複雑・ファジー小説

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脇役謳歌〜できそこないヒーロー【一話完結】
日時: 2014/04/02 03:14
名前: uda (ID: T3U4YQT3)

 はじめまして、初投稿ということで右も左もわからないまま現状です。
 一応長編を書いていきたいのですが。このような投降でよかったのかと不安です。
 完結はさせるつもりですのでよろしくお願いします。




(はじめに)

・脇役が主役なれないのかという矛盾な事を考えて、気が付けば執筆していました。てにおはや誤字脱字などが酷いですが完結し次第修正を加えさせてもらいます。

・登場人物ですが主人公は結構中二病全開の痛い子ですが、隠された特別な力はありません。ましてやハーレムになることもありません。
 脇役みたいなヤツなので仕方がないと暖かい目で見てください。

 
・タイトルはご覧の通りですが各章のサブタイトルも今書いている話が終りましたのでそのシーンが修正され次第、書かせて頂きます。


 
<一言メモ>

 前タイトルはできそこないヒーロー(仮題)ですが、一応完結した為、脇役謳歌(できそこないヒーロー)にしています。ご迷惑かけるかもしれませんがよろしくお願いします。

 只今、添削や誤字脱字を修正中です。何かありましたら,よろしければコメント等、ご指導してもらえるとたすかります。


オープニング >>001

・騎士とメイドの物語。
1 告白か果たし状か? >>002-003
2 泉の前で >>004-007
3 騎士は正々堂々と決闘をする >>008-010 >>011-012
4 これが憧れの同棲生活 >>013-016
4.5 喫茶店で打ち合わせ >>017
5 鍋最高 >>018-020 >>022-024
6 魔女の踊り場 >>025-028
6.5 レギオン >>029-030
7 どうすっかなぁ >>031-34 >>037
8 無駄な抵抗 >>038-040
9 脇役の後悔 >>041-045
10 そして彼は舞い降りる >>046-049
11 覚醒できたらいいよね >>050-056
12 ヒーローは登場する >>057-058
エピローグ >>059>>061>>062>>063>>064




Re: 脇役謳歌〜できそこないヒーロー ( No.50 )
日時: 2014/05/22 10:59
名前: uda (ID: T3U4YQT3)

