複雑・ファジー小説
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- 倉田兄妹
- 日時: 2011/09/20 20:27
- 名前: 中野 (ID: YcGoCaZX)
初めて小説を投稿します、中野という者です。
未熟な文章の表現力、初めてのミステリー小説ですが、
温かく目を通して頂けると嬉しいです。
この作品には過激ではないですが、グロ表現(死体、血など)があり、
そのような表現が苦手な方には読まれることを、お勧めできません。
尚、この作品に出てくる住所、人物等はフィクションです。
以上をご理解頂いた上で、よろしくお願いします。
:あらすじ
ローテンションな双子の高校生、妹のハズサと兄のアズサ。
2人は、登校中に死体を発見し、第一目撃者となる。
事件の捜査は困難する中、双子は言い出す。
「「犯人が分かりました」」
果たして、2人は事件を解決できるのか?
——無気力な双子が繰り広げる、ミステリー小説。
- Re: 倉田兄妹 ( No.20 )
- 日時: 2011/10/11 16:51
- 名前: 消防隊員になりたかった (ID: blFCHlg4)
はじめまして。なんだかあまりの冒頭の「「わかりました」」がツボで一気読みしてしまいました。
台詞主導だけれど、よく選ばれた言葉づかいに感じられ、ナチュラルに楽しめました。素直に、面白かったです!
そしてタイトルがまた、こう、なんというかずるいですよね(^^)。なんで倉田?っていう。きっとたまたま倉田なんだろうけど、知りたくなっちゃうんですよこういうの。続きも楽しみです。
- 倉田兄妹 ( No.21 )
- 日時: 2011/10/11 17:42
- 名前: 中野 (ID: Y2qMR8Q5)
消防隊員になりたかった様>
こちらこそ初めまして。コメントを下さり恐縮です(汗)
一気読みして頂き、ありがとうございます。
話が自然な流れになるよう気をつけているので、面白いと感じて頂き嬉しい限りです!
もう、嬉しくて何と言えばいいいのやら・・
話の構成は未熟ながらも、面白い展開になる様に努めますので、
これからもよろしくお願いしますね^^
- 倉田兄妹 ( No.22 )
- 日時: 2011/10/11 18:29
- 名前: 中野 (ID: Y2qMR8Q5)
20:パズル
妹からの返事は、風呂には関係なかった。
「アズサ、入ってきてー」
ドア越しから間延びした声は、いつもと違った。
いつもは、何となく気だるげな声音なのに今は覇気がある。
何か頼む時に出す、甘える声に似ていた。
「提出する課題のこと?」
「それは終わったよ、斉藤さんからメール来てる」
その言葉にドアを開ける。
机の上のパソコン画面を見るハズサの姿が視界に入った。
横顔のハズサは、頬杖をついている。
「課題を手伝えって言われるかと思った」
「だって古典は苦手だから、しょうがない。
それはさておき、アズサに手伝って欲しいことがあるんだー」
「結局手伝いするんじゃん、俺」
「アズサは頼りになるし。古典とかすらすら解けちゃうじゃんか」
「もっと頼りになる所あると思うんだけど。英語もできるよ」
「まあ、それは置いておいて」
置いておくのか、と突っ込みたかったが言わなかった。
このままやり取りを続けていると、中々本題に入らないからだ。
タオルで髪の毛を拭きながら、パソコンの画面を覗く。
「じゃーん、斉藤さんからの被害者の有力情報。
名前、経歴、住所までばっちり」
「斉藤さんって凄い人だったんだ」
ハズサが椅子から立ち上がり、俺を椅子に座らせた。
画面には、無愛想な男の顔が載っている。
江原啓介。職業はフリーター。事件数日前に職場に現れない。
住所は瀬羽川に近い。アパートに住んでいたのか。
「これだけの情報をどっから拾ってくるんだろ」
「情報網のつて、だって言ってたよ。情報屋じゃないかなあ」
「プライバシーの保護が不安になる」
斉藤さんの顔が思い浮かんだ。
黒縁眼鏡の奥にある無邪気に笑う目。敵に回したら怖いタイプだな、あの人。
「ね、アズサ。手伝って欲しいことなんだけど」
「何?」
「明日、江原さんの住んでいたアパートに行こう」
「・・えー」
確かに、被害者の住んでいたアパートに興味はある。
もしかしたら事件の手がかりが掴めるかもしれないからだ。
だが、斉藤さんから住所を送られてきた時点で先を越されている。
あの人のことだから、上手い手法で部屋に入った可能性もある。
例え、部屋に入れても事件の関係するものは、警察とかに持ち帰られているのではないか。
「アズサ、お願いー」
「行って何かあるのか?及川刑事とかも行ってそうだし」
「お願い」
ハズサは、意外と頑固だ。
興味のあるものには知り尽くすまで諦めないし、手放したくないものは離さない。
そういや、パズルのピースが埋まらなくてもハズサは絶対に諦めなかったな。
俺が埋まらなかったピースを見つけると、ハズサは喜んだ。
アズサのおかげだね、と完成したパズルの絵を眺めては何度も言っていた。
「・・分かった、行く」
俺は結構、ハズサに甘いのかもしれない。
