社会問題小説・評論板
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- 嘘吐き造花が枯れるとき。
- 日時: 2015/07/08 20:38
- 名前: 桜 ◆7gBpJ8SNck (ID: tL2iei10)
初めまして、もしくはお久しぶりです。
未熟ですが、よろしくお願いします。
私の体験も若干入っていたりしますが、多くはフィクションです。
前回に引き続き、御注意を。
・私の文章はまだまだ未熟です。
・誤字脱字があるかもしれません。(指摘して頂けると助かります)
・更新は不定期です。
・社会派小説から外れてしまうかもしれません。
・自己満足の小説で私の偏見で書いている所もあります。
そんな小説でも大丈夫でしたら、そのまま下へお願いします。
無理でしたら、小説一覧へお戻り下さい。
荒らし等はお止め下さい。アドバイスは大歓迎です。
コメントを頂けると嬉しいです。
それでは、始めます。
——————これが、私にとっての幸せなのでしょうか。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.21 )
- 日時: 2015/12/19 18:22
- 名前: 桜 (ID: tL2iei10)
姉は変わってしまった。突然私を傷つけるようになった。
私は何も知らない。何もやってない。そんな言葉が私の頭の中を回っていた。
それでも私は姉が大好きだった。私には姉しかいなかったから。味方なんて姉以外偽りだったから。
ごめんね、私、お姉ちゃんの部屋に勝手に入っちゃったんだ。お姉ちゃんの日記、見ちゃったんだ。だから知ってるよ。全部全部知ってる。
お姉ちゃんが変わった理由。けれど、誰にも言わないよ。
そんなこと、誰も望まないでしょう?
もっとお姉ちゃんを傷つけちゃうでしょう?
私は嘘吐きだから、いつも通りに笑っているよ。
昔を思い出して、どうしたんだろう。
全然勉強も進んでいないし、集中もできない。また成績落ちちゃうよ。
今日は駄目だな。ああ、いつも通りか。
姉より秀でている所を作らなければいけないから。そうしないと私の心が満足出来ないから。
でも、姉がいてくれてよかった。私は姉が居なければ生きてなかったかも、なんてね。白々しいね。笑っちゃう。
私はたった1人の本当の家族に憎まれてるから。
私は大きな罪を犯してしまったんだから、憎まれてもしょうがないよね。
たとえ覚えていなくても。
久しぶりに明日、緋色に会おうかな。久しぶりに笑えるかな。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.22 )
- 日時: 2015/01/08 16:43
- 名前: 桜 (ID: tL2iei10)
息苦しい。水の中にいるように思うように息が出来ない。上手く泳げもしない。手足をばたつかせて、どんどん沈んでいく。もうヒカリが見えないほど深くまで。手を伸ばしても届かない。
最初は上手く泳げているつもりだったのに。いつしか泳げなくなった。
だから私は、一緒に溺れる仲間を作った。
寂しくない様に。楽しく、虚しく沈んでいく。
「……久しぶり」
綺麗な笑顔の緋色。透き通った声。私の自慢の友達。
「……何日ぶりかな?」
今日も緋色は屋上にいる。前と変わらず、ずっと。
「13日ぶりだね」
数えてるなんて気持ち悪いよね。普通は引くよね。でも、緋色は友達だから。親友だから。
「……笑美に会えて嬉しいよ」
優しい言葉をかけてくれる。私の本心を分かってくれる。
「ありがとう、私もだよ」
だから、嘘を吐くんだ。優しい嘘を。
只、自己満足に浸りたいだけ。私が居なければ緋色は1人だって。私は必要なんだって。
……反対なのにね。
心の底では理解しているのに、受け入れられない。私は必要とされていると思いたい。例えそれが作り物でも。
何だろう、この心に渦巻く感情は。自分の大切な物を壊してしまいたい感情は。簡単に壊せるこの関係は。
壊してしまっても、信じてくれるよね?この“友情”は永遠だよね?緋色もそう思ってるでしょう?
