社会問題小説・評論板
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- 嘘吐き造花が枯れるとき。
- 日時: 2015/07/08 20:38
- 名前: 桜 ◆7gBpJ8SNck (ID: tL2iei10)
初めまして、もしくはお久しぶりです。
未熟ですが、よろしくお願いします。
私の体験も若干入っていたりしますが、多くはフィクションです。
前回に引き続き、御注意を。
・私の文章はまだまだ未熟です。
・誤字脱字があるかもしれません。(指摘して頂けると助かります)
・更新は不定期です。
・社会派小説から外れてしまうかもしれません。
・自己満足の小説で私の偏見で書いている所もあります。
そんな小説でも大丈夫でしたら、そのまま下へお願いします。
無理でしたら、小説一覧へお戻り下さい。
荒らし等はお止め下さい。アドバイスは大歓迎です。
コメントを頂けると嬉しいです。
それでは、始めます。
——————これが、私にとっての幸せなのでしょうか。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.6 )
- 日時: 2014/12/01 18:17
- 名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)
どんなに苦しくても、どんなに辛くても。笑っていれば忘れられるよ、何もかも。それが嘘でも。作り物でも。
涙は見せてはいけない。いつでも、楽しそうに笑っていて。
だって、私はそうでなければいけないのだから。そうしなければ失ってしまうのだから。
「緋色、よろしくね」
改めて緋色に手を出した。勿論、笑顔付きで。
緋色は何も言わず、私の手に自分の手を重ねる。緋色の手はとても冷たくて、震えていた。
「……こちらこそ、よろしくね」
緋色は笑っていた。少し引きつっていた気がした。
「……バイバイ」
緋色が手を振る。私もそれに返す。
「また明日」
何と無く、そう言ってみた。緋色が少し、笑ってくれた気がした。
緋色と別れて帰路につく。私の中学校は携帯の持ち込みは禁止なので、時間は分からない。多分、空の色具合から6時過ぎぐらいだと思う。部活帰りと誤魔化せる時間帯。
自分の家がどんどん近づいてくる。足取りは重く、気分は沈んでいく。
「……はあ」
溜息をつく。一旦足を止め休憩する。家は目の前に迫っている。ゆっくり、ゆっくりと歩を進める。
私は自分の家である5階建てのマンションの入口のドアを押し開ける。あの古びた建物のような不快な音はなく、無音で開く。
いつも通りの行動をいつも通りの早さで。恐怖で、それでも期待をして。
気づくと自分の家は目の前で。震える手で鍵を差し、ドアを開ける。
「……ただいま」
迎えてくれる人は誰もいなくて。静かな玄関に独り。
暗い玄関。手さぐりで電気のスイッチを探し、明かりを灯す。
親の靴はなく、姉の靴だけが綺麗に並んでいた。
微かに、テレビの音が聞こえる。リビングからだろうか。
私は靴を姉のとは少し離して置き、自分の部屋へ走った。誰とも会いたくない。誰とも関わりたくない。それが私の正しい選択。
鞄を机の横に置き、部屋着に着替え、宿題や予習復習をする。集中して、それ以外の事は考えないで。
姉を忘れる為に、母を忘れる為に、父を忘れる為に。
皆の言葉を忘れる為に。自分を守る為に。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.7 )
- 日時: 2014/10/24 21:46
- 名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)
ふと勉強をしていた手を止め、顔を上げる。机に置いてある時計を見ると、8時09分だった。
私は教科書やノートを閉じ、部屋を出た。
リビングでは、姉が1人で夕食を食べていた。私がリビングに入ると、姉は目だけを私へ向けた。
「……なんか用?」
冷たい声。聞きなれた声。それでも突き刺さる言葉。
「夕食を食べに来ただけ」
私は軽く微笑む。姉はそれを聞くと、大急ぎで残っていた物を食べ、席を立った。
「あんたとは一緒に食べたくないから」
私は笑みを崩さなかった。姉はそんな私を気味の悪そうな顔で見た。
大丈夫、もう慣れたから。いつかは変わるって信じているから。
どんなに苦しくても、笑っていればいい。笑っていれば誰も気づかないから。
自分さえも騙してしまうから。
冷蔵庫から冷凍食品を取り出し、レンジで温める。温め終わり、出来た物をテーブルに置く。
リビングはとても暗く感じた。椅子を引く音がやけに煩く感じた。
食欲なんてなかったけれど、無理に詰め込んだ。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.8 )
- 日時: 2014/10/24 21:49
- 名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)
風呂に入って、勉強して、明日の準備をして。
いつも通りの事を終わらせて、ベッドに横になった。
微かに姉の話し声が聞こえる。楽しそうで、姉の笑顔が脳内に浮かぶ。
羨ましい、ただそれだけ。
頭が良くて綺麗で。私の無いものを全て持っている。嫉妬しても何も変わらない。けれど、嫉妬してしまう。それがどんなに馬鹿な事でも、止められないんだ。私には越えられないと分かってる。触れる事すら出来ないんだ。だけど……。
私は姉の声が聞こえない様に、布団を顔まで上げた。
家のドアが開く音。足音がする。私の部屋の前を通る。
止まる事はなく、そのまま通り過ぎた。
