさず棘を射出するが、すぐさま結界を張った事によって、藍への攻撃は全て防御された。

何もない「GOOD BYE.」
紫「...ッ!」

だが、-何もない-が狙っていたのは紫であった。藍へ攻撃しながら紫の目の前まで走り、斧を振りかぶった。

魔理沙「紫!」

-何もない-の攻撃によって、紫の左腕は半分程裂けた。

紫「あの怪物...空間事切り裂くとはね...幻想郷から立去れ。《廃線・ぶらり廃駅下車の旅》」

紫の横に出現した巨大なスキマから廃電車が飛び出し、-何もない-を轢いていった。-何もない-はすぐに起き上がるが、今度は-何もない-の後ろに出現したスキマから廃電車が轢いて行った。

何もない「HELP...HELP!OMG!?」

よろよろと立ち上がった-何もない-に真上から最後の攻撃が飛んできた。スキマから出てきた錆びた機関車のような物が-何もない-に正面から衝突した。-何もない-の姿は小さな卵の形となり、どこかへ消えていった。

魔理沙「最後の車両...おかしくなかったか?」
紫「そうかしらね?それよりも、魔理沙は薄々気づいているだろうけど、最近出現し始めた怪物達は異変によるものよ。」
魔理沙「だろうな...」
紫「そうね...幻想体とでも言いましょうか。幻想体達は人間自身やその欲望や恐怖が具現した姿よ。幻想郷の中だとさらに能力が強まるみたいね。」
魔理沙「アイツはなんだったんだ?」
紫「人間の臓器や肉体が融合したモノだったわね...もしかすると、人間という-存在と意思-の成れ果てかもしれないわね。」

紫と魔理沙は永遠亭へと向かって行った。

-永遠亭-

魔理沙「大丈夫か霊夢!」
霊夢「魔理沙...?」

魔理沙が病室に入ると、そこにはベッドに横たわる霊夢の姿があった。胴体には包帯が巻かれており、包帯には滲み出た血がべったりと付いていた。

永琳「もう血は止まったわよ。安静にしてれば治るわ。」
魔理沙「良かった...私があの時、感情を抑えていれば...」
霊夢「もう良いのよ。魔理沙が怪我しなくてよかったわ。」
紫「魔理沙も霊夢に感謝するのよ?私が霊夢を見つけた時、瀕死の自分より魔理沙が死ぬかもしれないって、私に魔理沙を助けるように泣いてすがりついて来たんだから。」
霊夢「ちょっと紫!余計な事言わないで!」
魔理沙「...ごめん。」

皆が騒いでいると、扉からもう一人の医師が入ってきた。

魔理沙「ん...誰だ?」
ペスト医師「これはこれは幻想郷の皆さん、こんにちは。貴方達を病気から守るためにやって参りました。名はペスト医師と言います。」
魔理沙「霊夢の傷も直せるのか?」
ペスト医師「いかにも...」

そう言って、霊夢に翼を広げるが紫に邪魔される。

紫「その必要は無いわ。もう霊夢の措置はされている。貴方が治療しなくとも次第に良くなるわ。」
ペスト医師「...そうですか。」

そう言うと、ペスト医師は永遠亭から出ていった。

魔理沙「どこに行くんだぜ?」
ペスト医師「永琳さんからも聞きました。私はこの幻想郷を病から救いたいのです。そのためには私が各地を回るのが一番だと思ったのですよ。」

ペスト医師はより多くの人妖を救済するために、一人で旅を始めて行った。

続く...

Re: 東方幻収録 11 ( No.11 )
日時: 2023/11/20 23:58
名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)

-迷いの竹林-

魔理沙「妹紅!」
妹紅「久しぶりだな魔理沙。」

-何もない-との戦闘に勝利してから一週間が経った。今日は永遠亭へ霊夢のお見舞いに行くついでに妹紅のいる小屋へ魔理沙は立ち寄った。

妹紅「霊夢の体調は大丈夫そうか?」
魔理沙「あぁ、一ヶ月もすれば完治するってさ。」
妹紅「それなら安心だな。」
魔理沙「そういえば、妹紅の後ろにいるその鳥はなんだ?」

妹紅の振り向いた先には、竹の枝に止まった黒い鳥がいた。全身が黒色に包まれ、動く気配が全く感じられないが、その目と胸のマークから放たれる金色の閃光は、その鳥に眠る闘争心を表していた。