*騎士とメイドの物語 011*


 熱を帯びた痛みがじわりと腹部を覆い尽くす。
 まるで切れかけの電球のように意識と視界が途切れ途切れになる六原に突如現れ槍を突き刺した男性は笑みを浮かべていた。きっと、仕留められて事に対して達成感による喜びだろうという考えが思い浮かんだ。
 改めて自分が刺されたのだと認識した。
——いきなり、刺すのは反則だろうが!?
 沸々と熱い何かが込み上げ来る。
ギリッギリッと口の中から音がする。
——イテェだろうがぁ。
 怒りが込み上げ歯を食いしばり、六原はこぶしを強く握った。
 そして、右腕が静電気のようにバチリと光る。
——準備ができた、ようですねぇ。
 口の中を血の味が多い尽くし、気持ち悪さを感じながら六原は口を開いた。
「・・・『札』発動。」
 あらかじめ、発動となるキーワードを唱える。
 ぼぅ、と六原の言葉に札が反応し、ぼんやりと紫色の光が札に灯り始め右腕を覆う。陽炎のような光に一瞬目を奪われる目の前の男。
「お前なぁ」
 その完全に油断している相手に六原は右拳を握り、吼えた。
「イテェじゃねぇか!!?」
 不意を突いた拳は男の顔面にめり込み、男は吹き飛ばされ、遠くの木にぶつかる。確認はしていないが気を失っているだろう。
——しかし、右手がイテェ。人を殴るってマジで辛い。
 予想以上に力を込めて人をためか右腕は赤くはれ上がっていた。右腕の状態を見ていると、気が遠くなる感覚に襲われ、膝をつく。未だ槍が突き刺さっている腹部の一層痛みがひどくなってくるのを感じ、体がびくりと痙攣した。
 朦朧とする頭、いつしか全身から汗が噴出す中で、
(失礼ですが、主の生命の危機を感じ勝手に『身体強化』しましたがよろしかったでしょうか。)
 突然、頭の中に声がした。聞いたことの無い声であったが、六原にはそれが誰なのか見当は付いている。
——うん、もしかしてウロさんですかね。
 姉に渡されたメモ用紙の内容を思い出す。「首輪が正常に稼動した際には首輪の妖精、ウロちゃんっていうダンディズム溢れる声がヤバイ薬やっているヤツみたいに脳内に直接語りかけてくるからねー」
 姉の言う通り30代半ばの深みのある低い声が返答する。
(ええ、自己紹介が遅れました。私の名前はウロボロスという者です。ウロちゃんと気軽に呼んでください。)
——うぃー、よろしく。ウロちゃん。
(それで、どいつをぶちのめしますか。全員?)
——わー、ウロちゃん。凄いバイオレンスですねぇ。
 メモ用紙の内容を思い出しながら六原は首輪に指示を出した。
——まぁ、とりあえず、オレも腹から血を流して結構ヤバイ状態だからさぁ。『オート』でお願いしますわぁ。
 首輪は穏やかに答える。
(分かりました。では、体お借りしますね。)
 首輪が言い終わると同時にゆっくりと体から力が抜ける。寝起きのだるさのような、思うように体が動かなくなる。
自分の体が自分の意志とは反するそんな感覚が六原の全身に浸透していった。
「うぉ、すげぇ、何だこれ」
 どうやら、口だけは動くようであった。
自分自身の体が結う事を聞かない中で、ゆっくりと、だが、体はしっかりと立ちあがる。そして、刺さった槍を両手で持つと引き抜き始めた。
「ちょ、え、待って…」
 説明通り、体の自由を奪われ、恐らく首輪の操作により六原の体がひとりでに動かされ始めたのだ。
「いや、いやいや、痛いから。痛いから」
——いてぇ!!いてぇっすよ。ウロさんもっと優しく。
 しかし、神経は通っているので今まで感じたことの無い傷みが襲う。
(男でしょう、少しぐらい根性を見せてください。)
——いきなり、根性論ですか!凄い、不安になってきたんですけど!って、駄目。それ以上体が壊れちゃう!?
(大丈夫です。いざとなれば首輪からチョット後遺症が残る麻酔薬をぶち込みますから安心してください。)
「いやぁ、お薬はらめ!!」
 叫び、制止しようとしたが、体は意に反し槍をゆっくりと引き抜く。
「ちょ、オ、モ、くぐ、が、ぐぁぁぁああ。」
 絶叫が森の中に響き渡る。
 もしかしてこの首輪、実は呪われている武器なのじゃないのかという不安と激痛で目の前の意識を暗転と覚醒を繰り返させる。口から血でないものを吐き出したのかもしれない、と思った中でもう少しで引き抜かれる槍を体は一気に引き抜き始めた。
 一瞬だったのか、それとも時間がかかったのか分からない感覚があやふやの中で、六原に刺さった氷の槍は引き抜かれた。
「ぜぇ、ぜぇ、ぬ、けら、のか……」
 貫いたのが氷であった為傷口が凍っていたのか、血は思ったより吹き出なかった。
「ハァハァー、あん?」
 いつしか荒い息遣いなっており、口元からだらりと涎を垂らしながらチラリと前方を見ると、目の前の一人芝居のような六原の奇怪な行動に月島だけうつむき表情が分からないが、他の皆は唖然としていた。
——うん、ドン引きですね。
 周囲の感想を一言で終える。その場で少し休みたい体は勝手に動き、陸上競技でよく見られるクラウチングスタートのような体制になる。
(先に言っておきますが。これから一週間ぐらい療養生活になりますので覚悟してください。)
——オーケー、分かった。
(おや。潔いですね。)
——その代わり、スタイリッシュに格好良く、やっちゃってください。
(ふふ、出来るだけ努力しましょう。)
 足に力が入るのが分かる。
(では行きますよ。)
——オーケイ。よーい、どーん。
 掛け声と共に体が勝手に動き、地面を力強く踏み込み、六原は全力で駆け出した。

Re: 脇役謳歌〜できそこないヒーロー ( No.51 )
日時: 2014/05/22 20:02
名前: uda (ID: T3U4YQT3)