ちら、と目線を逸らすと、ハズサの部屋に飾られた星空の絵のパズルが視界に入る。
星の輝きは色あせていなかった。
- 倉田兄妹 ( No.23 )
- 日時: 2011/10/13 18:34
- 名前: 中野 (ID: 3JZ8Axjf)
21:アパートにて
斉藤さんから教えられた住所の場所に行くと、古びたアパートがあった。
二階建てのアパートは、階段の手すりなどはさびているが、汚らしいアパートではない。
整備が行き届いている印象を受けた。
「ここに江原さんの部屋があるんだよね」
「大家さんとかに聞いてみようか?」
「私たち、警察でもないのに答えてくれるのかな」
ハズサは自分の足元を見てから、顔を上げる。
二人とも、制服ではなく私服を着ていた。
大人びた服装は、大学生に見えなくもないが、大人には見えない。
アズサは唇を軽く噛むと、口を開く。
「やってみないと分かんねえよ、そんなの」
「男らしいね、アズサ」
「男だからな、俺は」
アパートの前の道路を、ざっ、ざっと箒で落ち葉を掃いている老人は住人だろうか。
賭けみたいだ、とアズサは思いながら老人に近づいた。
ハズサは後からついてきて、様子を伺うようだ。
「すみません、このアパートに江原啓介さんという方は?」
老人は箒を掃く手を止めると、アズサの顔を見た。
少し目を見開き、驚いた表情を浮かべた。
「おや、綺麗な子だねえ。後ろの子も美人だ、双子さんかい?」
「ええ、双子です。近くに住んでいる倉田と申します」
「倉田さんね、ところで江原さんがどうかしたのかい?」
「・・・実は、お亡くなりになったと聞きまして。
部屋の方を見させて頂けないかと」
「倉田さん達、まだ学生だろう?どうして部屋を見たいんだい」
「私たち、江原さんを殺した人を見つけたいんです。
だから江原さんの部屋に事件に関係するものがないか、
調べたいんです。」
アズサの横で話を聞いていたハズサが身を乗り出す。
偽りのない言葉に、アズサはため息をついた。
そんなあからさまな理由じゃ、追い出されるのがオチだからだ。
子供の好奇心だ、と馬鹿にされておしまいだ。
だが、予想に反して老人は愉快そうに笑った。
訳が分からず、アズサとハズサは顔を見合わせた。
「いやあ、久しぶりに笑ったよ。若い子は面白いねえ」
皺のある目尻から滲む涙を指先で拭いながら、老人は微笑する。
穏やかな表情をしていた。
「探偵をやっているのかい?倉田さん」
「いや、そういう訳では」
「気になるんです、この事件が」
ハズサの言葉に老人はゆっくりと頷き返した。
その穏やかな仕草は、自分の祖父母達に似ている。
「いいだろう、私が倉田さん達に協力してあげよう。
こんな綺麗な子達は二度と見れないからねえ」
自分たちの顔が綺麗で良かった、と初めて思った。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
同時に出た言葉に、老人は感心したように頷く。
本当に双子は息が合うんだねえ、と。
- 倉田兄妹 ( No.24 )
- 日時: 2011/10/13 19:09
- 名前: 中野 (ID: 3JZ8Axjf)
22:老人
「刑事さん達が調べたいと言って、一昨日来ていたよ」
老人は02、とタグがついた鍵をちゃりちゃりと揺らす。
ハズサとアズサは老人の歩幅に合わせ、ゆっくりと後ろをついていく。
アズサが話しかけた老人は、なんとこのアパートの大家だった。
昔から運が強いアズサに、ハズサは無表情だが目が不満げに見える。
双子だが、妹の方はあまり運が強くないからだ。
だが、刑事に先を越される所までは、さすがにアズサの運は廻らなかった。
「やっぱり先越されてるじゃん、ハズサ」
「でも現場保存はしてくれているでしょ。
大家さん、江原さんの部屋を片付けてないですよね?」
「ああ、刑事さんに釘をさされていてねえ。
また訪れますから部屋はそのままにしておいてくれって」
「良かったー」
「そういえば及川刑事達は、手がかり見つけたのかな」
「どうなんだろ。あれから連絡がないしね」
「刑事さんと知り合いなのかい?」
大家さんは、驚いた様子でこちらを振り返った。
二人はええ、まあと曖昧な返事をする。
「色々とありまして。ところで江原さんってどんな方なんですか?」
「不器用な人だね」
「不器用、ですか?」
「人付き合いが苦手そうだと感じたねえ。
家賃はきちんと払うから、私は文句はなかったけれど」
大家さんは思い出すように、眉根を寄せると額に皺ができた。
腕を組み、しばしの間の後に口を開く。
「ほら、あの顔だろう?
挨拶もしない無愛想だから住人が怖がっていたんだ」
「確かに怖い顔つきですもんね」
ハズサとアズサは同時に免許証の写真を思い出した。
証明写真だから、くっきりと写されていて目つきの鋭さがよく分かる。
橘刑事の情けない表情とは真逆すぎる。
「それでも、住人同士のトラブルがなかったし、良い住人だったんだけどねえ。
さて、ここが江原さんの部屋」
三人の前には、江原とプレートがついたドアがある。
大家さんが鍵を差し込むと、カチリと音が鳴った。
鍵が開いたドアノブを掴み、大家さんはドアを開けていく。
部屋からは少し埃っぽい、乾燥した空気が漂ってきた。