妹紅「この前、輝夜と殺し合ってた時に飛んできてな...あの時は火を纏ってたのにな。」
魔理沙「火を纏う?」

妹紅達の戦いに乱入した-火の鳥-の姿はまるで鳳凰のようだったと妹紅は言った。

妹紅「あいつは闘争とか狩りを求めているのかもな。私の弾幕を楽しそうに避けてやがった。」

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かつて、火の鳥は人間の村から遠く離れた森で暮らしていた。そんな中、火の鳥の噂が広まり、
誇りと名誉、羽を目当てに狩人達が森に入ってきた。。
それに伴って冒険家や旅人までが鳥の棲まう森に訪れるようになり、静かな森は人間と火の鳥の狩り場となった。

最初こそ狩人は誇りと名誉、火の鳥は邪魔する人間を追い払う事が目的で戦っていたが、いつしかその目的は変わっていた。

狩人と火の鳥は共に、死闘の中に見出す事の出来る純粋な闘争を求めた。狩人も火の鳥も全力で戦った。

火の鳥を討伐した者は英雄。羽を手に入れる事は狩人達にとって、この上ない凄腕の証であった。

しかし、その勢いは炎の様にゆっくりと消えていった。
もはや伝説上の存在になりつつあるとき、鳥の目に激痛が入り、見えなくなってしまったのだ。共に戦いに明け暮れた狩人はもういない。

長い時を経て、火の鳥は新しい森を見つけた。
そこには人間が住んでいて、鳥はすぐにかつてのような「狩り」が始まることを火の鳥は望んだ。
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そう願い続けた火の鳥は妹紅達の闘争に引っ張られる様に幻想郷に辿り着いた。
輝夜との戦いに勝ち、火の鳥との狩りに勝った妹紅は-名誉の羽-を受け取っていた。

妹紅「あいつを倒したらくれたんだ。」

妹紅の地面から突如吹き出した炎から五本の羽の形をした弾が展開された。

魔理沙「凄ぇ...」
妹紅「だろ?...って、道草食ってる場合じゃないぞ!」
魔理沙「あぁそうだ!霊夢の所に行かないと...じゃあな!」

箒に跨って、魔理沙は急いで永遠亭の方へ向かった。

妹紅「さてと...もう一回やるか?相手してやるよ。」

妹紅の言葉に答える様に、火の鳥の全身が黄金に輝いた。炎の中から鳳凰のような見た目をした火の鳥が現れた。



-紅魔館-

レミリア「それが本当の姿なのね...」

紅魔館にまたもや来客者が来た。客は自らをペスト医師と言った。しかし、レミリアの思い浮かべる黒い姿とは別で、マスクは外され、全身と羽が白く変化し、胎児の見た目をしたペスト医師がそこにいた。ペスト医師は紅魔館に入った瞬間、その場に止まって何か呟いた。

ペスト医師「...我が使徒達よ、目覚めよ。そして我を迎えるのだ。」

そう言った瞬間、紅魔館の外から数体の怪物が侵入してきた。
皮膚が無く、白と赤を基調にした筋肉を持ち、灰色の羽を首に巻きつけ、一対の白い羽、ハイヒールの靴、輝く黒い目、大きな脚と長い鼻、鋭い歯を持った怪物の名は-使徒-という。使徒は全員、幻想郷を回ったペスト医師が洗礼を施した人妖であり、名と髪型はそのまま残り、自我を無くしていた。
使徒達はそれぞれ、十字架のような黒い杖の鎌に似た武器を持っていた。

白夜「我が名は白夜。この幻想に穢れてしまった哀れな者達を救済しに来た。安心しろ。我が使徒達が救済する。」

周りの使徒達は見境無く近くにいた妖精メイドを掴み、首を切っていた。

レミリア「これが救済?天使を偽った怪物でしょう?」
白夜「汝に私の理想は伝わらない。それを理解するならば、私の教えに続きなさい。」
レミリア「勝手にメイド達を殺し始めたお前に誰が従うか!」

周りには美鈴やパチュリー、咲夜が白夜を取り囲む様に立っていた。

白夜「あぁ...哀しき者達よ。我の使徒が今すぐに救済を...」

そう言いかけた瞬間、妖精を持ち上げる使徒の一体が粉々に砕けていった。

フランドール・スカーレット「使徒ってかなり脆いんだねー」

白夜の気配を感じ取り、フランが地下室から出てきたのだ。

レミリア「フラン!どうしているのよ!?」
フラン「ちょっと楽しそうだったから。」

白夜「吸血鬼に我の救済の意味が理解出来るわけが無いだろう。」
フラン「何が救済よ。人間を殺したって何も変わらないわ。」
白夜「人は死に、罪を償う事で赦され、魂はようやく救済されるのだよ。」
フラン「ふーん...それじゃぁ」



その瞬間、フランの右手が握られたのと同時に使徒が全員粉々に砕け散った。



フラン「私が殺してもそれは救済になるのかしら?」

続く...


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