 身体強化によって走り出した六原は、今まで味わったことの無い風を切る感覚を味わった。
「皆さん。迎撃してください!!」
 六原が駆け出す瞬間に我に返った針沼の鋭い声が響き渡る。彼の一喝で周囲の者達は一斉に魔法陣を展開していく。
「大丈夫です。落ち着いて行動してください」
 少し前の戦いぶりを回想する限り、六原が彼らにたどり着くまでに充分距離があり、皆の魔法が発動できる距離であった。
「社長、まずいです」
「速いぞ!」
 だが、彼らの想像の異常の動きで、走るというより這うようにレギオンのいるところまで六原は迫る。
(通常貴方の走るスピードの二倍で行っていますよ)
——うぉぉ、すごいっすね。・・・・・・今度は足も痛いですけどね。
(それは歯を食いしばって我慢して下さい。)
——・・・・・・うぃ。つーか、前のやつら攻撃しそうなんで何とかお願いしますね。
 前方にいるレギオンの人々は杖を構えていた。
 その内の一人が魔法陣を描き切る。杖の先端が光り、バレーボールの様な形の光弾が放たれた。距離はまだ少しあった。横に飛んで避けようかと思ったが、体の自由は利いていないのでどうしようもない。
 迫る光に悲鳴でも上げるかと考える六原に安心させるように首輪は語りかける。
(あんなシャボン玉すぐに破裂できますから、大丈夫ですよ。)
 右腕が伸び、手刀のように構えると光弾に向かって打ち払うように薙いだ。
——ワォ。大丈夫なんですか。
(大丈夫、大丈夫。)
 軽口を叩く首輪の声が反響する中、右腕は巻かれた札から紫色の光が強く灯る。
 光弾に触れ反動による激痛を覚悟していたが、拍子抜けするほど衝撃はない。まるでクッションでも当たったような柔らかい感触がすると同時に、目の前の光りは六原の手刀により真っ二つに引き裂かれた。
形が崩れた光の弾は今まで目の前に無かったように消え失せる。
 何事もなかったように駆ける。スピードは落としていない。
 六原の体はまず一番近くにいる二人組に向かう。光弾が掻き消えた事に驚く表情をしている二人の男性の内一人に狙いを定めた。
 相手の表情を六原は見るにどうやら、この訳のわからない目の前の状況が理解できていないらしい。
——わりぃ、オレもこの原理良く分かないんですよねぇ。
 いきなり目の前で見たこともない力や現象が起きれば、そりゃあ驚くだろうなと少し手加減したい気持ちもあったが体は勝手に動いているのでそれも叶わない。結果、全力で目の前にいる男性の腹部に拳を叩き込んだ。
 まるでイノシシのように突撃し放った拳は見事に命中し、耳元で蛙のような鳴き声が聞こえ、叩き込まれた相手はくるくると回転しながら宙を飛び湖の中に落ちていった。
——殺してないっすよね。
(大丈夫です。しばらく動けないだけです。さて、お次は……)
 殴った腕の痛みに耐えながらの質問に穏やかに首輪は返しながら、次の目標を探す。
「——ッ、この!!」
 短い舌打ち。近くにいる二人組みの片方が舌打ちをしながら後ろに飛び、杖を地面に突き刺した。
 突き刺された地面が光る。魔法陣に反応し、巨大な剣山のように無数の岩石が地面を突き破り現れ、六原に真下から襲い掛かる。
 当たれば串刺しになるが、六原の体はもう一度右腕を振りかぶり足元に振り落とし、岩石の針を打ち壊す。
——うぉ、すげぇ。すげぇ、痛い!?
「畜生、コレも効かないのかよ!?」
 彼らの武器をものともしない、あまりにも理不尽な力に大声を上げる相手に無常にも六原の拳は岩石の先端を全て薙ぎ払った。
 そして、六原は砕いた岩を足場にかけ、飛び上がる。その跳躍によって一気に距離を詰め、彼の頭上を越えるような位置まで来たところで片足を上に振りあげ、先程の岩石の魔法を放った術者に踵落としを浴びせ、昏倒させる。
(時に、六原さんは暑いのは苦手ですか。)
——まぁ、猫舌だから、あまり得意じゃないな。
(いえいえ、そういう意味ではないんですよ。)
 首輪の話を聞きながら着地と同時に、上半身は前に倒れる。
直後に首筋を熱風が掠めた。
「あっつ」
 思わず声が出てしまった身に覚えのあるその感覚は、火球の狙撃であった。燃え上がることなく紅い弾となって通り過ぎた火球は茂みに落ちると、衝撃と共に爆発し、茂みを燃やすことなく、小さなクレータの後を残し消え失せる。
——嗚呼、言いたいことは分かったわ。
(まだ来ますよ。)
——マジですか!?まぁ、できるだけ、無茶をしない方向でお願いします。
 針沼のいる方向を見ると同時に拳が動く。視界に入ることなく紫色に光る札を巻いた右腕で火球を打ち払った。
 だが紅い球は一つではない。複数の火球が様々な方向から迫る。
 それはいつの間にか六原を囲むように移動したレギオンたち全員による全方位からの射撃であった。
 針沼と月島の方向にはこちらに来させないようにする為であろう、その場所だけ針沼と共に二人が残り、三人で月島を守るように囲んでいた。
——アレでは下手に近づけないねぇ。
(一旦下がります。それから一人ずつ倒します。)
 そして、視界が揺らぎ、大きく後ろに飛び跳ねる。獣のような飛び上がり、迫りくる火球をほぼ避け、まるで六原の体に誘導されるように襲いかかる残りの火球は拳で叩く。そのまま真後ろにいたレギオンの一人に拳を叩き込み、気を失わせた。
「怯むな。手数で翻弄してください」
 しかし一人倒した所で敵も怯まず射撃は鳴り止まない。針沼たちは再び距離を取り六原に攻撃を開始する。
——凄い統率が取れているな。
 さすがレギオンと名乗る事はあるなと舌打ちしながら、六原は紅い球を避け、一人、また一人、と倒していく。
 飛び上がり、駆け、殴り、蹴り、弾き、迫り一人ずつ確実に潰していく。
 だが、一人を倒すまで時間がかかってしまっていた。そして、時間がかかると共に、六原の腹からは血が零れ落ちていく。先ほどの腹部の刺し傷が開いたのだろう。それだけではなく全力以上を出す両足は鈍い痛みを増していき、意識と、体力を蝕んでいた。
「ぜぇ……畜生、まだ……かよ」
 息が荒くなり、肩を上下に動かしながらいつしか荒い息をしている事に気がついた。口からはいつの間にか出てきたのか、べったりとした血が唇の端から一筋零れ落ちていた。
——後、何人っすかね。
 体が寒く、時折意識が飛びそうになりながら、六原は体を動かす首輪に問い掛ける。
(これで、後四人です。そろそろやりましょうか。)
 飛び上がり、襲い掛かる紅い球を避け、落ちる勢いと共に拳を振り下ろし、敵をまた一人倒す。
 後、四人。
 不意に視界がガクンと下がる。体に限界が来たのか、足が震えて立っていられない。片膝を着き、六原の体は動きを止める。
——じゃあ、お願いしますよ。
(分かりました。)
 承諾した首輪がホタルのように薄い光を放ち始めた。

