複雑・ファジー小説
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- 星憑のエルヒューガ
- 日時: 2018/02/21 02:56
- 名前: 夕暮れメランコリー (ID: OxIH1fPx)
星憑(ホシツキ)。
それはいわゆる「ヒーロー」のようなモノであり、この世界の子供の憧れである。
しかし誰一人としてその存在を見た人はいなく、架空の存在であると信じていた。
かくいう僕もその一人であったのだ。
————ついこの前までは。
*********************
初めまして、夕暮れメランコリーです。
こちらで小説を書くのは初めてですので、仲良くして頂けたら幸いです。圧倒的不定期更新。
感想、批評大歓迎ですが、荒しが目的の人はお帰り下さい。
参照が恐ろしいことになっていて作者はとても混乱しております、とにかく亀更新なこの作品を読んで頂きありがとうございます……
※キャラ名色々変更しました。元ネタがわかるとクスリと出来るかもしれません。
【一話:箱庭ノ中】
>>1>>2>>5>>6>>7>>8>>9>>10>>11>>12>>13>>14>>15
【二話:蠍ノ少女】
>>16>>17>>18>>19>>20>>21>>22>>23>>24>>25>>30>>31>>32
- Re: 星憑のエルヒューガ ( No.28 )
- 日時: 2015/08/23 19:33
- 名前: 雪兎 (ID: VIeeob9j)
こんばんは、初めまして!雪兎と申します。
前にコメントしている方と同じく、魅力的な題名に惹かれてきました。
元ネタは序盤でわかったのですが、その元ネタと同じくすごくきれいな世界観で、しかも設定も細かくて発想力が素晴らしい!!(上から目線でごめんなさい)
まあとにかく何が言いたいかというと、超絶面白いです(*´▽`*)
個人的には、「ヨダカ」という名前が超好みです。本当に個人的な話ですがw
なんていうか、私も複ファで小説書いているのですが、正直比べものにならないです…。
長々と失礼しました!これからも更新頑張ってください☆
- Re: 星憑のエルヒューガ ( No.29 )
- 日時: 2015/08/23 22:12
- 名前: 夕暮れメランコリー (ID: 5dLFZzqu)
雪兎様
きれいな世界観やら超絶面白いやら勿体ないお言葉ありがとうございます。滅茶苦茶嬉しいです。五体投地モノです。
ヨダカ君のお名前が気に入って頂けて作者としては感涙モノです……!!
複雑ファジーの方で小説を書かれているということなので後々訪問させて頂きたいと思います!
- Re: 星憑のエルヒューガ ( No.30 )
- 日時: 2015/08/24 14:58
- 名前: 夕暮れメランコリー (ID: 5dLFZzqu)
「何を驚く必要があるのよ、新人にはしばらく中堅がついてホシクイ討伐するってのがルールでしょ」
「いや、そうだけどさ……ホモイお前新人と一緒に討伐行くの嫌がってたじゃないか。足引っ張られるとか言って」
ホモイさんはふん、と鼻を鳴らしてシグナルさんの問いに答える。
「コイツがそうじゃない新人だと判断しただけよ」
コイツ、とは紛れもなく僕のことである。ホモイさん絶対それ過大評価です。
「えーっと、丁度良さげな討伐依頼ってあるかしら。緊急依頼が無いって事は今は雑魚掃除くらいしかないわね」
新人には丁度いいわ、と言ってホモイさんはなにやらジョウホウタンマツを弄っている。
「平原に出現した小型ホシクイ百匹討伐……うん、これなんか良さげね。万が一根をあげても百匹くらいなら楽勝だし、私」
「俺だって百匹くらい余裕だぞ余裕!」
対抗するようにシグナレスが声を上げる。が、ホモイさんは「時間制限付きだったら私の方が余裕の勝利よ」と妙に勝ち誇った笑みでシグナレスに自信満々に言い放つ。ホモイさんの武器がなんなのかは分からないが確かにシグナレスの武器は弓で、矢を射るのに多少の時間を用する為、時間制限が付くと不利になってしまう。
それを分かっているのかシグナレスはホモイさんの言葉に反論したりせずにぐぬぬ、と唸っている。
「じゃあヨダカ、討伐は明後日だから。よく休みなさい」
「頑張れよヨダカ、記録ではこれがお前の初討伐になるんだから」
「ホモイの出番が無くなるくらいまで活躍しちまえよー!」
三人は僕に手を振りつつ何処かへと去っていく。僕も最初は笑顔で手を振り返していたけど、とんでもなく重要なことに気付いて真顔になった。
「僕、何処で休めばいいの……」
なんだか凄いコンピューターのHALさんがいる部屋の前で僕は途方にくれていた。そもそもここの構造もまだよく分かっていない。後は情報端末の使い方。
ええいもうHALさんと一緒に寝てやる、いやHALさん人間じゃないから寝ないけど多分、と半ばやけくそになっていた時だった。
「あ、カシオペアだ」
エントランスで見かけた人物が僕を指差してきた。
「どーしたのこんな所で。あっまさかカシオペア座でショック受けてる?だとしたらご愁傷様だねカシオペアさん!」
例の特徴的なかぷかぷ笑いで凄く僕の心を抉るような事を言ってきた。エントランスの時は確かクラムボンとか呼ばれていたっけ。
と言うかショック受けてるって憶測立てているのに執拗にカシオペアカシオペアと連呼するのはどうかと思うぞ……?
