複雑・ファジー小説
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- 嘘吐きシンデレラ
- 日時: 2012/03/29 09:23
- 名前: 桜庭遅咲 ◆ilG1GceQB. (ID: khvYzXY.)
さて、ハジメマシテの皆さんも、ご無沙汰してますな皆さんもこんにちは。
桜庭遅咲(さくらばちさき)現、緑川祐という拙い文字書きもどきです。
さて、始めましょうか。
嘘吐きの物語を。
【嘘吐きなシンデレラの末路は?】
★Information【お知らせ】
題名を変えさせていただきました。
皆様のおかげで参照が400を突破しました。
感謝感激です!
返信もやっとこ50です。頑張るぞー。
- 本編 6 ( No.35 )
- 日時: 2011/05/08 20:29
- 名前: 桜庭遅咲 ◆ilG1GceQB. (ID: khvYzXY.)
「6」
楽しいなぁ。
温かい血を浴びる機会なんて、滅多にない。
あぁ、けど…まだまだ…
あいつの血を、浴びなきゃ
☆★
くすくすくす
笑い声が響く。
赤い水溜りの中に佇む、声の主の全身は赤黒い。
だがそれは、けしてそれ自身のものではない。
けれど、まだ僅かに白の残る赤いコートの赤は、明らかに人間の体内を流れる液体の色だ。
べったりと貼りついた赤と艶のある黒の混ざった髪。
澄んだ碧眼はやけに虚ろ。
「あぁ、いいなぁ…やっぱり」
うっとり。恍惚とした表情でそれは呟く。
その表情はどこか艶かしく、美しい。
「けど、違う。違う違う違う違う違う。
どこ?どこどこどこ、どこにいる?」
呟くと同時に表情は一転し、苦痛とも、絶望ともとれる狂気的なそれへと変わる。
「探さなきゃ、俺のものなのに。とられたら、困る」
ふらり、と歩き出したそれの手には、黒い箱が握られている。
漆黒、その中に浮かぶのは赤いライン。
不意に、足を止めて、それは呟いた。
「あぁ、早く会いたいなぁ。俺のシンデレラ…本当、どこにいるんだよ…
光」
- 本編 7-1 ( No.36 )
- 日時: 2011/05/20 19:57
- 名前: 桜庭遅咲 ◆ilG1GceQB. (ID: khvYzXY.)
「7」
うんめいのひと、を探してるわりには
運命とか、恋とか信じてなかった。
けど…うん。
一目惚れってやつは、あるのかもしれない。
★☆
恐怖が俺を支配しようとする。
大丈夫、逃げられないほどじゃないから。
じり、と一歩後退する。
じり、と相手が一歩近付く。
…鬼ごっこかぁ、なんて緊張感のない考えが浮かぶ。
いいじゃん、楽しいじゃんね。
勝てる気がしないけど、やってやるよ。
3・2・1、で走り出す。
追いかけてこなければいいな、なんていうのは淡い願いなんだろうなぁ。
全力疾走。
「50m走六秒台なめんなよ、バーカ!!」
ディーバに言葉が通じるかなんて知らない。
けど、叫んでみる。ひゃっはー!!
結構必死だけどね!
「…や、め…。やめてくださいっ!」
結構必死、なのになぁ。
不意に聞こえたその声が、やけに耳に響いた。
「あ、…この人だ」
なにが、かなんてわからない、けどそう思ったんだ。
声の主を見つけなくちゃいけないと思った。
どこだ?どこにいる?
走ることをやめて辺りを見回す。
あれ?ディーバいないじゃん、とかも確認できた。やったね。
あ、いた。
やっべぇ、ベタ。裏路地にいるとか。
女の子一人に何人も男が群がっているってのも、ベタだなぁ。
多分、どーせ消すんだから、と美味しい思いでもするつもりなんだろうなぁ。
下衆だなぁ。
不快だなぁ、不快すぎるよ。
俺の嘘も人によっては不快だろうけど、次元が違うよなぁ。
「ねぇ、おにーさんたち。〈こっちむいてください〉」
…あれ?普段だったらスルーするんだけどなぁ。
突然、男が割り込んできてぼーぜんとしてるおにーさんたち。
すぐにそれは、怒りに変わった。
短気な奴ら、嫌い。
面倒だから、さくっとやりますか。
- 本編 7−2 ( No.37 )
- 日時: 2011/05/10 20:54
- 名前: 桜庭遅咲 ◆ilG1GceQB. (ID: khvYzXY.)