「なるほど、そういう力ですか」

 声が響く。荒い息を整えながらゆっくりと振り向く。
 そこには先ほどから攻撃せずに黙ってただ杖を地面に叩いていた針沼が見下すような視線で立っていた。
「なるほど、なるほど。魔力吸収とスタン系の効果を持つ魔法の札と、身体能力の強化に使える首輪ですか」
(何をいっているのですか。あのメガネは?)
「ははは、大体合っているね」
 人によっては何を言っているかよく分からない説明であったが、ほぼその通りの効果であった為、血を失った青い顔で笑みを浮かべ答える。

Re: 脇役謳歌〜できそこないヒーロー ( No.52 )
日時: 2014/05/22 20:15
名前: uda (ID: T3U4YQT3)

「分かった所で後四人しかいないよ」
「いえいえ、この魔法で終わりですよ」
 杖を構える針沼に六原は前方に集中した。
「六原さん!?後ろ!」
「え!?、うぉッ——」
 突然、叫び声をあげる月島。その声よりも速く、体が勝手に反応し、振り返ると同時に右拳を叩き込む。
 予想したのは魔法を打ち払う感触か、敵を殴り飛ばす感触であったが、真っ先に拳から感じるものは粘着質のある、粘土のような感触。
 振り返り確認すると目の前には灰色の大木のような剣が目の前で止まっていた。
——土の大剣?いや、粘土か?
 止まっているというよりも拳が丸太のような剣にガムの様な粘着質の泥に埋もれ、引き抜くことも出来ないでいた。
 灰色の剣を持つローブのフードがふわりと揺れ、隠れていた女性の顔が見えた。その表情は硬く、仮面を被っているように感じさせ六原は驚きの声を上げた。
 だが、驚いた所で体は動く。六原の意志とは関係なく能面の様な顔に向かって、左拳が放たれた。握り込められた腕は女性の顎を捉え女性は空中を舞う。
(後、三人ですね。)
——とりあえず、女性にはなるべく優しくできないですかね。
(敵は敵です。)
——意外と紳士的だと思ったけど、やっぱり、ウロさんはバイオレンスですなぁ。
(それより、マズイですね。)
——嗚呼・・・・・・ですよねぇ。
 正直六原の現状としては普通なら先ほど目の前で女性の顔を殴った瞬間を見たことや、それによる罪悪感など気にしていられない。現在の自分の現状を考えるだけで頭の中が混乱しそうになる。
 ぽたりぽたりと血が地面へと落ちていく。
 腹には穴が開き、足は震え上がりもう立つこともままならない。
 既に痛みは麻痺し、体の感覚が奪われているから気が付かなかったが、六原の体は過度の動きと出血により限界を迎えていた。
「アレだけの人並みはずれた動きをしていたんです。もう、限界でしょう。」
「こ・・・の・・・」
 針沼も声を無視し、六原の体は震えながらも、右手を覆う土の大剣を引き剥がそうとする。
 だが、六原の右腕を包む大剣は形を変え、地面に杭のように深々と刺さり、六原を動けなくする。
 必死に引き剥がそうとする六原を見ながら、針沼は語りかける。
「さて、どうやらまだ諦めるつもりは無いようですね」
「ゼェ、ゼェ・・・・当たり前、だろ」
「仕方ありません」
 静かに、針沼は呟くと地面を叩いていた杖を地面に深々と突き刺した。
 同時に約4メートルほど大きさの巨大な黒い魔法陣が現れる。円型の魔法陣はゆっくりと針沼を中心に回転する。
 針沼は杖を引き抜くと先端を針沼に向けた。
 同時に陣は杖に操られるように浮かび上がると、杖の先端が中心になるように動き、六原と針沼の間に壁になるように巨大な魔法陣は空中で静止した。
——嗚呼、何か良く分からんが、ともかく凄い魔法が飛んでくることかは分かったわ。コレはマズイ。
「降参しますか」
——降参したい!!けどなぁ。
 チラリと無言でこちらを見つめる月島の顔が魔法陣から透けて見える。
「しない!!」
「・・・それは残念ですね」
 魔法陣は光を増し、黒い靄のようなものが魔法陣を取り囲む。
——何とかなりませんかね。
(・・・・・・)
 そして、首輪が答えるよりも早く。
「食い殺しなさい。」
 針沼の魔法陣は発動した。先ほどの戦闘が始まった時より魔力を込めていた魔法陣は巨大な力となり、六原に襲い掛かる。
 魔法陣から現れたのは黒い塊、魔法陣から巨大な鞭のように伸びる塊は一瞬で先端に角の生えた蜥蜴のような顔を形作る。それこそは伝説上の怪物、龍。
 黒龍のアギトが開く。口内からは美しく輝く白い牙がズラリと並び、今まさに六原を喰らおうと襲いかかった。
「ちょ、おま!?怖いって、死ぬって・・・」
 軽くパニックになりながらも体は自由に動かない六原は・・・
 どうすることも出来ず。
 迫る黒龍に噛みつかれ。
 そのまま押し倒され。
「あ、あああああああああああああああああ」
 血を噴出し、肉と骨の折れる音を周囲に響かせながら、断末魔を響かせた。
 

