社会問題小説・評論板
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- 嘘吐き造花が枯れるとき。
- 日時: 2015/07/08 20:38
- 名前: 桜 ◆7gBpJ8SNck (ID: tL2iei10)
初めまして、もしくはお久しぶりです。
未熟ですが、よろしくお願いします。
私の体験も若干入っていたりしますが、多くはフィクションです。
前回に引き続き、御注意を。
・私の文章はまだまだ未熟です。
・誤字脱字があるかもしれません。(指摘して頂けると助かります)
・更新は不定期です。
・社会派小説から外れてしまうかもしれません。
・自己満足の小説で私の偏見で書いている所もあります。
そんな小説でも大丈夫でしたら、そのまま下へお願いします。
無理でしたら、小説一覧へお戻り下さい。
荒らし等はお止め下さい。アドバイスは大歓迎です。
コメントを頂けると嬉しいです。
それでは、始めます。
——————これが、私にとっての幸せなのでしょうか。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.11 )
- 日時: 2014/10/24 22:06
- 名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)
緋色は私が言った事を繰り返すだけだった。
けれど、その言葉1つ1つが突き刺さる。
最後に、緋色は——————
“ごめんね”とまた繰り返した。
何がと問おうをしたが、緋色が私より先に口を開く。
「……意味の無い事ばっかり言ってごめんね。傷つけちゃってごめんね。私の事、嫌いにならないでね?何度でも謝るから」
とても必死な顔で。泣きそうな顔で。
……そんな顔されると私も泣きそうになるよ。
私はそう思ったが、何も言えず緋色を見つめるだけだった。これが緋色の事を傷つけてるのかもしれないけど。分かっていても私は黙っている。自己嫌悪。
「……私は、人に嫌われるのが怖い。人に悪口を言われるのが怖い。でもね、自分では悪口を言っちゃうんだ。人の気持ちを考えられないんだ。……そんな自分が嫌い」
小さな声で呟く緋色。緋色の目線はどこに向いているのか分からない。緋色が何を思って話しているのか分からない。
私は緋色の気持ちを理解できなかった。まだ会って間もない私に、何故そんな話ができるのだろうか?
嘘だよ。理解してる。約束したから。
……私と一緒だから。
「……だから、ここに来たんだ。古くて、誰も触れていない建物。最高でしょ?そして屋上。ここから飛び降りれば、何もかも忘れられる。何もかも失える。そんな気がするでしょ、ここは。それが、私の唯一の希望なんだ。逃げ道なんだ」
緋色が私に微笑んだ。ぎこちなくて、少し歪んだ笑み。
哀しみを押さえなくていいのに。
私も緋色と一緒。自分と同じ、仲間が欲しいんだ。
だから作り上げたんだ。一緒にいる理由を。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.12 )
- 日時: 2014/10/25 21:11
- 名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)
独りで生きるのは辛い。そんなの昔から分かっている。だから笑っているんだ、泣いているんだ。
もう壊して、バラバラに。もとに戻らないくらいに。何もかも失ったら楽になれるでしょう?
沈黙が続く。
「……ねえ、私と友達になってくれる?」
唐突な緋色の言葉。作られた言葉。
友達なんて表面上だけの事。親友もそう、心の底では私を蔑んでいる。友情なんて存在しない。いつか裏切られる物なの。
でも、緋色なら信じられる気がする。私と近い緋色なら。約束をした緋色なら。
……こんなだから傷つきやすいのかな。
傷つきたくない。傷つけたくない。それでも人を関わりたい。独りにはなりたくない。
私の答えは最初から決まっていた。出会った最初から。
「……笑美?」
緋色が訝しげに私の顔を覗き込む。私がずっと顔を俯けていたからだと思う。
これ以上黙っていると緋色を不安にさせてしまう。
私はいつもより柔らかな笑みを顔に張り付ける。引きつってなんかいない。作り笑顔なんかじゃない。
正真正銘の心からの笑顔。
「私もなりたいと思ってたの。これから、よろしくね」
……なんて、誰が信じるかな。
緋色は信じていないでしょう?
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.13 )
- 日時: 2015/01/07 12:01
- 名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)
どんなに自分を嫌っても、どんなに自分を殺しても。世界は何も変わらない。
私が消えても、何も変わらない。只、回っている。
止まってしまえばいいのにとは思わない。私の事など忘れて永遠に回っていて欲しい。私の存在を消して欲しい。
辺りが暗くなってきた。どれくらい話したかな。緋色と仲良くなれたかな。
緋色は私を嫌いになっていないかな。
「……そろそろ帰ろうかな」
緋色がゆっくりと立ち上がった。暗くて緋色の顔がよく見えない。
緋色は今、どんな顔をしているの?緋色は今、何を思っているの?
嘘吐きの笑みを浮かべているの?