青年は、笑んでいる。
5人の大男に囲まれているにも関わらず。
青年は、笑んでいる。
「あ?ガキはすっこんでろ!」
男の一人がその見た目どおりの大声をあげる。
それでも青年は、笑んだまま動こうとはしない。
「なめてんの、かっ!」
他の男が、青年の髪を乱暴に掴む。
それでも、相変わらず青年の顔には笑み。
言葉を発する気配すらない。
「なん、だ…こいつっ!」
男達はどよめく。
「や、やっちまえ!」
リーダーらしい男が、声を上げた。
他の男達も、おぉ!だかうおぉ!だかよくわからない声をげながら、青年へと殴りかかる。
そのとき、だった。
「はぁ…〈黙れ、寧ろ動くな〉」
青年が口を開いた。
その口調は気だるげで、苛立たしげで…おして、どこか楽しげだった。
男達の動きが止まる。
まるで、動画の停止ボタンを押したかのように、不自然な体制で。
それと同時に男達は、自分の意思とは裏腹に動こうとはしない体に困惑する。
「くす」
そんな男達を見て、青年は笑みをこぼす。
それはまるで無邪気で幼い笑み。
それはまるで哀れむような嘲笑。
それはまるで無感情な道化師の笑み。
「…〈貴方達は存在しない。永久の闇の中にいる。つまりは、貴方達の負け。貴方達は消滅する〉」
青年は、淡々と言葉を紡ぐ。
まるで、最初め(はじめ)から用意されていた台詞を読むかのように。
それが、嘘だとわかるくらい淡々と。
…だが、男達はうろたえ、狼狽する。
その瞳には、絶望がうかんでいた。
- 本編 7−3 ( No.38 )
- 日時: 2011/05/11 20:08
- 名前: 桜庭遅咲 ◆ilG1GceQB. (ID: khvYzXY.)
「ふー…」
ピシャリ、と赤い飛沫が上がったのを確認して、ため息をつく。
短気な奴ら、本当嫌い。面倒。
「あ、の…。これ…」
控えめな声と一緒にハンカチが差し出される。
ん?と思ってそっちを見れば、さっき助けた女の子。
「あー…いいですよ、汚れちゃいますから」
にへらっ、と笑いながら断ると、ゆるゆると首を横に振られた。
「…使ってください」
少し強めに言われちゃったので、しぶしぶ受け取る。
優しさは嬉しいんだけど、正直女の子のハンカチ汚しちゃうのもなぁ、とか我ながらキザな発想。
だから、ハンカチで拭くフリして、自分の袖口で擦る。
新しい服欲しいな…汚れっぷりがひどいよ。
「…なんで、助けてくれたんですか?」
俺をじっと見つめながら女の子が呟いた。
えへ、そんなに見つめられると照れる、とかふざけてみようかと思ったけど、やめとく。
さて、なんて答えようかな。
体が勝手に動いた、とか今時使わないよね、たとえそれが事実だったとしても。
「あー…俺、一人対複数人って嫌いなんですよね。しかも、一人の方が女の子なら、尚更」
ここでにこっ、とか笑めばなんか漫画のきゃらとかっぽいけど、キザっぽいというかなんか嫌なのであえて苦笑いをチョイス。
「素直なんですね。…自分に」
…え?素直?
え、あ、初めて言われた、そんなこと。
やべぇ、反応に困る。
- 本編 7−4 ( No.39 )
- 日時: 2011/05/20 20:00
- 名前: 桜庭遅咲 ◆ilG1GceQB. (ID: khvYzXY.)
「…あ、えと…ごめんなさい。無視しておけば、ライバルが減るのに…
そんな理由でライバルを助けるなんて、自分の心に嘘を吐けない人なのかな、と思って…」
しかもなんか、珍しく考えが顔に出てたらしく、女の子が慌ててフォローを入れる。
なんだ、これ、あれ?
いつものペースが保てないんだけど、もしかしてアレですか?
こ れ が 恋 っ て や つ で す か…って
「ふざけんなぁぁぁ!?」
あ、いけね…声に出た。しかも結構大声。
女の子びっくりしてるよ、うぁー…
「ごめんなさい、えっと、貴方に言ったわけではなくて…えぇと、なんていうか…。
あ、そういえば名乗ってませんでしたね!俺、『灰被り』って言います。」
うまく…誤魔化せたよね?ね?
本当はやたらと名前というかを明かしたくはないんだけどさ、背に腹は変えられないもんね!
「…シンデレラ、ですか?」
女の子は首を、こくんと傾げた。
「あー…ヘン、ですか?」
「あ、そうじゃなくて…
男の子なのに、嫌じゃないのかなぁ、と」
あぁ、なるほど。
確かに普通の男子なら嫌がるよなぁ、シンデレラ。
けど俺は、苦笑まじりに首を横に振る。
「そう、なんですか…私は、白兎…。
しろうさぎって書いて、ハクト」
女の子…ハクトちゃんも名前を教えてくれる。
なんか、この子といるとヘンだ。
なんか、和む。
「さて、と。お互い戦う気もなさそうですし、見なかったことにしますか?」
あ、これ、今日一番に会ったおねーさん(仮)と同じこと言ってね?
まぁ、いいか、うん。
立ち上がって、歩き出そうとすると、「待って」と、呼び止められる。
え、まさかの?まさかのパターン?
「よかったら…、私、も…一緒に行っていいです、か?」
ハクトちゃんが、じっと俺を見つめる。
大きくて、深い、黒の瞳。
やっぱ俺、おかしいや。
いつもなら、断るどころか、消しちゃうのにな。
首を、縦に振っちゃったんだ。
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