「嗚呼……」
 少女は感情を出すのは好きではなかった。
 だが、喰い殺される、血だらけの少年に声を出さずにはいられなかった。
——私のせいだね。私が、キミに頼んだから。
 叫いつの間にか体から力が抜け、膝から倒れる。
「・・・ごめんね」
——やはり私は救われないほうがいいんだ。
 少女は呟く。改めて自分に言い聞かせる為に、
「私はやはり救われたら駄目だった」
 軽薄な笑い声が月島の耳に響く。
 笑われて当然だろうと少女は思う。少女の救って欲しかったと思う行動は滑稽であったから。
「何・・・?どういう事だ」
 近くにいた針沼が驚きの声を上げた。そのセリフに不意に疑問が浮かび上がる。
——誰が笑っている。
 月島はようやく、顔を上げた。そして、目の前で光景に理解できなかった。
 針沼の魔法陣から現れた黒い竜。上級魔法と呼ばれる発動まで時間がかかるが、威力のほかの魔法と比べ物にならない高威力の魔法。
 
 その強大な力は目の前で二つに引き裂かれていた。
 
 断末魔も無く竜は黒い霧となる。その黒い靄の中で紅い服を着た少年が陽炎のようにぼんやりと立っていた。
 腕を覆っていた粘土の大剣をはがし投げ捨てる。服は焦げ、引き裂かれ、自身の血を浴びボロボロとなっているのだが、少年は面白くてたまらないように無邪気な笑い声を上げていた。
「心配すんな、絶対救ってやるからぁ」
 言葉に重みもなくヘラヘラ笑う。
 襲いかかってきた黒い靄は立ち消え、六原は歩き出す。その足取りはしっかりとしており、以前のような疲労感はどこにも感じられない。
「何故」
 目の前の不思議な出来事に針沼は声を震わせていた。
「何故立っていられるのですか?」
 その質問に六原は鼻で笑うとゆっくりと笑みを浮かべた。
「しらねぇのか、ヒーローってのはピンチのときに覚醒するんだぜ」

Re: 脇役謳歌〜できそこないヒーロー ( No.53 )
日時: 2014/05/22 20:23
名前: uda (ID: T3U4YQT3)

地面は幾つかえぐられ、木々は倒れ、半壊した泉の周辺。
 その岸辺で針沼は肩を震わせながら混乱していた。
 渾身の一撃は確かに当たったはずであった。呪いも付加していた攻撃を受けたのに何故彼はそのまま何事も無かったように笑みを浮かべ歩いているのか。
——化け物。
 背筋が寒くなる。先ほどまで只の一般人だと思っていた少年が今では彼が人ではないと言われても信じてしまいそうであった。
 そして、どうすればいいと考える時間はもう無かった。呆然としている内に仲間がまた一人倒される。
 残り二人。
 いつの間にか残りの仲間が一人となっていた。
 一撃。皆が一撃で倒される。これもよく考えればおかしな話である。これでもレギオン内では戦闘実力者が多い部隊である。それなりの格闘術を取得しているのにもかかわらず、誰もが防ぐことも反撃もできずに一方的に倒されていく。
「社長。援軍は?」
「まだ、到着出来ない、筈です」
 転移用の魔法陣は発動されないように結界を森の外から張っている事が裏目にでてしまっていた。
「……援護お願いします」
 傍にいた唯一立っていた会社時では秘書であった女性は杖の先端を両足の踵を叩く。踵に緑色の魔法陣が宿る。秘書と呼ばれていた仲間は杖に炎の刃を形成すると六原に向かい突撃した。
「おい!?」
 制止しようとしたが彼女の踵に描かれた魔法陣である風の魔法陣「飛翔」、速度を上げる彼女の動きを止める事はできず、彼女は杖を横なぎに払うように構え走り出した。
「——ッ!!仕方ないですね」
 短く舌打ちをした月島は紫の宝石の付いた杖を空に向かい振るう。
 ゆっくりと歩く六原の紫の足元に先ほどの戦闘の間に描いておいた魔法陣が表れた。魔法陣は雷を形成すると六原の足元から放つ。響き渡る雷の空気を弾く音と彼の小さな悲鳴の後、六原は膝から崩れ落ちる。
「——今です」
 生まれた隙を見逃さず。膝をついた六原の首筋に狙いを済ませ秘書は杖の先から現れた炎の刃を振るった。