「いや、そうじゃなくて……半分はそうかもしれないけど……休む場所何処かなって」
クラムボンはきょとんとした顔になって「シグナルとかシグナレスに自分の部屋案内されなかったの?」と聞いてきた。
「……いや全く」
僕がそう答えるとクラムボンはまたもやかぷかぷ笑い出した。
「新人の星座確認してホモイと喧嘩してそのあと新人のカシオペアは放置ときた!いやぁこれは傑作!これで暫くはシグナレスを弄って遊べる!一ヶ月くらい!シグナルはつまんないからいーや」
ひとしきり笑った後、クラムボンは「じゃ行くよ」と言って何処かへ行こうとした。
「ど、何処に!?」
「いや話の流れから分かるでしょ。カシオペアの部屋だよ」
瞬間、僕は妙な感動を覚えた。このクラムボンという少年は口こそ悪いが根はそんなに悪くないのだと。勝手に歩き出すクラムボンだが、歩幅がそんなに大きくない(少年だから仕方ない)のですぐに追いついた。
「うーん、このままカシオペアを放置するって手もあるしそれはそれで面白そうだけどそれじゃシグナレスと一緒だし。遊んだ時にそこ指摘されたらつまんないし。それにここで恩を売っておけば何か貰えるかもしれないし。……あっカシオペア、僕は梨が好きだからね!」
根はそんなに悪くないはずだ、多分。
- Re: 星憑のエルヒューガ ( No.31 )
- 日時: 2017/01/19 22:16
- 名前: 夕暮れメランコリー (ID: mQVa63/B)
「あそこが食堂でー、なんか居心地いいからってご飯の時間じゃなくても皆たむろしてたりするよ!あ、あそこは図書室。大事な文献とかいっぱいあるけどだいたい皆HALに頼りきりだからなぁ。あとはねぇ」
クラムボンに先導されて僕は施設内を歩いていた。おかしい、確か僕は「自分の部屋に案内してほしい」と言っただけで施設内の案内に関しては全く頼んでいなかった筈だけれど。
「ねーねー、カシオペアってば。ちゃんと話聞いてる?」
「う、うん。聞いてるよ?」
ほんとかなぁ、と疑わしげな瞳を僕に向けるクラムボン。実のところ半分上の空だった、とは口が裂けても言えない。少なくとも本人には。
……だって、箱庭には無かったものがたくさん溢れているから。色んなものに気をとられて話を右から左に聞き流してしまっていても仕方が無いじゃないか。
「まあいいや!話聞いてなかったならなかったでカシオペアにいっぱい、いーっぱい梨奢らせるもんね!」
かぷかぷかぷ。
クラムボンは例の、妙に耳に残るかぷかぷ笑いを僕に向けた。
「つっかれたぁ……」
あの後、クラムボンはきちんと僕を居住スペースに、いつの間にやら用意されていた部屋に送り届けてくれた。疑問に思ったもののHALさんには既に僕の情報が登録されていたし、本部では新人が来ると噂になっていたのなら用意されていてもおかしくはないのかも。
身体に感じなかった疲れが今になってどっ、と溢れてきた。正確な時刻はいまいち分からないけれど、多分深夜。
ホシクイが現れて、近所のヤツが死んで、星憑になって、今ここにいる。
かなり内容の濃い一日だ。この日の事は何があっても忘れない、と言うか忘れられない。忘れろと言う方が正直無理だ。
「うわすごい、ベッドふっかふか……すごい高そうな布団……」
真っ白はシーツに真っ白な布団。マットレスは押すと程よい弾力で跳ね返してくる。こんな見るからに高級そうなベッドで寝た経験とかないぞ、僕。天蓋付きとかではないけれど。
何故か僕はその日、もう戻ることのないであろう箱庭の、自分用だった固いベッドを思い出しながら深い深い眠りについた。
夢は見なかった。
- Re: 星憑のエルヒューガ ( No.32 )
- 日時: 2018/02/21 02:55
- 名前: 夕暮れメランコリー (ID: OxIH1fPx)
「おっきろーヨダカ!もう昼だぞ、ひーるー!!」
「わああっ!?」
突然耳元で大声なんか出されたら、ぐっすり寝ていようがそりゃあ誰だって飛び起きるだろう。僕も例外ではなく、なんとも情けない声を出してベッドから落ちた。
