複雑・ファジー小説

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倉田兄妹
日時: 2011/09/20 20:27
名前: 中野 (ID: YcGoCaZX)

初めて小説を投稿します、中野という者です。

未熟な文章の表現力、初めてのミステリー小説ですが、
温かく目を通して頂けると嬉しいです。

この作品には過激ではないですが、グロ表現(死体、血など)があり、
そのような表現が苦手な方には読まれることを、お勧めできません。

尚、この作品に出てくる住所、人物等はフィクションです。


以上をご理解頂いた上で、よろしくお願いします。


:あらすじ

ローテンションな双子の高校生、妹のハズサと兄のアズサ。
2人は、登校中に死体を発見し、第一目撃者となる。
事件の捜査は困難する中、双子は言い出す。

「「犯人が分かりました」」

果たして、2人は事件を解決できるのか?
——無気力な双子が繰り広げる、ミステリー小説。



倉田兄妹 ( No.1 )
日時: 2011/09/25 14:58
名前: 中野 (ID: xhJ6l4BS)

1:雪は降らなかった。

珍しいことが起こった時、雪が降る季節じゃないのに「今日は雪でも降るのか?」とか、
「槍が空から降ってくるかもなぁ」とも言う。

前者はいいが、後者は恐ろしい。
まあ要するに、ありえないことを起こした相手に使う、からかいの言葉だ。

例えば、遅刻ばっかしてきた生徒が、ある日は遅刻しなかった時。
その生徒に担任が、「今日は珍しいな、雪でも降るかもなぁ」と言うのが、正しい使い方だと思う。


そして、その使い方が今の状況にあてはまる。

「ハズサが早起きしてるなんて」

「私もびっくりだよ、何年ぶりかな。朝食中のアズサを見るのは」

「さあ?俺も、ハズサと朝食を一緒に食べるのは何年ぶりだろ」

「十年ぐらいは経ってそう」

ふあ、と欠伸をする妹のハズサ。
ハズサは幼い頃から、早起きが苦手で起きるのが遅かった。
これは、相当珍しい。


「雪でも降るかな」

「降ったらいいな、暑いから」

「・・降らないよ、天気予報は晴れマークだし」

「アズサから言い出したんでしょー」

「からかいのつもりだったんだよ、ハズサの早起きは珍しいから」


ハズサは、トースターに食パンをセットしてスイッチを回す。
待っている間、コーヒーをマグカップに注ぐと、ミルクを少し入れる。
黒い液体の上に、白い液体が模様を作る。

その様子を見るのが、ハズサは好きだ。
じーっと、見つめてゆらゆらとする模様を見る。

自分のマグカップに視線を落とす。
すでにかき混ぜられたカフェオレだが、俺もさっきまで同じ事をしていた。

変な所で似てしまうことに、思わず苦笑した。

倉田兄妹 ( No.2 )
日時: 2011/09/20 20:30
名前: 中野 (ID: YcGoCaZX)

2:通報


「アズサ、人が倒れてる」

「本当だな、酔っぱらいかな」

「こんな所で?」

高校へ向かう道のりの途中。
すぐそばに川が流れていて、その川沿いに道がある。

2人は、その川沿いの道をいつも通り、歩いていた。


しかし、道の真ん中に人が倒れている。
2人は顔を見合わせ、お互いに首を傾げ合う。

1つ、頷く。
そして、歩みを止めることなく、倒れている人に近づく。

「ハズサは、あんな大人になっちゃだめだよ」

「アズサもね。・・・あれ?」

「どうかしたー?」

「この人、血が出てる」

「あ、本当だ」


倒れている人は、俯せで顔は見えなかった。
だが、お腹の下から血が出ているらしく、お腹あたりの地面に赤い染みが広がっている。

ハズサとアズサは、じっと倒れている人を見ていた。
そして、ハズサはしゃがみこんでその人の顔を覗き込む。

「アズサ、」

「何?」

ちょいちょい、と手招きをし、アズサにしゃがむよう指示する。
アズサはしゃがむと、ハズサと同じく、その人の顔を覗き込んだ。


「この人、死んでる」

「この人、死んでる」


倉田兄妹は、同じタイミングで同じ言葉を言う。
さすが、双子だ。

「顔面もひどいよ、怪我が」

「腫れてるし、痣もあるな」

「これは、ただの酔っぱらいじゃないよね」

「酔った勢いで、自分から怪我して死ねないだろ」

「もしそうだったら、ある意味凄いけど。まあ、ふつーは」

「有り得ない」

「有り得ないな」

「じゃあ、誰かに殴られたりして、殺されたのかな」

「恨まれてたのかもな、この人」

「ふぅん・・」


ハズサは、ぱっちりとした二重の目で死体を見つめる。
まるで、観察しているような目つきだ。その内、模写しそうな雰囲気すらある。

「というかさ」

「ん?」

「警察に通報しないと」

「あ、忘れてた」

「俺が電話するから、その間に死体を触っちゃだめだよ」

「わかってるー」


死体を目の前にして、警察に電話をかける。
携帯電話を耳にあてつつ、アズサは立ち上がった。

電子音が止まり、若い男の声が電話越しに聞こえる。


『はい、こちら瀬羽署です。ご用件は事件ですか、事故ですか?』

「事件です。」


不意に、パシャというシャッター音が聞こえた。
音のした方に目を向けると、ハズサが携帯で写メを撮っている。

わざわざ撮る被写体じゃないのに、と思ったが放っておく。


「目の前に死体があります」


この一本の電話から、波紋が始まる。




倉田兄妹 ( No.3 )
日時: 2011/09/20 20:30
名前: 中野 (ID: YcGoCaZX)