 次の瞬間には六原の首が飛ぶ筈であった。
 じゅうっと滑った音が聞こえた。
振るわれた刃は膝をついた彼の手に握られていた。
 
 札で巻かれた右腕ではなく左腕で握った炎の刃。肉の焦げる音と粘つくような臭いが周囲に発する。
「ぐ、あああぁ」
 苦痛に顔が歪む表情をしながら六原は秘書を睨みつけると右腕で彼女の頭部を掴みあげる。
「やめろ!」
 針沼の制止の声も届かず、札に包まれた右腕が一瞬だけ光った。
「社長。申し訳、あり、ません。」
 小さな呟きの後、光り終わると同時にゆっくりと秘書の力は抜け落ちその場に倒れた。
 これで針沼の部下達は皆やられてしまった。
「後、一人」
 炎と雷の攻撃により熱を帯び、夜の肌寒さによって全身から湯気のようなものを吹き上げながら六原は立ち上がり、唯一残った針沼に無言で向かい歩いていく。
 針沼は杖を構えたが傍に倒れた秘書も巻き込んでしまうため攻撃することが出来ない。
 そして背には湖があり、下がることも転移魔法をする時間も針沼には残されていなかった。
——畜生。
「あ。ああああああ!!」
 すぐそこまで来ている六原に針沼は残りの魔力を全て叩き込み、魔法陣を描き正面から雷撃を放つ。
——どうして倒れない。
「無駄っすよ〜」
 六原は雷に右拳を放つ。そして、雷は右拳にかき消される。何事もなかったかのように再び六原は歩き出す。
「・・・よう」
 そして、針沼の目の前に六原は来ると立ち止まった。
「化け物が・・・」
「いや、これでも普通の人間ですよ」
 語りながら六原は針沼の左手で胸倉を掴み上げる。
「ぐぅ」
 苦しみの声を上げる針沼に六原は言い聞かせた。
「正直、お前らレギオンやそちらの国のことを解決する力なんて今はないから、それまで勝手にしていろよ。だけど、お前らこんな一般人に負けるんだ。もう、姫のことは諦めろ。」
 針沼は六原を見る。
——そういうことでしたか。
 間近に近づいたことでようやく六原の力のカラクリが想像できた。
 しかし、気付いたところで今の自分には何も出来ないことも分かった。
——この私が、落ちるわけには・・・やはり、あの時、いや、話が違った。
 混乱する頭の中で針沼は今更ながら自身の選択の後悔をした。
「理不尽すぎる力ですまん。お詫びといっては何だけどッ!!」
 とっさに迫る拳の前に魔法陣を形成する。
 だが、拳は現れた魔法陣を砕き、勢いも落とさずに針沼の腹部に拳を叩き込みながら六原は言う。
「まぁ、何かあったら相談に乗ってやるよ。」
 そして拳は振りぬかれ、杖が砕かれる音を耳にしながら針沼の体は林の中に吹き飛ばされた。

Re: 脇役謳歌〜できそこないヒーロー ( No.54 )
日時: 2014/05/25 04:50
名前: uda (ID: .Gl5yjBY)

