社会問題小説・評論板

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嘘吐き造花が枯れるとき。
日時: 2015/07/08 20:38
名前: 桜 ◆7gBpJ8SNck (ID: tL2iei10)

初めまして、もしくはお久しぶりです。

未熟ですが、よろしくお願いします。
私の体験も若干入っていたりしますが、多くはフィクションです。

前回に引き続き、御注意を。

・私の文章はまだまだ未熟です。
・誤字脱字があるかもしれません。(指摘して頂けると助かります)
・更新は不定期です。
・社会派小説から外れてしまうかもしれません。
・自己満足の小説で私の偏見で書いている所もあります。

そんな小説でも大丈夫でしたら、そのまま下へお願いします。
無理でしたら、小説一覧へお戻り下さい。

荒らし等はお止め下さい。アドバイスは大歓迎です。
コメントを頂けると嬉しいです。



それでは、始めます。





——————これが、私にとっての幸せなのでしょうか。





Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.26 )
日時: 2015/07/29 17:28
名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)

そういえば、緋色は言ってたね。

“ここから飛び降りれば、何もかも忘れられる。何もかも失える。そんな気がするでしょ、ここは。それが、私の唯一の希望なんだ。逃げ道なんだ”

何が緋色をそんなにも追いつめたのだろう。どうして死にたいと思うのだろう。
でも、私には関係ない。私に知る権利はない。知りたくないことを知った時の絶望は計り知れない程大きい。もう実感したでしょう?

それでも知りたかった。緋色の苦しみを知りたかった。
……自分より不幸な人を探していただけかもしれない。

見つけた所で何も変わらなかったのに。苦しんではいけないと、不幸と思ってはいけないと、自分自身を追いつめるだけだったのに。
緋色はそんなことを望んではいなかったのに。想いを共有して、微笑んでいたかっただけなのに。



あの古びた建物の屋上に人影は見えなかった。それでも期待を抱いて階段を上っていく。一段一段踏みしめて。私がここに存在していることを主張するように。

重いドアを開けると、曇り空が目に入った。柵に囲まれた殺風景な場所。ガランとした屋上。

「……やっぱりね」

自嘲気味に呟いた。私の言葉は空に吸い込まれ、消えていった。

緋色はもういない。私へ微笑みをくれる緋色はいない。哀しそうな顔をする緋色しかいない。私の“友達”はいない。

何を絶望に浸っているのだろう。こんなことは予想していた。
これは短い夢だった。私は優しい夢を見ていた。現実から逃れる為に私が作り出した夢。
そんな夢にも心を縛られ、壊してしまった。

もう茶番は終わりだ。楽しかった夢は。楽しかったと思い込んだ夢は。
少しは心の傷を癒せた?苦しみを共有出来た?
そう願って作った物だったのに。私は少しの傷にも耐えられなかった。
傷を癒してる筈だったのに、増えている気がした。それは、傷を真正面から見ることが出来ていなかったから。癒す筈の物から目を逸らしていた。そうしないと、自分自身を保てない気がした。

それでも元通りにしたいと思う私は身勝手でしょうか。他人を信じたいと思う私は愚かでしょうか。

Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.27 )
日時: 2015/08/22 17:03
名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)

—3章—


思い出す。

目を開けると、そこはもう地獄だった。
罵声を浴びせられて、存在を否定されて。お前は疫病神だ。お前なんか生まれなければ良かった。そんなことを何度も言われた。
私は反論出来なかった。記憶は無いのに、罪悪感に苛まれた。
只々耐えるしか私には出来なかった。今も変わらない。何も変わらない。

苦しさの後に優しさがあると、その人を信じたいと思ってしまう。これを耐え抜いたら、また優しくしてくれるって。終わりのない苦しみよりはましだから。抱きしめてくれるから。
それが罪悪感から来ているだけで、愛情でもなんでもないとしても。これは貴方の悲しみが終わるまで繰り返されるとしても。
私が消えてなくなるまで。貴方が許してくれるまで。
私は傷を隠します。

心だけなら誰も気づかない。身体には何一つ傷はない。
ある時、言葉は暴力よりも恐ろしくなる。誰にも気付かれずに静かに深く抉っていく。



部屋のドアの開く音がした。ゆっくりと振り返る。

「勉強頑張ってるな。……今日はお土産があるんだ」
そう言って私に小さなストラップを手渡した。最近人気なアニメのキャラクター。前にも似たようなの貰ったけどな。

「ありがとう!可愛いね」
笑顔でお礼を言うと、安心した顔で部屋を出ていった。



まだ続くんだね。私の居場所は何処ですか?

Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.28 )
日時: 2015/01/13 21:11
名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)

罪悪感から来る優しさは嫌ではない。むしろ優しくされるだけ幸せだと思う。
もし私がこの状況を不幸だと言ったら、貴方はどう思いますか?
只々繰り返される痛みに対して耐えている貴方にはどう映りますか?



