複雑・ファジー小説
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- 【祝】Re Becca【一周年】
- 日時: 2014/05/23 13:02
- 名前: しゃもじ ◆QJtCXBfUuQ (ID: Ii00GWKD)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs/index.php?mode=article&id=608
申し訳ないのですが現在掛け持っている小説につきましてはお休みさせていただきます。根暗な性格なのでどうもほのぼのとしたお話が書けないんです。。
今回のお話は殺し屋の女の子のお話です。香ばしい設定ですね(
グロと少々のエロ(暗に思わせる程度)が大丈夫な方はどうぞお読みくださいまし。
主要人物
レベッカ・L(ローラ)・シャンクリー Rebecca Laura Shankly 女 16歳くらい
フリーの殺し屋。根暗、陰気、毒舌、金の亡者、人間不信と人格的に大いに問題あり。幼少期に両親に喉を潰された為、人工発声器なしには声を出すことが出来ない。
表向きは両親が遺した遺産と家でひっそり暮らしていることになっている。典型的な中上流階級のアクセントや家の規模からして、現在の職業の割にはそこそこ金持ちの生まれだったことが伺える。
パンクロックやメタルが好みで、ファッションにも現れている。
フレデリカ(デリィ)・ジョイナー Frederika Joyner 女 14歳くらい
レベッカの同居人。明るく生活力の無いレベッカの身の回りの世話をしているものの陰気で自己中な彼女に振り回されている。
レベッカの職業を知っているが、拾われた恩義と良心の板ばさみにあって悶々としている。
家事の中では料理が一番得意。
依頼人がネタ切れ仕掛けなので何人か募集しようかと主思います。なお登場はかなりあとになる予定ですが、それでも良いという人はどうぞ。
名前:
綴り:
年齢:
性別:
容姿:
性格:
職業:
武器:出る可能性ほとんどなし
依頼内容:。
備考:
サンボイ
レベッカの暗殺ルールみたいなもの
・依頼人と標的の思想信条を問わない
・依頼金は原則前払い。1人につき500~1000万フリントが相場
・連絡法は依頼人が一般紙に広告を出してコンタクトを試みる。
・依頼内容に偽りや裏切りが発覚した場合依頼を中止して報復を行う
・単独犯。同業者と組むことは無い
・依頼人になる資格が無い上侮辱をした場合殺害する
・依頼遂行後のいかなる結果に対して責任を負わない
※レベッカのイメージをあげました。
>>67
強さ度みたいな
>>77
身長、体重、カップ
>>130~142
頂いたイラスト
- Re: 【キャラ募集】Re Becca【再開】 ( No.173 )
- 日時: 2014/02/23 23:24
- 名前: しゃもじ ◆QJtCXBfUuQ (ID: izFlvzlp)
「あ……」
街路樹木の葉が舞う秋空の下、ノラは始めて「彼女」を目にし、雷に打たれたような衝撃を受けた。「彼女」は数週間前にノラが出会った笑顔の金髪の少女に手を引っ張られながら歩いている。その生気に乏しい瞳は地面を見つめ、口元は緩く下がっている。そんな「彼女」を向かいの通りから見て思わずノラは片手に持っていた昼食のドーナツを落としかけたが、寸でのところでドーナツは手のひらへ納まる。
(間違いない、彼女だ)
一目だけ見てノラはそう確信した。自分が前にあった少女、黒髪と緑色の瞳、落ち沈んだ表情と少々ギャップのあるパンクファッションはこの街の住民から同情され、そっとされている『曇り顔のレベッカ』そのものだった。その姿は彼の脳裏に深く焼きついている少女と似ても似つかないのだが、なぜか重なって見える……
(こっちの視線に気付いているのか?)