「おはよう、いやそれともこんにちはの方がいいのか?兄ちゃんなら分かるかもだけど肝心の兄ちゃんは昼飯用の弁当持ってどっか行っちゃったし。まあいいや」
「……そんなに僕寝てたの、シグナレス」
僕を叩き起こした張本人は「そりゃもうぐっすり」と部屋にある時計を指さした。十一時四十五分。立派な寝坊だった。思わずうわあ、と声が出た。箱庭にいた時ですらこんな遅い時間に起床したことなどない。まあ昨日は肉体的にも精神的にも疲労間違いなしの一日だったから仕方ないと自分に言い聞かせる。
……地味にショック。
「とりあえず着替えて食堂来いよ。昼飯食おうぜ昼飯!」
言いたいことは全て言い終わったのか、シグナレスはさっさと僕の部屋を飛び出して食堂の方向へと走り去ってしまった。
一応昨日クラムボンから教わったし、食堂の位置は分かるけれど。ここに来てからまだ一日も経っていないような新人に対してちょっと薄情というか、思いやりが足りないのではないか?彼に対して言いたいことは積もっていくが、ここでぐちぐち言っていても始まらないしそもそもお腹が空いた。着替えて食堂に行くことが最優先だ。
「来たばっかりで施設について全く分からなかったのに自分の部屋に案内すらしてくれなかったことに一言ないんですか」
「それは本当ゴメン」
とりあえず食堂で注文したシチューを咀嚼しながら、一番の不満点を彼にぶつける。シグナレスも後々気付いて申し訳なく思っていたらしい。誠心誠意謝ってくれたのは十分に伝わったので今回のところは許した。お昼だったとはいえ僕を起こしに来てくれたのはシグナレスだし。ところで食堂のメニューにあった「サンマテーショク」ってなんだろう。
「でもさ、結果的にヨダカはあの部屋にいたわけだろ?誰かに案内されたとか?」
「うん。クラムボンに」
クラムボン、の名前を出した瞬間シグナレスの表情が曇った。ホモイさんの名前を出した時には嫌悪感を全面に押し出すのに対し、こちらは恐怖を全面に押し出している。
「よりにもよってクラムボンかよ……これをネタに一ヶ月はいじられる……」
頭を抱えるシグナレス。なんと声をかけていいかわからず、「ご愁傷様……」と言ってみたものの逆効果だったようで、うめき声をあげながら机に突っ伏してしまった。しばらくそっとしておいた方がいいかもしれない。
机に突っ伏すシグナレスを横目に、シチューと一緒についてきたやたらふわふわなロールパンを食べていると頭に衝撃。なんだろうと思って振り返るとジョバンニが包みを持って立っていた。たぶん、包みの中身はパンかサンドイッチ。弁当用にそれらを販売している売店が食堂内には存在していることを昨日クラムボンから聞いていたから、そうだろうとアタリをつけただけだけれど。
「なになに、昼食べてんの?」
「うん。一緒に食べる?」
折角だし人は多い方がいいだろうと提案するも首を横に振られてしまった。彼曰く、「銀河鉄道の運行ダイヤを乱すわけにはいかない」らしい。
「でもその、あれって勝手に動くんでしょ?だったら君がいなくっても平気じゃないかなって思ったんだけど」
そうやって昨日の疑問を言えば、ジョバンニは面食らった顔でしばらく僕を見たあと「そういうわけにはいかない」と真面目な顔で言った。
「万が一があったらいけないし、あそこが俺にとっての居場所なんだ。多分まだ、あそこ以外に俺の居場所は存在しない」
彼の特徴であるマシンガントークはナリを潜めていた。それだけでなく、雰囲気もどことなく以前会った彼とは違う。なんと言えばいいのか、今の彼は落ち着いていた。言動も、なにもかも。
「あ、えっと。引き止めちゃったね、時間大丈夫?」
「え?あっヤベ!また今度!」
ジョバンニは混み始めた食堂を、うまいこと人とぶつからないように避けつつ走り去っていった。
「あんまり、アイツのこと深追いしない方がいいかも」
そこそこ復活してきたようで、シグナレスは机から顔を上げて僕の方を向いた。
「適度な距離ってあるじゃん?アイツの場合は乗客と車掌。間違っても友達になろう、なんて思ったらいけない。みんなアイツに対してそうやって接してきたし、アイツも友達を作ろうとか思っちゃいない」
僕はその言葉に「はい」とも「いいえ」とも言えなかった。