目覚まし時計が鳴る前に起き、少ししてからベッドから出る。夏が近いからか、部屋の中が少し蒸し暑い。
いつもはすぐに制服に着替え、部屋を出ていくが、今日は部屋着のままで机に近づき、机の三段目の引き出しを開けた。
中には文房具やアクセサリー、キーホルダー等が入っていた。その中には昨夜貰ったキーホルダーもある。
数えられないくらいの個数。いつ貰ったかも覚えていない数々。
私の宝物。私の傷の消毒液。
完全に傷は塞いでくれないけれど、悪化するのを防いでくれる物。
そして、あの人にとっての償い。
この引き出しに入りきらなくなったその時は、もう苦しんでいないかな。

そう言えば、小学六年生の時、修学旅行の数日前に大きな鞄を買ってくれた。当時人気だったブランドの鞄を。
友達にはとても羨ましがられた。父が買ってくれたというと“良いお父さんだね”と言われた。
修学旅行が終わった次の日、私は鞄をゴミ捨て場に持って行った。少しの罪悪感を抱いて。

その鞄があったら、もう引き出しに入りきらなくなっていた。
この引き出しへの願掛けの様な物を始めたのは無意味だったのかもしれない。その時には救われていると信じているのは馬鹿らしいことだったのかもしれない。
入りきらなそうになったら、自ら捨ててしまうのだから。
明日も変わらない日が来ることを理解しているのだから。
それでも信じる行為を止めない私を誰か笑ってくれますか?

明日は晴れていますか? 私の苦しみは消えていますか? 笑顔を取り戻していますか? 本当の幸せを手に入れていますか?




……貴方は救われていますか?



Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.29 )
日時: 2015/04/06 18:13
名前: 桜 (ID: tL2iei10)

涙が頬を伝った。部屋着に一粒、ゆっくりと落ちた。
何故、泣いているのか。そんなことはとうに理解していた。

私は幸せなんだ。そう言い聞かせてきた。私より不幸な人は沢山いる。私は優しさを、愛情を貰っている。それがどんなに不純な物でも。どんなに壊れやすい物でも。

私を信じさせてくれる物。優しさの塊。


明日になったら救われている。明日になったら笑っている。明日になったら、幸せになっている。


——————明日はいつ来るのか。


そんな、絶望のような。暗闇の中に独り佇んでいるような。
掴みかけていた一縷の希望を失ったような。

恐怖で涙が止まらなかった。ずっとずっと消してきたこの感情。
何もかも自分の中で消してきた。自分が壊れないように、自分の世界を失わないように。
ずっと、嘘を吐いてきた。きっと、これからも。




————————!

目覚まし時計が鳴った。壊れかけているのか、音が少しおかしかった。ベッドの傍にある机に近づき、目覚まし時計を止めた。
あの人から貰った物に目覚まし時計があることを思い出した。結構高そうな時計だった。
使うことはないだろうけど。使う度に、その日の前日を思い出してしまうだろうから。苦しみから逃れられなくなるだろうから。


制服に腕を通す。夏服だから薄くて軽い。半袖の制服を着て、部屋を出た。
自分の腕には傷などなく、曝け出すことに抵抗はない。でも、貴方は。


……貴方は今日も長袖だろう。



Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.30 )
日時: 2015/08/27 18:55
名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)

一通り用意を終え、リビングへ向かった。今日は姉は部活の朝練がなく、まだ寝ている。リビングでは母が一人、紅茶を飲んでいた。私がリビングに入ると手元の書類から顔を上げ、柔らかな笑顔を向けた。
「おはよう、笑美」
久しぶりの笑顔。久しぶりの優しい声、言葉。いつも姉に向けられているもの。
「おはよう、お母さん」
私も笑顔で言葉を返した。本心からか、それとも母を安心させる為からか。私はまだ笑顔が作れないほど壊れていない、まだその愛情を姉に注いでいても大丈夫、姉の傷を塞ぐまで待っているよ。そんな意思表示なのかもしれない。

中途半端な愛情。

朝の挨拶で会話は終了。私達の間には深い溝があるように感じる。多分、それは相手も気付いている。だからこそ会話をしようとは思っているのだけれど、これ以上相手を傷つけない為にも何もしない方がいいと判断する。結局何も変わらない。変える勇気はどちらも持ち合わせていなかった。この関係を壊したら、もっと悪い方向へ行くのではないかという恐怖に襲われていた。
母の前に座り、向き合って静かに朝食をとる。部屋に響くのは母の書類と金属同士がぶつかる音だけ。私は今日の時間割を思い浮かべていた。今日も宿題見せてと友人に頼まれるのかな。私の役割だから。


「……行ってきまーす」

返事を待たず、静かにドアを閉めた。楽しげな声が脳内に響く。私の理想の家族。あの中に入りたいという叶わない願望を抱いて、消えていく。
耳にも微かに楽しげな声が聞こえた。姉が起きてきたのかな。
同時に隣に住む人も家から出てきた。慌ただしく鍵をかけ、私の横を通り過ぎていった。あの人の苗字は何だったかな。


人との距離の正解は何なのか。どれくらいの距離が正しいのか。どのような距離が安心できるのか。壊れることのないのはどれくらいの距離か。何も失わない距離はあるのか。
誰も教えてくれない。いくら勉強をしても正解は見つからない。
なら、最も身近な人から学ぶしかないでしょう。家族から学ぶしかないでしょう。
私には、間違いが分からないのだから。

そんな、言い訳じみた言葉は貴方を失望させるのかもしれない。けれど、優しい貴方ならまた微笑んでくれるよね。いつものようにあの場所に居るよね。もう一度、傷を舐め合えるよね。

貴方は、私の心の傷を見えなくしてくれる。私の目に布を巻き、真実を閉ざしてくれる。


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