しかし決定的に違うものがあった。隙がまるで無い。挙動不審と悟られないよう視線は様々なほうを向いて常に絶えず周囲を警戒している。両親を失った精神的荒廃から来る被害妄想にとらわれているのか、それとも……。2人の後を尾行しようと考えたがああも警戒されている中、尾行がばれては今後の捜査に響く。そして、署からの緊急の電話が鳴ったことに失望しながらも仕方なくその場を後にした。
※
「引っ張ラれナクてモ歩けルわヨ」
「だってこうしないとどっか行っちゃうでしょ?」
半ば強引にエスコートするフレデリカは、不満を言うレベッカに対して舌を出してやった。別に今日は彼女に是非とも一緒に来て欲しい用事はない。もう直ぐでヘルガが禁止している仕事の解禁日が来てしまうため今のうちに一緒の時間を楽しもうというわけだ。それに、毎日ギターの練習をしてはさすがに指がおかしなことになりそうだと思ったので逃げた、というのも半分。
レベッカもどうせすぐに終わるのだから、と大して反応を見せず町限定で了承した(あまり遠くには行きたくなかった)。日中遊びに出かけても彼女といる限り、町では一応「一部の人間としか心を開けない可哀想な少女」として自分は見なされているのだから過ごしやすい。反対に仕事に行く際は、わざわざ歩いて遠い方の駅を利用して目に付かないようにしている。レベッカにとって静かに出来、生まれ育ったこの町は大切だった。
しかしそれでも彼女に手を捕まれて一緒に歩くのはあまり好きではなかった。汗をかき、胸に妙なしこりが生まれ、気分が優れなくなるのだ。彼女に触れられるたびそうだった。元々気安く人に触られるのは嫌いではあるが。
町の中心にある公園は街の人間の憩いの場であるが、平日の午後ということもあって人は少なかった。せいぜいが子連れの母親がよちよち歩きのわが子と遊び、引退して年金生活をしている老人たちがベンチに座ってゆっくりとした時の中で会話に興じている。風が吹くたびに背の高い木の枯葉が枝から旅立ち、噴水近くのベンチで休む二人の頭に、体にひらひら落ちていった。
「こコで座るたメダけニ引っ張ッて来たノ?」
「うん、でもいいでしょ? たまには外でゆっくりするのもさ」
「…………」
レベッカの顔はやや不機嫌だった。目は細まり、視線は落ちている。そんな姿を彼女、デリィは何度見てきたことだろうか。
「ねえ、あと少ししたらまた仕事を始めるの?」
フレデリカが隣に座るレベッカの顔を覗き込むように尋ねる。その顔に変わりは無い。
「えエ」
さも当然のような答えに思わずデリィは押し黙った。絶対に仕事をするのは目に見えていたが、やはりここまで当然のように言われるときついものがあった。それでもそのショックに負けじと、会話を続けてみる。
「……いつまで続けるの?」
今度はレベッカが黙った。黙ったといってもストレスを感じたようなものではなく、相手の質問にちゃんと答えるための言葉探しのための沈黙である。指がとんとんと乗っている膝を叩く。
「……『彼女』次第ネ」
「『彼女』?」
大きな青い目が丸くなった。『彼女』とは誰なのだろう。デリィが知る限りレベッカの限られた交友関係の中に『彼女』に該当する女性はヘルガでもない。ヘルガは彼女の正義感の範疇で外道に落ちない限り、レベッカの生き方に口出しをしない主義なのだ。『彼女』とは一体……
「『彼女』って誰なの? レベッカの知り合いにそんな人いたっけ?」
レベッカが空を見上げた。風で雲が早く動き、木の葉がその下を舞っている。
「人デハナいワ。壊れタお人形さン。デも生きテる」
珍しく詩的な表現を使ったレベッカが何を言いたいのか、碧眼の少女にはわからなかった。
- Re: 【キャラ募集】Re Becca【再開】 ( No.174 )
- 日時: 2014/03/08 22:13
- 名前: しゃもじ ◆QJtCXBfUuQ (ID: izFlvzlp)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
(兄さん、どうしたの? そんな渋い顔しちゃって)
(アギト……落ち着いてよく聞けよ?)
(……?)
