社会問題小説・評論板
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- 嘘吐き造花が枯れるとき。
- 日時: 2015/07/08 20:38
- 名前: 桜 ◆7gBpJ8SNck (ID: tL2iei10)
初めまして、もしくはお久しぶりです。
未熟ですが、よろしくお願いします。
私の体験も若干入っていたりしますが、多くはフィクションです。
前回に引き続き、御注意を。
・私の文章はまだまだ未熟です。
・誤字脱字があるかもしれません。(指摘して頂けると助かります)
・更新は不定期です。
・社会派小説から外れてしまうかもしれません。
・自己満足の小説で私の偏見で書いている所もあります。
そんな小説でも大丈夫でしたら、そのまま下へお願いします。
無理でしたら、小説一覧へお戻り下さい。
荒らし等はお止め下さい。アドバイスは大歓迎です。
コメントを頂けると嬉しいです。
それでは、始めます。
——————これが、私にとっての幸せなのでしょうか。
- Re: 嘘吐き造花の行く末。 ( No.1 )
- 日時: 2014/12/06 19:36
- 名前: 桜 ◆7gBpJ8SNck (ID: tL2iei10)
—序章?—
桜が満開に咲いて、優雅に散っている。広場では人々が集まり、花見を楽しんでいる。私は独り、広場を通り過ぎた。全ての音を遮るかのようにヘッドホンを耳に当てた。
その日は、とても暖かかった。周りの雰囲気は心地よくて楽しくて。でも、微かに寂しさを感じていた。……いや、寂しさしか感じていなかった。あの人の言葉が、優しさが私を苦しめた。
地面に転がっていた小石を軽く蹴る。誰にも当たらないように、そっと。
小石は数メートル転がって止まった。
———寂しい?
『いえ、全然』
自分の中で呟く。自分を嘲笑うような笑みを浮かべてしまう。そうしなければ壊れてしまうから。皆、離れて行ってしまうから。
———あぁ、駄目駄目。
『分かってるよ』
名前に合ってないから。美しくないから。
いつもの通りの、歪みのない、美しい笑みを。綺麗で完璧な笑顔を。仮面を。
私は独りで浮かべていた。寂しくなんかなかった。もう、慣れたから。
ずっとそう言い聞かせてきた。
楽しくもないのに笑ってしまう、そんな自分が疎ましい。嘘吐きな自分が汚いモノのように感じる。
それでも、寂しいから。独りにはなりたくないから。
古びた建物の屋上を見上げる。微かに人影が見えた。ヘッドホンを外すと外の喧騒が響いてきた。
私はその建物の入口を探し、中に入った。
中は薄暗くて、埃っぽい。屋上を目指して、冷たい階段を上る。ギシギシと上るたびに軋む音がした。
目の前に薄汚れたドアが現れた。力いっぱい押すと、不快な音と共に開いた。
そして、目の前に少女が現れた。少女は屋上の柵の傍に立っていた。
私に気づき、身体をドアの方へ向けた。
暖かい目だった。私の全てを包んでくれるような、心地よくて、歪んだ目。寂しそうな、そんな私と似ている目。表情。
追いつめられたような顔。恐怖に染まった顔。絶望に染まった顔。
そして、少女は言ったんだ。
—————この世界はつまらないよね。
涙を浮かべながら言ったんだ。
- Re: 嘘吐き造花の行く末。 ( No.2 )
- 日時: 2014/12/01 21:26
- 名前: 桜 ◆7gBpJ8SNck (ID: tL2iei10)
—1章—
明るくて人当たりも良い。頭が良くて親切。いつも笑顔で一緒にいて楽しい。それが周りからの私の評価。
決して悪い評価だとは思わない。けれど、ね。
それが辛いんだ。私を押し潰していくんだ。
「ねぇ、笑美。これ教えてよー!」
クラスメイトの女子が私の席に塾のプリントを持って駆け寄ってきた。
「あぁ、これはね————」
昨日予習した所。大丈夫、ちゃんと答えられる。
私はその子に“親切”に教える。勿論、笑顔も忘れない。
「流石笑美!ありがとね」
気分は害さなかった。そんな事をした覚えもないけれど。相手の気持ちを探ってしまう。傷つけてはいないか。苛々させてはいないか。
その子は用事が終わると他の子と所へ行ってしまった。何もなかったかのように。
私もそのまま笑顔を保つ。これも慣れてきたな。
……私は役に立っているよね?
「おはよー」
クラスのリーダー的存在の子が教室に入ってきた。
「おはよー」
私も笑顔で返しておく。
その子は私の席から離れると(私の席はドアの近くなので近寄った訳ではないと思うが)違う子に挨拶をしにまわる。本当に本当に楽しそうで。羨ましくて。
私のその子の評価は頼れる存在。気が強くて、自分の意見をきちんと言う。
……本当の事を言うと、少し怖い。少し言葉が強い。別に嫌いな訳じゃないけれど。只、恐れているだけ。友達として、人間として。
最も正しいのは、仲良くしておかなければいけない存在。嫌われたら、私のクラスの居場所がなくなる。私は、その子に嫌われてはいけない。クラスの絶対的な権力者だから。
Q.嫌われないために出来る事は?