簡単な言葉で、言わないと約束した言葉で、簡単に壊れてしまうこの関係。心地いい私達の世界。
……何故こんなにも恐怖を感じているのだろう。
「緋色ってどこの中学?」
初めて聞いた。もう出会って2か月近く経っているけど、1度も聞いたことがなかった。緋色も聞かなかった。“学校”のことなんて。
分かってたのに、何で。約束したのに。
「……ごめんね」
緋色には聞いちゃいけない。分かってるよ。けれど聞いてしまった。緋色に“学校”のことを。
緋色はいつも長袖の服を着ているよね。それに少し汚れているよね。
ああ、そういえばいつも制服だね。制服を見れば学校がどこかなんて分かるよね。うん、分かってたよ。
緋色の学校はどこで、何で制服がいつも長袖で汚れているかなんてね。それを知ってて聞いたんだ。
私の悪意で。言葉のナイフで。
沈黙が辺りを包む。
「……誤解しないでね。笑美のことが嫌いなわけじゃないの。私は、………」
緋色は途中で言葉を止めた。言わなくても分かるよ。緋色を見ていれば分かるよ。
いつも言葉を選んで話している。だから間があいてしまう。
人の顔色ばかり窺っていて震えている。他人を恐れている。
昔の私。憎らしいくらい私と似ていた。消してしまいたい、あの頃の私に。
「私こそごめんね、変なこと聞いちゃって」
緋色は顔を何度も横に振る。小さな声で大丈夫って言う。綺麗な笑顔を歪ませて。
「ねえ、学校楽しい?」
小さな声で囁くように言う。優しい声で。優しい笑顔で。
傷つける。現実を突きつける。
「……っ」
緋色がびくっと震えた。そして、弱々しい笑顔で返してくれた。
「……楽しいよ」
本当に私そっくりで。消してしまいたい。
「今日は帰るね、またいつか」
私は緋色の顔を見なかった。逃げるように屋上を出た。只、怖かった。緋色の笑顔が怖かった。今にも壊れてしまいそうな笑顔が。私が壊してしまいそうで。
もう緋色に会えなくなりそうで。
緋色が消えてしまいそうで。
もしもこれが最後だったら。もう会えないとしたら。
私は涙を流せるかな?
いつも通りに笑って忘れてしまうかな?
……私は緋色が居なくなることを望んでいるのかな?
人を傷つけたい。人を陥れたい。そんな欲望が抑えられなくて。
皆々私より下。私は皆とは違う。そんな考えが消えなくて。良い子を演じるのに疲れて。私は緋色を傷つけたい。壊してしまいたい。
綺麗なモノほどバラバラにしたい。弱い者ほど傷つけたい。
自分で作り上げたモノを、私の居場所を、2人の居場所を。
私は壊してしまった。友情は在りもしない幻だった。
……嘘だと言ってよ。
いつものように笑ってよ。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.23 )
- 日時: 2014/04/20 21:16
- 名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)
実は私と姉は血が繋がっていたり。生き別れた姉妹だったり。
そうだったら現実は残酷だね。
私と姉の繋がりが脆いのが唯一の私への優しさかな。
『人が怖い。いつからだろう、そう思い始めたのは。
人の心にはいつも悪意が渦巻いている。そう気づいたのは、私が小学5年生のときだった。他の人よりも早いのかもしれない。そのときの私の周りには、嘘吐きはいなかったから。
皆々心の底から笑っていて、私には眩しすぎた。直視できなかった。
嘘で埋め尽くされた私は、ここに居てはならない異物のように感じた。
そんな窮屈さを感じながら私は残りの小学校生活を終えた。
私は“苛め”られていた。ニュースで報じられるような酷い苛めではなく、悪口や仲間外れなどだった。
私は弱かったから心はすぐに傷ついた。修復できないくらいに傷ついた。もう、バラバラに壊れてしまった。
だから私は、自分を作り直した。いつも笑顔で優しく親切な如月笑美を作り上げた。
それから私は率先して苛めに加わるようになった。
苛めの痛みが分かるなら止めなよ、と言う人もいるかもしれない。そんなんじゃ苛めはなくならないよ、と言う人もいるかもしれない。
でもね、止めてどうなる?また私が標的になるかもしれないんだよ?
折角新しく作り上げた自分をまた壊してしまうの?
自分を守る為なんだよ。皆やってるんだよ。……今と変わらない言い訳だね。自分を正当化して。自分は偉いと思い込んで。
だから、嫌いなんだよ。人を見下す自分が大嫌いなんだよ。
でも、そうしなければ生きていけないんだ。自分を保てないんだ。
人より上に立たなければいけない。
だから勉強を頑張った。気の利いた言葉がすぐに言えるように練習した。綺麗な笑顔を作る練習もした。全部全部努力した。
只、頑張ったねって言って欲しいだけなの。存在を認めて欲しいだけなの』
私はシャーペンを置いた。ノートには長々と文が書いてある。
文の繋がりなんか考えずに思いつくままに書き殴った。
ストレス解消法でもないけれど、平静でいられないときにはこうやってノートに思いをぶちまけている。
心を整理して自分の思いを理解する為に。
ノートの最後の言葉を見る。
———————存在を認めて欲しい。
学校では如月笑美という存在が居る。家でも如月笑美という存在が居る。
私には、クラスの一員なだけで、宿題を教えて貰ったり面倒な仕事を押し付けたりするだけの人、と認識されているとしか思えない。
家では、ね?存在すら否定されているから。口にはしないけれど、皆言ってるんだ。思ってるんだ。『消えてくれ』って。
私が生きている世界は窮屈で。身動きをするのも苦しくて。
だから、ストレスが溜まって。他人を攻撃して。悪循環だね。
緋色を傷つけて、私は満足した?
お姉ちゃんは私を否定して、心から笑える?
笑ってるよね、心から。本当に綺麗に眩しく。
憧れても、いいよね。
希望を持っても、いいよね。いつかあの笑顔を私に向けてくれるってさ。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.24 )
- 日時: 2014/08/01 17:18
- 名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)
沢山の色が混ざって。ぐちゃぐちゃにして。
最初は鮮やかな色だったんだ。華やかな色だったんだ。
誰もが羨む素敵な色だったんだ。
……今は真っ黒だけどね。
なら、それに黒を混ぜても変わらないよね?