(ライトが、死んだ……殺されたんだ)
目が覚めると、視界は歪んでいた。灰色の瞳に涙が溜まっていたのだ。やがてそれは頬へ零れ、シーツを濡らす。もう何度あの日の夢を見ただろう。今日は見なかったが、あの日の弟はいつもどおりの明るい笑顔で通学の路につき、翌日の午前10時に棺桶に入って帰宅した。
遺体は殺されたにも拘らず葬儀屋によって綺麗に化粧が施されており、綺麗好きなライトが喜ぶことだろうと後になって思ったものだが、初めて遺体を見た直後は怒りと悲しみで崩れ落ち、言葉にならない叫び声をあげてすがりついたものだった。
(怖かったよね、痛かったよね、悔しかったよね……もっと楽しく生きたかったよね)
その後一家は風評被害に苦しんだ。麻薬売買を巡って殺されたのだろう、と。遺体が放置されていた現場には麻薬のブローカーが刺殺されており、その柄にはライトの指紋があった。そのため家族は近所のコミュニティから軽蔑され、排除されるようになり、息子を失った母の体は弱っていった。
アギト達の異父兄、ウィルは警官であったためすぐに捜査に乗り出し弟の遺体から麻薬の成分が検出されなかったこと、凶器が普通の高校生が中々手に入れられる品ではなく(専門の店で1本2万フリントもする強力なものだった)、売人の遺体の傷跡も素人にしてはあまりに見事に切り裂かれていたことをつきとめた。そして、売人の持っていた銃と銃弾の種類は一致したものの売人の上半身に残っているはずの硝煙反応が無い事がわかったが、遅かった。そして、捜査は突然打ち切られた。
母は精神的に打ちのめされたまま、交通事故で無くなった。血液中から大量のアルコールが検出され、自殺目的ではないのか、と噂された。
弟を殺した犯人は弟だけの仇ではない。母の仇であり、一家を悪夢に陥れた悪魔なのだ。
ベッドから身を起こし、涙を拭うとようやく視界が晴れた。いつもの朝、いつもの家。こんな日常を一日でも早く長くいつまでも過ごしたい。できればライトと、家族と過ごしたかった。
コンコン
玄関のドアを叩く音と、わいわいと騒がしい子供たちの声。いつも遊びに来てくれる(そして食べ物が目当ての)天使たちだ。彼らの笑顔を見ていると、眉間から皺が消えうせ、こっちも笑顔になってしまう。
「はいはい、今行くねー」
せめて今日一日は復讐のことは忘れ楽しもう。玄関に向かうアギトの足取りは、軽かった。
※※
「はい先生、ど—ぞ」
「ありがと」
この娘はわかっている、ちゃんと冷ました状態でお茶を入れてくれるなんてあの婆さんや患者とは大違いだとヘルガは感心する(といっても今彼女が淹れたお茶は意地悪婆さんから貰った物ではあったが)。
しかし、彼女フレデリカの面持ちは笑みこそ浮かべているもののどこか重い。先程の健診でヘルガがレベッカの火傷を全快と判断したからだろう。楽しい時間が終わり、心配しながら帰りを待つ日が始まるのだ。気が沈まないわけが無い。その様子を女医の診察眼は見逃さなかった。
「アンタもレベッカがいない間は家事をしない日を作って、ウチに遊びにでも来たら? ウチのアデーレは年の近い娘がまわりにいないから退屈してるわよ?(あの娘はレベッカが殺し屋だと知ってビビッて来ないのだけれど)」
「ありがとう先生。今度お邪魔しますね!」
医者の計らいに感謝する笑顔の奥に、何か言いたげなものが見え隠れしている。一週間の間で何かあったのだろうか。医者としての好奇心がうずいて仕方ない。
「ところで、何かあった?」
「え?」
「何か私に聞きたいことあるんでしょう? レベッカの健康以外のことでさ」
少女の青い目が泳いだ。言おうかどうか迷っているのだろう。その態度にヘルガの興味は余計に掻き立てられる。いつのまにかテーブルに身を乗り出して答えを待っている自分に気がついた。
「あ、あのう、一昨日レベッカが言ってたんですけれど……」
「何?」
「『彼女』って誰ですか?」
- Re: 【キャラ募集】Re Becca【再開】 ( No.175 )
- 日時: 2014/03/29 00:12
- 名前: しゃもじ ◆QJtCXBfUuQ (ID: izFlvzlp)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
「『彼女』ォ? 誰それ?」
当然の反応だろう、と片眉を吊り上げたヘルガを見てフレデリカは思った。自分だってそうだったのだ。いきなり「『彼女』次第ネ」と呟かれ、まったく理解できなかったのだから。
「わからないんです。ただ『人じゃない。壊れたお人形さん』って……」