違う部屋のドアを開ける音がした。楽しそうな2人の声。私には遠い日常。
涙が頬を伝った。信じる事すら私を苦しめていた。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.9 )
- 日時: 2015/01/05 19:12
- 名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)
どうしようもないくらい愚かな私は、ずっと笑っているんだ。
感情を消してしまいたくて。今日も笑っているんだ。
少し重い教室のドアをガラガラと開けると、近くにいた子が挨拶をしてくれる。
当たり前の事だけど、嬉しいんだ。
いつ独りぼっちになるか分からないから嬉しい。その分怖い。それが本心で言っているのか、只義務感だけなのか。
喜びと恐怖なんて同じようなものなんじゃないかな。
そんなどうでもいい事を考えながら、自分の席に着いた。
鞄から教科書等を出していると、後ろの席の子が声をかけてくる。
「おはよ、笑美。あのさー……」
何と無く予想出来た。けれど私は何も言わず、その子の方を向いた。
「えっと……、数学の宿題、見せて欲しいなぁー、なんて」
遠慮しているように見えるけど、断らせない言い方。断る気はないけれど。これを断ったらどう思われるか予想はできる。
「あぁ、いいよー」
数学のノートを渡す。その子はとても嬉しそうに、こう言った。
「ありがとう!笑美と“友達”で良かった!」
その子はそんな気はなかったと思うけど、利用されている気がした。
宿題を見せてもらう子。面倒くさい事を押し付けられる子。何を言っても反論しないから。どんな事でもやってくれるから。
だから、嫌いなんだ。
クラスメイトが嫌いな訳じゃない。苛めが嫌いな訳じゃない。只、自己主張できない自分が嫌いなんだ。
嫌なら嫌と言って。そんなクラスメイトの声が聞こえてくる。けれど、それを言ったら、私の居場所はどうなるのですか?あの苛められてる子と交換は嫌。独りぼっちになるのは嫌。
だから、私は今日も笑う。どんなにつまらなくても、笑っておく。
笑っていれば、誰も気づかないでしょ?私の気持ちなんてね。
気づいて欲しいなんて口に出来ないよ。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.10 )
- 日時: 2014/10/24 22:00
- 名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)
今日も全ての授業が終わるとすぐ学校を出る。
部活は美術部に入っているが、もう幽霊部員みたいになってしまった。もともと絵には興味はなく、友達に誘われて入った。クラスの人の多くが部活に入ったのもあるけれど。塾だと言っているからサボりだとは思われていない、と思いたい。
空を見上げる。青く澄んでいて、微かに雲がある。
太陽が眩しかったから、すぐに顔を逸らした。
綺麗だと思えるほど、心の余裕はなかった。
「……今日もか」
古びた建物の前で1人呟く。裏の入口から入り、屋上を目指す。
私はとても緋色に惹かれた。最初にあったときの緋色の目。表情。私に近しいものを感じた。
緋色に言ったら侮辱になるかな。自虐的な笑いを浮かべる。
不快な音を響かせながらドアを開ける。
「……こんにちは」
緋色が優しく微笑んでくれた。その微笑については何も言わず、挨拶を返す。
「こんにちは」
緋色の隣に座り、また空を見上げる。
「…………」
「…………」
会話はなく、重い空気が2人を包む。家ではいつもこんな感じなので、慣れてしまった。この空気はまだいい方かもしれない。
けれど、何故か緋色と話したいと思う。緋色に聞いてもらいたいと思う。
「ねぇ、緋色。話したい事があるんだ」
緋色はゆっくりと私の方へ顔を向け、問う。
「……どんなの?」
これから話すのは、とても自分勝手な事だと思う。他人の事を気に掛けない、我儘な私の話。そんなのでも緋色には聞いて欲しかった。
……いや、誰でもよかった。ただ、聞いて欲しかった。
吐き出してしまいたかった。自分の中だけで留めておくのはもう限界だった。緋色は私を包み込んでくれる作り物の存在。
「……私は、無理して笑っているんだ。学校でも、家でも。いつも私はそれを——————」
拙い言葉で紡がれる私の話。
自分の事を話すのは、なんて我儘だろう。自己主張の塊。
「——————緋色はどう思う?こんな私を」
人に聞いても仕様がない。こんな事を聞いてもらったのに、感想なんて求めるなんて。
今日の私はどうかしている。
「……先に言っておくね、ごめんなさい」
緋色が顔を伏せながら小さな声で言う。私は何も言わず、緋色を見つめる。
「……ねえ、笑美。それって我儘じゃない?」
それが、緋色の私の思いへの言葉だった。
「……そうだね」
軽く笑っておく。笑顔が少し引きつってるかも。
自分で考えて、自分で認めていた事。けれど、いざ他人に言われると動揺してしまう。
「……笑美は、面倒臭い事を人に押し付けてるでしょ?自分が無理に笑っているのを人の所為にしてるでしょ?」
機械の様に、一定のリズムで頷く。笑顔なんて消えてしまった。
私が言った言葉。同じ事を繰り返しているのに、心に直接突き刺さるような感じがする。他人の口から発させる言葉は鋭利な刃物のような。
「……誰でも自分が正しい、自分が1番とか思うよね。意識してなくても。笑美もそうだよね?自分を守る為に、自分を正当化する為に、人に押し付けてるよね?笑う理由を」
思わず体を抱えてしまう。そうしなければ、平静を保てないような気がしたから。
どんなに理解していても。どんなに認めていても。
……感情は制御できないんだ。