3:ガキらしくない


刑事の及川が到着する頃には、鑑識や、侵入規制の整備等は始まっていた。
第一目撃者である、男女の高校生に、及川は事情聴取をしていた。


「通報してきた時刻は7時13分。
 その少し前に目撃ということだから7時10分ぐらいか。
 2人は学校に行く途中だったわけだな?」

「はい」

「はい」


こく、と頷き、同じタイミングで返事をする。
双子っつーのは、本当に似るんだな、と及川は妙に感心した。

「怪しい人影は?」

「なかったです」

「いつも、この時間帯は人通りが少ないんです」

「だから、人を見かける方が珍しいというか」

「たまに1人か、2人、ランニングしてる人と、すれ違うぐらいですし」

「そうか・・前から危ないとは思っていたんだが」


この、瀬羽町には、川沿いの長い道が存在する。
昼間や、夕方頃は、近隣の住宅街の住人がよく通るらしい。

だが、朝や夜は人気が少なく、好んで通る人はいない。
及川が、その内事件が起こるのでは、と思った矢先に、今回の事件が起こってしまった。


「その制服だと、瀬高生か」

「はい」

暗めの紺色のブレザーに金色のボタン、胸元のエンブレムは銀糸で刺繍されている。
女子は、赤色のリボンに、チェック柄のプリーツスカート。
男子は、赤色のネクタイに、チェック柄のズボン。

統一感のある洒落たデザインは、瀬羽公立高校の制服だ。
あそこの学校は、進学校で偏差値が高かったはず。

及川は、ハズサとアズサを疑っているわけではない。
可能性があるなら、その人物の身分やらを分析してしまう。

長年の、刑事ならではの癖だ。


「学生なのに、警察の都合に付き合わせて悪いな。
 第一目撃者は、事情聴取しないといけない決まりなんだ」

「気にしてないので」

「平気です、私とアズサが発見しましたし」

「・・それなら、いいんだが」

しっかし、この双子は落ち着きすぎではないだろうか。
普通の子供は死体を目にしたら、うろたえたり、悲鳴をあげたり、泣いたりするとか。
もっと反応があるもんだろ?

意地を張っている様子ではなさそうで、むしろ事件に無関心そうにさえ見える。


・・・それにしても、な。

初めて見た時から思ったが、両方とも綺麗な顔立ちをしていた。
ぱっちりとした大きな目、形のいい眉、すっと通った鼻筋、ほっそりとした顎のライン。

男と女では微妙に違うが、パーツは同じだ。
さぞかし、この2人はモテるんだろうな。


「刑事さん、どうしました」

「双子が珍しいですか?」

「いや、そういうわけじゃ、」


じろじろ見すぎていたらしい。
及川は苦笑して、誤摩化す言葉を遮るように、大声が聞こえてきた。

「及川さーんっ、すみませんっ遅れました!」

「橘、遅れるとは何事だ!お前はっ」


こちらに、走って向かってくる若い男は、情けなく眉を下げた。


「すみません、・・・寝坊、しました」


及川の怒鳴り声が響き渡るのは、すぐ後のことである。

倉田兄妹 ( No.4 )
日時: 2011/09/21 09:05
名前: 中野 (ID: YcGoCaZX)



4:大丈夫かな、この人


「いいか、これは殺人事件だ。
 即座に動いて、現場を見て自分の目で確かめる。それが刑事だろーが」

「はい、わかってます」

「わかってるなら遅刻すんな!」

「いだっ!す、すいません」


及川が、男の頭を思いっきり殴った。
どれくらい思い切りかと言うと、ごつ、と骨の音が倉田兄妹にまで聞こえる程に。

「痛そう」

「痛そうだね」

「ったく、先行きが不安でしょうがねぇな。
 こいつは俺の部下の橘刑事だ。見た通り、まだ新米だ」

「橘です、よろしくね」

橘の、へにゃと笑う顔は、どこか憎めない愛嬌さがあった。
どちらかと言うと、刑事に向いていない気がする。

「この子達は?」

「第一目撃者だ。登校前に、死体を見つけたらしい」

「うわあ、朝からそういうの見たら嫌だよね。
 僕、死体とか血とか苦手で・・」

「俺は、お前が何で刑事になれたのか不思議だ」

「確かに」

「確かになあ」

「う、ひどいですよ皆さん!」

「お前はさっさと現場見てこい。
 吐くなら、川に行け」

「分かりました・・」


青ざめた顔でビニールシートで囲まれた所に向かう橘。
鑑識の人がきびきびと動く様と違い、橘の背中は頼りない。
ハズサとアズサは同時に思った。

刑事として大丈夫かな、この人、と。



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