『お人形さん』という単語を聞いてヘルガの手が顎に当てられた。彼女が考え込むときの癖だ。普段からきりっとした瞳が、より鋭さを増したように見える。合点がいったのだろうか……。
「……ごめん、わかんない」
「ハハ、ですよねぇ」
苦笑いで答えた女医を見てデリィもまた眉をハノ字にまげて笑ってみせる。
しかし心の中では全くもやもやが晴れていなかった。自分よりずっと長く深い付き合いであるヘルガすら知らない存在であるという『彼女』の存在がいよいよわからなくなったからだ。最早予想できるのは裏社会の人間か、レベッカの空想上の人物……。前者はともかく、いつだって合理主義で、自分の主義に忠実なレベッカが空想上の人間を語るとは思えない。
とすれば裏社会の人物だが、自分やヘルガより親しいか、または強情なレベッカに殺人を強いているのかのどっちかとなる。しかし……
「ただ、レベッカにとって大切な人らしいんです」
「そう」
ヘルガは冷めた紅茶を口に含みながらその言葉に半分同意し、半分突っぱねた。確かに『彼女』はレベッカにとって重要な存在だ。そして同時に彼女の心の奥底に仕舞われている強い憎悪の根源であることを女医は知っている。あんな顔をしたレベッカなど、早々見る事は出来ない。
ヘルガには2つ不思議なことがあった。
(どうして漏らしちゃったんだろ)
自分から『彼女』の話などしないのが、ヘルガの知るレベッカだ。それだけ口にするだけでも憎い憎い相手。しかしこの目の前にいる少女に対してあの根暗娘は『彼女』を口にした。少女がレベッカにとって自分よりも重要な存在になりつつあると考えればそれは喜ばしくもあり、同時に少々嫉妬心が生まれる程度だ。何是憎悪の対象、吐き出したくなる時だってあるだろうと。
しかし、やはりわからない。そんな『彼女』の元になぜレベッカは定期的に会いに行くのだろうか。確かにレベッカの人生に影響を与えた重要な存在である。そして……
「どうしてかなぁ……」
「えっ?」
はっ、と視線を自分の膝からデリィの下へ戻すと、彼女はぽかんとした顔をしてこちらを見ていた。完全に思考が自分の世界へ飛んだことを、そこでようやく気付き間抜けに口をぽっかりと開かせた。
「どうしたの、先生?」
「あっ……いやいやいやいや何でもないの! この後の仕事のことでね! も〜大変なのよ面倒な患者が多くて!」
マグカップを持たない左手をぶんぶんと振ってなんでもないことをアピールする女医にフレデリカは首をかしげた。午後は暇だからここでゆっくりすると言ったのになぜ仕事のことを考えたのだろうと。対面するヘルガは平静を取り戻しつつあったが、視線はまだ泳いでいる。
「そ、そうそうデリィ、そろそろ健診受ける時期じゃない?」
「え? あ、そうですね。もう3ヶ月経つんでしたっけ!」
レベッカだけではなく、デリィもヘルガの健診を受けている。障害を持ち、体のどこかを痛めることの多いレベッカがしょっちゅう健診を受けるのに対しこの青い瞳の娘は3ヶ月に一度ほどのペースで健診を受けている。
特に健康に大きな問題はないものの、レベッカに拾われた際肺だけではなく心臓に軽い疾患を患った経緯から、ヘルガが定期的な健診を受けることを勧めていた。絶対に女医の医院に行こうとしないレベッカに対し、彼女はちゃんと来てくれるため助かっている。
「じゃあ来週の火曜日はどう?」
ヘルガが手帳とペンを取り出した。
「大丈夫ですよ。一日中空いてますからっ」
「そう、じゃあ午後2時に来てちょうだい。何か用意しといたげる」
「ありがとう、先生!」という気持ちの良い返事と共にニコッと小柄な娘の顔が笑んだ。それを見るだけでこちらもついつい「どーも」と言ってしまう。この笑顔をいつも絶やさず出せるようになって欲しい。そのためには彼女を悩ませている自分の患者が変わらなければならないのだが、ヘルガにはそれをさせる確信も自信も……
- Re: 【キャラ募集】Re Becca【再開】 ( No.176 )
- 日時: 2014/04/08 22:54
- 名前: しゃもじ ◆QJtCXBfUuQ (ID: izFlvzlp)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
依頼を受けたレベッカは待ち合わせ場所であるバー『プラナ』の奥の席にいた。その背後には非常用出口を示すバーが光っている。テーブルに置かれているのは普段飲むことの無い氷を浮かべたウォッカ(さすがにバーまで来てジュースを頼むわけには行かない)。