もう白を混ぜても仕方がないよね?
今日も綺麗な制服を着て、笑顔を張り付けて。
私はあの人とは違うから。綺麗で汚れていなくて、真っ白で。私はあの人と似ていない。そうでしょう?
今日も鏡の前で笑顔の練習をして。完璧な自分を作って。
他人には無意味なことかもしれないけれど。もがいているようにしか見えないかもしれないけれど。
私には、これしかない。汚れていても私のは見えない。フィルターのようなモノが見えなくさせている。どんなに黒く汚れていても、誰にも気づかれない。気づかせない。
他人の汚れは沢山見えるのにね。見たくないのに、心の底では見たいと思ってしまう。他人の汚いところを見て、笑ってしまう。やはり信じられないなって思ってしまう。
所詮他人なんだと思いたい。嘘吐きだって思いたい。私が嘘だから。作り物だから。
これが嘘だったら、どんなに嬉しいかな。
……嘘だよ。嘘だよ。あれは本当の私じゃないの。
————ねえ、許してくれる?
もう1度、微笑んでくれる?
部活が終わったのか、少し騒がしい廊下をいつも通りの速さで歩く。
数人が大きな声で話しながら、私を抜いていく。2つ隣のクラスの人で、今は関わりのない人。楽しそうに笑っている。昨日の試合がどうだったとか、私にとってはどうでもいい話。本当に楽しそうに話している。憎らしいくらいに。
もう関わりたくない人達。あの人達を見ると思い出してしまう。また、あの頃に戻ってしまう。
私はその人達から逃げるように、歩く速度を落とした。それでも進む方向は同じだから逃げられない。あの人達から目を背けられない。
誰1人私のことを見ていないから意味ないよね。
皆、忘れてるから。ただの日常の一部だったから。
『あー、おはよう!』
その1人が私の少し前を歩いていた人に挨拶をした。他の人がその人の肩を強く叩く。思いっきり、力を込めて。
『……あ、おはよう』
静かな、か細い声が微かに聞こえた。その人が振り向いた為、綺麗な笑顔が髪に隠れながらも少し見えた。
他にも何か言われている。気持ち悪い笑顔を浮かべた人に幼稚な言葉を浴びせられている。周りの人が不快な声で笑っている。
耳を塞ぎたい。この場から逃げ出したい。
それでも、その人は笑っていた。仕方ないような、諦めたような。もう、どうでもいいような表情を微かに浮かべて。哀しげに笑っていた。
————……楽しいよ。
今日も無理して笑ってるね。嘘吐きさん。
私は自分の教室のドアを開けた。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.25 )
- 日時: 2014/10/25 21:57
- 名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)
いつも通り教室は騒がしくて、私を消してしまう。透明にしてしまう。
比較的仲の良い子に挨拶をして自分の席に鞄を置く。数人の友達が話しかけてきて、担任が来るまでお喋りをする。そんな日常。
何故こんなにも引き裂かれそうなのだろう。失うのを拒んでいるのだろう。もう大切なものは失ったのに。バラバラに壊れたのに。
今更拾い集めても、もと通りには戻らない。不格好ならもっと壊して捨ててしまおうか。
退屈な授業の終わりを告げる鐘が鳴り、昼食の時間。
決まっている班でまとまって食べなければいけない。独りで食べる人が出ないようにする学校の配慮。あの時は無かったのに。
昨日のテレビの話や友達との笑い話。話のネタは尽きない。
そんな中、あの子は静かに食べている。誰とも目を合わせないで黙々と食べ物を口に入れている。食べているより詰め込んでいる。
こうなるんだったら、独りの方が楽でしょう?集団の中で孤独を感じる。その方が辛いでしょう?
そんなことを考えても何も変わらない。もう時間は戻らない。
昼休みに私は嘘を吐いた。美術の絵具を忘れたという小さな嘘。
私は友達を連れて他のクラスの子に借りに行った。
2つ隣のクラスは、私のクラスを変わらない騒がしさだった。
その中に独り、席に座って本を読んでいる子がいた。長い髪で顔を隠すようにしている。数人が少し離れた所でその子を指差して笑っている。
私はその中の1人を名前を呼んだ。親しげに私の方へ走ってくる“友達”
用件を伝えるとすぐに貸してくれた。そして私のクラスメイトを含めて他愛のない話をする。
その子に気づかれないように、私は教室の中へ目を向けた。あの子も騒がしかったのか、私達の方へ視線の向けた。
—————目が合った。
哀しげな顔の“緋色”。いつもの表情の“緋色”。絶望の淵に立っている“緋色”。嘘吐きの“緋色”。
私はすぐに目を逸らした。仮面が欠けた気がした。
“貴方は、あちら側の人ですか?”
そんな言葉が聞こえた。
涙を流した少女が綺麗に微笑んでいた。