——ウロさん。「解除」お願いします。
(分かりました。「オート」終了します。)
「お、おわった〜。」
 針沼を殴り飛ばし終えると、六原は大きく息を吐きつつ、その場に腰を下ろした。体に残る痛みは急速に冷え、跡形も無くなくなる。
——いやぁ、あまりの痛みに何かに目覚めそうになりましたね。
(ふふ、そういう素質あるかもしれませんよ。)
——いや、ないから。多分。つーか、どMのヒーローなんて嫌だろ。
 自分の性癖について考えていると後ろで足音が聞こえた。
 振り向り、立ちあがる。六原の目の前に月島が立っていた。
「・・・よっす」
「・・・・・・」
——まぁ、ここで愛の告白なんてされたら嬉しいところなんですけどねぇ。
(妄想もほどほどにした方がよろしいですよ。)
——気をつけます。
(では、二人の間を邪魔する気はありませんのでそろそろ完全に「解除」しますね。)
——・・・・・・いや、ソレはちょっと待っていてもらえないかなぁ。
 何故です。と語りかける首輪に六原は理由を話す。
(・・・・・・分かりました。しかし、このままにしておくのも体に負担をかけますのですセ—フモードに以降。しばらくはすぐ起動できるようにしておきます。)
——サンキュー。
 右腕の紫の薄い光りが消え、首輪も力を失ったように肌から少し剥がれる。
「六原さん」
 無表情のままであったが月島はゆっくりと六原に語りだす。
 そして、この後に月島が何を言うのかは六原には分かっていた。認めたくないが理由は分かっている。ココに来るまでに箒の後ろに乗せた姉との会話によって判明したものであったが、六原も姉の語った考えに思うところもあり納得していた。
「私は・・・」
 言葉に詰まる月島。言いたい事は知っている。だから、代わりに六原が彼女の本心を聞くために背中を押すことにした。
「なぁ・・・、これで救われたかい?」
 僅かに、ほんの僅かに驚いた月島はすぐに表情を固め、

 そして、黙って首を横に振った。

 別段、六原はショックを受けなかった。
——嗚呼、やっぱりか。
 予想出来ていた事であったからだ。
「ここまで無理をさせて、ごめんなさい。けど、やっぱり私は救われちゃいけないんだよ」
「つまり」
「私は異世界に戻り、反乱しようと思う」
——嗚呼、予想通り過ぎるじゃないか。
 月島という子はおそらく最初から死ぬつもりだ。ここに行く前にそう言った姉のセリフを思い出した。
——そもそも、オレなんかに頼ってきた時点でおかしいんだよ。
 普通なら、こんな頼りになるか分からない普通の男より、レギオン内の頼れる仲間や向こうの世界の知り合い等幾らでもいるはずだ。
 では、何故六原にしたのか。
 迷っていたと言った。あの夜、丘で語った彼女のセリフを思い出す。
 それがもし、自分が救われていいのか、いけないのかなんて考えていたならオレみたいな微妙なヤツを選ぶのも納得できた。
 正確にはワーは彼女が救われて欲しいと願っていたが、彼女は違っていたのだろう。
 だから、六原が選ばれたのはその時はどちらでも良かったのだろう。救われたならラッキー程度にしか思っていなかった。ソレは、彼女は、自分の命をこの時点でどうしていいか分からずに完全に天任せにしていたということであった。
——どちらに転んでもよかったのだ。辛いのは自分だけだからと思っていたのだろうねぇ。しかし、オレと関わってからの騎士との戦闘や、先ほどの戦いでオレが重症になり、ワーも捕まることで決意を固めたという具合か。
「今回のことで分かったよ。ワタシのせいでキミみたいに傷つく人が出てしまうんだ。魔女と呼ばれた私の存在はこんなに厄介なものでしかない。だから、救われてはいけないのだよ」
 六原の考えを裏付けるような彼女のセリフ。
「阿呆か。救われてはいけないなんて、つらいことを言うなよ。オレはお前が救われていいと思うぞ」
 予想できていたセリフに考えていた言葉を六原は優しく語る。
 だが、やはり、いままで脇役のような存在であった六原にとってそのセリフはどこか安っぽかった。
——やっぱり駄目だよなぁ。
 気の聞いたセリフ一つも語ることの出来ない自分に嫌気が差す。
「なぁ、月島」
 だから、カッコいい言い回しではなく。自分の気持ちをストレートに言った。
「オレはお前を救いたい」
 思いのままぶつけた言葉。しかし、彼女に届くことなく、彼女は拒絶を表し、酷く悲しそうな表情で六原を見下ろした。
「どうして、どこまで私にしてくれる。私は・・・!!」
 彼女が続けて言うのは懺悔の言葉。
 出来ればソレは聞きたくなく。六原は口を挟む。
「たった一人の女性が世界平和とか戦争とかに利用されるようなものじゃないだろうが」
 六原の言葉は届かず、彼女は口にした。
「だが、私は人を・・・・・・」
「救えばいいだろうが!」
 反射的に答え月島の続く言葉を叫び上げる。そんな事で彼女が許される事はないと思っているが、それでも何とかしたかった。
「そんなの、無理に決まっている」
「じゃあ、俺が手伝ってやるよ!!」
 気がつけば叫んでいた。
 対して月島は静かに語りかける。
「…だから、何でそこまでしてくれるんだ」
——そんなもの決まっているだろうが。
 初めて会ったときに言った彼女のセリフ。友人のピンチに何も出来ない自分、このまま自分が活躍することは望まれていないと思い始めた時に月島は確かに言ったのだ。