今回の依頼人、ルドルフ・レブローニとの会見時間は0時の予定だが、彼女の右腕に巻きつけてある腕時計は22時半を指していた。その顔はやや不機嫌だ。依頼したマダムの情報ではあの件の実行犯について此処に来る前に確認したものの「あと2日待ちな」と言われた。彼女のことだからまずやましいことなどないのだろうが、どうもはぐらかされているようで不快だった。自分の生死について疑問が残るというのは……。
バンッ
グラスに口をつけようとしたその時、褐色の肌の男が勢いよくドアを開け店内に入ってきた。服は薄汚れ、秋だというのに汗で濡れそぼっている。その顔は疲れきってはいたが眼光鋭く、閑散とした店内を見回している。店内には……マスターと年若い娘しかいない。
「おいオヤジ、こいつを預かってくれ!」
「は…?」
そう言って男は懐からカウンターへ物を取り出した。それはビニール袋に詰まった白い粉と、薄汚れた身なりに似つかわしくない新札。それがなんなのか髭面のマスターは聞かなかったが、直ぐに理解できた。赤ら顔が瞬く間に青ざめ、首をぶんぶんと横に振って返答した。
「いやいやいや、やめてくれ! こんなもん預かりたくねぇ!!」
「うるせぇ! 金払うってんだよ、黙って預かってろ!」
2人のやり取りをよそに、奥の席にいるレベッカの視線は落ちたままだ。まるで2人などそこにいないかのように振る舞いグラスに注がれた酒を飲んでいる。
「いいから受け取れよ! じゃねえと……」
バァンッ!!
店の中の人間の注目が、再びドアへ集まった。今度は数人の男たち——最初の男とは明らかに人種が異なる——が肩をいからせて入ってきた。その黒い目は憔悴しきった男に対して怒りをぶつけており……
「マルコ、支払いがまだだぜ」
「!」
ガゥン!
マルコが支払ったのは自分の命だった。際m不履行による、強制的な差し押さえ……。その額には差し押さえを示す鉛弾が撃ち込まれ、債務者は拳銃を向けながら後ろ向きに倒れこみ血を噴出した。マスターが悲鳴を上げ、カウンターへ身をかがめ、緑色の瞳を持つ少女はそれを眉一つ動かさず見ていた……。
「へっ! ちぃとばかし我慢すれば50万はぼろいのによぉ」
「馬鹿な奴だぜ。たかが200万に命張るなんてな」
報復者たちの嘲笑が店に響く。それを見てレベッカは、彼らがどの程度の、どういった存在であるかを知った。
(素人……)
「おいオヤジ、今日は何が起きたんだ? 言ってみろよ、正当防衛だよなぁ」
リーダー格のアフロ頭の男がいまだ温かい銃身の銃をくるくる回しながらカウンターでうずくまっているマスターに離しかける。
「し、知らねぇ! 俺は何も見てねぇよ!」
「そーだ、その調子だ。店を守りたいならそーするこったな!」
チンピラどものうち、大柄な男が置くにいるレベッカの方を向いて一言。
「嬢ちゃん! 何を見たんだ?! 正当防衛だろ?」
視線を落としていた緑の瞳が、男たちの方を見た。その顔は殺人を目の当たりにした恐怖にも、虚勢も見受けられない、人間をただのものとしか見ていないような目。声をかけた大男は一瞬声を失ったものの、少女の首が縦に振られたことで何とか「いい子だな!」と紡ぐ言葉を返せた。アフロは、そのやり取りを見逃していない。
※
「ったく、手間かかせやがって」
「いいじゃねえか、分数が減ったんだ」
『仕事』を終えた男たちは1人を除いて実に機嫌が良かった。手癖の悪いマルコを始末でき、仲間内の取り分が増えた、人間を殺すというのも思ったよりなんてことがない、と夜風の拭く町を歩きながら嘯いていた。いつもは胸を張って堂々としているアフロ、ジョズエは……
「おいジョズエ、何シケたツラしてんだよ」
「らしくねェな。アイツを消そうって言ったのはお前じゃねえェか」
「お前、あのガキ見て引っかからなかったか?」
『ガキ』に声をかけた大男、リカルドが頭上の月を照らしながら考え込んだ。月は何も答えない。
「ああ……馬鹿に不気味な目をしてやがったな。それに人が殺されたってのに悲鳴の一つもあげてねぇ」
「その上対応もえらく熟れていただろ?」
「……サツの関係者か?」
そうではない。しかし、恐怖に縛られているとは思えない、約束を守りそうにない女だと。自分たちの仕事はまだ終わってはいない、残してきてしまったと。そう思ってから行動に移るのに、時間はさほどかからなかった。
- Re: 【キャラ募集】Re Becca【再開】 ( No.177 )
- 日時: 2014/04/15 23:53
- 名前: しゃもじ ◆QJtCXBfUuQ (ID: izFlvzlp)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
バタンッ!