A.その子と共通の敵を作る。
自分を守る為に、人を傷つけるのは悪い事?悪い事ではない。だって、皆自分が大事なのだから。
自分第一がいけない事?だったら、貴方はどうなのですかと問いたい。
自分が1番大切じゃない人なんていないと思う。このクラスには誰一人。
そんな、いつも考えている事を頭の中で繰り返す。
—————私は間違ってない。だって、皆がやるから。
自分と正当化する言葉は稚拙で筋が通っていない。それでも自分が正しいと信じて疑わない。人を傷つけても平気でいる。そんなクラス、そんな日常。
- Re: 嘘吐き造花の行く末。 ( No.3 )
- 日時: 2015/01/30 20:36
- 名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)
無視、悪口、物隠し。幼稚な苛めを飽きずに続ける人達。私もその中に含まれている。数人を除いてクラスのほとんどの人が含まれている。
だから、だから……、私は悪くない。間違っていない。そう言い聞かせて。
「……何処?私のノート?」
次の授業のノートが無くて困っているらしい。必死になって探している。私は勿論知らん振り。クラス全員知らん振り。
誰もその子に声をかけない。只、笑っているだけ。陰湿に、嘲笑うように。
勿論捨ててはいない。だって、大人に見つかったら誤魔化せないから。
大人に見つかると面倒臭い。綺麗事を長々と聞かされる。
苛めはいけない事?そんなの知っている。むしろ知らない人はいない。でもね、皆でやってるから。人数が多い方が正しい。少数派に付いたら間違い。何でも多数決で決まるのだから。つまり、多数派に付いた私は正しいでしょう?
同じ事を何回も繰り返す。そうしないと自分を押さえられないから。壊れてしまいそうだから。
苛められている子のノートは、クラスで少し嫌われている人の机の中。その子は私達と同じで知らん振り。あ、でも少し体が震えているね。
怖いんだよね、苛められるのが。いつ自分にその子の立ち位置が移ってくるか。不安で不安でしょうがないんだよね。
私はその様子を友達と笑っていた。
- Re: 嘘吐き造花の行く末。 ( No.4 )
- 日時: 2015/01/05 15:32
- 名前: 桜 ◆7gBpJ8SNck (ID: tL2iei10)
「また明日」
教室を出る時に笑顔で手を振ると数人が返してくれた。小さな幸せ。
学校を出ると、途端に気が抜ける。体の重りが無くなったような。
でも、後の事を考えると気が重くなる。
私は真っ直ぐ家に帰らず、昨日の古びた建物へ向かった。
あの少女がいた建物。何故かそこに惹かれた。いや、その少女に惹かれた。名前が知りたい。話をしたい。そんな感情が湧き上がってくる。
こんなの初めてかな。
十数分歩くと、昨日の建物に着いた。上を見上げても、人影は見えない。けれど、少女はそこにいると確信した。だって約束したから。
建物の裏にある、小さな入口(裏口?)から建物内に入る。中は昨日と変わらず埃っぽい。
階段を上がる中、昨日の事を思い出した。
“この世界はつまらないよね”
私はその言葉に何も返せなかった。只その少女の目を見つめていた。
突然少女は笑みを浮かべ、私の事を指差した。そして呟いた。
“貴方は————”
その言葉は正しくて鋭くて。私の心の奥底に突き刺さり、消えない。
私は一言言葉を発した。少女は笑顔で答えてくれた。
夢のような感覚だった。作り物である儚い居場所。存在。
目の前に扉が現れる。力いっぱい押すと昨日と変わらない不快な音を立てながら開いた。
扉の近くで私を待っていたかのように少女は昨日と変わらない微笑みを浮かべていた。
「……今日も来てくれたんだ」
少女は綺麗に微笑んだ。
「……ねぇ、名前を教えてくれないかな?」
笑みを崩さず、私に話かける。私の望んだ問いかけ。
「私の名前は、如月笑美です」
緊張して言葉が変になる。少女は気にした様子もなく、
「……へぇ、私は楠木緋色。よろしくね」
私に手を差し出した。握手を求めているのだろうという事はすぐに分かった。私は急いで学校と同じ様に笑みを作り、緋色の手に私の手を重ねようとした。
「……何それ」
緋色は私の笑顔を見ると、さっきまで出していた手を引っ込めた。私は意味が分からず、訝しげに緋色を見つめる。
「……その笑顔、気持ち悪いよ」
淡々と冷たい声で言った。その言葉には私の笑顔を崩す程の力はなかった。
尚も私は笑顔を浮かべ続ける。
「どうしたの?」
白々しい。分かっているよ、緋色が言いたいこと。でもね、認めたくないんだ。
「……無理に笑顔を浮かべないで」
緋色が悲しげな顔で呟くように言った。
私は何も言う事が出来ず、只緋色を見つめていた。体が少し、震えていた。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.5 )
- 日時: 2015/01/05 15:36
- 名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)
「……私は楽しくもないのに笑ってる人が苦手。怖いの。いつか、壊れてしまうんじゃないかって」
小さな声で呟く緋色。
緋色は私から目を逸らし、俯いた。そして涙と共に言った。
「……ごめんなさい」
何故緋色が謝るのかが分からなかった。緋色の言葉は正しいのに。
緋色の涙を止めたい。緋色を悲しませたくない。
けれど、私は何も言えなかった。只、口を開閉させただけだった。
「……こんなの、私の我儘だよね。でも、本当に怖いんだ。何かを失うことが」
私は、ついに言葉を発する事ができた。
“壊れてしまわないものなんてないでしょう?”
なんて事を言ってるのだろう。これでは、緋色をもっと傷つけるだけ。
分かっているのに、弁解の言葉は1つも思い浮かばない。
「……友情」
緋色が小さな声で呟いた。
「え?」
私が聞き返した途端、緋色は突然笑い出した。
「……なんてね?あるわけないよね」
哀しげな表情を顔の端に浮かべながら。辛そうに微笑みながら。少しの期待を抱いて。
ねえ、緋色も無理に笑っているよ?