 私を救ってくれないか。

——そのセリフがオレを救ってくれたからだよ。
 悲しげな月島を真っ直ぐ見つめると六原は言った。
「オレがお前のヒーローだからだよ。だから、どうなろうが救ってやる」
 そのセリフを聞き月島は目を丸くした。始めて見るまるで驚いたような表情は何処か新鮮であり、六原は目を奪われた。
 しばらく静けさが続いた。
 沈黙を破ったのは月島が虚ろに微笑んだ後であった。
「残念、ソレは無理だよ」
「いや、何とかしてみせる」
 お互い譲らないと分かったのか、月島は溜息をついた。
「ねぇ、六原」
「なんですか」
「……なら、試そう。勝てばキミはヒーロー。だが、負ければ私は消えるとしようじゃないか」
「ははは、少年漫画みたいな展開でいいですねぇ」
——まぁ、戦って勝ったほうが負けたほうの言うことを聞かせるあの暴力的王道展開は嫌いじゃないからね。
 偏見な思考をしながら、分かったと短く答えると六原は立ち上がる。
「ルールはどうするよ」
「六原さんが私に触れたら認めるよ」
「え・・・、そんな簡単でいいのか」
「ああ、別にその回復魔法と強化魔法の付いた首輪と札使えばいいよ」
「あれ、バレてる」
 一応、隠していた首輪の能力をサラリと言われ少し驚く。
「その塞がった傷跡の様子をみれば分かるよ」
——ですよね。
 改めて腹部を触る。ぽっかりと空いた腹部の傷は今や完全に修復されていた。
「さて、じゃあ・・・始めようか。」
 月島は手を地面に付け、その辺りから拾ったであろう小枝を手に持つと、軽く円を描く。
 それだけで、彼女の姿は蜃気楼であったように掻き消え、気が付くと対岸にいた六原の反対側である入り口側に月島は移動していた。
——ウロさん。聞いていたっすよね。
(はい、もちろん。)
——じゃあ、「オート」いけそうですか。
 「オート」と呼ばれる六原の首輪に付けられた能力は単純な回復魔法と強制的に身体能力を限界まで動かしてくれる効果であった。
 先ほどの針沼との戦いとの途中で見せた力も「オート」の機能であり、回復魔法の回復力を限界まで上げる方法であった。発動まで若干実感がかかるのだが、その尋常でない回復、いや復元といってもいい速さの為にダメージを負うが傍から見れば何事もなかったように見える力を持っていた。
 デメリットといえば痛覚は残っているという事と、首輪に強い攻撃をされれば機能が停止するといったところだ。
——まぁ、「オート」なら何とかなるかなぁ。
 しかし、目の前の月島との戦いに姉の力を借りるのは六原いやであった。それだと姉が救ったみたいであるように感じたからだ。
(「オート」は無理です。)
「え・・・マジで」
 淡々と首輪は語る。
(貴方の身体の事を考えると、アレは週に一度ぐらいでしか使ってはいけません。)
——それは初耳ですなぁ。
(回復ぐらいと右腕だけなら今の魔力で「オート」が出来ますよ。)
「ふむ」
 六原は少し考える。首輪と札がなければ今、何の力もない状態である。このまま無策に突っ込んでも負けるのは確実、なら、少し我慢して姉の力を少しだけ、借りるとしよう。
 けど、やはり本当は自分の力で救いたかったと思いながら、六原はため息交じりに首輪に命令を出した。
——じゃあ、それで・・・
 右腕に巻かれた札の結び目をきつく縛る。札は魔力を弾き、吸収できる力があった。箒の残った魔力だけでは足りなかったので先ほどの戦闘によって右腕で弾いた魔力を吸収し首輪の「オート」を使うことが出来るようにしていると姉のメモには書かれていた。
(いきますよ)
 セーフモードという機能にしておいたのですぐに回復できる状態になる。
 ぼんやりと六原の右腕に巻かれた札が怪しく紫に光る。そして、首元に再び鋭い痛みが奔り首輪が作動したのを伝えてくれる。
(右腕「オート」完了。)
 準備が出来たと思った瞬間に、右腕が勝手に動き、目の前を横に振るう。
カキンという甲高い音が森に響く。同時に右腕に微かな衝撃としびれが起きているの気がついた。
どうやら知らない内に放たれた光の弾を弾いたようであった。
 その光の弾は向かってきた角度から見るに完全に六原の頭部を狙っていた。
 サァと少し冷や汗が出る。
——どうやら向こうは本気みたいですなぁ。
 まぁ、負ける気は無いけどね。六原は自信を持ちながら一歩踏み出した。
 瞬間、目の前に幾つもの光が突然視界を覆う。

 目を凝らせば、それは一瞬で現れた約十ほどの魔法陣であった。

——ちょ、マジで!?
「見せてあげるよ。魔女と言われた力を……」
 月島の声が聞こえると同時に、待つこともなくそれぞれの魔法陣は輝きを増し、火、水、氷、雷が槍の姿に形成され、矛先が全て一斉に六原へ襲いかかった。
 右腕が反応し迎撃するが、間に合わず。
 激しい衝撃が六原の体を貫き、森の中に深い絶叫が木霊した。


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