視界が歪む。私の手に涙が落ちた。少し温かくて、心地よい。
涙は私の心を癒してくれる。嫌なことを忘れる道具。
嫌なこと?嘘だよ、嘘だよ。嫌じゃないよ。楽しいよ。緋色といて楽しいよ。
……嘘だよ。
私は涙を流す理由が分かっていた。
「……笑美?何で泣いているの?」
緋色が私と顔を同じ高さまで下げる。
緋色の顔が見えないよ。グシャグシャに歪んで。緋色の綺麗な顔が台無しだよ。
「……ごめんね、知らない間に笑美のこと、傷つけちゃった。だから駄目なんだ、私は」
悲しそうな顔をしている。見えないけど分かるんだ。私は緋色を傷つけてしまったって。
大切な友達を傷つけてしまった私は最低だって。
笑っちゃうよ。
「そんなことないよ。突然泣いてごめんね。私、嬉しかったんだ。友達ができて」
鼻声で聞き取りにくい私の言葉。嘘吐きの言葉。
どこまでが本当で、どこまで嘘か。私にも分からなくなった。
それでいい。本当か嘘かなんて大切じゃない。誰も傷つかなければいいんだ。
たとえ全部嘘でも、信じれば本当だよ?
涙をハンカチで拭くと、目の前に綺麗に微笑んだ緋色がいた。
「……バイバイ。またね」
緋色は軽く手を振る。私も振り返す。
「うん、またね」
また会える。また話そうね、私の友達。
……信じてるよ?
嘘吐き。作り物なのに、いつか消えてしまうのに。
涙を流しながら笑って何が楽しいの、誰が喜ぶの。
傷ついて、傷ついて。愚かすぎて笑っちゃう。
嘘が下手すぎて笑っちゃう。分かっているのに信じてて笑っちゃう。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.14 )
- 日時: 2014/10/25 21:24
- 名前: 桜 ◆k7.5lqH5Sc (ID: tL2iei10)
—2章—
“何でアンタが幸せそうに笑うの”
“私の方が幸せにならなければいけないのに”
“アンタは幸せになっちゃいけない”
“もう、存分に貰ったでしょ?”
“だから、”
——————アンタなんか、死んじゃえ。
ごめんね、
朝が来ると憂鬱になる。また一日が始まるんだって。また繰り返すんだって。
カーテンを開けると朝日が眩しいくらいに部屋の中を照らす。私には耐えられない程の澄んだ青空が見える。
気持ち悪い。私はカーテンを閉めた。
制服に着替え、朝食を摂りにリビングに繋がる廊下を歩く。
話し声がする。姉と母の声。私にはくれない優しい声。言葉。私が入れば壊してしまう2人の世界。
……今日は部屋でだね。
私は自分の部屋に戻り、ちょっと前に買ったコンビニのお握りを食べた。賞味期限は多分、大丈夫。
たとえお腹壊しても大丈夫。それはいつかは治るから。
痛みはいつかは消えるから。
玄関で靴に履き替えているときに、ちょうど部屋から出てきた姉と目が合った。姉は顔をしかめ、すぐに引っ込んだ。
「……いってきまーす」
小声で言ってみた。挨拶が返ってくるはずもなく、私はすぐにドアを閉じた。
惨めなだけだ。分かっているのに。
一緒に通う人もいない私は早足で通学路を進む。
前には数人のグループで登校する人達。
今日の時間割何?とか、他愛もない話をしている。
私はその人達の横を通り過ぎた。
誰一人、私を見ようとしなかった。私の存在に気付かなかった。
- Re: 嘘吐き造花が枯れるとき。 ( No.15 )
- 日時: 2014/10/25 21:31
- 名前: 桜 (ID: tL2iei10)
何も変わらない。転校生が来ることもなく、昨日と同じ。
今日か昨日か分からなくなりそうな。
窮屈な日常。
溜息をつける所もなくて、弱音を吐ける所もなくて。笑顔を求められて、優しさを与えて。
枯れることすら許されない。
嘘を吐き続ければ、いつかは楽になるよね。全て本当になるのだから。
本当と嘘は案外近いものかもね。
今日も私は笑顔を張り付ける。
昼休みの教室は少し騒がしい。ふざけ合ったり、本を読んだり、宿題をしたり。皆思い思いのことをしている。
私はクラスメイトと話をしている。小学校からの付き合いでよく話をする人。
「ね、笑美。私達来年受験生だよねー」
比較的仲の良い“友達”
当たり前のことを言い合う。笑顔で話を繋げる。それが友達。独りにならないための友達。
「受験かー……、嫌だねー」
嫌そうな顔を作る。嫌なのは受験だけではないけれど。思い出してしまっただけ。
「笑美はさ、志望校決まってる?うちは決まってないよー」
少し言葉に詰まった。……大丈夫、言える。
「私は桜ヶ丘高校かな?」
そう言ったら、友達はもっと笑顔になった。……大丈夫だった。
「それって公立トップ校じゃん!笑美頭いいもんねー、少しはその脳みそを分けて欲しいよー」
それから他の話題に移って昼休みは終了。
友情に亀裂は入らなかった。だって、偏差値の高い高校へ行こうとしている人を嫌う人もいるでしょ?
何調子乗ってるんだ、お前じゃ無理だよとかさ。
でも、その子は笑顔で応援してくれた。それは偽りには見えなくて。私を心から信用してくれてるんだなと思ってしまった。
でもさ、嘘は含まれてるよね?本当だけなんてないよね。私のこと、嘲笑ってるよね。
……こうやって、私は自分自身を追い込んでしまうんだ。
—————お姉ちゃん、一緒の高校に行ってもいい?
—————嫌。あんたの顔を見るだけで虫唾が走る。
分かってるよ、分かってたよ。
だから近づいちゃうんだ。傷つけられるって分かっていても。
それでも一緒に居たいんだ。