「!」
一難去ってまた一難、しかも入ってきたのは店をめちゃめちゃにしてくれた奴だ。ついさっき警官を電話で呼び、死体との同席をマスターの顔は不幸で3歳は老け込んでいたようだった。チンピラたちを見る顔も、怯えきっている、
「な、、なんだお前らっ! もう用は済んだろ?!」
マスターの抗議などどこ吹く風、ジョズエは店内を見渡す……一番の関心事の中にいる娘は、いない。そう認識すると、撃鉄を倒した拳銃をマスターの鼻先に向けた。
「ひっ!?」
「おい親父、あのガキは何処いった?!」
「し、知らねえよ! つい2分前に出ってったんだ!」
なんて馬鹿なことをしたんだ、アフロ頭の男は舌打ちをした。あの時まとめて殺せばこんな苦労などしなくてよかったのに。マスターに向けている銃の引き金に引っかかった。
「や、やめてくれっ! 俺には妻子がいるんだ、 死にたくない!」
涙を流し手を組んで助命を請うマスターを見て、一瞬殺意が削がれ緩んだ。しかし自分たちは2人の人間に殺人の瞬間を見られているのだ。消さなくては。
ガウン……!
火薬が爆ぜる破裂音が小さな店内に響いた。
※
証言者其の一を消し、バーを出た男達は標的がそう離れていないことを願いながら手分けして街中を駆け回って探すことにした。見た目から予測される年齢を考えれば免許を持っているとは考えられず、この区画にはモノレールが一本しか走っていない。ゆえにモノレールを押さえればあとは歩くか、タクシーを使うしか素早く離れる手段はない。
しかしタクシーを使うとは思えない。この街のタクシーは悪名高く、深夜に女性が乗ろうものなら暴行を加えるという事件が多発しており、トラブルに巻き込まれる可能性が非常に高いのだ。ゆえに、男達に希望はあった。
ジョズエはというとリカルドとともにモノレールの唯一の改札口に陣取り、行き交う乗客(といってもこの時間そこまで人はいないのだが)を監視し、仲間からの連絡を待っていた。打てるだけの手は打った。あとは、あの娘が網に引っ掛かるのを期待して……。
「あいつら、大丈夫か?」
「わからねえ。一応見つけたら応援が来るまで手を出すなとは言ってるがよ」
ピピピ……
「どうした?」
『いたぞ、6番地のピット通りを歩いている』
「!」
ピット通りはこの地下鉄から歩いて5分ほどの場所である。走ればすぐに応援に駆けつけられる。
『これから後を尾ける。フラーの奴にも連絡——』
ドズン!!
二人の電波越しの会話を遮る破裂音。直ぐにそれが何の音かを二人は理解した。応答を求めるまでもない、電話越しに会話していた仲間は打たれたのだ。それも突然の奇襲によって。うめき声も聞こえないことから、一撃でやられたらしい。何者かが歩き去る音が、虚しく携帯から響いている。
「……おい、あいつはどこにいたんだ?!」
「……ピット通りだ。行くぞ! フラーにも電話しろ、あいつも近くにいるはずだ!」
許さない、その怨念が二人を動かしていた。しがないチンピラだが若い頃からずっと行動を共にしてきたのだ。いかな人間といえどぽっかりと空いた穴は大きく、殺したであろうあの不気味な女の血でもって埋めようと、二人は鉄道の改札口をあとにした。
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